JP7495774B2 - 包餡食品の空隙抑制用組成物、加熱用フィリング材の突沸抑制用組成物、包餡食品の空隙を抑制する方法および加熱用フィリング材の突沸を抑制する方法 - Google Patents

包餡食品の空隙抑制用組成物、加熱用フィリング材の突沸抑制用組成物、包餡食品の空隙を抑制する方法および加熱用フィリング材の突沸を抑制する方法 Download PDF

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本発明は、包餡食品の空洞抑制用組成物、加熱用フィリング材の突沸抑制用組成物、ならびに加熱用フィリング材、ドウ、フィリング含有ドウ加熱食品および包餡食品の製造方法に関する。
ドウ(dough)とは、穀物や豆などから得られる澱粉を主体とする食材に、水および必要に応じて他の材料(副材料)を配合してなる食品生地のうち、水分含有量が比較的少なく、流動性に乏しい固いものを指す。ドウは、焼く、蒸す、揚げる、茹でるなどの加熱調理を経て、ドウ加熱食品として食用に供される。その具体例としては、例えば、パンやドーナツ、饅頭、パイ、麺、餃子などの点心、クッキーなどの菓子類が例示される。
ドウ加熱食品のなかには、小豆あんやクリーム、各種の具材などのフィリング材を包んだり載せたりして含有させたもの(本発明においては「フィリング含有ドウ加熱食品」という。)があり、手軽で満足感が得られる食品として人気がある。フィリング含有ドウ加熱食品は、焼く、蒸す、揚げるといった加熱工程を経たドウにフィリング材を載せたり注入したりして製造するものと、フィリング材をドウに載せたりドウで包んだ後、加熱するものとに分けることができる。
このうち、後者においては、当該加熱工程で、フィリング材中の急激な水分蒸発、即ち突沸が生じる場合がある。突沸が生じると、ドウの上やドウの中からフィリングが吹きこぼれて商品価値を損なうほか、焼成時のオーブンや鉄板、油ちょうに用いる油などを汚して生産性ないし作業性を損なう。また、吹きこぼれなくとも、フィリング材をドウで包んだもの(本発明においては「包餡食品」という。)においては食品内部でドウとフィリングとの間に隙間(空隙)が発生することがある。また、フィリング材をドウに載せたものにおいては、フィリング表面に気泡跡が多数発生することがある。これら空隙や気泡が生じると見た目が著しく損なわれるため、やはり商品価値を損なうこととなり、問題となっている。
そこで、加熱して用いられるフィリング材(本発明においては「加熱用フィリング材」という。)の突沸や包餡食品の空隙を抑制する技術が求められている。係る技術としては、従来、糖分含量を増やし水分を減らすことが行われているほか、特許文献1には、餡100質量部に対して油脂0.2~5.0質量部を含有させることにより加熱処理後にフィリング材と生地との間に空洞を生じ難くする技術が開示されている。
特開2018-196347号公報
しかしながら、従来行われている糖分含量を増やす手法では、甘味が強くなり利用できる食品の種類が限られるため、汎用性に欠ける。また、特許文献1に記載の技術も、通常は油脂を配合しないフィリング材においては食味への悪影響が懸念されるほか、油脂分の劣化も懸念される。すなわち、これらの先行技術を鑑みても、加熱用フィリング材の突沸や包餡食品の空隙を抑制する技術は十分に供給されている状況とはいえない。本発明は、係る課題を解決するためになされたものであって、加熱用フィリング材の突沸や包餡食品における空隙を抑制することができ、汎用性が高く、食味への悪影響や品質劣化に係る懸念も小さい技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、所定の糖組成を有する還元水飴(高糖化還元水飴および/または中糖化還元水飴)を加熱用フィリング材に配合することで、その突沸を抑制でき、包餡食品における空隙を抑制できることを見出した。
ここで、高糖化還元水飴のような糖化度の大きい(分子サイズが小さい)糖が、保湿性が高い性質を有することは従来、公知である(例えば、物産フードサイエンス株式会社、取扱製品、第一世代、[online]、[令和4年10月4日検索]、インターネット<URL:https://www.bfsci.co.jp/products/generation1/>)。また、水飴も一般的に保湿性が高いことが知られ、食品をしっとりさせるために配合されている。しかしながら、後述する実施例で示すように、水飴や、分子サイズの小さい二糖類であるトレハロースの突沸ないし空隙抑制効果は高いものではなく、これらよりも平均分子サイズの大きい中糖化還元水飴の方が突沸ないし空隙抑制効果は高い。このことから「保湿性」と「突沸ないし空隙を抑制する効果」とは相関せず、保湿性が高いからといって必ずしも突沸や空隙を効果的に抑制できないことが分かる。
すなわち、これまで、突沸や包餡食品の空隙を抑制できる糖は知られておらず、また、既知の糖の作用からも、どのような糖が当該効果を有するかは、容易に予測できるものではなかった。本発明者らは、鋭意研究の結果、意外なことに、上述のとおり、高~中糖化還元水飴をフィリング材に配合することで突沸や空隙を抑制できるとの知見を得た。また、意外なことに、高~中糖化還元水飴は、ドウに配合することでも、空隙を抑制できるとの知見を得た。そこで、これらの新規な知見に基づいて、下記の各発明を完成した。
