以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
図1~図14を参照して、本発明の実施形態に係る船舶VLを説明する。図1は、本実施形態に係る船舶VLの構成を示す図である。
図1に示すように、船舶VLは、経路生成装置1と、位置検出部2と、姿勢検出部3と、障害物検出部4と、操船制御装置5と、推進装置6と、操船機構7とを備える。
経路生成装置1は、船舶VLの経路を生成する。経路生成装置1の詳細は後述する。
位置検出部2は、船舶VLの位置(例えば、地球上の位置)を検出して、船舶VLの位置を示す位置情報を経路生成装置1に出力する。位置検出部2は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)装置であり、衛星からGNSS電波を受信し、測位計算を行うことによって、船舶VLの位置を取得する。
姿勢検出部3は、船舶VLの姿勢(例えば、船首の向き)を検出して、船舶VLの姿勢を示す姿勢情報を船舶VLに出力する。船舶VLの姿勢は、典型的には、船舶VLの船首の向きを示す。姿勢検出部3は、例えば、方位センサであり、船舶VLの船首の向きを取得する。方位センサは、例えば、磁気方位センサ又はサテライトコンパスである。
障害物検出部4は、陸上又は水上の障害物を検出して、障害物を示す障害物情報を船舶VLに出力する。障害物検出部4は、例えば、LIDAR(Light Detection and Ranging)であり、パルス光を照射することで、船舶VLの周囲の障害物の有無を反射光により検出する。障害物がある場合は、LIDARは、反射光を受光したときのパルス光の向きと、受光までの時間とに基づいて、障害物の方位と距離とを検出する。LIDARは、障害物の方位と距離との検出結果に基づいて、船舶VLの周囲に存在する障害物を表す点群データを取得する。
操船制御装置5は、推進装置6を制御することによって、船舶VLの移動を制御する。操船制御装置5は、コンピュータによって構成される。コンピュータは、例えば、ECU(Electronic Control Unit)である。コンピュータは、プロセッサ及び記憶装置を備える。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。記憶装置は、データ及びコンピュータプログラムを記憶し、例えば、主記憶装置と、補助記憶装置とを備える。主記憶装置は、例えば、半導体メモリである。補助記憶装置は、例えば、半導体メモリ、ソリッドステートドライブ、及び/又は、ハードディスクドライブである。記憶装置は、リムーバブルメディアを含んでいてもよい。記憶装置は、非一時的コンピュータ読取可能記憶媒体の一例に相当する。
推進装置6は、操船制御装置5による制御に従って、船舶VLの移動方向を定めるとともに、船舶VLに推進力を発生させる。
具体的には、推進装置6は、一対のスクリュー61L、61R、及び、駆動源(不図示)を備える。駆動源は、例えば、エンジン及び/又は電動モータである。
スクリュー61L、61Rは、船舶VLの船尾の左右両側に配置される。推進装置6は、駆動源の駆動力によりスクリュー61L、61Rを回転させる。スクリュー61L、61Rの回転軸の向きは、鉛直方向の軸(以下、「鉛直軸」と記載)を中心として変更可能である。つまり、スクリュー61L、61Rの回転軸は、鉛直軸を中心として回動する。推進装置6は、各スクリュー61L、61Rの回転軸の向き、停止/正転/逆転、及び回転速度を、互いに独立して変更することができる。
推進装置6は、各スクリュー61L、61Rを制御することによって、船舶VLの前進、後進、船首方向を維持した状態での平行移動、及び、その場旋回を実行できる。船首方向を維持した状態での平行移動は、例えば、左右方向への平行移動、又は、船首方向に対して斜め方向への平行移動である。
船首方向は、船舶VLの船首の向きを示し、船舶VLの船尾から船首に向かう方向である。船首方向は、船舶VLの前後方向に略平行である。左右方向は、水平方向に略平行であり、船舶VLの船首方向に略直交する方向を示す。
操船機構7は、ユーザーの操作を受け付けて、ユーザーの操作に応じた操作信号を操船制御装置5に出力する。
具体的には、操船機構7は、ステアリングホイール71と、スロットルレバー72と、ジョイスティック73とを備える。
ステアリングホイール71は、スクリュー61L、61Rの回転軸を、鉛直軸を中心に回動させる際の回動角度を変更する。その結果、スクリュー61L、61Rは、舵としても機能する。ステアリングホイール71は、左右方向に回転可能である。スクリュー61L、61Rの回転軸は、ステアリングホイール71の回転に応じて鉛直軸を中心に回動する。操船機構7は、ステアリングホイール71の回転角度に応じた操作信号を操船制御装置5に出力する。
スロットルレバー72は、スクリュー61L、61Rの回転数及び回転方向を、スクリュー61L、61Rごとに変更する。具体的には、スロットルレバー72は、スクリュー61Lの回転数及び回転方向を変更する左レバー(不図示)と、スクリュー61Rの回転数及び回転方向を変更する右レバー(不図示)とを備える。スロットルレバー72は、前後方向に移動可能である。操船機構7は、スロットルレバー72の位置に応じた操作信号を操船制御装置5に出力する。
ジョイスティック73は、前後方向及び左右方向に傾倒可能であり、かつ、軸心周りに回転可能である。ジョイスティック73の傾倒方向、傾倒角度、回転方向、及び、回転角度に応じて、各スクリュー61L、61Rの回転軸の向き、停止/正転/逆転、及び回転速度が変更される。操船機構7は、ジョイスティック73の傾倒方向、傾倒角度、回動方向、及び、回動角度に応じた操作信号を操船制御装置5に出力する。
ここで、操船制御装置5は、4つの操船モードを有する。具体的には、操船制御装置5は、手動操船モード、自動操船モード、ステアリングモード、及び、ジョイスティックモードを有する。
ステアリングモードは、「第1操船モード」の一例に相当する。ジョイスティックモードは、「第2操船モード」の一例に相当する。
手動操船モードは、ユーザーによる操船機構7の操作に応じて船舶VLを移動させる操船モードを示す。従って、操船制御装置5は、手動操船モードにおいては、操船機構7からの操作信号に基づいて推進装置6を制御することで、船舶VLの移動を制御する。
具体的には、手動操船モードは、ユーザーによって操船機構7が操作されたときの操船機構7からの操作信号に応じて推進装置6を制御することで、船舶VLを移動させる操船モードを示す。更に具体的には、手動操船モードは、ユーザーによるステアリングホイール71及びスロットルレバー72の操作に基づく操作信号、又は、ユーザーによるジョイスティック73の操作に基づく操作信号に応じて、船舶VLを移動させる操船モードを示す。
