JP7749397B2 - 超音波ファントム及び超音波ファントムの製造方法 - Google Patents

超音波ファントム及び超音波ファントムの製造方法

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Description

本開示は、超音波ファントム及び超音波ファントムの製造方法に関する。
体組織などを模擬した生体組織近似ファントムは、音響波(例えば超音波)診断装置、磁気共鳴画像化診断装置(MRI)、コンピュータ断層撮影装置(CT)、X線診断装置、近赤外光イメージング装置(NIRI)などの医療診断用装置の校正、及び機能の実装に用いられている。これらの装置では、超音波、X線、光などの電磁波を利用し、その散乱、屈折、反射、吸収、回折、干渉などの物理現象をモニタリングして、患者の疾患の診断を行っている。
近年、シェアウェーブエラストグラフィ法(SWE法)による、臓器の硬さ(弾性率)の定量評価する機能が実装された超音波診断装置が知られている。これは、超音波により発生したせん断波の伝播速度を観測することで、臓器内のヤング率を算出する方法であり、硬さの定量評価が可能である。
特許文献1は、生体内へのバースト波の送信位置を超音波画像上に重畳させることで、硬さの違う組織間の境界面で反射する性質があるせん断波の影響を術者が視認しやすくし弾性率画像の画質を向上するエラストグラフィ装置を開示している。
超音波ファントムは、生体内の組織の硬さ及び硬さ分布を算出するためのエラストグラフィ装置の校正に用いられる。寒天を含むハイドロゲルを用いた超音波ファントムは、良好な超音波特性が得られることが知られている。ハイドロゲルを用いた超音波ファントムは、ハイドロゲルファントム、寒天ファントムと換言される場合がある。
特許文献2は、寒天の主成分として知られる混合アガロースを含むハイドロゲルを生体内の組織模倣層に採用しハイドロゲルファントムを開示している。特許文献2には、さらに、ハイドロゲルファントムが異なる粒径の酸化アルミニウム粉末、炭化ケイ素を含有することで音響波の減衰特性を調整し、脂肪層を模倣することを開示している。
特開2015-054056号公報 国際公開第2009/010898号
しかしながら、特許文献2に開示のような寒天ベースのハイドロゲルを、エラストグラフィ装置の較正に適用するにあたり、再現性、経時的安定性という観点から改善が望まれる場合があった。寒天で作製したファントムを弾性ファントムとして繰り返し使用した場合に、弾性率や音響伝搬特性が不可逆的に変化する場合があった。エラストグラフィ装置の較正は、不定期に行われるため、再現性、経時的安定性が担保された寒天ファントムが望まれていた。かかる超音波ファントムに望まれる再現性、経時的安定性には、音響波伝搬特性における再現性や経時的な安定性が含まれる。
本開示は、経時的に繰り返しの使用がされても、再現性、経時的安定性が担保された超音波ファントム及びその製造方法を提供する。
本開示の実施形態に係る超音波ファントムは、水と、寒天と、増粘多糖類と、保水補助剤と、を含有し、
前記寒天の水分散液が昇温によりゾル化する温度を第1の相転移点とし、前記寒天の水分散液がゾル化した水溶液が降温によりゲル化する温度を第2の相転移点とするとき、前記増粘多糖類は、前記第2の相転移点以上前記第1の相転移点以下の温度域において、前記増粘多糖類の水溶液が降温によりゲル化する相転移点を有さない増粘多糖類であり、
前記保水補助剤のハンセン溶解度パラメータの分極項δPが、13.0MPa0.5以上である
超音波ファントム。
本開示によれば、経時的に繰り返しの使用がされても、再現性、経時的安定性が担保された超音波ファントム及びその製造方法を提供することができる。
本開示において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
<寒天(A)>
寒天は、天草やオゴノリなどの紅藻類から抽出される粘液質であり、少なくともアガロースとアガロペクチンとからなる多糖類である。その産地、起源等は問わず何れのものも使用可能である。寒天は、ゲルの強度を調整するために、酸処理して分子を切断させた、いわゆる低強度寒天(例えば、特開平5-317008号公報に開示)を用いてもよい。粉末の寒天を用いることが好ましい。
寒天は、前記寒天の水分散液が昇温によりゾル化する第1の相転移点とゾル化した水溶液が降温によりゲル化する第2の相転移点とを有する。寒天の水分散液は、水に寒天を分散させたものである。そして、第1の相転移点は、寒天の水分散液を昇温させたときに前記水分散液がゾル化する温度である。また、第2の相転移点は、ゾル化した水溶液を降温させたときにゲル化する温度である。
好ましくは、第1の相転移点は、水に寒天を1.0質量%分散させた水分散液を室温(25℃)から昇温させたときに寒天が水に溶解して前記水分散液がゾル化する温度である。また、第2の相転移点は、好ましくはゾル化した寒天の水溶液を室温に放置して降温させたときに前記水溶液がゲル化する温度である。一般的に、第1の相転移点は、85℃以上99℃以下に存在し、第2の相転移点は、30℃以上45℃以下に存在する。なお、本願明細書において、水に対して特定成分が「溶解」して水溶液となっている平衡状態と、水に対して特定の成分が「分散」されて分散液となって平衡状態と、は区別される。
