JP7465163B2 - 緩衝器および緩衝器の組み立て方法 - Google Patents

緩衝器および緩衝器の組み立て方法 Download PDF

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Description

本発明は、緩衝器および緩衝器の組み立て方法に関する。
緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるピストンロッドと、シリンダ内に摺動自在に挿入されるとともにピストンロッドに連結されるピストンと、ピストンでシリンダ内に区画されるとともに作動油が充填される伸側室と圧側室と、シリンダの外周を覆ってシリンダとの間に作動油を貯留するリザーバを形成する外筒と、伸側室からリザーバへ向かう作動油の流れのみを許容して通過する作動油の流れに抵抗を与える減衰通路と、ピストンに設けられて圧側室から伸側室へ向かう作動油の流れのみを許容する整流通路と、リザーバから圧側室へ向かう作動油の流れのみを許容する吸込通路とを備えている。
このように構成された緩衝器は、伸縮作動時に作動油がリザーバ、圧側室、伸側室を順番に巡ってリザーバへ到達するユニフロー型に設定されており、シリンダ内からリザーバへ排出される作動油の流れに減衰通路にて抵抗を与えて、伸縮を妨げる減衰力を発生する。
緩衝器は、ピストンで区画される伸側室の圧力と圧側室の圧力とがピストンに作用することでピストンの移動を妨げる減衰力を発生するが、ユニフロー型に設定される場合には収縮作動時に減衰力を発生するためには伸側室と圧側室とに圧力差を生じさせる必要がある。緩衝器がバイフロー型に設定されている場合には、緩衝器は、減衰力を発生するために伸縮作動時の双方或いは伸長作動時に伸側室と圧側室とに圧力差を生じさせる必要がある。
よって、作動油がピストンに設けられたポート以外にシリンダとピストンとの間を通過してしまうと、伸側室の圧力と圧側室の圧力との差が設計通りにならず、緩衝器は、狙い通りに減衰力を発生できなくなってしまう。
そのため、緩衝器では、合成樹脂等で環状に形成されてシリンダの内周に摺接するとともにピストンの外周に設けられた環状溝に装着されるシール部材を備えている。このシール部材は、シリンダとピストンとの間をシールして、作動油がピストンに設けられたポート以外にシリンダとピストンとの間を通過しないようにしている(たとえば、特許文献1参照)。
特開2015-224780号公報
緩衝器は、たとえば、鉄道車両や構造物を制振対象として、鉄道車両の車体と台車との間や隣り合う鉄道車両同士の車体間、弾性支承される構造物と地盤との間や構造物の柱梁間等に設置されて制振対象の振動を減衰する目的で使用される。
緩衝器の制振対象が前述したように鉄道車両や構造物といった重量物であると、緩衝器には制振対象の振動を抑制するために大きな減衰力の発生が要望される。このような要望を満たすべく緩衝器の減衰力を大きくするには、伸側室の圧力と圧側室の圧力との差を大きくする必要があるため、ピストンの外周のシール部材は、大きな圧力に耐えうる強度が要求される。ところが、シール部材の強度を高めると、シール部材は、高い弾性係数を示して伸びにくくなる。
ここで、ピストンの外周の環状溝にシール部材を装着するには、シール部材を拡径してピストンをシール部材内に挿入した後、シール部材をピストンの外周に沿って環状溝に対向する位置まで移動させる。すると、シール部材は自身が発揮する復元力によって縮径してピストンの環状溝に収容される。
このようなシール部材のピストンへの装着手順を採用する場合、前述のように、シール部材の強度を高めてシール部材が伸びにくくなると、シール部材内へのピストンの挿入が難しくなる。また、緩衝器のメンテナンス時には、ピストンからシール部材を取り外す作業が要求されるが、シール部材が伸びにくくなると、シール部材の取り外しも難しくなる。つまり、シール部材を高強度化すると、シール部材のピストンへの着脱が難しくなって、緩衝器の組み立て性および分解性が悪化する。
また、シール部材をピストンの環状溝に無理やり装着しようとすると、シール部材が傷ついてしまって、シール性能が劣化する可能性がある。
そこで、本発明は、シール部材の高強度化を図ってもシール部材のピストンへの着脱を容易にできる緩衝器および緩衝器の組み立て方法の提供を目的としている。
