JP7529591B2 - 軸ずれ推定装置 - Google Patents

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Description

本開示は、レーダ装置の軸ずれを推定する技術に関する。
車両に搭載されたレーダ装置では、何らの原因で設置状態が変化することで、レーダビームの中心軸がずれることがある。このような軸ずれが発生すると、レーダ装置の検出対象である物体の検出精度が低下する。
そこで、レーダ装置においては、特許文献1に記載のように、レーダ装置に入射する反射波の強度に基づき、レーダビームの方向を推定して、レーダ装置の軸ずれ状態を検出することが提案されている。
特許第6321448号公報
ところで、レーダ装置では、物体からの反射波をアレーアンテナで受信し、各アンテナからの受信信号間に生じる位相差Δθを利用して、物標の方位を検出することから、位相の周期性により、Δθ=θ0と、Δθ=θ0±2nπとを区別することができない。
このため、例えば、位相差Δθが-π<Δθ≦+π[rad]となる検出範囲から外れた位置に物標が存在し、位相差Δθが、Δθ≦-π又はΔθ>πとなる、反射波の位相の折り返しが発生すると、その物標を、検出範囲内にあるものとして誤検出してしまう。
そして、発明者の詳細な検討の結果、このような位相の折り返しが発生すると、反射波の強度の分布も変化することから、レーダ装置の軸ずれ状態を正確に検出することができなくなる、という課題が見出された。
本開示の1つの局面は、レーダ装置の軸ずれ角を推定する軸ずれ推定装置において、レーダ装置で物体からの反射波の位相の折り返しが発生しても、軸ずれ角を正確に推定できるようにすることを目的としている。
本開示の1つの態様による軸ずれ推定装置(7)は、移動体周囲にレーダ波を照射し、その反射波を複数のアンテナで受信することで、移動体周囲の物体を検出するよう構成されたレーダ装置(3)の、軸ずれ角を推定する装置である。
本開示の軸ずれ推定装置には、情報取得部(31)、軸ずれ角推定部(33)、区間推定値算出部(37)、出力推定値算出部(39)、及び、折り返し判定部(41)、が備えられている。
情報取得部は、レーダ装置において検出された物体の反射点のそれぞれについて、少なくとも距離、相対速度及び方位を表す情報を取得し、軸ずれ角推定部は、情報取得部にて取得された情報に基づいて、レーダ装置の軸ずれ角を推定する。
また、区間推定値算出部は、軸ずれ角推定部にて推定された軸ずれ角の推定値を所定期間平滑化した区間軸ずれ角を算出する。
そして、出力推定値算出部は、区間推定値算出部にて算出された区間軸ずれ角を、出力軸ずれ角の過去値と平滑化することで、出力軸ずれ角を算出する。なお、出力軸ずれ角は、軸ずれ推定装置から軸ずれ角の推定結果として出力される。
ところで、レーダ装置は、アレーアンテナを構成する各アンテナからの受信信号に生じる位相差から物体の方位を検出する。このため、例えばトンネルの天井等、物体の検出範囲から外れた位置に存在する物標からの反射波が受信された場合に、反射波の位相の折り返しにより、その物標が、検出範囲内の物標であると誤検出され、その検出結果から軸ずれ角も誤検出されることがある。
折り返し判定部は、こうした反射波の位相の折り返しが発生しているか否かを判定するために備えられている。つまり、折り返し判定部は、区間推定値算出部にて区間軸ずれ角を算出するのに用いられた所定期間内の各反射点の情報に含まれている方位の分布から、レーダ装置において反射波の位相の折り返しが発生しているか否かを判定する。
これは、折り返し発生時には、レーダ装置にて所定期間内に検出される反射点の方位の分布が、複数の領域に分かれるためである。
そして、折り返し判定部は、折り返しの判定結果に基づいて、出力軸ずれ角が折り返しの影響を受けることのないよう、出力推定値算出部が区間軸ずれ角を平滑化する際の割合を変化させる。
この結果、本開示の軸ずれ推定装置によれば、レーダ装置において反射波の位相の折り返しが発生しても、その折り返しの影響を受けることのないよう、レーダ装置の軸ずれ角を適正に推定し、出力軸ずれ角として出力することができる。
実施形態の車両制御システム全体の構成を表すブロック図である。 レーダ波の垂直方向における照射範囲を説明する説明図である。 レーダ波の水平方向における照射範囲を説明する説明図である。 レーダ装置にて検出される反射点の方位を説明する説明図である。 軸ずれ推定装置の機能構成を表すブロック図である。 レーダ装置における反射点の方位の検出方法を説明する説明図である。 反射波の位相の折り返しを説明する説明図である。 軸ずれ推定装置にて実行されるメイン処理を表すフローチャートである。 図8に示す軸ずれ角推定処理の詳細を表すフローチャートである。 図9に示す路面反射点抽出処理の詳細を表すフローチャートである。 軸ずれ角の推定方法を説明する説明図である。 図8に示す折り返し判定処理の詳細を表すフローチャートである。 図8に示す出力推定値算出処理の詳細を表すフローチャートである。 折り返し発生時に検出される方位の分散の一例を表す説明図である。 第2実施形態の折り返し判定処理を表すフローチャートである。 第3実施形態の折り返し判定処理を表すフローチャートである。 第4実施形態の折り返し判定処理を表すフローチャートである。 図17の折り返し判定処理で算出されるピークの確率P1,P2を説明する説明図である。
以下に、本開示の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
なお、以下でいう「垂直」とは、厳密な意味での「垂直」に限るものではなく、同様の効果を奏するのであれば厳密に「垂直」でなくてもよい。以下でいう「水平」、「一致」についても同様である。
[第1実施形態]
[構成]
