JP7516738B2 - 多層錠 - Google Patents

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Description

本発明は、特定の素材を含む、錠剤表面が凸R形状を有する多層錠に関する。
近年、健康志向の高まりから、マルチビタミンを配合したサプリメントは人気があり、多数の商品が市販されている。しかしながら、ビタミンCやビタミンB類などの水溶性ビタミン群は体内に吸収されても数時間後には尿として排泄されてしまうため、これら有効成分を長時間放出可能な製剤が求められている。
放出制御製剤は、有効成分を8~12時間かけて徐々に吸収されるように加工し、有効成分の効果を持続させることができる製剤である。このような製剤として、水の浸入による有効成分や放出制御基剤の溶解、拡散、膨潤等に伴って有効成分を徐々に放出制御するマトリックス型製剤が知られている。放出制御基剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はその塩などの親水性高分子を用いたハイドロゲル基剤(特許文献1~3)やエチルセルロースやアクリル酸系の疎水性高分子、硬化油、高級アルコールなどのワックス類を用いることが提唱されている(非特許文献1)。
現在、ビタミンCを配合し、放出制御基材としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いたマトリックス型の一層形態の錠剤が市販されている。しかしながら、ビタミンCを放出制御層に配合し、放出制御の必要のない成分を非放出制御層に配合し、1錠で徐放性と速放性を備えた食品の多層錠については報告例がない。
また、健康的なからだづくりをサポートするため、プロテインを配合したサプリメントが市販されている。プロテインの摂取は運動後が良いとされており、プロテインを効率よく摂取するには、摂取するタイミングを意識する必要があった。これまでに、プロテインを放出制御層に配合した多層錠について、報告例はない。
多層錠は、組成の異なる2層以上が一つの錠剤として成形されているもので、混合すると配合変化を起こす成分を配合する場合や、有効成分を2つ以上の層に分け、その放出性をコントロールするなどの目的で用いられている。製造は、最初の組成物を入れ軽く圧縮し、次の組成物を入れ軽く圧縮するという操作を繰り返し、最後に通常の錠剤と同じ圧力で打錠するのが一般的である(特許文献4)。多層錠の製造において、打錠障害の一つである層間亀裂や層間剥離の問題があることが知られており、この問題を解決する方法として、いずれか一層に特定の物性を有する低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含めることで、多層錠における層間剥離を抑制できることが報告されている(特許文献5)。また、使用する賦形剤の比表面積や見かけ密度を限定することで、成形性を向上させたり、隣接する層に特定の成分を配合することで層間剥離を抑制することが報告されている(特許文献6~8)。また、互いに接する層を形成する粉粒体の平均粒子径の比率を1:2から1:50にすることにより、層間剥離を抑制するなどの方法もあることが報告されている(特許文献9)。しかしながら、これらの方法はいずれも処方成分やその配合、打錠用顆粒の物性を変更しなければならない。
今までに放出制御層にビタミンC、ビタミンB類又はプロテインを配合した多層錠について報告されておらず、これら成分を多層中の放出制御層に配合した際の層間亀裂や層間剥離の問題について十分な検討がなされていないのが現状である。
特開昭63-215620号公報 特開昭62-120315号公報 WO1998/041210号 WO96/001781号 特開2008-280251号公報 特開平5-163138号公報 特開2003-144528号公報 特開2016-204296号公報 特開2000-336027号公報
医薬品製剤化方法と新技術、シーエムシー出版、p89、(2007)
本発明者らは、特定の素材を配合した凸R形状を有する多層錠を製造し、長期間保存したところ、層間亀裂及び層間剥離の問題が大きくなることを見出した。本発明は、上記事情に鑑みなされたものである。
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の素材とヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む層を含み、かつ前記特定の素材とヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む層の上下両面のうちの少なくとも一方を凹R形状とすることで、層間に発生する亀裂と剥離を抑制し、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は
(1)a)ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、及びプロテインからなる群から選ばれる少なくとも1種の素材とb)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む層を有する多層錠であって、
多層錠の表面は上下両面とも凸R形状であり、
前記素材とヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む層の上下両面のうち少なくとも一方は凹R形状であることを特徴とする多層錠、
(2)ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、2%水溶液20℃において粘度が2.5mm/s以上である、(1)に記載の多層錠、
