JP7486643B2 - 木質部材の接合方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、隣り合う壁パネル同士に接合構造が示されている。一方の壁パネルの表面の端縁から、ビスがこの一方の壁パネルを通して、他方の壁パネルにねじ込まれることで、壁パネル同士が引き寄せられて接合されている。
特許文献2には、CLTと木質部材とを接合具を用いて接合する木質部材接合構造が示されている。CLTの板厚方向の外周側面と木質部材との間に接合面が形成され、接合具は、CLTの表裏面と接合面の双方に直交する仮想直交平面に対して角度をつけて、接合面を跨いで貫入されている。
このとき、接合具の打込み角度を、接合具の中心軸が入隅部を通り、かつ、接合具の基端側の下端面が入隅部に対向する壁部の上端に接する角度とした。よって、木質部材に凹部を設けて、凹部の底面と壁部との入隅部に接合具の先端部を当てて打込み位置を決めておくとともに、接合具の基端部を入隅部に対向する壁部の上端に載せる。この状態で、接合具を前進させて打ち込む。これにより、接合具の先端部が木質部材の表面上を滑るのを防いで、接合具の打込み位置および打込み角度を容易に設定できる。したがって、棒状の接合具を木質部材に容易かつ精度良く打ち込むことができる。
このとき、木質部材に凹部を設けて、この凹部の底面と壁部との入隅部に所定の角度で接合具を打ち込んだ。具体的には、木質部材の表面上に打込み治具を配置し、記打込み治具のガイド溝に沿って電動ドリルのドリルを前進させて、凹部の底面と壁部との入隅部に先行穴を形成し、その後、接合具を打込み治具のガイド溝に沿って前進させて、先行穴を通して木質部材に接合具を打ち込んだ。これにより、接合具の先端部が木質部材の表面上を滑るのを防いで、接合具の打込み位置および打込み角度を容易に設定できる。したがって、棒状の接合具を木質部材に容易かつ精度良く打ち込むことができる。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る木質部材の接合構造が適用された建物1の模式的な斜視図である。
建物1は、CLT(Cross Laminated Timber、直交集成板)を用いた構築された二階建ての建物である。建物1の一階は、鉄筋コンクリート造の基礎(および1階床)2と、基礎2上に設けられたCLTからなる1階壁3と、を含んで構成されている。建物1の二階は、1階壁3の上に設けられたCLTからなる2階床4と、この2階床4の上に設けられたCLTからなる2階壁5と、この2階壁5の上に設けられた図示しない屋根と、を含んで構成されている。
CLT10は、ラミナ11と呼ばれるひき板を水平面内に並べて層であるプライ12を形成し、このプライ12を、ラミナ11の繊維方向が直交するように積層して接着した板材である。以下、このCLT10の下面を13、上面を14、4つの側面を15とする。CLT10の下面13と上面14とは略平行であり、下面13および上面14と側面15とは、略直交している。
図1の破線Aで囲んだ部分(2階床4)は、木質部材としてのCLT10A、10Bのうちの一方と他部材としてのCLT10A、10Bのうちの他方との接合部分となっている。これらCLT10A、10B同士は、水平方向に並んで配置され、側面15で接合されて、各CLT10A、10Bの下面13および上面14が連続した一つの平面となっている。ここで、CLT10A、10B同士の接合面をPとし、接合面Pおよび下面13および上面14に直交する側面15を、側面15A、15Bとする。具体的には、側面15Aは、CLT10A、10Bの図3中右側の側面であり、側面15Bは、CLT10A、10Bの図3中左側の側面である。
凹部30は、平面視で略円形であり、略円形の底面31と、底面31の外周に立設された壁部32と、を備える。