図1に示す車両制御システム1は、移動体である車両に搭載されるシステムであり、レーダ装置3、車載センサ群5、信号処理部7、支援実行部9、軸ずれ通知装置11、及び、搭載角調整装置13、を備える。なお、信号処理部7は、本開示の軸ずれ推定装置としての機能を有する。
以下の説明では、車両制御システム1を搭載する車両を自車VH、自車VHの周囲の車両を他車、他車のうち自車VHより前方の車両を先行車、ともいう。また、自車VHの車高方向を垂直方向、自車の車幅方向を水平方向ともいう。
レーダ装置3は、レーダ波を送受信して自車VHの周辺を監視する探知装置である。このレーダ装置3は、レーダ波としてミリ波帯の電磁波を使用するいわゆるミリ波レーダであってもよい。また、レーダ波としてレーザー光を用いるレーザレーダ、レーダ波として音波を用いるソナーであってもよい。
レーダ装置3において、レーダ波を送受信するアンテナ部は、水平方向及び垂直方向のいずれについても反射波の到来方向を検出できるように構成されている。本実施形態では、アンテナ部は、垂直方向及び水平方向に並ぶ複数のアンテナを備える、アレイアンテナである。
図2,図3に示すように、レーダ装置3は、自車VHの前側に搭載され、自車VH前方の所定の角度範囲である照射範囲にレーダ波を照射する。具体的には、レーダ装置3は、垂直方向における照射範囲Rv及び水平方向における照射範囲Rhに、レーダ波を照射する。レーダ装置3は、照射したレーダ波の反射波を受信することで、レーダ波を反射した反射点に関する反射点情報を生成する。
レーダ装置3は、照射するレーダビームの中心軸の方向に沿った方向であるビーム方向が、自車VHの前後方向(すなわち、進行方向)と一致するように取り付けられ、自車VHの前方に存在する各種物標を検出するために用いられる。
レーダ装置3が生成する反射点情報には、レーダ装置3と反射点との相対速度、反射点の方位(すなわち、方位角)、及び、レーダ装置3と反射点との距離が含まれる。
反射点の方位角とは、図4に示すように、レーダ装置3(詳しくは、レーダビーム)の基準方向Aを基準として求められた反射点の方位角のうち垂直方向の角度(以下、垂直角度)Ver及び水平方向の角度(以下、水平角度)Horの少なくとも一方である。
本実施形態では、垂直角度Ver及び水平角度Horの両方が反射点の方位を表す情報として反射点情報に含まれる。
垂直角度Verは、自車VHを右側面から見た場合において、レーダ装置3の基準方向Aを基準(すなわち、0°)として、レーダ装置3の基準方向Aから右回りをプラス、左回りをマイナスとする角度で表す。水平角度Horは、自車VHを上空から見た場合において、レーダ装置3の基準方向Aを基準として、レーダ装置3の基準方向Aから右回りをプラス、左回りをマイナスとする角度で表す。
レーダ装置3の基準方向Aとは、基準として設計上定められたレーダ装置3の方向である。本実施形態では、照射範囲の中心軸の方向がレーダ装置3の基準方向Aとして設定される。
レーダ装置3は、レーダ装置3の基準方向Aが車両の基準方向と一致するように自車VHに搭載される。車両の基準方向とは、基準として設計上定められた車両の方向であり、自車VHの進行方向Bが車両の基準方向として設定される。
レーダ装置3の基準方向Aと自車VHの進行方向Bとが一致するように、レーダ装置3が自車VHに搭載されると、検出された反射点の方位角と、自車VHの進行方向Bに対する反射点の角度と、が一致する。このため、レーダ装置3の基準方向Aと自車VHの進行方向Bとの間にずれが生じると、自車VHの進行方向Bに対する反射点の角度を表す情報が正しく得られないことになる。
図4は、レーダ装置3に、垂直方向における軸ずれ、すなわち垂直面であるx-z平面内における軸ずれが生じている様子を示している。軸ずれとは、レーダ装置3の基準方向Aが、車両の基準方向(例えば、自車VHの進行方向B)とずれている状態をいう。また、軸ずれ角(すなわち、軸ずれ角度)とは、レーダ装置3の基準方向Aと車両の基準方向(例えば、自車VHの進行方向B)とのずれの大きさを示す角度をいう。
なお、以下では、軸ずれとして垂直方向の軸ずれを例に挙げて説明するが、水平方向の軸ずれについても同様なことが言える。
本実施形態では、レーダ装置3は、公知のFMCW方式を採用しており、上り変調区間のレーダ波と下り変調区間のレーダ波をあらかじめ設定された変調周期で交互に送信し、反射したレーダ波を受信する。FMCWは、Frequency Modulated Continuous Waveの略である。
これにより、レーダ装置3は、変調周期ごとに、反射点との相対速度と、反射点の方位を表す垂直角度Ver及び水平角度Horとを、反射点情報として検出する。なお、レーダ装置3は、反射点までの距離、及び、受信したレーダ波の受信電力についても、反射点情報として検出する。
図1に戻り、車載センサ群5は、自車VHの状態等を検出するために自車VHに搭載された各種センサである。このセンサには、車速を検出する車速センサ、車両の操舵角を検出する操舵角センサ、車両周囲を撮像するカメラ、等が含まれる。
支援実行部9は、信号処理部7が実行する各種の処理結果に基づき、各種車載機器を制御して、所定の運転支援を実行する。制御対象となる車載機器には、各種画像を表示するモニタ、警報音や案内音声を出力する音響機器が含まれる他、自車VHの内燃機関、パワートレイン機構、ブレーキ機構等を制御する制御装置が含まれていてもよい。
軸ずれ通知装置11は、車室内に設置された音声出力装置である。軸ずれ通知装置11は、信号処理部7から出力される情報に基づき、自車VHの乗員に対して、警告音を出力し、レーダ装置3の軸ずれを通知する。
搭載角調整装置13は、モータと、レーダ装置3に取り付けられた歯車とを備える。搭載角調整装置13は、信号処理部7から出力される駆動信号に従ってモータを回転させる。これにより、モータの回転力が歯車に伝達され、垂直方向に沿った軸及び水平方向に沿った軸を中心にレーダ装置3を回転させることができる。