(1)本発明に係る包餡食品の空隙抑制用組成物の第1の態様(以下、「第1態様空隙抑制用組成物」という場合がある。)は、下記(ア)~(エ)から選択されるいずれか1以上の還元水飴を有効成分とし、前記有効成分が加熱用フィリング材に配合して用いられることを特徴とする;
(ア)糖組成が、単糖が30~50質量%、二糖が20~55質量%および三糖以上が40質量%以下である、還元水飴(高糖化還元水飴)、
(イ)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満である、還元水飴(中糖化還元水飴)、
(ウ)デキストロース当量が55超100未満の水飴を還元してなる、還元水飴(高糖化還元水飴)、
(エ)デキストロース当量が35超55以下の水飴を還元してなる、還元水飴(中糖化還元水飴)。
(2)本発明に係る包餡食品の空隙抑制用組成物の第2の態様(以下、「第2態様空隙抑制用組成物」という場合がある。)は、下記(ア)~(エ)から選択されるいずれか1以上の還元水飴を有効成分とし、前記有効成分がドウに配合して用いられることを特徴とする;
(ア)糖組成が、単糖が30~50質量%、二糖が20~55質量%および三糖以上が40質量%以下である、還元水飴(高糖化還元水飴)、
(イ)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満である、還元水飴(中糖化還元水飴)、
(ウ)デキストロース当量が55超100未満の水飴を還元してなる、還元水飴(高糖化還元水飴)、
(エ)デキストロース当量が35超55以下の水飴を還元してなる、還元水飴(中糖化還元水飴)。
(3)本発明に係る加熱用フィリング材の突沸抑制用組成物(以下、「突沸抑制用組成物」という場合がある。)は、下記(ア)~(エ)から選択されるいずれか1以上の還元水飴を有効成分とする;
(ア)糖組成が、単糖が30~50質量%、二糖が20~55質量%および三糖以上が40質量%以下である、還元水飴(高糖化還元水飴)、
(イ)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満である、還元水飴(中糖化還元水飴)、
(ウ)デキストロース当量が55超100未満の水飴を還元してなる、還元水飴(高糖化還元水飴)、
(エ)デキストロース当量が35超55以下の水飴を還元してなる、還元水飴(中糖化還元水飴)。
(4)本発明に係る加熱用フィリング材の製造方法は、加熱用フィリング材を組成する材料に、「第1態様空隙抑制用組成物」または「突沸抑制用組成物」を配合する工程を有する。
(5)本発明に係るドウの製造方法は、ドウを組成する材料に、第2態様空隙抑制用組成物を配合する工程を有する。
(6)本発明に係るフィリング含有ドウ加熱食品の製造方法は、「第1態様空隙抑制用組成物」または「突沸抑制用組成物」を配合した加熱用フィリング材を含有させたドウを、加熱する工程を有する。
(7)本発明に係る包餡食品の製造方法は、第2態様空隙抑制用組成物を配合したドウで加熱用フィリング材を包んで加熱する工程を有する。
本発明によれば、包餡食品のフィリングと加熱後のドウとの間に生じる隙間(空隙)を抑制することができる。また、加熱用フィリング材の突沸を抑制することができる。また、特定の還元水飴を材料として配合するという簡便な手法により、突沸が抑制され、加熱後の見た目に優れ、包餡食品に用いた場合には空隙を抑制できる、加熱用フィリング材を製造することができる。また、特定の還元水飴を材料として配合するという、簡便な手法により、包餡食品に用いた場合には空隙を抑制できるドウを製造することができる。また、特定の還元水飴を加熱用フィリング材を組成する材料に配合するという、簡便な手法により、見た目に優れた商品価値の高いフィリング含有ドウ加熱食品を製造することができる。また、特定の還元水飴をドウに配合するという簡便な手法により、見た目に優れた商品価値の包餡食品を製造することができる。また、還元水飴は砂糖よりも低く、砂糖に似た良質な甘味をもち、安定性の高い食品であるから、食味への悪影響や保存時の品質劣化の懸念を増大させることなく、幅広いフィリング含有ドウ加熱食品においてフィリング材の突沸を抑制することができ、空隙を抑制することができる。
半分にスライスしたあんパンの切断面を示す写真である。試料1~4はそれぞれ高糖化還元水飴を2.52~7.56質量%配合したパン生地で包餡し、焼成したあんパンである。 あんパンにおける最大空隙幅を示す棒グラフである。試料1~4はそれぞれ高糖化還元水飴を2.52~7.56質量%配合したパン生地で包餡し、焼成したあんパンである。 半分にスライスしたあんパンの切断面を示す写真である。試料1~4は、高糖化還元水飴をパン生地に3.77質量%、小豆あんに3.8~14.8質量%配合したパンである。 あんパンにおける最大空隙幅を示す棒グラフである。試料1~4は、高糖化還元水飴をパン生地に3.77質量%、小豆あんに3.8~14.8質量%配合したパンである。 パン生地に高糖化還元水飴を3.77質量%、小豆あんに中糖化還元水飴を5.8~8.1質量%配合したあんパンの切断面を示す写真である。 パン生地に高糖化還元水飴を3.77質量%、小豆あんに中糖化還元水飴を5.8~8.1質量%配合したあんパンにおける最大空隙幅を示す棒グラフである。
