JP7478529B2 - 焦点距離可変レンズ装置および焦点距離可変レンズ装置の制御方法 - Google Patents
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Description
液体レンズシステムは、圧電材料で形成された円筒状の振動部材を、透明な液体に浸漬して形成される。液体レンズシステムにおいて、振動部材の内周面と外周面とに交流電圧を印加すると、振動部材が厚み方向に伸縮し、振動部材の内側の液体を振動させる。液体の固有振動数に応じて印加電圧の周波数を調整すると、液体に同心円状の定在波が形成され、振動部材の中心軸線を中心として屈折率が異なる同心円状の領域が形成される。この状態で、振動部材の中心軸線に沿って光を通すと、この光は同心円状の領域ごとの屈折率に従って発散または収束する経路を辿ることになる。
通常の対物レンズに平行光を入射させると、レンズを通過した光は所定の焦点距離にある焦点位置に焦点を結ぶ。これに対し、対物レンズと同軸に配置されたレンズシステムに平行光を入射させると、この光はレンズシステムで発散または収束され、対物レンズを通過した光は元の(レンズシステムがなかった状態の)焦点位置よりも遠くまたは近くにずれた位置に焦点を結ぶ。
従って、焦点距離可変レンズ装置においては、レンズシステムに入力される駆動信号(内部の液体に定在波を発生させる周波数の交流電圧)を印加し、この駆動信号の振幅を増減させることで、焦点距離可変レンズ装置としての焦点位置を一定の範囲内(対物レンズの焦点距離を基準としてレンズシステムにより増減できる所定の変化幅)で任意に制御することができる。
しかし、一般に、良好な明るさの画像を取得するためには、数十~数百μsのパルス照明時間が必要である。このため、上述の焦点距離可変レンズ装置において、1回のパルス照明時間によっては良好な明るさの画像を取得することが困難である。
そこで、本発明では、発光制御部が、指定焦点距離に対応する2つの検出位相に基づいてパルス照明部を制御する。これにより、パルス照明部は、駆動信号の一周期中に、焦点距離可変レンズの焦点距離が指定焦点距離付近になる2回のタイミングのそれぞれでパルス発光できる。画像検出部は、パルス照明部によりパルス照明された測定対象物の画像を検出することで、指定焦点位置で合焦した画像を検出できる。
これにより、本発明では、パルス照明部の1回分の発光時間を従来技術と同じ時間にしたまま、駆動信号Cfの一周期中の合計発光時間を従来技術の2倍にできる。よって、本発明では、良好な明るさの画像を得るために、駆動信号の複数周期の間、画像検出部が露光を継続する場合において、パルス照明部の1回分の発光時間を変えることなく、全体の露光時間を従来技術の半分にすることができる。これにより、良好な明るさの画像を得るための所要時間を短縮できる。
本発明において、所定時間とは、例えば、パルス照明部による1回分のパルス発光時間と次回発光のための準備時間とを合わせた時間である。このような本発明によれば、焦点距離の変動範囲内において、どのような指定焦点距離が入力されたとしても、一周期中に2回のパルス照明を問題なく行うことができる。
本発明によれば、上述した焦点距離可変レンズ装置と同様の効果を奏することができる。
〔焦点距離可変レンズ装置1〕
図1において、焦点距離可変レンズ装置1は、焦点距離を可変にしつつ測定対象物9の表面の画像を検出するものである。
このために、焦点距離可変レンズ装置1は、当該表面に交差する同じ光軸A上に配置された対物レンズ2および液体レンズユニット3と、対物レンズ2および液体レンズユニット3を通して得られる測定対象物9の画像を検出する画像検出部4と、測定対象物9の表面をパルス照明するパルス照明部5と、を備えている。
制御用PC7は、既存のパーソナルコンピュータにより構成され、所定の制御用ソフトウェアを実行することで所期の機能が実現される。制御用PC7には、画像検出部4から画像を取り込んで処理する機能も含まれている。
画像検出部4は、既存のCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサあるいは他の形式のカメラ等で構成され、入射される画像Lgを所定の信号形式の検出画像Imとして制御用PC7へ出力することができる。
