JP7495615B2 - フォーミング鎮静材 - Google Patents

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Description

本発明は、安価に製造可能なフォーミング鎮静材に関する。
溶鉄の精錬処理中又は精錬処理後に、溶鉄と製鋼スラグ(以下、スラグ)との界面で溶鉄中のCとスラグ中のFeO(酸化鉄)とが反応して発生するCO気泡や、スラグ自身の内部でスラグ中のFeOとスラグに含まれる粒鉄中のCとが反応して発生するCO気泡により泡立つ現象(以下、フォーミング)が発生することがある。このスラグのフォーミングが激しいと、1300~1650℃のスラグが精錬設備や搬送容器から溢れ出す場合があり、精錬設備・搬送容器が損傷すると復旧に多大な時間と労力が必要となる。スラグ中のFeO濃度が高いと、CO気泡が多量に発生するので、FeO濃度の高いスラグは、強いフォーミング性(急速に膨張して溢れ出易い特性)を有することになる。
スラグのフォーミングを鎮静するためには、CO気泡が滞留する層(以下、泡沫層)を破壊してスラグを収縮させることが必要である。そこで、スラグの内部でガス化する塊状物(鎮静材)をスラグに投入し、該塊状物が熱分解でガス化する際の体積膨張エネルギーを利用して泡沫層を破壊する方法が一般に知られている。
ここで、溶鉄の精錬プロセスの一種として、転炉で脱燐処理を行った後に、スラグの一部を炉外の鉱滓鍋に排出(中間排出)し、引続き同一の転炉において脱炭処理を行う多機能転炉法が一般的に知られている。この多機能転炉法において、脱燐吹錬中にスラグのフォーミング激しくなって転炉の炉口からスラグが溢れそうになると、脱燐吹錬を中断せざるを得ず、脱燐反応の進行が不十分となってしまう。そのため、次工程の脱炭吹錬で脱燐速度を上昇させるために、転炉内に余分にCaOを添加する必要があり、精錬コストの増加と、スラグ発生量の増加を招くことになる。さらに、脱炭吹錬においても、スラグのフォーミングが激しく進行してしまうと、出鋼の際に転炉を傾斜させたときに転炉の炉口からスラグが流出することが懸念される。以上の理由から、少なくとも脱燐処理時及び脱炭処理時において、転炉内に鎮静材を投入する必要がある。
フォーミングを鎮静する鎮静材としては、製紙廃材の成形品など様々な鎮静材が提案されている。一方で、製鋼工程でのコストを削減するために、製鋼鉄所内で発生する副産物を鎮静材の原料として利用することも提案されている。
特許文献1には、最大粒度が0.5mm以上かつ粒度0.15mm以下を5~70質量%含む耐火物100質量部と、水5~50質量部とを含み、これを熱消失性の容器にて包持してなる、耐火物廃材を使用した転炉スラグフォーミング鎮静材が開示されている。また、特許文献2には、遊離CaOが2.7%以下、吸水率が4.0質量%以下で、窯行用原料を鎮静材原料として使用する技術が開示されている。また、特許文献3には、耐火物のブロックを破砕し、それを直接フォーミング鎮静材として使用する技術が開示されている。
特許第4669437号公報 特許第4351490号公報 特開2004-2915号公報
しかしながら、特許文献1に記載の鎮静材を製造する場合に、耐火物粉廃材を単独で分離して粒径を調整し、さらに水とともに容器内に包持させる必要があり、製造コストが高額となる。また、特許文献2に記載の吸水率が4.0質量%以下の鎮静材原料では、フォーミングスラグを十分に鎮静させることができなかった。また、特許文献3に記載の鎮静材の場合も、ほとんどガスが発生せず、フォーミングスラグを十分に鎮静することができなかった。
本発明は前述の問題点を鑑み、製鉄プロセスにて発生する副産物を含有し、かつスラグのフォーミングを十分に鎮静させることが可能なフォーミング鎮静材を提供することを目的とする。
本発明者らは、製鋼コスト削減の観点から、製鉄プロセスにて発生する副産物を利用してスラグのフォーミング鎮静材に活用する方法を鋭意検討した。そこで、まず、本発明者らは、転炉の副原料等に利用できない使用後のスラグ混じりの耐火物の粉に着目した。これらの一部は、路盤材等に活用できるものの、その需要量は発生量に対して少なく、また、有効なリサイクル手段がないため、残りの大部分が多額の費用をかけて埋め立て処分されている。したがって、この耐火物の粉をフォーミング鎮静材として活用できれば、原料コストおよび処分コストを低く抑えることができる。
