JP7518572B1 - 管部材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】管楽器に用いられる管部材を漆を主材にして構成されたものにする管部材の製造方法等を提供する。【解決手段】管楽器である横笛に用いられる管部材の製造方法が、粘性液状物製作工程S1と、含浸シート材製作工程S2と、含浸シート材巻き付け工程S3と、含浸シート材乾燥工程S4と、含浸シート材追加巻き付け工程S5と、含浸シート材追加乾燥工程S6と、芯材除去工程S7と、仕上げ工程S8とを有したものである。このようなものであれば、管楽器に用いられる管部材を漆を主材にして構成されたものにすることができる。【選択図】図11

Description

本発明は、管楽器に用いられる管部材の製造方法に関する。
従来から、漆は、その固化する性質を利用して天然塗料として漆器の製造において広く使用されている(例えば、特許文献1を参照)。
既知である漆器の製造方法は、主に木材(竹材を含む)により形成された本体の外面に漆を塗布する工程を含んでいる。
ところが、従来の製造方法により製造された漆器は、本体の外面にだけ漆を有するもの(塗布されたもの)であるため、製造段階において本体内部に虫が潜んでいた場合には、いわゆる「虫食い」に起因して完成後の漆器を損壊させてしまうという恐れがあった。
また、漆器に用いられた主材が木材である場合、歳月が経て乾燥が進むことによって惹き起こされるいわゆる「目痩せ」現象に起因して、局所的な凹みや凹凸(痩せ目)が生じる場合があった。なお、かかる「目痩せ」現象に伴って生じ得る凹みや凹凸(痩せ目)は、漆器の分野では茶人等に賛美され得る要素でもあるが、とりわけ、安定的な音色を奏でる楽器の分野においては極めて不都合なものであることは言うまでもない。
さらに、木製の管部材を用いてなる既知の管楽器では、その内部に残存した使用者の唾液等に起因して、悪臭が生じやすいという不具合や、カビが発生しやすいという不具合や、腐食しやすいという不具合を有していた。
かかる従来の問題点に着目した発明者は、横笛に使用される管部材そのものを、漆を主材にして構成すれば従来の問題点が解消できることを見出した。
なお、以上の事情は、横笛以外の管楽器においても同様である。
実用新案登録第3669435号公報
本発明は、以上のような事情に着目してなされたものであり、少なくとも、管楽器に用いられる管部材を、漆を主材にして構成されたものにする管部材の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
請求項1に係る発明は、管楽器に用いられる管部材の製造方法であって、漆を主材とした粘性液状物を製作する粘性液状物製作工程と、前記粘性液状物を略矩形状のシート材に対して含浸させて含浸シート材を製作する含浸シート材製作工程と、前記含浸シート材製作工程により製作された前記含浸シート材を棒状の芯材に対して巻き付ける含浸シート材巻き付け工程と、前記含浸シート材巻き付け工程を経て前記芯材に対して巻き付けられた含浸シート材を乾燥させることにより前記芯材回りに略円筒状をなすように固化した中間筒状体を形成する含浸シート材乾燥工程と、前記含浸シート材乾燥工程を経て形成された前記中間筒状体を厚肉化させるべく当該中間筒状体の外周面に対して新たに前記含浸シート材製作工程により製作された含浸シート材を追加巻き付けする含浸シート材追加巻き付け工程と、前記含浸シート材追加巻き付け工程を経て前記中間筒状体に対して巻き付けられた含浸シート材を乾燥させることにより前記中間筒状体が厚肉化されてなる厚肉化中間筒状体を形成する含浸シート材追加乾燥工程と、前記芯材を前記厚肉化中間筒状体から除去する芯材除去工程と、前記芯材除去工程を経て得られた中空筒状をなす前記厚肉化中間筒状体の表面を整えて管部材を形成する仕上げ工程と、を備えている管楽器に用いられる管部材の製造方法である。
請求項2に記載の発明は、前記含浸シート材追加巻き付け工程及び前記含浸シート材追加乾燥工程は、前記厚肉化中間筒状体が一定の肉厚に形成されるまで、複数回繰り返されるものである請求項1記載の管楽器に用いられる管部材の製造方法である。
