以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による調剤薬局接客支援装置を備えた調剤薬局接客支援システムの構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態の調剤薬局接客支援システム100は、発券機101、予約受付機102、リーダライタ103、RFタグ104、リーダ105-1~105-4(以下、まとめてリーダ105ということがある)、調剤薬局接客支援装置106、待機所案内板107、準備完了案内版108-1,108-2および患者用端末109-1,109-2を備えている。患者用端末109-1,109-2には、いわゆるお薬手帳に関する機能を備えたアプリケーション(以下、お薬手帳アプリという)がインストールされている。
発券機101と予約受付機102との間、予約受付機102と調剤薬局接客支援装置106との間、リーダライタ103と調剤薬局接客支援装置106との間、およびリーダ105と調剤薬局接客支援装置106との間は、それぞれ有線LANまたは無線LANで接続されている。また、患者用端末109-2と調剤薬局接客支援装置106との間は、無線LANやインターネット回線で接続されている。なお、予約受付機102の機能を調剤薬局接客支援装置106が備える構成としてもよい。
本実施形態の調剤薬局接客支援システムは、予約受付機102がインターネットおよび携帯電話網等の通信ネットワークを介して調剤予約システム200と接続され、調剤予約システム200と連動している。患者は、お薬手帳アプリの機能を用いて患者用端末109-1から調剤予約システム200にアクセスし、所望の調剤薬局を選択して調剤の予約を行うことができるようになっている。なお、以下では説明の便宜上、調剤予約システム200から調剤の予約を行う患者が使用する端末を予約患者用端末109-1、調剤薬局に来店する患者が使用する端末を来店患者用端末109-2とし、両者を特に区別しない場合は患者用端末109というものとする。
発券機101は、患者から調剤の依頼が入るたびに、所定の識別情報を付与したレシートNRを発券する。例えば、発券機101は、調剤番号を付与した番号レシートNRを発券する。この調剤番号は、調剤業務の進捗管理、調剤完了までの待ち時間の計算、患者への種々の情報の通知または案内を行う際の管理情報として用いられる。番号レシートNRには、個々の調剤に対して付与された調剤番号を示す数字と、当該調剤番号を符号化したコード情報(例えば、二次元コード)とが印刷されている。
調剤の依頼は、調剤薬局に来店した患者から受ける場合と、調剤予約システム200および予約受付機102を通じて遠隔の患者から受ける場合とがある。調剤薬局に来店した患者から調剤の依頼を受けた場合、調剤薬局のスタッフが発券機101のボタン等を操作することにより、番号レシートNRを発券する。調剤薬局に来店した患者は、来店患者用端末109-2が有する二次元コード読み取り機能を用いて番号レシートNRの二次元コードを読み取ることにより、発券機101により発行された調剤番号をお薬手帳アプリに取り込むことが可能である。来店患者用端末109-2が二次元コードを読んで調剤番号を取得した場合、来店患者用端末109-2は自身のアドレス情報を調剤番号と共に調剤薬局接客支援装置106に通知し、調剤薬局接客支援装置106はこれを記憶する。
なお、ここでは来店患者用端末109-2が番号レシートNRの二次元コードを読み取ることによって調剤番号を取得するものとしているが、これに限定されない。例えば、来店患者用端末109-2がRFタグ104のリーダ機能を有している場合は、後述するようにRFタグ104に記録された調剤番号を読み取るようにしてもよい。
一方、遠隔にいる患者の予約患者用端末109-1から調剤予約システム200を通じて調剤の依頼(予約)を予約受付機102が受け付けた場合、予約受付機102が予約の受付を発券機101に通知し、この通知を受けて発券機101が番号レシートNRを発券する。発券機101は、このとき発行した調剤番号を予約受付機102に通知し、予約受付機102は調剤予約システム200を介して調剤番号を予約患者用端末109-1のお薬手帳アプリに通知する。これ以降、調剤の予約を行った患者は、通知された調剤番号を調剤予約システム200に入力することにより、調剤番号に紐づけて調剤薬局接客支援装置106から予約受付機102を介して調剤予約システム200に提供される種々の情報を閲覧することが可能となる。
