[第1実施形態]
本発明に係る第1実施形態を図1~図5に基づいて以下に説明する。
第1実施形態の緩衝器11は、自動車や鉄道車両等の車両のサスペンション装置に用いられる緩衝器であり、具体的には4輪自動車のサスペンション装置に用いられる緩衝器である。図1に示すように、緩衝器11は、円筒状のシリンダ15と、シリンダ15よりも大径でシリンダ15の外周側に設けられる有底筒状の外筒16とを有する複筒式の緩衝器である。外筒16は緩衝器11の外殻をなす部分である。外筒16とシリンダ15との間は、円環状のリザーバ室18となっている。シリンダ15内には作動流体としての油液Lが封入され、リザーバ室18には作動流体としてのガスGと油液Lとが封入されている。よって、緩衝器11は、油圧緩衝器である。なお、ガスGは、大気圧状態の空気であってもよく、圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。また、油液Lは、オイルでなくとも添加剤を混在させた水等であってもよい。
外筒16は、略円筒状の側壁部材21と、側壁部材21の軸方向の一端側を閉塞する底部材22とを有している。側壁部材21と底部材22とは溶接等により全周にわたって固定されている。外筒16は、側壁部材21の軸方向における底部材22とは反対側が開口23となっている。底部材22は、外筒16のボトム部分を構成するボトムキャップである。底部材22の軸方向における側壁部材21とは反対側には、取付部材24が溶接により固定されている。
緩衝器11は、シリンダ15の軸方向の一端部に設けられて底部材22に載置される短尺な有蓋筒状のバルブボディ25と、シリンダ15および外筒16の軸方向の他端部に設けられる円環状のロッドガイド26と、を有している。バルブボディ25は、その外周部が、小径部分と、これよりも大径の大径部分とを有する段付き形状である。ロッドガイド26は、その外周部が、小径部分と、これよりも大径の大径部分とを有する段付きの円筒状である。ロッドガイド26は、例えば金属材料、硬質な樹脂材料等に成型加工、切削加工等を施すことにより所定の段付形状に形成されている。
シリンダ15は、軸方向の一端部が、バルブボディ25の小径部分に嵌合されており、このバルブボディ25を介して外筒16の底部材22に係合している。また、シリンダ15は、軸方向の他端部が、ロッドガイド26の小径部分に嵌合されており、ロッドガイド26を介して外筒16の側壁部材21に係合している。この状態で、シリンダ15は、外筒16に対して径方向の中央に位置決めされている。ここで、バルブボディ25と底部材22との間のボトム室34は、バルブボディ25に形成された通路溝35を介してシリンダ15と外筒16との間に連通しており、シリンダ15と外筒16との間と同様、リザーバ室18を構成している。
バルブボディ25は、有孔円板状のボディ本体部36と、ボディ本体部36の外周側から軸方向一側に突出する脚部37とを有している。脚部37はボディ本体部36の周方向に間隔をあけて複数形成されている。ボディ本体部36の周方向において隣り合う脚部37と脚部37との間に、脚部37をボディ本体部36の径方向に横断するように上記した通路溝35が形成されている。
緩衝器11は、ロッドガイド26の軸方向における底部材22とは反対側に、円環状のロッドシール41を有している。ロッドシール41は、ゴム製の弾性部材42に有孔円板状の金属製の剛性部材43を埋設して形成されている。このロッドシール41も、ロッドガイド26と同様に側壁部材21の内周部に嵌合されている。側壁部材21の軸方向における底部材22とは反対の端部には、側壁部材21をカール加工等の加締め加工によって径方向内方に塑性変形させて加締め部44が形成されている。ロッドシール41は、径方向における剛性部材43の位置が、この加締め部44とロッドガイド26とに挟持されている。ロッドシール41は、外筒16の開口23を閉塞するものであり、具体的にはオイルシールである。
ロッドシール41は、弾性部材42の一部であって剛性部材43の外周側に設けられた円環状の外周側シール部47において、外筒16の側壁部材21の内周部との隙間をシールする。また、ロッドシール41は、弾性部材42の一部であって剛性部材43の内周側に設けられた円筒状の内周側シール部48において、その内側に挿通されるピストンロッド51との隙間をシールしつつピストンロッド51の外周部に摺接する。また、ロッドシール41は、弾性部材42の一部であって外周側シール部47と内周側シール部48との間に設けられた円環状のシールリップ部49においてロッドガイド26に当接する。ロッドガイド26には、内周部に摺動筒としてのブッシュ50が嵌合して設けられ、このブッシュ50は、ロッドガイド26の内周側でピストンロッド51が軸方向に摺動変位するのを円滑にガイドする。
ロッドガイド26とブッシュ50とピストンロッド51とロッドシール41との間には円環状の貯留室55が形成されている。貯留室55は、ピストンロッド51の外周側に位置しピストンロッド51とロッドガイド26とブッシュ50とロッドシール41とにより囲まれて形成されている。貯留室55は、シリンダ15内の油液L(または、油液L中に混入したガス)がピストンロッド51とブッシュ50との隙間等を介して漏出したときに、この漏出物を溜める。
ロッドガイド26には、この貯留室55とリザーバ室18とを連通可能な戻し通路57が形成されている。ロッドシール41のシールリップ部49は、ロッドガイド26に全周にわたって当接して貯留室55とリザーバ室18との戻し通路57を介しての連通を遮断する。シールリップ部49は、貯留室55の圧力がリザーバ室18の圧力よりも所定値を超えて高くなると、ロッドガイド26から離間して貯留室55とリザーバ室18とを戻し通路57を介して連通させる。シールリップ部49は、貯留室55とリザーバ室18との間に配置され、貯留室55内の油液L等がロッドガイド26の戻し通路57を介してリザーバ室18側に向け流れるのを許容し、逆向きの流れを阻止する逆止弁である。
緩衝器11は、シリンダ15内に設けられるピストン60を有している。ピストン60は、シリンダ15に摺動可能に嵌装されている。ピストン60は、シリンダ15内を第1室61と第2室62との2室に分けている。第1室61は、シリンダ15内のピストン60とロッドガイド26との間に設けられ、第2室62は、シリンダ15内のピストン60とバルブボディ25との間に設けられている。第2室62は、バルブボディ25によって、リザーバ室18と画成されている。第1室61および第2室62には作動流体としての油液Lが充填されている。