パルス照明部5は、LED(Light Emitting Diode)などの発光素子を含んで構成される。また、パルス照明部5は、レンズ制御部6から入力される発光信号Ciが立ち上がったとき、所定時間だけ照明光Liを発光することにより、測定対象物9の表面に対するパルス照明を行う。照明光Liは測定対象物9の表面で反射され、測定対象物9の表面からの反射光Lrが対物レンズ2および液体レンズユニット3を通して画像Lgを形成する。
すなわち、対物レンズ2および液体レンズユニット3は、本発明の焦点距離可変レンズに対応する。
図2において、液体レンズユニット3は、円筒形のケース31を有し、ケース31の内部には円筒状の振動部材32が設置されている。振動部材32は、その外周面33とケース31の内周面との間に介装されたエラストマ製のスペーサ39で支持されている。
振動部材32は、圧電材料を円筒状に形成したものであり、外周面33と内周面34との間に駆動信号Cfの交流電圧が印加されることで、厚み方向に振動する。
ケース31の内部には、透過性の高い液体35が充填されており、振動部材32は全体を液体35に浸漬され、円筒状の振動部材32の内側は液体35で満たされている。駆動信号Cfの交流電圧は、振動部材32の内側にある液体35に定在波を発生させる周波数に調整されている。
このとき、液体レンズユニット3の中心軸線からの距離(半径)と液体35の屈折率との関係は、図3(C)部に示す屈折率分布Wのようになる。
図4(A)の状態では、屈折率分布Wの振れ幅が最大となり、液体レンズユニット3は通過する光を収束させ、焦点位置Pfは近く、焦点距離Dfは最短となっている。
図4(B)の状態では、屈折率分布Wが平坦となり、液体レンズユニット3は通過する光をそのまま通過させ、焦点位置Pfおよび焦点距離Dfは標準的な値となっている。
図4(C)の状態では、屈折率分布Wが図4(A)と逆極性で振れ幅が最大となり、液体レンズユニット3は通過する光を拡散させ、焦点位置Pfは遠く、焦点距離Dfは最大となっている。
図4(D)の状態では、再び屈折率分布Wが平坦となり、液体レンズユニット3は通過する光をそのまま通過させ、焦点位置Pfおよび焦点距離Dfは標準的な値となっている。
図4(E)の状態では、再び図4(A)の状態に戻っており、以下同様の変動を繰り返すことになる。
すなわち、焦点距離可変レンズ装置1において、焦点距離Dfは、駆動信号Cfの振幅変化に応じて往復変動するものであり、焦点距離Dfが所定距離になる位相は、駆動信号Cfの一周期中に2つ存在する。
図5に示すように、レンズ制御部6は、液体レンズユニット3の振動、パルス照明部5の発光および画像検出部4の画像検出を制御するものである。具体的には、レンズ制御部6は、液体レンズユニット3に駆動信号Cfを出力する駆動制御部61と、パルス照明部5に発光信号Ciを出力する発光制御部62と、画像検出部4に画像検出信号Ccを出力する画像検出制御部63とを有する。
駆動制御部61には、液体レンズユニット3の振動状態Vfの指標となる液体レンズユニット3の有効電力または駆動電流などが入力される。駆動制御部61は、液体レンズユニット3の振動状態Vfに応じて周波数を調整した駆動信号Cfを、液体レンズユニット3に出力する。
発光制御部62は、後述する検出位相設定部711から入力される検出位相θs1,θs2に基づいて、パルス照明部5に発光信号Ciを出力する。すなわち、発光制御部62は、駆動信号Cfの位相が検出位相θs1,θs2になったとき、発光信号Ciを所定時間立ち上げる。
画像検出制御部63は、レンズ操作部71に設定された露光時間などの検出条件に基づいて、画像検出部4に画像検出信号Ccを出力する。
特に、レンズ操作部71は、検出位相設定部711を含んで構成されている。検出位相設定部711は、液体レンズユニット3の焦点距離Dfの指定に基づいて検出位相θs1,θs2を算出し、算出した検出位相θs1,θs2を発光制御部62に入力する。
本実施形態における画像検出処理の手順について説明する。
画像検出処理を開始する際、まず、検出位相設定部711が、液体レンズユニット3の焦点距離Dfの指定(指定焦点距離Dfs)の入力を受け付ける。指定焦点距離Dfsの入力は、例えば操作インターフェイス73を介して入力されたユーザ操作に基づいて行われてもよいし、レンズ操作部71が任意の処理を実施することにより行われてもよい。
ここで、検出位相設定部711が参照するテーブルまたは演算式では、検出位相θs1,θs2と指定焦点距離Dfsとの対応関係が、基本的に図6に示す駆動信号Cfの位相θと焦点距離Dfとの関係に相当しており、検出位相θsは2πの範囲で規定されている。このため、図6に例示するように、検出位相設定部711が参照するテーブルまたは演算式では、1つの指定焦点距離Dfsに対して2つの検出位相θs1,θs2が対応付けられている。