リーダライタ103は、番号レシートNRに印刷された二次元コードを読み取って解析し、解析した調剤番号をRFタグ104の内部メモリに記録する。リーダライタ103により解析された調剤番号は、調剤薬局接客支援装置106にも通知され、内部メモリに記憶される。なお、番号レシートNRに印刷された番号を調剤薬局のスタッフがリーダライタ103に入力することにより、入力された調剤番号をRFタグ104の内部メモリに記録するようにしてもよい。
なお、調剤番号をRFタグ104の内部メモリに記録することに代えて、RFタグ104が持つ固有識別情報をリーダライタ103にて読み取り、リーダライタ103が二次元コードの読み取りにより取得した調剤番号と紐づけて調剤薬局接客支援装置106の内部メモリに記憶させるようにしてもよい。この場合、後述する各リーダ105-1~105-4から調剤薬局接客支援装置106に送信されるのは、調剤番号ではなくRFタグ104の固有識別情報となる。以下では、調剤番号を用いて識別する例に沿って説明する。
発券機101により発券された番号レシートNRと、調剤番号が記録されたRFタグ104と、患者から受け付けた処方箋PSとが調剤作業用のカゴBKに投入され、以降、このカゴBKを用いて薬剤師による調剤業務が実施される。なお、処方箋PSは、調剤薬局に来店した患者から受け取ったもの、または、予約受付機102が調剤予約の受付時に調剤予約システム200から取得した処方箋画像データに基づいて印刷されたものである。
リーダ105-1~105-4は、薬剤師が各工程の調剤業務を行うそれぞれの場所に設置される。本実施形態では4つのリーダ105-1~105-4が用いられ、第1のリーダ105-1は調剤の開始位置に設置され、第2のリーダ105-2は監査の開始位置に設置され、第3のリーダ105-3は薬の準備完了位置に設置され、第4のリーダ105-4は薬渡しの完了位置に設置される。調剤薬局内のどの位置にリーダ105-1~105-4を設定するかは調剤薬局の運用に従って任意に定めることが可能である。
番号レシートNR、RFタグ104および処方箋PSが投入されたカゴBKは、最初に第1のリーダ105-1の上に置かれる。薬剤師は、第1のリーダ105-1の上に置かれたカゴBKを引き取って、処方箋PSに示されている薬剤の調剤を開始する。カゴBKが第1のリーダ105-1の上に置かれた時点で、カゴBKに入っているRFタグ104の調剤番号が第1のリーダ105-1により読み取られ、第1のリーダ105-1の識別情報(第1リーダIDとする)と共に調剤番号が調剤薬局接客支援装置106に送信される。
なお、第1のリーダ105-1でRFタグ104の第1リーダIDを読み取るだけではなく、薬剤師が個別に所有するRFIDリストバンドやRFIDカード、またはICカードなどに記録されている薬剤師IDも第1のリーダ105-1で読み取り、この薬剤師IDも第1リーダIDと共に調剤薬局接客支援装置106に送信して記録することにより、誰が調剤しているかを紐づけることも可能である。
調剤を行った薬剤師は、調剤済みの薬剤を投入したカゴBKを第2のリーダ105-2の上に置く。すると、調剤を行った薬剤師またはそれとは異なる別の薬剤師は、第2のリーダ105-2の上に置かれたカゴBKを引き取って、処方箋PSに基づいて調製された薬剤の種類や分量等が間違っていないかを監査する。カゴBKが第2のリーダ105-2の上に置かれた時点で、カゴBKに入っているRFタグ104の調剤番号が第2のリーダ105-2により読み取られ、第2のリーダ105-2の識別情報(第2リーダIDとする)と共に調剤番号が調剤薬局接客支援装置106に送信される。この場合、薬剤師が前工程から替わることがあるため、第2のリーダ105-2で再度前述の薬剤師IDを読み取って紐づけることも可能である。
監査を行った薬剤師は、監査済みの薬剤が入っているカゴBKを第3のリーダ105-3の上に置く。すると、調剤を行った薬剤師は、第3のリーダ105-3の上に置かれたカゴBKを引き取って、処方箋PSに基づいて調製された薬剤を患者に引き渡す。このとき、薬剤師は服薬指導も行う。カゴBKが第3のリーダ105-3の上に置かれた時点で、カゴBKに入っているRFタグ104の調剤番号が第3のリーダ105-3により読み取られ、第3のリーダ105-3の識別情報(第3リーダIDとする)と共に調剤番号が調剤薬局接客支援装置106に送信される。この工程でも同様に、第3のリーダ105-3で薬剤師IDを読み取って紐づけることも可能である。