緩衝器11は、一端側がピストン60に連結されると共に、他端側がシリンダ15および外筒16の外部に延出される上記したピストンロッド51を有している。ピストンロッド51には、ナット63によってピストン60が連結されている。ピストンロッド51は、ロッドガイド26およびロッドシール41を通ってシリンダ15および外筒16から外部へと延出している。ピストンロッド51は、ロッドガイド26に設けられたブッシュ50に案内されて、シリンダ15および外筒16に対して、ピストン60と一体に軸方向に移動する。第1室61は、ピストンロッド51が貫通するロッド側室である。第2室62は、底部材22側のボトム側室である。第2室62に対しては、ピストンロッド51は貫通していない。
ロッドシール41は、外筒16の開口23とピストンロッド51との間を閉塞して、シリンダ15内の油液Lと、リザーバ室18内のガスGおよび油液Lとが外部に漏出するのを規制する。
ピストン60には、軸方向に貫通する通路65および通路66が形成されている。ピストン60には、その周方向に等間隔で通路65が複数形成されており、その周方向に等間隔で通路66が複数形成されている。通路65,66は、第1室61と第2室62とを連通可能となっている。緩衝器11は、ピストン60に当接することで通路65を閉塞可能な円環状のディスクバルブ67を、ピストン60の軸方向における底部材22とは反対側に有している。また、緩衝器11は、ピストン60に当接することで通路66を閉塞可能な円環状のディスクバルブ68を、ピストン60の軸方向における底部材22側に有している。ディスクバルブ67,68は、ピストン60と共にピストンロッド51に連結されている。通路65は、第2室62に常時開口しており、通路66は、第1室61に常時開口している。
ディスクバルブ67は、有孔円板状の弾性金属板からなる単板ディスクが複数枚積層され、これらの内周側が軸方向にクランプされて構成されている。ディスクバルブ67は、ピストンロッド51がシリンダ15および外筒16内への進入量を増やす縮み側に移動しピストン60が第2室62を狭める方向に移動して第2室62の圧力が第1室61の圧力よりも所定値以上高くなると通路65を開いて第2室62の油液Lを通路65を介して第1室61に流すことになり、その際に減衰力を発生させる。ディスクバルブ67はピストン60と共に、ピストンロッド51の縮み行程でピストン60が底部材22側に摺動変位するときに通路65内を流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生する縮み側の減衰力発生機構71を構成している。なお、縮み側については、減衰力発生機構71ではなく、実質的に減衰力を発生しない逆止弁を設けてもよい。
ディスクバルブ68は、有孔円板状の弾性金属板からなる単板ディスクが複数枚積層され内周側が軸方向にクランプされて構成されている。ディスクバルブ68は、ピストンロッド51がシリンダ15および外筒16からの突出量を増やす伸び側に移動しピストン60が第1室61を狭める方向に移動して第1室61の圧力が第2室62の圧力よりも所定値以上高くなると通路66を開いて第1室61の油液Lを通路66を介して第2室62に流すことになり、その際に減衰力を発生させる。ディスクバルブ68はピストン60と共に、ピストンロッド51の伸び行程でピストン60がロッドガイド26側に摺動変位するときに通路66内を流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生する伸び側の減衰力発生機構72を構成している。
縮み側の減衰力発生機構71は、ピストン60およびディスクバルブ67のうちの少なくとも一方に形成され、ディスクバルブ67が通路65を最も閉塞した状態でも通路65を介して第1室61と第2室62とを連通させる図示略の固定オリフィスを有している。伸び側の減衰力発生機構72は、ピストン60およびディスクバルブ68のうちの少なくとも一方に形成され、ディスクバルブ68が通路66を最も閉塞した状態でも通路66を介して第1室61と第2室62とを連通させる図示略の固定オリフィスを有している。
緩衝器11は、シリンダ15の軸方向における底部材22側に、シリンダ15に固定されるボデーバルブ70を有している。ボデーバルブ70は、外筒16のボトム部分に設けられるボトムバルブである。上記したバルブボディ25は、このボデーバルブ70を構成するものであり、外筒16に固定されるベース部材である。バルブボディ25には、軸方向に貫通する通路81(第1通路)および通路82が形成されている。バルブボディ25には、その周方向に等間隔で通路81が複数形成されており、その周方向に等間隔で通路82が複数形成されている。通路81,82は、第2室62とボトム室34すなわちリザーバ室18とを連通可能となっている。言い換えれば、リザーバ室18は通路81,82を介してシリンダ15内の第2室62と連通可能に設けられている。バルブボディ25の径方向において、複数の通路81は、複数の通路82よりも内側に配置されている。
図2に示すように、バルブボディ25のボディ本体部36には、その軸方向における脚部37とは反対側であって、その径方向における複数の通路81と複数の通路82との間に、円環状の中間シート部85が形成されている。また、バルブボディ25のボディ本体部36には、その軸方向における脚部37とは反対側であって、その径方向における複数の通路82よりも外側に、円環状の外側シート部86が形成されている。また、バルブボディ25のボディ本体部36には、その軸方向における脚部37側であって、その径方向における複数の通路81と複数の通路82との間に、円環状のシート部87が形成されている。
ボデーバルブ70は、バルブボディ25の軸方向における底部材22側に、バルブボディ25のシート部87に当接することで通路81を閉塞可能な円環状のディスクバルブ91を有している。ディスクバルブ91は、有孔円板状の弾性金属板からなる単板ディスク92が複数枚積層されて構成されている。シート部87に当接する単板ディスク92の外周側には切り欠き状のオリフィス通路93が形成されている。オリフィス通路93は、ディスクバルブ91がシート部87に当接する状態にあっても第2室62とボトム室34とを通路81を介して連通させる。よって、オリフィス通路93は、第2室62とボトム室34すなわちリザーバ室18とを通路81を介して常時連通させる。
ディスクバルブ91とシート部87とは、ディスクバルブ91がシート部87から離間すると開弁して通路81を介して第2室62とボトム室34すなわちリザーバ室18とを連通させるバルブ機構94を構成している。ディスクバルブ91とバルブボディ25のシート部87とが、通路81に設けられて減衰力を発生させる第1減衰力発生機構95を構成している。第1減衰力発生機構95は、オリフィス通路93とバルブ機構94とを含んでいる。