信号処理部7は、CPU21と、ROM23、RAM25、フラッシュメモリ等の半導体メモリ(以下、メモリ27)と、を有するマイクロコンピュータ(以下、マイコン)を中心に構成される。
信号処理部7の各種機能は、CPU21が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、メモリ27が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。なお、メモリ27には、例えば、レーダ装置3によって得られた各種の測定データや演算結果等が記憶される。
図5に示すように、信号処理部7は、本開示の軸ずれ推定装置として動作できるように、情報取得部31、軸ずれ角推定部33、信頼度算出部35、区間推定値算出部37、出力推定値算出部39、及び、折り返し判定部41を備える。
これら各部は、信号処理部7における軸ずれ推定装置としての機能を表しており、本実施形態では、CPU21が、これら各部に対応するプログラムを実行することにより、軸ずれ推定装置としての機能が実現される。
ここで、情報取得部31は、レーダ装置3がレーダ波を送信することにより検出した反射点情報を取得する。軸ずれ角推定部33は、情報取得部31にて取得された反射点情報に基づいて、レーダ装置3の軸ずれ角を推定する。信頼度算出部35は、軸ずれ角推定部33によって推定された軸ずれ角に対して、信頼性の程度を示す信頼度を算出する。
また、区間推定値算出部37は、軸ずれ角推定部33及び信頼度算出部35にて求められる軸ずれ角及び信頼度を、所定期間平滑化することで、区間軸ずれ角及び区間信頼度を算出する。
また、出力推定値算出部39は、区間推定値算出部37にて算出された区間軸ずれ角及び区間信頼度を、出力軸ずれ角及び出力信頼度の過去値と平滑化することで、出力軸ずれ角及び出力信頼度を算出する。
なお、出力軸ずれ角及び出力信頼度の過去値は、出力推定値算出部39にて前回算出された出力軸ずれ角及び出力信頼度のことであり、その初期値には、例えば、出力軸ずれ角:0deg 、出力信頼度:100%が設定される。
従って、出力軸ずれ角及び出力信頼度は、区間推定値算出部37にて区間軸ずれ角及び区間信頼度が算出される度に、その最新値を用いて更新されることになる。そして、その更新された出力軸ずれ角及び出力信頼度は、メモリ27に記憶され、軸ずれ通知装置11を介してレーダ装置3の軸ずれを使用者に通知したり、搭載角調整装置13に対しレーダ装置3の搭載角度を調整させたりするのに利用される。
次に、折り返し判定部41は、区間軸ずれ角を算出するのに用いられた所定期間内の反射点情報に含まれている方位の分布から、レーダ装置3において反射波の位相の折り返しが発生しているか否かを判定するよう構成されている。
そして、折り返し判定部41は、折り返しの判定結果に基づいて、出力推定値算出部39が区間軸ずれ角及び区間信頼度をそれぞれ平滑化する際の、最新値と過去値との割合を変化させる。
つまり、レーダ装置3において、反射点の方位は、図6に示すように、アレイアンテナを構成する複数のアンテナ3Aが受信する受信信号間の反射波の位相差Δθを利用して検出される。
従って、図7に示すように、アンテナ3Aごとの受信信号間に生じる反射波の位相差Δθが-π<Δθ≦+π[rad] となる範囲を測角範囲RAとすると、測角範囲RAの外に存在する反射点は、位相の折り返しにより測角範囲RA内にあるものとして検出される。
具体的には、測角範囲RAの範囲外に存在する反射点Paは、レーダ装置3の測角範囲RAの方位角度の幅である折り返し角度FOV分ずれた位置Pbにあるものとして検出される。なお、測角範囲RAは、レーダ装置3が備える複数のアンテナ3Aの素子間隔d等によって決定される。
このように反射波の位相の折り返しが発生すると、レーダ装置3において検出される反射点情報の一部が誤った情報となってしまうため、軸ずれ角推定部33及び信頼度算出部35で算出される軸ずれ角及び信頼度に誤差が生じる。
そして、軸ずれ角及び信頼度に誤差が生じると、区間推定値算出部37及び出力推定値算出部39において、軸ずれ角及び信頼度を順次平滑化しても、その誤差を充分吸収することができない。
そこで、本実施形態では、折り返し判定部41において、反射波の位相の折り返しが発生しているか否かを判定し、折り返しが発生しているときには、出力推定値算出部39が区間軸ずれ角及び信頼度の平滑化する際の最新値の割合を小さくする。
この結果、出力推定値算出部39において最終的に得られる出力軸ずれ角及び出力信頼度は、極めて誤差が少ない高精度なものとなり、レーダ装置3の搭載角度を適正に調整することができるようになる。
[処理]
次に、信号処理部7を本開示の軸ずれ推定装置として機能させるために、CPU21にて実行される処理について説明する。
図8に示すフローチャートは、車両のイグニションスイッチがオン状態であるとき、CPU21において繰り返し実行されるメイン処理を表している。なお、以下の説明では、垂直方向における軸ずれ角βを推定する場合について説明するが、水平方向の軸ずれ角αについても同様に推定することができる。
図8に示すように、CPU21は、メイン処理を開始すると、まずS100にて、レーダ装置3から反射点情報を取得する、反射点情報取得処理を実行する。
反射点情報取得処理は、情報取得部31としての機能を実現する処理であり、この処理では、レーダ装置3がレーダ波を送信して物標からの反射点を検出する、1サイクル内に検出された複数の反射点情報を取得する。
S100にて、複数の反射点情報が取得されると、CPU21は、S110に移行し、その複数の反射点情報に基づき、レーダ装置3の軸ずれ角βを推定する、軸ずれ角推定処理を実行する。
