JP7652414B2 - 液体水素タンク用断熱材、液体水素タンク及び断熱材施工方法 - Google Patents
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Description
まず、水素の着火エネルギーが炭化水素の1/10と低い上、爆発範囲が4.0~75.6vol%ときわめて広い。
次に、低温タンクと防液堤との間の空間には燃焼防止のために不活性の窒素ガスが封入されているが、液体水素の沸点は、窒素の沸点を下回るため、低温タンクに液体水素を貯留した場合には窒素ガスが液化してしまうので、窒素ガスを採用することができない。そこで、窒素に代わる適当なガスはないため、低温タンクと防液堤との間は密閉空間とせずに、低温タンクから漏洩した液体水素は、低温タンクと防液堤との間で気化して大気放出する方式を採用することが検討されている。
上記の理由により、液体水素タンクに貯留した液体水素が漏洩した場合、漏洩した液体水素は、気化して大気と混合し、爆発範囲内に容易に達してしまう。また、気化した水素と大気が混合したものは、液体水素タンクと防液堤との間を流動する間に冷熱抵抗緩和材との摩擦により静電気が生じることがあり、着火エネルギーの低い水素が発生した静電気により爆発するリスクが非常に高くなる。
[1]液体水素を貯留する液体水素タンクに用いられる液体水素タンク用断熱材であって、フォーム層と、前記フォーム層上に設けられ、導電性材料を備える導電層とを備える、液体水素タンク用断熱材。
[2]前記フォーム層は、ウレタンフォームである、[1]に記載の液体水素タンク用断熱材。
[3]前記導電層が、アルミガラスクロスにより形成される、[1]又は[2]に記載の液体水素タンク用断熱材。
[4]前記液体水素タンクの周囲に設けられた防液堤の内周面側に配置される、[1]~[3]のいずれかに記載の液体水素タンク用断熱材。
[5]前記液体水素タンクの内槽の内周面側に配置される、[1]~[4]のいずれかに記載の液体水素タンク用断熱材。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の液体水素タンク用断熱材と、内部に水素が貯留されるタンク本体と、前記タンク本体を取り囲む防液堤とを備え、前記液体水素タンク用断熱材が、前記防液堤の内周面側に配置される液体水素タンク。
[7]前記タンク本体と、前記防液堤の間が開放空間である[6]に記載の液体水素タンク。
[8][1]~[5]のいずれかに記載の液体水素タンク用断熱材と、内部に水素が貯留される内槽とを備え、前記液体水素タンク用断熱材が、前記内槽の内周面側に配置される、液体水素タンク。
[9]液体水素タンクの施工面に対して、断熱層を形成する断熱材施工方法であって、ガイドレールと、押え板及び吐出口を有し、前記ガイドレールに沿って昇降可能である成形装置とを備える施工機を用意し、前記施工面と前記押え板の間に注入空間を形成するように前記施工機を配置し、前記施工面に対向する前記押さえ板の内面に沿うように導電性材料を含む面材を供給し、かつ前記注入空間に前記吐出口よりフォーム原液を注入して、フォーム層に前記面材が接着一体化され断熱材を得る、断熱材施工方法。
本発明の実施形態に係る液体水素タンク用断熱材1は、図1に示すように、フォーム層2と、フォーム層2上に設けられ、導電性材料からなる導電層3とを備える。以下、実施形態を参照しつつ、本発明の実施形態に係る液体水素タンク用断熱材1について詳細に説明する。
防液堤13は、万一の場合に液体水素タンク10の内容物である液体水素が周辺に流出することを防止する。防液堤13は、例えば、鉄筋コンクリート構造及び土盛り構造等によって形成される。液体水素タンク10は、防液堤13の底面上に設けられた基礎14上に設置される。基礎14は、例えば、コンクリートによって形成される。
外槽12と防液堤13との間には、開放空間である空間Bが設けられ、液体水素タンク10から漏洩した液体水素は、気化して空間Bの開放部から大気放出される。
液体水素タンク用断熱材1が液体水素タンク10の内槽11の内周面11A側に配置されることで、液体水素タンク10で貯留する液体水素が内槽11内において静電気が発生した場合に、静電気を導電層3で放電させて爆発するリスクを抑制する。液体水素タンク用断熱材1は、内槽11内において生じる静電気の放電効率を向上させる観点から、内周側に導電層3が、外周側にフォーム層2が配置される。
防液堤13の内周面13A側、及び、内槽11の内周面11A側の両方に配置することで、静電気の放電効率をより向上させることができ、爆発するリスクをより抑制することができる。