(3)ヒドロキシプロピルメチルセルロースのメトキシ基含量が19~24質量%であり、かつ、ヒドロキシプロポキシ基含量が4~12質量%である、(1)に記載の多層錠、
(4)ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量が、そのヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる層全体の質量に対して15質量%以上85質量%以下である、(1)に記載の多層錠、
(5)錠剤直径/R値(曲率半径)が0.01より大きく2未満である、(1)~(4)のいずれかに記載の多層錠、
(6)非放出制御層を有する、(1)~(5)のいずれかに記載の多層錠、
(7)非コーティング錠である、(1)~(6)のいずれかに記載の多層錠、
である。
本発明により、特定の素材とヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む層を含む多層錠において、層間に生じる亀裂や剥離を抑制することができ、飲みやすさや掴み易さ、見た目といった商品性の高い多層錠の提供が可能である。
本願発明の多層錠の断面図を示す。図の斜線部分はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む層である。図のうち、rは錠剤直径を、Rは曲率半径を示す。曲率半径は、錠剤表面が曲線性を示すとき、その局所的な曲がり具合を円に近似したときの、円の半径である。 (a)はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む層の一方の面が、凹R形状であり、もう一方の面が凸R形状である多層錠の断面図であり、斜線部はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む層である。(b)はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む層の断面図を示す。 (c)はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む層の面が、上下両面とも凸R形状である多層錠の断面図であり、斜線部はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む層である。(d)はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む層の断面図を示す。
本発明の多層錠は、多層錠の少なくとも一層にヒドロキシプロピルメチルセルロースと特定の素材を含む層を有する。
本発明の多層錠は経口用が好ましく、食品用の多層錠又はビタミン含有保健剤用の多層錠に好適に使用されうる。
本発明のヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、HPMCと略記する場合がある)としては、例えば、METOLOSENE-100(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:80-120mm/s)、METOLOSENE-4000(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:2800-5600mm/s)、METOLOSE SFE-400(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:280-560mm/s)、METOLOSE SFE-4000(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:2800-5600mm/s)、METOLOSE SE-06(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:4.8-7.2mm/s)、METOLOSE SE-50(商品名、信越化学工業(株)製)(20℃における2%水溶液の粘度:40-60mm/s)が挙げられる。また、本発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースは、メトキシ基含量が19~30質量%、ヒドロキシプロポキシ基含量が4~12質量%が好ましい。
なお、本発明の粘度は第9版食品添加物公定書に基づき測定される。
本発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量は、そのヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む放出制御層全体の質量に対して本発明の課題が大きくなる15質量%以上が好ましく、また、上限値について特に限定されるものではないが、通常85質量%である。より好ましい含有量は、20質量%~70質量%である。また、本発明の多層錠全体に対しては5質量%以上70質量%以下が好ましい。
本発明の特定の素材とは、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、及びプロテインから選ばれる少なくとも1種である。これらは単独で配合してもよく、2種以上を混合して配合してもよい。また、ビタミン混合物として市販されているプレミックス品を配合してもよい。プレミックス品としては、例えば市販品のアクア7(DSMニュートリションジャパン(株)製)などを使用することができる。また、本発明のビタミンCとしては、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸カルシウム、L-アスコルビン酸2-グルコシド、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステルなどを使用することができる。