請求項3に記載の発明は、前記仕上げ工程が、少なくとも、前記厚肉化中間筒状体を研磨する作業、及び、当該研磨作業後の前記厚肉化中間筒状体の表面に漆を塗布する作業を含むものである請求項1記載の管部材の製造方法である。
請求項4に記載の発明は、前記シート材が、蚊帳生地である請求項1記載の管部材の製造方法である。
請求項5に記載の発明は、前記シート材が、和紙である請求項1記載の管部材の製造方法である。
請求項6に記載の発明は、前記粘性液状物が、前記漆に少なくとも砥の粉及び水を加えたものである請求項1記載の管部材の製造方法である。
以上説明したように本発明によれば、管楽器に用いられる管部材を、漆を主材にして構成されたものにする管部材の製造方法を提供することができるものとなる。
本発明の製造工程(粘性液状物製作工程)を説明するための斜視図。 同実施形態の製造工程(含浸シート材製作工程)を説明するための斜視図。 同実施形態の製造工程(含浸シート材巻き付け工程)を説明するための斜視図。 同実施形態の製造工程(含浸シート材乾燥工程)を説明するための説明図((a)斜視図・(b)X方向矢視図)。 同実施形態の製造工程(含浸シート材追加巻き付け工程)を説明するための斜視図。 同実施形態の製造工程(含浸シート材追加乾燥工程)を説明するための説明図((a)斜視図・(b)Y方向矢視図)。 同実施形態の製造工程(繰り返しの含浸シート材追加巻き付け工程)を説明するための斜視図。 同実施形態の製造工程(繰り返しの含浸シート材追加乾燥工程)を説明するための説明図((a)斜視図・(b)Z方向矢視図)。 同実施形態の製造工程(芯材除去工程)説明するための斜視図。 同実施形態における管楽器(管部材)の斜視図。 同実施形態における管部材の製造方法を説明するためのフロー図。
以下、本発明の一実施形態を、図1~11を参照して説明する。
この実施形態は、管楽器である横笛A、及び、横笛Aに用いられる管部材Kの製造方法に関するものである。
管部材Kは、図10に示すように、唄口となる単一の孔h1及び指孔となる七つの孔h2を有してなる横笛Aの主要部品として使用されるものである。
以下、管部材Kの製造方法について説明する。
この実施形態における管部材Kの製造方法は、漆を主材とした粘性液状物Uを製作する粘性液状物製作工程S1と、粘性液状物Uを略矩形状のシート材である蚊帳生地Cに対して含浸させて含浸シート材Gを製作する含浸シート材製作工程S2と、含浸シート材製作工程S2により製作された含浸シート材Gを棒状の芯材Bに対して巻き付ける含浸シート材巻き付け工程S3と、含浸シート材巻き付け工程S3を経て芯材Bに対して巻き付けられた含浸シート材Gを当該芯材Bに対して巻き付けられた状態のまま乾燥させることにより芯材B回りに略円筒状をなすように固化した中間筒状体Dを形成する含浸シート材乾燥工程S4と、含浸シート材乾燥工程S4を経て形成された中間筒状体Dを厚肉化させるべく当該中間筒状体Dの外周面に対して新たに含浸シート材製作工程S2により製作された含浸シート材Gを追加巻き付けする含浸シート材追加巻き付け工程S5と、含浸シート材追加巻き付け工程S5を経て中間筒状体Dに対して巻き付けられた含浸シート材Gを乾燥させることにより中間筒状体Dが厚肉化されてなる厚肉化中間筒状体Eを形成する含浸シート材追加乾燥工程S6と、芯材Bを厚肉化中間筒状体Eから除去する芯材除去工程S7と、芯材除去工程S7を経て得られた中空筒状をなす厚肉化中間筒状体Eの表面を整えて管部材Kを形成する仕上げ工程S8と、を備えている。
以下、各工程について詳述する。
<粘性液状物製作工程S1>
粘性液状物製作工程S1は、図1に示すように、漆を主材とした粘性液状物Uを製作するものである。粘性液状物Uは、漆を含有しているため乾燥すると固化するものとなっている。粘性液状物Uは、含浸シート材製作工程S2において、シート材である蚊帳生地Cに浸み込むものとなっている。
ここで、本明細書の「漆」とは、漆の木から採取した樹液を精製してなるものを指している。すなわち、本明細書の「漆」とは、漆の木から採取した樹液から木屑やごみをろ過した後のものであって一般に「生漆」と称されるものを指している。
