JP7518393B2 - 量子鍵配送システム - Google Patents

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本発明は、長距離化が可能である振幅場対量子鍵配送方式における量子鍵配送システムに関する。
量子力学の原理に基づいて、共通鍵暗号通信のための秘密鍵を、離れた二者に安全に供給する量子鍵配送(Quantum Key Distribution:QKD)の研究開発が進められている。QKDにもいくつかの方式があるが、ここでは従来技術として、長距離化が可能である振幅場対QKD(Twin Field QKD:TF QKD)について述べる(例えば、非特許文献1参照)。
図1に、従来の量子鍵配送システムの構成を示す。ここでは、鍵を共有する二者をアリスとボブ、両者の中間点に位置して鍵共有の仲立ちをする第三者をチャーリーと呼ぶ。アリス10及びボブ20には、コヒーレント光源11,21と、強度変調器12,22と、位相変調器13,23と、1パルス当りの平均光子数が1未満であるように設定された減衰器13,24とが、それぞれ順に縦続接続されている。チャーリー30には、アリス10及びボブ20に接続された伝送路からの信号光を入力し、光子検出器32,33に出力する2入力2出力のビームスプリッター31が設けられている。
アリス10及びボブ20から、チャーリー30へそれぞれ信号光を送り、チャーリー30は、送られてきた信号光を合波して光子検出する。このTF QKDシステムでは、アリスとボブの物理的距離は、光子の伝送距離の2倍となる。そのため、アリスとボブの間で光子を送受信するQKDシステムよりも長距離化が可能である。以下、この構成によりアリスとボブが秘密鍵を共有する過程を、順をおって説明する。
まず、アリス10とボブ20は、平均光子数が1程度の微弱コヒーレントパルス光をチャーリー30に送信する。パルス光の位相θは、バイアス位相θ0=πk/Mとデータ位相θd={0またはπ}の和θ=θ0+θdとする。ここで、Mは2以上の整数、kは0≦k<Mを満たす整数である。以降では、説明の簡便化のため、M=2とする。この場合、θ0={0またはπ/2}であり、位相θは{0,π/2,π,3π/2}となる。アリス10とボブ20は、この4つの位相値のいずれかを無作為に選択して、位相変調器13,23により、パルス光に印加して送信する。なお、図1では、送信者に強度変調器12,22が備えられているが、これについては後ほど説明する。
次に、チャーリー30は、送られてきたコヒーレントパルスをビームスプリッター31で合波し、2つの出力端にてそれぞれ光子検出する。ビームスプリッター31においてアリス10とボブ20から送られてきたパルス光が干渉し合い、両者の位相差に応じて、2つの光子検出器32,33で光子が検出される。ここで、アリス10とボブ20の送信時の位相差が0であれば光子検出器32で光子が検出され、位相差がπであれば光子検出器33で光子が検出されるように、ビームスプリッター31までの光路を設定しておく。この条件下では、{0,π}以外の位相差の場合は、位相差で決まる確率に従って、光子検出器32,33で確率的に光子検出されることになる。なお、チャーリー30において受信されるパルス光は微小パワーなので、光子が検出されない場合がある。チャーリー30は、光子検出された場合に、どちらの光子検出器で光子検出されたかを記録する。すなわち、アリス10とボブ20の送信時の位相差が記録される。
アリス10とボブ20からチャーリー30へのパルス光の送信を多数回行った後、チャーリー30は、光子検出されたパルスと光子検出器をアリスとボブに通知する。アリス10とボブ20は、光子が検出されたパルスに印加したバイアス位相を互いに通知する。光子検出されたパルスと位相差の情報を得たアリス10とボブ20は、それらの情報と、自身送信したパルス光、印加した位相θとから、次のようにビットを生成する。
1)バイアス位相θ0がアリス10とボブ20で異なっていた光子検出事象を除外する。
2)バイアス位相θ0が同一である検出事象に対して、光子検出器32で光子検出した場合、
2a)アリス10とボブ20ともに位相差が0ならばビット0、
2b)位相差がπならばビット1を生成する。
3)バイアス位相θ0が同一である検出事象について、光子検出器33で光子検出した場合、
3a)アリス10は位相差が0ならばビット0、位相差がπならばビット1、