軸ずれ角推定処理は、軸ずれ角推定部33としての機能を実現する処理であり、本実施形態では、図9,図10に示す手順で実行される。
すなわち、CPU21は、軸ずれ角推定処理を開始すると、まず図9に示すS210にて、S100にて取得された複数の反射点情報の中から、路面からの反射波に対応した路面反射点の情報を抽出する。
この路面反射点の抽出処理は、レーダ装置3にて検出された反射点ごとに、路面反射点の抽出条件が成立しているか否かを判定することにより行われる。
すなわち、図10に示すように、路面反射点抽出処理において、CPU21は、まずS310にて、判定対象となる反射点と自車VHとの距離が、予め設定された所定距離範囲内にあるか否かを判定する。そして、反射点との距離が所定距離範囲内になければ、S380に移行して、反射点は路面上の反射点ではない、非路面反射点であると判定し、路面反射点抽出力を終了する。
S310にて、反射点との距離は所定距離範囲内にあると判定されると、CPU21は、S320に移行して、判定対象となる反射点の方位は、予め設定された所定方位角度範囲内にあるか否かを判定する。そして、反射点の方位が所定方位角度範囲内になければ、S380にて、反射点は非路面反射点であると判定し、路面反射点抽出力を終了する。
S320にて、反射点の方位は所定方位角度範囲内にあると判定されると、CPU21は、S330に移行して、判定対象となる反射点からの反射波の受信電力は、予め設定された下限電力以上であるか否かを判定する。そして、受信電力が下限電力に達していなければ、380にて、反射点は非路面反射点であると判定し、路面反射点抽出力を終了する。
S330にて、受信電力は下限電力以上であると判定されると、CPU21は、S340に移行して、自車VHと反射点との相対速度に基づき、反射点は静止しているか否かを判定する。そして、反射点は静止していない、換言すれば移動していると判定すると、380にて、反射点は非路面反射点であると判定し、路面反射点抽出力を終了する。
S340にて、反射点は静止していると判定されると、CPU21は、S350に移行し、車両状態は、路面反射点の抽出条件を満足しているか否かを判定する。例えば、S350では、自車VHが直進走行していて、車速が所定車速範囲内にあるときに、車両状態は、路面反射点の抽出条件を満足していると判定する。
そして、S350にて、車両状態は、路面反射点の抽出条件を満足していないと判定すると、380にて、反射点は非路面反射点であると判定して、路面反射点抽出力を終了する。
また、S350にて、車両状態は、路面反射点の抽出条件を満足していると判定されると、CPU21は、S360に移行し、カメラにより撮像された自車VH周囲の撮像画像から、路面反射点の抽出条件が成立しているか否かを判定する。
S360では、例えば、撮像画像から、自車VH前方の道路状態を認識し、道路が坂道ではなく、路面に凹凸がないときに、路面反射点の抽出条件が成立していると判定する。
そして、S360にて、自車VH前方の道路状態は、路面反射点の抽出条件を満足していないと判定すると、380にて、反射点は非路面反射点であると判定して、路面反射点抽出力を終了する。
また、S360にて、自車VH前方の道路状態は、路面反射点の抽出条件を満足していると判定されると、CPU21は、S370に移行し、反射点は路面反射点であると判定し、路面反射点抽出処理を実行する。
なお、S310~380の一連の処理は、レーダ装置3にて1サイクル内に検出された全ての反射点に対し実施され、その検出された反射点の中から、路面反射点が抽出される。
こうして、S210にて路面反射点が抽出されると、CPU21は、S220に移行し、S210にて抽出された路面反射点ごとに、反射点情報に含まれる距離と方位角とから、路面反射点の位置(x、y、z)を算出する。
そして、続くS230では、S220にて算出した各路面反射点の位置に基づき、レーダ装置3の軸ずれ角を算出する。具体的には、図11に示すように、各路面反射点の位置に基づき、レーダ座標系で、自車VHの進行方向Xcに沿った路面の直線Zsを「Zs=β・Xs+c」として近似推定し、その直線Zsの傾きβを、軸ずれ角として算出する。
なお、図11において、レーダ座標系は、レーダ装置3からのレーダビームの方向をXs軸、レーダビームに直交する垂直方向をZs軸とするXs-Zs平面上の座標である。そして、傾きβが「0」であれば、レーダ座標は車両座標と一致しているので、軸ずれなしと判定される。
図8に戻り、S110にて、レーダ装置3から取得した反射点情報から、軸ずれ角βが推定されると、CPU21は、S120に移行し、S110にて算出した軸ずれ角βの信頼度を算出する、信頼度算出処理を実行する。
この信頼度算出処理は、信頼度算出部35としての機能を実現する処理であり、例えば、S110にて軸ずれ角βを推定するのに用いた路面反射点の方位の分散を求め、方位の分散が小さいほど信頼度が高くなるよう、軸ずれ角βの信頼度を設定する。
次に、CPU21は、S130に移行し、S110にて軸ずれ角βを推定するのに用いた路面反射点の方位の情報から、所定区間内の方位情報を算出する、区間方位情報算出処理を実行する。
この区間方位情報算出処理では、後述のS170にて折り返し判定を行うために、S100~S120の処理が所定回数実行される所定期間を1区間として、その区間内に軸ずれ角βの推定に用いられた全路面反射点の方位の分散値を求める。
具体的には、例えば、区間の1サイクル目の方位の分散値Varを初期値VarIniとして、2サイクル目以降、分散値Varを、次式を用いて、逐次更新する。
Var=(1-k)・VarPre+k・(1-k)・(Ave-AvePre)
但し、Var:今回分散値、VarPre:前回分散値、Ave:方位の今回平均値、AvePre:前回平均値、k:平滑化係数(1区間が1000サイクルなら1/1000)。