漆は、乾燥すると固化する性質のものである。漆は、20~35℃、及び、高湿度にさらされると、自らが含有する酸化酵素(ラッカーゼなど)が働いて固化するものとなっている。
この実施形態の粘性液状物Uは、漆と、砥の粉と、水を含有させてなるものである。粘性液状物Uを構成する漆、砥の粉、及び、水の各分量は適宜設定されるものである。なお、この実施形態の粘性液状物Uは、45gの漆(生漆)と、108gの砥の粉と、40gの水により作られている。
<含浸シート材製作工程S2>
含浸シート材製作工程S2は、図2に示すように、漆を主材とした粘性液状物Uを略矩形状のシート材である蚊帳生地Cに対して含浸させた含浸シート材Gを製作するものである。
含浸シート材製作工程S2では、略矩形状をなすシート材である蚊帳生地Cに対して、粘性液状物Uを含浸させて、漆の成分が固化する前段階である変形可能な含浸シート材Gを製作する。蚊帳生地Cに対して粘性液状物Uを含浸させる作業は、必要に応じてヘラや刷毛等の道具Tを使用して実施される。
含浸シート材製作工程S2は、例えば、平板状をなすガラス板(図示せず)の上において行われる。すなわち、作業台であるガラス板の水平面上に更の蚊帳生地Cを配設し、その後、当該ガラス板の上に配設された蚊帳生地Cに対して粘性液状物Uを含浸させる作業が行われる。
なお、含浸シート材製作工程S2は、ガラス板の上で実施されるものに限られるものではなく、蚊帳生地Cに対して粘性液状物Uを含浸させることができれば、適宜の方法を採用し得るものである。
シート材である蚊帳生地Cは、粘性液状物Uを埋め込ませるのに適した目の粗い平織生地である。蚊帳生地Cは、綿又は麻により製造されたものが一般的であるが、この実施形態における蚊帳生地Cは、麻により製造されたものである。硬質繊維である麻により製造された蚊帳生地Cは、他の繊維によって製造されたものと比較して特に耐久性に優れており、水にぬれると綿の二倍の強度を発揮し得るものであり、引っ張りにも強く、吸水性にも優れたものとなっている。
蚊帳生地Cの横幅寸法w3は、少なくとも、横笛Aに必要な管部材Kの長手寸法w8よりも長い寸法に設定されている。
<含浸シート材巻き付け工程S3>
含浸シート材巻き付け工程S3は、図3に示すように、含浸シート材製作工程S2により製作され漆の成分が固化する前段階である変形可能な含浸シート材Gを棒状の芯材Bに巻き付けるものである。
芯材Bは直線棒状のものである。この実施形態では、芯材Bの直径w1が約13mmに設定されている。芯材Bの長手寸法w2すなわち軸心方向の寸法は、蚊帳生地Cの横幅寸法w3よりも長く設定されている。芯材Bは、円柱状をなしている。芯材Bの材質については木製のものや金属製のものやプラスチック製のもの等、どのようなものであっても構わない。
芯材Bは、詳しくは後述するように、芯材除去工程S7において厚肉化中間筒状体Eから除去される(引き抜かれる)ものとなっている。
ここで、芯材Bの外周面には、含浸シート材Gが巻き付けられる前に、厚肉化中間筒状体Eの内周面との滑動を促進させるための滑動促進手段(図示せず)を設けておくことが望ましい。なお、滑動促進手段の具体例としては、例えば、芯材Bの外周面に滑動性に優れたプラスチック製フィルムを被覆させることを挙げることができる。芯材Bの外周面に滑動促進手段を設けておけば、芯材除去工程S7において、含浸シート材追加乾燥工程S6を終えた芯材Bを厚肉化中間筒状体Eから円滑に抜き出すことができるものとなる。
含浸シート材巻き付け工程S3は、含浸シート材製作工程S2と同様に、例えば、ガラス板の上において行われるものである。すなわち、ガラス板の上に、含浸シート材Gを略矩形状に広げた状態に配設した後に、当該含浸シート材Gを一端側から芯材Bに対して巻き付ける作業が行われる。
<含浸シート材乾燥工程S4>
含浸シート材乾燥工程S4は、図4に示すように、含浸シート材巻き付け工程S3を経て芯材Bに対して巻き付けられた含浸シート材Gを、芯材Bに対して巻き付いた状態のまま所定の方法で乾燥させることにより芯材B回りに略円筒状をなすように固化した中間筒状体Dを形成するものである。