薬剤師は、薬剤を患者に引き渡した後、カゴBKを第4のリーダ105-4の上に置く。カゴBKが第4のリーダ105-4の上に置かれた時点で、カゴBKに入っているRFタグ104の調剤番号が第4のリーダ105-4により読み取られ、第4のリーダ105-4の識別情報(第4リーダIDとする)と共に調剤番号が調剤薬局接客支援装置106に送信される。
調剤薬局接客支援装置106は、リーダライタ103より通知される調剤番号、処方箋PSに基づいてスタッフにより入力される処方箋情報、リーダ105から送られてくる情報に基づいて、一連の調剤業務の進捗管理、調剤の依頼受付から調剤完了までの待ち時間(例えば、発券機101により番号レシートNRが発行されてからカゴBKが第3のリーダ105-3の上に置かれるまでの時間)の計算、患者への種々の情報の通知または案内などに関する処理を行う。
調剤薬局接客支援装置106は、調剤を依頼した患者ごとに、調剤が完了するまでの待ち時間を算出し、算出した待ち時間の長さに応じて患者を複数のグループに振り分けて、複数の待機所(例えば、待機室または待機スペース)のうち何れかに対する案内情報を患者に提供する。複数の待機所は、何れかの待機所の中にいる患者が他の待機所の中の様子を見ることができないように、または簡単には見ることができないように、視覚的に分離されている。待機所の案内情報の提供は、待機所案内板107および患者用端末109のお薬手帳アプリに対して行う。また、調剤薬局接客支援装置106は、調剤を依頼した患者ごとに、調剤が完了するまでの調剤業務の進捗状況を検出し、進捗状況に関する情報(以下、進捗情報という)を患者に提供する。進捗情報の提供は、準備完了案内版108-1,108-2および患者用端末109のお薬手帳アプリに対して行う。
準備完了案内版108-1,108-2は、調剤薬局が有する2つの待機所にそれぞれ設置される。すなわち、第1の準備完了案内版108-1が第1待機所に設置され、第2の準備完了案内版108-2が第2待機所に設置される。調剤薬局接客支援装置106は、ある調剤番号に対応する進捗情報を患者に提供する際には、2つの準備完了案内版108-1,108-2のうち、その調剤番号に対応して患者を案内した方の待機所に設置されている準備完了案内版108に対して進捗情報の提供を行う。
図2は、本実施形態による調剤薬局接客支援装置106の機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態の調剤薬局接客支援装置106は、機能構成として、処方情報入力部11、待ち時間算出部12、振り分け部13、待機所案内部14、進捗状況検出部15および進捗状況提供部16を備えている。また、本実施形態の調剤薬局接客支援装置106は、進捗状況検出部15により検出される進捗状況に関する情報を記憶する記憶媒体として、進捗状況記憶部10を備えている。
上記各機能ブロック11~16は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック11~16は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
進捗状況検出部15は、調剤を依頼した患者ごとに(すなわち、患者からの依頼に応じて発券機101により発行される調剤番号ごとに)、調剤業務の進捗状況を検出する。進捗状況検出部15は、リーダライタ103から新規の調剤番号を入力すると、その調剤番号に対応する記録レコードを進捗状況記憶部10に作成する。その後、進捗状況検出部15は、リーダ105から調剤番号と共に順次送られてくる第1~第4リーダIDに基づいて、調剤業務の進捗状況を検出し、検出した進捗状況を示す進捗情報を進捗状況記憶部10の該当レコードに逐次記録する。
本実施形態において、進捗状況検出部15は、調剤中、監査中、調剤完了(薬の準備完了)、薬渡し完了の進捗状況を検出する。すなわち、進捗状況検出部15は、第1のリーダ105-1から第1リーダIDを受信したとき(カゴBKが調剤の開始位置に置かれたとき)に、調剤が開始されたことを検出し、進捗状況として「調剤中」の進捗情報を進捗状況記憶部10に記録する。
その後、進捗状況検出部15は、第2のリーダ105-2から第2リーダIDを受信したとき(カゴBKが監査の開始位置に置かれたとき)に、監査が開始されたことを検出し、進捗状況として「監査中」の進捗情報を進捗状況記憶部10に記録する。その後、進捗状況検出部15は、第3のリーダ105-3から第3リーダIDを受信したとき(カゴBKが薬の準備完了位置に置かれたとき)に、監査を含めて調剤が完了したことを検出し、進捗状況として「調剤完了」の進捗情報を進捗状況記憶部10に記録する。