本発明のビタミンB1としては、ジベンゾイルチアミン、ジベンゾイルチアミン塩酸塩、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンセチル硫酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンナフタレン-1,5-ジスルホン酸塩、チアミンラウリル硫酸塩、ビスベンチアミンなどを使用することができる。本発明のビタミンB2としては、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビン5-リン酸エステルナトリウムなどを使用することができる。本発明のビタミンB6としては、ピリドキシン塩酸塩などを使用することができる。本発明のビタミンB12としては、シアノコバラミンなどを使用することができる。本発明のナイアシンとしては、ニコチン酸、ニコチン酸アミドなどを使用することができる。本発明のパントテン酸としては、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウムなどを使用することができる。また、本発明のプロテインとしては、卵白プロテイン、ホエイプロテイン、カゼインプロテイン、ソイプロテインなどが挙げられ、市販品のEAP-sport PLUS(セティ(株)製)などを使用することができる。
本発明の多層錠中における特定の素材の含有量は、本発明の多層錠全体に対して合計量として通常5~85質量%であり、より好ましくは10~80質量%である。また、本発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む層中における本発明の特定の素材の含有量は、好ましくは10~90質量%、より好ましくは15~85質量%である。また、本発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースと本発明の特定の素材は同一の層に含まれることが必要である。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは放出制御基材であるため、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む層に配合した本発明の特定の素材は時間かけて徐々に体内に吸収され、これら素材の効果を持続させることができる。ただし、これらが同一の層に含まれてさえいれば、他の層に含まれることを妨げるものではない。本発明の多層錠において、本発明の特定の素材を含むと、放出制御層がより膨張しやすく、層間の亀裂や剥離の問題が高まるが、本発明の多層錠とすることによりこの問題は解消される。
本発明の多層錠の剤形は、錠剤に限定されるが、素錠に加え、フィルムコーティング錠及び糖衣錠を包含するが、フィルムコーティングしない非コーティング錠剤が好ましい。コーティングしなくても、層間亀裂及び層間剥離を抑制することができるからである。それぞれ必要に応じて有効成分、賦形剤、結合剤、崩壊剤、フィルムコーティング剤、滑沢剤、抗酸化剤、香料、および着色剤等の慣用の製剤添加剤を適当量配合しても良い。
本発明で用いられる多層錠の表面の形状は、服用性コンプライアンスの観点から上面、下面とも凸R形状である。図1に示したように、錠剤表面が曲線を描くとき、R形状を有するといい、その曲率半径Rは、錠剤表面の局所的な曲がり具合を円に近似したときの、円の半径ある。錠剤表面に2つ以上の曲率半径を有する場合、数値の大きいR値を使用する。
本発明において、錠剤直径/R値(曲率半径)により定義される多層錠表面の曲がり具合は、0.01より大きく2未満が好ましい。なお、R値(曲率半径)は、医薬品製剤技術、シーエムシー出版、p209、(2002)に記載されている。
また、本発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースと特定の素材を含む層の上下両面の形状は、少なくとも一方は凹R形状である。すなわち、上下両面とも凹R形状であってもよいし、一方が凹R形状でありもう一方が凸R形状であってもよい。このうち好ましいのは、一方が凹R形状でありもう一方が凸R形状である。本願発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むと特定の素材を含む層を特定の形状とした多層錠とすることにより、層間亀裂や層間剥離は抑制される。
本発明の多層錠は、円形状の錠剤に限定されるものではなく、錠剤の表面が曲線を描いていれば、オーバル形状、三角形状や四角形状の錠剤などであってもよい。
また、本発明の多層錠は、特定の素材とヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む放出制御層を含み、その他の層としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを含まない放出制御層や、非放出制御層等を設けることができる。本発明では、徐放性と速効性の双方の特性を付与するために、別の層として非放出制御層を設けるのが好ましい。非放出制御層には、吸収のタイミングをずらすために放出制御層と同じ成分を配合するほかに即効性が要求される素材や脂溶性ビタミン(例えばビタミンA、ビタミンE、ビタミンD等)、DHAなどの脂溶性成分等を配合することができる。
