JP7503728B1 - 炭素を主体とした塊成化物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

粘結性の乏しい石炭又は石炭由来の高濃度の炭素含有物から、高密度で高強度の、炭素を主体とした塊成化物を製造する製造方法を提供する。炭素を主体とした塊成化物の製造方法は、揮発分が無水ベースで1質量%以上20質量%未満の石炭を粉砕して最大粒子径が300μm以下の石炭粉を得る粉砕ステップと、石炭粉を、酸素を遮断した環境下で600℃以上1250℃以下の温度範囲に含まれる温度で加圧成型して塊成化物を得るホットプレスステップと、を含む。

Description

本発明は、炭素を主体とした塊成化物の製造方法に関する。
特許文献1には、高密度炭素材の製造方法が開示されている。この製造方法では、自己焼結性を有する炭素質粉末のみから、大気圧下で400~600℃に加熱し、次いでこの加熱された炭素材原料を前記温度範囲に保持したまま50~400kg/cmの圧力で加圧することで成型物を製造し、さらに得られた成型体を焼成し、黒鉛化している。なお、自己焼結性を有する炭素質粉末とは、バルクメソフェーズ、メソカーボン・マイクロビーズ、石油系もしくは石炭系の生コークスである。
特許文献2には、石炭又はコークスの熱履歴推定方法が開示されている。石炭またはコークスが受けた熱履歴における最高到達温度について、ラマン分光測定により得られるスペクトルのベースラインの強度値により、300℃以上、600℃未満の範囲で前記最高到達温度を推定することを特徴とする。
非特許文献1には、間接的引張強度試験法によるコークス強度(高炉用成型コークスの強度)の検討の結果が開示されている。
非特許文献2には、コークスの製造方法が記載されている。この製造方法では、非粘結炭を含む種々の石炭(炭素含有率が67.0~84.6wt%-daf、流動性の自然対数が0~1.1)を、その粒径が106μm以下あるいはボールミリングにより約10μm以下となるように微粉砕し、次いで粉砕物を温度240℃、機械的圧力128MPaをもって成型し、さらに成型物を炭化する。この製造方法では、嵩密度1.10~1.49g/cm、引張強度1.6~35.1MPaの冷間引張強度を有するコークスを製造することができるとされている。
特公平1―32162号公報 特許第5929075号公報
間接的引張強度試験法によるコークス強度の検討(I)、燃料協会誌、第54巻、第584号、1975年、P983-993、宮川亜夫ら、[令和4年10月14日検索]、インターネット<https://www.jstage.jst.go.jp/article/jie1922/54/12/54_12_983/_pdf> K.Uchida,S.Kudo,A.Mori,U.P.M.Ashik,K.Norinaga,Y.Dohi,K.Uebo and J-i.Hayashi:ISIJ International,59(2019),P.1449.
固体の炭素材料の多くは、石炭又はこれを原料とする高濃度の炭素含有物を塊成化して使用されている。この場合、塊成化物は、用途に応じて所定の強度や嵩密度であることが求められる。炭素を主体とした塊成化物は、粘結性を有する粘結炭やピッチのような粘結剤などの液相成分を利用して粒子同士を接着ないし融着して塊成化して製造される。しかし、液相を利用した塊成化では、液相成分が分解してガスが発生する。そのため、塊成化物中で発泡し、塊成化物が多孔質化して嵩密度が低下する場合があるため問題である。また、粘結炭は非粘結炭と比べて高価であり、また、ピッチのような粘結剤は、粘結炭よりも更に高価である点も問題である。
そもそも、粘結炭やピッチなどを用いない場合、従来技術にあっては、塊成化物を得られず、また、塊成化物を得た場合にも十分な強度を得られないという問題もある。また、石炭の加工工程における何かしらの理由で粘結性を有する液相成分を失った石炭又は石炭の熱処理物(熱処理炭)を有効利用したい場合もある。
これらの事情から、固体の炭素材料を製造するに際し、粘結性の乏しい石炭又は石炭由来の高濃度の炭素含有物から、高密度で高強度の、炭素を主体とした塊成化物を製造する製造方法の提供が望まれる。
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、粘結性の乏しい石炭又は石炭由来の高濃度の炭素含有物から、高密度で高強度の、炭素を主体とした塊成化物を製造する方法を提供することにある。
上記目的を達成するための、本発明に係る塊成化物の製造方法は以下のとおりである。
[1] 揮発分が無水ベースで1質量%以上20質量%未満の石炭を粉砕して最大粒子径が300μm以下の石炭粉を得る粉砕ステップと、
前記石炭粉を、酸素を遮断した環境下で600℃以上1250℃以下の温度範囲に含まれる温度で加圧成型して塊成化物を得るホットプレスステップと、を含む、炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
[2] 前記石炭は、揮発分が無水ベースで13質量%未満である上記[1]に記載の炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
[3] 前記石炭が、熱処理された熱処理炭である上記[1]又は[2]に記載の炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
[4] 石炭を熱処理し、揮発分が無水ベースで1質量%以上20質量%未満の熱処理炭を得る熱処理ステップと、
前記熱処理炭を粉砕して最大粒子径が300μm以下の石炭粉を得る粉砕ステップと、