なお、本開示においてゲルは固形の状態を指し、ゾルは流動性を有する状態を示す。ゲルとゾルの判断には、粘弾性測定を用いることができる。具体的には、動的粘弾性測定装置を用いて下記手順で判断することができる。また、動的粘弾性測定装置は横方向に応力を加えるずり方式と、縦方向に応力を加える圧縮および引張方式があるが、ずり方式を採用する。貯蔵弾性率と損失弾性率の比であるtanδの値を算出し、1.0以下であればゲル、1.0より大きければゾルとすることができる。この時の測定周波数はゲルと測定治具との追従性を鑑み0.5Hzまたは1Hzが採用可能である。測定時の歪みは0.01%以上0.1%以下であることが望ましい。歪みが0.01%より小さいと十分にゲルを動かすことができないため測定値の信頼性が得られず、また、0.1%より大きい場合は測定治具が滑るため、測定値の信頼性が低下する。用いることができる粘弾性測定装置
としては、例えば株式会社アントンパール・ジャパンが扱うMCR302が挙げられる。
寒天は一般に水中で85℃以上に熱することで水に溶解し、ゾルとなり、45℃以下に冷却することで構造が転移しゲルとなるハイドロゲル材料である。ゾルの状態では寒天に含まれる高分子鎖の絡まりあいが解け、水に溶解することで液化する。一方、冷却時には寒天中の高分子鎖が2重らせん構造を形成し、冷却が進むにつれてさらに高次の絡まりを形成することで、ゲル化する。以上のゲル化のメカニズムから、超音波ファントムのヤング率は、寒天の濃度と相関し、柔らかいゲルから硬いゲルまで調整することができる。超音波ファントムは様々な臓器を模擬することが求められており、要求されるヤング率の幅が広い。寒天はこのヤング率の調整に好適に用いることができる。
超音波ファントムにおいて、水の少なくとも一部が寒天と水和していることが好ましく、寒天がゲル化していることが好ましい。また、超音波ファントムにおいて、寒天は水の少なくとも一部によりハイドロゲルを形成していることが好ましい。すなわち、超音波ファントムはハイドロゲル状であることが好ましい。超音波ファントムにおける含水率は、例えば、好ましくは50.00質量%以上99.50質量%以下、より好ましくは70.00質量%以上99.00質量%以下、さらに好ましくは80.00質量%以上98.00質量%以下、さらにより好ましくは80.00質量%以上95.00質量%以下である。超音波ファントムは、水及び寒天により形成されたハイドロゲル中に増粘多糖類及び保水補助剤などを含みうる。
寒天の配合量又は含有量は、水及び保水補助剤の合計した質量を100.00質量部としたとき、0.25質量部以上20.00質量部以下であることが好ましく、気泡などがない均一なファントムを得るためには0.50質量部以上10.00質量部以下が好ましい。より好ましくは1.00質量部以上10.00質量部以下であり、さらに好ましくは1.25質量部以上10.00質量部以下であり、さらにより好ましくは1.50質量部以上10.00質量部以下である。
上記範囲内で調整することで様々なヤング率を有する超音波ファントムを作製することができる。0.25質量部以上とすることで、冷却時にゲル化が起きやすい。一方、10.00質量部以下とすることで、加熱溶解した寒天の粘度が適度であり、より均一な超音波ファントムを得やすくなる。
<増粘多糖類(B)>
超音波ファントムは、寒天(A)とは異なる増粘多糖類(B)を含有する。増粘多糖類は、前記第2の相転移点以上前記第1の相転移点以下の温度域において、前記増粘多糖類の水溶液が降温によりゲル化する相転移点を有さない増粘多糖類である。増粘多糖類の水溶液は、水に増粘多糖類を分散させた第2の水分散液を昇温によりゾル化したものである。
具体的には、水に寒天(A)を1.0質量%分散させた寒天の水分散液を室温から昇温させたときに寒天が水に溶解して前記水分散液がゾル化する温度を第1の相転移点とし、ゾル化した寒天の水溶液を室温に放置して降温させたときに前記水溶液がゲル化する温度を第2の相転移点とする。増粘多糖類(B)は、好ましくは増粘多糖類の1.0質量%水分散液が第2の相転移点以上第1の相転移点以下の温度域においてゾルからゲルへの相転移点を有さない増粘多糖類である。
増粘多糖類の1.0質量%水分散液は、好ましくは10℃~95℃の温度域においてゾルからゲルへの相転移点を有さず、より好ましくは5℃~99℃の温度域においてゾルからゲルへの相転移点を有さず、さらに好ましくは0℃~100℃の温度域においてゾルからゲルへの相転移点を有さない。
上記温度域で相転移点を有さないとは、上記温度域の下限から昇温したとき、及び上記温度域の上限から降温したとき、の両方においてゾルからゲルへの相転移点を有さないことを示す。
本願明細書において、水分散液、水溶液の濃度表記は、1.0質量%は、0.95質量%以上1.04質量%以下に秤量したものと換言される。