なお、本実施形態では、S130にて、1区間内の方位の分散値を、1サイクル毎に逐次更新するが、全路面反射点の方位情報を蓄積するようにしてもよい。この場合には、後述のS170において、その蓄積した方位情報に基づき、1区間内の方位の分散値Varを算出するようにすればよい。
S130の処理を実行すると、CPU21は、S140に移行し、区間推定値算出処理を実行する。この区間推定値算出処理は、区間推定値算出部37としての機能を実現する処理であり、S110及びS120にて1区間内に算出される軸ずれ角β及び信頼度を平滑化することで、区間軸ずれ角m及び区間信頼度wを算出する。
具体的には、例えば、周知の移動平均により、軸ずれ角β及び信頼度の最新値と過去値との平均値を逐次算出することで、1区間内の軸ずれ角及び信頼度の平均値である、区間軸ずれ角m及び区間信頼度wを算出する。
次に、CPU21は、S150に移行して、S100~S140の一連の処理の実施回数n_estが、所定回数N_maxに達したか否かを判定することで、所定サイクル期間(換言すれば1区間)が経過したか否かを判定する。そして、実施回数n_estが所定回数N_maxに達していなければ、S160にて、実施回数n_estをインクリメント(+1)した後、S100に移行する。
一方、S150にて、実施回数n_estが所定回数N_maxに達していると判定されると、CPU21は、S170に移行し、上記S130にて算出された1区間内の方位の分散値Varに基づき、折り返し判定処理を実行する。
この折り返し判定処理は、折り返し判定部41としての機能を実現する処理であり、本実施形態では、図12に示す手順で実施される。
すなわち、折り返し判定処理において、CPU21は、まずS410にて、S130にて算出された分散値Varを読み込み、続くS420にて、その読み込んだ分散値Varが、予め設定された閾値THよりも大きいか否かを判定する。
S420において、分散値Varが閾値THよりも大きいと判定された場合には、反射波の位相の折り返しが発生しているものと判定して、S430に移行する。そして、S430では、続くS180にて出力軸ずれ角M及び出力信頼度Wを算出する際に用いられる係数kに、値の小さいK1を設定し、折り返し判定処理を終了する。
また、S420において、分散値Varが閾値TH以下であると判定された場合には、反射波の位相の折り返しは発生していないと判定して、S440に移行する。そして、S440では、係数kに、K1よりも値が大きいK2を設定し、折り返し判定処理を終了する。
このように、本実施形態では、1区間内に検出された路面反射点の方位の分散値に基づき反射波の位相の折り返しを判定する。この理由は、発明者の実験により、路面反射点の検出を所定期間実施すると、折り返し発生時には、図14に例示するように、路面反射点の数が多くなる領域が、A1、A2…と、複数に分散することが判明したためである。
図8に戻り、S170にて、上記手順で折り返し判定処理が実行されると、CPU21は、S180に移行し、出力推定値算出処理を実行する。この出力推定値算出処理は、出力推定値算出部39としての機能を実現する処理であり、例えば、図13に示す手順で実施される。
すなわち、出力推定値算出処理においては、まずS410にて、S100~S160の処理を所定サイクル実行することにより得られる最新の区間軸ずれ角m(n)及び区間信頼度w(n)と、前回算出した出力軸ずれ角M(n-1)及び出力信頼度W(n-1)を読み込む。なお、m,M,w,Wに付与された添え字(n),(n-1)は、最新値及び過去値を表す。
そして、続くS520では、折り返し判定処理で設定された係数kと、S510にて読み込んだ区間軸ずれ角m(n)と、前回求めた出力軸ずれ角M(n-1)とに基づき、次式を用いて、出力軸ずれ角M(n)を算出する。
M(n) =k・m(n) +(1-k)・M(n-1)
また、続くS530では、折り返し判定処理で設定された係数kと、S510にて読み込んだ区間信頼度w(n)と、前回求めた出力信頼度W(k+1)とに基づき、次式を用いて、出力信頼度W(n)を算出し、出力推定値算出処理を終了する。
W(n) =k・w(n) +(1-k)・W(n-1)
つまり、出力推定値算出処理では、最新の区間推定値を前回の出力推定値を用いて平滑化することで、出力推定値を更新する。そして、その平滑化時には、最新の区間推定値に係数kを乗じ、前回の出力推定値に「1-k」を乗じることで、周知の重み付け移動平均を行う。
この係数kは、折り返し判定処理において、反射波の位相の折り返しがあると判定された場合には小さい値K1が設定され、折り返しがないと判定された場合には大きい値K2が設定される。
従って、出力推定値算出処理において求められる出力推定値、つまり、出力軸ずれ角M(n)及び出力信頼度W(n)には、反射波の位相の折り返しがあると判定された区間内に算出された区間軸ずれ角m(n)及び区間信頼度w(n)が反映され難くなる。
よって、本実施形態によれば、反射波の位相の折り返しにより、出力軸ずれ角M及び出力信頼度Wに誤差が生じるのを抑制することができる。なお、反射波の位相の折り返しがあるときに係数kとして設定される値K1は、値0として、最新の区間推定値が出力推定値に反映されないようにしてもよい。
そして、このように、S180にて出力推定値、つまり、出力軸ずれ角M及び出力信頼度Wが算出されると、CPU21は、S190に移行して、S100~S140の一連の処理の実施回数n_est に初期値0を設定し、S200に移行する。
S200では、自車VHのイグニッションスイッチがオフされたか否かを判定することにより、当該メイン処理を終了するか否かを判定する。そして、イグニッションスイッチがオフされていなければ、再度S100に移行して、上記一連の処理を実施し、イグニッションスイッチがオフされていれば、当該メイン処理を終了する。