前記した課題を解決するために、本発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、シリンダ内に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、ピストンの外周に装着されてシリンダの内周に摺接する環状のシール部材とを備え、ピストンは、第1ピストン分割体と第1ピストン分割体に対向する第2ピストン分割体とを備え、第1ピストン分割体と第2ピストン分割体の一方または両方は、第1ピストン分割体と第2ピストン分割体とが対向するの分割面側の外周に形成される設けられる環状凹部を有し、第1ピストン分割体は、反分割面側から分割面側へ通じる第1ポートを有し、第2ピストン分割体は、反分割面側から分割面側へ通じる第2ポートを有し、第1ピストン分割体と第2ピストン分割体の一方は、分割面側に周方向に沿って形成される第1ポートと第2ポートとの双方に連通する環状の開口溝を有し、シール部材は、環状凹部に収容されている。
このように構成された緩衝器では、シール部材をピストンに装着する場合、予め第1ピストン分割体或いは第2ピストン分割体の環状凹部内に何ら負荷をかけずにシール部材を収容した後、第1ピストン分割体と第2ピストン分割体とを重ねるだけでピストンにシール部材を装着できる。また、このように構成された緩衝器では、シール部材をピストンから取り外す場合、第1ピストン分割体と第2ピストン分割体とを分離した後、シール部材を第1ピストン分割体或いは第2ピストン分割体の環状凹部内から簡単に取り外せる。
また、このように構成された緩衝器によれば、第1ピストン分割体と第2ピストン分割体とを重ねる際に周方向にて位置合わせしなくとも第1ポートと第2ポートとが開口溝を通じて連通されるので、ピストンに通路を設ける場合に緩衝器の組み立てが容易となる。
さらに、本発明の緩衝器の組み立て方法は、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、シリンダ内に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、ピストンの外周に装着されてシリンダの内周に摺接する環状のシール部材とを備えた緩衝器の組み立て方法であって、ロッドの先端が小径として形成されて外周にピストンが装着されるピストン装着部とピストン装着部の終端に連なる段部とを備え、ピストンが第1ピストン分割体と第1ピストン分割体に対向する第2ピストン分割体とを備え、第1ピストン分割体と第2ピストン分割体の一方または両方が第1ピストン分割体と第2ピストン分割体とが対向する分割面側の外周に形成される環状凹部を備え、第1ピストン分割体は、反分割面側から分割面側へ通じる第1ポートを備え、第2ピストン分割体は、反分割面側から分割面側へ通じる第2ポートを備え、第1ピストン分割体と第2ピストン分割体の一方は、分割面側に周方向に沿って形成される第1ポートと第2ポートとの双方に連通する環状の開口溝を備えており、第1ピストン分割体をピストン装着部の外周に嵌合して第1ピストン分割体を段部に当接させる工程と、第1ピストン分割体または第2ピストン分割体の環状凹部にシール部材を収容する工程と、収容する工程の後に第2ピストン分割体をピストン装着部の外周に嵌合して第1ピストン分割体と第2ピストン分割体とを重ねた状態でピストン装着部に固定する工程とを含んでいる。
このように構成された緩衝器の組み立て方法では、シール部材をピストンに装着する場合、予め第1ピストン分割体或いは第2ピストン分割体の環状凹部内に何ら負荷をかけずにシール部材を収容でき、第1ピストン分割体と第2ピストン分割体とを重ねるだけでピストンにシール部材を装着できので、緩衝器の組み立てが容易となる。さらに、このように構成された緩衝器の組み立て方法では、第1ピストン分割体と第2ピストン分割体とを重ねる際に周方向にて位置合わせしなくとも第1ポートと第2ポートとが開口溝を通じて連通されるので、ピストンに通路を設ける場合に緩衝器の組み立てが容易となる。
以上より、本発明の緩衝器および緩衝器の組み立て方法によれば、シール部材の高強度化を図ってもシール部材のピストンへの着脱を容易にできる。
一実施の形態における緩衝器の縦断面図である。 一実施の形態における緩衝器のピストン部分の拡大断面図である。 一実施の形態における緩衝器の第2ピストン分割体の平面図である。 一実施の形態の第1変形例における緩衝器のピストン部分の拡大断面図である。 一実施の形態の第2変形例における緩衝器のピストン部分の拡大断面図である。
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に移動自在に挿入されるロッド2と、シリンダ1内に挿入されてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、ピストン3の外周に装着されてシリンダ1の内周に摺接するシール部材4とを備えている。そして、この緩衝器Dの場合、たとえば、図示しない鉄道車両における車体と台車との間に介装されて使用され、車体および台車の振動を抑制する。