前記石炭粉を、酸素を遮断した環境下で600℃以上1250℃以下の温度範囲に含まれる温度で加圧成型して塊成化物を得るホットプレスステップと、を含む、炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
[5] 前記熱処理炭は、揮発分が無水ベースで13質量%未満である上記[4]に記載の炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
[6] 前記熱処理は、500℃以上1000℃以下の第一温度以下で行われ、
前記加圧成型は、前記第一温度以上で行われる上記[3]から[5]の何れか一つに記載の炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
[7] 前記加圧成型の成型圧力が、20MPa以上である上記[1]から[6]の何れか一項に記載の炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
[8] 前記加圧成型は、加圧を開始以降に加熱を開始する上記[1]から[7]の何れか一項に記載の炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
[9] 前記石炭が非粘結炭である上記[1]から[8]の何れか一項に記載の炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
本発明によれば、粘結性の乏しい石炭又は石炭由来の高濃度の炭素含有物から、高密度で高強度の、炭素を主体とした塊成化物を製造する製造方法を提供することができる。
実施例1の塊成化物の嵩密度と揮発分との関係を示すグラフである。 実施例1の塊成化物の間接引張強度と揮発分との関係を示すグラフである。 実施例2の塊成化物の間接引張強度と熱処理温度との関係を示すグラフである。 実施例3の塊成化物の間接引張強度と成型圧力との関係を示すグラフである。 実施例5の塊成化物の間接引張強度と成型温度範囲の下限の温度との関係を示すグラフである。
図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る炭素を主体とした塊成化物の製造方法について説明する。
〔第一実施形態〕
本実施形態に係る炭素を主体とした塊成化物の製造方法は、揮発分が無水ベース(Dry Base,D.B.)で1質量%以上20質量%未満の石炭を粉砕して最大粒子径が300μm以下の石炭粉を得る粉砕ステップと、この石炭粉を、酸素を遮断した環境下で600℃以上1250℃以下の温度範囲に含まれる温度で加圧成型して塊成化物を得るホットプレスステップと、を含む。以下、石炭の揮発分は、無水ベースの質量%で表す。
この製造方法では、揮発分が1質量%以上20質量%未満の石炭、すなわち、粘結性の乏しい石炭又は石炭由来の高濃度の炭素含有物から、高密度で高強度の、炭素を主体とした塊成化物を製造することができる。
以下では、本実施形態に係る、炭素を主体とした塊成化物のことを、単に塊成化物と称する場合がある。なお、「炭素を主体とした塊成化物」とは、塊成化物における炭素比率が無水ベースで70質量%以上100質量%以下である塊成化物を意味する。
詳述すると、この製造方法では、揮発分となり得る液相成分を利用して石炭粉の粒子同士を接着ないし融着させる液相焼結的な現象によらず、固相焼結的な現象により、塊成化物が形成される。そのため、搬送中の衝撃や、充填層にしてヤードやホッパー内に貯留する際の静的な荷重に耐える程度の高強度の塊成化物を得ることができる。また、嵩密度(見掛密度)が1.1g/cmを超える高密度の塊成化物(密度の高い塊成化物)を得ることができる。
なお、本実施形態における塊成化物の嵩密度は、塊成化物の質量を、塊成化物の外形容積(対象となる物質の、固体部分の体積及び開気孔、閉気孔の体積の総和)で除した値である。塊成化物の質量は、電子天秤により測定した。塊成化物の外形容積は、円柱状の塊成化物の直径と高さをノギスで計測し、計算により求めた値である。
また、本実施形態における塊成化物の強度とは、非特許文献1に記載された方法で測定した冷間での間接引張強度のことである。以下では、この方法で測定した間接引張強度を、単に強度と称する場合がある。
搬送中の衝撃や、充填層にしてヤードやホッパー内に貯留する際の静的な荷重に耐える程度の強度としては、1MPa以上の強度が必要である。以下の説明では、塊成化物が1MPa以上の強度を有する場合は、塊成化物について高強度である(強度が高い)と評価する。このうち、従来の高炉プロセスでも使用可能な程度の強度を有する塊成化物(すなわちコークス)のことを、高強度のコークスとして使用可能であると評価する場合がある。なお、高炉プロセスで一般的に使用可能な強度を有するコークスとは、強度が3MPa以上であるものである。また、従来の製造方法と比較するような場合には、同等程度の揮発分の石炭を用いて製造した塊成化物同士の比較について、相対的に強度が高い場合に、その塊成化物について高強度であると評価する。
揮発分が1質量%以上20質量%未満の石炭の一例は、一部の瀝青炭、半無煙炭及び無煙炭である。揮発分が1質量%以上20質量%未満の石炭は、粘結性に乏しい。揮発分が1質量%以上20質量%未満の石炭は、石炭の加工工程における何かしらの理由で揮発分を失った石炭又は石炭を熱処理した熱処理炭であってもよい。すなわち、本実施形態における、揮発分が1質量%以上20質量%未満の石炭との概念には、未加工の石炭に加えて、熱処理炭のような、石炭由来の、炭素を主体とした石炭由来物を包含する。第一実施形態における以下の説明では、単に石炭と記載した場合は、揮発分が1質量%以上20質量%未満の石炭を意味するものとする。
