JP7523295B2 - 水性被覆材 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な水性被覆材に関するものである。
建築物の内外装壁面・床面等への塗装においては、種々の塗膜物性(例えば、耐久性、基材との密着性等)を考慮し、種々の被覆材が選定して用いられている。このような被覆材は、従来、溶剤系のものが主であったが、最近では、環境、安全等を考慮し、水系の被覆材が採用されつつある。ところが、水系の被覆材は、溶剤系の被覆材と比べ、塗膜物性に劣る場合がある。
このような問題に対し、水性被覆材にシランカップリング剤等のシラン化合物を配合することにより塗膜物性を向上させる技術が提案されている。例えば、特許文献1には、水酸基及びアミノ基を有する自己乳化型カチオン性水分散液を含む主剤に、エポキシ基含有シランカップリング剤を混合した水系プライマーが開示されている。しかし、このような水性被覆材では、シラン化合物を混合した際に、塗装作業性が大きく変化し、塗装作業に支障をきたすおそれがある。
特開2002-256221号公報
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、優れた塗装作業性を有し、十分な塗膜物性を確保することができる水性被覆材を得ることを目的とする。
本発明者らは、このような問題に対し鋭意検討した結果、結合材、及びシラン化合物を含む水性被覆材において、特定の安定化剤を配合することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記の特徴を有するものである。
1.主剤に、樹脂成分及び安定化剤を含み、
硬化剤に、架橋剤及びシラン化合物を含み
上記樹脂成分は、水溶性エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂分散体を含み、
上記架橋剤は、ポリアミン樹脂を含み、 上記安定化剤が、無機質増粘剤及び有機質増粘剤を含み、
上記無機質増粘剤と上記有機質増粘剤の混合比(固形分重量比)は、60:40~98:2であることを特徴とする2液型の水性被覆材。
2.上記樹脂成分と上記架橋剤の合計(固形分100重量部に対し、上記シラン化合物を5重量以上含むことを特徴とする1.に記載の2液型の水性被覆材。
本発明の水性被覆材は、優れた塗装作業性を有し、十分な塗膜物性を示す。
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
本発明は、結合材、シラン化合物、及び安定化剤を含むことを特徴とするものである。
本発明の(A)結合材(以下「(A)成分」ともいう)は、被膜を形成する成分であり、(A1)樹脂成分(以下「(A1)成分」ともいう)を含むものである。(A1)成分としては、特に限定されないが、樹脂成分として、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、フッ素樹脂、エチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。これらの1種または2種以上を使用することができる。また、(A1)成分の形態としては、水可溶型樹脂、水分散型樹脂(樹脂エマルション)等が挙げられ、特に水分散型樹脂(樹脂エマルション)が好適である。
結合材は、上述のような(A1)成分に加え、(A2)架橋剤(以下「(A2)成分」ともいう)を含むことが好ましい。このような態様では、(A1)成分として反応性官能基を有する樹脂と、(A2)成分として当該反応性官能基と反応可能な架橋剤を含む(A)成分を使用することができる。この場合、樹脂と架橋剤との反応によって、3次元架橋構造を有する被膜が形成され、優れた塗膜物性を得ることができる。(A2)成分としては、水分散型樹脂に適用できるものが好ましく、例えば、水溶性架橋剤、水分散型架橋剤、自己乳化型架橋剤等が好適である。
反応性官能基を有する樹脂としては、例えば、カルボキシル基、カルボジイミド基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、水酸基、イソシアネート基、カルボニル基、ヒドラジド基、エポキシ基、アミノ基、及びアルコキシシリル基等から選ばれる1種以上の反応性官能基を有するものが使用できる。架橋剤としては、このような樹脂の反応性官能基と反応可能なものを組み合わせて使用すればよい。反応性官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボキシル基とアジリジン基、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、アルコキシシリル基どうし等の組み合わせが挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
本発明では、(A1)成分として、エポキシ基を含有する樹脂成分を含むことが好ましい。これにより、基材との密着性等に優れた塗膜を形成することができる。このような(A1)成分としては、例えば、
(A1-1)エポキシ樹脂を水性媒体に溶解又は分散させたもの(以下「(A1-1)成分」ともいう。)、
(A1-2)エポキシ基含有モノマーを含むモノマー群を乳化重合して得られるもの(以下「(A1-2)成分」ともいう。)、
等が挙げられ、これらを混合して使用することもできる。