ビス20は、向きおよび配置が異なる4種類のビス20A、20B、20C、20Dで構成されている。4つのビス20A~20Dは、CLT10A、10Bの上面14に形成された凹部30の底面31と壁部32との入隅部から打ち込まれて、接合面Pを貫通しており、2つのCLT10A、10Bに跨がって設けられている。4つのビス20A~20Dは、CLT10の上面に対して鋭角に打ち込まれている。接合面PがCLT10の上面に略直交しているため、これらビス20A~20Dは、接合面Pに対して鈍角で打ち込まれている。
ビス20Bは、CLT10Bの上面14の側面15A側から、CLT10Aの下面13の側面15B側に向かって打ち込まれている。
ビス20Cは、CLT10Aの上面14の側面15B側から、CLT10Bの下面13の側面15A側に向かって打ち込まれている。
ビス20Dは、CLT10Bの上面14の側面15B側から、CLT10Aの下面13の側面15A側に向かって打ち込まれている。
図8の破線Eで囲んだ部分(2階壁5)は、木質部材としてのCLT10A、10Bのうちの一方と他部材としてのCLT10A、10Bのうちの他方との接合部分となっている。これらCLT10A、10B同士は、互いに直交しており、接合具としてのビス20で接合されている。2階壁5におけるCLT10A、10B同士の接合構造は、上述の2階床4におけるCLT10A、10B同士の接合構造と同様である。
また、図10(b)に示すように、このビス20の中心軸Cは、平面視では、凹部30の中心Tを通るように配置されている。
図10(a)に示すように、ビスの谷径直径をφ、ビスの打込み角度をθ、凹部の内径をw、凹部の深さをdとすると、以下の式(1)が成立する。
w=w1+w2
=φ/2/sinθ+d/tanθ ・・・(1)
ステップS1では、図13に示すように、例えばCLT10の上面14にドリルで座彫りすることにより、CLT10の上面に凹部30を形成する。
ステップS2では、図13に示すように、凹部30に先行穴33を形成する。
まず、打込み治具40を、打込み治具40のガイド溝43の延長線上に凹部30の底面31と壁部32との入隅部が位置するように配置する。次に、図示しない電動ドリルを用意し、この電動ドリルのドリルを打込み治具40をガイド溝43に沿って前進させて、CLT10に先行穴33を開ける。次に、ハンドドリルを用いて、手作業により先行穴33を延長する。
ステップS4では、凹部30に図示しない木材を埋めて埋木する。
(1)座彫りで形成した凹部30は平面視で円形であるので、ビス20が凹部30の中心を通り、ビス20の先端が凹部30深部の入隅部Rに位置するようにし、かつビス20の基端側を入角部Rに対向する壁部の上端Sに載せて、この状態でビスを打ち込むことで、ビス20が凹部30に対して立体的な斜め角度を維持して、CLT10A、10B同士を接合できる。
また、ビス20をCLT10AとCLT10Bとに跨がって設けたので、CLT10AとCLT10Bとの接合面Pにせん断力や引抜き力が作用した場合には、ビス20がせん断力や引抜き力を負担するので、引き抜き耐力およびせん断耐力を高めることができる。
このとき、ビス20の打込み角度θを、ビス20の中心軸Cが入隅部Rを通り、ビス20の基端側の下端面が入隅部Rに対向する壁部の上端Sに接する角度とした。よって、CLT10A、10Bに凹部30を設けて、この凹部30の底面31と壁部32との入隅部にビス20の先端部を当てて打込み位置を決めておくとともに、接合具の基端部を入隅部に対向する壁部の上端に載せる。この状態で、ビス20を前進させて打ち込む。これにより、ビス20の先端部がCLT10の表面上を滑るのを防いで、ビス20の打込み位置および打込み角度を容易に設定できる。よって、ビス20をCLT10A、10Bに容易かつ精度良く打ち込むことができる。
加えて、ビス打込み時の初期の打込み角度の精度を上げるため、凹部30の入角部Rから、機械加工によって、必要な角度に傾斜した内径5mmの先行穴(リードホール)33を深さ25mm(今回使用した加工機械の限界加工深さ)だけ空け、そこに手加工で内径5mm、長さ75mmの追い加工を行った。これにより、打込み角度の精度が高くなる総長さ100mmの先行穴33を凹部30の最深部から連続して空けることができる。