なお、石炭の揮発分は、日本工業規格(JIS)に規定される「石炭類及びコークス類―工業分析方法」(JIS M 8812:2004)に従って計測した値である。
粉砕ステップは、石炭を粉砕して最大粒子径が300μm以下の石炭粉を得る工程である。なお、本実施形態における粒子径は、特に記載のない場合、最大粒子径を意味する。粒度分布計測装置で測定する場合は、次のようにして最大粒子径を測定することができる。
本実施形態において、粒子径及び粒度分布は、市販の粒度分布計測装置を用いて計測した値を用いてよい。本実施形態では、Malvern Panalytical社製の画像式粒度分布測定装置「Morphologi 4」(以下、単に粒度分布計測装置と称する)を使用し、55,000~74,000個の粒子の画像を装置に内蔵された顕微鏡で取得し、装置に付属のソフトウェアによる画像解析により求めた円相当粒子径(投影面積円相当径)に基づく粒子径及び粒度分布を用いる。すなわち、混合粉中に含まれる粒子を粒度分布計測装置で計測した粒度分布の粒子の小さい方から積算して95%となる粒子径を最大粒子径(最大値)とする。以下では、単に粒子径又は粒度分布などと記載した場合は、上記の粒度分布計測装置で計測した値のことを意味するものとする。
石炭粉中に300μmを超える粒子径の粗粒が含まれると、この粗粒が塊成化物中に残存して強度を低下させる場合がある。後のホットプレスステップで、石炭粉中の粒子同士の結合を引き起こす固相焼結的な現象は、粒子径が小さいほど促進される。したがって、粗粒の残存は、粒子同士の結合を阻害するため、強度の低下を引き起こす場合がある。また、塊成化物中における粗粒周辺に欠陥が形成されやすくなるため、外力が加わった場合に、応力集中を引き起こし、破壊の起点となることもあり、そのため、強度が低下する場合がある。
石炭粉の粒子径は、好ましくは100μm以下である。石炭粉の粒子径が適度に小さいことで、塊成化物中の物理的構造が緻密で均質になり、塊成化物の強度上昇に寄与する。なお、石炭粉の粒子径は、細かければ細かいほど塊成化物の強度が向上するため好ましい。このため、石炭粉の最小粒子径は限定するものではない。ただし、生産性も考慮すると、石炭粉の粒子径を小さくする場合であっても、その石炭粉中に含まれる粒子の最大粒子径を20μm未満とすることは、微粉砕コストがあがるが、塊成化物の性能の向上は限定的である。このため、最大粒子径は20μm以上とすれば、十分な強度の塊成化物を製造することができる。
微粉砕方法又は微粉砕装置は特に限定されない。石炭の微粉砕装置として、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル、ボールミルのような媒体ミルなどを使用してよい。微粉砕装置は、微粉砕のみ行う装置に限られず、例えば分級機内蔵型粉砕機を用いてもよい。
ホットプレスステップは、石炭粉を、酸素を遮断した環境下で、600℃以上1250℃以下の温度範囲に含まれる温度で加圧成型して塊成化し、塊成化物を得る工程である。
ホットプレスステップでは、石炭粉を機械的に加圧して成型、すなわち、加圧成型する。機械的に加圧するとは、石炭粉を杵と臼、金型(モールド)又は圧縮ロールのような物理的な壁体となる部材で石炭粉を圧縮することをいう。以下では、ホットプレスステップにおいて石炭粉に機械的に加えられる加圧成型時の圧力を、成型圧力と称する。
ホットプレスステップでは、600℃以上1250℃以下の温度範囲に含まれる温度にて石炭粉を加圧できればよい(すなわち、ホットプレスする)。ホットプレスステップは、例えば、石炭粉を上記温度範囲に含まれる温度まで加熱して加熱を停止し、上記温度範囲に含まれる温度にて加圧成型してもよい。また、ホットプレスステップは、石炭粉を加熱して昇温しながら、上記温度範囲に含まれる温度にて加圧成型してもよい。この場合、石炭粉を加熱して昇温している全過程のうち、一部の過程でのみ加圧してもよいし、全過程において加圧してもよい。加圧成型中に温度低下を抑制または防止する観点からは、ホットプレスステップは、昇温しなくとも、少なくとも保温のために加熱しながら行うことが好ましい。
石炭粉を600℃以上1250℃以下の温度範囲を含む温度での加圧成型を行うホットプレス装置は特に限定されない。石炭粉の加圧は、上記の壁体で囲われた空間内(例えば、ホットプレスを行う金型内)に石炭粉を収容し、当該壁体を介した圧縮による加圧を行えるものであればよい。石炭粉を加熱するための熱源は、例えば電気抵抗加熱、マイクロ波加熱、高周波誘導加熱によるものを用いてよい。
石炭粉を加熱すると、石炭粉は熱膨張する。これに伴って、石炭粉の充填層の嵩密度は低下する。これに対し、石炭粉を加圧しながら加熱すると、熱膨張に抗して石炭粉の充填層を圧縮し、この石炭粉の充填層の嵩密度の低下を抑制することができる。これにより、粒子同士の接触点を増加させ、固相焼結的な現象を促進することができる。その結果、より効果的に嵩密度が高く、且つ、高強度の塊成化物を得ることができる。
ホットプレスステップにおける石炭粉の加熱は、上記壁体を介して行ってよい。また、ホットプレスステップにおける加圧中の石炭粉の温度範囲を、成型温度範囲と称する。すなわち、成型温度範囲とは、石炭粉を昇温させている過程において、加圧を開始した時の石炭粉の温度(成型温度範囲の下限の温度)から加圧を終了した時の石炭粉の温度(成型温度範囲の上限の温度)までの範囲の温度である。成型温度範囲における上限の温度は、ホットプレスステップの上限温度と同じ1250℃である。成型温度範囲における下限の温度は、例えば、ホットプレスを行う金型内に投入した時点の石炭粉の温度である。