本発明者らは、そのスラグ混じりの耐火物紛を鎮静材として活用する方法を鋭意検討した。その結果、この耐火物紛を単独、もしくは、耐火物粉に水と結合材を混合した物質を鎮静材として利用した場合、従来の製紙スラッジ系鎮静材と同等、もしくはそれ以上の鎮静効率が得られ、成形した場合は、転炉炉上の副原料投入ホッパーから、効率的、かつ安全に炉内に添加でき、工業的規模で安定的に使用できることを確認した。
以下に、発明に至った経緯を詳細に記す。
本発明者らは、耐火物を単独で使用した場合のフォーミングの鎮静効果を調査するため、その粒径が50~100mm程度の塊状の使用後耐火物を単独でスコップ型の投入治具の上にのせて、転炉内のフォーミングスラグにその炉口から添加する試験を行った。その結果、この耐火物は、従来の製紙廃材成形品の鎮静材と比べて鎮静効果が低く、実用的ではないことが分かった。ここで、製紙廃材成形品とは、例えば、製紙廃材:30~50質量%、水分:10質量%、製鋼スラグ等を混合して、直径30~50mm、高さ30~50mmの円柱状に塊状化した成形物である。製紙廃材成形品はセルロースを主成分とし、スラグの熱で分解してガス化し、ガス化によって体積膨張エネルギーで泡沫層が破壊され、フォーミングが鎮静する。
次に、使用後耐火物を破砕した際に発生するスラグ混じりの耐火物の粉だけ、もしくはその粉を成形して鎮静材として使用した場合のスラグ鎮静効果を調査した。ここでスラグ混じりの耐火物の粉とは、最大粒径が5mm以下で、その50質量%以上が2mm以下の粒径の粉状の物質である。その結果、製紙廃材成形品と同等のフォーミング鎮静効果が得られ、先の塊状の耐火物と比較して、鎮静効果が大きく向上した。
この原因を調査するため、本発明者らはまず、熱分分析装置を用いて、その鎮静材が常温から1400℃の間で水分量を測定した。その結果、その耐火物の粉の中に水分が含まれており、平均で6質量%程度含まれていることが分かった。また、耐火物よりもむしろ、スラグ中に吸水されており、耐火物単独ではなく、スラグ混じりの耐火物粉を用いることによって水分が吸着しているものだと本発明者らは特定した。
スラグ混じりの耐火物の粉がフォーミングしたスラグ中に添加されると、そのスラグ中で吸着していた水分が水蒸気となってフォーミングスラグの泡沫層を破壊し、スラグを鎮静させる効果があると考えられる。ただし、この耐火物の粉のガス発生量は、製紙廃材成型品に対して非常に少ないものであり、ガス発生体積比で、製紙廃材成型品のおおよそ1/6と小さな値であることも分かった。
そこで、本発明者らは種々の要因を調査し、スラグ混じりの耐火物の粉の見かけ密度が製紙廃材成型品よりも大きい点に着目した。つまりこの耐火物の粉がスラグに添加されると、製紙廃材成型品よりも深部まで沈降し、より深部でガス発生する。したがって、製紙廃材成型品よりガス発生量が少なくても効率的に泡沫層を破壊して、フォーミングしたスラグを鎮静させることができることが分かった。
ここで、見掛け密度とは、その内部に含まれる気孔の体積も含めたその物質の密度であり、本発明において、嵩密度とほとんど差がないことから、嵩密度としてもよい。見掛け密度もしくは嵩密度は、例えば、JIS Z8807:2012に記載の方法で測定することができる。また、比重で本発明の範囲を規定する場合、その見掛け密度、もしくは、嵩密度の値を、水等の基準とする標準物質の密度で割ることで、その比重を算出することが可能であり、簡易的には、その見掛け密度、もしくは嵩密度(何れも単位は、kg/m3)を1000で割り、算出しても良い。
本発明は以下のとおりである。
(1)
耐火物、スラグ、4質量%超の水を含有し、見かけ密度が1250kg/m3以上であり、スラグの質量に対して、耐火物の質量が0.5倍以上、4倍以下であることを特徴とするフォーミング鎮静材。
(2)
粒径が2mm以下の割合が50質量%以上のスラグ混じりの耐火物の粉であることを特徴とする上記(1)に記載のフォーミング鎮静材。
(3)
粒径が5mm以上の割合が50質量%以上の成形体であることを特徴とする上記(1)に記載のフォーミング鎮静材。
(4)
さらに結合材としてセメントを含むことを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載のフォーミング鎮静材。
(5)