以下、本発明について詳細に説明する。
「フィリング含有ドウ加熱食品」とは、ドウを加熱してなる食品(ドウ加熱食品)のうち、フィリング材を含有するものをいう。フィリング材をドウに含有させる態様としては、例えば、ドウでフィリング材を包む、ドウにフィリング材を載せる、詰める、注入する、挟む、折り込むなどを例示することができるが、どのような態様で含有されるものであってもよい。
「包餡食品」とは、フィリング含有ドウ加熱食品のうち、ドウでフィリング材を包んだ態様のものをいう。包餡食としては、例えば、あんパンやクリームパン、ジャムパン、カレーパン、あん食パン、ピロシキなどのパン類、あんドーナツなどのドーナツ類、饅頭、甘味餡を包んだ饅頭、中華まんじゅう、肉まんやピザまんなどの中華まん、パイ饅頭、春巻きなどの点心類、ごま団子やみたらし団子などの団子類を例示することができる。
包餡食品以外のフィリング含有ドウ加熱食品としては、例えば、アップルパイやグラタンパイ、ミートパイなどのパイ類、具材を載せたデニッシュ類、シュウマイなどの点心類、タルトやキッシュなどを例示することができる。
「フィリング材」とは、ドウまたは加熱したドウに、包む、載せる、詰める、注入する、挟む、折り込むなど種々の態様で含有させる食材であって、ドウに混ぜ込んだりしてドウと一体となるものではなく、最終製品において、加熱したドウとは別個にそれ自体が認識される態様で用いられる食材をいう。
「加熱用フィリング材」とは、フィリング材のうち、ドウに含有させた後に加熱する態様で用いられるものをいう。加熱用フィリング材としては、例えば、種々の具材やソース、たれ類、クリーム類を例示することができる。従来、甘味の強いもの(ジャム、カスタードクリーム、チョコレートクリーム、フラワーペースト、豆類やイモ類、栗などを甘く煮て練った甘味餡類、ごまだれやみたらしだれなどのたれ類)の他、惣菜のようなもの(グラタン、カレー、シチュー、ポテトサラダ、ミートソース、ツナサラダ、卵サラダ、コーンサラダ、チーズ、サルサソース、ピザ風味ソース、肉類・魚介類・野菜類・果物類等の具材を含んだ調理済みフィリング類など)も多く用いられている。
突沸とは、上記のとおり、急激な水分蒸発をいう。突沸を抑制するとは、急激な水分蒸発を無くすること、あるいは、急激な水分蒸発が起こったとしてもその程度を小さくすることをいう。
フィリング材やドウの組成ないし種類にもよるが、突沸が起こった場合は、加熱前後でフィリング材の形状が変化したり、フィリング材と加熱後のドウとの間に隙間(空隙)が生じる(包餡食品の場合)ことが多い。よって、突沸が抑制されたか否かは、例えば、突沸抑制用組成物を配合したフィリング材Aと、突沸抑制用組成物を配合していないフィリング材Bとについて、同様にドウで包み、これを加熱した後、フィリング材の形状や空隙の大きさを比較することにより確認できる。それにより、フィリング材Aを包んだ方がフィリング材Bを包んだものよりもフィリング形状の変化や空隙が小さい、との比較結果が得られれば、突沸抑制用組成物により「突沸が抑制された」と判断することができる。
包餡食品の空隙(空洞ともいう。)とは、包餡食品におけるフィリング材と加熱後のドウとの間の隙間をいう。包餡食品の空隙を抑制するとは、当該空隙を無くすること、あるいは、空隙が生じたとしてもそのサイズを小さくすることをいう。
包餡食品の空隙が抑制されたか否かは、上述の「突沸が抑制されたか否か」と同様に確認することができる。すなわち、例えば、第1態様空隙抑制用組成物を配合したフィリング材Aと、当該組成物を配合していないフィリング材Bとについて、同様にドウに包み、これを加熱した後、空隙の大きさを比較することにより確認できる。それにより、フィリング材Aを包んだ方がフィリング材Bを包んだものよりも空隙が小さい、との比較結果が得られれば、第1態様空隙抑制用組成物により「包餡食品の空隙が抑制された」と判断することができる。
また、例えば、第2態様空隙抑制用組成物を配合したドウAと、当該組成物を配合していないドウBとについて、同様にフィリング材を包み、これを加熱した後、空隙の大きさを比較することにより確認できる。それにより、ドウAで包んだ方がドウBで包んだものよりも空隙が小さい、との比較結果が得られれば、第2態様空隙抑制用組成物により「包餡食品の空隙が抑制された」と判断することができる。
還元水飴は、水飴を還元して得られる糖アルコールである。ここで、水飴は、デンプンを酸や酵素などで加水分解(糖化)して得られる物質であり、単糖(ブドウ糖)および多糖(オリゴ糖やデキストリンなど)の混合物である。よって、還元水飴もまた、単糖の糖アルコールおよび多糖(二糖、三糖、四糖または五糖以上)の糖アルコールのうち、2種以上の糖アルコールを含む混合物である。還元水飴は、糖化の程度により高糖化還元水飴、中糖化還元水飴および低糖化還元水飴に分けられる場合がある。これらのうち、本発明では、高糖化還元水飴および/または中糖化還元水飴(高~中糖化還元水飴)が有効成分として用いられる。