上記(A1-1)成分としては、例えば、水溶性エポキシ樹脂、エポキシ樹脂水分散体等が挙げられる。本発明では(A1-1)成分として、エポキシ樹脂を水性媒体に分散・乳化させたエポキシ樹脂水分散体(「エポキシ樹脂エマルション」ともいう)を含むことが好適である。なお、エポキシ樹脂を水性媒体に分散させる場合には、必要に応じて乳化剤等を用いることができる。なお、水性媒体とは、主に水を含む媒体であり、必要に応じ、例えば、低級アルコール、多価アルコール、エーテル化合物、エステル化合物、アルキレンオキサイド含有化合物等の水溶性溶剤が混合されていてもよい。
上記(A1-1)成分のエポキシ樹脂としては、水性媒体に溶解又は分散しうるものであればよく、固形型エポキシ樹脂及び/または液状型エポキシ樹脂のいずれであってもよい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、分子中にエポキシ基を1個以上、好ましくは2個以上含有する樹脂が使用でき、例えば、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、エポキシ基を有するポリブタジエン樹脂、エポキシ基を有するポリウレタン樹脂等が挙げられる。上記(A1-1)成分としては、芳香族エポキシ樹脂が好ましく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、この中でも、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上が好適である。さらに、上記エポキシ樹脂は、必要に応じで分子量を増大させたものや、脂肪酸を反応させることにより得られる脂肪酸変性エポキシ樹脂、あるいはアミノ基含有化合物を付加反応させて得られるアミン付加エポキシ樹脂(アミン変性エポキシ樹脂)を水性化することより得られるもの等であっても良い。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、固形型エポキシ樹脂とは、常温(23℃)で固形のもの、液状型エポキシ樹脂とは、常温(23℃)で液状のものをいう。
エポキシ樹脂水分散体(エポキシ樹脂エマルション)の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、固形型エポキシ樹脂及び/または液状型エポキシ樹脂と、必要に応じて乳化剤を混合し樹脂溶液を調製した後、水性媒体(必要に応じて乳化剤を含む)と混合することにより乳化する方法等が挙げられる。なお、上記の調製時には、必要に応じて加熱することもできる。本発明において、固形型エポキシ樹脂と液状型エポキシ樹脂を併用する場合、固形型エポキシ樹脂と液状型エポキシ樹脂のそれぞれの水分散体を調整した後、混合して使用することが好ましい。エポキシ樹脂水分散体の樹脂固形分は、特に限定されないが、好ましくは10~80重量%(より好ましくは20~70重量%)である。本発明において「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
上記乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤をそれぞれ単独でまたは組み合わせて用いることができる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ステアリルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸アルカリ金属塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステルアルカリ金属塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。
乳化剤の配合量としては、樹脂固形分に対して好ましくは0.1~15重量%(より好ましくは0.1~10重量%、さらに好ましくは0.5~5重量%)の範囲内である。
本発明の(A1-1)成分のエポキシ樹脂水分散体の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは100~1000nm(より好ましくは150~900nm、さらに好ましくは200~800nm)である。平均粒子径がこのような範囲内であれば、シール性、耐白華性、耐白化性等において有利な効果を得ることができる。なお、ここに言う平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値である。
また、本発明の(A1-1)成分は、エポキシ当量xが、好ましくは100~3000(より好ましくは110~2000、さらに好ましくは120~1500)である。なお、ここでいう「エポキシ当量x」は、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂固形分のグラム数[g/eq]であり、エポキシ樹脂の重量平均分子量を1分子当たりのエポキシ基の数で除した値である。
なお、上記(A1-1)成分として、エポキシ当量xや平均粒子径等が異なるものを混合して使用することもできる。
上記(A1-2)成分としては、エポキシ基含有モノマーを含むモノマー群として(メタ)アクリル酸アルキルエステル、芳香族モノマー等を含むことが好ましく、さらには、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを樹脂骨格(主成分)とするものが好ましい。このような(A1-2)成分としては、例えば、
・エポキシ基含有モノマー、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー群の重合体、
・エポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び芳香族モノマーを含むモノマー群の重合体、
等が挙げられる。(A1-2)成分としては、このような重合体のエマルション(「エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション」ともいう)が好適である。
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジルフマレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、ε-カプロラクトン変性グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明では、エポキシ基含有モノマーの含有量が、(A1-2)成分を構成する全モノマー中に、好ましくは0.5~50重量%(より好ましくは1~30重量%)である。これにより、優れた塗膜物性を確保することができる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル、芳香族モノマーは、樹脂骨格の主成分とすることができるものである。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを合わせて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。また、モノマーとは、重合性不飽和二重結合を有する化合物の総称である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
芳香族モノマーは、芳香環と重合性不飽和二重結合を有する化合物であり、その具体例としては、例えばスチレン、2-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
(A1-2)成分においては、さらに本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記成分と共重合可能なその他のモノマーを使用することもできる。このようなモノマーとしては、例えば、
(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン、α-シアノエチル(メタ)アクリレート等のニトリル基含有モノマー;
マレイン酸アミド、(メタ)アクリルアミド、N-モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N、N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタクリレート)、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ビニルアミド等のアミド基含有モノマー;
アクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等のカルボニル基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸等のカルボキシル基含有モノマー;
3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシシシラン、ビニルトリエトキシシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;
アミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノ-n-ブチル(メタ)アクリレート、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p-アミノスチレン、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;
ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;
フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルエーテル、ビニルケトン、シリコーンマクロマー等が挙げられる。
上記(A1-2)成分は、上記モノマーを適宜混合したモノマー群を乳化重合することにより製造することができる。重合方法としては公知の方法を採用すればよく、通常の乳化重合の他、ソープフリー乳化重合、フィード乳化重合、シード乳化重合等を採用することもできる。重合時には、例えば、乳化剤、開始剤、分散剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、連鎖移動剤、pH調整剤等を使用することができる。
乳化剤としては、乳化重合に使用可能な各種界面活性剤が使用でき、これらは重合性不飽和二重結合を有する反応性タイプ(反応性界面活性剤)であってもよい。乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤をそれぞれ単独でまたは組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば上記(A1-1)成分に記載したものの中から適宜選択できる。