ホットプレスステップでは、酸素供給が遮断された雰囲気中で石炭粉を600℃以上に加熱することで、石炭粉の石炭粒子同士を固相焼結的な現象により結合させ、緻密化する。その結果、嵩密度が高く、且つ、高強度な塊成化物の製造が可能となる。なお、固相焼結的な石炭粒子同士の結合は、概ね600℃以上で生じる(発現する)。
ホットプレスステップにおける、酸素供給が遮断された雰囲気とは、例えば、空気(酸素)の流入が阻害され、窒素などの不活性ガスが通流された空間内の雰囲気である。酸素が供給される環境では、原料が燃焼して消失してしまう。
ホットプレスステップにおける成型温度範囲は、600℃以上1250℃以下の温度範囲に含まれる温度を含む必要がある。成型温度範囲は、好ましくは600℃以上1000℃以下の温度範囲に含まれる温度を含む。換言すると、成型温度範囲の一部又は全部は、600℃以上1250℃以下の温度範囲と重複する必要がある。これにより、固相焼結的な現象を生じさせて石炭粉を塊成化することができる。上述のように、固相焼結的な現象は、600℃以上で生じる。固相焼結的な現象は、特に、600℃以上1250℃以下で顕著に生じる。600℃以上1250℃以下というホットプレスステップの温度では炭化が進行して炭化処理を兼ねるため、必ずしも別途炭化処理を行う必要はないが、炭化処理を兼ねたホットプレスステップの後にさらに炭化処理を行ってもよい。
ホットプレスステップの後に炭化処理を行う場合、ホットプレスステップと同様に、酸素供給が遮断された雰囲気で行う。炭化処理の温度である炭化温度は、600℃以上とするとよい。石炭粉中の粒子同士の結合を引き起こす固相焼結的な現象は、上記のように600℃以上で生じるためである。一方、炭化温度が1250℃を超えると、塊成化物においてヘテロ元素の脱離などが生じ、強度が低下する。炭化温度が1250℃以下では、炭化温度が高いほど塊成化物の嵩密度や強度が高まる。高炉用のコークス用途の場合、塊成化物に高い強度(3MPa以上、好ましくは5MPa以上)が求められるため、炭化温度は、900℃以上1250℃以下とするとよく、より好ましくは900℃以上1100℃以下とするとよい。また、炭化温度は、ホットプレスステップの温度よりも高い温度で行うことが好ましい。例えば700℃でホットプレスステップを行った場合、700℃より高温で炭化処理を行うことで、塊成化物を収縮させて密度を増加させ、さらに強度を高めることができる。なお、ホットプレスステップで炭化処理を兼ねた場合は、ホットプレスステップでの最高到達温度が炭化温度となる。
加圧成型しながら石炭粉を昇温させていく場合、成型温度範囲の下限温度は低いほど望ましい。また、加圧成型しながら石炭粉を昇温させていく場合、成型温度範囲の上限温度は、高いほど望ましい。加圧成型しながら石炭粉を昇温させていく場合、成型温度範囲を広げると、反応時間を長くすることができるためである。なお、成型温度範囲の下限温度は、ホットプレスステップで加圧を開始する時の温度(例えば室温)である。昇温過程の温度範囲の一部を成型温度範囲としてもよいが、成型温度範囲を広げるためには、石炭粉の加熱を開始以降、例えば、加熱を開始した時、又は加熱開始直後に加圧を開始するとよい。
昇温速度は、30℃/min以下とすることが好ましい。昇温速度を30℃/min以下とすることで、温度のばらつきを小さくし、局所的な強度低下を回避することができる。
成型圧力は、高いほど、石炭粉中の石炭粒子同士の接触点を増やし、固相焼結的な現象を促進する。そのため、成型圧力が高いほど、塊成化物の嵩密度が高まり、これに伴い、強度も高まる。
成型圧力が20MPa以上では、塊成化物の嵩密度及び強度(すなわち、塊成化物の品質)が安定したものとなる。成型圧力が20MPa未満になると、高強度の成型物を得ることができない場合がある。したがって、成型圧力は、20MPa以上とすることが好ましい。なお、成型圧力が高すぎると製造コストが高くなる場合がある。成型圧力は、300MPa以下であれば足りる。
石炭粉の原料となる石炭の揮発分が1質量%未満になると、石炭粉から適切な嵩密度又は強度の塊成化物を得ることができない場合がある。ホットプレスステップで生じる固相焼結的な現象は、原料となる石炭ないし熱処理炭が、芳香族化あるいは多環化する反応が駆動力となっていると考えられる。この反応では、水素が放出される。また、これに加えて、含酸素官能基やアルキル基の分解に伴うCOやメタン、その他炭化水素等が放出される。すなわち、原料の揮発分とは、固相焼結的な現象の駆動力となる芳香族化あるいは多環化反応が起こる際に放出される水素、CO、メタン、その他炭化水素の量に対応し、固相焼結的な現象のポテンシャルを示している。すなわち、揮発分が1質量%未満であると、固相焼結的な現象が生じ難くなる。
揮発分が20質量%を超えるなど揮発分が高すぎると、加熱時に発生したガス(揮発分が揮発したガスや、揮発分が分解して生じたガス)が膨張したり石炭粉が溶融し、発泡したりする。そのため、加圧成型時のホットプレス装置による石炭粉の圧縮が阻害され、石炭粉を十分に加圧することができなくなって、塊成化物の嵩密度が低下する場合がある。また、加熱時に発生したガスにより、ホットプレス装置における、例えば、臼や金型などの壁体で囲われた空間の内圧が、石炭粉に加えようとする圧力を超える恐れも生じる。このような場合、ホットプレス装置や壁体が破損する危険性も生じる。また、加熱時に発生したガスにより、壁体の汚損も生じやすくなる。そのため、石炭の揮発分は20質量%未満とする。