増粘多糖類(B)が上述した相転移点を有さないことは、超音波ファントムにおいて、増粘多糖類が上記温度域において流動性を有することを示していると本発明者らは考えている。すなわち、増粘多糖類は好ましくは上記温度域においてゾル状態で存在している。上記温度域で、増粘多糖類がゾル(流体)であるため、加熱によりゾル状態の寒天中に流動性を有する増粘多糖類が均質に分散されると考えられる。
増粘多糖類は、ゲル化の要因が上記温度域での温度変化に依存しないものを採用しうる。増粘多糖類(B)は、好ましくは水溶性増粘多糖類である。増粘多糖類は後述するものを単独で用いてもよいし、複数混合して用いてもよい。なお、増粘多糖類を複数混合して使用する場合は、その混合物が上記温度域においてゾルからゲルへの相転移点を有さない組み合わせを選択すればよい。
本発明者らの検討により、寒天ゲルを超音波ファントムとして使用する場合、脆さの改善、離水の抑制が課題となることがわかってきた。寒天ファントムに超音波プローブを押し当てた際の繰り返しの圧力に寒天ファントムを構成するゲル組織が壊れるためと推定される。
増粘多糖類が上述した相転移点を有さないことより、超音波ファントムにおける寒天と水によるハイドロゲル中で増粘多糖類(B)が流動性を有し、粘りを発揮するため、脆さを改善することができると考えられる。これにより、プローブを押し当てた際に超音波ファントムが壊れにくくなり、繰り返し使用することが可能になる。
増粘多糖類は、上述した相転移点を有さないものであれば特に制限されず、公知のものを使用しうる。増粘多糖類は、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロースなどに代表されるアルドース単糖又はグルクロン酸、デオキシ糖などのアルドース単糖の誘導体などの単糖類が、グリコシド結合したものを示す。
増粘多糖類は、側鎖を有することが好ましい。増粘多糖類は、(アルドース単糖又はその誘導体などの)単糖及びその誘導体、並びに多糖及びその誘導体から選択される糖鎖、並びにカルボキシメチル基、カルボキシメチル基の塩、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群から選択される少なくとも一が側鎖として結合している増粘多糖類であることが好ましい。
側鎖が多糖である場合、側鎖としての多糖は、加水分解によって2分子以上の単糖類を生じる糖類を含む。
側鎖を有する増粘多糖類としては、好ましくはグアーガム、ダイユータンガム、キサンタンガム、セルロース誘導体などが挙げられる。例えばカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩は、カルボキシメチル基のナトリウム塩を側鎖に有するセルロース誘導体である。
なお、単糖の誘導体及び多糖の誘導体における誘導体とは、単糖及び多糖の水酸基が、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド基、カルボキシメチル基、カルボキシメチル基の塩、リン酸基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピルメチル基などからなる群から選択される少なくとも一で置換された誘導体が挙げられる。好ましくはヒドロキシプロピル基、カルボキシメチル基、カルボキシメチル基の塩からなる群
から選択される少なくとも一で置換された誘導体である。
塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられるが、ナトリウム塩が好ましい。
これら側鎖を有する多糖類は、水に対して1.0質量%溶解させた際の粘度の値である、1.0質量%粘度値が高い傾向にある。これは、側鎖の糖やカルボキシ基が水との親和性が高いためであると考えられる。そのため、少量の添加で超音波ファントムの脆さをより改善できる。増粘多糖類の1.0質量%粘度値は、100mPa・s以上10000mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは200mPa・s以上9000mPa・s以下であり、さらに好ましくは300mPa・s以上8000mPa・s以下である。1.0質量%粘度値の測定は、回転式粘度計を用いて測定することができる。本件における粘度は、動的粘弾性測定装置の株式会社アントンパール・ジャパンが扱うMCR302を用いて、直径25mmのパラレルプレートを用いて測定した。また、このとき回転速度は5(/s)で測定した。
増粘多糖類は例えば、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ガラクトマンナン(ローカストビーンガム、タラガム、グアーガムなど)、スクシノグリカン、及びダイユータンガム並びにこれらの誘導体、並びにセルロース誘導体からなる群から選択される少なくとも一が挙げられる。増粘多糖類は、好ましくはローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、キサンタンガム及びダイユータンガム並びにこれらの誘導体、並びにセルロース誘導体からなる群から選択される少なくとも一であり、より好ましくは、グアーガム、キサンタンガム及びダイユータンガム並びにこれらの誘導体、並びにセルロース誘導体からなる群から選択される少なくとも一である。