見掛け密度が1500kg/m3以上であることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかに記載のフォーミング鎮静材。
(6)
耐火物、スラグ、4質量%超の水を含有し、見かけ密度が1250kg/m 3 以上であり、さらに前記含有する水を結晶水として固定化させるための結合材としてセメントを含むことを特徴とするフォーミング鎮静材。
本発明によれば、製鉄プロセスにて発生する副産物を含有し、かつスラグのフォーミングを十分に鎮静させることが可能なフォーミング鎮静材を提供することができる。
以下、本発明の実施形態に係るスラグのフォーミング鎮静方法について詳細に説明する。以下、本実施形態として転炉操業を例に説明するが、転炉だけではく、鉱滓鍋などの精錬容器での操業においても適応できる。また、スラグの温度に限定されない。
鎮静材の精錬炉内への添加は、例えば、その精錬炉に近傍に敷設されたホッパーを介して行われる。このホッパーは、鎮静材を貯蓄したバンカーにつながっており、作業者によって設定された、任意の量の鎮静材を添加することが可能である。鎮静材を添加するタイミングとしては、精錬炉内でフォーミングしたスラグがその精錬炉の高さ方向の4/5程度の高さに到達した場合に、後述する材料の鎮静材を添加することが好ましい。このスラグ高さの計測方法としては、例えば、ランスの振動情報、μ波を用いて計測する方法、炉内の音響レベルから予測する方法などがある。
なお、そのスラグ高さが精錬炉の高さ方向の4/5の高さより低い条件で鎮静材を添加してもよいが、スラグが十分にフォーミングしておらず、鎮静材の鎮静効果が低下して必要な鎮静材量が多くなる場合がある。一方で、そのスラグ高さが精錬炉の高さ方向の4/5以上の高さに到達すると、その後フォーミングによって炉口からスラグが流出する場合がある。フォーミングによって炉口からスラグが流出する前に鎮静材を添加することが好ましいが、フォーミングによってスラグが精錬炉の炉口から流出した後に前述の鎮静材を添加した場合においても、その効果は発現する。
次に、本発明の実施形態に係る鎮静材について詳細に説明する。本実施形態に係る鎮静材は、耐火物、スラグ、4質量%超の水を含み、見掛け密度が1250kg/m3以上であることを特徴としている。
本実施形態に係る鎮静材に含まれる耐火物は、その種類や形状に限定されない。例えば、MgO系、Al23系、Al23-SiO2系等、製銑、製鋼プロセス、圧延プロセス等、種々のプロセスで発生する耐火物を使用することが可能である。これは、耐火物の重量はほとんど差がなく、見掛け密度に及ぼす影響が、ほとんどないためである。また、その耐火物は、例えば、劣化や損耗等が原因で解体した耐火物を回収し、そこから破砕・磁選を行うことで容易に得ることができる。
また、本実施形態に係る鎮静材に含まれるスラグの種類も特に限定されないが、例えば、製銑工程または製鋼工程で発生するスラグである。スラグの組成としては、例えば、CaO=20~50質量%、SiO2=20~50質量%、T.Fe=10~30質量%、MgO=5~30質量%であり、残部は、MnO、P25、Al23、その他の各プロセスにおいて発生する酸化物等からなる。また、CaO濃度、およびSiO2濃度が高いスラグを鎮静材に含有していることが好ましい。これは、CaOが吸水して、水酸化物に変化すること、さらに、CaO、SiO2が水和物を形成することから、水分の含有量を高めることができる。
また、本実施形態に係る鎮静材において、水を4質量%超含むようにする。含有する水が4質量%以下では、フォーミングしたスラグに鎮静材を添加したときにガス(水蒸気)発生量が不足し、スラグの泡沫層を破壊してスラグを鎮静させる効果が不足してしまう。好ましくは、水を15質量%超含むようにする。なお、水の含有量の上限について特に限定しないが、水分含有量が25質量%を超えると、スラグ混じりの耐火物の粉、および結合剤で、水分を十分に吸収できず、鎮静材が固液混合状態となり、操業上の取り扱いが難しくなる場合があるため、25質量%以下とすることが好ましい。なお、水分含有量とは、鎮静材中に含まれる結晶水成分も考慮した水分量である。その含有量は、TG-DTA等、一般的な熱分析装置を用いて計測することが可能であるが、添加した水分と、添加前の原料中の水分の代表値を用いて、その配合比から算出してもよい。