[効果]
以上説明したように、本実施形態において、軸ずれ推定装置としての信号処理部7は、レーダ装置3がレーダ波を送信してその反射波から反射点を検出する1サイクル毎に、レーダ装置3から反射点情報を取得する。そして、その取得した反射点情報の中から、路面上の反射点に対応する路面反射点情報を抽出して、レーダ装置3の軸ずれ角βを推定すると共に、その軸ずれ角βの信頼度を算出する。また、所定サイクル期間の間、軸ずれ角β及び信頼度を平滑化することで、区間推定値(m,w)を求め、更に、この区間推定値を出力推定値の過去値と平滑化することで、出力推定値(M,W)を更新する。
また、区間推定値(m,w)を求めるのに用いられた反射点情報に、反射波の位相の折り返しによる反射点情報が含まれていると、出力推定値(M,W)に誤差が含まれることになるので、その反射点情報から折り返しを判定する。そして、反射波の位相の折り返しがあると判定すると、区間推定値(m,w)を出力推定値(M,W)の過去値と平滑化する際の割合を、区間推定値(m,w)の比率が小さくなるように設定する。
この結果、本実施形態の信号処理部7によれば、出力推定値、つまり、出力軸ずれ角M及び出力信頼度Wを、反射波の位相の折り返しの影響を受けることのないよう、適正に推定することができるようになる。
[第2実施形態]
第1実施形態では、図12に示す折り返し判定処理において、路面反射点の方位の分布の特徴量である分散値Varに基づき、反射波の位相の折り返しが発生しているか否かを判定し、その判定結果に応じて係数kをK1又はK2に設定するものとして説明した。
これに対し、本実施形態では、折り返し判定部41としての折り返し判定処理を、図15に示す手順で実行する。なお、図15において、S410~S430は、第1実施形態と同様の処理であり、第1実施形態と異なる点は、S440の処理に代えて、S450の処理を実行する点である。
すなわち、本実施形態では、折り返し判定処理において、CPU21は、S410にて、路面反射点の方位の分散値Varを読み込み、S420にて、その分散値Varは閾値TH以下であると判定すると、S450に移行する。
そして、S450では、S430にて折り返し判定時に係数kとして設定される値K1と、分散値Varと、閾値THをパラメータとに基づき、次式
k=(TH/Var)・K1
を用いて、係数kを算出し、折り返し判定処理を終了する。
このため、本実施形態では、路面反射点の方位の分散値Varから反射波の位相の折り返しを判定できないときには、その分散値Varに応じて、分散値Varが閾値THよりも小さいほど、大きい値となるように、係数kが設定されることになる。
従って、第2実施形態では、路面反射点の方位の分散が大きくなるにつれて、最新の区間推定値の割合が小さくなるように、出力推定値が算出されることになり、出力軸ずれ角及び出力信頼度をより精度よく求めることができるようになる。
[第3実施形態]
第1,第2実施形態では、折り返し判定処理において、路面反射点の方位の分布の特徴量である分散値Varが、閾値VHよりも大きい場合(S420:YES)に、反射波の位相の折り返しが発生していると判定する、ものとして説明した。
しかし、図14に例示したように、折り返し発生時には、路面反射点の分布確率が高くなる領域が複数存在する。このため、路面反射点の分布から、分布確率が所定値以上となるピーク領域A1,A2…を抽出し、そのピーク領域が複数存在する場合に、反射波の位相の折り返しが発生していると判定することもできる。
そこで、本実施形態では、折り返し判定部41としての折り返し判定処理を、図16に示す手順で実行する。なお、本実施形態の折り返し判定処理を実行するに当たって、S130の区間方位情報算出処理においては、1区間内に検出された全路面反射点の方位情報を、メモリ27に記憶するものとする。
図16に示すように、本実施形態の折り返し判定処理では、CPU21は、まずS610にて、メモリ27から1区間分の路面反射点の方位情報(すなわち方位分布)を読み込む。そして、続くS620では、S610にて、その読み込んだ方位情報に基づき、路面反射点の分布確率が所定値以上となるピーク領域を抽出する。
次に、CPU21は、S630にて、S620にて抽出されたピーク領域が、図14に示す領域A1,A2のように、複数存在するか否かを判定することで、反射波の位相の折り返しが発生しているか否かを判定する。
そして、ピーク領域が複数存在し、反射波の位相の折り返しが発生していると判定すると、CPU21は、S640に移行し、上述したS430と同様、係数kとして値K1を設定し、折り返し判定処理を終了する。
一方、S630にて、ピーク領域は複数存在しないと判定されると、S650にて、ピーク領域は1個であるか否かを判定する。そして、ピーク領域が1個である場合には、CPU21は、反射波の位相の折り返しは発生していないと判定して、S660に移行する。
S660では、上述したS440と同様、係数kとして、K1よりも値が大きいK2を設定し、折り返し判定処理を終了する。
また、S650にてピーク領域は1個ではない、つまり、S620にてピーク領域が抽出されていないと判定すると、CPU21は、S670に移行し、係数kとしてK3を設定し、折り返し判定処理を終了する。なお、K3は、K1以上で、K2よりも小さい値である。
つまり、路面反射点の分布のピークの高さが小さく、分布がなだらかである場合、S620では、ピーク領域が抽出されない。そして、この場合には、反射波の位相の折り返しが発生している可能性があるので、S670にて、係数kにK3(<K2、≧K1)を設定するのである。
このように折り返し判定処理を実行しても、反射波の位相の折り返しを判定することができる。このため、本実施形態においても、第1実施形態の信号処理部7と同様、出力軸ずれ角及び出力信頼度を、反射波の位相の折り返しの影響を受けることのないよう、適正に推定することができるようになる。
