JP7477338B2 - 導電性インクジェットインク - Google Patents

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Description

本発明は、導電性インクジェットインクに関する。具体的には、電子部品の製造に用いられる導電性インクジェットインクに関する。
模様や文字などの画像を印刷対象に描画する印刷方法の一つとして、従来からインクジェット印刷が用いられている。かかるインクジェット印刷は、精度の高い画像を低コストかつオンデマンドで印刷でき、印刷対象へのダメージも少ないため、種々の分野への応用が検討されている。例えば、近年では、電子部品の製造における導電回路パターン(電極など)の形成にインクジェット印刷を使用することが検討されている。
かかる電子部品の製造では、金属粒子等を含む無機粉体を導電性材料として添加された導電性インクジェットインク(以下、「導電性インク」ともいう)が使用される。かかる導電性インクの一例として、銀や銀銅合金等のナノ金属パウダーを含むインクが特許文献1に開示されている。また、酸化銀、酸化銅、酸化パラジウム、酸化ニッケル、酸化鉛、酸化コバルト等の金属酸化物微粒子を含むインクが特許文献2に開示されている。一般に、インクジェット印刷を適切に行うためには、導電性インクが低粘度であり、かつ、無機粉体の濃度が高いことが求められる。上述した特許文献1、2では、これらのインクジェット適正を得るための技術が提案されている。
また、導電性インクジェットインクでは、印刷時の吐出性や印刷後の導電性等を確保するという観点から、無機粉体を安定的に分散させることも求められる。例えば、特許文献3では、酸点と塩基点とが表面に混在する固体微粒子(無機粉体)の分散性を高めるために、酸性吸着基又は塩基性吸着基の何れか一方のみを有する第1分散剤と、酸性吸着基と基性吸着基の両方を有する第2分散剤とを添加する技術が開示されている。
特表2008-513565号公報 特開2012-216425号公報 特開2015-62871号公報
ところで、電子部品の中には、プラズマ耐久性が求められる製品(例えば、静電チャック等)がある。かかる耐プラズマ性の電子部品では、基材にアルミナ、窒化アルミニウムなどのセラミック材料が用いられる。そして、耐プラズマ性の電子部品の製造工程では、セラミック材料を含む無機基材の焼結のために1200℃以上の高温焼成が施される。この耐プラズマ性の電子部品の導電性材料には、上述の高温焼成において導電回路パターンの形状を維持するため、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、クロム(Cr)等の融点1200℃以上の金属(以下、「高融点金属」とも言う)が用いられる。これらの高融点金属のなかでも、Pd、Pt、Rh等の貴金属は、導電性に優れているため、高品質の電子部品の導電回路パターンに好ましく用いられる。
本発明者らは、貴金属製の導電回路パターンを有する耐プラズマ性の電子部品をインクジェット印刷で製造することを検討している。しかしながら、貴金属粒子を使用したインクでは、他の高融点金属粒子と比べて液中での沈降や凝集が特に生じやすいという問題を有していた。このような沈降や凝集が生じやすい無機粉末を使用する場合には、インクジェットインクに分散剤を添加することが推奨されるが、貴金属粒子を含むインクは、分散剤による凝集抑制効果が小さいという性質も有している。このため、貴金属粒子を含む導電性インクは、インク粘度を低い状態で長期間維持することが特に難しく、実用に耐える吐出性と経日安定性を得ることが困難であった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、貴金属粒子を含有する導電性インクにおいて、インクジェット装置からの吐出性を改善し、かつ、好適な吐出性を長期間維持することを可能にする技術を提供することを目的とする。
ここに開示される導電性インクジェットインクは、電子部品の製造に用いられる。かかる導電性インクジェットインクは、少なくとも、平均一次粒子径が500nm以下の貴金属粒子を含む無機粉末と、分散剤と、有機溶剤とを含有し、インクジェットインクの総体積を100体積%としたときの無機粉末の体積が7.5体積%以下である。そして、ここに開示される導電性インクジェットインクでは、分散剤が、カチオン系分散剤と、ノニオン系分散剤とを含み、下記の式(1)および式(2)を満たすことを特徴とする。
1000≦(SA×V×SW)/MD1≦12000 (1)
0.35≦MD2/MD1≦2.25 (2)
なお、上記式(1)および式(2)中の「SA」は無機粉末の比表面積であり、「V」はインクジェットインクの総体積を100体積%としたときの無機粉末の体積であり、「SW」は無機粉末の比重であり、「MD1」はインクジェットインクの総モル数を100mol%としたときのカチオン系分散剤のモル濃度であり、「MD2」はインクジェットインクの総モル数を100mol%としたときのノニオン系分散剤のモル濃度である。
貴金属粒子は、他の高融点金属粒子(例えば、W、Mo等)と比べて粒子表面の酸点が少なく、分散剤が付着しにくいため、分散剤による凝集抑制効果を適切に発揮させることが難しい。これに対して、ここに開示される導電性インクでは、カチオン系分散剤とノニオン系分散剤を含む混合分散剤が使用されている。この混合分散剤を添加すると、貴金属粒子の表面にカチオン系分散剤が付着し、当該カチオン系分散剤にノニオン系分散剤が付着する。これによって、立体障害を生じさせるのに適切な分散剤を貴金属粒子に付着させることができるため、貴金属粒子を含むインクであっても好適な凝集抑制効果を発揮できる。そして、本発明者らは、貴金属粒子とカチオン系分散剤とノニオン系分散剤とを含むインクについて種々の実験を行った結果、上述の式(1)および式(2)に記載の条件を満たすことによって、インクジェットインクとして実用的な吐出性と経日安定性が発揮されることを見出した。以上の通り、ここに開示される技術によると、貴金属粒子を含有する導電性インクにおいて、インクジェット装置からの吐出性を改善し、かつ、好適な吐出性を長期間維持できる。