さらに、進捗状況検出部15は、第4のリーダ105-4から第4リーダIDを受信したとき(カゴBKが薬渡しの完了位置に置かれたとき)に、患者に対する処方薬の引き渡しが完了したことを検出し、進捗状況として「薬渡し完了」の進捗情報を進捗状況記憶部10に記録する。
進捗状況提供部16は、進捗状況検出部15により検出された調剤業務の進捗状況に関する情報を患者に提供する。すなわち、進捗状況提供部16は、進捗状況記憶部10に記録された進捗情報を患者に提供する。上述したように、進捗状況提供部16は、2つの準備完了案内版108-1,108-2の何れか一方および患者用端末109のお薬手帳アプリに対して進捗情報の提供を行う。
例えば、進捗状況提供部16は、進捗状況検出部15により進捗状況として「調剤完了」が検出されたときに、調剤薬局の2つの待機所に設置されている準備完了案内版108-1,108-2のうち、「調剤完了」の進捗状況が検出された調剤番号に対応する患者の待機所に設置されている方に調剤番号を表示させることによって、調剤番号に関する調剤が完了したことを患者に通知する。来店して何れかの待機所で待機している患者は、準備完了案内版108に自分の調剤番号が表示されたことをもって調剤が完了したことを知ることができる。
また、進捗状況提供部16は、患者用端末109のお薬手帳アプリから調剤番号と共に送信される進捗確認要求に応じて、調剤中、監査中、調剤完了、薬渡し完了の進捗情報を患者用端末109のお薬手帳アプリに提供する。お薬手帳アプリは、進捗確認画面において、調剤中、監査中、調剤完了、薬渡し完了のうち現在のステータスを示す進捗情報を表示する。
例えば、進捗状況提供部16は、進捗情報を調剤番号に紐づけて調剤予約システム200に提供する。調剤予約システム200は、進捗状況提供部16から提供された進捗情報を予約患者用端末109-1のお薬手帳アプリから閲覧可能な状態にする。予約患者用端末109-1は、調剤予約システム200にアクセスして調剤番号を入力することにより、その調剤番号に紐づけられた進捗情報を取得してお薬手帳アプリの進捗確認画面に表示する。遠隔から調剤の予約を行った患者は、この進捗確認画面を見ることにより、調剤業務がどの段階まで進んでいるのかを知ることができる。
来店患者用端末109-2のお薬手帳アプリが番号レシートNRの二次元コードまたはRFタグ104を読み取ることによって調剤番号を取得している場合、進捗状況提供部16は、来店患者用端末109-2のお薬手帳アプリから無線LANを介して調剤番号と共に送信される進捗確認要求に応じて、来店患者用端末109-2のお薬手帳アプリに対しても調剤の進捗情報を提供する。来店患者用端末109-2のお薬手帳アプリは、調剤薬局接客支援装置106から取得した調剤情報を進捗確認画面に表示する。調剤薬局に来店した患者は、この進捗確認画面を見ることにより、調剤業務がどの段階まで進んでいるのかを知ることができる。
処方情報入力部11は、調剤薬局のスタッフによる入力操作に従って、処方箋PSに記載されている情報(処方箋情報)を調剤薬局接客支援装置106に入力する。処方箋情報は、患者名、処方された薬剤の種類および分量、処方日数、調整方法などの情報を含む。調剤薬局のスタッフは、調剤薬局接客支援装置106が提供する所定の入力画面において、リーダライタ103から入力される調剤番号と関連付けて以上のような処方箋情報を入力する。なお、調剤薬局のスタッフは、いわゆる調剤レセプトコンピュータと言われるシステムに対して処方箋情報を入力し、処方情報入力部11が調剤レセプトコンピュータから処方箋情報を入力するようにしてもよい。あるいは、調剤薬局接客支援装置106が調剤レセプトコンピュータの一機能として備えられる構成としてもよい。
例えば、進捗状況検出部15がリーダライタ103から調剤番号を入力して新規の記録レコードを作成すると、処方情報入力部11は、その調剤番号に紐づけた入力画面を調剤薬局接客支援装置106に表示させる。調剤薬局のスタッフは、このように表示された入力画面において、上述の処方箋情報を入力する。入力された処方箋情報は、待ち時間算出部12による待ち時間の計算に使用される。
待ち時間算出部12は、調剤を依頼した患者ごとに(すなわち、患者からの依頼に応じて発券機101により発行される調剤番号ごとに)、調剤が完了するまでの待ち時間を算出する。すなわち、待ち時間算出部12は、処方情報入力部11から処方箋情報を入力したとき、その処方箋情報で示される処方内容に応じて調剤に要する時間(例えば、ステータスが「調剤完了」となるまでの調剤時間)を患者の待ち時間として算出する。