含浸シート材乾燥工程S4は、芯材Bに対して巻き付けられた未乾燥状態の含浸シート材Gを乾燥可能な環境下におくことにより、漆の固化反応を起こさせるものである。この実施形態では、含浸シート材乾燥工程S4は、約1日(24時間)の時間をかけて行われる。
含浸シート材乾燥工程S4は、芯材Bに対して巻き付けられた未乾燥状態の含浸シート材Gを乾燥可能な環境下におくことができれば種々の態様を採り得るものである。含浸シート材乾燥工程S4は、例えば、漆風呂と呼ばれる乾燥室の中に入れ、高湿度雰囲気にさらすことができれば、固化反応を積極的に促進させることができるものとなっている。
含浸シート材乾燥工程S4を経て得られた中間筒状体Dの肉厚寸法w4は、横笛Aに使用される管部材Kとして成立し得る値に至っていないものとなっている。そのため、横笛Aに使用される管部材Kとして成立し得る肉厚寸法w5を得るために、含浸シート材乾燥工程S4の後に、含浸シート材追加巻き付け工程S5及び含浸シート材追加乾燥工程S6が行われる。
<含浸シート材追加巻き付け工程S5>
含浸シート材追加巻き付け工程S5は、図5に示すように、含浸シート材乾燥工程S4を経て形成された中間筒状体Dを厚肉化させるべく当該中間筒状体Dの外周面に対して新たに含浸シート材製作工程S2により製作された含浸シート材Gを追加巻き付けするものである。
含浸シート材追加巻き付け工程S5は、含浸シート材巻き付け工程S3と同様に、例えば、ガラス板の上において行われるものである。すなわち、ガラス板の上に、新たに含浸シート材Gを略矩形状に広げた状態に配設した後に、当該新たな含浸シート材Gを一端側から芯材Bに対して保持された状態の中間筒状体Dに対して巻き付ける作業が行われる。
<含浸シート材追加乾燥工程S6>
含浸シート材追加乾燥工程S6は、図6に示すように、含浸シート材追加巻き付け工程S5を経て中間筒状体Dに対して巻き付けられた新たな含浸シート材Gを乾燥させることにより中間筒状体Dが厚肉化されてなる厚肉化中間筒状体Eを形成するものである。
すなわち、図6に示すように、最初に形成された中間筒状体Dに対して巻き付けられた追加の含浸シート材Gが乾燥すると、最初に形成された中間筒状体Dと一体化されて、最初に形成された中間筒状体Dよりも肉厚寸法w6が増加した厚肉化中間筒状体Eが形成されるものとなる。
<含浸シート材追加巻き付け工程S5・含浸シート材追加乾燥工程S6の繰り返しについて>
この実施形態の管部材Kの製造方法は、含浸シート材追加巻き付け工程S5及び含浸シート材追加乾燥工程S6が、厚肉化中間筒状体Eが一定の肉厚に形成されるまで、複数回繰り返されるものである。
ここで、図7では、二回目に行われる含浸シート材追加巻き付け工程S5を示している。また、図8では、二回目に行われる含浸シート材追加乾燥工程S6を示している。
この実施形態では、管部材Kに要する所定の肉厚寸法w5が2mmに設定されている。そのため、管部材Kの製造方法は、最終的に得られる厚肉化中間筒状体Eの肉厚寸法w7が2mmを超えるまで、含浸シート材追加巻き付け工程S5、及び、含浸シート材追加乾燥工程S6が繰り返されるものとなっている。
図7に示された二回目の含浸シート材追加巻き付け工程S5は、直前の含浸シート材追加乾燥工程S6(図6を参照)を経て形成された中間筒状体である厚肉化中間筒状体Eの外周面に対して、新たな含浸シート材Gを追加巻き付けするものである。
図8に示された二回目の含浸シート材追加乾燥工程S6は、直前の中間筒状体である厚肉化中間筒状体E(図6を参照)が更に厚肉化されてなる最終的な厚肉化中間筒状体Eを形成するものである。
この実施形態では、図7に示された二回目の含浸シート材追加巻き付け工程S5、及び、図8に示された二回目の含浸シート材追加乾燥工程S6を終えると、最終的な厚肉化中間筒状体Eの肉厚寸法w7が2mmを超えたものとなっている。
なお、含浸シート材追加巻き付け工程S5及び含浸シート材追加乾燥工程S6の繰り返し回数は、特に限定されるものではなく、所定の肉厚寸法w7が得られるまで実施される。
<芯材除去工程S7>
