JP7745859B1 - 防錆塗料組成物、塗装物品ならびに塗装物品の製造方法 - Google Patents

防錆塗料組成物、塗装物品ならびに塗装物品の製造方法

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Abstract

【課題】錆または塩分が残存する鋼材に対しても優れた防錆性を付与することのできる防錆塗料組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂(a)と、ポリアミン(b)と、粉体(c)と、増粘剤(d)と、を含む、防錆塗料組成物であって、前記粉体(c)は、5℃の水100gに対する溶解量が0.1g以上の金属硫酸塩(c-1)と、pH7.0で20℃の水100gに対する溶解量が0.03g未満であり、かつ、pH4.0で20℃の水100gに対する溶解量が0.03g以上である亜鉛化合物(c-2)と、を含み、前記金属硫酸塩(c-1)の含有量は、前記防錆塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.2質量%以上70質量%以下であり、前記亜鉛化合物(c-2)の含有量は、前記防錆塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、10質量%以上200質量%以下である、防錆塗料組成物。

Description

本発明は、防錆塗料組成物、塗装物品ならびに塗装物品の製造方法に関する。
特許文献1は、金属硫酸塩と、亜鉛および亜鉛合金からなる群から選択される少なくとも1種の金属粉体とを含む塗料を開示している。
特開2021-167379号公報
鋼材の塗替えに際し、まず、劣化した塗膜や腐食部分にケレンなどの下地処理が行われる。特に腐食部分の錆を十分に取り除くことは、防錆管理上、重要である。しかし、ボルト回りや溶接交差部分などの複雑な構造部分、あるいは、高所または海洋上の構造物などの錆は、十分に取り除くのが難しい場合もある。そのため、錆が残存する鋼材に塗装した場合であっても、高い防錆性が得られる塗料が求められている。
また、海岸部など塩(海塩)が飛来する地域では、塩分が鋼材の腐食を進行させる。そのため、塩分を十分に除去した後で塗り替えを行うことが望ましい。しかし、屋外に設置されている構造物に付着している塩分を除去することは、多大な労力を要する。そのため、塩分が残存する鋼材に塗装した場合であっても、高い防錆性が得られる塗料が求められている。
本発明は、錆または塩分が残存する鋼材に対しても優れた防錆性を付与することのできる防錆塗料組成物を提供することを目的とする。
本発明は、下記態様を提供する。
[1]
エポキシ樹脂(a)と、
ポリアミン(b)と、
粉体(c)と、
増粘剤(d)と、を含む、防錆塗料組成物であって、
前記粉体(c)は、
5℃の水100gに対する溶解量が0.1g以上の金属硫酸塩(c-1)と、
pH7.0で20℃の水100gに対する溶解量が0.03g未満であり、かつ、pH4.0で20℃の水100gに対する溶解量が0.03g以上である亜鉛化合物(c-2)と、を含み、
前記金属硫酸塩(c-1)の含有量は、前記防錆塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.2質量%以上70質量%以下であり、
前記亜鉛化合物(c-2)の含有量は、前記防錆塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、10質量%以上200質量%以下である、防錆塗料組成物。
[2]
前記金属硫酸塩(c-1)の含有量と前記亜鉛化合物(c-2)の含有量との質量基準の比(c-1/c-2)が、0.08/99.92~90.00/10.00である、上記[1]の防錆塗料組成物。
[3]
表面に錆を有する鋼材用である、上記[1]の防錆塗料組成物。
[4]
表面に塩分を有する鋼材用である、上記[1]の防錆塗料組成物。
[5]
前記金属硫酸塩(c-1)は、多価の金属カチオンと硫酸イオンとの塩である、上記[1]の防錆塗料組成物。
[6]
前記金属硫酸塩(c-1)は、硫酸ニッケル、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸コバルト、硫酸クロム、硫酸銅、硫酸チタン、硫酸スズ、硫酸ジルコニウム、硫酸バナジウム、硫酸マンガンよりなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[1]の防錆塗料組成物。
[7]
前記亜鉛化合物(c-2)は、酸化亜鉛、水酸化亜鉛および炭酸亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[1]の防錆塗料組成物。
[8]
前記粉体(c)は、さらに、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物の少なくとも一方であるアルカリ土類金属化合物(c-3)を含む、上記[1]の防錆塗料組成物。
[9]
前記アルカリ土類金属化合物(c-3)の含有量は、前記防錆塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.15質量%以上40質量%以下である、上記[8]の防錆塗料組成物。
[10]
前記アルカリ土類金属化合物(c-3)は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化バリウム、水酸化バリウムよりなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[8]の防錆塗料組成物。
[11]
固形分濃度69質量%および温度25℃の条件で、粘度測定装置レオメーターを用いて、せん断速度1000(1/s)でせん断応力を加え始めてから1分後の粘度が、0.1Pa・s以上1.2Pa・s以下であり、せん断速度0.1(1/s)でせん断応力を加え始めてから1分後の粘度が40Pa・s以上500Pa・s以下である、上記[1]の防錆塗料組成物。
[12]
表面に錆を有する鋼材と、
前記鋼材上に、上記[1]~[11]のいずれかの防錆塗料組成物により形成された防錆塗膜と、を備える、塗装物品。
[13]
前記鋼材の表面の前記錆の厚さが、10μm以上200μm以下である、上記[12]の塗装物品。
[14]
前記防錆塗膜が、前記鋼材の表面の前記錆を覆っている、上記[13]の塗装物品。
[15]
表面に塩分を有する鋼材と、
前記鋼材上に、上記[1]~[11]のいずれかの防錆塗料組成物により形成された防錆塗膜と、を備える、塗装物品。
[16]
表面に錆を有する鋼材上に、上記[1]~[11]のいずれかの防錆塗料組成物を塗装することを備える、塗装物品の製造方法。
[17]
表面に塩分を有する鋼材上に、上記[1]~[11]のいずれかの防錆塗料組成物を塗装することを備える、塗装物品の製造方法。
本発明によれば、錆または塩分が残存する鋼材に対しても優れた防錆性を付与することのできる防錆塗料組成物が提供される。
本開示の防錆塗料組成物は、エポキシ樹脂(a)と、ポリアミン(b)と、粉体(c)と、増粘剤(d)と、を含む。粉体(c)は、5℃の水100gに対する溶解量が0.1g以上の金属硫酸塩(c-1)と、pH7.0で20℃の水100gに対する溶解量が0.03g未満であり、かつ、pH4.0で20℃の水100gに対する溶解量が0.03g以上である亜鉛化合物(c-2)と、を含む。
金属硫酸塩(c-1)の含有量は、防錆塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.2質量%以上70質量%以下である。亜鉛化合物(c-2)の含有量は、防錆塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、10質量%以上200質量%以下である。
金属硫酸塩(c-1)は水溶液中で溶解し、金属イオンおよび硫酸イオンを溶出する。その後、溶出した硫酸イオンの酸性作用ならびに金属イオンの加水分解に起因して、水素イオンが生成する。生成した水素イオンにより亜鉛化合物(c-2)が溶解し、亜鉛イオンが生成する。生成した亜鉛イオンは、飛来塩分、雨水または基材表層に存在する錆などに含まれる塩化物イオンと反応し、該塩化物イオンをトラップ(捕捉)する。この際、亜鉛イオンと塩化物イオンとの反応により、例えば塩基性塩化亜鉛といった化合物が生成される。当該生成物は、塗膜中に、水に対して安定な被膜(以下、「防錆層」と称する。)を形成する。この防錆層により、防錆効果が発揮される。
亜鉛化合物(c-2)は、単体であっても防錆効果を発現する。これは亜鉛化合物(c-2)から溶出する亜鉛イオンが防錆に寄与するためである。一方、亜鉛化合物(c-2)の含有量と防錆効果とは比例しないことが知られている。これは、亜鉛イオンの溶出には限界があるためである。
金属硫酸塩(c-1)によって、亜鉛化合物(c-2)からの亜鉛イオンの溶出が促進されることが判明した。すなわち、亜鉛化合物(c-2)単独の場合よりも、金属硫酸塩(c-1)と組み合わせることで多くの亜鉛イオンが溶出できて、防錆層の形成が促進されて、防錆性がより向上する。そのため、本開示の防錆塗料組成物は、表面に錆または塩分を有する鋼材に用いることができる。このような鋼材に対しても高い防錆性を付与することができる。