これら増粘多糖類の誘導体は、上記と同様、水酸基がヒドロキシプロピル基、ヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド基、カルボキシメチル基、カルボキシメチル基の塩、リン酸基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピルメチル基などからなる群から選択される少なくとも一で置換された誘導体が挙げられる。好ましくはヒドロキシプロピル基、カルボキシメチル基、カルボキシメチル基の塩からなる群から選択される少なくとも一で置換された誘導体である。グアーガムの誘導体はヒドロキシプロピルグアーが好ましい。
誘導基があることで増粘多糖類(B)の主鎖の絡まりがほどけやすくなり、溶解性が向上し、均一なゾル液を得ることができる。
セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース並びにその塩からなる群から選択される少なくとも一であることが好ましい。塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられるが、ナトリウム塩が好ましい。
側鎖については上記のほかに、多糖の主鎖に対して、カルボキシ基で修飾されているものも用いることができる。例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムがより好ましい。
増粘多糖類の配合量又は含有量は、水及び保水補助剤の合計した質量を100.00質量部としたとき、0.50質量部以上2.00質量部以下であることが好ましい。増粘多糖類が0.50質量部以上であればファントムの脆さをより改善することができる。また、超音波ファントムに含まれる水が増粘されることにより、各成分の沈降を抑制することができる。増粘多糖類が2.00質量部以下であると粘度が好適で、ハンドリングが良好になる。増粘多糖類の配合量又は含有量は、水と保水補助剤の合計した質量を100.00質量部とした場合、より好ましくは0.50質量部以上1.00質量部以下である。
<保水補助剤(C)>
ハイドロゲルの離水を遅らせるために、超音波ファントムは、寒天及び増粘多糖類とは異なる保水補助剤を含有する。保水補助剤は、水の蒸発を抑制する作用のある化合物を示す。保水補助剤は、水溶性又は水に混和性のある物質であることが好ましい。保水補助剤は、HSP(ハンセン溶解度パラメータ)において分極項δPが13.0MPa0.5以上のものを使用する。
ハンセン溶解度パラメータは、コンピューターソフトウェアの「Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)」により計算可能であり、公知の方法を用いて求めることができる。本明細書におけるハンセンの溶解度パラメータは、HSPiPのバージョン5.3.05を利用して算出した値である。
保水補助剤(C)のハンセン溶解度パラメータにおける分極項δPは、14.0MPa0.5以上であることが好ましく、16.0MPa0.5以上であることがより好ましく、18.0MPa0.5以上であることがさらに好ましい。上限は特に制限されないが、好ましくは30.0MPa0.5以下であり、より好ましくは25.0MPa0.5以下であり、さらに好ましくは22.0MPa0.5以下であり、さらにより好ましくは20.0MPa0.5以下である。本発明者らの検討により、分極項成分δPが、他のHSP成分よりも安定保水率に対して高い相関係数を有することがわかった。
上記のような作用を有する化合物はカオトロピック剤と総称される場合がある。保水補助剤は、カオトロピック剤を含むことが好ましい。カオトロピック剤とは、水溶液中の水分子同士の相互作用を変化させる作用がある。分極項dPが上記範囲である化合物を保水補助剤として添加することで水分子の相互作用が変化し、水分子を強力に引き付けることできる。かかる相互作用の程度を分極項δPが表しており、この値が上記範囲の化合物を保水補助剤(C)として用いることでファントムとしての経時安定性の実現が可能となる。
本発明者らの検討により、寒天で作製したファントムは、含水量の変化が大きいことがわかってきた。ファントムから水分が染み出ることにより、超音波の伝播に関する音響特性が変化する。そのため、人体の音響特性に合致するように調整したファントムを作製しても、経時での特性変化が生じやすく目安程度の数値しか得られない。ファントムの表面をフィルムなどで覆い、蒸発を防いだとしてもファントムからの水の染み出し(離水)を減少させることは難しい。保水補助剤を用いることにより、保水補助剤が水分子を強力に引き付けることで、離水が抑制され、経時安定性が向上する。