高糖化還元水飴の糖組成として、具体的には、(ア)単糖を30~50質量%、二糖を20~55質量%および三糖以上を40質量%以下含有する糖組成、あるいは、(オ)単糖を37~50質量%、二糖を26~55質量%、三糖を1~21質量%、四糖を1~10質量%および五糖以上を1~8質量%含有する糖組成を例示することができる。
中糖化還元水飴の糖組成として、具体的には、(イ)単糖を30質量%未満および五糖以上を50質量%未満含有する糖組成、あるいは、(カ)単糖を2~10質量%、二糖を15~55質量%、三糖を15~65質量%、四糖を1~15質量%および五糖以上を1~38質量%含有する糖組成を例示することができる。
なお、本発明において、糖組成とは、糖の総質量に占める各糖の質量割合を百分率で示すものをいう。すなわち、糖の総質量を100とした場合の、各糖の質量百分率である。
糖組成は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて確認することができる。すなわち、還元水飴を試料としてHPLCに供してクロマトグラムを得る。当該クロマトグラムにおいて、全ピークの面積の総和が「糖の総質量」に、各ピークの面積が「各糖の質量」に相当する。よって、試料における各糖の質量百分率は、検出された全ピークの面積の総和に対する各ピークの面積の割合として算出することができる。HPLCの条件は、定法に従って適宜設定することができるが、下記条件を例示することができる。
《HPLCの条件》
カラム;MCI GEL CK04S(10mm ID x 200mm)
溶離液;高純水
流速;0.4mL/分
注入量;20μL
カラム温度;65℃
検出;示差屈折率検出器RI-10A(島津製作所)
還元水飴は、水飴を還元して製造することから、還元水飴の糖化の程度は、水飴の糖化の程度に準じる。すなわち、原料水飴の糖化の程度が高いほど還元水飴の糖化の程度が高く、原料水飴の糖化の程度が低いほど還元水飴の糖化の程度は低い。水飴の糖化の程度の指標は、一般に、デキストロース当量(Dextrose Equivalent値;DE)が用いられる。DEは、試料中の還元糖をブドウ糖として測定したときの、当該還元糖の全固形分に対する割合(百分率)である。DEの最大値は100で、固形分の全てがブドウ糖であることを意味し、DEが小さくなるほど少糖類や多糖類が多いことを意味する。
すなわち、高糖化還元水飴の原料水飴のDEとしては、(ウ)55超、60以上、65以上、80以下、85以下、90以下、95以下、100未満を例示することができる。
また、中糖化還元水飴の原料水飴のDEとしては、(エ)35超、37以上、48以下、50以下、55以下を例示することができる。
なお、水飴のDEは、下記の方法により測定することができる。
《DEの測定方法》
試料2.5gを正確に量り、水で溶かして200mLとする。この液10mLを量り、1/25mol/L ヨウ素溶液(注1)10mLと1/25mol/L 水酸化ナトリウム溶液(注2)15mLを加えて20分間暗所に放置する。次に、2mol/L塩酸(注3)を5mL加えて混和した後、1/25mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液(注4)で滴定する。滴定の終点近くで液が微黄色になったら、デンプン指示薬(注5)2滴を加えて滴定を継続し、液の色が消失した時点を滴定の終点とする。水を用いてブランク値を求め、次式1によりDEを求める。
Figure 0007495774000001
(注1)1/25mol/L ヨウ素溶液:ヨウ化カリウム20.4gとヨウ素10.2gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注2)1/25mol/L 水酸化ナトリウム溶液:水酸化ナトリウム3.2gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注3)2mol/L 塩酸:水750mLに塩酸150mLをかき混ぜながら徐々に加える。
(注4)1/25mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液:チオ硫酸ナトリウム20gを2Lのメスフラスコに入れ、少量の水で溶解後、標線まで水を加える。
(注5)デンプン指示薬:可溶性デンプン5gを水500mLに溶解し、これに塩化ナトリウム100gを溶解する。
本発明において、還元水飴は、市販されているものをそのまま用いてもよく、当業者に公知の方法に従って製造して用いてもよい。市販の高糖化還元水飴としては、例えば、「エスイー600」、「スイートPEM」および「エスイー500」(以上、物産フードサイエンス)などを、市販の中糖化還元水飴としては、例えば、「スイートOL」、「スイートG3」、「エスイー57」および「エスイー58」(以上、物産フードサイエンス)などを例示することができる。