(防錆塗料組成物)
防錆塗料組成物は、エポキシ樹脂(a)を含む主剤と、ポリアミン(b)を含む硬化剤とからなる2液形であってよい。粉体(c)は、主剤に含まれていてよく、硬化剤に含まれていてよく、両方に含まれていてよい。粉体(c)は、主剤に含まれていてよい。
以下、エポキシ当量は、固形分質量を基準として求められる。エポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準拠して求められる。
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される。
ポリアミンの活性水素当量は、固形分質量を基準として求められる。ポリアミンの活性水素当量は、JIS K 7237:1995に準拠して求められる。
防錆塗料組成物の固形分は、塗料組成物から揮発成分(代表的には、溶媒)を除いた全成分である。防錆塗料組成物の固形分濃度は、JIS K 5601-1-2:2008 加熱残分測定方法に準じ、塗料組成物を105℃×1時間で加熱したときの残分から算出することができる。
防錆塗料組成物の固形分濃度は特に限定されない。防錆塗料組成物の固形分濃度は、例えば、60質量%以上75質量%以下であってよい。防錆塗料組成物の固形分濃度は、65質量%以上であってよく、68質量%以上であってよい。防錆塗料組成物の固形分濃度は、73質量%以下であってよく、71質量%以下であってよい。
・エポキシ樹脂(a)
エポキシ樹脂(a)は、塗膜形成成分である。エポキシ樹脂(a)は、ポリアミン(b)と架橋反応して、硬化塗膜を形成する。
エポキシ樹脂(a)は特に限定されない。エポキシ樹脂(a)としては、例えば、ビスフェノール型、ノボラック型、ビフェニル型、ナフタレン型等の芳香族系エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型、多価アルコールのグリシジルエーテル類等の脂肪族系エポキシ樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。エポキシ樹脂(a)は、上記のエポキシ樹脂の変性体であってよい。耐湿性、耐靭性の点で、芳香族系エポキシ樹脂であってよく、ノボラック型エポキシ樹脂であってよい。
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAD型、これらビスフェノール型エポキシ樹脂のアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、これらビスフェノール型エポキシ樹脂に水素を添加した水添ビスフェノール型が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールAのノボラック型が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
ビフェニル型、ナフタレン型およびジシクロペンタジエン型としては、例えば、ビフェニル、ナフタレン、ジシクロペンタジエンの任意の位置に1または2以上のグリシジルエーテル基が置換した樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
エポキシ樹脂(a)の固形分含有量は、例えば、防錆塗料組成物の固形分の15質量%以上60質量%以下である。エポキシ樹脂(a)の上記含有量が15質量%以上であると、硬化性が向上し得る。エポキシ樹脂(a)の上記含有量が60質量%以下であると、塗膜中の顔料の相対的な割合が増えるため、隠蔽性が向上し得る。エポキシ樹脂(a)の上記含有量は、20質量%以上であってよく、25質量%以上であってよい。エポキシ樹脂(a)の上記含有量は、50質量%以下であってよく、40質量%以下であってよい。
エポキシ樹脂(a)の重量平均分子量は特に限定されない。エポキシ樹脂(a)の重量平均分子量は、硬化性(特に、5℃以下の低温での硬化性)が高くなる点で、6500以上10000以下であってよい。エポキシ樹脂(a)の重量平均分子量は、8500以上であってよい。エポキシ樹脂(a)の重量平均分子量は、10000以下であってよい。
エポキシ樹脂(a)のエポキシ当量は特に限定されない。エポキシ樹脂(a)のエポキシ当量は、低温での硬化性が高くなる点で、1000g/eq以上1400g/eq以下であってよい。エポキシ樹脂(a)のエポキシ当量は、1100g/eq以上であってよい。
ノボラック型のエポキシ樹脂(a)の市販品としては、例えば、商品名「EPICLON 5970-60」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、重量平均分子量9500、固形分60質量%、エポキシ当量1000g/eq以上、DIC社製)が挙げられる。ビスフェノールA型のエポキシ樹脂(a)の市販品としては、例えば、商品名「EPICLON 1040-70X」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固形分70質量%、エポキシ当量1300g/eq、DIC社製)が挙げられる。
・ポリアミン(b)
ポリアミン(b)は、硬化成分である。ポリアミン(b)は、エポキシ樹脂(a)と架橋反応して、硬化塗膜を形成する。
ポリアミン(b)は特に限定されない。ポリアミン(b)は、アミノ基が結合する環状脂肪族炭化水素基を有する脂環式ポリアミン(b-1)であってよく、アミノ基が結合する環状脂肪族炭化水素基を有さない非脂環式ポリアミン(b-2)であってよく、これら両方を含んでいてよい。脂環式ポリアミン(b-1)および非脂環式ポリアミン(b-2)を併用すると、防錆塗料組成物により形成される防錆塗膜上に他の塗膜を積層したとき、防錆塗膜の溶解やリフティングが抑制され易い。
脂環式ポリアミン(b-1)としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン、4,4’-イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、ノルボルナジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン(MDA)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
脂環式ポリアミン(b-1)の活性水素当量は、例えば、30g/eq以上150g/eq以下である。脂環式ポリアミン(b-1)の活性水素当量が30g/eq以上であると、硬化性が向上し得る。脂環式ポリアミン(b-1)の活性水素当量が150g/eq以下であると、遮断機能が向上し得る。脂環式ポリアミン(b-1)の活性水素当量は、32g/eq以上であってよく、33g/eq以上であってよい。脂環式ポリアミン(b-1)の活性水素当量は、100g/eq以下であってよく、50g/eq以下であってよい。遮断機能とは、水、酸素およびイオンなどの腐食因子が金属基材の表面に到達することを妨げる性能をいう。
非脂環式ポリアミン(b-2)としては、例えば、鎖状脂肪族ポリアミン、アミノ基が結合する芳香環を有するポリアミン(芳香族ポリアミン)、アミノ基が結合する複素環を有するポリアミン(複素環ポリアミン)が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
鎖状脂肪族ポリアミンとしては、例えば、アルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミンが挙げられる。アルキレンポリアミンは、例えば、HN-R-NH(式中、Rは、1個以上の炭素数1~10の炭化水素基で置換されていてもよい炭素数1~12の二価の炭化水素基であり、分岐していてよい。)で表される。アルキレンポリアミンとしては、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカンが挙げられる。ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンテトラミンが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
鎖状脂肪族ポリアミンとしてはまた、例えば、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3-ビス(2’-アミノエチルアミノ)プロパン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサミン、ビス(3-アミノエチル)アミン、ビスヘキサメチレントリアミン[HN(CHNH(CHNH]が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
芳香族ポリアミンとしては、例えば、ビス(アミノアルキル)ベンゼン、ビス(アミノアルキル)ナフタレン、ベンゼン環に結合した2個以上の1級アミノ基を有する化合物が挙げられる。芳香族ポリアミンとしては、例えば、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,4’-ジアミノビフェニル、2,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレンが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