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。図1に示すように、シリンダ1の図1中左端には、環状のロッドガイド10が嵌合されており、シリンダ1の図1中右端はバルブケース11で閉塞されている。また、シリンダ1は、バルブケース11とともに図1中右端がボトムキャップ13で閉塞された外筒12内に収容されている。シリンダ1と外筒12との間には、環状であって作動油等の流体が気体とともに貯留されるリザーバRが形成されている。
外筒12の図1中左端の開口部は、外筒12に取付けられるロッドガイド10によって閉塞されている。そして、シリンダ1とバルブケース11とは、外筒12に固定されるロッドガイド10とボトムキャップ13とで挟持されて外筒12内に収容されるとともに外筒12に対して固定されている。
ロッド2は、ロッドガイド10内に摺動自在に挿通されてシリンダ1内に挿入されており、ロッドガイド10によって軸方向への移動が案内される。ロッド2は、図1中右端となる先端に外径が小径であって外周にピストン3が装着されるピストン装着部2aと、ピストン装着部2aの先端外周に設けられた螺子部2bと、ピストン装着部2aとピストン装着部2aの図1中左方側の終端に連なる第1段部2c(図2参照)と、第1段部2cよりも図1中左方側に設けられる第2段部2d(図2参照)および第3段部2e(図2参照)とを備えている。このように、本実施の形態の緩衝器Dでは、ロッド2は、先端側にて外径が3段階に小径となる形状となっている。
ピストン3は、環状であってロッド2のピストン装着部2aに装着されてシリンダ1内に移動自在に挿入されており、シリンダ1内を作動油等の流体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画している。なお、流体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体の使用もできる。また、流体を液体に代えて気体としてもよい。
ピストン3は、本実施の形態では、軸方向に分割される第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とを備えて構成されている。第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とは、ともに環状であって、軸方向に重ねると一体となってピストン3を形成する。
第1ピストン分割体31は、円環状であって、図2中右端側となる分割面A1側の外周に周方向に沿って形成されて第2ピストン分割体32の図2中左端となる分割面A2側端に対向する環状凹部31aと、図2中左端となる反分割面B1側端に周方向に沿って形成される環状の溝31bと、反分割面B1側端から軸方向に突出して溝31bを取り囲む環状弁座31cと、分割面A1に開口して溝31bに通じる複数の第1ポート31dとを備えている。
第2ピストン分割体32は、図2および図3に示すように、円環状であって、外周に周方向に沿って形成される環状溝32aと、図2中左端となる分割面A2側端に周方向に沿って形成される環状の溝で形成される開口溝32bと、反分割面B2に開口して開口溝32bに通じる複数の第2ポート32cとを備えており、内周に符示しない螺子溝を有してロッド2の螺子部2bに螺着されている。第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とは、ともに外径が同一であって、また、ロッド2のピストン装着部2aの外周に装着可能な内径を備えている。そして、第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32との中心を合わせて第2ピストン分割体32に第1ピストン分割体31を軸方向に重ねると、第1ピストン分割体31の各第1ポート31dと第2ピストン分割体32の開口溝32bとは、互いに対向するように配置されている。