本発明の多層錠の製造方法としては、非放出制御層と放出制御層を有する二層錠を製造する場合、例えば、非放出制御層には任意の素材と結晶セルロース等の賦形剤を混合し、さらにステアリン酸カルシウムを添加、混合し、1層目の非放出制御層の打錠用粉体を打錠用製造機に充填する。放出制御層には、本発明の素材とヒドロキシプロピルメチルセルロースと結晶セルロース等の賦形剤を混合し、さらにステアリン酸カルシウムを添加、混合し、2層目の放出制御層の打錠用粉体を打錠用製造機に充填する。次に、1層目の非放出制御層の打錠用粉体を標準的な円形の臼に充填し、粉体を標準的な凸R形状の錠剤を成形するための杵で圧縮した後、2層目の放出制御層の打錠用粉体を臼に充填し、再度圧縮することで多層錠が得られる。このとき、多層錠の表面は上下両面とも凸R形状であり、放出制御層は非放出制御層と接する面は凹R形状であり反対側の面は凸R形状の多層錠となる。
以下、製造例、対照例、実施例、比較例及び試験例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、結晶セルロースはセオラスUF-F702(旭化成(株)製)、ステアリン酸カルシウムは食品添加物Ca-St(日東化成工業(株)製)、ビタミンCはアスコルビン酸(L-アスコルビン酸)(微粉末)(DSMニュートリションジャパン(株)製)を使用した。
(実施例1)
打錠用粉体A全体に対し、結晶セルロース99.5質量%、ステアリン酸カルシウムを0.5質量%添加・混合し、打錠用粉体A(非放出制御層)を得た。
別に、打錠用粉体B全体に対し、ビタミンC25.0質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:METOLOSE NE-4000、信越化学工業(株)製)25.0質量%、結晶セルロース49.5質量%、ステアリン酸カルシウムを0.5質量%添加・混合し、打錠用粉体B(放出制御層)を得た。
次に、簡易錠剤成型機(HANDTAB-200;市橋精機社製)にて、直径8mm円形、R値12mmの杵を用い、1層目として打錠用粉体A100mgを充填し圧縮した後、2層目として打錠用粉体B100mgを充填し圧縮成形し二層錠を得た。得られた二層錠の表面は、上下両面もR凸形状であり、放出制御層の上下面の形状は、一方が凸R形状、一方が凹R形状を有する。
(比較例1)
簡易錠剤成型機(HANDTAB-200;市橋精機社製)にて、直径8mm円形、R値12mmの杵を用い、1層目として打錠用粉体B100mgを充填し圧縮した後、2層目として打錠用粉体A100mgを充填し圧縮成形し二層錠を得た。この時、放出制御層の上下面の形状は、両方が凸R形状を有する。
(実施例2)
簡易錠剤成型機(HANDTAB-200;市橋精機社製)にて、直径8mm円形、R値6.5mmの杵を用い、1層目として打錠用粉体A100mgを充填し圧縮した後、2層目として打錠用粉体B100mgを充填し圧縮成形し二層錠を得た。この時、放出制御層の上下面の形状は、一方が凸R形状、一方が凹R形状を有する。
(比較例2)
簡易錠剤成型機(HANDTAB-200;市橋精機社製)にて、直径8mm円形、R値6.5mmの杵を用い、1層目として打錠用粉体B100mgを充填し圧縮した後、2層目として打錠用粉体A100mgを充填し圧縮成形し二層錠を得た。この時、放出制御層の上下面の形状は、両方が凸R形状を有する。
(実施例3)
打錠用粉体C全体に対し、ビタミンC25.0質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:METOLOSE NE-100、信越化学工業(株)製)25.0質量%、結晶セルロース49.5質量%、ステアリン酸カルシウムを0.5質量%添加・混合し、打錠用粉体C(放出制御層)を得た。
次に、簡易錠剤成型機(HANDTAB-200;市橋精機社製)にて、直径8mm円形、R値12mmの杵を用い、1層目として打錠用粉体A100mgを充填し圧縮した後、2層目として打錠用粉体C100mgを充填し圧縮成形し二層錠を得た。得られた二層錠の表面は、上下両面もR凸形状であり、放出制御層の上下面の形状は、一方が凸R形状、一方が凹R形状を有する。
(比較例3)
簡易錠剤成型機(HANDTAB-200;市橋精機社製)にて、直径8mm円形、R値6.5mmの杵を用い、1層目として打錠用粉体C100mgを充填し圧縮した後、2層目として打錠用粉体A100mgを充填し圧縮成形し二層錠を得た。この時、放出制御層の上下面の形状は、両方が凸R形状を有する。
実施例1~3及び比較例1~3で製した錠剤を65℃1.5時間保存し、層間に生じる亀裂の発生率を確認した結果を表1に示す。なお、斜線部はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む放出制御層である。
R形状を有する杵を用い、放出制御層の上下両面を凸R形状とすると、亀裂が確認された(比較例1~3)。一方、放出制御層の上下面の形状を、一方が凸R形状、一方が凹R形状とした二層錠のうち、実施例1~3は、亀裂が発生しなかった。
Figure 0007516738000001
(実施例4)
打錠用粉体D全体に対し、卵白プロテイン(商品名:EAP-sport PLUS、セティ(株)製)25.0質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:METOLOSE NE-4000、信越化学工業(株)製)25.0質量%、結晶セルロース49.5質量%、ステアリン酸カルシウムを0.5質量%添加・混合し、打錠用粉体D(放出制御層)を得た。
次に、簡易錠剤成型機(HANDTAB-200;市橋精機社製)にて、直径8mm円形、R値6.5mmの杵を用い、1層目として打錠用粉体A100mgを充填し圧縮した後、2層目として打錠用粉体D100mgを充填し圧縮成形し二層錠を得た。得られた二層錠の表面は、上下両面もR凸形状であり、放出制御層の上下面の形状は、一方が凸R形状、一方が凹R形状を有する。
(比較例4)
簡易錠剤成型機(HANDTAB-200;市橋精機社製)にて、直径8mm円形、R値6.5mmの杵を用い、1層目として打錠用粉体D100mgを充填し圧縮した後、2層目として打錠用粉体A100mgを充填し圧縮成形し二層錠を得た。この時、放出制御層の上下面の形状は、両方が凸R形状を有する。