複素環ポリアミンとしては、例えば、N-メチルピペラジン[CH-N(CHCHNH]、モルホリン[HN(CHCHO]、1,4-ビス-(8-アミノプロピル)-ピペラジン、ピペラジン-1,4-ジアザシクロヘプタン、1-(2’-アミノエチルピペラジン)、1-[2’-(2’’-アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジン、1,11-ジアザシクロエイコサン、1,15-ジアザシクロオクタコサンが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
非脂環式ポリアミン(b-2)の活性水素当量は、例えば、30g/eq以上550g/eq以下である。非脂環式ポリアミン(b-2)の活性水素当量は、32g/eq以上であってよく、35g/eq以上であってよい。非脂環式ポリアミン(b-2)の活性水素当量は、250g/eq以下であってよく、100g/eq以下であってよく、50g/eq以下であってよい。
ポリアミン(b)の固形分含有量は、例えば、防錆塗料組成物の固形分の0.6質量%以上15質量%以下である。ポリアミン(b)の上記含有量が0.6質量%以上であると、硬化性が向上し得る。ポリアミン(b)の上記含有量が15質量%以下であると、遮断機能が向上し得る。ポリアミン(b)の上記含有量は、0.8質量%以上であってよく、0.9質量%以上であってよい。ポリアミン(b)の上記含有量は、10質量%以下であってよく、5.0質量%以下であってよく、2.0質量%以下であってよい。
脂環式ポリアミン(b-1)の固形分含有量は、例えば、防錆塗料組成物の固形分の0.5質量%以上10質量%以下である。脂環式ポリアミン(b-1)の上記含有量が0.5質量%以上であると、特に低温での硬化性が向上し得る。脂環式ポリアミン(b-1)の上記含有量が10質量%以下であると、得られる塗膜のタック性(粘着性)が低減し、踏み込み性が向上し得る。脂環式ポリアミン(b-1)の上記含有量は、0.6質量%以上であってよく、0.7質量%以上であってよく、0.75質量%以上であってよい。脂環式ポリアミン(b-1)の上記含有量は、8.0質量%以下であってよく、6.0質量%以下であってよく、2.0質量%以下であってよい。踏み込み性とは、塗膜上を作業員が歩行したときに、当該塗膜に靴跡が形成され難く、塗膜の剥離が小さい性能をいう。
非脂環式ポリアミン(b-2)の固形分含有量は、例えば、防錆塗料組成物の固形分の0質量%以上10質量%以下である。非脂環式ポリアミン(b-2)の上記含有量が10質量%以下であると、得られる塗膜の低温時のタック性が低減し、踏み込み性が向上し得る。非脂環式ポリアミン(b-2)の上記含有量は、0.1質量%以上であってよく、0.15質量%以上であってよい。非脂環式ポリアミン(b-2)の上記含有量は、6.0質量%以下であってよく、3.0質量%以下であってよく、2.0質量%以下であってよく、1.0質量%以下であってよい。
・アルキルフェノール
硬化剤は、さらに、アルキルフェノールを含み得る。アルキルフェノールは、硬化性(特に低温硬化性)をさらに向上させる。
アルキルフェノールとしては、例えば、メチルフェノール(o,m,p-クレゾール)、エチルフェノール、ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、ジノニルフェノール等の1価フェノールが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。アルキルフェノールのアルキル基の炭素数は、例えば、1~10である。上記炭素数は、5以下であってよい。
アルキルフェノールの固形分含有量は、例えば、防錆塗料組成物の固形分の0.05質量%以上5.0質量%以下である。アルキルフェノールの上記含有量は、0.1質量%以上であってよく、0.15質量%以上であってよい。アルキルフェノールの上記含有量は、3.0質量%以下であってよく、2.0質量%以下であってよく、1.0質量%以下であってよく、0.4質量%以下であってよい。
・粉体(c)
粉体(c)は、防錆剤を含む。防錆剤として特定の金属硫酸塩(c-1)と亜鉛化合物(c-2)とを組み合わせて使用することにより、上記の通り、優れた防錆性が得られる。
粉体(c)の平均粒径は、例えば、0.1μm以上40μm以下である。粉体(c)の平均粒径は5μm以上であってよい。粉体(c)の平均粒径は20μm以下であってよい。
粉体(c)の平均粒径は、以下のように算出される。エポキシ樹脂(a)とポリアミン(b)と金属硫酸塩(c-1)とを所定の割合で含む組成物を100μm以上の乾燥塗膜となるように磨き鋼板に塗布し、その後、乾燥させる。得られた塗膜の厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する。画像中に観察される金属硫酸塩(c-1)200個の定方向最大径を測定し、その平均値を算出する。当該平均値が、金属硫酸塩(c-1)の平均粒径である。亜鉛化合物(c-2)および後述するアルカリ土類金属化合物(c-3)の平均粒径も同様にして求められる。
・金属硫酸塩(c-1)
金属硫酸塩(c-1)は、5℃の水100gに対する溶解量が0.1g以上である。金属硫酸塩(c-1)は、低温環境下であっても水に溶解し易いため、防錆層の形成を促進することができる。金属硫酸塩(c-1)の上記溶解量は、5.0g以上であってよく、10.0g以上であってよい。
金属硫酸塩(c-1)は、多価の金属カチオンと硫酸イオンとの塩であってよい。多価の金属カチオン(以下、多価カチオンと称する。)が、金属基材から生成する鉄イオンと共存することにより、緻密で電気化学的に安定な防錆層が形成される。
金属硫酸塩(c-1)を構成する金属としては、例えば、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属が挙げられる。これらは、多価カチオンを生成する。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
アルカリ土類金属は、周期表で第2族元素の元素である。アルカリ土類金属として、具体的には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(St)が挙げられる。遷移金属は、周期表で第3族元素から第11族元素の間に存在する金属元素である。遷移金属として、具体的には、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム、(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)、ラザホージウム(Rf)、ドブニウム(Db)、シーボーギウム(Sg)、ボーリウム(Bh)、ハッシウム(Hs)が挙げられる。ポスト遷移金属は、周期表でPブロック元素内にある金属元素である。ポスト遷移金属として、具体的には、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、タリウム(Tl)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、ポロニウム(Po)、アスタチン(At)が挙げられる。金属は、溶解性の観点から、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)であってよい。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
金属硫酸塩(c-1)としては、例えば、硫酸ニッケル、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸コバルト、硫酸クロム、硫酸銅、硫酸チタン、硫酸スズ、硫酸ジルコニウム、硫酸バナジウム、および、硫酸マンガンが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
金属硫酸塩(c-1)の含有量は、防錆塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.2質量%以上70質量%以下である。金属硫酸塩(c-1)の上記含有量が0.2質量%以上であると、金属硫酸塩(c-1)の効果が発揮される。金属硫酸塩(c-1)の上記含有量が70質量%以下であると、遮断機能がさらに向上し、また塗膜物性も向上する。
金属硫酸塩(c-1)の上記含有量は、1.0質量%以上であってよく、2.0質量%以上であってよく、4.0質量%以上であってよい。金属硫酸塩(c-1)の上記含有量は、40.0質量%以下であってよく、20.0質量%以下であってよく、15.0質量%以下であってよい。
・亜鉛化合物(c-2)
亜鉛化合物(c-2)は、塗膜に亜鉛イオンを供与する。亜鉛化合物(c-2)は、pH7.0で20℃の水100gに対する溶解量が0.03g未満であり、かつ、pH4.0で20℃の水100gに対する溶解量が0.03g以上である。