ここで、待ち時間算出部12は、調剤の新規依頼発生時に待機中の薬剤師(調剤業務を行っていない薬剤師)がいる場合は、依頼された調剤の複雑さおよび調剤する薬剤の量に応じて特定される所定の調剤時間を待ち時間として導出する。例えば、待ち時間算出部12は、調剤の複雑さおよび調剤する薬剤の量と待ち時間とを関連付けて構成した待ち時間テーブル情報を参照することにより、処方箋PSに基づいて調剤を行う際の患者の待ち時間を導出する。
図3は、待ち時間算出部12が参照する待ち時間テーブル情報の一例を示す図である。図3において、調剤度は、調剤の複雑さおよび調剤する薬剤の量に応じて設定される要処理時間のランクを示すものである。
図3に示す待ち時間テーブル情報では、処方日数によって薬剤の量を表している。処方日数が長くなるほど、調剤する薬剤の量は多くなる。また、図3に示す待ち時間テーブル情報では、一包化・粉砕の指示あり/なしの情報と、散剤・水剤あり/なしの情報とにより調剤の複雑さを表している。一包化・粉砕の指示がある場合は指示がない場合に比べて調剤が複雑となり、散剤・水剤がある場合はこれがない場合に比べて調剤が複雑となる。
図3に示す待ち時間テーブル情報では、このような調剤の複雑さおよび薬剤の量に応じて設定されるそれぞれの調剤度ごとに、所定の待ち時間が設定されている。所定の待ち時間は、経験則的な観点からあらかじめ設定された時間である。例えば、処方日数が14日以下で、一包化・粉砕の指示がなく、散剤・水剤がないという調剤度Aに対して待ち時間が15分と設定されている。また、処方日数が14日より長く、一包化・粉砕の指示がなく、散剤・水剤がないという調剤度Cに対して待ち時間が20分と設定されている。処方日数に関して14日を閾値としているのは、慢性疾患に関する処方であるか否かの一応の目安とする趣旨である。慢性疾患に関する処方の場合は、処方日数が14日より長くなることが多い。
調剤の新規依頼発生時に待機中の薬剤師がいない場合(調剤薬局に在籍する全ての薬剤師が調剤の実行中である場合)、待ち時間算出部12は、図3の待ち時間テーブル情報を参照して所定の調剤時間を特定するとともに、進捗状況検出部15により検出された調剤業務の進捗状況(進捗状況記憶部10に記憶されている進捗情報)に応じて、何れかの調剤業務が終了するまでの残り調剤時間を特定し、当該所定の調剤時間および残り調剤時間から患者の待ち時間を導出する。
待機中の薬剤師がいるか否かは、例えば、進捗状況記憶部10を参照することによって確認することが可能である。すなわち、調剤薬局にて勤務中の薬剤師の数を事前に登録しておき、調剤の新規依頼が発生した時点(待ち時間算出部12が処方情報入力部11から新規の処方箋情報を入力した時点)で、「調剤中」または「監査中」の進捗情報が記録されているレコード(以下、稼働中レコードという)の数と薬剤師の登録数とを比較する。そして、稼働中レコードの数が薬剤師の登録数より少なければ待機中の薬剤師がいると判定し、そうでなければ待機中の薬剤師がいないと判定する。なお、薬剤師が患者に薬を手渡すときに行う服薬指導にもそれなりの時間がかかることから、「薬渡し完了」以外の進捗情報が記録されているレコードを稼働中レコードとして扱うようにしてもよい。
なお、調剤番号と紐づけて各工程の薬剤師IDを記録している場合は、進捗情報に代えて薬剤師IDを使うことも可能である。例えば、薬剤師IDが記録されているレコードを稼働中レコードとして扱うようにすることが可能である。ただし、この場合は、患者への薬渡しが完了した場合、該当レコードの進捗情報を「薬渡し完了」に更新するとともに、該当レコードから薬剤師IDを削除する。
待機中の薬剤師がいないと判定された場合に特定する「何れかの調剤業務が終了するまでの残り調剤時間」は、本実施形態では以下のように簡易的に特定するようにしている。簡易的というのは、残り調剤時間を厳密に計算するのではなく、多少の誤差を許容して概略的に特定するという意味である。以下に、「調剤中」または「監査中」の進捗情報が記録されているレコードを稼働中レコードとする場合における残り調剤時間の算出例を説明する。
まず、待ち時間算出部12は、稼働中レコードの中に、進捗情報が「監査中」のものがあるか否かを判定し、「監査中」のものがある場合は、残り調剤時間として所定の時間を特定する。一例として、調剤度によらず監査に要する時間がほぼ同じ程度であると仮定し、その監査に要する所定の時間を残り調剤時間として特定する。