3b)ボブ20は位相差がπならばビット0、位相差が0ならばビット1を生成する。
チャーリー30のビームスプリッター31における干渉条件より、このように生成したビット値は、アリス10とボブ20で同一となる。これを秘密鍵とする。
生成した秘密鍵の安全性は、次のように保障される。チャーリー30が悪意のある第三者だったとしても、光子検出の結果からチャーリー30が知り得るのは、アリス10のパルス光とボブ20のパルス光が同位相か逆位相かのみであり、位相値自体は分からない。従って、鍵ビットは分からない。また、盗聴者が伝送路の信号光からアリス10またはボブ20がパルス光に印加して位相値を知ろうとしても、位相が{0,π/2,π,3π/2}である微弱コヒーレント光は、量子力学的非直交関係にあり、この4状態を100%の確率で正しく識別することはできない。そのため、伝送経路上で信号光を測定して鍵ビットを知ることはできない。
しかしながら、光子数分岐攻撃と呼ばれる高度な盗聴法がなされると、盗聴者に生成した鍵ビットが知られることとなる。この盗聴法は、コヒーレントパルス光には、微弱パワーであっても、有限の確率で光子が2個以上存在し得ることを利用する。盗聴者は、量子非破壊測定と呼ばれる測定法より、信号状態は変えずに、伝送路のパルス光の光子数を測定する。そして、光子数が2個以上であった場合に、そのうちの1個を抜き出し、残りの光子を、無損失伝送路を介してそのままチャーリーに送る。含まれている光子数が1個の場合は、そのパルスを除去する。無損失伝送路を用いるのは、光子の抜き出し及び光子1個のパルス除去による光パワーの減少を補償するためである。一般的に、光伝送路には伝搬損失があり、伝送につれて信号光パワーは減少する。伝送路を無損失なものに置き換え、本来の伝搬損失による減少分と盗聴による減少分とを等しく設定すれば、盗聴行為を隠蔽することができる。
次に盗聴者は、抜き出した光子をそのままの状態で量子メモリに保存しておく。そして、信号光の送信が終了した後に、光子検出した情報とバイアス位相情報とが明らかになった後に、それらに基づいて、保存しておいた光子を測定する。バイアス位相が分かっていれば、{0,π}のデータ位相は識別可能である。上述したように、盗聴者は光子数が1であるパルスは除外しているため、盗聴者はチャーリーに届く全ての光子と同一の光子を保有している。従って、チャーリーの光子検出事象からアリスとボブとが生成したビットは、全て盗聴者の知るところとなる。
光子数分岐攻撃に対処するため、従来技術では、デコイ法と呼ばれる方法を採用する。デコイ法では、送信パルス光の光強度(すなわち、平均光子数)をパルスごとにランダムに設定する。図1に示した送信者10,20内の強度変調器12,22はそのために備えられている。光子数分岐攻撃においては、伝送路を無損失なものに置き換えることにより、盗聴時でもチャーリーの受信光子数には変化が無いように設定する。ここで、正常時の受信光子数は、伝送路損失及び送信パルスの平均光子数で決まり、盗聴者はこれに合わせてチャーリーへ光子を送る必要がある。ところが、パルスごとに平均光子数が異なっていると、盗聴者には送るべき光子数が分からない。そこで、パルス送信後に、アリス10は送信パルスの光強度をボブ20に通知し、ボブ20はそれに応じた光子検出がされているか検証することにより、光子数分岐攻撃を検知する。
デコイ法を用いることにより光子数分岐攻撃を検知することはできるが、その反面、秘密鍵生成効率は低下する。アリスとボブがランダムに光強度を設定すると、チャーリーのビームスプリッターに入力されるアリスとボブからパルス光の強度が異なることが起こる。このため、2つのパルス光が完全には干渉せず、光子検出の結果から生成したビットに誤りが生じる。そこで、アリスとボブは、信号光送信後に、パルス光の光強度を通知し合う。そして、ビームスプリッターへの入力光強度が同一である検出事象を抽出し、そこからビットを生成する。入力光強度が不一致の光子検出事象は廃棄することになるので、その分、鍵ビット生成効率は低下する。
M. Lucamarini, Z. L. Yuan, J. F. Dynes, and A. J. Shields, "Overcoming the rate-distance limit of quantum key distribution without quantum repeaters," Nature, vol. 557, pp. 400-403 (2018).