本発明の液体水素タンク用断熱材1を構成するフォーム層2としては、例えば、ウレタンフォーム、フェノールフォーム及びスチレンフォーム等が挙げられ、断熱性、製造容易性及び硬化速度の観点から、ウレタンフォーム及びフェノールフォームが好ましく、ウレタンフォームがより好ましい。
フォーム層2を構成するウレタンフォームについてより詳細に説明する。本実施形態で使用するウレタンフォームは、ウレタン樹脂組成物を硬化させ、発泡させることで形成されるものである。ウレタンフォームに含まれるウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを混合させ反応させることで得られる反応生成物である。
本発明の液体水素タンク用断熱材1を構成する導電層3は、導電性材料を備え、液体水素タンク10に貯留する液体水素の静電気の発生を抑制する。導電層3に用いる導電性材料としては、例えば、ステンレス、鉄及び銅等の金属メッシュ材、アルミニウム箔及び銅箔等の金属箔などが挙げられ、これらのいずれかが導電層3を構成してもよい。また、導電層3は、導電性材料と、導電性材料以外の材料との複合材料により形成されてもよい。複合材料としては、金属箔とガラスクロスの複合体であるアルミガラスクロス等の金属箔複合体が挙げられる。
アルミガラスクロスを使用する場合は、金属箔がフォーム層2側(すなわち、液体水素タンクでは外周側)に、ガラスクロスがフォーム層2とは反対側(すなわち、液体水素タンクでは内周側)に配置されてもよいが、金属箔がフォーム層2とは反対側、ガラスクロスがフォーム層2側に配置されることが好ましい。金属箔がフォーム層2とは反対側(すなわち、液体水素タンクでは内周側)に配置されることで静電気の放電効率をより向上させることができる。なお、このような構成は、導電層3が、ガラスクロスを介してフォーム層に積層された構造ともいえる。
また、アルミガラスクロス以外を使用する場合にも、導電層3とフォーム層2の間には、導電層3以外の材料が設けられてもよく、アルミガラスクロス以外を使用して、フォーム層2の上にガラスクロス、及び導電層3(例えば、金属箔)をこの順に設けた構造にしてもよい。
また、導電層3とフォーム層の間に設けられる、ガラスクロスなどの導電層3以外の材料の厚みは、例えば、0.1~3mm、好ましくは0.1~2mm、より好ましくは0.1~1mmである。
次に、本発明の実施形態に係る液体水素タンク用断熱材1の施工方法について説明する。なお、以下の説明においては、防液堤13の内周面13Aが、液体水素タンク用断熱材1が施工される施工面である場合について説明する。また、以下では、施工機から見て施工面が設けられる側を前方、その反対側を後方として説明する。
供給ロール27は、押え板25の上部に配置される。面材17は、巻回ロール26から繰り出されて、供給ロール27によって案内されて、注入空間Sの上部から注入空間Sに向かって供給される。注入空間Sにおいて、面材17は、施工面に対向する押え板25の内面25Aに沿うように配置される。巻回ロール26からの繰り出しは、面材17の種類によってはアンコイラーなどを設けて、供給速度を適宜調整してもよい。
なお、面材17がアルミガラスクロスなどの導電性材料と、導電性材料以外の材料との積層構造を有する場合には、導電性材料が、押さえ板側に配置されてもよいし、導電性材料以外の材料が押さえ板側に配置されてもよいが、導電性材料が押さえ板側に配置されることが好ましい。
昇降装置40は、吊元レール41に沿って横方向に走行するための走行機構42を有する。これにより、成形装置20は、昇降装置40によって横方向にも移動可能である。
上記のように施工されたフォーム層2及び導電層3が積層された液体水素タンク用断熱材1は、おおむね押え板25の幅分の長さを有する。その長さ分のフォーム層2を1列とすると、1列の液体水素タンク用断熱材1の施工が終了すると成形装置20は、昇降装置40とともに吊元レール41に沿って横方向に移動させられ、次の列の液体水素タンク用断熱材1を形成するとよい。そして、液体水素タンク用断熱材1の施工を繰り返して、防液堤13の全周にわたって液体水素タンク用断熱材1を形成するとよい。
また、上記のように、1列目の液体水素タンク用断熱材1の施工時には、注入空間Sの両側部に液漏れ防止部材35B,35Cが配置されていたが、2列目以降の液体水素タンク用断熱材1の施工においては、既に施工された液体水素タンク用断熱材1により、注入空間Sの一方の側部をシールすればよいので、液漏れ防止部材35B,35Cのうちの一方は省略できる。また、最終列の液体水素タンク用断熱材1の施工時には、1列目の液体水素タンク用断熱材1と、最終列の1列前の液体水素タンク用断熱材1とにより両側がシールされるので、両側の液漏れ防止部材35B,35Cを省略できる。