このように構成された第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とは、互いに分割面A1,A2同士を対向させて軸方向に重ねられて使用される。そして、第1ピストン分割体31の内周にロッド2のピストン装着部2aを挿入した後、第2ピストン分割体32をロッド2のピストン装着部2aの外周に形成された螺子部2bに螺着する。すると、第1ピストン分割体31がロッド2の第1段部2cと第2ピストン分割体32とで挟持されてロッド2に固定される。さらに、第2ピストン分割体32よりも螺子部2bの先端側には、ピストンナット15が螺着される。このように、ピストンナット15をロッド2の螺子部2bに螺着すると、第2ピストン分割体32とピストンナット15とでダブルナットを構成して、第2ピストン分割体32の弛みが防止されて、ロッド2からのピストン3の脱落が防止される。なお、第2ピストン分割体32の内周に螺子溝を設けずにピストンナット15のみによって、ピストン3をロッド2に固定するようにしてもよい。このようにロッド2に固定された第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とは、ロッド2のピストン装着部2aの外周にて一体的に保持され、協働してピストン3として機能する。
また、第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とが重ねられると第1ポート31dと開口溝32bとが対向して、第1ポート31dと第2ポート32cとは、互いに連通されて伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路3aを形成する。なお、第1ポート31dと第2ポート32cの設置数は、任意に設定できる。
さらに、第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とが重ねられると、第1ピストン分割体31の外周に設けられた環状凹部31aは、第2ピストン分割体32の分割面A2に対向して、ピストン3の外周を取り囲む環状溝を形成する。
この環状凹部31aで形成される環状溝内には、円環状であってシリンダ1とピストン3との間をシールするシール部材4が収容される。シール部材4は、シリンダ1の内周面に摺接するシールリング4aと、シールリング4aの内周側に配置されるOリング4bとを備えて構成されている。
シールリング4aは、合成樹脂製であって、シリンダ1の内周面に摺接しており、シリンダ1との間を作動油が通過するのを阻止するとともに、ピストン3の滑らかな移動を妨げないよう自己潤滑性を備えている。また、Oリング4bは、シールリング4aの内周面とピストン3の環状凹部31aの底面とに密着してシールリング4aとピストン3との間を閉鎖して環状凹部31a内を作動油が通過するのを阻止する。このように、本実施の形態の緩衝器Dでは、シール部材4は、シールリング4aとOリング4bとで構成されているが、単一部品で構成されるものであってもよい。
シール部材4をピストン3の外周に装着するには、第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とを重ねて一体化する前に、第1ピストン分割体31の分割面A1側から環状凹部31a内にシール部材4を収容すればよい。具体的には、第1ピストン分割体31、第2ピストン分割体32およびシール部材4を組み立てるには以下の工程で組み立てればよい。まず、第1ピストン分割体31をロッド2のピストン装着部2aの外周に嵌合して第1段部(段部)2cに当接させる工程を行う。つづいて、第1ピストン分割体31の環状凹部31aにシール部材4を収容する工程を行う。そして、シール部材4を収容する工程の後に、第2ピストン分割体32をピストン装着部2aの外周に嵌合して第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とを重ねた状態としてピストン装着部2aの螺子部2bに螺着して第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とをロッド2に固定する工程を行う。これらの一連の工程を行えば、第1ピストン分割体31、第2ピストン分割体32およびシール部材4は、ロッド2に固定された状態で組み立てられる。
また、環状凹部31aは、第1ピストン分割体31の分割面A1側が開放されているので、前記収容する工程において、環状凹部31aへのシール部材4を装着にはシール部材4を拡径させる必要はなく、何らシール部材4へ負荷をかけずに環状凹部31aへシール部材4を装着できる。
このように、第1ピストン分割体31へシール部材4を組み付けした後、第1ピストン分割体31を第2ピストン分割体32へ重ねれば、ピストン3を形成できる。
なお、第2ピストン分割体32の外周に設けられた環状溝32a内には、シリンダ1の内周に摺接してピストン3の軸方向の移動を案内する環状のピストンリング5が装着される。