ボデーバルブ70は、ディスクバルブ91の軸方向におけるシート部87とは反対側に、外径がディスクバルブ91の外径よりも小径の有孔円板状の弾性金属板からなる座金97を有している。また、ボデーバルブ70は、座金97の軸方向におけるディスクバルブ91とは反対側に、外径が座金97の外径よりも大径かつディスクバルブ91の外径よりも小径の有孔円板状の弾性金属板からなるリテーナディスク98を有している。
ボデーバルブ70は、バルブボディ25の軸方向の底部材22とは反対側に、バルブボディ25の中間シート部85と外側シート部86とに当接することで通路82を閉塞可能な有孔円板状の弾性金属板からなるディスクバルブ101を有している。ディスクバルブ101には、通路81を第2室62に常時連通させる通路を形成する貫通穴102がディスクバルブ101を軸方向に貫通して形成されている。貫通穴102は、ディスクバルブ101に、ディスクバルブ101の周方向に等間隔で複数形成されている。ディスクバルブ101と中間シート部85と外側シート部86とは、ディスクバルブ101が外側シート部86から離間すると開弁して通路82を介してボトム室34すなわちリザーバ室18と第2室62とを連通させるバルブ機構103を構成している。
ボデーバルブ70は、ボルト部材111とケース112とを有しており、これらボルト部材111およびケース112によって、ディスクバルブ91,101、座金97およびリテーナディスク98がバルブボディ25に連結されている。ボルト部材111は、頭部121と、頭部121よりも外径が小径の軸部122とを有しており、軸部122の軸方向における頭部121とは反対側の外周部にオネジ123が形成されている。ケース112にはオネジ123に螺合するネジ穴125が形成されている。
ボルト部材111の軸部122が、リテーナディスク98、座金97、ディスクバルブ91、バルブボディ25およびディスクバルブ101のそれぞれの径方向の中央に挿通されて、軸部122のオネジ123にケース112のネジ穴125が螺合される。これにより、ディスクバルブ91は、内周側が座金97とバルブボディ25とに挟持される。また、ディスクバルブ101は、内周側がケース112とバルブボディ25とに挟持される。その結果、座金97の略全体と、ディスクバルブ91、リテーナディスク98およびディスクバルブ101のそれぞれの内周側とがバルブボディ25に固定される。その際に、ボルト部材111およびケース112もバルブボディ25に固定される。ボルト部材111は、ディスクバルブ91、座金97、リテーナディスク98およびディスクバルブ101をバルブボディ25に固定する固定軸である。
ボデーバルブ70は、オリフィス通路93が、第2室62とリザーバ室18とを、ディスクバルブ101の貫通穴102内の通路と通路81とを介して常時連通させている。そして、ボデーバルブ70は、ピストンロッド51が縮み側に移動しピストン60が第2室62を狭める方向に移動して第2室62の圧力がリザーバ室18の圧力よりも所定値以上高くなると、ディスクバルブ91が通路81を開いて第2室62の油液Lをディスクバルブ101の貫通穴102内の通路および通路81を介してボトム室34すなわちリザーバ室18に流すことになり、その際に減衰力を発生させる。言い換えれば、通路81は、ピストン60の移動により油液Lが第2室62からリザーバ室18に流れ出す。ディスクバルブ91およびシート部87を有する第1減衰力発生機構95のバルブ機構94は、縮み行程において開弁する一方、伸び行程において開弁しない縮み側のバルブ機構である。
ボデーバルブ70は、ピストンロッド51が伸び側に移動しピストン60が第1室61側に移動して第2室62の圧力がリザーバ室18の圧力より低下すると、ディスクバルブ101が通路82を開いてリザーバ室18の油液Lを通路82を介して第2室62に流すことになる。ディスクバルブ101、中間シート部85および外側シート部86を有するバルブ機構103は、リザーバ室18の油液Lを通路82を介して第2室62に流す一方、第2室62の油液Lの通路82を介してのリザーバ室18への流れを規制するチェックバルブである。バルブ機構103は、伸び行程において開弁する一方、縮み行程において開弁しない伸び側のバルブ機構103である。バルブ機構103は、リザーバ室18の油液Lを通路82を介して第2室62に流す際にリザーバ室18から第2室62内に実質的に減衰力を発生させずに油液Lを流すサクションバルブ機構である。
ケース112は、円筒状の胴部140と、胴部140の軸方向両側の円板状の第1蓋部141および第2蓋部142とを有している。ケース112は、その内側が隔離室143となっている。ケース112およびその内側の隔離室143は、第1室61と第2室62とのうちの一方である第2室62に設けられている。ケース112は、胴部140、第1蓋部141および第2蓋部142を有するケース本体部材145と、第2蓋部142に固定されるナット部材146とからなっている。ナット部材146の内側がネジ穴125となっている。
胴部140には、その軸方向の中央位置に径方向に貫通する径方向貫通孔148が形成されている。胴部140には、その周方向に等間隔で径方向貫通孔148が複数形成されている。
第1蓋部141は、胴部140の軸方向一端側を閉塞するように設けられている。第1蓋部141には、その径方向外側の外周縁部と中心軸線との間に外周縁部と同心状をなして円環状の第1ケース凸部153が形成されている。第1ケース凸部153は、第1蓋部141における、第1ケース凸部153よりも径方向外側の部分および第1ケース凸部153よりも径方向内側の部分よりも隔離室143とは反対側に突出している。これにより、第1蓋部141には、その径方向外側の外周縁部と中心軸線との間の隔離室143側に、その外周縁部と同心状をなして円環状の第1凹部154が形成されている。第1凹部154は、第1蓋部141における、第1凹部154よりも径方向外側の部分および第1凹部154よりも径方向内側の部分よりも凹んでいる。第1ケース凸部153の裏側が第1凹部154である。第1ケース凸部153および第1凹部154は、胴部140に対しても同心状に形成されている。