また、上記(A1-2)成分のガラス転移温度は、上記モノマーの種類、混合比率等を選定することで調整できる。このガラス転移温度は、最終的な要求性能等を考慮して適宜設定すればよいが、好ましくは-50~80℃程度(より好ましくは-40~60℃程度)である。なお、ガラス転移温度は、Foxの計算式により求めることができる。
上記(A1-2)成分の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは300nm以下(より好ましくは20~250nm、さらに好ましくは30~200nm)である。平均粒子径がこのような範囲内であれば、含浸補強性、シール性、耐白華性、耐白化性等において有利な効果を得ることができる。なお、ここに言う平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値である。
なお、上記(A1-2)成分としては、モノマー組成、ガラス転移温度、平均粒子径等が異なるものを2種以上混合して使用することもできる。
本発明において、上記(A1)成分の好適な態様としては、上記(A1-1)成分のみの態様、上記(A1-2)成分のみの態様、上記(A1-1)成分及び上記(A1-2)成分を含む態様が挙げられる。特に、本発明では、上記(A1-1)成分及び上記(A1-2)成分を併用して含むことが好ましい。これにより、上記硬化剤を使用した場合に、種々の基材、及び塗膜に対して、より一層優れた密着性、耐水性等を確保することができる。
上記(A1-1)成分と上記(A1-2)成分の混合比(固形分重量比)は、(A1-1):(A1-2)=5:95~80:20(より好ましくは10:90~60:40、さらに好ましくは12:88~55:45、特に好ましくは15:85~45:55)であることが好ましい。このような場合、種々の基材及び塗膜に対して優れた密着性を発揮し、特に、既存塗膜及び上塗塗膜との密着性も高めることができる。さらには、耐水性、塗膜外観に優れた塗膜を形成することができる。
本発明では、上記(A1)成分が上記(A1-1)成分を含む場合、(A2)成分として、(A2-1)アミノ基含有樹脂(以下「(A2-1)成分」ともいう)を含むことが好ましい。このような(A2-1)成分としては、例えば、1分子中にアミノ基を2個以上含有するポリアミン樹脂が使用でき、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、複素環状アミン及びこれらポリアミン樹脂のアミノ基を変性してなる変性ポリアミン樹脂等が挙げられる。なお、上記ポリアミン樹脂の変性には、公知の方法が利用でき、例えば、アミノ基のアミド化、アミノ基とカルボニル化合物のマンニッヒ反応、アミノ基とエポキシ基の付加反応、アミノ基とスチレンとの付加反応等が挙げられる。また、(A2-1)成分としては、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミドアミン、脂環式ポリアミドアミン、芳香族ポリアミドアミン等も使用できる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。なお、本発明では、エポキシ基とアミノ基を併有する樹脂は、1分子中に相対的にエポキシ基を多く含むものを(A1)成分、アミノ基を多く含むものを(A2)成分として取り扱えばよい。
本発明では、(A2-1)成分として、例えば、脂肪族ポリアミン、変性脂肪族ポリアミンから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。これにより、上記(A1-1)成分と混合した場合、基材、塗膜への付着発現性、密着性が向上する。脂肪族ポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン等の鎖状脂肪族ポリアミン;N-アミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スピロアセタールジアミン)、ノルボルナンジアミン、トリシクロデカンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の環状脂肪族ポリアミン;メタキシレンジアミン等の脂肪芳香族アミン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。本発明では、特にメタキシレンジアミン、メタキシレンジアミンのスチレン付加反応生成物から選ばれる1種以上を含むことが好適である。
(A2-1)成分の態様としては、特に限定されないが、水性媒体に溶解可能な水可溶型樹脂、または水性媒体に分散可能な水分散型樹脂等が使用できる。本発明では、(A2-1)成分として、水可溶型樹脂を含むことが好適である。この場合、貯蔵安定性に優れるとともに、シラン化合物の活性を高めることができる。また、上記(A1-1)成分と混合した場合には、基材、塗膜への付着発現性、密着性がよりいっそう向上するとともに、耐水性、塗膜外観に優れた塗膜を形成することができる。なお、(A2-1)成分は、無溶剤型(固形分100重量%)であっても、予め(A2-1)成分が水性媒体に溶解又は分散したものであってもよい。(A2-1)成分の固形分は、好ましくは50重量%以上(より好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上)である。(A2-1)成分の固形分の上限は100重量%以下である。この範囲を満たす場合、本発明の効果を十分に発揮することができる。なお、水性媒体とは、主に水を含む媒体であり、必要に応じ、例えば、低級アルコール、多価アルコール、エーテル化合物、エステル化合物、アルキレンオキサイド含有化合物等の水溶性溶剤が混合されていてもよい。