このように構成されたピストン3は、前述した通り、ロッド2のピストン装着部2aの外周に装着される。具体的には、ロッド2の先端には、コイルばね16、環状板で形成された環状弁体17およびピストン3が順に組み付けられる。ピストン3は、前述した通り、第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とが互いの分割面A1,A2同士を密着させた状態でロッド2のピストン装着部2aの外周に固定される。
また、環状弁体17は、環状であって外径が第1ピストン分割体31の環状弁座31cよりも大径とされており、ロッド2の第1段部2cと第2段部2dとの間の外周に軸方向移動自在に嵌合されている。そして、環状弁体17は、ピストン3に対して軸方向で遠近可能であって、ピストン3に当接して環状弁座31cに着座した状態では通路3aを閉塞し、ピストン3から離間すると通路3aを開放する。環状弁体17は、第2段部2dに当接すると、それ以上は、図1中左方への移動が規制され、ピストン3から最大に離間するリフト量が第2段部2dの設置位置によって設定されている。コイルばね16は、第3段部2eと環状弁体17との間に介装されており、環状弁体17をピストン3に当接させるように付勢している。
よって、本実施の緩衝器Dでは、ピストン3、コイルばね16および環状弁体17は、チェックバルブを構成し、環状弁体17が環状弁座31cから離間して通路3aを開放すると圧側室R2から伸側室R1へ向かう作動油の流れのみを許容し、伸側室R1から圧側室R2へ向かう方向の作動油の流れに対しては環状弁体17が環状弁座31cに着座して通路3aを閉塞する。
つづいて、ロッドガイド10には、伸側室R1とリザーバRとを連通する排出通路10aが設けられている。排出通路10aには、伸側室R1からリザーバRへ向かう作動油の流れのみを許容しつつ通過する作動油の流れに抵抗を与えるとともに、その逆向きの流れを阻止する減衰バルブ10bが設けられており、排出通路10aは、伸側室R1からリザーバRへ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。
また、バルブケース11には、リザーバRと圧側室R2を連通する吸込通路11aが設けられている。吸込通路11aには、リザーバRから圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容して、その逆向きの流れを阻止するチェックバルブ11bが設けられており、吸込通路11aは、リザーバRから圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。
緩衝器Dは、以上のように構成され、以下に、緩衝器Dの作動について説明する。まず、シリンダ1に対してロッド2が図1中左方へ移動して緩衝器Dが伸長作動する場合の作動について説明する。緩衝器Dが伸長作動すると、ピストン3がシリンダ1に対して図1中左方へ移動するので、伸側室R1が圧縮され圧側室R2が拡大される。
この場合、環状弁体17が環状弁座31cに着座してピストン3に設けられている通路3aが閉塞されるため、伸側室R1内の作動油は、排出通路10aの減衰バルブ10bを通過してリザーバRへ排出される。このような作動油の移動に対して減衰バルブ10bによって抵抗が与えられるため、伸側室R1内の圧力は、上昇してリザーバR内の圧力よりも高くなる。また、圧側室R2は、ピストン3の移動によって容積が拡大して作動油が不足するが、この不足分の作動油は、チェックバルブ11bが開弁して吸込通路11aを介してリザーバRから圧側室R2に供給される。よって、圧側室R2内の圧力は、ほぼリザーバR内の圧力と等しくなる。
このように緩衝器Dの伸長作動時には、ピストン3の伸側室R1側面に作用する伸側室R1の圧力がピストン3の圧側室R2側面に作用する圧側室R2内の圧力よりも高くなって、緩衝器Dは、伸長作動を妨げる伸側減衰力を発生する。また、シリンダ1内からロッド2が退出する体積分の作動油は、リザーバRから圧側室R2に供給されて、シリンダ1内から退出するロッド2の体積補償がなされる。
つづいて、シリンダ1に対してロッド2が図1中右方へ移動して緩衝器Dが収縮作動する場合の作動について説明する。緩衝器Dが収縮作動すると、ピストン3がシリンダ1に対して図1中右方へ移動するので、圧側室R2が圧縮されるとともに伸側室R1が拡大される。