なお、特に高炉用コークスとして好適な3MPa以上の強度を有する塊成化物を得るためには、石炭の揮発分を8質量%以上とすればよい。石炭の揮発分が1質量%以上20質量%未満の範囲では、石炭の揮発分が高いほど強度の高い塊成化物を得ることができる。石炭の揮発分を8質量%以上20質量%未満とすることで、従来の高炉プロセスでも使用可能な程度の強度を有し、且つ、低コストのコークスの製造方法を提供することができる。
〔第二実施形態〕
第一実施形態では、炭素を主体とした塊成化物の製造方法として、粉砕ステップとホットプレスステップと、を含む場合を説明し、粉砕ステップは、揮発分が1質量%以上20質量%未満の石炭を粉砕して最大粒子径が300μm以下の石炭粉を得る工程であることを説明した。そして、揮発分が1質量%以上20質量%未満の石炭の一例として、一部の瀝青炭、半無煙炭、無煙炭、及び石炭の加工工程における何かしらの理由で揮発分を失った石炭又は石炭を熱処理した熱処理炭を例示した。本実施形態は、炭素を主体とした塊成化物の製造方法が、石炭を熱処理し、揮発分が1質量%以上20質量%未満の熱処理炭を得る熱処理ステップを更に含む点で第一実施形態とは異なり、その他は同様である。すなわち、第二実施形態では、炭素を主体とした塊成化物の製造方法として、粉砕工程に先立って熱処理工程が行われ、熱処理工程で得た熱処理炭を粉砕工程で粉砕する。以下の説明において、第一実施形態と同様の部分の説明は適宜省略する。
熱処理ステップは、粉砕工程に供するための熱処理炭を得る工程である。熱処理ステップでは、後述するように、酸素を遮断した環境下で石炭を500℃以上1000℃以下に加熱する。
熱処理ステップで熱処理される石炭(以下、原料石炭と記載する)の揮発分は、例えば、1質量%以上45質量%以下である。このような揮発分の石炭の一例は、褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭、半無煙炭及び無煙炭である。
揮発分が多い原料石炭は、流動性も高い傾向にある。また、揮発分が少ない原料石炭は、流動性が低い傾向にある。このように揮発分の大小によって流動性に違いがあるが、本実施形態に係る塊成化物の製造方法では、原料石炭の流動性は任意に選択可能である。例えば原料石炭として流動性が高い粘結炭を用い、これを酸素を遮断した環境下で500℃以上で熱処理すると、液相成分が熱分解し、また、重縮合する。そして、分解又は重縮合した成分のうち、軽質成分は蒸散し、重質成分は固化して残留する。熱処理後の粘結炭は、液相成分が失われるため、流動性が完全に消失する。したがって、何れの流動性を示す石炭でも使用可能である。
本実施形態において原料石炭は、最高流動度(JIS M8801のMF:Maximum Fluidity)の常用対数logMFが0.8以上であると好ましい。このような原料石炭を用いると、塊成化物の嵩密度を、従来技術で製造される塊成化物(例えば、非特許文献2の方法で製造される塊成化物。該塊成化物は、原料石炭のlogMFが0.8以上の場合、液相内で発生した揮発分による発泡が顕著となり、logMFが増加するほど嵩密度が低下する傾向がある)の嵩密度よりも高めることができる場合がある。
原料石炭の熱処理は、上述のごとく、酸素を遮断した環境下において500℃以上1000℃以下に加熱して行う。
熱処理温度が低いほど熱処理炭中に残留する揮発分が多くなるため、ホットプレスステップにおける固相焼結的な現象が強く発現する。そのため、嵩密度が高く、また、高強度の塊成化物を得ることができる。
熱処理温度が500℃を下回ると、熱処理炭及び石炭粉中に揮発分やタールが過剰に残留してしまう。例えば熱処理炭の揮発分が20質量%を超えると、第一実施形態での説明と同様に、ホットプレスステップにおいて、石炭粉の溶融、発泡又は膨張による嵩密度の低下やホットプレス装置等の破損や汚損を生じる場合があるため好ましくない。
熱処理温度が1000℃を超えると、熱処理炭及び石炭粉中に残留する揮発分が1質量%未満となる場合がある。この場合、第一実施形態で説明したように、固相焼結的な現象が生じ難くなる。
原料石炭の熱処理は、酸素供給が遮断された雰囲気中で行うとよい。原料石炭の熱処理は、例えば空気の流入が阻害され、不活性ガスが通流される空間を形成する容器に原料石炭を収容した状態で行うとよい。原料石炭の熱処理は、原料石炭を収容した容器を加熱し、当該容器からの伝熱によって行ってよい。すなわち、原料石炭の熱処理は、原料石炭を容器に収容した状態でこの容器を加熱し、これにより原料石炭を500℃以上1000℃以下に加熱して行ってよい。
通常、熱処理における原料石炭の熱分解反応の反応速度は速いため、熱処理における熱分解反応の反応完了に要する時間は短い。したがって、熱処理に必要な処理時間は、1分以上である。熱処理を行う時間(熱処理の処理時間、以下、熱処理時間と記載する)は、好ましくは10分以上とするとよい。これにより、原料石炭の温度と容器の温度との温度差がなくなり、原料石炭全体を均質に熱処理することができる。また、原料石炭全体の温度を確実に熱処理温度均等まで高めて(すなわち、むらなく加熱して)熱処理を行うことが可能となり、熱処理炭の品質ばらつきを抑制することができる。
熱処理時間の上限は特に定めるものではないが、熱処理時間が長すぎると熱処理に要するエネルギーが増加し、コストが増加するため好ましくない。熱処理時間は通常、60分以下で足りる。なお、熱処理時間とは、原料石炭の温度が500℃以上1000℃以下の所定の熱処理温度(以下、第一温度と称する)に到達した時点から、この第一温度で保持された時間のことである。