また、上記(A2-1)成分は、(A2-1)成分の活性水素当量yが、好ましくは10~1000(より好ましくは50~800、さらに好ましくは80~600)である。なお、ここでいう「活性水素当量y」は、1グラム当量の活性水素基を含む樹脂固形分のグラム数[g/eq]であり、アミノ基含有樹脂の重量平均分子量を1分子当たりのアミノ基の水素原子数で除した値である。
上記(A2-1)成分は、上記(A1-1)成分の固形分100重量部に対し、固形分換算で好ましくは1~50重量部(より好ましくは2~40重量部)である。このような場合、優れた塗膜物性を得ることができる。
また、上記(A1-1)成分に対する上記(A2-1)成分の混合比は、上記(A1-1)成分のエポキシ当量([X];固形分換算値)と、上記(A2-1)成分の活性水素当量([Y];固形分換算値)の比[X/Y]が、好ましくは0.5~5(より好ましくは0.6~4、さらに好ましくは0.7~3)となるように設定することができる。
なお、上記X、上記Yは混合時の配合部数から求められるものであり、具体的に、上記[X]は、(A1-1)成分の配合量(固形分重量部)を、(A1-1)成分のエポキシ当量xで除した値である。また、上記[Y]は、(A2-1)成分の配合量(固形分重量部)を、(A2-1)成分の活性水素当量yで除した値である。
本発明の(B)シラン化合物(以下「(B)成分ともいう」は、種々の塗膜物性(例えば、基材への密着性等)を高める作用を付与する成分であり、例えば、シランカップリング剤、テトラアルコキシシラン化合物、アルキルアルコキシシラン化合物等、あるいは、これらに由来する化合物(例えば、縮合物、変性物、重合物、共重合物等)等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤、イソシアヌレート基含有シランカップリング剤、メタクリル含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。中でも、アミノ基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤から選ばれる1種以上が好適である。これらを用いた場合、塗膜物性をよりいっそう高めることができる。
アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、γ-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロビルアミン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
エポキシ基(グリシジル基)含有シランカップリング剤としては、例えば、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル(エチル)ジメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
テトラアルコキシシラン化合物としては、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの縮合物、及びこれらの変性物等が使用できる。テトラアルコキシシランとしては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec-ブトキシシラン、テトラt-ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、モノエトキシトリメトキシシラン、モノブトキシトリメトキシシラン、モノペントキシトリメトキシシラン、モノヘトキシトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
アルキルアルコキシシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
上記(B)成分は、上記(A)成分の固形分100重量部に対し、5重量部以上(好ましくは10~50重量部)含むことができる。このような場合、優れた塗膜物性を発揮することができる。また、本発明では、安定化剤の作用により、上記のように(B)成分を多量に含む場合であっても、水性被覆材の塗装作業性を確保することができる。
本発明の水性被覆材は、(C)安定化剤(以下「(C)成分」ともいう)を必須成分として含むことを特徴とする。(C)成分は、塗装作業に好適な流動性(粘性、チクソトロピー性)等を安定化する作用を有するものである。特に、上記(B)成分を混合した際の、粘度低下、分離、ゲル化等を抑制し、塗装作業に好適な流動性を確保することができるものである。また、水性被覆材の貯蔵安定性を高めることもできる。
本発明では(C)成分としては、(C1)無機質増粘剤(以下「(C1)成分」ともいう)を含むことを特徴とする。(C1)成分としては、例えば、無機層状化合物、またはシリカエアロジル、ヒュームドシリカ等が使用できる。本発明では、(C1)成分として、無機層状化合物を含むことが好ましい。無機層状化合物としては、例えば、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、バイデライト、ノントロナイト等の天然または合成のスメクタイト粘土鉱物;ケイ酸アルミニウムマグネシウム;及び、これらとカルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、グアーガム等の有機高分子より変性された誘導体等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