第1蓋部141には、第1凹部154の最も底となる位置に、第1蓋部141の軸方向に貫通する第1貫通孔155が形成されている。第1蓋部141には、その周方向に等間隔で同径の第1貫通孔155が複数形成されている。また、第1蓋部141には、第1凹部154よりも径方向内側の中央位置にも第1蓋部141の軸方向に貫通する中央貫通孔156が形成されている。また、第1蓋部141には、第1凹部154よりも径方向の外側部分にも第1蓋部141の軸方向に貫通する外側貫通孔157が形成されている。第1蓋部141には、その周方向に等間隔で同径の外側貫通孔157が複数形成されている。
第2蓋部142は、胴部140の軸方向他端側を閉塞するように設けられている。第2蓋部142には、その径方向外側の外周縁部と中心軸線との間に外周縁部と同心状をなして円環状の第2ケース凸部163が形成されている。第2ケース凸部163は、第2蓋部142における、第2ケース凸部163よりも径方向外側の部分および第2ケース凸部163よりも径方向内側の部分よりも隔離室143とは反対側に突出している。これにより、第2蓋部142には、その径方向外側の外周縁部と中心軸線との間の隔離室143側に、その外周縁部と同心状をなして円環状の第2凹部164が形成されている。第2凹部164は、第2蓋部142における、第2凹部164よりも径方向外側の部分および第2凹部164よりも径方向内側の部分よりも凹んでいる。第2ケース凸部163の裏側が第2凹部164である。第2ケース凸部163および第2凹部164は、胴部140に対しても同心状に形成されている。第2ケース凸部163と第1ケース凸部153とは、同心状かつ同形状で軸方向に反対向きに形成されている。第2凹部164と第1凹部154とは、同心状かつ同形状で軸方向に反対向きに形成されている。
第2蓋部142には、第2凹部164の最も底となる位置に、第2蓋部142の軸方向に貫通する第2貫通孔165が形成されている。第2蓋部142には、その周方向に等間隔で同径の第2貫通孔165が複数形成されている。第2貫通孔165は、第1貫通孔155と同径であり、第1貫通孔155と同数形成されている。また、第2蓋部142には、第2凹部164よりも径方向の外側部分にも第2蓋部142の軸方向に貫通する外側貫通孔167が形成されている。第2蓋部142には、その周方向に等間隔で同径の外側貫通孔167が複数形成されている。外側貫通孔167は外側貫通孔157と同径であり、外側貫通孔157と同数形成されている。第2蓋部142の径方向の中央にナット部材146が固定されている。ナット部材146は、第2蓋部142から第2ケース凸部163よりも軸方向外側まで突出している。
第1貫通孔155は、その内側に、隔離室143と第2室62とを連通可能な連通路155aを形成している。中央貫通孔156は、その内側に、隔離室143と第2室62とを連通させる連通路156aを形成している。外側貫通孔157は、その内側に、隔離室143と第2室62とを連通させる連通路157aを形成している。径方向貫通孔148は、その内側に、隔離室143と第2室62とを連通させる連通路148aを形成している。第2貫通孔165は、その内側に、隔離室143と第2室62とを連通可能な連通路165aを形成している。外側貫通孔167は、その内側に、隔離室143と第2室62とを連通させる連通路167aを形成している。言い換えれば、隔離室143は、連通路148a,155a,156a,157a,165a,167aを介して、第1室61と第2室62とのうちの一方である第2室62と連通可能である。
ボデーバルブ70は、隔離室143内に設けられる伸縮部材180を有している。伸縮部材180は、第1蓋部141に対向する円板状の第1ダイヤフラム181と、第2蓋部142に対向する円板状の第2ダイヤフラム182とを有している。伸縮部材180は、これら第1ダイヤフラム181と第2ダイヤフラム182とがそれぞれの外周縁部において溶接より全周にわたって固定されている。伸縮部材180は、これら第1ダイヤフラム181および第2ダイヤフラム182の内側に閉塞空間183を形成している。伸縮部材180内の閉塞空間183は、密封されており、大気圧以上の所定の圧力値に維持されている。ケース112と、その内側に設けられた伸縮部材180とが、蓄圧機構185を構成している。
第1ダイヤフラム181には、その径方向外側の外周縁部と中心軸線との間に外周縁部と同心状をなして円環状の第1凸部193が形成されている。第1凸部193は、第1ダイヤフラム181における、第1凸部193よりも径方向外側の部分および第1凸部193よりも径方向内側の部分よりも第2ダイヤフラム182とは反対側に突出している。第1ダイヤフラム181は、径方向外側の外周縁部から中心軸線に向かった位置に外周縁部と同心円に形成された第1凸部193を有する波形形状となっている。
第2ダイヤフラム182には、その径方向外側の外周縁部と中心軸線との間に外周縁部と同心状をなして円環状の第2凸部203が形成されている。第2凸部203は、第2ダイヤフラム182における、第2凸部203よりも径方向外側の部分および第2凸部203よりも径方向内側の部分よりも第1ダイヤフラム181とは反対側に突出している。第2ダイヤフラム182は、径方向外側の外周縁部から中心軸線に向かった位置に外周縁部と同心円に形成された第2凸部203を有する波形形状となっている。
第1凸部193および第2凸部203は、伸縮部材180の中心軸線を基準に同心状、かつ同形状で軸方向に反対向きに形成されている。第1凸部193および第2凸部203は伸縮部材180の径方向において第1凹部154および第2凹部164と同径である。
第1凸部193は先端側の当接面部193aにおいて第1凹部154の底側の当接面部154aに面接触で当接する。これにより、第1凸部193は第1貫通孔155を閉塞し第1貫通孔155内の連通路155aを閉塞する。互いに当接する当接面部193aと当接面部154aとは同等の曲率となっている。言い換えれば、第1凸部193と第1凹部154とは、少なくとも当接部分の曲率が同等である。
第2凸部203は先端側の当接面部203aにおいて第2凹部164の底側の当接面部164aに面接触で当接する。これにより、第2凸部203は第2貫通孔165を閉塞し第2貫通孔165内の連通路165aを閉塞する。互いに当接する当接面部203aと当接面部164aとは同等の曲率となっている。言い換えれば、第2凸部203と第2凹部164とは、少なくとも当接部分の曲率が同等である。
伸縮部材180は、第1凸部193が第1凹部154と面接触で当接して全ての第1貫通孔155を閉塞すると同時に、第2凸部203が第2凹部164と面接触で当接して全ての第2貫通孔165を閉塞するようになっている。伸縮部材180は、第2室62の圧力により伸縮可能である。そして、伸縮部材180は、第2室62の圧力が第1所定圧力値P1より小さいときは、第1凸部193が第1凹部154と面接触で当接すると同時に、第2凸部203が第2凹部164と面接触で当接して、全ての第1貫通孔155内の連通路155aおよび全ての第2貫通孔165内の連通路165aと、隔離室143との連通を遮断する。