熱処理は、例えば、電気炉、ロータリーキルン、流動層加熱炉、スクリュー式加熱炉、シャフト炉、乾留炉などの加熱装置を用いて行える。
ホットプレスステップは第一実施形態と同様であるが、更に以下の工夫を行ってもよい。
上述のごとく、本実施形態では、熱処理ステップで原料石炭を第一温度で熱処理して熱処理炭を得ている。すなわち、熱処理炭は、第一温度以下で生じうる熱分解反応が完了しており、第一温度以上に加熱されなければ更なる熱分解反応は生じない。したがって、固相焼結的な現象の駆動力となる熱分解反応を起こすためには、石炭粉を第一温度以上に加熱する必要がある。そのため、ホットプレスステップでは、成型温度範囲を第一温度以上とするとよい。
(変形例1)
上記実施形態では、粉砕ステップで粉砕される石炭は、揮発分が1質量%以上20質量%未満の石炭であり、揮発分が1質量%以上20質量%未満の石炭の一例として、一部の瀝青炭、半無煙炭、無煙炭及び石炭の加工工程における何かしらの理由で揮発分を失った石炭又は石炭を熱処理した熱処理炭を例示した。そして、第二実施形態では、熱処理ステップを第一温度以下で行う場合、ホットプレスステップにおける加熱成型時の炭化温度を、第一温度以上とするとよいことを説明した。しかし、石炭の加工工程における何かしらの理由で揮発分を失った石炭、例えば、意図せずに熱処理ステップと同様の熱処理が行われてしまった石炭を用いて塊成化物を製造する場合は、この石炭が熱処理された際の第一温度が不明である場合もある。
このように石炭が熱処理された際の第一温度が不明である場合は、例えば、特許文献2に開示されているような石炭又はコークスの熱履歴推定方法を用いて石炭が熱処理された際の第一温度を推定し、この推定された第一温度に基づいてホットプレスステップにおける成型温度範囲を決定してもよい。
(変形例2)
上記実施形態では、ホットプレスステップまで行って塊成化物を得る場合までを説明した。ホットプレスステップで得た塊成化物は、さらに黒鉛化処理をして黒鉛材料に加工することもできる。塊成化物から黒鉛材料を製造する場合は、ホットプレスステップの後に、黒鉛化処理として、望ましくは2000℃以上、さらに望ましくは2200℃以上で、酸素を遮断した雰囲気下で加熱するとよい。
以下では、実施例を説明する。
(実施例1)
実施例1として、種々の揮発分の原料石炭又は熱処理炭を用い、本実施形態に係る製造方法で塊成化物を製造して評価した。
種々の原料石炭を74μm以下(200メッシュパス)の粒子径に予備粉砕し、600℃以上900℃以下の範囲で熱処理温度をそれぞれ違えて熱処理して熱処理炭を得た(熱処理ステップ)。揮発分が多い原料石炭の場合(例えば、原料石炭が粘結炭である場合)は、熱処理によって塊成化してしまう場合がある。そのため、本実施例では、いずれの原料石炭から製造した熱処理炭についても、熱処理後に74μm以下の粒子径に粉砕処理して石炭粉を得た(粉砕ステップ)。一部の原料石炭(揮発分が20質量%未満であるもの)については熱処理を行わず、そのまま粉砕処理をして石炭粉とした。なお、上記いずれの粉砕処理にも超遠心粉砕機(メーカー:ヴァーダー・サイエンティフィック社、型式:ZM200)を用いた。
石炭粉は、さらに、ホットプレスに供した(ホットプレスステップ)。まず、モールド(金型、直径:12mm)に1.32gの石炭粉を充填した。そして、窒素流通下で50MPaの成型圧力(機械的圧力)を負荷しながら、室温の状態から開始して1000℃になるまで昇温速度20℃/minで加熱した。さらに、モールドが1000℃に到達してから1000℃で5min保持した。その後降温し、実施例1に係る塊成化物(1-1~1-15)を回収した。
上記塊成化物について、嵩密度と間接引張強度とを計測した。なお、間接引張強度は、非特許文献1に記載された方法を用いて測定した冷間での間接引張強度として測定した。また、嵩密度は、上述のごとく、外形容積をノギスで計測した寸法から算出し、電子天秤で質量を計測し、算出した値である。表1には、実施例1における、各塊成化物の製造に用いた石炭の熱処理温度、熱処理後の揮発分、塊成化物の嵩密度及び間接引張強度を示す。図1には、実施例1の塊成化物の嵩密度と揮発分との関係を示すグラフを示す。図2には、実施例1の塊成化物の間接引張強度と揮発分との関係を示すグラフを示す。
Figure 0007503728000001
(比較例1)
比較例1として、種々の揮発分の原料石炭又は熱処理炭を用い、非特許文献2に記載のコークスの製造方法(従来法)で塊成化物を製造して評価した。
実施例1と同様にして得た石炭粉1.50gをモールド(金型、直径:12mm)に充填した。そして、100MPaの機械的圧力を負荷し、成型物を得た。次に、この成型物を電気炉内が1000℃になるまで昇温速度3℃/minで加熱した。さらに、電気炉内が1000℃到達してから1000℃で5min保持した。その後降温し、比較例1に係る塊成化物(R1-1~R1-26)を回収した。
上記塊成化物について、実施例1と同様に、嵩密度と間接引張強度とを計測した。表2には、比較例1における、各塊成化物の製造に用いた石炭の熱処理温度、熱処理後の揮発分、塊成化物の嵩密度及び間接引張強度を示す。図1には、実施例1の結果に加えて、比較例1の塊成化物の嵩密度と揮発分との関係を示すグラフを示す。図2には、同様に、実施例1の結果に加えて、比較例1の塊成化物の間接引張強度と揮発分との関係を示すグラフを示す。
Figure 0007503728000002