亜鉛化合物(c-2)は、被塗物の腐食進行によるpHの変化に伴い、徐々に塗膜中で溶解し、塩化物イオンなどと共に塩基性の塩化亜鉛を形成する。塩化亜鉛は緻密かつ防錆性の高い化合物であるため、遮断機能の高い防錆層を形成する。本開示では、金属硫酸塩(c-1)と併用するため、より多くの亜鉛イオンが溶出できて、防錆層の形成が一層促進する。
亜鉛化合物(c-2)は、ほぼ中性からアルカリ性の領域にかけて、20℃の水100gに対する溶解量が低い。そのため、腐食が進行し難い環境下では亜鉛化合物(c-2)が溶解することが抑制される。一方、酸性領域においては、亜鉛化合物(c-2)は、20℃の水100gに対して高い溶解量を有する。亜鉛化合物(c-2)は、金属硫酸塩(c-1)の溶解によってpHが低下することにより、溶解して、その効果を発揮する。
従来使用されている亜鉛末や亜鉛合金末は、犠牲防食作用により早急に溶解する。そのため、塗膜中の亜鉛イオンが少なくなって、十分な塩化亜鉛が形成されない。特に、鋼材表面に錆または塩分がある場合、錆に含まれる結晶水あるいは塩の溶解(潮解)からの水分供給により、亜鉛末や亜鉛合金末の犠牲防食機能がより働き易い。そのため、塗膜中の亜鉛は、塩化亜鉛の形成よりも犠牲防食のために消費されてしまい、高い防錆性は得られない。
亜鉛化合物(c-2)としては、例えば、酸化亜鉛、水酸化亜鉛および炭酸亜鉛が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。隠ぺい性の観点から、酸化亜鉛が含まれてよい。亜鉛化合物(c-2)には、金属亜鉛、亜鉛合金および硫酸亜鉛は含まれない。
亜鉛化合物(c-2)は、白色であってよい。この場合、仕上げ塗装の色が制限されないため、塗膜の色設計の自由度が高まる。
亜鉛化合物(c-2)の含有量は、防錆塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、10質量%以上200質量%以下である。亜鉛化合物(c-2)の上記含有量が10質量%以上であれば、亜鉛化合物(c-2)の効果が十分に発揮される。亜鉛化合物(c-2)の上記含有量が200質量%以下であると、成膜性が損なわれない。
亜鉛化合物(c-2)の上記含有量は、15.0質量%以上であってよく、20.0質量%以上であってよく、50.0質量%以上であってよい。亜鉛化合物(c-2)の上記含有量は、150.0質量%以下であってよく、120.0質量%以下であってよく、110.0質量%以下であってよい。
金属硫酸塩(c-1)の含有量と亜鉛化合物(c-2)の含有量との質量基準の比(c-1/c-2)は、例えば、0.08/99.92~90.00/10.00であってよい。これにより、亜鉛化合物(c-2)の電離が一層促進されて、塩化亜鉛が効率的に生成し得る。比(c-1/c-2)は、2.50/97.50~25.00/75.00であってよく、4.00/96.00~15.00/85.00であってよい。
・アルカリ土類金属化合物(c-3)
粉体(c)は、アルカリ土類金属化合物(c-3)を含み得る。アルカリ土類金属化合物(c-3)は、アルカリ土類金属の酸化物および水酸化物の少なくとも一方である。アルカリ土類金属化合物(c-3)は水に溶解し、アルカリ土類金属イオンおよびそのカウンターイオンを溶出する。アルカリ土類金属イオンは硫酸イオンと反応して、水に難溶性の塩を形成する。
硫酸イオンは、上記の通り防錆層の形成を促進するが、被塗物に直接作用すると、被塗物の腐食を助長し得る。アルカリ土類金属化合物(c-3)を金属硫酸塩(c-1)とともに配合することで、硫酸イオンによる被塗物の腐食が抑制されて、赤錆の発生が抑制される。
アルカリ土類金属化合物(c-3)の溶解量は特に限定されない。アルカリ土類金属化合物(c-3)は、20℃の水100gに対する溶解量が0.05g以上であり得る。アルカリ土類金属化合物(c-3)の上記溶解量は、0.1g以上であってよく、1.0g以上であってよい。急激な溶解に伴う空隙の発生を抑制するという観点から、アルカリ土類金属化合物(c-3)の上記溶解量は、5.0g以下であってよく、4.0g以下であってよい。
アルカリ土類金属は特に限定されず、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)のいずれであってもよい。アルカリ土類金属は、Ca、SrおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
アルカリ土類金属化合物(c-3)の具体例としては、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウムが挙げられる。アルカリ土類金属化合物(c-3)は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化バリウム、水酸化バリウムよりなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。なかでも、酸化カルシウムを含んでいてよい。
アルカリ土類金属化合物(c-3)の含有量は特に限定されない。アルカリ土類金属化合物(c-3)の含有量は、例えば、防錆塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.15質量%以上40質量%以下である。アルカリ土類金属化合物(c-3)の上記含有量が0.15質量%以上であると、アルカリ土類金属化合物(c-3)の効果が発揮されやすい。アルカリ土類金属化合物(c-3)の溶解に伴って、塗膜はアルカリ性になり得る。アルカリ土類金属化合物(c-3)の上記含有量が40質量%以下であると、pHの高まりによる塗膜の劣化が抑制される。
アルカリ土類金属化合物(c-3)の上記含有量は、0.2質量%以上であってよく、0.5質量%以上であってよく、1.0質量%以上であってよい。アルカリ土類金属化合物(c-3)の上記含有量は、15.0質量%以下であってよく、12.0質量%以下であってよい。
金属硫酸塩(c-1)の含有量とアルカリ土類金属化合物(c-3)の含有量との比(c-1/c-3)は特に限定されない。比(c-1/c-3)は、例えば、質量基準で4/96以上96/4以下であってよい。これにより、防錆性がさらに向上し得る。比(c-1/c-3)は、23/77以上であってよく、33/67以上であってよく、50/50以上であってよい。比(c-1/c-3)は、94/6以下であってよく、91/9以下であってよく、86/14以下であってよい。
・その他の防錆剤(c-4)
粉体(c)は、上記以外の防錆剤(c-4)を含み得る。他の防錆剤(c-4)は、本開示の効果を妨げない限り、特に限定されない。他の防錆剤(c-4)としては、防錆剤として一般に使用されるものが挙げられる。他の防錆剤(c-4)としては、例えば、亜鉛、亜鉛合金、亜リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、アルミ粉が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
他の防錆剤(c-4)の含有量は、例えば、防錆塗料組成物の固形分の8質量%以下である。他の防錆剤(c-4)の上記含有量は、5質量%以下であってよく、3質量%以下であってよく、0質量%であってよい。
・増粘剤(d)
増粘剤(d)は、防錆塗料組成物の粘度(後述の高せん断粘度および低せん断粘度を含む)を調整する。増粘剤(d)には、チクソトロピック剤、揺変剤、レオロジーコントロール剤、粘度調整剤が含まれる。
増粘剤(d)の含有量は、防錆塗料組成物に含まれる他の成分およびこれらの量に応じて適宜設定される。増粘剤(d)の含有量は、例えば、防錆塗料組成物の固形分の0.2質量%以上2.5質量%以下であってよい。増粘剤(d)の上記含有量は、0.4質量%以上であってよく、0.6質量%以上であってよい。増粘剤(d)の上記含有量は、2.0質量%以下であってよく、1.0質量%以下であってよい。
増粘剤は、非水系増粘剤であれば制限されない。増粘剤としては、例えば、無機系、有機系およびこれらの複合系が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
無機系増粘剤としては、例えば、微粒子シリカ系、粘土系鉱物、極微細沈降炭酸カルシウムが挙げられる。これらは、微分散コロイド状構造を形成する。
有機系増粘剤としては、例えば、金属石鹸系、水添ひまし油系、ポリアミドワックス系、酸化ポリエチレン系、植物油・重合油系、界面活性剤系が挙げられる。これらは網目構造、コロイド状分散構造、あるいは、顔料などへの吸着による凝集構造を形成する。
有機無機複合系増粘剤としては、例えば、有機ベントナイト系、表面処理炭酸カルシウム系が挙げられる。これらは微分散コロイド状構造を形成する。
なかでも、最適なチクソトロピー性が得られ易い点で、ポリアミドワックス系増粘剤であってよい。チクソトロピー性とは、低せん断時に粘度が発現し易く、高せん断時に粘度が発現し難い性質である。
・顔料
防錆塗料組成物は、顔料を含み得る。顔料としては、塗料組成物に通常配合されるものが制限なく挙げられる。顔料としては、例えば、体質顔料、着色顔料が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