還元水飴の公知の製造方法としては、水飴(原料糖)に水素を添加する還元反応を挙げることができる。水素添加による還元反応は、例えば、40~75質量%の原料糖水溶液を、還元触媒と併せて高圧反応器中に仕込み、反応器中の水素圧を4.9~19.6MPa、反応液温を70~180℃として、混合攪拌しながら、水素の吸収が認められなくなるまで反応を行なえばよい。その後、還元触媒を分離し、イオン交換樹脂処理、必要であれば活性炭処理等で脱色脱塩した後、所定の濃度まで濃縮すれば、高濃度の還元水飴を作ることができる。
本発明において、高~中糖化還元水飴は、加熱用フィリング材および/またはドウに配合して用いる。加熱用フィリング材は、その製品の種類や食材、所望の食味などに応じて、通常、砂糖や食塩等の各種調味料が用いられる。還元水飴はそれら調味料と同様に扱い、同様のタイミングで食材に添加して用いることができる。すなわち、本発明は、加熱用フィリング材を組成する材料に第1態様空隙抑制用組成物または突沸抑制用組成物を配合する工程を有する、加熱用フィリング材の製造方法も提供する。加熱用フィリング材は、高~中糖化還元水飴を一材料として添加するほかは、常法に従って製造することができる。
高~中糖化還元水飴の加熱用フィリング材における配合量は、フィリング材の種類、所望の味や食感、他の材料の種類・量などに応じて適宜設定することができる。例えば、高~中糖化還元水飴の配合量は、フィリング材の総量(100質量%)に占める質量百分率で、1%以上、2%以上、3%以上もしくは4%以上、または、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下もしくは20%以下を例示することができる。また、元来の配合で糖を添加する場合であれば、高~中糖化還元水飴の配合量は、添加する糖の総量(100質量%)に占める質量百分率で、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上もしくは9%以上、または、50%以下、45%以下、40%以下もしくは35%以下を例示することができる。
高~中糖化還元水飴を配合した加熱用フィリング材は、常法によりドウに含有させ、これを加熱してフィリング含有ドウ加熱食品を作ることができる。すなわち、本発明は、第1態様空隙抑制用組成物または突沸抑制用組成物を配合した加熱用フィリング材を含有させたドウを、加熱する工程を有する、フィリング含有ドウ加熱食品の製造方法も提供する。フィリング含有ドウ加熱食品は、高~中糖化還元水飴を配合した加熱用フィリング材をドウに含有させるほかは、常法に従って製造することができる。フィリング材をドウに含有させる態様としては、上述のとおり、たとえば、ドウでフィリング材を包む、ドウでフィリング材を挟む、ドウにフィリング材を載せる、ドウにフィリング材を詰める、ドウにフィリング材を注入する、ドウにフィリング材を折り込むなどを例示することができる。
本発明において、フィリング材を含有させた、ないしフィリング材を包んだドウの加熱方法は、当該食品の種類や所望の食味・食感などの製品態様に応じて、食材を食用可能とし、あるいは食味をよくするための任意の加熱手法を適宜選択することができる。例えば、加熱方法としては、焼く(焼成)、揚げる(油ちょう)、蒸す(蒸製)、茹でるなどを例示することができ、これらのいずれであってもよい。
また、高~中糖化還元水飴をドウに配合する場合は、ドウを組成する材料に混合して用いる。すなわち、本発明は、ドウを組成する材料に第2態様空隙抑制用組成物を配合する工程を有する、ドウの製造方法も提供する。ドウは、高~中糖化還元水飴を一材料として添加して混合するほかは、常法に従って製造することができる。
また、高~中糖化還元水飴を配合したドウは、常法により、これでフィリング材を包んで加熱して包餡食品を作ることができる。すなわち、本発明は、第2態様空隙抑制用組成物を配合したドウでフィリング材を包んで加熱する工程を有する、包餡食品の製造方法も提供する。
ドウを組成する材料としては、たとえば、水、澱粉を主体とする食材(多くは穀粉が用いられる)および必要に応じて副材料を例示することができ、ドウは、これら材料を混合ないし混捏して作られる。穀粉は、粉粒状の穀物およびそれに準ずる澱粉を主体とする粉粒状の食材をいう。具体的には、例えば、小麦粉、米粉、大麦粉、全粒粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉、ジャガイモ粉、テフ粉、ひえ粉、きな粉、大豆粉、ヒヨコ豆粉、エンドウ豆粉、緑豆粉、そば粉、アマランサス粉、片栗粉、くず粉、タピオカ粉、栗粉、どんぐり粉などを例示することができる。ドウに配合される副材料としては、例えば、微生物やベーキングパウダーなどのガス発生剤、油脂、甘味料や食塩などの調味料、乳製品、卵、グルテン、各種の食品添加物(生地改良剤など)、チョコレートやドライフルーツ、ナッツ類などを例示することができる。