第1凸部193と第1凹部154とが面接触で当接した際に、第1ダイヤフラム181は変形しないようにして第1凸部193に第1凹部154に対する一定の接触力を与える。第2凸部203と第2凹部164とが面接触で当接した際に、第2ダイヤフラム182は変形しないようにして第2凸部203に第2凹部164に対する一定の接触力を与える。当接面部193aが第1貫通孔155を完全に封止するように第1貫通孔155の直径が設定されている。当接面部203aが第2貫通孔165を完全に封止するように第2貫通孔165の直径が設定されている。
ここで、上記した第1減衰力発生機構95のバルブ機構94は、上流側となる第2室62の圧力が第2所定圧力値P2に達したときに開弁することになるが、伸縮部材180は、このバルブ機構94の開弁前に、第2室62の圧力が第2所定圧力値P2よりも小さい第1所定圧力値P1に達すると、第1凸部193が第1凹部154から離間して第1貫通孔155内の連通路155aと隔離室143との遮断を解除すると共に、第2凸部203が第2凹部164から離間して第2貫通孔165内の連通路165aと隔離室143との遮断を解除する。これにより、第2室62と隔離室143とが連通路155a,165aを介して連通する。
隔離室143を含む蓄圧機構185は、通路81,82を有してシリンダ15に固定されるバルブボディ25と第1減衰力発生機構95と含むボデーバルブ70に設けられている。
次に、蓄圧機構185の動作について説明する。
緩衝器11は、ピストンロッド51の上端側が車両の車体側に取り付けられ、底部材22側の取付部材24が車輪側に取り付けられる。そして、車両の走行時には、路面の凹凸等により車両側と車輪側との間に相対的な上下方向の振動が発生すると、ピストンロッド51が、縮み行程ではシリンダ15および外筒16内に入り込み、伸び行程ではシリンダ15および外筒16から伸び出て、シリンダ15および外筒16に対して変位する。その際に、ピストン60の減衰力発生機構71,72、ボデーバルブ70の第1減衰力発生機構95等により減衰力を発生することができ、車両の振動を緩衝することができる。
しかし、ボデーバルブ70を備えた緩衝器11の場合、蓄圧機構185がなければ、ピストンロッド51の行程が伸び行程から縮み行程に反転するときに、ボデーバルブ70のディスクバルブ91が開く。そして、ディスクバルブ91の開弁に伴って第2室62内の油液Lがボトム室34からリザーバ室18側に向けて流れ込む。これにより、内筒4内の第2室62は内部の圧力が急激に変化するため、ディスクバルブ91の共振を引き起こし、油圧脈動を発生させる。この脈動がピストンロッド51を振動させ、コトコト音と呼ばれる異音の発生の一因となっている。コトコト音の周波数特性は例えば図3に示すようになっている。
ピストンロッド51が伸び行程にある場合には、第1室61内が第2室62よりも高圧となるので、第1室61内の加圧された油液Lが減衰力発生機構72を介して第2室62内に流通する。このとき、減衰力発生機構72が伸び側の減衰力を発生する。また、このときにはピストンロッド51がシリンダ15から外側に向けて進出するように変位する。このため、第2室62内はリザーバ室18よりも圧力が低くなり、リザーバ室18内の油液Lがボデーバルブ70のバルブ機構103を開いて第2室62内に、ピストンロッド51のシリンダ15から伸び出る分の体積を補償するように流入する。
この場合には、第2室62の圧力は低く、油圧脈動も小さいため、コトコト音は発生しない。第2室62の油液Lが、第1蓋部141の第1貫通孔155内の連通路155a、中央貫通孔156内の連通路156aおよび外側貫通孔157内の連通路157aと、第2蓋部142の第2貫通孔165内の連通路165aおよび外側貫通孔167内の連通路167aと、胴部140の径方向貫通孔148内の連通路148aとを通ってケース112内の隔離室143内に流れ込もうとして伸縮部材180を加圧する。しかしながら、第2室62の圧力は第1所定圧力値P1よりも低く、伸縮部材180によって第1蓋部141の第1貫通孔155内の連通路155aおよび第2蓋部142の第2貫通孔165内の連通路165aが閉塞されているため、第2室62の油液Lは隔離室143に大量には流れ込めない。また、伸縮部材180の第1凸部193とケース112の第1凹部154とが当接すると共に伸縮部材180の第2凸部203とケース112の第2凹部164とが当接しているため、伸縮部材180が大きな圧力を受けられない。よって、伸縮部材180はほぼ変形しない。これにより、第2室62の空間は増大せず、空間増大による減衰力の低下を避けることができる。
ピストンロッド51の縮み行程では、ピストンロッド51がシリンダ15内へと進入し、第2室62内が第1室61よりも高圧になるので、第2室62内の加圧された油液Lがピストン60の減衰力発生機構71を介して第1室61内に流通するときに、縮み側の減衰力を発生することができる。また、最初はピストンロッド51の進入速度が低いため、ディスクバルブ91が開弁せず、第2室62内の加圧された油液Lがオリフィス通路93を介して、リザーバ室18内に流入する。ピストンロッド51の縮み側の移動速度が大きくなると、ディスクバルブ91が開弁し、第2室62内の加圧された油液Lがボデーバルブ70のディスクバルブ91を開いてリザーバ室18内に流入する。ボデーバルブ70のディスクバルブ91は、第2室62内の加圧された油液Lがボトム室34を含むリザーバ室18に向けて流れるときに、縮み側の減衰力を発生することができる。
縮み行程の開始からディスクバルブ91が開弁するまでの間は、第2室62の圧力が低く、油圧脈動も小さい。また、油液Lがディスクバルブ91のオリフィス通路93を通って流れると、オリフィス通路93の面積が小さく乱流や渦が発生しやすいので、油圧脈動の周波数は高く、油圧脈動の振幅は小さい。そして、コトコト音はほぼ発生しない。
図4は、縮み行程における第2室62の圧力と伸縮部材180の体積変化との関係を示す図である。縮み行程の開始から第2室62の圧力が第2所定圧力値P2となってディスクバルブ91が開弁するまでの間に、第1貫通孔155および第2貫通孔165が伸縮部材180で閉塞され、第1蓋部141と伸縮部材180とが当接面部154a,193aで当接すると共に第2蓋部142と伸縮部材180とが当接面部164a,203aで当接して、圧力を受けられないため、伸縮部材180はほぼ変形しない。