保水補助剤(C)は上記分極項δPを満足するものであれば特に制限されない。保水補助剤は、例えば、myo-イノシトールなどのイノシトール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、尿素、グアニジン及びグアニジン塩、ならびにこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一を用いることができる。また、これらの誘導体として、例えば、メチル化、ジメチル化、エチル化、ジエチル化したものも用いることができる。保水補助剤(C)は、好ましくはイノシトール、ジメチルスルホキシド及び尿素からなる群から選択される少なくとも一を含む。
超音波ファントムにおける保水補助剤の含有量は、水と保水補助剤の合計の質量を基準として、1質量%以上であることが好ましい。これにより、十分な保水効果が得られ、水の染み出しをより抑制することができる。保水補助剤の含有量は、水と保水補助剤の合計の質量を基準として、好ましくは1.00質量%以上15.00質量%以下であり、より好ましくは2.00質量%以上10.00質量%以下であり、さらに好ましくは4.00
質量%以上8.00質量%以下である。
また、保水補助剤は水の相互作用を変化させるため、超音波の音速が変化する場合がある。生体の臓器の音速が1535(m/s)程度であるため、この値から大幅に乖離しない範囲で添加すればよい。例えば、超音波ファントムに周波数3.5MHzの超音波を透過させたときの超音波の音速は、好ましくは1525m/s以上1545m/s以下であり、より好ましくは1528m/s以上1540m/s以下であり、さらに好ましくは1530m/s以上1537m/s以下である。
<その他成分(D)>
超音波ファントムには、寒天、増粘多糖類及び保水補助剤とは異なるその他成分として必要に応じて各種の成分を添加することができる。例えば、超音波ファントムは、超音波散乱剤をさらに含有してもよい。超音波診断装置ではファントム内で散乱された超音波のうち、検出器に届いた信号を用いて撮像、測定をしている。そのため測定対象の部分に超音波散乱剤を添加することで撮像が可能になり、ヤング率の測定を行うことができる。
また、超音波の散乱効率はその物質の音響インピーダンス(=密度×音速)によって算出される。物質界面において、散乱効率はこの値の差異が大きいほど高い。
超音波散乱剤として用いることのできる固体粒子として、金属、金属酸化物、炭素粒子、球状高分子など公知のものが挙げられる。超音波散乱剤は、水溶性の低い固体であれば素材に特に制限はない。機械的安定性から、グラファイトやマイクロダイヤモンドなどの炭素結晶の粒子、ポリエチレン粒子、ポリエチレン中空球、ポリスチレン中空球などの樹脂製粒子、酸化チタン、酸化アルミナ、酸化シリコンなどの酸化物微粒子、タングステン、ニッケル、モリブデンなどの金属微粒子、などが好ましい。このなかでも特に音響インピーダンスの大きさ、水への分散性、を考慮すると炭素結晶の粒子が好ましい。
超音波散乱剤の粒径は、入力される超音波の波長に応じて決定される。超音波診断装置のプローブから発せられる超音波の波長から計算すると超音波散乱剤の粒子径は5μm以上50μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm~25μmである。
しかし、一般的に粒径が5μm以上の密度が高い粒子は沈降速度が大きく、寒天がゾルからゲル化する途中で分離する場合がある。かかる沈降速度は下記ストークスの式から算出することができる。
V=g(ρs-ρ0)d2/18η
V:沈降速度、g:重力加速度、ρs:粒子密度、ρ0:溶媒密度、d:粒子直径、η:溶媒の粘性率)
増粘多糖類(B)を添加することにより、ストークスの式中のηの値を大きくすることで、超音波散乱剤の沈降を遅らせることができる。
超音波散乱剤の含有量は、目標とする散乱効果に応じて適宜調整すればよく、特に制限されないが、水と保水補助剤の合計した質量を100.00質量部としたときに、0.50質量部~20.00質量部であることが好ましく、1.00質量部~10.00質量部であることがより好ましく、2.00質量部~7.00質量部であることがより好ましい。
また、超音波ファントムは、その他成分として防腐剤を含有してもよい。ハイドロゲルは一般的にカビが発生しやすく、校正用として用いる際、物性値への影響を抑制するために、防腐剤を使用することが好ましい。用いることができる防腐剤としては特に限定されないが、水溶性があり、抗菌スペクトルが広いものが好ましい。
カビの発生を抑制できる化合物として防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコールがあげられる。
このなかでも水溶性があり、抗菌スペクトルが広く、特に、人体に影響が少ないことが望ましいことから、パラオキシ安息香酸エステル系が望ましい。また、水溶性の観点からパラオキシ安息香酸メチルが特に好ましい。
防腐剤はそれぞれの化合物によって効果が異なるため、適宜添加することが好ましいが、例えば、パラオキシ安息香酸メチルの場合、水と保水補助剤の質量の合計を100.00質量部とした場合、0.20質量部以上0.30質量部以下添加すればよく、飽和量である0.25質量部添加することが好ましい。これにより、防腐剤としての効果が十分になる。