自動操船モードは、コンピュータによって船舶VLを移動させる操船モードを示す。この場合のコンピュータは、操船制御装置5である。具体的には、自動操船モードは、コンピュータによって推進装置6を制御することで、船舶VLを移動させる操船モードを示す。更に具体的には、自動操船モードは、コンピュータによって、経路生成装置1が生成した経路に従って船舶VLを移動させる操船モードを示す。なお、自動操船モードでは、例えば、ユーザーによる操船機構7の操作は介在されない。
ステアリングモードは、船舶VLの船首方向の変更を伴って船舶VLの移動方向を変更する操船モードを示す。また、ステアリングモードにおいて、船舶VLを直進させることも可能である。
ジョイスティックモードは、船舶VLの船首方向を維持した状態で船舶VLを平行移動することの可能な操船モードを示す。また、ジョイスティックモードにおいて、船舶VLを、その場旋回させたり、船舶VLを直進移動させたりすることも可能である。
操船制御装置5は、手動操船モードにおいてステアリングモードによって船舶VLを移動させることができる。この場合、操船制御装置5は、ユーザーによるステアリングホイール71及びスロットルレバー72の操作に基づく操作信号応じて推進装置6を制御することで、船舶VLを移動させる。手動操船モードにおいてステアリングモードによって船舶VLを移動させるモードを「手動ステアリングモード」と記載する場合がある。
操船制御装置5は、手動操船モードにおいてジョイスティックモードによって船舶VLを移動させることができる。この場合、操船制御装置5は、ユーザーによるジョイスティック73の操作に基づく操作信号応じて推進装置6を制御することで、船舶VLを移動させる。手動操船モードにおいてジョイスティックモードによって船舶VLを移動させるモードを「手動ジョイスティックモード」と記載する場合がある。
操船制御装置5は、自動操船モードにおいてステアリングモードによって船舶VLを移動させることができる。この場合、操船制御装置5は、ユーザーによるステアリングホイール71及びスロットルレバー72の操作に応じた操作信号と同じ機能の制御信号によって推進装置6を制御することで、船舶VLを移動させる。自動操船モードにおいてステアリングモードによって船舶VLを移動させるモードを「自動ステアリングモード」と記載する場合がある。
操船制御装置5は、自動操船モードにおいてジョイスティックモードによって船舶VLを移動させることができる。この場合、操船制御装置5は、ユーザーによるジョイスティック73の操作に応じた操作信号と同じ機能の制御信号によって推進装置6を制御することで、船舶VLを移動させる。自動操船モードにおいてジョイスティックモードによって船舶VLを移動させるモードを「自動ジョイスティックモード」と記載する場合がある。
引き続き図1を参照して、経路生成装置1を説明する。経路生成装置1は、経路生成ユニット100と、操作表示ユニット200とを備える。
操作表示ユニット200は、ユーザーからの入力操作を受け付けるとともに、各種情報を表示する。具体的には、操作表示ユニット200は、タッチパネル210を備える。タッチパネル210は、ユーザーによるタッチ操作を受け付けるとともに、各種情報を表示する。具体的には、タッチパネル210は、ディスプレイ211と、タッチセンサー212とを備える。
ディスプレイ211は、各種情報を表示する。ディスプレイ211は、例えば、液晶ディスプレイ、又は、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイである。タッチセンサー212は、ディスプレイ211の表示面に対するタッチ位置を検出して、タッチ位置を示す信号を経路生成ユニット100に出力する。タッチセンサー212は、例えば、面状であり、ディスプレイ211の表面又は内部に配置される。タッチセンサー212は、例えば、静電容量方式又は抵抗膜方式を採用する。
ディスプレイ211は、「表示部」の一例に相当する。タッチセンサー212は、「入力部」の一例に相当する。なお、操作表示ユニット200は、タッチセンサー212に代えて、又は、タッチセンサー212に加えて、1つ又は複数の他の入力部を備えていてもよい。他の入力部は、例えば、スイッチ、ダイヤル、又は、ポインティングデバイスである。
経路生成ユニット100は、船舶VLの経路を生成する。経路生成ユニット100は、コンピュータによって構成される。具体的には、経路生成ユニット100は、制御部110と、記憶部120とを備える。
制御部110は、プロセッサによって構成される。プロセッサは、例えば、CPUである。記憶部120は、記憶装置によって構成され、データ及びコンピュータプログラムを記憶する。具体的には、記憶部120は、主記憶装置と、補助記憶装置とを備える。主記憶装置は、例えば、半導体メモリである。補助記憶装置は、例えば、半導体メモリ、ソリッドステートドライブ、及び/又は、ハードディスクドライブである。記憶部120は、リムーバブルメディアを含んでいてもよい。記憶部120は、非一時的コンピュータ読取可能記憶媒体の一例に相当する。記憶部120は、海図を示す海図データ121を記憶する。
本明細書において、「海図」は、海の地図だけでなく、湖及び河川の地図を含む概念である。また、「海図」は、水領域及び岸を含む。「水領域」は、例えば、海、湖、又は、河川である。「岸」は、接岸施設を含む。「接岸施設」は、船舶VLを接岸可能な場所を示す。「接岸施設」は、人工物であってもよいし、自然物であってもよい。「接岸施設」は、例えば、岸壁、桟橋、浮桟橋、又は、物揚場である。また、「岸」は、陸地のうち水に接している領域だけでなく、水際に位置する構造物を含む概念である。また、「岸」は、陸の岸だけでなく、島の岸を含む概念である。
具体的には、海図データ121は、「水領域」を示す水領域データ、及び、「岸」を示す岸データを含む。岸データは、例えば、岸の形状を示す。また、「海図」は、水領域に存在する障害物を含んでいてもよい。つまり、海図データ121は、水領域に存在する障害物を示す障害物データを含んでいてもよい。「水領域に存在する障害物」は、岩及び島等の自然物であってもよいし、灯台等の人工物であってもよい。「障害物」は、船舶VLの移動及び停船を妨げる人工物又は自然物である。
制御部110は、着岸経路生成部111と、表示処理部112とを含む。具体的には、制御部110は、記憶部120に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、着岸経路生成部111及び表示処理部112として機能する。