そして、検出位相設定部711は、指定焦点距離Dfsに基づいて算出した2つの検出位相θs1,θs2を、発光制御部62に入力する。
次に、比較例における画像検出処理の手順について、本実施形態とは異なる処理を主に説明する。
なお、比較例の焦点距離可変レンズ装置は、検出位相設定部711による処理方法が本実施形態と異なること以外、本実施形態とほぼ同様の構成を有するものである。以下では、比較例について、本実施形態の対応する構成および符号を利用して説明する。
ここで、検出位相設定部711が参照するテーブルまたは演算式では、検出位相θsと指定焦点距離Dfsとの対応関係が、図8に示す駆動信号Cfの位相θと焦点距離Dfとの関係に基づいて定められており、検出位相θsはπの範囲で規定されている。このため、図8に例示するように、比較例のテーブルまたは演算式では、1つの指定焦点距離Dfsに対して1つの検出位相θsが対応付けられている。
そして、検出位相設定部711は、指定焦点距離Dfsに基づいて算出した1つの検出位相θsを、発光制御部62に入力する。
以上に説明した本実施形態と比較例とを比較した場合、本実施形態では、駆動信号Cfの周期毎に、比較例の2倍の回数、画像Lgを検出できる。すなわち、本実施形態では、時間当たりの画像Lgを検出する回数(検出頻度)が比較例の2倍に向上する。
これにより、本実施形態では、パルス照明部5の1回分の発光時間を比較例と同じ時間にしたまま、駆動信号Cfの一周期中の合計発光時間を比較例の2倍にできる。よって、本実施形態では、良好な明るさの画像を得るために、駆動信号Cfの複数周期の間、画像検出部4が露光を継続する場合において、パルス照明部5の1回分の発光時間を変えることなく、全体の露光時間を比較例の半分にすることができる。これにより、良好な明るさの画像を得るための所要時間を短縮できる。
上述の画像検出処理の説明において、検出位相設定部711が参照するテーブルまたは演算式では、検出位相θs1,θs2と指定焦点距離Dfsとの対応関係が、基本的に、駆動信号Cfの位相θと焦点距離Dfとの関係に相当すると説明している。ただし、本実施形態では、指定焦点距離Dfsが焦点距離Dfのピーク周辺である場合、検出位相θs1,θs2と指定焦点距離Dfsとの対応関係は、上述の基本関係とは異なる関係に設定されている。以下、具体的に説明する。
図10に示すように、指定焦点距離Dfsが、焦点距離Dfの正のピーク近傍に設定された第1所定値Dfaより大きい場合(Dfa<Ds)、指定焦点距離Dfsに対応する検出位相θs1,θs2は、ピーク周辺範囲θRaの開始位相θa1および終了位相θa2にそれぞれ等しい位相に設定されている。
このピーク周辺範囲θRaとは、焦点距離Dfが正のピークになる駆動信号Cfの位相πを中心とした位相範囲であり、第1所定値Dfaは、ピーク周辺範囲θRaの開始位相θa1および終了位相θa2に対応する焦点距離Dfの値である。
図11に示すように、指定焦点距離Dfsが、焦点距離Dfの負のピーク近傍に設定された第2所定値Dfbより小さい場合(Ds<Dfb)、指定焦点距離Dfsに対応する検出位相θs1,θs2は、ピーク周辺範囲θRbの開始位相θb1および終了位相θb2にそれぞれ等しい位相に設定されている。
このピーク周辺範囲θRbは、焦点距離Dfが負のピークになる駆動信号Cfの位相2π(または0)を中心とした位相範囲であり、第2所定値Dfbは、ピーク周辺範囲θRbの開始位相θb1および終了位相θb2に対応する焦点距離Dfの値である。
このような設定によれば、1回目のパルス照明が行われている間、または、次回発光のための充電時間の間に、2回目のパルス照明のための発光信号Ciが立ち上がるといった事態を回避できる。これにより、駆動信号Cfの周期毎に、2回のパルス照明を問題なく行うことができる。
また、指定焦点距離Dfsが第1所定値Dfa以下かつ第2所定値Dfb以上である場合(Dfb≦Ds≦Dfa)には、上述した基本関係が成立する。すなわち、駆動信号Cfの位相θと焦点距離Dfとの関係は、駆動信号Cfの位相θと焦点距離Dfとの関係に相当する。
本実施形態では、上述したように、駆動信号Cfの一周期中に2回のパルス照明を行うことにより、良好な明るさの画像を得るためにかかる時間を短縮できる。