また、本発明では、上記(C1)成分に加えて、さらに(C2)有機質増粘剤(以下「(C2)成分」ともいう)を含むことができる。(C2)成分としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、アルカリ膨潤型増粘剤、疎水変性アルカリ膨潤型増粘剤、ウレタン会合性増粘剤等が挙げられる。この中でも、疎水変性アルカリ膨潤型増粘剤、ウレタン会合性増粘剤等が好ましい。これらは1種または2種以上で使用できる。このような(C2)成分を併用して含むことにより、塗装作業性、貯蔵安定性等をよりいっそう高めることができる。
(C)成分の含有量は、上記(A)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは0.1~15重量部(より好ましくは0.2~10重量部、さらに好ましくは0.3~8重量部)である。このような範囲の場合、本発明の効果を十分に発揮することができる。また、上記(C1)成分と上記(C2)成分の混合比(固形分重量比)は、(C1):(C2)=50:50~100:0(より好ましくは55:45~98:2、さらに好ましくは60:40~95:5)であることが好ましい。このような場合、塗装作業性、貯蔵安定性に優れるとともに、耐白化性等の塗膜物性をよりいっそう高めることができる。
本発明の水性被覆材は、上記(A)成分、上記(B)成分、及び上記(C)成分を含むものであれば、1液型、2液型のいずれであってもよい。その態様としては、例えば、
(1)(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む1液型 [(A)+(B)+(C)] 、
(2)主剤に(A)成分、硬化剤に(B)成分を含み、主剤及び/または硬化剤に(C)成分を含む2液型(なお、主剤には必要に応じて(B)成分を含むこともできる)、
さらに、上記(A)成分が、上記(A1)成分及び上記(A2)成分を含む場合には、
(3)主剤に(A1)成分、硬化剤に(A2)成分を含み、主剤及び/または硬化剤に(B)成分、主剤及び/または硬化剤に(C)成分を含む2液型、
等が挙げられる。
本発明の水性被覆材の粘度は、好ましくは0.1~30Pa・s(より好ましくは0.5~20Pa・s)である。また、本発明の水性被覆材が上記2液型の場合は、主剤の粘度及び主剤と硬化剤の混合後の粘度が上記を満たすことが好ましい。このような場合、塗装作業性、貯蔵安定性に優れるとともに、十分な塗膜物性を示すことができる。なお、本発明における粘度は、BH型粘度計による20rpmにおける粘度(4回転目の指針値)を測定(測定温度は25℃)することにより求められる値である。
本発明の水性被覆材には、上述の成分の他、主剤及び/または硬化剤に必要に応じ着色顔料、体質顔料、防錆顔料、pH調整剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、増粘剤(チクソトロピック調整剤)、造膜助剤、艶消し剤、架橋剤、触媒、硬化促進剤、密着性付与剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を、本発明の効果が阻害されない範囲内で混合することができる。本発明の水性被覆材のpHは、好ましくは3~12(より好ましくは4~11)である。なお、本発明の水性被覆材が上記2液型の場合は、主剤のpHが上記を満たすことが好ましい。
本発明の水性被覆材には、触媒(P)(以下、単に「(P)成分」ともいう)を混合することが好ましい。(P)成分は、例えば、水性被覆材中のグリシジル基(エポキシ基)とアミノ基との反応、あるいはアルコキシシリル基の加水分解・縮合等を促進させるものであり、基材への密着性、特に既存塗膜を有する基材への密着性をよりいっそう高めることができる。(P)成分としては、例えば、安息香酸、サリチル酸、トリヒドロキシ安息香酸、フタル酸、ケイ皮酸、ベンゼンヘキサカルボン酸等の各種芳香族カルボン酸類;トリメチルアミン、エチルジメチルアミン、プロピルジメチルアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、1,8-ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン-1(DBU)、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP-10)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP-30)等の第三アミン類、ヒドロキシルアミン、フェノキシアミン等のヒドロキシルアミン類、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4(5)-メチルイミダゾール、2-エチル-4メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール類等の上記(B)成分、上記(M)成分以外のアミン類;フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、t-ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール等のフェノール類、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オルガノチタネート、酢酸ナトリウム等の有機金属化合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。これら(P)成分の中でも、特に、有機錫化合物、芳香族カルボン酸類が好適に用いられる。