また、鎮静材の見掛け密度は、1250kg/m3以上とする。見掛け密度が1250kg/m3未満では、従来の製紙廃材成形品より密度が小さくなり、スラグ中への沈み込みが不十分となる。好ましくは、見掛け密度が1500kg/m3以上である。なお、見掛けに密度の値は、同様にJIS Z8807:2012に記載の方法で測定してもよく、精錬炉内の形状と炉内スラグ重量との値を用いて計算した値を用いてもよい。
本実施形態でフォーミングしたスラグに添加する鎮静材は、必ずしも成形する必要はないが、成形せずに粉状の鎮静材を添加する場合は、作業者の安全や使用する設備や操業への影響を十分考慮した上で鎮静材を添加する必要がある。
例えば、鎮静材を成形せずに粉体のまま添加する場合、実プロセスでは、転炉炉上のホッパーの中に相当量の鎮静材を入れ置きし、その一部を必要量切り出してから、転炉内のフォーミングスラグに添加する。鎮静材には4質量%以上の水が含まれていることから、鎮静材が粉体のままだとホッパー内で固着する可能性がある。また、作業者が袋詰した鎮静材の粉を手投げにより直接炉内に添加しようとすると、水蒸気爆発が発生した場合の被災等、安全上の問題がある。したがって、作業者とフォーミングスラグとの間である程度の距離を設け、フォーミングによるスラグの飛散を安全に回避できるようにする必要がある。例えば、転炉のトラニオン部付近から、鉱滓鍋へ鎮静材を添加する場合には、粉体のまま本実施形態に係る鎮静材を添加することができる。
本発明の鎮静材を成形せずに粉体のまま使用する場合、鉱滓鍋中のフォーミングスラグを対象に使用することが好ましい。これは、粉状の鎮静材を、転炉のフォーミングスラグに添加すると、転炉内でのスラグメタル反応の進行伴って、炉口から噴出するガスや、鎮静材の一部が炉外に飛ばされてフォーミングしたスラグに到達しなかったり、鎮静材の一部が炉内の炉壁に付着したりする場合がある。また、転炉炉上の集塵設備によって、鎮静材の一部がフォーミングスラグに到達せずに、吸引される場合があるためである。
また、鎮静材を成形せずに粉状のまま使用する場合、スラグ混じりの耐火物の粉の粒径が2mm以下の割合が50質量%以上とした場合に、スラグ鎮静効果が高かった。2mm以下の割合が50質量%未満の場合、スラグ混じりの耐火物の粉中に含まれる水分量が比較的少なかったことから、粒が大きくなるとスラグ混じりの耐火物の粉中に吸収できる能力が低下し、フォーミングスラグ中で発生するガス発生量が少なくなるためと考えられる。
一方、本発明におけるスラグ混じりの耐火物の粉を成形して使用する場合、転炉内のフォーミングスラグを対象に使用することが好ましい。これは、成形することで、前述の鎮静材の飛散等を防止し、フォーミングスラグの表面に鎮静材を到達させることができるためである。
また、その成形体においては、粒径が5mm以上の割合が50質量%以上とすることが好ましい。粒径が5mm以上の割合を50質量%とすることにより、鎮静材の飛散を抑制するとともに、スラグのより深部まで到達できる割合が上昇し、より高い鎮静効果が得られる。より好ましくは、粒径が5mm以上の割合を60質量%以上とする。
また、粒径が大きすぎると、フォーミングスラグ中で、その成形体が反応するために時間を要し、フォーミングスラグを効率的に鎮静できないため、粒径が100mm以下の割合を50質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは、60質量%以上とする。
ここで、上述した粒径、およびその分布は、例えば、JIS Z 8801等の篩を用いて測定することが出来る。
なお、成形体とする場合には、前述の粒径が2mm以下の割合が50質量%以上であるスラグ混じりの耐火物の粉を用いて、粒径が5mm以上の割合が50質量%以上である成形体にすることがより好ましい。本発明者らは、成形に用いるスラグ混じりの耐火物の粉の粒径は、2mm以下の割合が50質量%以上とすることで、スラグ鎮静効果が高くなることを確認した。2mm以下の割合が50質量%未満の場合、スラグ混じりの耐火物の粉中に含まれる水分量が比較的少なかったことから、成形して粒が大きくなるとスラグ混じりの耐火物の粉中に吸収できる能力が低下し、フォーミングスラグ中で発生するガス発生量が少なくなるためと考えられる。