図5は縮み行程でのピストン速度と伸縮部材180の体積変化と減衰力との関係を示す図である。縮み行程開始から第2室62の圧力が第2所定圧力値P2となってディスクバルブ91が開弁するまでの間、第2室62の圧力が第1所定圧力値P1より小さいときには、ピストンロッド51の縮み方向の移動速度は小さく、受圧は小さいため、伸縮部材180の体積は、ほぼ変化しない。これにより、伸縮部材180の体積減少に起因する第2室62の空間増大は発生せず、空間増大による減衰力の低下を避けられる。第2室62の圧力が第2所定圧力値P2に達してディスクバルブ91の開弁後、第2室62内の加圧された油液Lがボデーバルブ70のディスクバルブ91を開いてリザーバ室18内に流入する。
ここで、図4に示すように、第2室62の圧力が大きくなり、第1所定圧力値P1に達すると伸縮部材180の体積変化も大きくなる。これにより、図5に示すように、第2室62の圧力が第1所定圧力値P1以上になると、伸縮部材180の体積変化により第2室62の空間が増大され、より平滑な減衰力を得られる。また、ディスクバルブ91の開弁より、流れの面積が大きくなり、流れが安定になる。なお、その時、蓄圧機構185がなければ、油液Lがディスクバルブ91に力を与え、ディスクバルブ91の共振を引き起こし、油液Lの脈動を発生させる。この脈動は流れの安定状態でディスクバルブ91の共振により発生するため、周波数は低く、振幅は大きい。蓄圧機構185が設けられていることにより、伸縮部材180は油液の脈動に応じて圧縮と拡張が作動し、油液の脈動を吸収する。これにより、コトコト音を低減することができる。
第1実施形態では、対策が必要なコトコト音を低減することができる。また、コトコト音対策不要の場合に減衰力の低下を避けられる。
特許文献1には、コトコト音等の異音を抑制するため、上方室と下方室とにアキュムレータを設けた緩衝器が開示されている。この緩衝器の構造では、アキュムレータの体積が油圧の変化に応じて増減され、油圧脈動を平滑できるが、圧力が小さいときも動作するため、減衰力が低下する可能性がある。
これに対して、第1実施形態の緩衝器11は、第2室62に設けられ、第2室62と連通路148a,155a,156a,157a,165a,167aを介して連通可能な隔離室143と、隔離室143内に設けられ、第2室62の圧力により伸縮可能であって、第2室62の圧力が第1所定圧力値P1より小さいときは連通路155a,165aと隔離室143との連通を遮断する伸縮部材180とを有している。このように、第2室62の圧力が第1所定圧力値P1より小さいときは伸縮部材180が連通路155a,165aと隔離室143との連通を遮断するため、第2室62の圧力が第1所定圧力値P1より小さいときは減衰力の低下を抑制し、第2室62の圧力が第1所定圧力値P1以上となる必要なときだけ、圧力の脈動を低減してコトコト音と呼ばれる異音の発生を抑制することができる。したがって、減衰力の低下を抑制しつつ異音の発生を抑制することができる。
また、第1減衰力発生機構95は、第2室62とリザーバ室18とを常時連通させるオリフィス通路93と、上流側となる第2室62の圧力が、第1所定圧力値P1より大きい第2所定圧力値P2に達したときに開弁するバルブ機構103と、を有し、バルブ機構103の開弁前に、伸縮部材180が、連通路155a,165aと隔離室143との連通の遮断を解除する。よって、減衰力の低下を効果的に抑制しつつ異音の発生を抑制することができる。
また、隔離室143は、円筒状の胴部140と、胴部140の軸方向両側の円板状の第1蓋部141および第2蓋部142とを有するケース112内に形成されている。そして、第1蓋部141には、外周縁部と中心軸線との間の隔離室143側に外周縁部と同心円状の第1凹部154が形成され、第2蓋部142には、外周縁部と中心軸線との間の隔離室143側に外周縁部と同心円状の第2凹部164が形成されている。加えて、第1凹部154に連通路155aを形成する第1貫通孔155が設けられ、第2凹部164に連通路165aを形成する第2貫通孔165が設けられている。よって、第1凹部154および第2凹部164で伸縮部材180を案内して伸縮部材180で第1貫通孔155および第2貫通孔165を安定的に閉塞することができる。
また、伸縮部材180は、第1蓋部141に対向する円板状の第1ダイヤフラム181と、第2蓋部142に対向する円板状の第2ダイヤフラム182とを有している。そして、第1ダイヤフラム181には、外周縁部と中心軸線との間の第1蓋部141側に外周縁部と同心円状の第1凸部193が形成され、第2ダイヤフラム182には、外周縁部と中心軸線との間の第2蓋部142側に外周縁部と同心円状の第2凸部203が形成されている。加えて、第1凸部193は第1凹部154に当接して第1貫通孔155を閉塞し、第2凸部203は第2凹部164に当接して第2貫通孔165を閉塞する。よって、第1凹部154および第2凹部164で伸縮部材180の第1凸部193および第2凸部203を案内することができ、第1凸部193および第2凸部203で第1貫通孔155および第2貫通孔165を安定的に閉塞することができる。
また、第1凸部193と第1凹部154との曲率が同等であって、第2凸部203と第2凹部164との曲率が同等である。このため、第1凸部193および第2凸部203で第1貫通孔155および第2貫通孔165をさらに安定的に閉塞することができる。
また、伸縮部材180は、円板状の第1ダイヤフラム181と円板状の第2ダイヤフラム182とがそれぞれの外周縁部で溶接より固定されて内側に閉塞空間183を形成する。このため、第1ダイヤフラム181と第2ダイヤフラム182とを一つの伸縮部材180に設けることができ、部品点数を低減することができる。
また、隔離室143を形成するケース112は、通路81を有してシリンダ15に固定されるバルブボディ25と第1減衰力発生機構95と含むボデーバルブ70に設けられている。このため、ボデーバルブ70と一体とすることができる。よって、緩衝器11の組み立て工程の工数を低減することができる。
また、伸縮部材180は、第1ダイヤフラム181および第2ダイヤフラム182の剛性等を同等にすることで、第1凸部193が第1貫通孔155内の連通路155aと隔離室143との遮断を解除する第2室62の圧力と、第2凸部203が第2貫通孔165内の連通路165aと隔離室143との遮断を解除する第2室62の圧力とを同等にすることができる。ここで、第1ダイヤフラム181および第2ダイヤフラム182の剛性等を異ならせることで、第1凸部193が第1貫通孔155内の連通路155aと隔離室143との遮断を解除する第2室62の圧力と、第2凸部203が第2貫通孔165内の連通路165aと隔離室143との遮断を解除する第2室62の圧力とを異ならせることも可能である。