着岸経路生成部111は、海図データ121に基づいて、船舶VLの着岸経路を生成する。着岸経路は、船舶VLの始点位置から着岸時の停船位置までの経路を示す。
以下、着岸経路を「着岸経路RT」と記載し、始点位置を「始点位置SP」と記載し、停船位置を「停船位置EP」と記載する場合がある。
表示処理部112は、ディスプレイ211に表示する画像を示す画像データを生成する。そして、表示処理部112は、画像データに基づく画像を表示するように、ディスプレイ211を制御する。
本実施形態では、表示処理部112は、海図データ121によって示される海図、船舶VLの現在位置、及び、船舶VLの着岸経路RTを表示するように、ディスプレイ211を制御する。その結果、ディスプレイ211は、海図、船舶VLの現在位置、及び、着岸経路RTを表示する。
次に、図1~図5を参照して、ディスプレイ211に表示されるマップ画面を説明する。
図2は、着岸経路RTを生成する前のマップ画面SC1を示す図である。図2に示すように、ディスプレイ211はマップ画面SC1を表示する。マップ画面SC1は、着岸経路RTが生成される前の初期画面である。
マップ画面SC1は、第1領域F1及び第2領域F2を有する。第1領域F1には海図41が表示される。海図41は、水領域411(具体的には、水領域画像)と、岸412(具体的には岸画像)とを含む。水領域411は、例えば、海を示す画像である。岸412は、岸を示す画像である。
また、第1領域F1には、船舶VLの現在位置情報43が表示される。現在位置情報43は、船舶VLの現在位置を示す。船舶VLの現在位置は、位置検出部2によって検出される。さらに、第1領域F1には、船舶VLの船速情報44が表示される。船速情報44は、船舶VLの現在の船速を示す。船舶VLの現在の船速は、船速センサ(不図示)によって検出される。船速センサは、例えば、電磁ログ又はドップラーソナーである。位置検出部2が船速センサとして機能してもよい。
さらに、海図41上には、船舶VLを示す実船舶画像42が表示される。実船舶画像42は、船舶VLを模式化した画像である。実船舶画像42は、海図41において、船舶VLの現在位置に配置される。従って、実船舶画像42は、船舶VLの現在位置を示す。また、実船舶画像42は、船舶VLの現在の姿勢(具体的には、船首の向き)に応じた方向を向いている。船舶VLの現在の姿勢は、姿勢検出部3によって検出される。
第2領域F2には、メッセージ領域51、始点位置入力画像52、停船位置入力画像53、経路生成指示画像54、決定指示画像55、始動指示画像56、及び、停止指示画像57が表示される。始点位置入力画像52、停船位置入力画像53、経路生成指示画像54、決定指示画像55、始動指示画像56、及び、停止指示画像57は、GUI(Graphical User Interface)のウィジェットであり、例えば、ボタンである。
メッセージ領域51には、ユーザーに対するメッセージMGが表示される。メッセージMGは、例えば、着岸経路生成部111によって生成される着岸経路RTに従った操船(具体的には自動操船)を行うための手順を示す。
始点位置入力画像52は、海図41における船舶VLの始点位置SPの入力を受け付けるためのボタンである。始点位置SPは、着岸経路生成部111によって生成される着岸経路RT(例えば、図3)の始点の位置を示す。ユーザーによって始点位置入力画像52がタッチ操作されると、着岸経路生成部111は、始点位置SPを受付可能な状態になる。そして、ユーザーが、タッチ操作によって海図41上で所望の始点位置SPを指定すると、着岸経路生成部111は、ユーザーによって指定された始点位置SPを記憶部120に登録する。つまり、タッチセンサー212が、海図41における船舶VLの始点位置SPの入力を受け付け、記憶部120が始点位置SPを記憶する。タッチセンサー212は、「始点位置入力部」の一例に相当する。図2では、ディスプレイ211は、始点位置SPを示す特定画像(図2の例では、「X」)を表示している。
本実施形態では、ユーザーは、所望の始点位置SPを入力できるので、ユーザーの利便性を向上できる。
他の例として、着岸経路生成部111は、船舶VLの現在位置を、船舶VLの始点位置SPに設定して、着岸経路RTを生成してもよい。この場合は、始点位置SPの入力を省略できるので、ユーザーの煩わしさを更に低減できる。
停船位置入力画像53は、海図41における船舶VLの着岸時の停船位置EPの入力を受け付けるためのボタンである。停船位置EPは、着岸経路生成部111によって生成される着岸経路RT(例えば、図3)の終点の位置を示す。ユーザーによって停船位置入力画像53がタッチ操作されると、着岸経路生成部111は、停船位置EPを受付可能な状態になる。そして、ユーザーが、タッチ操作によって海図41上で所望の停船位置EPを指定すると、着岸経路生成部111は、ユーザーによって指定された停船位置EPを記憶部120に登録する。つまり、タッチセンサー212が、海図41における船舶VLの着岸時の停船位置EPの入力を受け付け、記憶部120が停船位置EPを記憶する。タッチセンサー212は、「停船位置入力部」の一例に相当する。図2では、ディスプレイ211は、停船位置EPを示す特定画像(図2の例では、「X」)を表示している。
経路生成指示画像54は、着岸経路生成部111に対して着岸経路RT(例えば、図3)を生成することを指示するためのボタンである。ユーザーによって経路生成指示画像54がタッチ操作されると、船舶VLの始点位置SPから停船位置EPまでの着岸経路RTを生成する。
図3は、着岸経路RTを生成した後のマップ画面SC2を示す図である。図3に示すように、ディスプレイ211は、マップ画面SC2の第1領域F1において、着岸経路RT(具体的には着岸経路画像)を海図41上に表示する。着岸経路RTは、船舶VLが経由すべき複数の経由点Pを含む。複数の経由点Pは、始点位置SPと停船位置EPとの間に配列される。換言すれば、始点位置SPから、複数の経由点Pを通り、停船位置EPまで結ばれる折れ線が、着岸経路RTである。経由点Pは、可視化されていてもよいし、可視化されていなくてもよい。図3の例では、経由点Pは、可視化されている。つまり、ディスプレイ211は、複数の経由点Pを示す特定画像(図3の例では、黒丸図形)を表示する。
また、ディスプレイ211は、経由点Pでとるべき船舶VLの姿勢を示す船舶画像46を表示する。具体的には、ディスプレイ211は、複数の経由点Pの各々に、各経由点Pでとるべき船舶VLの姿勢を示す船舶画像46を表示する。従って、本実施形態によれば、ユーザーは、各経由点Pにおける船舶画像46を見ることで、着岸経路RTにおける船舶VLの予定姿勢をきめ細かく認識できる。図3の例では、船舶VLの姿勢を示す船舶画像46は、船舶VLの船首の向きを示している。船舶画像46は、船舶VLを模式化した画像である。同様に、ディスプレイ211は、始点位置SP及び停船位置EPに、始点位置SP及び停船位置EPでとるべき船舶VLの姿勢を示す船舶画像46を表示する。