芯材除去工程S7は、芯材Bを所定の肉厚寸法w7が得られた最終的な厚肉化中間筒状体Eから除去するものである。
より具体的には、芯材除去工程S7は、芯材Bを厚肉化中間筒状体Eから抜き取るものである。
既に上述したように、芯材Bの外周面に滑動促進手段を設けておけば、芯材除去工程S7において、含浸シート材追加乾燥工程S6を終えた芯材Bを厚肉化中間筒状体Eから円滑に抜き出すことができるものとなる。
<仕上げ工程S8>
仕上げ工程S8は、図11に示すように、芯材除去工程S7を経た後に行われる。仕上げ工程S8は、芯材除去工程S7を経て得られた中空筒状をなす厚肉化中間筒状体Eの表面を整えて、最終的な製造物である管部材Kを形成するものである。
仕上げ工程S8は、最終的な管部材Kを形成するために必要な複数の作業により構成されている。
すなわち、仕上げ工程S8は、少なくとも、所定の長手寸法w8に調整するために厚肉化中間筒状体Eの両端部を切断する作業、厚肉化中間筒状体Eの表面を研磨する作業、当該研磨作業後の厚肉化中間筒状体Eの表面に意匠性を向上させるための漆を塗布する作業、及び、唄口となる単一の孔h1及び指孔となる七つの孔h2を穿孔する作業が含まれるものである。
以上説明したように、本実施形態に係る管楽器である横笛Aに用いられる管部材Kの製造方法は、漆を主材とした粘性液状物Uを製作する粘性液状物製作工程S1と、粘性液状物Uを略矩形状のシート材である蚊帳生地Cに対して含浸させて含浸シート材Gを製作する含浸シート材製作工程S2と、含浸シート材製作工程S2により製作された含浸シート材Gを棒状の芯材Bに対して巻き付ける含浸シート材巻き付け工程S3と、含浸シート材巻き付け工程S3を経て芯材Bに対して巻き付けられた含浸シート材Gを乾燥させることにより芯材B回りに略円筒状をなすように固化した中間筒状体Dを形成する含浸シート材乾燥工程S4と、含浸シート材乾燥工程S4を経て形成された中間筒状体Dを厚肉化させるべく当該中間筒状体Dの外周面に対して新たに含浸シート材製作工程S2により製作された含浸シート材Gを追加巻き付けする含浸シート材追加巻き付け工程S5と、含浸シート材追加巻き付け工程S5を経て中間筒状体Dに対して巻き付けられた含浸シート材Gを乾燥させることにより中間筒状体Dが厚肉化されてなる厚肉化中間筒状体Eを形成する含浸シート材追加乾燥工程S6と、芯材Bを厚肉化中間筒状体Eから除去する芯材除去工程S7と、芯材除去工程S7を経て得られた中空筒状をなす厚肉化中間筒状体Eの表面を整えて管部材Kを形成する仕上げ工程S8と、を備えている。
このため、本実施形態の製造方法によれば、横笛Aに用いられる管部材Kを、漆を主材にして構成されたものにすることができるものとなる。
管部材Kは、その肉自体(肉厚方向の全域)が固化した漆を主体に形成されているものとなっている。そのため、本実施形態の製造方法により得られた管部材Kであれば、内部に虫が潜むことに起因する虫食いの問題が生じ難いものとなるだけでなく、軽量化を図るための設計の自由度に優れたものとなる。
また、管部材Kの内部に虫が潜むという恐れが一切生じ得ないものであるため、管楽器である横笛Aを清潔感に優れた神聖なイメージを纏うものとすることができ、使用者は安心して使用することができるものとなっている。
また、主材が木材である場合にはいわゆる「目痩せ」現象に起因して局所的な凹みや凹凸が生じる場合があったが、本実施形態の管部材Kの製造方法であればかかる不具合が生じないものとなる。
さらに、この実施形態の管部材Kの製造方法であれば、管部材Kが漆を主材に構成されたものとなるため、抗菌性に優れたものとなり、使用者の唾液等に起因して悪臭が生じやすいという不具合やカビが発生しやすいという不具合や腐食しやすいという不具合が生じ難いものとなっている。
つまり、この実施形態の管部材Kの製造方法により得られた管部材Kは、漆の特性に基づいた抗菌作用、高い湿気耐性、及び、腐食防止性能を存分に発揮し得るものとなる。
含浸シート材追加巻き付け工程S5及び含浸シート材追加乾燥工程S6は、厚肉化中間筒状体Eが一定の肉厚寸法w7を得ることができるまで、複数回繰り返されるものである。