[第2実施形態]
本発明に係る第2実施形態を主に図6に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第2実施形態の緩衝器11Aでは、第1実施形態のボデーバルブ70にかえて、これとは一部異なるボデーバルブ70Aが設けられている。ボデーバルブ70Aには、第1実施形態の蓄圧機構185にかえて、これとは一部異なる蓄圧機構185Aが設けられている。蓄圧機構185Aは、第1実施形態と同様のケース112の隔離室143内に、第1実施形態の一つの伸縮部材180にかえて複数、具体的には二つの伸縮部材180A,180Bが設けられている。伸縮部材180Aは、隔離室143内における第1蓋部141側に、伸縮部材180Bは、隔離室143内における第2蓋部142側に、それぞれ設けられている。二つの伸縮部材180A,180Bは、それぞれの体積変形率が伸縮部材180とは異なっている。また、二つの伸縮部材180A,180Bは、互いに異なる体積変形率に設定されている。
伸縮部材180Aは、第1蓋部141に対向する円板状の第1ダイヤフラム181Aと、伸縮部材180Bに対向する円板状の第2ダイヤフラム182Aとを有している。伸縮部材180Aは、これら第1ダイヤフラム181Aと第2ダイヤフラム182Aとがそれぞれの外周縁部において溶接より固定されており、これらの内側に閉塞空間183Aを形成している。伸縮部材180A内の閉塞空間183Aは、密封されており、大気圧以上の所定の圧力値に維持されている。
第1ダイヤフラム181Aには、その径方向外側の外周縁部と中心軸線との間に外周縁部と同心状をなして円環状の第1凸部193Aが形成されている。第1凸部193Aは、第1ダイヤフラム181Aにおける、第1凸部193Aよりも径方向外側の部分および第1凸部193Aよりも径方向内側の部分よりも第2ダイヤフラム182Aとは反対側に突出している。第1ダイヤフラム181Aは、径方向外側の外周縁部から中心軸線に向かった位置に外周縁部と同心円に形成された第1凸部193Aを有する波形形状となっている。
第2ダイヤフラム182Aには、その径方向外側の外周縁部と中心軸線との間に外周縁部と同心状をなして円環状の第2凸部203Aが形成されている。第2凸部203Aは、第2ダイヤフラム182Aにおける、第2凸部203Aよりも径方向外側の部分および第2凸部203Aよりも径方向内側の部分よりも第1ダイヤフラム181Aとは反対側に突出している。第2ダイヤフラム182Aは、径方向外側の外周縁部から中心軸線に向かった位置に外周縁部と同心円に形成された第2凸部203Aを有する波形形状となっている。
第1凸部193Aおよび第2凸部203Aは、伸縮部材180Aの中心軸線を基準に同心状、かつ同形状で軸方向に反対向きに形成されている。第1凸部193Aおよび第2凸部203Aは伸縮部材180Aの径方向において第1凹部154および第2凹部164と同径である。
第1凸部193Aは先端側の当接面部193Aaにおいて第1凹部154の底側の当接面部154aに面接触で当接する。これにより、第1凸部193Aは第1貫通孔155を閉塞し第1貫通孔155内の連通路155aを閉塞する。互いに当接する当接面部193Aaと当接面部154aとは同等の曲率となっている。言い換えれば、第1凸部193Aと第1凹部154とは、少なくとも当接部分の曲率が同等である。
第2凸部203Aは伸縮部材180Bに当接する。
伸縮部材180Bは、伸縮部材180Aに対向する円板状の第1ダイヤフラム181Bと、第2蓋部142に対向する円板状の第2ダイヤフラム182Bとを有している。伸縮部材180Bは、これら第1ダイヤフラム181Bと第2ダイヤフラム182Bとがそれぞれの外周縁部において溶接より固定されており、これらの内側に閉塞空間183Bを形成している。伸縮部材180B内の閉塞空間183Bは、密封されており、大気圧以上の所定の圧力値に維持されている。
第1ダイヤフラム181Bには、その径方向外側の外周縁部と中心軸線との間に外周縁部と同心状をなして円環状の第1凸部193Bが形成されている。第1凸部193Bは、第1ダイヤフラム181Bにおける、第1凸部193Bよりも径方向外側の部分および第1凸部193Bよりも径方向内側の部分よりも第2ダイヤフラム182Bとは反対側に突出している。第1ダイヤフラム181Bは、径方向外側の外周縁部から中心軸線に向かった位置に外周縁部と同心円に形成された第1凸部193Bを有する波形形状となっている。
第2ダイヤフラム182Bには、その径方向外側の外周縁部と中心軸線との間に外周縁部と同心状をなして円環状の第2凸部203Bが形成されている。第2凸部203Bは、第2ダイヤフラム182Bにおける、第2凸部203Bよりも径方向外側の部分および第2凸部203Bよりも径方向内側の部分よりも第1ダイヤフラム181Bとは反対側に突出している。第2ダイヤフラム182Bは、径方向外側の外周縁部から中心軸線に向かった位置に外周縁部と同心円に形成された第2凸部203Bを有する波形形状となっている。
第1凸部193Bおよび第2凸部203Bは、伸縮部材180Bの中心軸線を基準に同心状かつ同形状で軸方向に反対向きに形成されている。第1凸部193Bおよび第2凸部203Bは伸縮部材180Bの径方向において第1凹部154および第2凹部164と同径である。
第1凸部193Bは、伸縮部材180Aの第2凸部203Aに当接する。
第2凸部203Bは先端側の当接面部203Baにおいて第2凹部164の底側の当接面部164aに面接触で当接する。これにより、第2凸部203Bは第2貫通孔165を閉塞し第2貫通孔165内の連通路165aを閉塞する。互いに当接する当接面部203Baと当接面部164aとは同等の曲率となっている。言い換えれば、第2凸部203Bと第2凹部164とは、少なくとも当接部分の曲率が同等である。
伸縮部材180A,180Bは、伸縮部材180Aの第1凸部193Aとケース112の第1凹部154とが面接触で当接して全ての第1貫通孔155を閉塞すると同時に、伸縮部材180Bの第2凸部203Bとケース112の第2凹部164とが面接触で当接して全ての第2貫通孔165を閉塞するようになっている。伸縮部材180A,180Bは、第2室62の圧力により伸縮可能である。そして、伸縮部材180A,180Bは、第2室62の圧力が第1所定圧力値P1より小さいときは、伸縮部材180Aの第1凸部193Aとケース112の第1凹部154とが面接触で当接すると同時に、伸縮部材180Bの第2凸部203Bとケース112の第2凹部164とが面接触で当接して、全ての第1貫通孔155内の連通路155aおよび全ての第2貫通孔165内の連通路165aと、隔離室143との連通を遮断する。