具体的には、複数の経由点Pのうち、停船位置EPの後方直近の経由点PA以外の各経由点P及び始点位置SPでの船舶画像46の船首の向きは、着岸経路RTに沿った向きである。更に具体的には、複数の経由点Pのうち経由点PA以外の各経由点Pにおいては、ある経由点Pに表示される船舶画像46は、その経由点Pと前方直近の経由点Pとを結ぶ線分の延びる方向を向いている。加えて、始点位置SPに表示される船舶画像46は、始点位置SPと前方直近の経由点PBとを結ぶ線分に沿った方向を向いている。従って、ユーザーは、始点位置SPから経由点PAまでは、船舶VLがステアリングモード(例えば、自動ステアリングモード)で操船されることを容易に認識できる。
また、停船位置EPの後方直近の経由点PAに表示される船舶画像46の姿勢(具体的には船首の向き)及び、停船位置EPに表示される船舶画像46の姿勢(具体的には船首の向き)は、岸412のうち、停船位置EPに対応する接岸施設412Cに沿っている。従って、ユーザーは、経由点PAから停船位置EPまでは、船舶VLがジョイスティックモード(例えば、自動ジョイスティックモード)で操船されることを容易に認識できる。
具体的には、停船位置EPの後方直近の経由点PA及び停船位置EPに表示される船舶画像46の姿勢(具体的には船首の向き)は、接岸施設412Cの延びる方向に沿っている。
さらに、海図41は、水領域411を挟んでいる2つの岸辺領域412A、412Bを含む。具体的には、2つの岸辺領域412A、412Bは、水領域411を挟んで互いに対向する。そして、着岸経路RTは、2つの岸辺領域412A、412Bの略中間位置を通る。従って、本実施形態によれば、船舶VLが、着岸経路RTを航行中に、岸辺領域412A、412Bに接触することを防止できるとともに、岸辺領域412A、412Bの近傍の浅瀬に進入することを抑制できる。また、水領域411に障害物が存在する場合、着岸経路RTは、水領域411を挟んで互いに対向する2つの障害物の略中間位置を通ることが好ましい。さらに、水領域411に障害物が存在する場合、着岸経路RTは、水領域411を挟んで互いに対向する障害物と岸辺領域との略中間位置を通ることが好ましい。
また、マップ画面SC2の第2領域F2において、ユーザーに対するメッセージMGが表示される。メッセージMGは、着岸経路生成部111によって生成された着岸経路RTを確認することをユーザーに対して促す内容を含む。
決定指示画像55は、着岸経路生成部111によって生成された着岸経路RTを確定することを指示するためのボタンである。ユーザーによって決定指示画像55がタッチ操作されると、着岸経路生成部111は、着岸経路RTを記憶部120に登録する。
始動指示画像56は、操船制御装置5に対して、着岸経路生成部111によって生成された着岸経路RTに従って自動操船することを指示するためのボタンである。「自動操船」は、操船制御装置5による自動操船モードでの操船を示す。従って、ユーザーによって決定指示画像55がタッチ操作されると、操船制御装置5は、着岸経路生成部111によって生成された着岸経路RTに従った自動操船を実行する。つまり、操船制御装置5は、着岸経路RTでは、自動操船モードによる操船を実行する。
図4は、船舶VLの自動着岸中のマップ画面SC3を示す図である。図4に示すように、第1領域F1において、海図41上には、自動着岸のために自動操船中の船舶VLに対応する実船舶画像42が表示される。
また、第2領域F2において、停止指示画像57は、操船制御装置5に対して、自動操船を停止することを指示するためのボタンである。ユーザーによって停止指示画像57がタッチ操作されると、操船制御装置5は、船舶VLの移動を停止するとともに、自動操船を停止する。つまり、タッチセンサー212が、着岸経路生成部111によって生成された着岸経路RTに従って自動操船を停止する入力を受け付ける。タッチセンサー212は、「自動操船停止入力部」の一例に相当する。本実施形態によれば、ユーザーは、自動着岸のための自動操船を実行中であっても、停止指示画像57をタッチ操作することで、船舶VLを停止して、手動操船を実行できる。例えば、ユーザーは、障害物を回避するために、手動操船を実行することができる。
具体的は、タッチセンサー212が停止指示画像57を介して自動操船を停止する入力を受け付けた後に、船舶VLの操船モードが、自動操船モードから手動操船モードに移行する。
加えて、ディスプレイ211は、自動操船の実行中に、自動操船の停止が可能であることを示すメッセージMGを表示する。従って、本実施形態によれば、ユーザーは、自動操船を停止できることを容易に認識できる。例えば、ユーザーは、自動着岸のための自動操船を実行中であっても、船舶VLを停止して、手動操船によって障害物を回避できることを容易に認識できる。
また、ディスプレイ211は、着岸経路生成部111によって生成された着岸経路RTに従った自動操船の実行中に、自動操船のために設定された最大船速MXを表示する。従って、本実施形態によれば、ユーザーは、船速情報44によって示される船舶VLの現在の船速と、自動操船のために設定された最大船速MXとを比較できる。その結果、ユーザーは、比較結果に応じた操船を実行できる。例えば、現在の船速が最大船速MXを超えていた場合には、停止指示画像57をタッチ操作して、自動操船を停止し、手動操船により、船速を低下させることができる。着岸経路生成部111は、経由点Pと岸412との間の距離に基づいて最大船速MXを設定する。例えば、着岸経路生成部111は、経由点Pが岸412に遠いほど、最大船速MXを大きく設定する。例えば、着岸経路生成部111は、経由点Pごとに、最大船速MXを設定する。
さらに、操船制御装置5は、経路生成装置1が生成した着岸経路RTに従った自動操船を、ステアリングモード及びジョイスティックモードで実行する。つまり、操船制御装置5は、経路生成装置1が生成した着岸経路RTに従って、自動ステアリングモード及び自動ジョイスティックモードによる操船を実行する。
操船制御装置5は、少なくとも、停船位置EPと、停船位置EPの後方直近の経由点PAとの間において、ジョイスティックモード(具体的には、自動ジョイスティックモード)で自動操船を実行する。従って、本実施形態によれば、船舶VLは、接岸施設412Cに対して円滑に接岸できる。また、操船制御装置5は、着岸経路RTのうち、ジョイスティックモード(具体的には、自動ジョイスティックモード)で自動操船を実行しない経路では、ステアリングモード(具体的には自動ステアリングモード)で自動操船を実行する。図4の例では、操船制御装置5は、始点位置SPから経由点PAまで、ステアリングモードで自動操船を実行する。