防錆塗料組成物は、白色顔料を含んでいてよい。白色顔料は、上塗り塗装の色相に与える影響を抑えつつ、防錆塗料組成物の隠ぺい性を向上させる。防錆塗料組成物が十分な隠ぺい性を有する場合、白色顔料は含まれなくてよい。白色顔料として、代表的には二酸化チタンが挙げられる。白色顔料の含有量は特に限定されない。白色顔料の含有量は、例えば、防錆塗料組成物の固形分の5質量%以上60質量%以下であってよい。白色顔料の上記含有量は、10質量%以上であってよく、15質量%以上であってよく、20質量%以上であってよい。白色顔料の上記含有量は、40質量%以下であってよく、30質量%以下であってよい。
・体質顔料
体質顔料としては、例えば、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ケイ酸、ケイ酸塩、酸化アルミニウム水和物、硫酸カルシウム、石膏、雲母状酸化鉄(MIO)、ガラスフレーク、スゾライト・マイカ、クラライト・マイカが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。体質顔料の含有量は特に限定されない。
・白色以外の着色顔料
着色顔料としては、カーボンブラック、黒鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、黄色ニッケルチタン、黄色クロムチタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ウルトラマリンブルー、キナクリドン類、アゾ系赤・黄色顔料が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。着色顔料の含有量は特に限定されない。
粉体(C)と各種顔料との合計の含有量は、例えば、顔料体積濃度(PVC)として、30%以上60%以下である。これにより、隠蔽性を確保しながら、塗膜割れの発生や付着性の低下が抑制される。PVCは、防錆塗料組成物の固形分の体積に占める、当該粉体(C)および各種顔料の合計の体積百分率(%)である。
・その他の樹脂
防錆塗料組成物は、エポキシ樹脂(a)以外の樹脂を含み得る。他の樹脂としては、例えば、キシレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
・溶剤
防錆塗料組成物は、溶剤を含み得る。溶剤の含有量は、例えば、防錆塗料組成物の総質量の5質量%以上50質量%以下である。
溶剤としては、当該分野において通常用いられるものが挙げられる。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、イソブチルアルコール、メチルエチルケトン、弱溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
防錆塗料組成物は、弱溶剤を含んでいてよい。弱溶剤の含有量は、例えば、防錆塗料組成物の総質量の5質量%以上50質量%以下である。
弱溶剤は、脂肪族炭化水素化合物である。弱溶剤としては、例えば、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソノナン、n-デカン、n-ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタン等の単成分系;ミネラルスピリット、ホワイトスピリット、ミネラルターペン、イソパラフィン、ソルベント灯油、芳香族ナフサ、VM&Pナフサ、ソルベントナフサ等の混合系が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
弱溶剤の市販品としては、「ソルベッソ100」、「ソルベッソ150」、「ソルベッソ200」(いずれも商品名、エッソ石油社製)、「スワゾール310」、「スワゾール1000」、「スワゾール1500」(いずれも商品名、コスモ石油社製)が挙げられる。
・その他
防錆塗料組成物は、その他の成分を含み得る。他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、各種添加剤が挙げられる。
シランカップリング剤は、防錆塗膜と金属製の被塗物との接着性を向上させる。シランカップリング剤は、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基の少なくとも一方を有していてよい。シランカップリング剤の含有量は、防錆塗料組成物の総質量に対して、0.5質量%以上5質量%以下であってよい。
添加剤としては、例えば、タレ止め剤、沈降防止剤、色分れ防止剤、消泡剤、ワキ防止剤、レベリング剤、ツヤ消し剤が挙げられる。
・調製方法
2液形の防錆塗料組成物は、主剤および硬化剤と、必要に応じて希釈成分等とを、上記の方法で混合することにより、調製される。主剤と硬化剤との混合は、通常、使用の直前に行われる(例えば、各剤を混合した後、60分以内に使用される)。希釈成分としては、上記溶剤を同じく例示できる。
主剤は、上記成分を当業者に知られた方法で混合することにより、調製される。混合には、例えば、ペイントシェーカー、ミキサー等の通常用いられる混合装置が用いられる。硬化剤の調製方法も同様である。
・せん断粘度
本開示の防錆塗料組成物は、固形分濃度69質量%および温度25℃の条件で、粘度測定装置レオメーターを用いて、せん断速度1000(1/s)でせん断応力を加え始めてから1分後の粘度が0.1Pa・s以上1.2Pa・s以下であってよく、せん断速度0.1(1/s)でせん断応力を加え始めてから1分後の粘度が40Pa・s以上500Pa・s以下であってよい。
せん断速度1000(1/s)は、塗装時に防錆塗料組成物に加わるせん断応力を想定し、設定されている。防錆塗料組成物のせん断速度1000(1/s)でせん断応力を加え始めてから1分後の粘度(以下、「高せん断粘度」と称する。)が1.2Pa・s以下であるということは、防錆塗料組成物は、塗装時に十分低粘度であることを示す。そのため、鋼材表面の凹部にまで防錆塗料組成物が浸透することができる。高せん断粘度が0.1Pa・s以上であるということは、防錆塗料組成物は、塗装時に適度な粘性を有することを示す。そのため、鋼材表面の凸部に防錆塗料組成物は付着して、留まることができる。
せん断速度0.1(1/s)は、塗装後、レベリング時に防錆塗料組成物に加わるせん断応力を想定し、設定されている。防錆塗料組成物のせん断速度0.1(1/s)でせん断応力を加え始めてから1分後の粘度(以下、「低せん断粘度」と称する。)が40Pa・s以上であるということは、防錆塗料組成物は、レベリング時に適度な粘性を有することを示す。そのため、防錆塗料組成物が鋼材表面の凸部から流れ落ちることなく、凸部を覆った状態で硬化することができる。低せん断粘度500Pa・s以下であるということは、防錆塗料組成物は、レベリングできる程度に低粘度であることを示す。そのため、防錆塗料組成物により、平滑な防錆塗膜が得られて、外観が向上する。
防錆塗料組成物は、塗装時およびレベリング時にそれぞれ適切な粘度を有するため、例えば、鋼材表面の凹部および凸部を覆うことができる。その結果、さらなる錆の発生が抑制されて、防錆性が一層向上する。
高せん断粘度および低せん断粘度は、固形分濃度69質量%に調整された防錆塗料組成物を用いて、温度25℃(液温が25℃±3℃)の環境下で、粘度測定装置レオメーター(例えば、Anton Paar社製、製品名「MCR-302」)を用いて測定される。濃度調整は、適切な溶媒を添加したり、すでに含まれている溶媒を除去したりすることにより行われる。
高せん断粘度は、せん断速度1000(1/s)で濃度調整後の防錆塗料組成物にせん断応力を加え始めてから1分経過後の粘度(Pa・s)である。高せん断粘度は、0.2Pa・s以上であってよく、0.40Pa・s以上であってよい。高せん断粘度は、1.00Pa・s以下であってよく、0.90Pa・s以下であってよい。
低せん断粘度は、せん断速度0.1(1/s)で濃度調整後の防錆塗料組成物にせん断応力を加え始めてから1分経過後の粘度(Pa・s)である。低せん断粘度は、70Pa・s以上であってよく、100Pa・s以上であってよい。低せん断粘度は、250Pa・s以下であってよく、150Pa・s以下であってよい。
高せん断粘度および低せん断粘度は、上記の増粘剤によって調整できる。
・色相
防錆塗料組成物は、通常、下塗り(防錆)として用いられる。近年、用途、嗜好の多様化およびオリジナリティの追求により、仕上げ塗装に要求される意匠は多岐にわたる。仕上げ塗装の意匠を、防錆の色に制限されることなく、選択できることは、消費者に対する重要な訴求ポイントの一つである。
本開示の防錆塗料組成物により形成される厚さ60μmの防錆塗膜のL表色系におけるL値、a値およびb値は、
≧70、
0≦a≦5.0、かつ
0≦b≦5.0
を満たしてよい。
上記を満たす防錆塗膜は、淡彩色の上塗り塗装に対応できる色相を有する。つまり、色設計の自由度が高く、仕上げ塗装を所望の意匠にすることができる。例えば、白色の亜鉛化合物(c-2)を使用することにより、防錆塗膜の色相を上記範囲に調整できる。