なお、調剤度に応じて異なる監査時間をテーブル情報として記憶しておき、この監査時間テーブル情報を参照することによって残り調剤時間を特定するようにしてもよい。この場合、待ち時間算出部12は、処方情報入力部11から入力される処方箋情報に応じて調剤度を特定したときに、調剤度の情報を進捗状況記憶部10の新規作成レコードに記録しておく。そして、待ち時間算出部12が稼働中レコードを参照する際に、当該稼働中レコードに記録されている調剤度を確認し、確認した調剤度に対応する残り調剤時間を監査時間テーブル情報から取得する。
一方、稼働中レコードの中に進捗情報が「監査中」のものがない場合、すなわち、稼働中レコードの全てについて進捗情報が「調剤中」となっている場合、待ち時間算出部12は、例えば、最も短い待ち時間(図3の例では調剤度Aの15分)を残り調剤時間として特定する。上述したように、調剤度Aによる調剤は慢性疾患に関するものではなく、最も頻繁に発生する処方ケースであると言える。よって、稼働中レコードの中には必ず少なくとも1つは調剤度Aのものが存在するとの仮定のもと、最短で調剤業務が終了する待ち時間15分を残り調剤時間として特定するようにする。
なお、上述のように調剤度の情報を進捗状況記憶部10の各レコードに記録しておくようにすれば、待ち時間算出部12が稼働中レコードを参照する際に、当該稼働中レコードに記録されている調剤度と図3の待ち時間テーブル情報とを確認することにより、稼働中レコードに記録されている調剤度の中で最短の待ち時間を残り調剤時間として特定するようにすることが可能である。
例えば、調剤の新規依頼発生時に待機中の薬剤師がいない場合、その新規依頼に係る調剤について調剤度Bと判定され、稼働中レコードを参照して特定された残り調剤時間が20分であった場合、待ち時間算出部12は、30分+20分=50分を残り調剤時間として特定する。なお、稼働中レコードの調剤業務は実際には進行中であり、待ち時間テーブル情報に記録されている待ち時時間がそのまま実際の残り調剤時間となることは殆どないが、実際の待ち時間より短い時間を見積もるよりは好ましい。
振り分け部13は、待ち時間算出部12により算出された待ち時間の長さに応じて、患者を複数のグループに振り分ける。ここで振り分けるグループの数は、調剤薬局が設備として備える待合室の数と同数とする。例えば、調剤薬局が2つの待合室を有している場合、振り分け部13は、待ち時間算出部12により算出された待ち時間の長さに応じて、患者を2つのグループに振り分ける。一例として、30分以下の待ち時間が算出された患者を第1グループとし、30分より長い待ち時間が算出された患者を第2グループとする。なお、この振り分けは、来店した患者と予約した患者とを含めて行っているが、予約した患者のみを別にグループ化することも可能である。
待機所案内部14は、振り分け部13による振り分けの結果に基づいて、複数の待機所のうち何れかに対する案内情報を患者に提供する。上記のように患者を2つのグループに振り分けた場合、待機所案内部14は、第1待機所または第2待機所の何れかで待機することを促す案内情報を患者に提供する。上述しように、待機所案内部14は、待機所案内板107および患者用端末109のお薬手帳アプリに対して待合室の案内情報の提供を行う。
例えば、待機所案内部14は、情報入力部11により処方箋情報が入力されて待ち時間算出部12により待ち時間の算出が行われたときに、調剤薬局内に設置されている待機所案内板107に待機所を表示させることによって、患者の待機所を報知する。例えば図1に示すように、待機所案内板107を2つの表示領域に分割し、第1待機所用の第1表示領域または第2待機所用の第2表示領域の何れかに調剤番号を表示する。来店している患者は、待機所案内板107の表示を見ることにより、どの待機所で待機すればよいかを知ることができ、実際にそれに従って待機所に移動する。
また、待機所案内部14は、調剤予約システム200を介して予約患者用端末109-1のお薬手帳アプリに対して待機所の案内情報を提供する。例えば、待機所案内部14は、待機所の案内情報を調剤番号に紐づけて調剤予約システム200に提供する。調剤予約システム200は、例えば、予約患者用端末109-1から行われた調剤の予約に対する応答として、発行された調剤番号および待機所の案内情報をお薬手帳アプリに提供する。遠隔から調剤の予約を行った患者は、お薬手帳アプリに提供された案内情報を見ることにより、調剤薬局に薬を受け取りに行ったときにどの待機所で待機すればよいかを知ることができる。