超音波ファントムの製造方法は特に制限されない。水、寒天、増粘多糖類及び保水補助剤、並びに必要に応じて超音波散乱剤及び防腐剤などその他成分を混合する。そして、混合物を寒天が水に溶解する第1の相転移点(例えば85℃以上99℃以下)を超える温度まで昇温させ、寒天を水に溶解させ溶解液を得る。必要に応じて液中の含有成分の分布が均一になるまで攪拌または加熱する。液中の含有成分の分布は、巨視的に均一に溶媒に分散した状態で平衡となっている態様と、微視的に分子レベルで均一に溶媒に溶解している平衡となっている態様と、を含んでいる。前者は、超音波散乱剤及び防腐剤が含まれ、後者は寒天、増粘多糖類及び保水補助剤が含まれる。得られた混合液を所望の形状の型に注ぎ、寒天がゲル化する第2の相転移点未満の温度まで冷却することで超音波ファントムを得ることができる。
すなわち、超音波ファントムの製造方法は、水、寒天、増粘多糖類及び保水補助剤を含有し、寒天が水に溶解した状態の混合液を、寒天がゲル化する温度まで冷却して超音波ファントムを得る工程を有することが好ましい。これにより、水、寒天、増粘多糖類及び保水補助剤を含有するハイドロゲルを含む超音波ファントムを得ることができる。
また、超音波ファントムの製造方法は、以下の工程を有することが好ましい。
水及び寒天(並びに必要に応じて防腐剤)を混合した混合物を寒天が水に溶解する温度(第1の相転移点)まで昇温させ、寒天を水に溶解させたA液を得る工程、
水及び保水補助剤を混合して得られた保水補助剤の水溶液に、増粘多糖類(及び必要に応じて超音波散乱剤)を混合し、B液を得る工程、及び
得られたA液及びB液を混合し、得られた混合液を冷却して超音波ファントムを得る工程。
A液を得る工程及びB液を得る工程は、どちらを先に実施してもよいし、両方同時に実施してもよい。B液を混合した後、昇温させてもよい。B液の昇温は、A液とB液との温度差が小さくなる程度であればよく、第1の相転移点(例えば85℃以上99℃以下)程度の温度まで加熱することが好ましい。A液及びB液は、混合液が容器内で均一化することが好ましい。混合は、85℃以上99℃以下の温度に維持しながら行うことが好ましい。
得られた混合液を、必要に応じて所望の形状の型に注ぎ、第2の相転移点未満の温度(
例えば室温)まで冷却することで寒天がゲル化し超音波ファントムを得ることができる。冷却方法は特に制限されず、室温に放置してもよいし、水など所望の媒体を使用して冷却してもよい。
粘弾性測定装置により測定された超音波ファントムのヤング率Eは、好ましくは50kPa以上2000kPa以下であり、より好ましくは100kPa以上1500kPakPa以下であり、さらに好ましくは120kPa以上1000kPa以下である。寒天の濃度などを調製することで、硬さを調製することができる。超音波ファントムは、硬さに依存せず、生体での音速に近い一定の音速を有することができる。
超音波ファントムは、例えば、臓器の正確なヤング率を算出するための超音波エラストグラフィなどの超音波診断装置において、超音波検査用ファントムとして装置の校正に用いることができる。
以下、実施例により本説明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の処方において、部は特に断りのない限り質量基準である。
<材料>
以下、実施例及び比較例にて使用した材料を列記する。
[ゲル化剤(A)]
A-1:寒天;「Agar, powder (キシダ化学株式会社)」
[増粘多糖類(B)]
B-1:ヒドロキシプロピルグアー;「ESAFLOR4W (三晶株式会社)」
B-2:キサンタンガム;「ケルザン(R)AP (三晶株式会社)」
B-3:ダイユータンガム;「ケルコビスDG (三晶株式会社)」
B-4:カルボキシ基変性セルロース;「CEKOL 30000 (三晶株式会社)」
これらは、上述した温度域においてゾルからゲルへの相転移点を有さない増粘多糖類である。
[保水補助剤(C)]
C-1:尿素 (キシダ化学株式会社)
C-2:ジメチルスルホキシド(DMSO) (東京化成工業株式会社)
C-3:myo-イノシトール (東京化成工業株式会社)
C-4:グリセリン (キシダ化学株式会社)
C-5:マンニトール (東京化成工業株式会社)
[その他成分(D)]
D-1:グラファイト;「ニカビーズ(R) ICB1020 (日本カーボン株式会社)」
D-2:パラオキシ安息香酸メチル (キシダ化学株式会社)
<評価方法>
[離水率]
一定空間を有する密閉された容器の中に超音波ファントムを保管し、24日後の水の蒸発又は水の染み出しによる質量の減少割合を測定することで離水率を評価した。およそ30cmの空間に直径30mm、厚さ5mmの超音波ファントムをいれ、冷蔵庫(約4℃)にて24日保管した。保水補助剤を入れていないものを参考例とし、これと比較して離水率が低下したものを〇、上がったものを×とした。
[脆さ]
超音波ファントムにプローブを手で押し当てる際、意図せず大きな力がかかり、超音波