あるいは、1回分の発光時間を短縮することにより、露光時間を長くすることなく、よりボケの少ない画像Lgを検出することができる。
これにより、焦点距離Dfの変動範囲内において、どのような指定焦点距離Dfsが入力されたとしても、一周期中に2回のパルス照明を問題なく行うことができる。
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
ただし、上記差異を解消する要望がある場合には、検出位相θs1,θs2のいずれか一方の検出位相(図12では検出位相θs2)は、1回分の発光時間tに対応する位相幅だけ、前方にずらした位相に設定されてもよい。
例えば、検出位相設定部711は、所定範囲内の指定焦点距離Dfs(例えばDfb≦Dfs≦Dfa)が入力された場合にのみ、2つの検出位相θt1,θt2を設定し、所定範囲外の指定焦点距離Dfs(例えばDfa<Dfs,Dfs<Dfb)が入力された場合には、1つの検出位相を設定してもよい。
例えば、パルス照明部5は、入力される発光信号Ciが立ち下がったとき、照明光Liを所定時間だけ発光するものであってもよい。または、パルス照明部5は、入力される発光信号Ciが立ち上がり(または立ち下がり)が継続している間、照明光Liを発光するものであってもよい。
液体レンズユニット3の具体的構成は適宜変更してよく、ケース31および振動部材32は円筒状のほか六角筒状などであってもよく、これらの寸法や液体35の属性も適宜選択することができる。
Claims (3)
- 入力される駆動信号に応じて焦点距離が周期的に変化する焦点距離可変レンズと、
前記焦点距離可変レンズを通して測定対象物の画像を検出する画像検出部と、
パルス発光して前記測定対象物を照明するパルス照明部と、
前記焦点距離可変レンズの指定焦点距離に基づいて、前記指定焦点距離に対応する2つの検出位相を設定する検出位相設定部と、
前記検出位相設定部により設定された前記2つの検出位相に基づいて、前記駆動信号の一周期中に2回のパルス発光を行うように前記パルス照明部を制御する発光制御部と、を備え、
前記指定焦点距離が前記焦点距離の変動波形の正のピーク側に設定された第1所定値より大きい場合、前記検出位相設定部は、前記第1所定値に対応する2つの位相を前記2つの検出位相として算出し、
前記指定焦点距離が前記焦点距離の変動波形の負のピーク側に設定された第2所定値より小さい場合、前記検出位相設定部は、前記第2所定値に対応する2つの位相を前記2つの検出位相として算出し、
前記第1所定値または前記第2所定値に対応する前記2つの位相の間の位相幅に対応する時間は、前記パルス照明部による1回分のパルス発光時間と次回発光のための準備時間とを合わせた時間以上であることを特徴とする焦点距離可変レンズ装置。 - 請求項1に記載の焦点距離可変レンズ装置であって、
前記検出位相設定部は、前記2つの検出位相のいずれか一方の検出位相を、前記パルス照明部による1回分のパルス発光時間に対応する位相幅だけずらした位相に設定し、前記2つの検出位相のそれぞれに応じた発光時間中の焦点距離の変動範囲の差異を解消することを特徴とする焦点距離可変レンズ装置。 - 入力される駆動信号に応じて焦点距離が周期的に変化する焦点距離可変レンズと、
前記焦点距離可変レンズを通して測定対象物の画像を検出する画像検出部と、
パルス発光して前記測定対象物を照明するパルス照明部と、を備える焦点距離可変レンズ装置の制御方法であって、
前記焦点距離可変レンズの指定焦点距離に基づいて、前記指定焦点距離に対応する2つ
の検出位相を設定することと、
前記2つの検出位相に基づいて、前記パルス照明部に、前記駆動信号の一周期中に2回のパルス発光を行わせることとを含み、
前記指定焦点距離が前記焦点距離の変動波形の正のピーク側に設定された第1所定値より大きい場合、前記第1所定値に対応する2つの位相を前記2つの検出位相として設定し、
前記指定焦点距離が前記焦点距離の変動波形の負のピーク側に設定された第2所定値より小さい場合、前記第2所定値に対応する2つの位相を前記2つの検出位相として設定し、
前記第1所定値または前記第2所定値に対応する前記2つの位相の間の位相幅に対応する時間は、前記パルス照明部による1回分のパルス発光時間と次回発光のための準備時間とを合わせた時間以上であることを特徴とする焦点距離可変レンズ装置の制御方法。
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