高~中糖化還元水飴のドウにおける配合量は、ドウの種類、包餡食品の種類、所望の味や食感、副材料の有無・種類・量などに応じて適宜設定することができる。配合量を具体的に例示すれば、例えば、穀粉100重量部に対して高~中糖化還元水飴(固形分)が1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、2.5重量部以上、3重量部以上、3.5重量部以上、4重量部以上、4.5重量部以上もしくは5重量部以上、または、ドウの総量(100質量%)に占める質量百分率で、1%以上、1.2%以上、1.4%以上、1.6%以上、1.8%以上、2.0%以上、2.2%以上、2.4%以上もしくは2.5%以上を挙げることができる。
本発明に係る製造方法は、本発明の特徴を損なわない限り他の工程を含むものであってもよい。係る工程としては、例えば、材料の粉砕工程、浸漬工程、加熱工程、洗浄工程、混合工程、混捏工程、発酵工程、調味工程、成型工程、冷却工程、冷凍工程、解凍工程、包装工程などを例示することができる。
以下、本発明について、各実施例に基づいて説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
<試験方法>
本実施例は、特段の記載のない限り、下記の試験方法により行った。
(1)糖
グラニュー糖は「スプーン印グラニュ糖」(顆粒状、固形分100質量%、三井製糖(株))を用いた。その他の糖は、表1に示す市販品を用いた。
(2)小豆あんの製造
750重量部の小豆に2250重量部の水および1.9重量部の重曹を加え、一晩浸漬させた。続いて浸漬に用いた水を捨て、新たに2250重量部の水を加えて小豆が柔らかくなるまで煮て、煮豆(水煮小豆)を作製した。煮豆は、浸漬・加熱前の小豆の約2.2倍の重量になる。煮汁を捨てて新たに煮豆の0.9倍量(重量比)の水を加え、沸騰させた後、各実施例に示す配合のグラニュー糖の8割量(重量比)を加え、攪拌した。しばらく加熱攪拌した後、各実施例に示す配合の残りの糖を加えて攪拌した。その後、所定の糖度になるまで加熱しながら攪拌した。これを放冷した後、4℃にて一晩静置した。
(3)あんパンの製造
下記[1]~[7]に示す手順により、ストレート法であんパンを製造した。
[1]ミキシング:ショートニングを除くパン生地の材料をミキサー(愛工舎製作所)に入れ、低速で5分、中速で3分、続いて高速で4分混捏し、ショートニングを投入した後低速で2分、中速で3分、続いて高速で3分混捏することによりパン生地を作製した。パン生地の配合は各実施例に示す。
[2]一次発酵:パン生地を27℃、湿度75%で30分置くことにより発酵させた。
[3]分割:一次発酵後の生地を1玉50gに分割し、丸めた。
[4]ベンチタイム:丸めた生地を室温で25分置いて休ませた。
[5]成形・包餡:休ませた生地を麺棒で延ばし、小豆あん50gを包んで丸型に成型した。
[6]最終発酵:成形後の生地を35℃、湿度85%で50分程度置くことにより発酵させた。
[7]焼成:発酵後の生地を下火210℃、上火180℃で10分焼成した。焼成後のあんパンは、常温で30分放冷した。
<実施例1>糖アルコールの種類の検討
試験方法(2)に記載の方法により試料1~5の小豆あんを製造した。小豆あんの仕上がり糖度はBrix48(±1)とした。その配合を表2に示す。ここで、一般的に、小豆あんの仕上がり重量は、仕込み重量の70~90質量%であるから、試料1~5の小豆あんの仕上がり重量は、約1198~約1540gといえる。したがって、試料1~5の小豆あんに占める水飴、還元水飴またはトレハロースの割合(固形分)は、約5.8~8.1質量%といえる。
続いて、これらの小豆あんを用いて試験方法(3)に記載の方法によりあんパンを製造した。パン生地の配合は「強力粉100重量部、イーストフード(「オリエンタルCフード」、オリエンタル酵母工業)0.3重量部、イースト5重量部、グラニュー糖25重量部、食塩1.2重量部、脱脂粉乳2重量部、ショートニング5重量部および水62重量部」とした。工程[5]で試料1~5の小豆あんを包んだパンを、それぞれ試料1~5とした。
放冷後のあんパンを半分にスライスした。続いて、切断面の外観を以下の基準で分析型パネルにより目視で評価した。その結果を表3に示す。また、切断面における、小豆あん上端とパンクラム下端との間の最大距離(最大空隙幅)をノギスで測り、各試料毎にパン8個の平均値を求めた。
≪外観評価の基準≫
○○:小豆あんとクラムとの間の隙間(空隙)が明らかに抑制された。
○:空隙がやや抑制された。
×:空隙が目立つ(空隙が抑制されていない)。
表3に示すように、試料2および試料3は、試料1、試料4および試料5より空隙が小さいことが目視で確認された。また、試料2および試料3は、最大空隙幅の測定値も、試料1、試料4および試料5より小さい値であった。すなわち、高糖化還元水飴または中糖化還元水飴を配合した小豆あんを包んだパンは、水飴、低糖化還元水飴あるいはトレハロースを配合した小豆あんを包んだパンよりも、あん周囲の空隙が小さかった。この結果から、高糖化還元水飴および中糖化還元水飴は、加熱用フィリング材に配合することで、その突沸を抑制でき、包餡食品の空隙を抑制できることが明らかになった。