ファントムが損傷する可能性がある。プローブの押し当てる動きを、治具を押し付けた際の圧縮に見立てることで、超音波ファントムの脆さを検証した。
万能試験機(RTF-1250 株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて圧縮試験を行った。直径30mm、厚さ50mmの超音波ファントムを作製し、2mm/minの条件で圧縮した。
特許5787286号公報では、超音波プローブが生体に押し当てられた際の力と臓器の変形の関係性を開示している。超音波診断装置におけるエラストグラフィでは、臓器そのもののヤング率を定量測定するため、強力に押し付けることはまれであるが、500gf以上1000gf以下の力がかかることが想定される。
脆さの試験では圧縮試験において、S-Sカーブを描き、圧縮応力が30kPa以下で変曲点又は降伏点が観察されたものを内部崩壊とみなし、内部崩壊があるものを×、ないものを〇とした。
[ヤング率]
粘弾性測定装置(MCR302 株式会社アントンパール・ジャパン製)を用いて測定を行い、貯蔵弾性率G’の値を求めた。貯蔵弾性率は、直径30mm、厚さ5mmで作製した円柱形の超音波ファントムを用いて測定を行った。超音波ファントムの上部から直径25mmのパラレルプレートを接触させ、振動させることで、貯蔵弾性率G’を測定した。
超音波ファントムのヤング率Eはポアソン比νを用いて、貯蔵弾性率G’から、下記式にて算出される。
E=G’・2(1+ν)
超音波ファントムは測定時の体積変化が小さいため、ポアソン比ν=0.5と仮定できる。このことから、E=3・G’となり、貯蔵弾性率G’の値を3倍することでヤング率Eの値を得た。
[音速]
超音波ファントムに対する超音波の透過時間を測定することで音速の測定を行った。測定周波数3.5MHz(V328-SU オリンパス株式会社製)のトランスデューサーとニードル型ハイドロフォン(東レエンジニアリングDソリューションズ株式会社製)の間に治具を用いて超音波信号の入射角が 0°となるように水中に固定した。
長さ100mm×幅100mm、厚さ5mm及び10mmの2種類の超音波ファントムの試験片を先述の通り設置した状態で、波形発生装置で発生した 3サイクルのサイン波を超音波発振機から発振し、超音波受振機で受振した波形データをオシロスコープにより計測した。
音速の値は厚さ5mm及び10mmでの値の平均値を用いた。
<超音波ファントムの作製方法>
[製造例]
超音波ファントムの製造手順の例として実施例1の作製手順を記載する。その他の実施例や製造例ではこの手順は変えずに、表1、表2、表3の配合に従い、材料の種類、量のみ変化させてファントムを作製した。ゲル化剤を調整する調整液Aと、保水補助剤を調整する調整液Bに分けて処方し、これらを混合することでファントムを作製した。
(調整液A)
密閉容器にイオン交換水250g(50.00部)、寒天14.4g(2.88部)、パラオキシ安息香酸メチル1.25g(0.25部)を入れ、90℃の加熱オーブンで4時間加熱した。
(調整液B)
密閉容器イオン交換水220g(44.00部)と、尿素30g(6.00部)を溶解し、12%尿素水溶液を調整した。これに対し、ヒドロキシプロピルグアー3.75g(0.75部)を加え、溶解させた。これに対し、さらにグラファイトを20g(4.00部)加え、十分に攪拌したのち、90℃の加熱オーブンで1時間加熱した。
調整液A及び調整液Bが90℃で熱せられている状態でそれぞれの構成成分の比に応じて、調整液Aのイオン交換水量と調整液Bの尿素水の量が等しくなるように混合し、2分間攪拌処理の後、型に注いで冷却し、超音波ファントムを得た。

表1,2,3中、各材料の数値は部数を示す。
上記離水試験を行った結果が表1である。保水補助剤を入れていない参考例は、24日間で19.2質量%離水した。一方比較例1と比較例2では一般的に音速を調整するために使われる多価アルコールを入れた例である。グリセリン(比較例1)とマンニトール(比較例2)のδPの値(MPa0.5)はそれぞれ12.7と11.2でありいずれも13.0以下である。この場合は離水率が参考例の値より高くなる結果となった。一方、保水補助剤のδPの値が13.0より大きい実施例1と実施例2と実施例3の場合は、参考例と比較して大幅に離水率が改善された。
増粘多糖類を添加していない比較例3では、30kPa以下で内部崩壊が観察された。一方、増粘多糖類を添加した実施例4~7では内部崩壊が見られず、脆さが改善された超音波ファントムが得られた。
実施例8~実施例14では、ヤング率に関する検量線を作製し、寒天(A)の濃度を調整して得た超音波ファントムである。いずれの超音波ファントムにおいても離水、脆さ共に改善されていた。また、いずれの実施例も生体の音速(1535(m/s))に近い音速の値を有しており、超音波診断装置の校正に好適に使用することが可能である。
以上の通り、本開示により従来の寒天ファントムの課題を大幅に改善したファントムを得ることができた。

Claims (17)

  1. 超音波ファントムであって、
    前記超音波ファントムは、
    水、
    寒天、