上述したように、従来、光子数分岐攻撃に対処するため、デコイ法を用いていた。そのため、アリスとボブは、送信する信号光の光強度をランダムに変調する手段を備える必要があった。また、チャーリーのビームスプリッターへの入力光強度が不整合となる光子検出事象は鍵ビット生成から除外しており、鍵ビットの生成効率が制限されていた。
本発明の目的は、TF-QKDシステムと同様のシステム構成としつつ、デコイ法を用いることなく光子数分岐攻撃を検知できる量子鍵配送システムを提供することにある。
本発明は、このような目的を達成するために、一実施態様は、離れた二者(アリスとボブ)に共通鍵暗号通信のための秘密鍵を供給する量子鍵配送システムであって、前記二者のそれぞれの装置は、連続するコヒーレントパルス列を出力するコヒーレント光源、前記コヒーレント光源から出力された前記コヒーレントパルス列の各パルスに対して位相差0またはπを付与する位相変調器、および1パルス当りの平均光子数が1未満であるように設定された減衰器を含み、鍵共有を仲介する第三者(チャーリー)の装置は、前記二者からの前記コヒーレントパルス列が入力される第1の2×2光ビームスプリッターと第2の2×2光ビームスプリッターとの間が2本の光路で接続され、前記2本の光路により、遅延時間がパルス間隔に等しく、伝搬位相差が2πの整数倍である遅延回路を構成する遅延マッハツェンダー干渉計、および前記第2の2×2光ビームスプリッターの出力のそれぞれに接続された2つの光子検出器を含み、前記二者の一方の装置において、前記第三者から得られた光子検出の結果と、前記二者の他方の装置から得られた位相差の情報とに基づいて、前記秘密鍵を生成することを特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、第三者の装置において遅延マッハツェンダー干渉計により二者からの光子を干渉させるので、盗聴者によるパルスの抜き出しがあると、二者における秘密鍵の生成に不一致が生ずることとなり、デコイ法を用いることなく光子数分岐攻撃を検知することが可能となる。
従来の量子鍵配送システムの構成を示す図である。 本発明の実施例1にかかる量子鍵配送システムの構成を示す図である。 実施例1の量子鍵配送システムの送信者の構成を示す図である。 実施例1の量子鍵配送システムの光子検出特性を示す図である。 なりすまし盗聴を検知する原理を説明するための図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
図2に、本発明の実施例1にかかる量子鍵配送システムの構成を示す。離れた二者であるアリス50及びボブ60から、鍵共有を仲介する第三者であるチャーリー70へそれぞれ信号光を送り、チャーリー70は、送られてきた信号光を一括測定する。チャーリー70には、アリス50及びボブ60に接続された伝送路からの信号光を、遅延マッハツェンダー(MZ)干渉計71の2つの入力端子にそれぞれ入力する。遅延MZ干渉計71は、入力された信号光を2×2ビームスプリッター74により2経路に分岐し、それぞれ長さの異なる2つの光路を伝搬させた後、2×2ビームスプリッター75により再び合波する干渉計である。ビームスプリッター75の出力に光子検出器72,73が接続されている。干渉計内の2つの光路は、遅延時間がパルス間隔に等しく、伝搬位相差が2πの整数倍であるように設定されている。
図3に、実施例1の量子鍵配送システムの送信者の構成を示す。アリス50及びボブ60には、連続するコヒーレントパルス列を出力するコヒーレント光源51と、コヒーレントパルス列の各パルスに対して位相差0またはπを付与する位相変調器53と、1パルス当りの平均光子数が1未満であるように設定された減衰器54とが、それぞれ順に縦続接続されている。
送信者であるアリス50とボブ60は、各パルスの位相が0またはπである連続するコヒーレントパルス列を、平均光子数1未満/パルスの微弱強度にして送信する。光パルスに印加する位相が0またはπである点、及び連続パルス列である点が従来技術とは異なる。また、デコイ法のための強度変調手段は備えられていない。
チャーリー70の遅延MZ干渉計71の出力段では、アリス50とボブ60からのパルス列の隣接パルス同士が重なり合って干渉する。以下、この干渉を式により説明する。干渉する隣接パルスのうち、アリス50の先方パルスの複素振幅をEa1、後方パルスをEa2、ボブ60の先方パルスをEb1、後方パルスをEb2、と表記する。遅延MZ干渉計71の出力段では、長経路を経たEa1とEb1及び短経路を経たEa2とEb2の4パルスが重なり合う。ビームスプリッター75において反射光は、位相がπ/2シフトすることを考慮すると、干渉計の2つの出力端子からの出力光E1、E2は、それぞれ次のように表される。