上記(P)成分の混合量は、上記(A)成分の合計(固形分)100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部(好ましくは0.02~8重量部)である。このような範囲の場合、基材、塗膜への付着発現性、密着性がよりいっそう向上するとともに、耐水性、塗膜外観に優れた塗膜を形成することができる。
本発明の水性被覆材としては、着色ないし無着色、あるいは不透明ないし透明等の種々のものが使用できる。本発明では、好ましくは透明性を有するクリヤー型水性被覆材として使用できる。また、本発明の水性被覆材は、固形分が好ましくは5~60重量%(より好ましくは6~50重量%、さらに好ましくは7~45重量%)である。なお、固形分は、上記水性媒体の混合により調整することができる。このような範囲の場合、塗装作業性に優れるとともに、種々の基材、及び塗膜に対して、密着性をよりいっそう向上させることができる。
本発明の水性被覆材は、内外装壁面・床面等への塗装における上塗材、下塗材等として用いることができる。例えば、モルタル、コンクリート、窯業系サイディングボード、セラミック系サイディングボード、金属系サイディングボード、押出成形板、スレート板、ケイ酸カルシウム板、ALC板、金属、木材、ガラス、陶磁器、合成樹脂等の基材、あるいはこのような基材上(基材の表面)に形成された多種多様な既存塗膜等の下地に適用する水性被覆材として用いることができる。
本発明の水性被覆材の塗装においては、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装等の種々の方法を採用することができる。また、工場内で塗装する場合は、上記以外にもロールコーター、フローコーター等を用いて塗装することもできる。
水性被覆材の塗付け量については、好ましくは0.05~0.5kg/m(より好ましくは0.07~0.3kg/m)程度である。水性被覆材の塗回数は、下地の状態によって適宜設定すればよいが、好ましくは1~2回である。水性被覆材の乾燥時間は、好ましくは1時間以上1週間以内とすればよい。また乾燥温度は、好ましくは-10℃以上50℃以下、より好ましくは-5℃以上40℃以下であればよい。本発明の水性被覆材は、常温硬化型として用いることができる。
以下に実施例及び比較例を示して、本発明の特徴をより明確にする。
なお、原料としては以下のものを使用した。
(A)結合材
(A1)樹脂成分
・(A1-1)水性エポキシ樹脂[ビスフェノールA型エポキシ樹脂(固形型)水分散体、固形分46重量%、エポキシ当量x508]
・(A1-2)エポキシ基含有アクリル樹脂エマルション[スチレン/2-エチルヘキシルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、固形分:33重量%、グリシジルメタクリレート含有量:9重量%、平均粒子径:70nm]
(A2)架橋剤
・(A2-1)アミノ基含有樹脂[水可溶型変性脂肪族ポリアミン樹脂、固形分80重量%、含水量20重量%、活性水素当量y:147]
・(A2-2)ポリアミン樹脂[水可溶型、メタキシレンジアミンのスチレン付加反応生成物、固形分100重量%、活性水素当量y:103]
(B)シラン化合物
・(B1-1)アミノ基含有シラン化合物[N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン]
(C)安定化剤
(C1)無機質増粘剤
・(C1-1)有機変性ベントナイト[粉体]
(C2)有機質増粘剤
・(C2-1)ウレタン系会合性増粘剤[固形分30重量%]
・(C2-2)疎水変性アルカリ膨潤性アクリル樹脂エマルション[固形分30重量%]
・(C2-3)アルカリ膨潤型アクリル樹脂エマルション[固形分30重量%]
・(C2-4)ヒドロキシエチルセルロース(HEC;粉末)
(P)触媒
・有機錫化合物分散液[固形分:10重量%]
その他
・添加剤[造膜助剤、消泡剤、触媒、等]
(実施例1-1~1-8及び比較例1-1~1-4)
(A1-1)成分、(C)成分、(P)成分、添加剤、及び水を表1に示す混合比で混合したものを主剤1(1a~1l)とした。なお、(C)成分は、表2に示すa~lを使用した。例えば、主剤1aは、主剤1の(C)成分として表2に示すaを使用、主剤1bは、主剤1の(C)成分として表2に示すb成分を使用したものである。
また、(A2-1)成分、及び(B-1)成分を表1に示す混合比率で混合したものを硬化剤1とした。
Figure 0007523295000001
Figure 0007523295000002
次いで、以下の評価を実施した。結果は、表3に示す。
<混合安定性評価>
上記主剤1(1a~1l)に、上記硬化剤1をそれぞれ混合し水性被覆材1(1a~1l)を製造した。このとき、硬化剤1混合後の粘度変化を評価した。
評価基準は、粘度変化がほとんど生じなかったものを「AA」、著しい粘度低下が生じたものを「D」とする6段階評価(AA>A>AB>B>C>D)評価とした。
<塗装作業性評価>
垂直に設置した基材(サイディングボード)に、得られた水性被覆材1a~1lを塗付け量0.1Kg/mとなるように塗付し、塗装作業性を評価した。