なお、例えば、操船制御装置5は、始点位置SPから、経由点PAの後方直近の経由点PCまで、ステアリングモードで自動操船を実行し、経由点PAから停船位置EPまで、ジョイスティックモードで自動操船を実行してもよい。
図5は、船舶VLの自動着岸後のマップ画面SC4を示す図である。図5に示すように、実船舶画像42が停船位置EPに表示されている。従って、船舶VLが停船位置EPに到着したことが示される。また、第2領域F2において、メッセージMGは、船舶VLが停船位置EPに到着したことを示す。
次に、図1、図6、及び、図7を参照して、本実施形態に係る着岸操船方法を説明する。図6及び図7は、着岸操船方法を示すフローチャートである。図6及び図7に示すように、着岸操船方法は、ステップS1~ステップS14を含む。
図1及び図6に示すように、ステップS1において、ディスプレイ211は、海図41、及び、船舶VLの現在位置を示す実船舶画像42を表示する(図2)。
次に、ステップS2において、タッチセンサー212は、着岸経路RTの始点位置SPの入力を受け付ける(図2)。
次に、ステップS3において、タッチセンサー212は、着岸時の停船位置EPの入力を受け付ける(図2)。
次に、ステップS4において、着岸経路生成部111は、岸412の形状を示す岸データに基づいて、船舶VLの始点位置SPから停船位置EPまでの着岸経路RTを生成する。従って、本実施形態によれば、岸412に接触することを確実に回避でき、かつ、ユーザーの煩わしさを軽減しつつ、着岸経路RTを生成することが可能である。つまり、ユーザーは、船舶VLの始点位置SP及び停船位置EPを入力するだけの簡易な入力操作によって、着岸経路RTを生成できる。
特に、着岸経路生成部111は、岸データ、及び、水領域411に存在する障害物を示す障害物データに基づいて、着岸経路RTを生成することが好ましい。この好ましい例によれば、着岸経路RTは、予め障害物を回避する経路として生成される。従って、船舶VLは、急な変針を行うことなく、障害物を回避した航行を実行できる。
次に、ステップS5において、ディスプレイ211は、着岸経路RTを表示する(図3)。
次に、ステップS6において、着岸経路生成部111は、決定指示画像55(図3)がタッチ操作されたことをタッチセンサー212が検出したか否かを判定する。
ステップS6で決定指示画像55がタッチ操作されていないと判定された場合(No)、処理はステップS6を待機する。
一方、ステップS6で決定指示画像55がタッチ操作されたと判定された場合(Yes)、処理はステップS7に進む。
次に、ステップS7において、操船制御装置5は、始動指示画像56(図3)がタッチ操作されたことをタッチセンサー212が検出したか否かを判定する。
ステップS7で始動指示画像56がタッチ操作されていないと判定された場合(No)、処理はステップS7を待機する。
一方、ステップS7で始動指示画像56がタッチ操作されたと判定された場合(Yes)、処理はステップS8に進む。
次に、ステップS8において、操船制御装置5は、着岸経路生成部111によって生成された着岸経路RTに従って船舶VLの自動操船を開始する。具体的には、操船制御装置5は、自動ステアリングモードによる自動操船を開始する。
次に、図7に示すように、ステップS9において、操船制御装置5は、自動操船を停止することを指示する停止指示画像57(図4)がタッチ操作されたことをタッチセンサー212が検出したか否かを判定する。
ステップS9で停止指示画像57がタッチ操作されていないと判定された場合(No)、処理はステップS10に進む。
次に、ステップS10において、操船制御装置5は、障害物検出部4が障害物を検出したか否かを判定する。
ステップS10で障害物が検出されていないと判定された場合(No)、処理はステップS11に進む。
次に、ステップS11において、操船制御装置5は、船舶VLが停船位置EPに到着したか否かを判定する。
ステップS11で船舶VLが停船位置EPに到着していないと判定された場合(No)、処理はステップS9に進む。
一方、ステップS11で船舶VLが停船位置EPに到着したと判定された場合(Yes)、処理はステップS12に進む。
次に、ステップS12において、操船制御装置5は、自動ジョイスティックモードによって定点保持制御を実行する。定点保持制御とは、船舶VLを停船位置EPに留まらせる制御のことである。そして、ユーザーが船舶VLを係留して、着岸操船方法は終了する。
一方、ステップS9で停止指示画像57がタッチ操作されたと判定された場合(Yes)、又は、ステップS10で障害物が検出されたと判定された場合(Yes)、処理はステップS13に進む。
次に、ステップS13において、操船制御装置5は、船舶VLの移動を停止するとともに、自動操船を停止する。具体的には、操船制御装置5は、操船モードを、自動操船モードから手動操船モードに移行する。
次に、ステップS14において、操船制御装置5は、ユーザーによる操船機構7の操作に基づく手動操船を開始する。そして、着岸操船方法は終了する。なお、ユーザーは、手動操船を開始した後に、再び自動操船を開始することもできる。この場合、処理は、ステップS2から開始する。
次に、図1及び図8を参照して、図6のステップS4の着岸経路生成処理を説明する。図8は、着岸経路生成処理を示すフローチャートである。図8に示すように、着岸経路生成処理は、ステップS21~ステップS23を含む。具体的には、着岸経路生成処理は、ステップS31~ステップS41を含む。
ステップS21において、着岸経路生成部111は、海図41を加工する処理を実行する。ステップS21は、ステップS31及びステップS32を含む。
次に、ステップS22において、着岸経路生成部111は、加工後の海図41に基づいてグラフを生成する。グラフは、グラフ理論におけるグラフであり、複数のノードの集合及び複数のブランチの集合として構成される。ステップS22は、ステップS33~ステップS36を含む。
次に、ステップS23において、着岸経路生成部111は、グラフに基づいて船舶VLの着岸経路RTを生成する。ステップS23は、ステップS37~ステップS41を含む。そして、処理は、図6のメインルーチンに戻る。
引き続き、図1及び図8~図14を参照して、着岸経路生成処理の詳細を説明する。
図1及び図8に示すように、ステップS31において、着岸経路生成部111は、船舶VLの現在位置を含む所定領域の海図41を取得する。所定領域は、例えば、ディスプレイ211に表示された海図41の範囲である。