この場合、環状弁体17が環状弁座31cから離間してピストン3に設けられている通路3aを開放するとともに、チェックバルブ11bが閉じて吸込通路11aを遮断するため、圧側室R2内の作動油は、通路3aを通過して伸側室R1へ移動する。また、緩衝器Dの収縮作動時には、シリンダ1内にロッド2が侵入するため、シリンダ1内でロッド2がシリンダ1内に侵入する体積分の作動油が過剰となる。このシリンダ1内で過剰となる作動油は、排出通路10aの減衰バルブ10bを通過してリザーバRへ排出される。このような作動油の移動に対して減衰バルブ10bによって抵抗が与えられるため、伸側室R1内の圧力は、上昇してリザーバR内の圧力よりも高くなる。また、圧側室R2は、通路3aによって伸側室R1に連通された状態となるので、圧側室R2内の圧力と伸側室R1内の圧力とはほぼ等しくなる。
このように緩衝器Dの収縮作動時には、ピストン3の伸側室R1側面に作用する伸側室R1の圧力とピストン3の圧側室R2側面に作用する圧側室R2内の圧力とがほぼ等しくなるが、ピストン3の伸側室R1内の圧力を受ける受圧面積よりも圧側室R2内の圧力を受ける受圧面積の方が大きいため、緩衝器D、収縮作動を妨げる圧側減衰力を発生する。また、シリンダ1内へロッド2が侵入する体積分の作動油は、シリンダ1内からリザーバRへ排出されて、シリンダ1内へ侵入するロッド2の体積補償がなされる。このように、緩衝器Dは、伸縮作動を呈すると減衰力を発生して、制振対象の振動を減衰させる。
そして、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に移動自在に挿入されるロッド2と、シリンダ1内に挿入されてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、ピストン3の外周に装着されてシリンダ1の内周に摺接する環状のシール部材4とを備え、ピストン3は、第1ピストン分割体31と第1ピストン分割体31に対向する第2ピストン分割体32とを備え、第1ピストン分割体31が第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とが対向するの分割面A1側の外周に形成される環状凹部31aを備え、シール部材4が環状凹部31aに収容されている。
このように構成された緩衝器Dでは、第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とを重ねる前にシール部材4を拡径させずとも環状凹部31aに収容でき、第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とを重ねると、環状凹部31aに第2ピストン分割体32の分割面A2が対向してピストン3の外周に環状溝が形成される。すると、環状凹部31a内に収容されたシール部材4は、ピストン3に対して軸方向へ移動しようとしても、第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とで軸方向に挟まれる格好となって移動できず、環状凹部31aから抜け出ることがない。
そして、本実施の形態の緩衝器Dでは、シール部材4をピストン3に装着する場合、予め第1ピストン分割体31の環状凹部31a内に何ら負荷をかけずにシール部材4を収容した後、第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とを重ねるだけでピストン3にシール部材4を装着できる。また、本実施の形態の緩衝器Dでは、シール部材4をピストン3から取り外す場合、第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とを分離した後、シール部材4を第1ピストン分割体31の環状凹部31a内から簡単に取り外せる。
よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、シール部材4を拡径させるような無理な力を作用させる必要がなく、容易にシール部材4をピストン3の外周に装着できる。したがって、緩衝器Dに大きな減衰力を発生させるためのシリンダ1内の高圧化に伴って、シール部材4の強度を高くした結果、シール部材4の拡径が難しくなっても、シール部材4のピストン3への装着にあたってシール部材4を拡径させる必要はないので、シール部材4をピストン3に容易に着脱できる。したがって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、シール部材4の高強度化を図ってもシール部材4のピストン3への着脱を容易にできるのである。
なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、第1ピストン分割体31の分割面A1側の外周にシール部材4を収容する環状凹部31aを設けているが、図4に示した第1変形例の緩衝器のように、第1ピストン分割体31の環状凹部31aを廃止して第2ピストン分割体32の分割面A2側の外周にシール部材4を収容する環状凹部32dを設けてもよい。このようにしても、第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とを重ねる前にシール部材4を拡径する作業をせずとも第2ピストン分割体32に組み付け可能となるので、シール部材4の高強度化を図ってもシール部材4のピストン3への着脱を容易にできる。