評価基準は、タレがほとんど生じず、1回の塗装で0.1Kg/mを塗着可能なものを「AA」、タレが生じ、1回の塗装で0.1Kg/mで塗着できないものを「D」とする6段階評価(AA>A>AB>B>C>D)評価とした。
実施例1-1~1-8では、良好な混合安定性、塗装作業性を有するものであった。特に、実施例1-2、1-3において、優れた混合安定性、塗装作業性を有することができた。一方、比較例1-1~1-4では、硬化剤を混合後、著しい粘度低下を生じ、その結果、塗装作業性にも劣る結果となった。
(実施例2及び比較例2~実施例10及び比較例10)
(A1-1)成分、(A1-2)成分、(B-2)成分、(B-3)成分、(C)成分、(P)成分、添加剤、及び水を表1に示す混合比で混合したものを主剤2(2a-2l)~主剤10(10a-10l)とした。なお、(C)成分は、表2に示すa~lを使用した。
また、(A2-2)成分、及び(B-1)成分を表1に示す混合比率で混合したものを硬化剤2~硬化剤10とした。
得られた、主剤2~10と、硬化剤2~10をそれぞれ混合し水性被覆材2(2a-2l)~水性被覆材10(10a-10l)を製造し、上記と同様の評価を実施した。結果は、表3、表4に示す。
Figure 0007523295000003
Figure 0007523295000004
(参考例1~10)
水性被覆材1b~10bについて、以下の評価を実施した。結果は表5に示す。
<密着性評価1>
・試験体[I]
既存塗膜として無機質クリヤー塗膜が形成されたサイディングボード上に、水性被覆材(クリヤー型水性被覆材)1b~10bを塗付け量0.1kg/mとなるように混合直後に塗付し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で4時間乾燥させ、次いで、水性上塗材(アクリルシリコン樹脂エマルション塗料)を塗付け量0.1kg/mとなるように塗付し、50℃環境下で、1日間乾燥させた試験体[I]を作製した。
作製した試験体[I]を、JIS K 5600-5-6に準じた碁盤目テープ法にて密着性を評価した。
評価基準は、以下の通りである。
AA:欠損部面積が5%未満
A:欠損部面積が5%以上10%未満
AB:欠損部面積が10%以上25%未満
B:欠損部面積が25%以上40%未満
C:欠損部面積が40%以上55%未満
D:欠損部面積が55%以上
<密着性評価2>
・試験体[II]
硬化剤として、50℃下で7日間貯蔵後の硬化剤1~10を使用した以外は、試験体[I]と同様の手順で水性被覆材1b~10b、及び水性上塗材を塗付、乾燥させ試験体[II]を作製した。
作製した試験体[II]について、上記試験体[I]と同様に密着性を評価した。
<密着性評価3>
・試験体[III]~[V]
既存塗膜として無機質クリヤー塗膜が形成されたサイディングボード上に、水性被覆材1b~10bを塗付け量0.1kg/mとなるように混合直後に塗付し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で4時間乾燥させ、次いで、水性上塗材(アクリルシリコン樹脂エマルション塗料)を塗付け量0.1kg/mとなるように塗付し、標準状態で、1日間乾燥させた試験体[III]、4日間乾燥させた試験体[IV]、7日間乾燥させた試験体[V]を作製した。
・試験体[VI]
既存塗膜として無機質クリヤー塗膜が形成されたサイディングボード上に、水性被覆材1b~10bを塗付け量0.1kg/mとなるように混合直後に塗付し、50℃環境下で7日間乾燥させ、次いで、水性上塗材(アクリルシリコン樹脂エマルション塗料)を塗付け量0.1kg/mとなるように塗付し、標準状態で、1日間乾燥させた試験体[VI]を作製した。
<耐水性評価>
既存塗膜として黒色アクリル板(150mm×200mm×3mm)上に、水性被覆材1b~10bを塗付厚み0.15mmとなるように混合直後に塗付し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で1日間乾燥させた試験体[VII]を作製した。それぞれの試験体を20℃の水に24時間浸漬させた後、試験体を取り出し、乾燥(23℃、3時間)させ、塗膜状態を目視にて、膨れ、剥れ、白化等を観察し評価した。
評価基準は、ほぼ異常がなかったものを「AA」、異常があったものを「D」とする6段階評価(AA>A>AB>B>C>D)評価とした。
参考例1~10において、基材及び上塗材と良好な密着性を有するものであった。特に、参考例5~10においては、すべて評価A以上であり、十分な密着性を有するものであった。また、参考例3、6~10では、耐水性評価A以上であり、優れた耐水性を示した。
Figure 0007523295000005



Claims (2)

  1. 主剤に、樹脂成分及び安定化剤を含み、
    硬化剤に、架橋剤及びシラン化合物を含み
    上記樹脂成分は、水溶性エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂分散体を含み、
    上記架橋剤は、ポリアミン樹脂を含み、 上記安定化剤が、無機質増粘剤及び有機質増粘剤を含み、
    上記無機質増粘剤と上記有機質増粘剤の混合比(固形分重量比)は、60:40~98:2であることを特徴とする2液型の水性被覆材。
  2. 上記樹脂成分と上記架橋剤の合計(固形分100重量部に対し、上記シラン化合物を5重量以上含むことを特徴とする請求項1に記載の2液型の水性被覆材。
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