表1、2及び図1、2に示した実施例1及び比較例2の結果より、揮発分が13質量%未満の石炭又は熱処理炭を用いて製造された実施例1の塊成化物は、従来法で製造された比較例1の塊成化物よりも嵩密度及び強度が高い。
実施例1に係る塊成化物は、いずれも嵩密度が1.1g/cm以上であり、高密度である。
特に揮発分が9質量%未満でみると、比較例1では塊成化できていないが、実施例1では塊成化できている。すなわち、実施例1の塊成化物は比較例1の塊成化物よりも嵩密度及び強度が高い。
揮発分が8質量%以上では、実施例1の塊成化物は、高強度のコークスとして使用可能な強度を達成している。
揮発分が13質量%以上では、実施例1の塊成化物は比較例1の塊成化物と遜色なく嵩密度及び強度が高い。
このように、図1、2に示される実施例1の結果からは、本実施形態に係る塊成化物の製造方法によれば、揮発分が少なくとも20質量%未満の石炭又は熱処理炭を用いて塊成化物の製造が可能であると十分に推定できる。
以上の結果から、本実施形態に係る塊成化物の製造方法によれば、粘結性の乏しい、すなわち、揮発分が1質量%以上20質量%未満の石炭又は石炭由来の高濃度の炭素含有物(例えば熱処理炭)から、高密度で高強度の、炭素を主体とした塊成化物を製造することができることがわかる。
(実施例2)
熱処理温度の影響を確認すべく、以下のようにして実施例2に係る塊成化物を製造して評価した。
実施例2では、熱処理温度を変えた石炭を用いて塊成化物を製造し、嵩密度と間接引張強度とを計測した。原料石炭として、非粘結炭である石炭(1)(揮発分:10.0質量%)と非粘結炭である石炭(2)(揮発分:20.0質量%)とを用いた。
実施例2における塊成化物の製造は、熱処理温度を600℃以上1100℃以下の範囲で熱処理温度をそれぞれ違えて熱処理して熱処理炭を得た以外は実施例1と同様に行い、実施例2に係る塊成化物(2-1~2-12)を得た。
実施例2の塊成化物は、実施例1と同様に、嵩密度と間接引張強度とを計測した。表3には、実施例2における、各塊成化物の製造に用いた石炭の種類、熱処理温度、熱処理後の揮発分、塊成化物の嵩密度及び間接引張強度を示す。図3には、実施例2の塊成化物の間接引張強度と熱処理温度との関係を示すグラフを示す。
Figure 0007503728000003
表3及び図3より、熱処理温度が高くなるにしたがって、揮発分が単調に減少し、塊成化物の強度もそれに伴って単調に減少することが分かる。特に熱処理温度が900℃以上では、塊成化物は得られるものの、強度が大きく低下する。例えば塊成化物2-5、2-10及び2-11では、1.0MPaを下回っている。さらに、熱処理温度が1100℃では、揮発分が1質量%未満となり、塊成化物も得られなかった。熱処理温度が800℃以下では、塊成化物は高密度かつ高強度である。熱処理温度が800℃を超え900℃以上の場合でも、従来技術(比較例1の揮発分が9質量%未満の場合を参照)では塊成化すらできなかった揮発分の熱処理炭を、強度の計測が可能な程度の強度で塊成化できており、従来技術の塊成化物に対して高強度の塊成化物が得られたといえる。なお、塊成化物の嵩密度や強度は熱処理後の熱処理炭の揮発分の量にも依存するため、熱処理温度は、1000℃を超えると直ちに高密度で高強度の塊成化物を製造することができなくなるというわけではないが、何れの石炭を熱処理した場合でも、熱処理温度が高くなるにしたがって、揮発分の量は単調に減少し、1000℃超で概ね1質量%に近い値、あるいはそれ未満の値となる。したがって、熱処理温度は、1000℃以下であることが好ましいと考えられる。
(実施例3)
成型圧力の影響を確認すべく、以下のようにして実施例3に係る塊成化物を製造して評価した。
実施例3における塊成化物の製造は、原料石炭として石炭(1)を用い、また、熱処理温度を600℃の場合のみとして熱処理して熱処理炭を得て、成型圧力を10MPa、20MPa、35MPa及び50MPaとした以外は実施例1と同様に行い、実施例3に係る塊成化物(3-1~3-4)を得た。
実施例3の塊成化物は、実施例1と同様に、嵩密度と間接引張強度とを計測した。表4には、実施例3における、各塊成化物の製造時の成型圧力と、塊成化物の嵩密度及び間接引張強度とを示す。図4には、実施例3の塊成化物の間接引張強度と成型圧力との関係を示すグラフを示す。なお、実施例3における熱処理炭(熱処理後の石炭(1))は揮発分が8.2質量%であった。
Figure 0007503728000004
表4及び図4に示すグラフより、成型圧は20MPa以上が望ましいことがわかる。成型圧が20MPa以上であれば、塊成化物は高密度かつ高強度である。成型圧が20MPa未満(10MPa)では、塊成化物は得られるものの、強度が1.0MPaを下回っている。
(実施例4)
成型温度範囲の影響を確認すべく、以下のようにして実施例4に係る塊成化物を製造して評価した。
実施例4における塊成化物の製造は、原料石炭として石炭(1)を用い、また、熱処理温度を600℃の場合のみとして熱処理して熱処理炭を得て、ホットプレスステップにおいて、昇温過程における室温から1000℃までの特定の200℃の温度範囲のみを成型温度範囲として成型圧力を負荷するようにした以外は実施例1と同様に行い、実施例4に係る塊成化物(4-1~4-5)を得た。
実施例4の塊成化物は、実施例1と同様に、嵩密度と間接引張強度とを計測した。表5には、実施例4における、成型温度範囲と、塊成化物の嵩密度及び間接引張強度とを示す。なお、実施例4における熱処理炭(熱処理後の石炭(1))は実施例3で示したように、揮発分が8.2質量%であった。
Figure 0007503728000005