(実施例5)
打錠用粉体E全体に対し、ビタミンプレミックス(商品名:アクア7、DSMニュートリションジャパン(株))25.0質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:METOLOSE NE-4000、信越化学工業(株)製)25.0質量%、結晶セルロース49.5質量%、ステアリン酸カルシウムを0.5質量%添加・混合し、打錠用粉体E(放出制御層)を得た。
次に、簡易錠剤成型機(HANDTAB-200;市橋精機社製)にて、直径8mm円形、R値6.5mmの杵を用い、1層目として打錠用粉体A100mgを充填し圧縮した後、2層目として打錠用粉体E100mgを充填し圧縮成形し二層錠を得た。得られた二層錠の表面は、上下両面もR凸形状であり、放出制御層の上下面の形状は、一方が凸R形状、一方が凹R形状を有する。
実施例5で使用したビタミンプレミックスの組成:L-アスコルビン酸30.00%、ニコチン酸アミド6.50%、パントテン酸カルシウム3.85%、ジベンゾイルチアミン塩酸塩1.29%、ピリドキシン塩酸塩1.10%、リボフラビン5-リン酸エステルナトリウム1.08%、シアノコバラミン3.00mg%、クエン酸三ナトリウム90.00mg%、クエン酸30.00mg%、乳糖その他56.06%
(比較例5)
簡易錠剤成型機(HANDTAB-200;市橋精機社製)にて、直径8mm円形、R値6.5mmの杵を用い、1層目として打錠用粉体E100mgを充填し圧縮した後、2層目として打錠用粉体A100mgを充填し圧縮成形し二層錠を得た。この時、放出制御層の上下面の形状は、両方が凸R形状を有する。
(比較例6)
打錠用粉体F全体に対し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:METOLOSE NE-4000、信越化学工業(株)製)25.0質量%、結晶セルロース74.5質量%、ステアリン酸カルシウムを0.5質量%添加・混合し、打錠用粉体F(放出制御層)を得た。
次に、簡易錠剤成型機(HANDTAB-200;市橋精機社製)にて、直径8mm円形、R値6.5mmの杵を用い、1層目として打錠用粉体A100mgを充填し圧縮した後、2層目として打錠用粉体F100mgを充填し圧縮成形し二層錠を得た。得られた二層錠の表面は、上下両面もR凸形状であり、放出制御層の上下面の形状は、一方が凸R形状、一方が凹R形状を有する。
実施例4~5及び比較例4~6で製した錠剤を65℃1.5時間保存し、層間に生じる亀裂の発生率を確認した結果を表2に示す。なお、斜線部は放出制御層である。
R形状を有する杵を用い、放出制御層の上下両面を凸R形状とすると、亀裂が確認された(比較例4~5)。一方、放出制御層の上下面の形状を、一方が凸R形状、一方が凹R形状とした実施例4~5は、亀裂が発生しなかった。一方、結晶セルロースに置き換えた場合では、放出制御層の上下面の形状が両方凸R形状の場合であっても亀裂は発生しなかった(比較例6)。
Figure 0007516738000002
本発明により、特定の素材とヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む放出制御基剤を含んでいても、放出制御層の上下面の少なくとも一方を凹R形状とすることで、処方の変更無く亀裂発生率の低い多層錠を製することができる。これにより、例えば、放出制御層に本発明の素材を配合し、非放出制御層に脂溶性ビタミンなどを配合することにより、1錠で徐放性と速効性の双方の特性を付与したマルチビタミン配合多層錠やプロテイン配合多層錠の提供が可能となる。

Claims (6)

  1. a)ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、及びプロテインからなる群から選ばれる少なくとも1種の素材と
    b)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む層と、
    賦形剤を含む非放出制御層とを有する多層錠であって、前記プロテインは卵白プロテイン、ホエイプロテイン、カゼインプロテイン及びソイプロテインからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
    多層錠の表面は上下両面とも凸R形状であり、
    前記素材とヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む層は、非放出制御層と接する面が凹R形状であることを特徴とする多層錠。
  2. ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、2%水溶液20℃において粘度が2.5mm/s以上である、請求項1に記載の多層錠。
  3. ヒドロキシプロピルメチルセルロースのメトキシ基含量が19~24質量%であり、かつ、ヒドロキシプロポキシ基含量が4~12質量%である、請求項1に記載の多層錠。
  4. ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量が、そのヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる層全体の質量に対して15質量%以上85質量%以下である、請求項1に記載の多層錠。
  5. 錠剤直径/R値(曲率半径)が0.01より大きく2未満である、請求項1~4のいずれかに記載の多層錠。
  6. 非コーティング錠である、請求項1~のいずれかに記載の多層錠。
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