第1凸部193Aと第1凹部154とが面接触で当接した際に、第1ダイヤフラム181Aは変形しないようにして第1凸部193Aに第1凹部154に対する一定の接触力を与える。第2凸部203Bと第2凹部164とが面接触で当接した際に、第2ダイヤフラム182Bは変形しないようにして第2凸部203Bに第2凹部164に対する一定の接触力を与える。当接面部193Aaが第1貫通孔155を完全に封止するように第1貫通孔155の直径が設定されている。当接面部203Baが第2貫通孔165を完全に封止するように第2貫通孔165の直径が設定されている。
ここで、上記した第1減衰力発生機構95のバルブ機構94は、上流側となる第2室62の圧力が第2所定圧力値P2に達したときに開弁することになるが、伸縮部材180A,180Bは、このバルブ機構94の開弁前に、第2室62の圧力が第1所定圧力値P1に達すると、伸縮部材180Aの第1凸部193Aがケース112の第1凹部154から離間して第1貫通孔155内の連通路155aと隔離室143との遮断を解除すると共に、伸縮部材180Bの第2凸部203Bがケース112の第2凹部164から離間して第2貫通孔165内の連通路165aと隔離室143との遮断を解除する。これにより、第2室62と隔離室143とが連通路155a,165aを介して連通する。
隔離室143を含む蓄圧機構185Aはボデーバルブ70Aに設けられている。
伸縮部材180Aと伸縮部材180Bとは、体積変形率が異なって設定されている。例えば、伸縮部材180Aと伸縮部材180Bとの材料成分、肉厚、形状の調整で異なる体積変形率を実現する。伸縮部材180Aおよび伸縮部材180Bの体積変形率を異ならせることで、伸縮部材180Aの第1凸部193Aが第1貫通孔155内の連通路155aと隔離室143との遮断を解除する第2室62の圧力と、伸縮部材180Bの第2凸部203Bが第2貫通孔165内の連通路165aと隔離室143との遮断を解除する第2室62の圧力とを異ならせることができる。
この第2実施形態においても、第1実施形態とほぼ同じ効果を得ることができるが、これ以外の異なった効果として、第1実施形態に比べて、伸縮部材180Aと伸縮部材180Bとの体積変形率が異なるので、対策できる油圧脈動の周波範囲を拡大でき、幅広く周波数のコトコト音を低減することができる。
なお、第1実施形態における蓄圧機構185および第2実施形態における蓄圧機構185Aは、いずれも第2室62に設けられる場合を例にとり説明したが、第1室61に設けても良い。その場合、隔離室143はケース112の連通路155a,165aを介して第1室61と連通可能となる。また、伸縮部材180,180A,180Bは、第1室61の圧力により伸縮可能であって、第1室61の圧力が第1所定圧力値P1より小さいときは155a,165aと隔離室143との連通を遮断する。蓄圧機構185を第1室61および第2室62の両方に設けても良く、蓄圧機構185Aを第1室61および第2室62の両方に設けても良い。さらには、蓄圧機構185,185Aの一方を第1室61に、他方を第2室62に設けても良い。
以上に述べた実施形態の第1の態様は、作動流体が封入されるシリンダと、該シリンダと連通可能に設けられたリザーバ室と、前記シリンダ内に設けられ、該シリンダ内を第1室および第2室に分けるピストンと、一端側が前記ピストンに連結されると共に他端側が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンの移動により作動流体が前記第2室から前記リザーバ室に流れ出す第1通路と、前記第1通路に設けられて減衰力を発生させる第1減衰力発生機構と、前記第1室および前記第2室のうちの一方の室に設けられ、該一方の室と連通路を介して連通可能な隔離室と、該隔離室内に設けられ、前記一方の室の圧力により伸縮可能であって、前記一方の室の圧力が第1所定圧力値P1より小さいときは前記連通路と前記隔離室との連通を遮断する伸縮部材と、を有する。これにより、減衰力の低下を抑制しつつ異音の発生を抑制することができる。
第2の態様は、第1の態様において、前記第1減衰力発生機構は、前記第2室と前記リザーバ室とを常時連通させるオリフィス通路と、上流側となる前記第2室の圧力が第2所定圧力値P2に達したときに開弁するバルブ機構と、を有し、前記バルブ機構の開弁前に、前記伸縮部材は、前記連通路と前記隔離室との遮断を解除する。
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記隔離室は、円筒状の胴部と、該胴部の軸方向両側の円板状の第1蓋部および第2蓋部とを有するケース内に形成され、前記第1蓋部には、外周縁部と中心軸線との間の前記隔離室側に外周縁部と同心円状の第1凹部が形成され、前記第2蓋部には、外周縁部と中心軸線との間の前記隔離室側に外周縁部と同心円状の第2凹部が形成されており、前記第1凹部に前記連通路を形成する第1貫通孔が設けられ、前記第2凹部に前記連通路を形成する第2貫通孔が設けられている。
第4の態様は、第3の態様において、前記伸縮部材は、前記第1蓋部に対向する円板状の第1ダイヤフラムと、前記第2蓋部に対向する円板状の第2ダイヤフラムとを有し、前記第1ダイヤフラムには、外周縁部と中心軸線との間の前記第1蓋部側に外周縁部と同心円状の第1凸部が形成され、前記第2ダイヤフラムには、外周縁部と中心軸線との間の前記第2蓋部側に外周縁部と同心円状の第2凸部が形成され、前記第1凸部は前記第1凹部に当接して前記第1貫通孔を閉塞し、前記第2凸部は前記第2凹部に当接して前記第2貫通孔を閉塞する。
第5の態様は、第4の態様において、前記第1凸部と前記第1凹部との曲率が同等であって、前記第2凸部と前記第2凹部との曲率が同等である。
第6の態様は、第1から第5のいずれか一の態様において、前記伸縮部材は、円板状の第1ダイヤフラムと円板状の第2ダイヤフラムとがそれぞれの外周縁部で溶接より固定されて内側に閉塞空間を形成する。
第7の態様は、第6の態様において、前記隔離室には、前記伸縮部材が複数設けられている。
第8の態様は、第1から第7のいずれか一の態様において、前記隔離室は、前記第1通路を有して前記シリンダに固定されるバルブボディと前記第1減衰力発生機構と含むボデーバルブに設けられている。