(5)座彫りして形成した凹部の内径を10mm以上30mm以下とし、凹部の深さを3mm以上47mm以下としたので、ビスの打込み角度を30°以上60°以下の範囲で任意に設定できる。
例えば、上述の実施形態では、本発明の木質部材の接合構造を、建物1の2階床4および2階壁5に適用したが、これに限らず、図14に示すように、重ね梁50に適用してもよい。具体的には、重ね梁50は、上下に積層されたCLT10で形成されており、上下に位置するCLT10同士は、ビス20で接合されている。このようにすれば、ビス20が上下のCLT10に跨がって打ち込まれるので、ビス20が負担する引き抜き耐力およびせん断耐力を高めることができる。
また、上述の実施形態では、木質部材としてCLT10を用いたが、これに限らず、木質部材として、合板、集成材、単板積層材、製材、繊維板のいずれかを用いてもよいし、さらに、他部材として、他の木質材や金物を用いてもよい。
また、上述の実施形態では、木質部材の接合方法は、座彫りした凹部30の入隅部Rに先行穴33を設けた後、打込み治具40を用いてビス20を打ち込んだが、これに限らない。すなわち、先行穴33を設ける必要はないし、打込み治具40を用いることなくビス20を打ち込んでもよい。
また、上述の実施形態では、凹部30を木工ドリルで座彫りすることで形成したが、これに限らず、凹部30を形成できれば、どのような方法でもよい。
C…ビスの中心軸 T…凹部の中心
1…建物 2…基礎 3…1階壁 4…2階床 5…1階壁
10…CLT 10A、10B…CLT(木質部材、他部材)
11…ラミナ 12…プライ 13…下面 14…上面
15、15A、15B…側面
20、20A、20B、20C、20D…ビス(接合具)
30…凹部 31…底面 32…壁部 33…先行穴
40…打込み治具 41…平板部 42…治具本体 43…ガイド溝
Claims (4)
- 木質部材と他部材とを接合具を用いて接合する木質部材の接合方法であって、
前記接合具は、棒状のビスまたは釘であり、
前記木質部材の表面には、平面視で略円形で略平らな底面および前記底面の外周の全周に亘って設けられた壁部を有する凹部が形成され、
前記凹部の内径は、10mm以上30mm以下であり、
前記接合具は、前記凹部の底面と前記凹部の壁部との入隅部に打ち込まれて、前記木質部材と前記他部材とに跨がって設けられ、
前記接合具の打ち込み開始時の打込み角度は、前記接合具の中心軸が前記入隅部を通り、前記接合具の下端面が前記入隅部に対向する壁部の上端に接する角度であり、
前記打込み角度を保って前記入隅部に打ち込まれた前記接合具の頭部が、前記底面および前記壁部の両方に係止されることを特徴とする木質部材の接合方法。 - 前記凹部の深さは、3mm以上47mm以下であり、
前記接合具の打込み角度は、水平面に対して30°以上60°以下であることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の木質部材の接合方法。 - 前記木質部材は、合板、集成材、単板積層材、製材、CLT、および繊維板のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の木質部材の接合方法。
- 木質部材と他部材とを接合具を用いて接合する木質部材の接合方法であって、
前記木質部材の表面を座彫りして、平面視で略円形で略平らな底面および前記底面の外周の全周に亘って設けられた壁部を有しかつ内径が10mm以上30mm以下の凹部を形成する工程と、
前記木質部材の表面上に載置される板状の平板部と、前記平板部上に設けられて直線状に延びるガイド溝が形成された治具本体と、を備える打込み治具を配置し、前記打込み治具のガイド溝に沿って電動ドリルのドリルを前進させて、前記凹部の底面と前記凹部の壁面との入隅部に先行穴を形成する工程と、
前記接合具を前記打込み治具のガイド溝に沿って前進させて、前記先行穴を通して前記木質部材に打ち込んで、前記接合具を前記木質部材と前記他部材とに跨がって配置する工程と、を備えることを特徴とする木質部材の接合方法。
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