[第4実施形態]
第3実施形態では、折り返し判定処理において、路面反射点の方位の分布確率が所定値以上となるピーク領域を検出し、ピーク領域が複数である場合に、係数kにK1を設定し、そうでなければ、係数kにK2又はK3を設定するものとした。
これに対し、本実施形態では、図17に示すように、折り返し判定処理において、ピーク領域が複数存在すると判定した場合(S630:YES)には、S680に移行して、各ピーク領域での分布確率のピーク値P1,P2を求める。
なお、ピーク値P1,P2は、図18に示すように、2つのピーク領域で最大となる分布確率であり、各ピーク領域で最大となる分布確率のうち、大きい方がP1、小さい方がP2として設定される。
また、S620にて3つ以上のピーク領域が抽出された場合には、分布確率が高い2つのピーク領域が選択され、その選択された各ピーク領域におけるピーク値が算出される。
そして、このようにS680にてピーク値P1,P2が算出されると、CPU21は、S690にて、その算出されたピーク値P1,P2と、S660にて係数kとして設定される値K2をパラメータとする次式
k=(1-P2/P1)・K2
を用いて、係数kを算出し、折り返し判定処理を終了する。
なお、図17の折り返し判定処理において、S610~S630,S650の処理は、第3実施形態と同様に実施され、第3実施形態と異なる点は、S640の処理に代えて、S680,S690の処理が実施される点である。ただし、S670にて、係数kとして設定される値K3には、K2よりも小さい任意の値(0≦K3<K2)が設定される。
このように、本実施形態では、路面反射点の方位の分布確率が所定値上となるピーク領域が複数ある場合に、その複数のピーク領域のうち、分布確率が高い2つのピーク領域での分布確率のピーク値P1,P2に基づき、係数kを設定する。そして、係数kは、ピーク値P1,P2の差が小さく、その比率P2/P1が1に近いほど、値が小さくなる。
この結果、本実施形態によれば、路面反射点の方位の分散が大きい程、最新の区間推定値の割合が小さくなるように、出力推定値が算出されることになり、出力軸ずれ角及び出力信頼度をより精度よく求めることができるようになる。
[他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
例えば、上記実施形態では、垂直方向の軸ずれ角βを推定する例を挙げて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。つまり、垂直方向の軸ずれ角β及び水平方向の軸ずれ角αのいずれか一方を推定するように構成されてもよい。
また、上記実施形態では、軸ずれ角は、路面反射点を抽出し、x-z平面上で路面反射点を結ぶ直線を求め、その直線の傾きβを、垂直方向の軸ずれ角とするものとして説明したが、水平方向の軸ずれ角についても、同様に求めることができる。
つまり、例えば、x-y平面上で路面反射点を結ぶ直線を求め、その直線の傾きを水平方向の軸ずれ量とするようにすれば、水平方向の軸ずれ角αを求めることができる。
また、軸ずれ角は、必ずしも路面反射点を抽出して求める必要はなく、全ての反射点情報を用いて推定するようにしてもよい。
例えば、特許文献1に記載のように、各反射点の反射波の強度から、反射強度が高くなるビームの中心をレーダ装置の方向として検出して、自車VHの進行方向とのずれを軸ずれ角として推定するようにしてもよい。
そして、この場合でも、反射波の位相の折り返しが発生すると、レーダ装置の方向を正確に検出することができなくなる。
従って、この場合にも、反射波の方位の分布の特徴量である分散値やピーク領域の数から、反射波の位相の折り返しの有無を判定して、出力軸ずれ角や出力信頼度を算出する際に用いる係数kを変更するようすれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、この場合、路面反射点の方位の分布ではなく、全反射点の方位の分布から折り返しを判定するようにしてもよい。
次に、上記実施形態では、レーダ装置がレーダ波を車両の前方に向けて送信する形態を示したが、レーダ波の送信方向は車両の前方に限定されるものではない。例えば、レーダ装置は、車両の前方、右前方、左前方、後方、右後方、左後方、右側方及び左側方の少なくとも一方に向けてレーダ波を送信するように構成されてもよい。
また、上記実施形態では、レーダ装置がFMCW方式を採用している例を示したが、レーダ装置のレーダ方式は、FMCWに限定されるものではなく、例えば、2周波CW、FCM又はパルスを採用するように構成されてもよい。FCMは、Fast-Chirp Modulationの略である。
また、上記実施形態では、軸ずれ推定装置としての機能は、レーダ装置3から反射点情報を取得する信号処理部7にて実現されるものとして説明したが、信号処理部7は、レーダ装置3が有する一機能として、レーダ装置3に設けられていてもよい。
また、上記実施形態では、信号処理部7はマイコンにて構成され、軸ずれ推定装置としての機能は、マイコンがプログラムを実行することにより実現されるものとして説明したが、信号処理部7を構成するマイコンの数は1つでも複数でもよい。
また、信号処理部7が有する各種機能を実現する手法はソフトウェアに限るものではなく、その一部又は全部の要素について、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。例えば、上記機能がハードウェアである電子回路によって実現される場合、その電子回路は多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路、あるいはこれらの組合せによって実現してもよい。