Figure 0007518393000001
ここで、各パルスを指数表示でE=Aexp[i(φ+θ)]と表記する。但し、Aは実数振幅、φは搬送波位相、θはデータ位相を表す。この表記を用いると、上式は次のように書き直される。
Figure 0007518393000002
但し、実数振幅Aはアリス50とボブ60で同一とし、添え字のa,bはアリス50またはボブ60の位相であること、添え字の番号はパルス順をそれぞれ表している。ここで、送信者から遅延MZ干渉計71の入力に至るまでの伝搬経路は、φa=φb+π/2となるように設定されている。すると、式(3),(4)は次のように書き直される。
Figure 0007518393000003
上記では、パルス光を古典的な複素振幅で表したが、そのまま量子力学的確率振幅に読み替えることができ、その絶対値の二乗により光子の存在確率が与えられる。従って、式(5),(6)より、遅延MZ干渉計71の2つの出力における光子の存在確率p1,p2は、それぞれ次式で表される。
Figure 0007518393000004
但し、μ≡A2は平均光子数/パルス、
Figure 0007518393000005
である。
式(7),(8)におけるデータ位相θは、アリス50とボブ60が各パルスに印加するデータ位相であり、0またはπの値をとる。したがって、式(7),(8)は、光子検出確率はアリス50とボブ60のデータ位相の組み合わせに依存することを示している。
図4に、実施例1の量子鍵配送システムの光子検出特性を示す。アリス50とボブ60で印加されたデータ位相θの組み合わせに対するa1及びa2の値を示す。図4において、項番1から4は、アリス50とボブ60の隣接位相差がともに0、項番5から8までは、{アリス50の位相差0、ボブ60の位相差π}、項番9から12までは、{アリス50の位相差π、ボブ60の位相差0}、項番13から16までは、アリス50とボブ60ともに位相差πという組み合わせになっている。ここで特徴的なことは、{アリス50の位相差0、ボブ60の位相差π}の場合に光子検出されるのは、項番6または8の2パターンのみであり、{アリス50の位相差π、ボブ60の位相差0}の場合に光子検出されるのは、項番10または11の2パターンのみということである。この光子検出特性を利用して、アリス50とボブ60は以下の手順によりビットを生成する。
アリス50とボブ60からパルス列が送信された後、チャーリー70は、光子検出した隣接パルスの時間位置及び検出器をアリス50とボブ60に通知する。これを受けてアリス50とボブ60は、光子検出した隣接パルスのデータ位相差が0であったかπであったかを、互いに通知し合う。但し、位相値自体は非公開とする。位相差の情報を得たアリス50とボブ60は、位相差がともに0またはともにπであった光子検出事象を除外し、次のようにビットを生成する。
1)アリス50の隣接位相差が0かつボブ60の位相差がπの場合に、
1a)アリス50は、先方パルスと後方パルスの位相(θa1,θa2)が(0,0)ならビット0、(π,π)ならビット1を、
1b)ボブ69は、先方パルスと後方パルスの位相(θb1,θb2)が(π,0)ならビット0、(0,π)ならビット1を、それぞれ生成する。
2)アリス50の隣接位相差がπかつボブの位相差が0の場合に、
2a)アリス50は、先方パルスと後方パルスの位相(θa1,θa2)が(0,π)ならビット0、(π,0)ならビット1を、
2b)ボブ60は、先方パルスと後方パルスの位相(θb1,θb2)が(0,0)ならビット0、(π,π)ならビット1を、それぞれ生成する。
図4に示した光子検出特性より、このように生成したビットは、アリス50とボブ60で一致する。これを鍵ビットとする。
上記ビット生成手順において、データ位相値を知っているのはアリス50またはボブ60のみであり、チャーリー70を含む第三者には、両者が生成したビット値は分からない。よって、これを秘密鍵とすることができる。