次に、ステップS32において、着岸経路生成部111は、海図41に対して膨張加工処理を実行する。以下、具体例を挙げて膨張加工処理を説明する。
図9(a)は、膨張加工前の海図M1を示す模式図である。図9(b)は、膨張加工後の海図M2を示す模式図である。図9(a)に示すように、海図M1は、X軸及びY軸を含む。X軸及びY軸は、長さのスケールを有する。海図M1は、陸80A、80B及び水領域81を含む。陸80A、80Bは岸を含む。従って、陸80A、80Bを岸80A、80Bと読み替えることができる。また、陸80A、80Bは、例えば、水領域81に存在する障害物であってもよい。従って、陸80Aを障害物80Aと読み替えることもできるし、陸80Bを障害物80Bと読み替えることもできるし、陸80A、80Bを障害物80A、80Bと読み替えることもできる。
図9(b)に示すように、海図M2において、着岸経路生成部111は、陸80A、80Bを膨張加工して、陸80Aに対して膨張領域82Aを付加するとともに、陸80Bに対して膨張領域82Bを付加する。
膨張領域82A、82Bの各々の幅W1、つまり、膨張量W1は、船舶VLの左右方向の幅(以下、「幅W2」と記載)の半分の値に設定される。図9(b)の例では、船舶VLの幅W2が20mである場合に、膨張量W1が10mの膨張領域82A、82Bをそれぞれ陸80A、80Bに付加している。
海図M2のうち陸80A、80B及び膨張領域82A、82B以外の水領域81Aは、船舶VLが存在することの可能な領域を示す。具体的には、水領域81Aは、船舶VLの左右方向の中心位置が存在することの可能な領域を示す。
陸80A、80Bを膨張加工する理由は、次の通りである。すなわち、船舶VLは左右方向の幅W2を有するため、図9(a)の水領域81の全域に存在することはできない。例えば、図9(a)の陸80Aに対して、船舶VLの左右方向の中心位置が船舶VLの幅W2の半分よりも近づくと、船舶VLは陸80Aに接触する。従って、船舶VLの左右方向の中心位置は、図9(b)の膨張領域82A内に存在することはできない。換言すれば、船舶VLは、図9(b)の水領域81Aにのみ存在し得る。そこで、海図M2において、船舶VLが存在することの可能な領域を確保するために、陸80A、80Bを膨張加工する。
なお、海図M2に、船舶VLが存在することの可能な領域を確保できる限りにおいては、膨張量W1は、船舶VLの幅W2の半分の値に限定されない。膨張量W1は、例えば、船舶VLの幅W2の半分以上、幅W2以下の値に設定されてもよい。
ここで、図9(b)に示すように、各膨張領域82A、82Bの外縁は曲線を含む。そこで、着岸経路生成部111は、グラフを生成するための前処理として、膨張加工後の海図M2に対して多角形近似処理を実行する。
図8に戻って、ステップS33において、着岸経路生成部111は、膨張加工後の海図M2に対して多角形近似処理を実行する。具体的には、着岸経路生成部111は、海図M2の各膨張領域82A、82Bの外縁に対して、多角形近似処理を実行する。
図10(a)は、多角形近似処理後の海図M3を示す模式図である。図10(a)に示すように、海図M3において、多角形近似処理後の膨張領域84A、84Bが示される。多角形近似処理によって、海図M3のうち陸80A、80B及び膨張領域84A、84B以外の水領域81Bが、船舶VLが存在することの可能な領域に設定される。多角形近似によって、膨張領域84Aに頂点VAが形成され、膨張領域84Bに頂点VBが形成される。頂点VAは、膨張領域84Aの角部分を示し、頂点VBは、膨張領域84Bの角部分を示す。
図8に戻って、ステップS34において、着岸経路生成部111は、多角形近似処理後の海図M3(図10(a))に対して、ボロノイ図を適用して、グラフを生成する。ボロノイ図は、複数の母点が与えられたときに、どの母点に一番近いかによって平面を分割して得られる図である。なお、本実施形態では、領域分割手法としてボロノイ図を採用したが、領域分割手法はボロノイ図に限定されない。
図10(b)は、ボロノイ図適用処理の実行結果を示す模式図である。図10(b)に示すように、海図M4(つまり、グラフ)は、図10(a)の多角形近似処理後の海図M3に対してボロノイ図を適用することで得られる。着岸経路生成部111は、図10(a)の膨張領域84Aの頂点VA及び膨張領域84Bの頂点VBをそれぞれ母点MPに設定する。図10(b)では、母点MPは、ドットで示される。そして、着岸経路生成部111は、複数の母点MPに基づいてボロノイ図を生成する。その結果、海図M4は、ボロノイ辺VS、ボロノイ領域VR、及び、ボロノイ点VPを含む。図10(b)では、ボロノイ辺VSは破線で示され、ボロノイ領域VRは、白色の領域で示され、ボロノイ点VPが黒丸で示される。
着岸経路生成部111は、ボロノイ辺VSをグラフのブランチBRに設定し、ボロノイ点VPをグラフのノードNDに設定する。その結果、グラフが生成される。つまり、海図M4がグラフによって示される。
図8に戻って、ステップS35において、着岸経路生成部111は、グラフとしての海図M4(図10(b))に対して、無効要素除去処理を実行する。無効要素除去処理とは、グラフとしての海図M4から、無効なノードND及び無効なブランチBRを除去する処理のことである。要素は、グラフの要素であるノードND及びブランチBRを示す。
図10(c)は、無効要素除去処理後の海図M5を示す模式図である。図10(c)に示すように、海図M5は、有効なブランチBRa、及び、有効なノードNDaを含む。
具体的には、図10(a)及び図10(b)を比較して、着岸経路生成部111は、複数のノードNDのうち、陸80A、80B及び膨張領域84A、84Bに含まれるノードNDを無効に設定して、無効のノードNDを除去する。換言すれば、着岸経路生成部111は、複数のノードNDのうち、陸80A、80B及び膨張領域84A、84Bに含まれないノードNDを有効に設定して、有効なノードND、つまり、図10(c)のノードNDaを残す。更に換言すれば、着岸経路生成部111は、船舶VLが存在することの可能な領域である水領域81B(図10(a))に存在するノードNDを有効に設定して、有効なノードNDを残す。
また、図10(a)及び図10(b)を比較して、着岸経路生成部111は、複数のノードNDのうち、陸80A、80B及び膨張領域84A、84Bに含まれるノードNDに接続されるブランチBRを無効に設定して、無効のブランチBRを除去する。換言すれば、着岸経路生成部111は、複数のブランチBRのうち、陸80A、80B及び膨張領域84A、84Bを通らないブランチBRを有効に設定して、有効なブランチBR、つまり、図10(c)のブランチBRaを残す。更に換言すれば、着岸経路生成部111は、船舶VLが存在することの可能な領域である水領域81B(図10(a))のみに存在するブランチBRを有効に設定して、有効なブランチBRを残す。