前述したように、本実施形態に係る鎮静材には、耐火物、スラグ、および4質量%超の水が含まれているものとするが、それ以外のものが含まれていてもよい。特に水に関しては、鎮静材においてスラグのみならず、他の水和性の結合材と結合し、水分を結晶水として鎮静材中に固定化すると、より優れたフォーミングの鎮静効果が得られる。すなわち、ガス発生体積を多くし、さらに結合材によって見かけ密度をより増大させることで、フォーミングしているスラグのより深部まで鎮静材を沈降させ、さらにそのガス発生量を増大させることが可能となる。また、鎮静材に含まれる水分を結晶水化させれば、ホッパー内で鎮静材同士が固着することを抑制できる。
水を結晶水として固定化させるための結合材に種類については特に限定しないが、例えばセメントが好ましい。セメントは、鎮静材に含まれる水分を結晶水としてフォーミングスラグ中に固定させる効果を有する。鎮静材にセメントを含むようにすれば、ホッパー内での鎮静材同士の固着を防ぐとともに、鎮静材中に多くの水分を含水させることも可能である。また、セメントを含有させることによって、比較的短時間で、安価に鎮静材を目的の形状に成形することが可能である。
さらに、鎮静材において、耐火物とスラグとの割合として、スラグの質量に対して、耐火物の質量が0.5倍以上、4倍以下であることが好ましい。スラグは水を多く含む効果を有し、耐火物は見掛け密度を大きくする効果を有しており、それぞれの効果が適切に作用するからである。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(第1の実施例)
300t規模の転炉に250tの溶銑を装入し、フラックス等を添加して脱燐処理を行った後に、転炉を傾動して、転炉内のフォーミングスラグを10t程度、炉外の鉱滓鍋に排滓した。このときのスラグ温度は1300~1450℃であり、スラグ組成は、CaO=30~40質量%、SiO2=20~35質量%、T.Fe=10~20質量%、MgO=5~10質量%、MnO=5~10質量%、P25=2~5質量%、Al23=0~5質量%であった。
その際、表1に示す条件で鎮静材を、鉱滓鍋内のスラグに投入し、転炉からの排滓が終了するまでの排滓時間を調査した。フォーミング鎮静が不十分な場合には、スラグの流出を防止するために転炉からの排滓を一時中断するため、その分、排滓時間が長くなる。つまり、排滓時間が短いほど、鉱滓鍋内のフォーミングの鎮静効果が大きいことを示す。また、本実施例では、作業者が袋詰めした鎮静材をフォーミングしたスラグに向かって直接手投げして添加する場合と、作業者が、鎮静材を袋に入れずにシュートから重力落下によって、フォーミングしたスラグ中に鎮静材を添加する場合との2つのパターンで実験を行った。また、鎮静材の投入量は、いずれも200kgとし、作業者がスラグのフォーミング状況を確認しつつ、鉱滓鍋からフォーミングしたスラグが流出する可能性があると判断したタイミングで鎮静材を投入した。
なお、試験No.1~No.6、No.9、No.10で用いたそれぞれの鎮静材A~C、I、Jは、それぞれタンディッシュ、高炉樋、転炉炉体、KR(Kanbara Reactor)のインペラー、RH型真空脱ガス装置等の装置から発生した耐火物の粉と、スラグ粉の混合物である。また、鎮静材Cについては、この混合物にセメントを加えて成形したものであり、それ以外はいずれも粉体である。なお、スラグ粉の組成は、いずれも上記のスラグとほぼ同様の組成であった。また、試験No.7及びNo.8の鎮静材Hは、製紙廃材成形品であり、製紙廃材:30~50質量%、水分:10質量%、製鋼スラグ等を混合して、直径30~50mm、高さ30~50mmの円柱状に塊状化した成形物である。
表1に示すように、発明例である試験No.1及びNo.2は、それぞれ参考例である試験No.7及びNo.8とほぼ同等のフォーミング鎮静効果が得られた。また、試験No.3及びNo.4は、それぞれ試験No.1及びNo.2よりも水分含有量が多かったため、ガス発生量がその分多くなり排滓時間がさらに短く、それぞれの条件においてフォーミング鎮静効果がより高かった。また、試験No.5及びNo.6は、セメントを用いて成形しており、排滓時間がさらに短く、それぞれの条件において、フォーミング鎮静効果がより高かった。