上記のL値、a値およびb値は、防錆塗料組成物を、脱脂処理を行ったSPCC-SB(JIS G 3141:2017に規定された冷間圧延鋼板 ブライト仕上げ)に乾燥膜厚が60μmになるようにスプレーで塗装した後、23℃で1週間、乾燥させて得られる防錆塗膜の数値である。L値、a値およびb値は、分光測色計(例えば、コニカミノルタ社製、CR-400)により取得できる。防錆塗料組成物は、白色顔料(代表的には、酸化チタン)を含み得る。
(塗装物品)
本開示の一実施形態の塗装物品は、表面に錆を有する鋼材と、鋼材上に、本開示の防錆塗料組成物により形成された防錆塗膜と、を備える。
・鋼材
鋼材は、鋼を圧延(圧延鋼材)、鍛造(鍛鋼品)、鋳造(鋳鋼品)などにより成形および/または加工した鉄鋼一次製品であってよい。鋼材として、代表的には、板状の鋼材(鋼板)が挙げられる。鋼板として、具体的には、冷延鋼板、熱延鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム合金系めっき鋼板、亜鉛-鉄合金系めっき鋼板、亜鉛-マグネシウム合金系めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、アルミニウム-シリコン合金系めっき鋼板、錫系めっき鋼板が挙げられる。鋼材は、塗装されたカラー鋼板、樹脂層を有する被覆鋼板などの鉄鋼二次製品であってよい。
被塗物としては、具体的には、船舶、車両(例えば、鉄道車両、大型車両)、航空機、橋梁、海上構築物、プラント、タンク(例えば、石油タンク)、パイプ、鋼管、鋳鉄管等、鋼製構造物、建築物が挙げられる。
鋼材は、ブラスト処理、さび止め塗装、ショッププライマー塗装、有機あるいは無機ジンクリッチプライマー塗装が施されたものであってもよい。鋼板は、旧塗膜(上記の防錆塗膜が形成される前に形成されていた、当該防錆塗膜以外の塗膜)を有していてよい。
上記のせん断粘度を有する防錆塗料組成物は、特に、錆によって表面に凹凸を有する鋼材に好適である。防錆塗料組成物は塗装時およびレベリング時にそれぞれ適切な粘度を有するため、防錆塗膜は、鋼材表面の錆によって形成されている凹部および凸部、すなわち鋼材の表面の錆全体を覆うことができる。
防錆塗膜が鋼材表面の錆を覆っているとは、塗装物品を上面視した時に、錆が直接的に視認されないことを意味する。
錆の厚さは特に限定されないが、10μm以上200μm以下であってよい。錆の厚さが10μm以上であっても、防錆塗膜を鋼材の表面の錆全体を覆うように形成することができる。防錆性の観点から、錆の厚さは200μm以下であってよい。錆の厚さは、100μm以下であってよく、50μm以下であってよい。本開示の防錆塗料組成物は、200μmの厚さの錆びを有する鋼材に対しても、高い防錆性を示す。
錆の厚さは、電磁誘導式の膜厚計(例えば、Kett社製、商品名「LZ-370」を用いて、以下のようにして測定される。まず、錆が発生している鋼材の錆を十分に除去した部分においてゼロ点校正を行う。その後、錆のある任意の5カ所の地点における厚さを測定し、その平均値を錆の厚さとする。錆が発生する前の鋼材が入手できる場合には、ゼロ点校正は、錆が発生する前の鋼材の任意の地点で行ってよい。
錆とは、鋼材に含まれる金属原子の酸化還元反応によって生成する腐食物である。錆は、沈殿皮膜、酸化皮膜、水酸化被膜、オキシ水酸化被膜などの腐食生成物を含む。錆は、通常、鋼材の表面に膜状に存在し、孔食の形態で存在する場合もある。鋼材の表面とは、例えば外気に触れる面であって、目視できない部分および触ることのできない部分を含み得る。錆の主な成分としては、酸化鉄、水酸化鉄、オキシ水酸化鉄、炭酸鉄などの鉄化合物が挙げられる。錆は、さらに亜鉛などの非鉄金属カチオンと、リン酸、モリブデン酸イオン、硫酸イオンなどのアニオンとからなる塩を含み得る。錆の表面に、樹脂層や塗膜が残存していてもよい。
本開示の他の一実施形態の塗装物品は、表面に塩分を有する鋼材と、鋼材上に、本開示の防錆塗料組成物により形成された防錆塗膜と、を備える。鋼材は、塩分とともに上記の錆を有していてよい。鋼材の詳細は上記と同様である。
鋼材表面の塩分濃度は特に限定されない。鋼材表面の塩分濃度は、例えば、5mg/m以上であってよく、30mg/m以上であってよく、50mg/m以上であってよく、75mg/m以上であってよく、100mg/m以上であってよく、200mg/m以上であってよい。本開示の防錆塗料組成物は、高い濃度の塩分を有する鋼材に対しても、高い防錆性を示す。
鋼材表面の塩分濃度は、以下のようにして得られる。まず、測定対象を固定した測定セルに純水を注入する。注入後、装置の攪拌機能を開始させる。この攪拌開始を測定開始点とする。測定開始から1分後の水の電気伝導率を測定する。この測定値を水可溶性塩分濃度または塩化ナトリウム濃度に換算して得られる数値を、鋼材表面の塩分濃度(mg/m)とする。塩分濃度は、例えば、サンコウ電子研究所製の製品名「表面塩分計SNA―3000」により得られる。
・防錆塗膜
防錆塗料組成物により、優れた防錆性を有する防錆塗膜が形成される。防錆塗膜の厚さは特に限定されず、被塗物の種類、用途等に応じて適宜設定できる。防錆塗膜の乾燥膜厚は、例えば、30μm以上300μm以下である。防錆塗料組成物を複数回塗装して、積層構造の防錆塗膜が形成されてもよい。
防錆塗膜の乾燥膜厚は、60μm以上であってよく、120μm以上であってよい。防錆塗膜の乾燥膜厚は、240μm以下であってよく、180μm以下であってよい。
防錆塗膜の乾燥膜厚は、電磁誘導式の膜厚計(例えば、Kett社製、商品名「LZ-370」を用いて、以下のようにして測定される。まず、錆が発生する前の鋼材の任意の地点、あるいは塗装後の鋼材の防錆塗膜を十分に除去した部分においてゼロ点校正を行う。その後、防錆塗膜ある任意の5カ所の地点における厚さを測定し、その平均値から、上記の方法で取得された錆の厚さを引いた値を、防錆塗膜の乾燥膜厚とする。
乾燥膜厚はまた、防錆塗料組成物の塗布量、比重、固形分および揮発分の比重に関する情報をもとに、下記式から理論的に算出されてよい。
y=x×[(1/dt)-{(100-NV)/(100×ds)}]
x:塗付量[g/m
y:乾燥膜厚の厚さ[μm]
z:ウェット膜厚[μm]
dt:塗料の比重[g/cm
NV:塗料の加熱残分[wt%]
ds:揮発分(塗料内の溶剤分)の比重[g/cm
また、乾燥前の防錆塗膜の膜厚(ウェット膜厚)z(μm)は、z=x/dtにより算出できる。
・他の塗膜
防錆塗膜上に、他の塗膜が形成されていてよい。他の塗膜は、例えば、いわゆる上塗り塗料および/または機能性塗料により形成される。
上塗り塗料組成物としては、例えば、油性系塗料、長油性フタル酸樹脂塗料、シリコンアルキッド樹脂塗料、フェノール樹脂塗料、塩化ゴム系樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、変性エポキシ樹脂塗料、タールエポキシ樹脂塗料、塩化ビニル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、シリコン変性樹脂塗料が挙げられる。機能性塗料としては、例えば、汚染物質に対してセルフクリーニング機能を発現する光触媒塗料、海洋生物等の付着を防止する防汚塗料が挙げられる。
(塗装物品の製造方法)
本開示の塗装物品は、表面に錆または塩分を有する鋼材上に、本開示の防錆塗料組成物を塗装することを備える方法により製造される。
・塗装方法
塗装方法は特に限定されない。防錆塗料組成物は、刷毛、ローラー、スプレー等の一般的な方法により、鋼材上に塗装される。
防錆塗料組成物は、自然乾燥され得る。自然乾燥は、常温(23℃±3℃)で、2時間以上、24時間以上、さらには1週間以上行われてよい。
以下、実施例を用いて本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態は実施例により何ら制限されるものではない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り質量基準による。
[製造例1]エポキシ樹脂(a)の調製
温度計、撹拌装置および冷却管が取り付けられた水分離装置を備えた2L反応器に、p-tert-ブチルフェノールノボラック樹脂(商品名:ヒタノール#1133、日立化成工業社製)250g、オクチルフェノールノボラック樹脂(商品名:ヒタノール#1501、日立化成工業社製)250gおよびエピクロルヒドリン1440gを仕込み、撹拌して均一溶液にした。次いで、48質量%水酸化ナトリウム268gを60~110℃で2時間かけて滴下した。この間、系内で生成した水分はエピクロルヒドリンと共沸させて水分離装置で系外へ除去しながら、エピクロルヒドリンを系内で還流させた。滴下終了後、100~120℃で2時間熟成し、理論水量が流出した時点で反応を終了させた。
得られたエポキシ化合物のエピクロルヒドリン溶液にキシレン150gを加え、大量の水で洗浄した。生成した食塩および過剰の水酸化ナトリウムを除去した後、3質量%リン酸水溶液で中和した。次いで、減圧下でエピクロルヒドリンおよびキシレンを留去し、これに高沸点パラフィン系溶剤(商品名:スワゾール310、コスモ石油社製)を460g加え、液状のエポキシ樹脂(a)(ノボラック型エポキシ樹脂)を得た。エポキシ樹脂(a)の重量平均分子量は8500、エポキシ当量は1010g/eq、固形分は60質量%であった。
[実施例1~108、比較例1~47]