以上のようにして、着岸経路生成部111は、図10(b)の海図M4(つまり、グラフ)から、無効なノードND及び無効なブランチBRを除去する。その結果、図10(c)に示す海図M5(つまり、グラフ)が得られる。つまり、海図M5は、無効なノードND及び無効なブランチBRが除去されて、有効なノードND及び有効なブランチBRが残ったグラフである。無効要素除去処理を実行する理由は、陸80A、80B及び膨張領域82A、82Bは、接触の観点から船舶VLが存在することのできない領域であり、船舶VLの経路になり得ないからである。
ボロノイ図では、原理的に陸80Aと陸80Aとの等距離の位置に境界が引かれるため、船舶VLが陸80A、80Bに接触することを効果的に防止できる。
なお、図10(c)では、グラフとしての海図M5に、理解の容易のために、陸80A、80Bが付加されているが、実際には、無効要素除去処理では、グラフに陸80A、80Bは付加されない。
ここで、図8のステップS31~S35の説明において、簡単な例として、図9及び図10に示す海図M1~M5を説明した。ただし、実際には、ステップS35において、海図に含まれる岸及び障害物に応じて、複数の有効なノード及び複数の有効なブランチを含むグラフが生成される。以下、引き続き、有効なノードをノードNDaと記載し、有効なブランチをブランチBRaと記載する。
図11は、本実施形態に係る海図加工処理S32~無効要素除去処理S35を、仮想マリーナを示す海図M6に対して実行したときの実行結果を示す模式図である。図11に示すように、グラフとしての海図M6は、複数のノードNDa及び複数のブランチBRaを含む。なお、グラフとしての海図M6には、理解の容易のために、水領域411及び岸412が付加されている。
図8に戻って、ステップS36において、着岸経路生成部111は、ステップS35で生成した、ノードNDa及びブランチBRaを含むグラフに対して、隣接行列生成処理を実行する。隣接行列は、グラフを表わすために使われる正方行列である。つまり、着岸経路生成部111は、隣接行列生成処理を実行することで、ノードNDa及びブランチBRaを含むグラフを、隣接行列によって表す。
次に、ステップS37において、着岸経路生成部111は、有効なノードNDa及びブランチBRaを含むグラフに対して、始点ノード及び終点ノードを入力する。具体的には、着岸経路生成部111は、グラフにおいて、図6のステップS2で入力された始点位置SPを、始点ノードに設定する。また、着岸経路生成部111は、グラフにおいて、図6のステップS3で入力された停船位置EPを、終点ノードに設定する。そして、着岸経路生成部111は、始点ノードを、始点ノードの近傍のノードNDaに接続し、終点ノードを、終点ノードの近傍のノードNDaに接続する。
次に、ステップS38において、始点ノード及び終点ノードが設定されたグラフに対して、ダイクストラ法を適用し、着岸経路候補(不図示)を生成する。ダイクストラ法とは、最短経路問題の探索アルゴリズムである。着岸経路生成部111は、ダイクストラ法によって、始点位置SPである始点ノードから停船位置EPである終点ノードまでの最短経路を探索し、最短経路である着岸経路候補を得る。なお、最短経路を得ることができる限りにおいて、最短経路探索のアルゴリズムは、ダイクストラ法に限定されない。
次に、ステップS39において、着岸経路生成部111は、着岸経路候補に対して、経由点再配置処理を実行する。経由点再配置処理とは、着岸経路候補に含まれる複数の経由点候補(不図示)において、隣り合う経由点候補の間隔を略均一にする処理のことである。略均一とは、全ての経由点候補について、隣り合う経由点候補の間隔のバラツキが、所定範囲以内であることを示す。
経由点再配置処理を実行する理由は、船舶VLの経路追従精度を向上させるためである。具体的には、図11から理解できるように、ボロノイ図で得られる複数のノードNDaにおいて、ノードNDaの間隔の粗密は、一定ではない。従って、ノードNDaをそのまま経由点Pとして扱うと、ノードNDaの間隔が密な経路では経由点Pが切り替わるたびに船舶VLが頻繁に変針する。その結果、船舶VLの経路追従精度が低下する可能性がある。そこで、着岸経路候補に含まれる経由点候補の間隔が略均一になるように経由点候補を再配置する。
経由点再配置処理の一例は、次の通りである。すなわち、着岸経路生成部111は、経由点再配置処理を、停船位置EPから着岸経路候補に沿って始点位置SPに向かって実行する。従って、経由点再配置処理後であっても、最終的に生成される着岸経路RT(図3)において、停船位置EPが変更されることを回避できる。その結果、船舶VLを目的の停船位置EPに精度良く案内できる。
具体的には、着岸経路生成部111は、隣り合う経由点候補の間隔が、「N×L」になるように、経由点候補を再配置する。「N」は、例えば、1.0以上2.0以下の正数である。「L」は、船舶VLの全長である。船舶VLの全長は、船舶VLの前後方向の長さである。
経由点再配置処理が実行されるため、最終的に得られる着岸経路RT(例えば、図3)の全ての経由点Pにおいて、互いに隣り合う2つの経由点Pの間隔は、船舶VLの全長の略1倍以上、船舶VLの全長の略2倍以下である。つまり、着岸経路生成部111は、着岸経路RTの全ての経由点Pにおいて、互いに隣り合う2つの経由点Pの間隔が、船舶VLの全長の略1倍以上、船舶VLの全長の略2倍以下になるように、着岸経路RTを生成する。従って、本実施形態によれば、船舶VLの着岸経路RTに対する追従精度の低下を抑制できる。
図12(a)は、経由点再配置処理を説明するための図である。図12(a)に示されるように、海図M7には、着岸経路候補RTaに含まれる経由点候補Pa(黒丸)が、角張ったS字状に配置されている。経由点再配置処理によって、経由点候補Paが再配置され、新たに経由点候補Pb(白丸)が生成されている。複数の経由点候補Pbは、直線状に配置される。その結果、直線状の新たな着岸経路候補RTbが生成される。
図8に戻って、ステップS40において、着岸経路生成部111は、経由点再配置処理によって生成された新たな着岸経路候補RTbに対して、経路平滑化処理を実行する。経路平滑化処理とは、着岸経路候補RTaに含まれる複数の経由点候補Paにおいて、互いに隣り合う経由点候補Paを滑らかに接続する処理のことである。