伝送信号の安全性は、伝送される信号光が微弱コヒーレントパルス列であることに基づく。パルス列の平均光子数は1パルス当り1未満であるため、全ての位相値を測定することはできない。例えば、盗聴者が信号光の一部を分岐して、分岐光の位相を測定しても、正しい測定値が得られるのは一部のみ、かつ、どのパルスの位相値が得られるかは確率的である。たまたまアリスとボブがビット生成する隣接パルスの位相値を測定できる場合もあるが、その確率は低く、一部の情報が漏えいした場合は、秘匿性増強というデータ処理により、除外することができる。
盗聴者が伝送される信号光の全てを測定し、位相値が得られた2連続パルスを偽装信号としてチャーリーに送るという盗聴法、すなわち、なりすまし盗聴が考えられる。この場合、以下で説明するように、アリス50とボブ60が偽装信号から生成するビットには不一致が生じ得るので、なりすまし盗聴を検知することができる。
図5を参照して、なりすまし盗聴を検知する原理を説明する。アリス50が送信した信号光に対して、なりすまし盗聴が行われ、アリス50の側からチャーリー70に対して、偽装信号として2連続パルスが送られてきたとする。図5は、チャーリー70の遅延MZ干渉計71の出力段でのパルスの重なり具合を示している。図5(a)は、長経路を経たアリス50側からのパルス、図5(b)は、短経路を経たアリス50側からのパルス、図5(c)は、長経路を経たボブ60側からのパルス、図5(d)は、短経路を経たボブ60側からのパルスの時間位置をそれぞれ表している。
図5(a),(b)に示すように、アリス50側からの2連続パルス(Ea1、Ea2)は、MZ干渉計71の出力段では3つの時間位置に分かれる。このうち、2番目の時間位置では、アリス50からの2パルス(Ea1、Ea2)とボブ60からの2パルス(Eb1、Eb2)とが重なり合う。この状況は、盗聴が行われていない時も同じであり、偽装信号の位相が元のパルスを正しく再現していれば、光子検出事象から生成するビットは、アリス50とボブ60で一致する。
一方、1番目の時間位置で重なり合うのは、アリス50からの先方パルス(Ea1)とボブ60のパルス列のうち隣接する2パルスであり、3番目の時間位置で重なり合うのは、アリス50からの後方パルス(Ea2)とボブ60のパルス列のうち隣接する2パルスである。盗聴が行われていない正常な場合であれば、1番目の時間位置では、偽装信号の先方パルスのひとつ前のパルス、すなわちアリス50のパルス列のうち隣接するパルスが重なるはずである。同様に、3番目の時間位置では、偽装信号の後方パルスのひとつ後のパルス、すなわちアリス50のパルス列のうち隣接するパルスが重なるはずである。
なりすまし盗聴が行われていると、アリス50からの隣接パルスに相当するパルスが欠落する。従って、遅延MZ干渉計71における干渉が正常な場合とは異なるので、アリス50とボブ60がこれらの時間位置での光子検出事象からビットを生成すると、両者で不一致が生じ得る。アリス50とボブ60は、秘密鍵生成後、一部のビットをテストビットとして互いに照合する。テストビットに不一致があれば、その秘密鍵は盗聴されたと判断する。不一致がなければ、安全な秘密鍵が得られたとする。
実施例1は、光子数分岐攻撃を検知する機能も備えている。光子数分岐攻撃において、盗聴者は、チャーリー70に届く光子と自身が抜き出して保存する光子とを、全て同一とするために、光子数が1個であるパルスを除外する。実施例1に対して、そのような盗聴が行われると、チャーリー70が受信するパルス列に欠落が生じ、図5を用いて説明した原理と同様にして、アリス50とボブ60が生成するビットに不一致が起こり得る。従って、テストビットの照合により、盗聴を検知することができる。
以上述べたように、実施例1は、TF-QKDシステムと同様のシステム構成としつつ、デコイ法を用いることなく光子数分岐攻撃を検知する量子鍵配送を実現することができる。
実施例1では、アリス50とボブ60からチャーリー70の遅延MZ干渉計71に至るまでの伝搬経路が、アリス50とボブ60の搬送波位相を用いてφa=φb+π/2の関係となるように設定されていた。このような設定は、プローブ光を用いた位相変動検出及び位相シフターを用いた伝搬位相制御により実現可能ではあるが、非常に高度な位相制御装置を必要とする。そこで実施例2では、そのような位相制御装置を用いることなく、実施例1と同様の量子鍵配送を実現する。