表1~13に示される配合処方に従って、主剤および硬化剤をそれぞれ調製した。主剤および硬化剤を混合して、防錆塗料組成物を調製した。表1~13の配合量は、特に断りのない限り、防錆塗料組成物の固形分に対する質量割合である。
表1~13に示される各成分の詳細は次のとおりである。
ポリアミン(b)
・脂環式ポリアミン(b-1):1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、東京化成社製、活性水素当量34.2g/eq、重量平均分子量142.24
・非脂環式ポリアミン(b-2):m-キシリレンジアミン、東京化成社製、活性水素当量35.5g/eq、重量平均分子量136.19
アルキルフェノール
・o-tert-ブチルフェノール
増粘剤
・商品名「F―9050」、楠本化成社製、脂肪族アマイドワックスと酸化ポリオレフィンワックスとの混合物
消泡剤
・商品名「ディスパロン1958」、楠本化成社製
弱溶剤
・商品名「ソルベッソ100」、Exxon Mobil社製
金属硫酸塩(c-1)
カッコ内に5℃の水100gに対する溶解量を示す。
硫酸アルミニウム(32.2g)
硫酸ニッケル・6水和物(39.1g)
硫酸マグネシウム(25.4g)
亜鉛化合物(c-2)
カッコ内に、pH4.0、pH7.0で20℃の水100gに対する溶解量を示す。
炭酸亜鉛(pH4.0:>8.13g、pH7.0:0.000470g)
酸化亜鉛(pH4.0:>12.5g、pH7.0:0.000394g)
水酸化亜鉛(pH4.0:>13.1g、pH7.0:0.000425g)
アルカリ土類金属化合物(c-3)
カッコ内に、20℃の水100gに対する溶解量を示す。
酸化カルシウム(0.112g)
酸化バリウム(3.48g)
水酸化カルシウム(0.173g)
水酸化バリウム(3.89g)
各種粉体(c)の平均粒径は、いずれも0.1~40μmであった。
[測定方法]
(i)高せん断粘度および低せん断粘度
商品名「ソルベッソ100」を用いて、防錆塗料組成物の固形分濃度(NV)を69.0質量%になるように調整(希釈)して、せん断粘度測定用の試料を得た。
温度25℃の環境下で、粘度測定装置レオメーター(Anton Paar社製、製品名「MCR-302」)を用いて、せん断速度1000(1/s)で試料にせん断応力を加え始めてから1分経過後の粘度(Pa・s)と、せん断速度0.1(1/s)で試料にせん断応力を加え始めてから1分経過後の粘度(Pa・s)とを、それぞれ測定した。
(ii)鋼板表面の錆の厚さ
電磁誘導式の膜厚計(Kett社製、商品名「LZ-370」)を用いて、錆が発生する前のTP技研製SS400グリッドブラスト鋼板の任意の地点においてゼロ点校正を行い、次いで、錆のある任意の5カ所の地点における厚さを測定し、その平均値を錆の厚さとした。
(iii)防錆塗膜の膜厚
電磁誘導式の膜厚計(Kett社製、商品名「LZ-370」)を用いて、錆が発生する前のTP技研製SS400グリッドブラスト鋼板の任意の地点においてゼロ点校正を行った。塗装を行った後、防錆塗膜ある任意の5カ所の地点における厚さを測定し、その平均値から、上記の方法で取得された錆の厚さを引いた値を、防錆塗膜の乾燥膜厚とした。
[評価]
防錆塗料組成物を、以下の方法により評価した。評価結果を表1~13に示す。
(1)防錆性A(錆を有する鋼板の防錆性)
岡山県玉野市の沿岸部に、TP技研製SS400グリッドブラスト鋼板を3か月間暴露して、錆を有する鋼板を得た。錆板に4種ケレン処理を施して、厚さ30μmの錆板を得た。次いで、イオン交換水による水洗、または塩化ナトリウム水溶液にて、鋼板表面の塩分濃度を調整した。これにより、表面塩分濃度が異なる7種(塩分濃度5±5mg/m、30±5mg/m、50±5mg/m、100±30mg/m、200±30mg/m、500±100mg/m、1000±200mg/m)の試験板を得た。表面塩分濃度として、サンコウ電子研究所製の表面塩分計SNA―3000を用いて、測定開始から1分後の塩分濃度(mg/m)の値を採用した。
防錆塗料組成物を、各試験板にスプレーで塗装した後、23℃で1週間、乾燥させて、厚さ60μmの防錆塗膜を有する塗装板を作製した。
得られた塗装板(75mm×150mm)に対して、JIS K5600-7-9:2006に規定されるサイクル腐食試験方法のサイクルA法(CCT)に準じて複合サイクル腐食試験を行った。具体的には、複合サイクル腐食試験機(スガ試験機社製、型式CCT-1)で150サイクルの腐食促進試験を行った。試験後に発生した点錆の数を評価した。上記7種の試験板すべてがレベル7以上であると、高い防錆性を有する。
(評価基準)
10:0個
9:10個未満
8:10個以上20個未満
7:20個以上50個未満
6:50個以上100個未満
5:100個以上200個未満
4:200個以上400個未満
3:400個以上600個未満
2:600個以上800個未満
1:800個以上
(2)防錆性B(塩分を有する鋼板の防錆性)
岡山県玉野市の沿岸部に、TP技研製SS400グリッドブラスト鋼板を12か月間暴露して、鋼板に錆を発生させた。適宜、不織布研磨材(商品名「マジックロン」、三共理化学株式会社製)にて錆の一部を除去して、それぞれ30±2μm、40±5μm、60±5μm、80±5μm、100±10μmの厚さの錆を有する5種の鋼板を準備した。次いで、塩化ナトリウム水溶液にて、鋼板表面の塩分濃度を50±5mg/mに調整した。
上記の鋼板を用いたこと以外は、防錆性Aと同様にして、塗装板を作成し、腐食促進試験および評価を行った。上記5種の試験板すべてがレベル7以上であると、高い防錆性を有する。
(3)色相
防錆塗料組成物を、脱脂処理を行ったSPCC-SB(JIS G 3141:2017に規定された冷間圧延鋼板 ブライト仕上げ)にスプレーで塗装した後、23℃で1週間、乾燥させて、厚さ60μmの防錆塗膜を有する塗装板を作製した。
得られた塗装板のL表色系におけるL値、a値およびb値を、分光測色計(コニカミノルタ社製、CR-400)を用いて測定した。評価Aは、防錆塗料組成物が白色から淡色であることを意味し、色設計の自由度が高いことを示す。評価Bは、防錆塗料組成物が有色であることを意味している。
(評価基準)
A:L≧70、-5.0≦a,b≦5.0
B:L<70、-5.0>a,b、a,b>5.0
実施例1~108の防錆塗料組成物を用いて形成された防錆塗膜は、鋼板上の錆全体を覆っており、防錆性Aおよび防錆性Bのいずれもレベル7以上であった。特に100mg/m以上の表面塩分量を有する錆鋼板に対しても、高い防錆性を有していた。
亜鉛化合物(c-2)の含有量の少ない例に関し、比較例1、6、36および41の防錆塗料組成物を用いて形成された防錆塗膜は、100±30mg/m以上の表面塩分量を有する錆鋼板に対する防錆性Aに劣っていた。比較例11の防錆塗料組成物を用いて形成された防錆塗膜は、200±30mg/m以上の表面塩分量を有する錆鋼板に対する防錆性Aに劣っていた。
亜鉛化合物(c-2)の含有量の多い例に関し、比較例2の防錆塗料組成物を用いて形成された防錆塗膜は、100±30mg/m以上の表面塩分濃度を有する錆鋼板に対する防錆性Aに劣っていた。比較例7、12、37および42の防錆塗料組成物を用いて形成された防錆塗膜は、200±30mg/m以上の表面塩分濃度を有する錆鋼板に対する防錆性Aに劣っていた。
亜鉛化合物(c-2)を含まず、亜鉛末を使用した例に関し、比較例3~5、38~40、43の防錆塗料組成物を用いて形成された防錆塗膜は、100±30mg/m以上の表面塩分濃度を有する錆鋼板に対する防錆性Aに劣っていた。比較例8~10、13~15、30、44の防錆塗料組成物を用いて形成された防錆塗膜は、200±30mg/m以上の表面塩分濃度を有する錆鋼板に対する防錆性Aに劣っていた。比較例45は防錆塗料組成物を用いて形成された防錆塗膜は、50±5mg/m以上の表面塩分量を有する錆鋼板に対する防錆性Aに劣っていた。
亜鉛末の含有量が特に多い比較例5、40、45は、60±5μmの厚さ以上、比較例4、10、15、30、44は、80±5μm以上、比較例9、14、39は、100±10μm以上の厚さの錆を有する鋼板の防錆性Bも劣っていた。これは、塗料の低せん断粘度が50Pa・s未満であったため、さびの凸部分の塗膜厚みが薄くなってしまったことに起因すると考える。また、これらの例は、目標の色相基準を満たさなかった。
亜鉛化合物(c-2)を含まず、アルカリ土類金属化合物(c-3)を含有する例に関し、比較例16、18~21、23~26、28、29は、100±30mg/m以上の表面塩分濃度を有する錆鋼板の防錆性Aが劣っていた。比較例17、22、27は200±30mg/m以上の表面塩分濃度を有する錆鋼板の防錆性Aが劣っていた。
金属硫酸塩(c-1)を含まず、亜鉛化合物(c-2)のみを含む比較例31~35は、100±30mg/m以上の表面塩分濃度を有する錆鋼板の防錆性Aが劣っていた。
金属硫酸塩(c-1)の含有量の多い比較例46、47では、100±30mg/m以上の表面塩分濃度を有する錆鋼板に対する防錆性Aに劣っていた。また、これらは60±5μm以上の厚さの錆を有する鋼板の防錆性Bも劣っていた。これは、過度に含有した金属硫酸塩によって亜鉛化合物が急激に溶解してしまったことにより、塗膜の遮断機能が低下したためと考えられる。