経路平滑化処理を実行する理由は、船舶VLの経路追従精度を更に向上させるためである。具体的には、図11から理解できるように、ボロノイ図で得られる各ノードNDaを接続する複数のブランチBRaからなる折れ線は、角張っている。従って、ノードNDaをそのまま経由点Pとして扱うと、経由点Pでの変針角度が大きくなる。その結果、船舶VLの経路追従精度が低下する可能性がある。そこで、経由点再配置処理で得られた複数の経由点候補Pbを平滑化する。具体的には、着岸経路生成部111は、複数の経由点候補Pbに対して、最急降下法を適用して、複数の経由点候補Pbを平滑化する。なお、複数の経由点候補Pbが平滑化される限りにおいては、経路平滑化処理は、最急降下法と異なるアルゴリズムを採用できる。
着岸経路生成部111は、経路平滑化処理後の着岸経路候補を、着岸経路RTに決定し、経路平滑化処理後の経由点候補を、経由点Pに決定する。
図12(b)は、経路平滑化処理を説明するための図である。図12(b)に示されるように、海図M8には、着岸経路候補RTbに含まれる経由点候補Pb(黒丸)が、角張ったS字状に配置されている。経路平滑化処理によって、複数の経由点候補Pbが平滑化され、新たに経由点候補Pc(白丸)が生成されている。複数の経由点候補Pcは、滑らかな曲線のS字状に配置される。その結果、滑らかな曲線のS字状の新たな着岸経路候補RTcが生成される。
具体的には、経由点候補Pcを介して互いに接続される2つの線分SGがなす角度θは、90度よりも大きい。つまり、経由点候補Pcでの着岸経路候補RTcの変化角度θは、90度よりも大きい。従って、着岸経路候補RTcの角張りが軽減され、着岸経路候補RTcが平滑されている。
そして、着岸経路候補RTcが着岸経路RTに決定され、経由点候補Pcが経由点Pに決定される。従って、例えば、図3に示されるように、複数の経由点Pのうち、少なくとも、停船位置EPの後方直近の経由点PA以外の全ての経由点Pにおいて、180°から船舶VLの船首方向の変化角度を減した角度θは90度よりも大きい。つまり、着岸経路生成部111は、複数の経由点Pのうち、少なくとも、停船位置EPの後方直近の経由点PA以外の全ての経由点Pにおいて、180°から船舶VLの船首方向の変化角度を減した角度θが90度よりも大きくなるように、着岸経路RTを生成する。従って、本実施形態によれば、着岸経路RTの角張りが軽減され、船舶VLの着岸経路RTに対する追従精度の低下を更に抑制できる。また、船舶VLの操舵特性に応じた着岸経路RTを生成できる。
図8に戻って、ステップS41において、着岸経路生成部111は、船舶制御情報設定処理を実行する。船舶制御情報設定処理とは、ステップS31~S40の処理によって生成された着岸経路RTに対して船舶制御情報を設定する処理のことである。船舶制御情報は、着岸経路RTに従った自動操船を実行するために要求される制御情報を示す。船舶制御情報は、例えば、自動操船を実行する際の船舶VLの姿勢を示す姿勢情報、自動操船を実行する際の船舶VLの船速を示す船速情報、及び、自動操船を実行する際の船舶VLの操船モードを示す操船モード情報のうちの少なくとも1つの情報を含む。
図13は、船舶制御情報設定処理を説明するための図である。図13に示すように、海図M9に、着岸経路RT、複数の経由点P1~P6、始点位置SP、停船位置EP、及び、複数の船舶画像46が配置されている。
着岸経路生成部111は、複数の経由点P1~P6、始点位置SP、及び、停船位置EPにおいて、船舶VLの姿勢(具体的には、船首の向き)を設定する。
具体的には、着岸経路生成部111は、始点位置SPの前方直近の経由点P1から経由点P6の後方直近の経由点P5までの各経由点P1~P5及び始点位置SPでの船舶VLの姿勢(具体的には船首の方向)を、着岸経路RTに沿った方向に設定する。経由点P6は、停船位置EPの後方直近の経由点Pを示す。また、着岸経路生成部111は、停船位置EP及び経由点P6での船舶VLの姿勢(具体的には船首の方向)を、接岸施設412C(例えば、図3)に沿って設定する。
また、着岸経路生成部111は、複数の経由点P1~P6、始点位置SP、及び、停船位置EPにおいて、船舶VLの船速を設定する。
さらに、着岸経路生成部111は、着岸経路RTに対して、操船モードとして自動操船モードを設定する。具体的には、着岸経路生成部111は、着岸経路RTのうち、停船位置EPから、停船位置EPの後方直近の経由点P6までの経路に対して、自動ジョイスティックモードを設定する。また、着岸経路生成部111は、着岸経路RTのうち、自動ジョイスティックモードが設定されていない経路に対して、自動ステアリングモードを設定する。具体的には、着岸経路生成部111は、着岸経路RTのうち、始点位置SPから経由点P6までの経路に対して、自動ステアリングモードを設定する。
なお、着岸経路生成部111は、着岸経路RTのうち、停船位置EPから、経由点P6の後方直近の経由点P5までの経路に対して、自動ジョイスティックモードを設定してもよい。また、着岸経路生成部111は、着岸経路RTのうち、始点位置SPから経由点P5までの経路に対して、自動ステアリングモードを設定してもよい。
以上、図8~図13を参照して説明したように、本実施形態によれば、着岸経路生成部111は、ステップS31~ステップS41の処理を実行することで、着岸経路RTを生成する。
図14は、図8のステップS31~S41の処理によって生成された着岸経路RTを示す模式図である。図14では、参考のために、図8のグラフ生成処理(ステップS22)によって生成されたグラフGHが海図M10に示される。グラフGHは、複数のノードNDa及び複数のブランチBRaを含む。
本実施形態によれば、図14に示すように、着岸経路生成部111は、船舶画像46によって示される船舶VLが岸412及び障害物に接触することを確実に回避しつつ、円滑な航行及び円滑な着岸を実現できる着岸経路RTを生成できる。
なお、図1を参照して説明した実施形態では、スクリュー61L、61Rの回転軸の向きをそれぞれ独立して変更可能に構成されている。しかしながら、推進装置6の方式としては船舶VLの船首方向を維持した状態での平行移動及びその場旋回を実質的に実現できればよく、他の方式に変更することができる。例えば、推進装置6を、回転軸の向きを変更不能な左右1対のスクリューと、舵と、船首側に設けたサイドスラスタと、により構成することができる。また、例えば、推進装置6を、回転軸の向きを変更不能な1つのスクリューと、舵と、船首側及び船尾側のそれぞれに設けたサイドスラスタと、により構成することもできる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び実施例について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、または、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。