さらに、図5に示した第2変形例の緩衝器のように、第1ピストン分割体31の分割面A1側の外周と第2ピストン分割体32の分割面A2側の外周との双方に互いに軸方向で対向する環状凹部31e,32eを設けて、第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とを重ねた際に、これら環状凹部31e,32eでピストン3の外周にシール部材4を収容する一つの環状溝が形成されるようにしてもよい。このようにしても、第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とを重ねる際にシール部材4を拡径する作業をせずともピストン3の外周に組み付け可能となるので、シール部材4の高強度化を図ってもシール部材4のピストン3への着脱を容易にできる。
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、第1ピストン分割体31が反分割面B1側から分割面A1側へ通じる第1ポート31dを備え、第2ピストン分割体32が反分割面B2側から分割面A2側へ通じる第2ポート32cを備え、第2ピストン分割体32の分割面A2側に周方向に沿って形成される第1ポート31dと第2ポート32cとの双方に連通する環状の開口溝32bを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とを重ねる際に周方向にて位置合わせしなくとも第1ポート31dと第2ポート32cとが開口溝32bを通じて連通されるので、ピストン3に通路3aを設ける場合に緩衝器Dの組み立てが容易となる。開口溝は、第2ピストン分割体32ではなく、第1ピストン分割体31の分割面A1に設けられてもよい。
第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とは、軸方向で重ねて組み合わせられるとピストン3として機能できるとともに、環状凹部31a,31e,32d,32eの分割面A1,A2側が軸方向で開放されている限りにおいて、形状は任意に変更可能であって、分割面A1,A2に凹凸を備えていてもよい。
なお、緩衝器Dは、本実施の形態では、伸縮作動すると、作動油がリザーバR、圧側室R2、伸側室R1を順に経てリザーバRへ一方通行で還流されるユニフロー型の緩衝器とされているが、伸縮作動時に伸側室R1と圧側室R2とで作動油が行き来するバイフロー型の緩衝器とされてもよい。また、排出通路10a、減衰バルブ10bおよび吸込通路11aについては、設置個所を図示した箇所以外にしてもよい。また、緩衝器Dの制振対象は、鉄道車両および構造物に限定されるものではなく、鞍乗車両、自動車、その他の機械等としてもよい。
また、本実施の形態の緩衝器Dの組み立て方法は、シリンダ1と、シリンダ1内に移動自在に挿入されるロッド2と、シリンダ1内に挿入されてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画する環状のピストン3と、ピストン3の外周に装着されてシリンダ1の内周に摺接する環状のシール部材4とを備えた緩衝器Dの組み立て方法であって、ロッド2は、先端を小径として形成されて外周にピストン3が装着されるピストン装着部2aとピストン装着部2aの終端に連なる第1段部(段部)2cとを有し、ピストン3が第1ピストン分割体31と第1ピストン分割体31に軸方向で対向する第2ピストン分割体32とを備え、第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32の一方または両方が第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とが対向する分割面A1,A2側の外周に形成される環状凹部31a(31e,32d,32e)を有しており、第1ピストン分割体31をピストン装着部2aの外周に嵌合して第1ピストン分割体31を第1段部(段部)2cに当接させる工程と、第1ピストン分割体31または第2ピストン分割体32の環状凹部31a(31e,32d,32e)にシール部材4を収容する工程と、収容する工程の後に第2ピストン分割体32をピストン装着部2aの外周に嵌合して第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とを重ねた状態でピストン装着部2aに固定する工程とを含んでいる。このように構成された緩衝器Dの組み立て方法では、シール部材4をピストン3に装着する場合、予め第1ピストン分割体31或いは第2ピストン分割体32の環状凹部31a(31e,32d,32e)内に何ら負荷をかけずにシール部材4を収容でき、第1ピストン分割体31と第2ピストン分割体32とを重ねるだけでピストン3にシール部材4を装着できるので、緩衝器Dの組み立てが容易となる。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