来店患者用端末109-2のお薬手帳アプリが番号レシートNRの二次元コードまたはRFタグ104を読み取ることによって調剤番号を取得している場合、待機所案内部14は、来店患者用端末109-2のお薬手帳アプリに対しても待機所の案内情報を提供する。調剤薬局に来店した患者は、お薬手帳アプリに提供された案内情報を見ることにより、どの待機所で待機すればよいかを知ることができる。
図4は、以上のように構成した本実施形態による調剤薬局接客支援システムの動作例を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートは、調剤薬局が患者から調剤の依頼を受けたときに開始する。図4に示すフローチャートは、調剤の依頼を行った一人の患者に関して実行される処理の流れを示している。
まず、調剤薬局のスタッフが来店した患者から処方箋PSを受け取ると、発券機101のボタンを操作する。これにより発券機101は、番号レシートNRを発券する(ステップS1)。遠隔の患者が調剤予約システム200を通じて調剤の予約を行った場合は、予約受付機102が調剤予約システム200から調剤の予約を受け付けると、発券機101が予約受付機102からの通知を受けて番号レシートNRを発券する。
次いで、調剤薬局のスタッフがRFタグ104をリーダライタ103に設置し、リーダライタ103によって番号レシートNRに印刷された二次元コードを読み取ることにより、二次元コードを解析し、解析した調剤番号をRFタグ104の内部メモリに記録する(ステップS2)。なお、上述したように、番号レシートNRに印刷された番号を調剤薬局のスタッフがリーダライタ103に入力することにより、入力された調剤番号をRFタグ104の内部メモリに記録するようにしてもよい。
次に、来店した患者により調剤が依頼された場合は、来店患者用端末109-2により番号レシートNRまたはRFタグ104を読み取ることにより、来店患者用端末109-2にて調剤番号を取得する(ステップS3)。一方、遠隔の患者が調剤予約システム200を通じて調剤の予約を行った場合は、発券機101により発行された調剤番号を、予約受付機102および調剤予約システム200を介して予約患者用端末109-1にて取得する。
次に、情報入力部11は、調剤薬局のスタッフによる入力操作に従って、処方箋PSに記載されている処方箋情報を入力する(ステップS4)。次いで、待ち時間算出部12は、調剤を依頼した患者について、情報入力部11により入力された処方箋情報に基づいて、待ち時間テーブル情報を参照して、調剤が完了するまでの待ち時間を算出する(ステップS5)。なお、調剤の新規依頼発生時に待機中の薬剤師がいない場合は、進捗状況検出部15により検出された調剤業務の進捗状況を考慮して残り調剤時間を更に特定し、待ち時間テーブル情報から特定される所定の調剤時間および残り調剤時間から患者の待ち時間を算出する。
次に、振り分け部13は、待ち時間算出部12により算出された待ち時間の長さに応じて、患者を複数のグループの何れかに振り分ける(ステップS6)。そして、待機所案内部14は、振り分け部13による振り分けの結果に基づいて、複数の待機所のうち何れかで待機することを促す案内情報を、待機所案内板107および患者用端末109のお薬手帳アプリに表示することによって患者に提供する(ステップS7)。
その後、進捗状況検出部15は、その患者に対して発行された調剤番号に関する調剤業務の進捗状況を検出する(ステップS8)。すなわち、進捗状況検出部15は、リーダ105から第1リーダID~第4リーダIDの何れかを受信したか否かを判定する。リーダ105から何れのリーダIDも受信しておらず、調剤業務の進捗に変化がない場合は、ステップS8の判定が継続される。一方、調剤業務の進捗に変化が検出された場合、進捗状況検出部15は、そのときの進捗状況を示す進捗情報(調剤中、監査中、調剤完了、薬渡し完了の何れか)を進捗状況記憶部10に記録する(ステップS9)。
ここで、進捗状況提供部16は、患者用端末109から進捗確認要求を受けているか否かを判定する(ステップS10)。患者用端末109から進捗確認要求を受けている場合、進捗状況提供部16は、ステップS9で進捗状況記憶部10に記録された進捗情報に基づいて、調剤中、監査中、調剤完了、薬渡し完了の何れかの進捗情報を患者用端末109のお薬手帳アプリに提供する(ステップS11)。進捗状況提供部16が患者用端末109から進捗確認要求を受けていない場合、このステップS11の処理は実行しない。