<実施例2>フィリング材における配合割合の検討
試験方法(2)に記載の方法により試料1~5の小豆あんを製造した。小豆あんの仕上がり糖度はBrix55(±1)とした。その配合を表4に示す。試料1~5は、添加する糖の全量に占める高糖化還元水飴の割合を0~30質量%とした小豆あんである。ここで、上述のとおり、一般的に、小豆あんの仕上がり重量は、仕込み重量の70~90質量%であるから、試料1~5の小豆あんの仕上がり重量は、約3350~約4307gといえる。したがって、試料1~5の小豆あんに占める高糖化還元水飴の割合(固形分)は、0~約14.8質量%といえる。
続いて、これらの小豆あんを用いて試験方法(3)に記載の方法によりあんパンを製造した。パン生地の配合は実施例1に記載のとおりとした。工程[5]で試料1~5の小豆あんを包んだパンを、それぞれ試料1~5とした。
放冷後のあんパンを半分にスライスした。続いて、切断面の外観を実施例1に示す基準で分析型パネルにより目視で評価した。その結果を表5に示す。また、切断面における最大空隙幅を測り、各試料毎にパン8個の平均値を求めた。
表5に示すように、試料2、試料3、試料4および試料5はいずれも、試料1より空隙が小さいことが目視で確認された。また、試料2、試料3、試料4および試料5はいずれも、最大空隙幅の測定値が試料1より小さかった。すなわち、高糖化還元水飴を約3.8~14.8質量%配合した小豆あん(添加する糖の全量に占める高糖化還元水飴の割合を10~30質量%とした小豆あん)を包んだパンは、いずれも、あん周囲の空隙が小さかった。この結果から、高糖化還元水飴および中糖化還元水飴はその配合量にかかわらず、加熱用フィリング材に配合することで、その突沸を抑制でき、包餡食品の空隙を抑制できることが明らかになった。
<実施例3>高糖化還元水飴のドウへの配合効果および配合割合の検討
試験方法(3)に記載の方法により試料1~4のあんパンを製造した。ただし、小豆あんは市販の小豆粒あん(還元水飴が配合されていないもの)を用いた。また、パン1個あたりの包餡量は40gとし、最終発酵の温度は38℃、時間は約60分とした。パン生地の配合を表6に示す。試料1~4は、パン生地に占める還元水飴の割合を0~7.56質量%(パン生地に添加する糖の全量に占める高糖化還元水飴の割合を0~60質量%)としたあんパンである。
放冷後のあんパンを半分にスライスした。切断面の写真を図1に示す。また、切断面における最大空隙幅を測り、各試料毎にパン16個の平均値を求めた。その結果を図2に示す。
図1に示すように、試料2、試料3および試料4はいずれも、試料1より空隙が小さいことが目視で確認された。また、図2に示すように、試料2、試料3および試料4はいずれも、最大空隙幅の測定値が、試料1より顕著に小さい値であった。すなわち、高糖化還元水飴を2.52~7.56質量%配合したパン生地(添加する糖の全量に占める高糖化還元水飴の割合を20~60質量%としたパン生地)で小豆あんを包んで焼成したあんパンは、いずれも、あん周囲の空隙が顕著に小さかった。この結果から、高糖化還元水飴は、ドウに配合することで、包餡食品の空隙を抑制できることが明らかになった。また、高糖化還元水飴はドウにおける配合量にかかわらず、包餡食品の空隙を抑制できることが明らかになった。
<実施例4>中糖化還元水飴のドウへの配合効果および配合割合の検討
実施例3に記載の方法により試料1~4のあんパンを製造した。ただし、高糖化還元水飴に代えて中糖化還元水飴を用いた。すなわち、試料1、試料2、試料3および試料4は、パン生地に占める中糖化還元水飴の割合をそれぞれ0%、2.52質量%、5.04質量%および7.56質量%としたあんパンである。放冷後のあんパンを半分にスライスし、切断面における最大空隙幅を測り、各試料毎にパン16個の平均値を求めた。
その結果、試料2、試料3および試料4はいずれも、試料1より空隙が小さいことが目視で確認された。また、試料2、試料3および試料4はいずれも、最大空隙幅の測定値が試料1より顕著に小さい値であった。すなわち、中糖化還元水飴を2.52~7.56質量%配合したパン生地で小豆あんを包んで焼成したあんパンは、いずれも、あん周囲の空隙が顕著に小さかった。この結果から、中糖化還元水飴は、ドウに配合することで、包餡食品の空隙を抑制できることが明らかになった。また、中糖化還元水飴はドウにおける配合量にかかわらず、包餡食品の空隙を抑制できることが明らかになった。
<実施例5>フィリング材およびドウへの配合効果の検討1
試験方法(2)に記載の方法により試料1~4の小豆あんを製造した。小豆あんの仕上がり糖度はBrix55(±1)とした。その配合を表7に示す。試料1~4は、高糖化還元水飴を約3.8~14.8質量%(固形分)配合した小豆あんである。