表5に示されるように、成型温度範囲が600℃以上の温度範囲を含まない場合は塊成化物を得られないことがわかる。また、成型温度範囲が600℃以上1000℃以下の温度範囲に含まれる温度を含む場合(600℃以上1000℃以下の温度範囲に含まれる温度で加圧成型する場合)は、嵩密度が高く、強度の高い塊成化物が得られることがわかる。
(実施例5)
成型温度範囲の影響を確認すべく、以下のようにして実施例5に係る塊成化物を製造して評価した。
実施例5における塊成化物の製造は、ホットプレスステップにおいて、成型温度範囲の下限の温度を25℃、200℃、400℃、600℃及び800℃とし、成型温度範囲の上限の温度を1000℃として(すなわち、成型温度範囲の下限の温度のみ変更して)成型圧力を負荷するようにした以外は実施例4と同様に行い、実施例5に係る塊成化物(5-1~5-5)を得た。
実施例5の塊成化物は、実施例1と同様に、嵩密度と間接引張強度とを計測した。表6には、実施例5における、成型温度範囲の下限の温度と、塊成化物の嵩密度及び間接引張強度とを示す。図5には、実施例5の塊成化物の間接引張強度と成型温度範囲の下限の温度との関係を示すグラフを示す。
Figure 0007503728000006
表6及び図5に示されるように、下限温度が低くなるにしたがって塊成化物の強度が高くなることがわかる。したがって、塊成化物の強度を高くするためには、成型温度範囲の下限は低い方が望ましいと判断できる。また、表6からは、下限温度が低くなるにしたがって塊成化物の嵩密度が大きくなることがわかる。したがって、塊成化物の嵩密度を大きくするためには、成型温度範囲の下限は低い方が望ましいと判断できる。
表5及び表6に示される結果を総合的に見ると、以下のことがわかる。成型温度範囲が600℃以上1000℃以下の温度範囲に含まれる温度を含む場合(600℃以上1000℃以下の温度範囲に含まれる温度で加圧成型する場合)に、嵩密度が高く、強度の高い塊成化物が得られる。さらに、成型温度範囲が600℃未満の温度範囲を含むと、塊成化物の嵩密度又は強度が更に向上する場合があるため好ましい。換言すると、成型温度範囲の一部が室温(25℃)以上600℃未満の温度範囲と重複すると好ましい。特に好ましい具体例は、塊成化物5-1のように、ホットプレスの加熱開始から終了までの間、成型圧力を負荷し続けるようにすることである。
以上のようにして、粘結性の乏しい石炭又は石炭由来の高濃度の炭素含有物から、高密度で高強度の、炭素を主体とした塊成化物を製造する方法を提供することができる。この製造方法で製造された塊成化物は、例えば、搬送中の衝撃や、充填層にしてヤードやホッパー内に貯留する際の静的な荷重に耐える程度の強度を有するものとすることもできるし、従来の高炉プロセスでも使用可能な程度の強度を有する塊成化物とすることもできる。
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
本発明は、炭素を主体とした塊成化物の製造方法に適用できる。

Claims (9)

  1. 揮発分が無水ベースで1質量%以上20質量%未満の石炭を粉砕して最大粒子径が300μm以下の石炭粉を得る粉砕ステップと、
    前記石炭粉を、酸素を遮断した環境下で600℃以上1250℃以下の温度範囲に含まれる温度で加圧成型して塊成化物を得るホットプレスステップと、を含む、炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
  2. 前記石炭は、揮発分が無水ベースで13質量%未満である請求項1に記載の炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
  3. 前記石炭が、熱処理された熱処理炭である請求項1に記載の炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
  4. 石炭を熱処理し、揮発分が無水ベースで1質量%以上20質量%未満の熱処理炭を得る熱処理ステップと、
    前記熱処理炭を粉砕して最大粒子径が300μm以下の石炭粉を得る粉砕ステップと、
    前記石炭粉を、酸素を遮断した環境下で600℃以上1250℃以下の温度範囲に含まれる温度で加圧成型して塊成化物を得るホットプレスステップと、を含む、炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
  5. 前記熱処理炭は、揮発分が無水ベースで13質量%未満である請求項4に記載の炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
  6. 前記熱処理は、500℃以上1000℃以下の第一温度以下で行われ、
    前記加圧成型は、前記第一温度以上で行われる請求項3~5のいずれか一項に記載の炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
  7. 前記加圧成型の成型圧力が、20MPa以上である請求項1から5のいずれか一項に記載の炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
  8. 前記加圧成型は、加圧を開始以降に加熱を開始する請求項1から5のいずれか一項に記載の炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
  9. 前記石炭が非粘結炭である請求項1から5のいずれか一項に記載の炭素を主体とした塊成化物の製造方法。
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