    増粘多糖類、及び
    保水補助剤を含有し、
    前記寒天は、前記水とハイドロゲルを形成しており、
    前記増粘多糖類及び前記保水補助剤は、前記ハイドロゲル中に分散されており、
    前記寒天の水分散液が昇温によりゾル化する温度を第1の相転移点とし、前記寒天の水分散液がゾル化した水溶液が降温によりゲル化する温度を第2の相転移点とするとき、前記増粘多糖類は、前記第2の相転移点以上前記第1の相転移点以下の温度域において、ゾル状態であり、かつ前記増粘多糖類の水溶液が降温によりゲル化する相転移点を有さない増粘多糖類であり、
    前記保水補助剤のハンセン溶解度パラメータの分極項δPが、13.0MPa0.5以上である
    超音波ファントム。
  2. 前記第1の相転移点は、85℃以上99℃以下に存在し、
    前記第2の相転移点は、30℃以上45℃以下に存在する請求項に記載の超音波ファントム。
  3. 前記寒天の前記水分散液は、水に寒天を分散させたものであり、
    前記増粘多糖類の水溶液は、水に前記増粘多糖類を分散させた第2の水分散液を昇温によりゾル化したものである請求項1又は2に記載の超音波ファントム。
  4. 前記第1の相転移点は、前記寒天の前記水分散液を昇温させたときに前記寒天の前記水分散液がゾル化する温度であり、
    前記第2の相転移点は、前記ゾル化した水溶液を降温させたときにゲル化する温度である請求項に記載の超音波ファントム。
  5. 前記増粘多糖類の水溶液は、前記温度域においてゾルからゲルへの相転移点を有さない請求項1~のいずれか1項に記載の超音波ファントム。
  6. 前記保水補助剤は、カオトロピック剤を含む請求項1~のいずれか1項に記載の超音波ファントム。
  7. 前記保水補助剤は、イノシトール、ジメチルスルホキシド及び尿素からなる群から選択される少なくとも一を含む請求項1~のいずれか1項に記載の超音波ファントム。
  8. 前記増粘多糖類は、
    単糖及びその誘導体、並びに多糖及びその誘導体から選択される糖鎖、並びに
    カルボキシメチル基、カルボキシメチル基の塩、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩からなる群から選択される少なくとも一が側鎖として結合している請求項1~のいずれか1項に記載の超音波ファントム。
  9. 前記増粘多糖類が、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ガラクトマンナン、スクシノグリカン、及びダイユータンガム並びにこれらの誘導体、並びにセルロース誘導体からなる群から選択される少なくとも一を含む請求項1~のいずれか1項に記載の超音波ファントム。
  10. 前記増粘多糖類が、グアーガム、キサンタンガム及びダイユータンガム並びにこれらの誘導体、並びにセルロース誘導体からなる群から選択される少なくとも一を含む請求項1~のいずれか1項に記載の超音波ファントム。
  11. 超音波散乱剤をさらに含む請求項1~10のいずれか1項に記載の超音波ファントム。
  12. 防腐剤をさらに含む請求項1~11のいずれか1項に記載の超音波ファントム。
  13. 前記寒天の含有量が、前記水及び前記保水補助剤の合計した質量を100.00質量部としたとき、0.25質量部以上20.00質量部以下である請求項1~12のいずれか1項に記載の超音波ファントム。
  14. 前記増粘多糖類の含有量が、前記水及び前記保水補助剤の合計した質量を100.00質量部としたとき、0.50質量部以上2.00質量部以下である請求項1~13のいずれか1項に記載の超音波ファントム。
  15. 前記保水補助剤の含有量が、前記水と前記保水補助剤の合計の質量を基準として、1.00質量%以上15.00質量%以下である請求項1~14のいずれか1項に記載の超音波ファントム。
  16. 請求項1~15のいずれか1項に記載の超音波ファントムの製造方法であって、
    前記水、前記寒天、前記増粘多糖類及び前記保水補助剤を含有し、前記寒天が前記水に溶解した状態の混合液を、前記寒天がゲル化する温度まで冷却して超音波ファントムを得る工程を有する超音波ファントムの製造方法。
  17. 水と、前記水とともにハイドロゲルを形成する寒天と、前記ハイドロゲルに分散され前記ハイドロゲルを増粘する増粘多糖類と、前記ハイドロゲルに分散され前記ハイドロゲル
    からの離水を抑制する保水補助剤と、を含有する超音波ファントムであって、
    前記増粘多糖類は、前記寒天の水分散液が昇温によりゾル化する温度を第1の相転移点とし、前記ゾル化した水溶液が降温によりゲル化する温度を第2の相転移点とするとき、前記第2の相転移点以上前記第1の相転移点以下の温度域において、前記増粘多糖類の水溶液が降温によりゲル化する相転移点を有さない流体であり、
    前記保水補助剤は、13.0MPa 0.5 以上のハンセン溶解度パラメータの分極項δPを有する超音波ファントム。
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