つまり、本開示の軸ずれ推定装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示の軸ずれ推定装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、本開示の軸ずれ推定装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。また、信号処理部7に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
また、上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
また、本開示の技術は、軸ずれ推定装置の他、軸ずれ推定装置を構成要素とするシステム、軸ずれ推定装置のコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移有形記録媒体、軸ずれ推定方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
3…レーダ装置、7…信号処理部、31…情報取得部、33…軸ずれ角推定部、35…信頼度算出部、37…区間推定値算出部、39…出力推定値算出部、41…折り返し判定部。

Claims (7)

  1. 移動体周囲にレーダ波を照射し、その反射波を複数のアンテナで受信することで、移動体周囲の物体を検出するよう構成されたレーダ装置(3)の、軸ずれ角を推定する軸ずれ推定装置(7)であって、
    前記レーダ装置にて検出された前記反射波の反射点のそれぞれについて、少なくとも距離、相対速度及び方位を表す情報を取得するよう構成された情報取得部(31)と、
    前記情報取得部にて取得された情報に基づいて前記軸ずれ角を推定するよう構成された軸ずれ角推定部(33)と、
    前記軸ずれ角推定部にて推定された前記軸ずれ角の推定値を所定期間平滑化することで、区間軸ずれ角を算出するよう構成された区間推定値算出部(37)と、
    前記区間推定値算出部にて算出された前記区間軸ずれ角を、出力軸ずれ角の過去値と平滑化することで、前記出力軸ずれ角を算出するよう構成された出力推定値算出部(39)と、
    前記区間推定値算出部にて前記区間軸ずれ角を算出するのに用いられた前記所定期間内の各反射点の情報に含まれている前記方位の分布から、前記レーダ装置において前記反射波の位相の折り返しが発生しているか否かを判定するよう構成された折り返し判定部(41)と、
    を備え、
    前記折り返し判定部は、前記反射波の位相の折り返しがあると判定すると、前記出力推定値算出部が前記区間軸ずれ角を前記出力軸ずれ角の過去値と平滑する際の割合を、前記区間軸ずれ角の比率が小さくなるように変化させる、ように構成されている、軸ずれ推定装置。
  2. 請求項1に記載の軸ずれ推定装置であって、
    前記軸ずれ角推定部にて推定された前記軸ずれ角の信頼度を算出する信頼度算出部(35)を備え、
    前記区間推定値算出部は、前記区間軸ずれ角に加えて、前記信頼度算出部にて算出された信頼度を所定期間平滑化した区間信頼度を算出するよう構成され、
    前記出力推定値算出部は、前記区間推定値算出部にて算出された前記区間信頼度を、出力信頼度の過去値と平滑化することで、前記出力軸ずれ角に加えて、前記出力信頼度を算出するよう構成され、
    前記折り返し判定部は、前記折り返しの判定結果に基づいて、前記出力推定値算出部が前記区間軸ずれ角及び前記区間信頼度を前記過去値と平滑化する際の割合を変化させるように構成されている、軸ずれ推定装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の軸ずれ推定装置であって、
    前記軸ずれ角推定部は、前記情報取得部にて取得される情報のうち、路面からの反射点の情報を用いて前記軸ずれ角を推定するよう構成され、
    前記折り返し判定部は、前記路面からの反射点の情報に含まれている前記各反射点の前記方位の分布に基づき、前記折り返しが発生しているか否かを判定するよう構成されている、軸ずれ推定装置。
  4. 請求項1~請求項3の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
    前記折り返し判定部は、前記各反射点の前記方位の分散が予め設定された閾値よりも大きいときに、前記折り返しが発生していると判定するよう構成されている、軸ずれ推定装置。
  5. 請求項4に記載の軸ずれ推定装置であって、
    前記折り返し判定部は、前記各反射点の前記方位の分散が大きいときほど、前記区間推定値算出部にて算出された最新値の割合が小さくなるよう、前記出力推定値算出部が該最新値を前記過去値と平滑化する際の割合を設定するよう構成されている、軸ずれ推定装置。
  6. 請求項1~請求項3の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
    前記折り返し判定部は、前記各反射点の前記方位の分布において、分布確率が高くなるピーク領域を抽出し、該ピーク領域が複数ある場合に、前記折り返しが発生していると判定するよう構成されている、軸ずれ推定装置。
  7. 請求項6に記載の軸ずれ推定装置において、
    前記折り返し判定部は、前記ピーク領域が複数ある場合に、各ピーク領域での前記分布確率のピーク値が近いときほど、前記区間推定値算出部にて算出された最新値の割合が小さくなるよう、前記出力推定値算出部が該最新値を前記過去値と平滑化する際の割合を設定するよう構成されている、軸ずれ推定装置。
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