実施例2の装置構成は、図2,3に示した実施例1の構成と同じである。但し、アリス50とボブ60において各パルスに印加する位相θを{0,π}ではなく、バイアス位相θ0とデータ位相θdの和θ=θ0+θdとする。データ位相θdは、実施例1と同様に、パルスごとに0またはπとする。一方、バイアス位相θ0は、πをM等分した位相値のいずれか、すなわちθ0=πk/Mとする。但し、Mは2以上の整数、kは0≦k<Mを満たす整数とする。アリス50とボブ60は、送信するパルス列をNパルスごとにブロック化し、各ブロックにバイアス位相θ0をそれぞれランダムに割り当てる。このように位相が設定された連続パルス列を、アリス50とボブ60からチャーリー70へ送信する信号光とする。
上述したパルス列を用いて、アリス50とボブ60は、実施例1と同様の手順により鍵ビットを生成する。この際、チャーリー70の遅延MZ干渉計71に到達するまでの伝搬経路がφa=φb+π/2の関係を満たしていれば、実施例1と同様の原理により、アリスとイブの生成ビットは一致する。一方、この関係を満たしていなければ、ビット誤りが生じる。そこで、アリス50とボブ60は、ブロックごとにテストビットの照合を行い、ビット誤り率が許容値以下であるブロックではφa=φb+π/2の関係が概ね満たされていると判定する。この関係を満たしているブロックの生成ビットに対して、誤り訂正・秘匿性増強などのデータ処理を施し、これを秘密鍵とする。ビット誤り率が許容値以上であるブロックについては、生成ビットを廃棄する。あるいは、ビット誤り率が1に近い場合は、一方をビット反転させたうえで、誤り率が許容値以下の場合と同様に取り扱う。
実施例2では、バイアス位相がブロックごとにランダムに設定されているため、伝搬経路に依らず、確率的にφa=φb+π/2が満たされる場合があり、そこから鍵ビットを生成している。従って、実施例1より鍵ビットの生成効率は下がるものの、高度な位相制御が不要なシステムとなっている。
以上説明したように、本実施形態によれば、離れた二者から両者の中間点に位置する第三者に信号光を送信するシステム構成により、長距離化を可能としている。加えて、TF QKD型量子鍵配送において、デコイ法を用いることなく光子数分岐攻撃を検知する機能を備えている。このことから、装置構成が簡便かつ秘密鍵生成効率が高い量子鍵配送システムを提供することができる。
10,50 アリス
11,21,51 コヒーレント光源
12,22 強度変調器
13,23,53 位相変調器
14,24,54 減衰器
20,60 ボブ
30,70 チャーリー
31,74,75 2×2ビームスプリッター
32,33,72,73 光子検出器
71 遅延MZ干渉計

Claims (3)

  1. 通鍵暗号通信のための秘密鍵を供給する量子鍵配送システムであって、
    離れた二者それぞれの装置と、
    鍵共有を仲介する第三者の装置と、を備え、
    前記二者のそれぞれの装置は、
    連続するコヒーレントパルス列を出力するコヒーレント光源、
    前記コヒーレント光源から出力された前記コヒーレントパルス列の各パルスに対して位相差0またはπを付与する位相変調器、および
    1パルス当りの平均光子数が1未満であるように設定された減衰器を含み、
    前記第三者の装置は、
    前記二者のそれぞれの装置からの前記コヒーレントパルス列が入力される第1の2×2光ビームスプリッターと第2の2×2光ビームスプリッターとの間が2本の光路で接続され、前記2本の光路により、遅延時間がパルス間隔に等しく、伝搬位相差が2πの整数倍である遅延回路を構成する遅延マッハツェンダー干渉計、および
    前記第2の2×2光ビームスプリッターの出力のそれぞれに接続された2つの光子検出器を含み、
    前記二者の一方の装置において、前記第三者の装置から得られた光子検出の結果と、前記二者の他方の装置から得られた位相差の情報とに基づいて、前記秘密鍵を生成することを特徴とする量子鍵配送システム。
  2. 前記二者のそれぞれの装置から前記第1の2×2光ビームスプリッターの入力に至るまでの伝搬経路は、前記二者の搬送波位相をφa、φbとしたとき、φa=φb+π/2となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の量子鍵配送システム。
  3. 前記二者のそれぞれの装置において、各パルスに対して付与する位相差は、0またはπのデータ位相θdと、バイアス位相θ0=πk/Mの和θ=θ0+θdであり、Mは2以上の整数、kは0≦k<Mを満たす整数であることを特徴とする請求項1または2に記載の量子鍵配送システム。
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