一方、比較例である試験No.9及びNo.10は、水分含有量が4.0質量%以下で、見掛け密度が1250kg/m3未満であったことから、発明例、及び参考例と比べて排滓時間が長く、フォーミングの鎮静効果が低かった。なお、本実施例での実験結果では、鎮静材を手投げした場合より、シュートから鎮静材を添加した場合の方が比較的排滓時間は短かった。これは、シュートから鎮静材を添加することにより、フォーミングスラグ中の一部分に安定的に鎮静材を供給でき、効率的にフォーミングスラグ内部まで鎮静材を侵入させることができたためと考えられる。
(第2の実施例)
300t規模の転炉に250tの溶銑を装入し、脱燐処理を行った後に中間排滓を行い、その後、上吹きランスから酸素を吹き付けて脱炭吹錬を行った。そして、脱炭吹錬中の溶鉄温度を測温プローブで測定し、転炉内に表2に示す鎮静材をシュートから200kg添加する実験を行った。鎮静材を添加する時のスラグの組成は、CaO:30~60質量%、SiO2:10~35質量%、T.Fe:10~30質量%、MgO:5~10質量%、P25:2~5質量%、Al23:0~5質量%であった。
また、試験No.11~No.18で用いたそれぞれの鎮静材D~G、K~Mは、タンディッシュ、高炉樋、転炉炉体、KR、RH型真空脱ガス装置等の装置から発生した耐火物の粉と、スラグ粉との混合物で、さらにセメントと水を添加し、その配合率を変えた成形体である。その粒径は、何れも5mm以上が50質量%以上であった。なお、スラグ粉の組成は、いずれも上記のスラグとほぼ同様の組成であった。また、表2中の耐火物とスラグの割合は、耐火物中にはCaOが含まれないことから、付着スラグの代表組成を用いて、CaOのマスバランス計算から算出した。試験No.19の鎮静材Hは、製紙廃材成形品であり、第1の実施例で用いたものと同じである。
鎮静材を添加した後すぐに、転炉を傾動して出鋼を行うために、作業者が炉口付近からのスラグ流出可否を確認しながら、転炉の傾動操作を行った。その際、スラグ抽出角度を調査した。このスラグ流出角度とは、スラグの流出が開始した際の転炉の傾動角度を示しており、この傾動角度は、吹錬終了時点の転炉の炉口が鉛直方向にある状態を0度とし、中間排滓の際の炉傾動に伴って傾動角度が大きくなる。つまり、スラグ流出角度が大きいほど、炉内のスラグ高さが小さく、スラグ鎮静効果が大きいことを示す。
表2に示すように、発明例である試験No.11~No.18は、参考例である試験No.9よりもスラグ流出角度が大きく、何れもフォーミング鎮静効果がより大きかった。試験No.11~No.18は、いずれもセメントを含み、水分の多くが結晶水として固定化されていたからと考えられる。
また、試験No.18は、見掛け密度が1500kg/m3より大きく、フォーミングのより深部でガス発生したことから、その鎮静効果が試験No.11、12よりも大きかった。また、試験No.13、14、16、17は、見掛け密度が1500kg/m3より大きいこと、およびもしくは、スラグの質量に対して、耐火物の質量が0.5倍以上、4倍以下の範囲であったことから、鎮静材がより効率的に、スラグのより深部でガスが発生したことで、フォーミング鎮静効果がより大きかった。

Claims (6)

  1. 耐火物、スラグ、4質量%超の水を含有し、見かけ密度が1250kg/m3以上であり、スラグの質量に対して、耐火物の質量が0.5倍以上、4倍以下であることを特徴とするフォーミング鎮静材。
  2. 粒径が2mm以下の割合が50質量%以上のスラグ混じりの耐火物の粉であることを特徴とする請求項1に記載のフォーミング鎮静材。
  3. 粒径が5mm以上の割合が50質量%以上の成形体であることを特徴とする請求項1に記載のフォーミング鎮静材。
  4. さらに結合材としてセメントを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のフォーミング鎮静材。
  5. 見掛け密度が1500kg/m3以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のフォーミング鎮静材。
  6. 耐火物、スラグ、4質量%超の水を含有し、見かけ密度が1250kg/m 3 以上であり、さらに前記含有する水を結晶水として固定化させるための結合材としてセメントを含むことを特徴とするフォーミング鎮静材。
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