続いて、試料1~4の小豆あんを用いて試験方法(3)に記載の方法によりあんパンを製造した。パン生地の配合を表8に示す。当該パン生地は、高糖化還元水飴を3.77質量%(固形分)配合した生地である。工程[5]で試料1~4の小豆あんを包んだパンを、それぞれ試料1~4とした。すなわち、試料1~4は、パン生地に高糖化還元水飴を3.77質量%配合し、小豆あんに高糖化還元水飴を約3.8~14.8質量%配合した、あんパンである。
放冷後のあんパンを半分にスライスした。切断面の写真を図3に示す。続いて、切断面における最大空隙幅を測り、各試料毎にパン8個の平均値を求めた。その結果を図4に示す。
図3に示すように、試料1~4はいずれも空隙が小さいことが目視で確認された。また、図4に示すように、試料1~4はいずれも最大空隙幅の測定値が顕著に小さかった。すなわち、パン生地に高糖化還元水飴を3.77質量%配合し、小豆あんに高糖化還元水飴を約3.8~14.8質量%配合したあんパンは、いずれも、あん周囲の空隙が顕著に小さかった。この結果から、高糖化還元水飴を加熱用フィリング材とドウとの両方に配合することで、高い空隙抑制効果が得られることが明らかになった。
<実施例6>フィリング材およびドウへの配合効果の検討2
試験方法(2)に記載の方法により小豆あんを製造した。小豆あんの仕上がり糖度はBrix48(±1)とした。その配合を表9に示す。当該小豆あんは、中糖化還元水飴を約5.8~8.1質量%(固形分)配合した小豆あんである。
続いて、当該小豆あんを用いて試験方法(3)に記載の方法によりあんパンを製造した。パン生地の配合は表8のとおりとした。すなわち、製造したあんパンは、パン生地に高糖化還元水飴を3.77質量%配合し、小豆あんに中糖化還元水飴を約5.8~8.1質量%配合したものである。放冷後のあんパンを半分にスライスした。切断面の写真を図5に示す。続いて、切断面における最大空隙幅を測り、パン8個の平均値を求めた。その結果を図6に示す。
図5に示すように、製造したあんパンは、空隙が小さいことが目視で確認された。また、図6に示すように、最大空隙幅の測定値も顕著に小さかった。すなわち、パン生地に高糖化還元水飴を3.77質量%配合し、小豆あんに中糖化還元水飴を約5.8~8.1質量%配合したあんパンは、あん周囲の空隙が顕著に小さかった。この結果から、高~中糖化還元水飴を加熱用フィリング材とドウとの両方に配合することで、高い空隙抑制効果が得られることが明らかになった。

Claims (6)

  1. 下記(ア)~(エ)から選択されるいずれか1以上の還元水飴を有効成分とし、前記有効成分が加熱用フィリング材に配合して用いられることを特徴とする、包餡食品の空隙抑制用組成物;
    (ア)糖組成が、単糖が30~50質量%、二糖が20~55質量%および三糖以上が40質量%以下である、還元水飴、
    (イ)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満である、還元水飴、
    (ウ)デキストロース当量が55超100未満の水飴を還元してなる、還元水飴、
    (エ)デキストロース当量が35超55以下の水飴を還元してなる、還元水飴。
  2. 下記(ア)~(エ)から選択されるいずれか1以上の還元水飴を有効成分とし、前記有効成分がドウに配合して用いられることを特徴とする、包餡食品の空隙抑制用組成物;
    (ア)糖組成が、単糖が30~50質量%、二糖が20~55質量%および三糖以上が40質量%以下である、還元水飴、
    (イ)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満である、還元水飴、
    (ウ)デキストロース当量が55超100未満の水飴を還元してなる、還元水飴、
    (エ)デキストロース当量が35超55以下の水飴を還元してなる、還元水飴。
  3. 下記(ア)~(エ)から選択されるいずれか1以上の還元水飴を有効成分とする、加熱用フィリング材の突沸抑制用組成物;
    (ア)糖組成が、単糖が30~50質量%、二糖が20~55質量%および三糖以上が40質量%以下である、還元水飴、
    (イ)糖組成が、単糖が30質量%未満かつ五糖以上が50質量%未満である、還元水飴、
    (ウ)デキストロース当量が55超100未満の水飴を還元してなる、還元水飴、
    (エ)デキストロース当量が35超55以下の水飴を還元してなる、還元水飴。
  4. 加熱用フィリング材を組成する材料に、請求項1または請求項3に記載の組成物を配合する工程を有する、包餡食品の空隙を抑制する方法。
  5. ドウを組成する材料に、請求項2に記載の組成物を配合する工程を有する、包餡食品の空隙を抑制する方法。
  6. 加熱用フィリング材を組成する材料に、請求項1または請求項3に記載の組成物を配合する工程を有する、加熱用フィリング材の突沸を抑制する方法。
JP2023177027A 2022-10-13 2023-10-12 包餡食品の空隙抑制用組成物、加熱用フィリング材の突沸抑制用組成物、包餡食品の空隙を抑制する方法および加熱用フィリング材の突沸を抑制する方法 Active JP7495774B2 (ja)

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