1・・・シリンダ、2・・・ロッド、2a・・・ピストン装着部、2c・・・第1段部(段部)、3・・・ピストン、4・・・シール部材、31・・・第1ピストン分割体、31a,31e,32d,32e・・・環状凹部、31d・・・第1ポート、32・・・第2ピストン分割体、32b・・・開口溝、32c・・・第2ポート、A1・・・第1ピストン分割体の分割面、A2・・・第2ピストン分割体の分割面、B1・・・第1ピストン分割体の反分割面、B2・・・第2ピストン分割体の反分割面、D・・・緩衝器、R・・・リザーバ、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室

Claims (2)

  1. シリンダと、
    前記シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、
    前記シリンダ内に挿入されて前記シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、
    前記ピストンの外周に装着されて前記シリンダの内周に摺接する環状のシール部材とを備え、
    前記ピストンは、第1ピストン分割体と、前記第1ピストン分割体に対向する第2ピストン分割体とを有し、
    前記第1ピストン分割体と前記第2ピストン分割体の一方または両方は、前記第1ピストン分割体と前記第2ピストン分割体とが対向する分割面側の外周に形成される環状凹部を有し、
    前記第1ピストン分割体は、反分割面側から分割面側へ通じる第1ポートを有し、
    前記第2ピストン分割体は、反分割面側から分割面側へ通じる第2ポートを有し、
    前記第1ピストン分割体と前記第2ピストン分割体の一方は、分割面側に周方向に沿って形成される前記第1ポートと前記第2ポートとの双方に連通する環状の開口溝を有し、
    前記シール部材は、前記環状凹部に収容される
    ことを特徴とする緩衝器。
  2. シリンダと、前記シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、前記シリンダ内に挿入されて前記シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画する環状のピストンと、前記ピストンの外周に装着されて前記シリンダの内周に摺接する環状のシール部材とを備えた緩衝器の組み立て方法であって、
    前記ロッドは、先端を小径として形成されて外周に前記ピストンが装着されるピストン装着部と、前記ピストン装着部の終端に連なる段部とを有し、
    前記ピストンが環状の第1ピストン分割体と、前記第1ピストン分割体に対向する環状の第2ピストン分割体とを有し、
    前記第1ピストン分割体と前記第2ピストン分割体の一方または両方は、前記第1ピストン分割体と前記第2ピストン分割体とが対向する分割面側の外周に形成される環状凹部を有し
    前記第1ピストン分割体は、反分割面側から分割面側へ通じる第1ポートを有し、
    前記第2ピストン分割体は、反分割面側から分割面側へ通じる第2ポートを有し、
    前記第1ピストン分割体と前記第2ピストン分割体の一方は、分割面側に周方向に沿って形成される前記第1ポートと前記第2ポートとの双方に連通する環状の開口溝を有しており、
    前記第1ピストン分割体を前記ピストン装着部の外周に嵌合して、前記第1ピストン分割体を前記段部に当接させる工程と、
    前記第1ピストン分割体または前記第2ピストン分割体の前記環状凹部に前記シール部材を収容する工程と、
    前記収容する工程の後に、前記第2ピストン分割体を前記ピストン装着部の外周に嵌合して、前記第1ピストン分割体と第2ピストン分割体とを重ねた状態で前記ピストン装着部に固定する工程とを含む
    ことを特徴とする緩衝器の組み立て方法。
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