また、例えば、1列目施工後に、距離をおいて3列目の液体水素タンク用断熱材1を施工し、その後、2列目の液体水素タンク用断熱材1を施工するようにすれば、2列目の液体水素タンク用断熱材1の施工時には、既に施工された液体水素タンク用断熱材1により、両側部をシールできる。そのため、このような方法によっても液漏れ防止部材35B,35Cの両方を省略できる。
以上のように実施形態を示して説明した施工方法は、上記実施形態の構成に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な改良及び変更が可能であり、構成要素を適宜加えてもよい。
例えば、以上の説明では、施工機18により、上昇移動しながらフォーム原液を注入してフォーム層2を形成しつつ、形成したフォーム層2上に面材17を供給して導電層3を形成することで、液体水素タンク用断熱材1を一体物として施工する例を示したが、それに限られず、施工面の全面にフォーム原液を吹き付けてフォーム層2を形成した後に、フォーム層2の表面を切削して平滑化し、平滑化した面に導電層3を形成する施工方法であってもよい。
離型シートを液漏れ防止部材として使用する場合、上記のように押え板25の内面25Aに沿って供給される面材を離型シートとして、離型シートを液漏れ防止部材として使用してもよい。具体的には、押え板25の内面25Aに沿って供給される離型シートの両側部や先端部の少なくともいずれかを折り曲げて、注入空間Sの両側部、及び下部のいずれかをシールする部材として使用するとよい。離型シートの側部を折り曲げる場合には、例えば供給ロール27と注入空間Sの間に、離型シートの両側を折り曲げる折り曲げ機構などを備えてもよい。
また、面材とは別に、離型シートを、巻回ロール26とは別途設けた離型シート供給ロール(図示しない)などから、注入空間Sの側部を覆うように供給されてもよい。
さらに、液漏れ防止部材35A、35B、35Cは、フォーム成形品、チューブ、離型シート以外でもよく、例えば枠材の外周面にフォームシートや離型シートなどを取り付けたものなどでもよい。また、上記したフォーム成形品、チューブ、離型シート、枠材などは、適宜組み合わせて使用してもよい。例えば、下部の液漏れ防止部材35Aと、側部の液漏れ防止部材35B,35Cとを異なる部材にしてもよい。液漏れ防止部材35B,35Cは、磁石などにより着脱自在に施工面に取り付けられてもよい。
2 フォーム層
3 導電層
10 液体水素タンク
11 内槽
11A 外周面(後方側の面)
12 外槽
13 防液堤
13A 内周面(前方側の面)
14 基礎
15 底部保冷層
18 施工機
19 ガイドレール
20 成形装置
22 吐出口
25 押え板
29 ゴンドラ
35A,35B,35C 液漏れ防止部材
40 昇降装置
41 吊元レール
R フォーム原液
S 注入空間
Claims (8)
- 液体水素を貯留する液体水素タンクに用いられる液体水素タンク用断熱材であって、
フォーム層と、
前記フォーム層上に設けられ、導電性材料を備える導電層とを備え、
前記導電層が、金属箔又は金属箔複合体により形成されている、液体水素タンク用断熱材(但し、その表面に導電性物質を分散含有したシリコーン樹脂塗料の硬化層を有するものを除く。)。 - 前記フォーム層は、ウレタンフォームである、請求項1に記載の液体水素タンク用断熱材。
- 前記導電層が、アルミガラスクロスにより形成される、請求項1又は2に記載の液体水素タンク用断熱材。
- 前記液体水素タンクの周囲に設けられた防液堤の内周面側に配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の液体水素タンク用断熱材。
- 前記液体水素タンクの内槽の内周面側に配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の液体水素タンク用断熱材。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の液体水素タンク用断熱材と、内部に水素が貯留されるタンク本体と、前記タンク本体を取り囲む防液堤とを備え、前記液体水素タンク用断熱材が、前記防液堤の内周面側に配置される液体水素タンク。
- 前記タンク本体と、前記防液堤の間が開放空間である請求項6に記載の液体水素タンク。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の液体水素タンク用断熱材と、内部に水素が貯留される内槽とを備え、
前記液体水素タンク用断熱材が、前記内槽の内周面側に配置される、液体水素タンク。
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