また、進捗状況提供部16は、ステップS9で進捗状況記憶部10に記録された進捗情報が「調剤完了」であるか否かを判定する(ステップS12)。記録された進捗情報が「調剤完了」である場合、進捗状況提供部16は、準備完了案内版108に調剤番号を表示させることによって、調剤が完了したことを患者に通知する(ステップS13)。その後、処理はステップS8に戻る。
一方、ステップS9で進捗状況記憶部10に記録された進捗情報が「調剤完了」でなかった場合、当該進捗情報が「薬渡し完了」あるか否かを判定する(ステップS14)。記録された進捗情報が「薬渡し完了」ではない場合、処理はステップS8に戻る。一方、記録された進捗情報が「薬渡し完了」であった場合、図4に示すフローチャートの処理は終了する。
以上詳しく説明したように、本実施形態では、調剤を依頼した患者ごとに、調剤が完了するまでの待ち時間を算出し、算出した待ち時間の長さに応じて患者を複数のグループに振り分けて、複数の待機所のうち何れかに対する案内情報を患者に提供するようにしている。
このように構成した本実施形態によれば、調剤が完了するまでの待ち時間の長さに応じて、患者の待機する待機所が振り分けられるため、待ち時間が長い患者と待ち時間が短い患者とが同じ待機所で待機する状況がなくなる。このため、後から調剤を依頼した患者の待ち時間が短く、先に調剤を依頼した患者の待ち時間が長くて、後から調剤を依頼した患者が先に調剤を依頼した患者よりも先に薬を受け取ることが仮に起こったとしても、先に調剤を依頼した患者がそのことに気づかないようにすることができる。これにより、先に調剤を依頼した患者にストレスを与えてしまうことを抑止することができる。
なお、上記実施形態では、待ち時間算出部12により算出される待ち時間をそのまま採用して患者をグループ分けする例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、待ち時間算出部12により算出される待ち時間とは異なる待ち時間を調剤薬局のスタッフが設定できるようにしてもよい。図5は、調剤薬局のスタッフが待ち時間を設定するために調剤薬局接客支援装置106の画面上に表示されるユーザインタフェースの一例を示す図である。
図5に示すユーザインタフェースは、待ち時間テーブル情報に設定されている複数の待ち時間を示す数字付きの操作ボタン51と、待ち時間テーブル情報の中で最長の待ち時間を超える待ち時間を示す数字付きの操作ボタン52と、待ち時間の確定を行うための操作ボタン53とを有している。待ち時間算出部12により待ち時間が算出されると、操作ボタン51,52の中で、算出された待ち時間に相当するものが他と識別可能な態様で表示される(例えば、ハイライト表示または強調表示される)。調剤薬局のスタッフは、処方箋PSの内容や、そのときの調剤依頼件数、対応可能な薬剤師の数などを考慮して、算出された待ち時間とは異なる待ち時間の操作ボタンを操作して確定させることができる。
また、上記実施形態では、調剤の進捗状況として調剤中、監査中、調剤完了、薬渡し完了の4つのステータスを検出する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、調剤中のステータスを更に細分化して検出するようにしてもよい。また、図5に示すユーザインタフェースにおいて、薬剤の在庫がない場合に選択するボタンを設けるようにしてもよい。処方された薬剤の在庫がない場合は、患者に確認した上で対応方法を決定することになる。
また、上記実施形態では、依頼された調剤の複雑さおよび調剤する薬剤の量に応じて所定の調剤時間を特定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、依頼された調剤がハイリスク薬かどうか、依頼者の年齢などを更に考慮して所定の調剤時間を特定するようにしてもよい。あるいは、依頼された調剤がハイリスク薬かどうか、依頼者の年齢などを調剤薬局のスタッフが考慮して、待ち時間算出部12により算出された待ち時間をユーザインタフェースにより調整できるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、リーダライタ103を備える構成について説明したが、これに限定されない。例えば、1日に発行される番号レシートNRの予想枚数よりも多いRFタグ104を用意し、それぞれのRFタグ104にあらかじめ調剤番号を記録しておくようにしてもよい。
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。