本発明は、下記態様を提供する。
[1]
エポキシ樹脂(a)と、
ポリアミン(b)と、
粉体(c)と、
増粘剤(d)と、を含む、防錆塗料組成物であって、
前記粉体(c)は、
5℃の水100gに対する溶解量が0.1g以上の金属硫酸塩(c-1)と、
pH7.0で20℃の水100gに対する溶解量が0.03g未満であり、かつ、pH4.0で20℃の水100gに対する溶解量が0.03g以上である亜鉛化合物(c-2)と、を含み、
前記金属硫酸塩(c-1)の含有量は、前記防錆塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.2質量%以上70質量%以下であり、
前記亜鉛化合物(c-2)の含有量は、前記防錆塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、10質量%以上200質量%以下である、防錆塗料組成物。
[2]
前記金属硫酸塩(c-1)の含有量と前記亜鉛化合物(c-2)の含有量との質量基準の比(c-1/c-2)が、0.08/99.92~90.00/10.00である、上記[1]の防錆塗料組成物。
[3]
表面に錆を有する鋼材用である、上記[1]または[2]の防錆塗料組成物。
[4]
表面に塩分を有する鋼材用である、上記[1]~[3]いずれかの防錆塗料組成物。
[5]
前記金属硫酸塩(c-1)は、多価の金属カチオンと硫酸イオンとの塩である、上記[1]~[4]いずれかの防錆塗料組成物。
[6]
前記金属硫酸塩(c-1)は、硫酸ニッケル、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸コバルト、硫酸クロム、硫酸銅、硫酸チタン、硫酸スズ、硫酸ジルコニウム、硫酸バナジウム、硫酸マンガンよりなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[1]~[5]いずれかの防錆塗料組成物。
[7]
前記亜鉛化合物(c-2)は、酸化亜鉛、水酸化亜鉛および炭酸亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[1]~[6]いずれかの防錆塗料組成物。
[8]
前記粉体(c)は、さらに、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物の少なくとも一方であるアルカリ土類金属化合物(c-3)を含む、上記[1]~[7]いずれかの防錆塗料組成物。
[9]
前記アルカリ土類金属化合物(c-3)の含有量は、前記防錆塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.15質量%以上40質量%以下である、上記[8]の防錆塗料組成物。
[10]
前記アルカリ土類金属化合物(c-3)は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化バリウム、水酸化バリウムよりなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[8]または[9]の防錆塗料組成物。
[11]
固形分濃度69質量%および温度25℃の条件で、粘度測定装置レオメーターを用いて、せん断速度1000(1/s)でせん断応力を加え始めてから1分後の粘度が、0.1Pa・s以上1.2Pa・s以下であり、せん断速度0.1(1/s)でせん断応力を加え始めてから1分後の粘度が40Pa・s以上500Pa・s以下である、上記[1]~[10]いずれかの防錆塗料組成物。
[12]
表面に錆を有する鋼材と、
前記鋼材上に、上記[1]~[11]のいずれかの防錆塗料組成物により形成された防錆塗膜と、を備える、塗装物品。
[13]
前記鋼材の表面の前記錆の厚さが、10μm以上200μm以下である、上記[12]の塗装物品。
[14]
前記防錆塗膜が、前記鋼材の表面の前記錆を覆っている、上記[12]または[13]の塗装物品。
[15]
表面に塩分を有する鋼材と、
前記鋼材上に、上記[1]~[11]のいずれかの防錆塗料組成物により形成された防錆塗膜と、を備える、塗装物品。
[16]
表面に錆を有する鋼材上に、上記[1]~[11]のいずれかの防錆塗料組成物を塗装することを備える、塗装物品の製造方法。
[17]
表面に塩分を有する鋼材上に、上記[1]~[11]のいずれかの防錆塗料組成物を塗装することを備える、塗装物品の製造方法。
本発明によれば、錆または塩分が残存する鋼材に対しても優れた防錆性を付与することのできる防錆塗料組成物が提供される。本発明に係る防錆塗料組成物は、特に、プラント、橋梁、鉄塔および建築物などの大型建造物で使用される鋼材の下塗り塗装に適している。

Claims (17)

  1. エポキシ樹脂(a)と、
    ポリアミン(b)と、
    粉体(c)と、
    増粘剤(d)と、を含む、防錆塗料組成物であって、
    前記粉体(c)は、
    5℃の水100gに対する溶解量が0.1g以上の金属硫酸塩(c-1)と、
    pH7.0で20℃の水100gに対する溶解量が0.03g未満であり、かつ、pH4.0で20℃の水100gに対する溶解量が0.03g以上である亜鉛化合物(c-2)と、を含み、
    前記金属硫酸塩(c-1)の含有量は、前記防錆塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.2質量%以上70質量%以下であり、
    前記亜鉛化合物(c-2)の含有量は、前記防錆塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、10質量%以上200質量%以下である、防錆塗料組成物。
  2. 前記金属硫酸塩(c-1)の含有量と前記亜鉛化合物(c-2)の含有量との質量基準の比(c-1/c-2)が、0.08/99.92~90.00/10.00である、請求項1に記載の防錆塗料組成物。
  3. 表面に錆を有する鋼材用である、請求項1に記載の防錆塗料組成物。
  4. 表面に塩分を有する鋼材用である、請求項1に記載の防錆塗料組成物。
  5. 前記金属硫酸塩(c-1)は、多価の金属カチオンと硫酸イオンとの塩である、請求項1に記載の防錆塗料組成物。
  6. 前記金属硫酸塩(c-1)は、硫酸ニッケル、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸コバルト、硫酸クロム、硫酸銅、硫酸チタン、硫酸スズ、硫酸ジルコニウム、硫酸バナジウム、硫酸マンガンよりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の防錆塗料組成物。
  7. 前記亜鉛化合物(c-2)は、酸化亜鉛、水酸化亜鉛および炭酸亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の防錆塗料組成物。
  8. 前記粉体(c)は、さらに、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物の少なくとも一方であるアルカリ土類金属化合物(c-3)を含む、請求項1に記載の防錆塗料組成物。
  9. 前記アルカリ土類金属化合物(c-3)の含有量は、前記防錆塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.15質量%以上40質量%以下である、請求項8に記載の防錆塗料組成物。
  10. 前記アルカリ土類金属化合物(c-3)は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化バリウム、水酸化バリウムよりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項8に記載の防錆塗料組成物。
  11. 固形分濃度69質量%および温度25℃の条件で、粘度測定装置レオメーターを用いて、せん断速度1000(1/s)でせん断応力を加え始めてから1分後の粘度が、0.1Pa・s以上1.2Pa・s以下であり、せん断速度0.1(1/s)でせん断応力を加え始めてから1分後の粘度が40Pa・s以上500Pa・s以下である、請求項1に記載の防錆塗料組成物。
  12. 表面に錆を有する鋼材と、
    前記鋼材上に、請求項1~11のいずれか一項に記載の防錆塗料組成物により形成された防錆塗膜と、を備える、塗装物品。
  13. 前記鋼材の表面の前記錆の厚さが、10μm以上200μm以下である、請求項12に記載の塗装物品。
  14. 前記防錆塗膜が、前記鋼材の表面の前記錆を覆っている、請求項13に記載の塗装物品。
  15. 表面に塩分を有する鋼材と、
    前記鋼材上に、請求項1~11のいずれか一項に記載の防錆塗料組成物により形成された防錆塗膜と、を備える、塗装物品。
  16. 表面に錆を有する鋼材上に、請求項1~11のいずれか一項に記載の防錆塗料組成物を塗装することを備える、塗装物品の製造方法。
  17. 表面に塩分を有する鋼材上に、請求項1~11のいずれか一項に記載の防錆塗料組成物を塗装することを備える、塗装物品の製造方法。
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