このため、管部材Kを所定の肉厚寸法w7を有するものとするための製造を、含浸シート材追加巻き付け工程S5及び含浸シート材追加乾燥工程S6を繰り返すことによって、柔軟に実行できるものとなっている。
仕上げ工程S8が、少なくとも、厚肉化中間筒状体Eを研磨する作業、及び、当該研磨作業後の厚肉化中間筒状体Eの表面に漆を塗布する作業を含むものである。
このため、仕上げ工程S8を経て外面が綺麗に整った管部材Kを好適に得ることができるものとなっている。
シート材が、蚊帳生地Cであるため、粘性液状物Uを好適に保持させることができるものとなるだけでなく、比較的軽量な管部材Kを得やすいものとなっている。
粘性液状物Uが、漆に少なくとも砥の粉及び水を加えたものであるため、蚊帳生地Cに含浸した状態が好適に保持されるものとなっている。
管部材Kは、上述した管部材Kの製造方法によって製造されたものであるため、内部に虫が潜むことに起因する虫食いの問題が生じ難いものであるとともに軽量に優れた好適な構成のものとなっている。
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
粘性液状物は、漆を主材としたものであればよく、その具体的な内容については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設定可能である。
シート材は、粘性液状物を含浸保持し得るものであればよく、例えば、蚊帳生地以外の布帛であってもよいし、和紙であってもよい。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
S1…粘性液状物製作工程
S2…含浸シート材製作工程
S3…含浸シート材巻き付け工程
S4…含浸シート材乾燥工程
S5…含浸シート材追加巻き付け工程
S6…含浸シート材追加乾燥工程
S7…芯材除去工程
S8…仕上げ工程

Claims (6)

  1. 管楽器に用いられる管部材の製造方法であって、
    漆を主材とした粘性液状物を製作する粘性液状物製作工程と、
    前記粘性液状物を略矩形状のシート材に対して含浸させて含浸シート材を製作する含浸シート材製作工程と、
    前記含浸シート材製作工程により製作された前記含浸シート材を棒状の芯材に対して巻き付ける含浸シート材巻き付け工程と、
    前記含浸シート材巻き付け工程を経て前記芯材に対して巻き付けられた含浸シート材を乾燥させることにより前記芯材回りに略円筒状をなすように固化した中間筒状体を形成する含浸シート材乾燥工程と、
    前記含浸シート材乾燥工程を経て形成された前記中間筒状体を厚肉化させるべく当該中間筒状体の外周面に対して新たに前記含浸シート材製作工程により製作された含浸シート材を追加巻き付けする含浸シート材追加巻き付け工程と、
    前記含浸シート材追加巻き付け工程を経て前記中間筒状体に対して巻き付けられた含浸シート材を乾燥させることにより前記中間筒状体が厚肉化されてなる厚肉化中間筒状体を形成する含浸シート材追加乾燥工程と、
    前記芯材を前記厚肉化中間筒状体から除去する芯材除去工程と、
    前記芯材除去工程を経て得られた中空筒状をなす前記厚肉化中間筒状体の表面を整えて管部材を形成する仕上げ工程と、
    を備えている管楽器に用いられる管部材の製造方法。
  2. 前記含浸シート材追加巻き付け工程及び前記含浸シート材追加乾燥工程が、前記厚肉化中間筒状体が一定の肉厚に形成されるまで、複数回繰り返されるものである請求項1記載の管楽器に用いられる管部材の製造方法。
  3. 前記仕上げ工程が、少なくとも、前記厚肉化中間筒状体を研磨する作業、及び、当該研磨作業後の前記厚肉化中間筒状体の表面に漆を塗布する作業を含むものである請求項1記載の管部材の製造方法。
  4. 前記シート材が、蚊帳生地である請求項1記載の管部材の製造方法。
  5. 前記シート材が、和紙である請求項1記載の管部材の製造方法。
  6. 前記粘性液状物が、前記漆に少なくとも砥の粉及び水を加えたものである請求項1記載の管部材の製造方法。
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