ここに開示される導電性インクジェットインクの好ましい一態様では、無機粉末の平均一次粒子径が150nm以上である。これによって、無機粉末が凝集して吐出性が低下することを抑制できる。
ここに開示される導電性インクジェットインクの好ましい一態様では、インクジェットインクの総体積を100体積%としたときの無機粉末の体積Vが1.5体積%以上である。これによって、少ない印刷回数で好適な厚みの導電回路パターンを形成できるため、電子部品の製造効率の向上に貢献できる。
ここに開示される導電性インクジェットインクの好ましい一態様では、無機粉末の総重量を100質量%としたときの貴金属粒子の質量が50質量%以上である。ここに開示される導電性インクにおける無機粉末は、貴金属粒子以外の無機粒子(例えば、他の高融点金属粒子やセラミック粒子)を含み得る。但し、より好適な導電性を有する導電回路パターンを形成するという観点から、無機粉末における貴金属粒子の含有量(質量%)を50質量%以上に設定した方が好ましい。
ここに開示される導電性インクジェットインクの好ましい一態様では、貴金属粒子は、白金族元素から選択される少なくとも一種の元素を含む。Pt、Pd、Rh等の白金族粒子を含むインクは、貴金属粒子の中でも特に分散剤による凝集抑制効果が発揮されにくい。しかし、ここに開示される技術によると、これらの白金族粒子を含むインクであっても、分散剤による凝集抑制効果を適切に発揮させ、実用的な吐出性と経日安定性を有するインクジェットインクを提供できる。
ここに開示される導電性インクジェットインクの好ましい一態様では、ポリビニルアセタール樹脂をさらに含有する。ポリビニルアセタール樹脂は、有機溶剤に溶解することによって無機粉末の沈殿を抑制する機能を有しているため、ここに開示される導電性インクへの添加剤として好適である。
また、上記ポリビニルアセタール樹脂を添加する態様では、ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂および/またはポリビニルホルマール樹脂であることが好ましい。これらの樹脂材料を添加することによって、無機粉体の沈殿をより適切に抑制し、吐出性や経日安定性の向上に貢献できる。
導電性インクの製造に用いられる撹拌粉砕機を模式的に示す断面図である。 インクジェット装置の一例を模式的に示す全体図である。 図2中のインクジェット装置のインクジェットヘッドを模式的に示す断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において、「A~B(A、Bは数値)」と記載した場合、「A以上B以下」を意味するものとする。
1.導電性インクジェットインク
ここに開示される導電性インクジェットインクは、少なくとも、(a)無機粉末と、(b)分散剤と、(c)有機溶剤とを含有する。以下、ここに開示される導電性インクジェットインクに含まれる各成分について説明する。
(a)無機粉末
無機粉末は、焼成後の印刷層(導電回路パターン)の主成分(母材)を構成する材料である。ここに開示される導電性インクでは、焼成後の印刷層に好適な導電性を付与するため、貴金属粒子を含む無機粉末が用いられている。本明細書における「貴金属粒子」は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)等の貴金属元素を含む金属粒子若しくは合金粒子である。なお、貴金属粒子は、融点が1200℃以上の金属元素を含む高融点金属粒子の一種である。このような高融点金属粒子を含む無機粉末を使用することによって、高温環境に晒された場合でも導電回路パターンの形状を維持できるため、高温焼成が行われる耐プラズマ性の電子部品(静電チャック等)を好適に製造できる。しかし、高融点金属粒子は、比重が大きい(比重10以上)ため、沈殿による吐出性や経日安定性の低下が生じやすい。さらに、高融点金属粒子の中でも貴金属粒子は、他の高融点金属粒子と比較して粒子表面に分散剤が付着しにくいため、分散剤による凝集抑制効果も発揮されにくい。しかしながら、ここに開示される技術によると、分散剤による凝集抑制効果を適切に発揮させ、貴金属粒子を含む導電性インクを安定して使用できる。なお、上述の貴金属粒子のなかでも、白金族元素(Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os)を含む金属粒子は、貴金属粒子の中でも分散剤による凝集抑制効果が特に発揮されにくいという特徴を有している。しかし、ここに開示される技術によると、これらの白金族粒子を含むインクであっても、好適な吐出性と経日安定性を得ることができる。
なお、無機粉末は、ここに開示される技術の効果を阻害しない範囲内であれば、貴金属粒子以外の無機粒子を含んでいてもよい。かかる無機粒子の一例として、貴金属粒子以外の高融点金属粒子が挙げられる。かかる高融点金属粒子は、例えば、W、Co、Ni、Fe、CrおよびMo等を含む金属粒子である。これらは、比較的安価であるため、貴金属粒子と混合することによって製造コストを低減できる。また、貴金属粒子以外の無機粒子の他の例として、ZrO、Al、AgO、CuO、PdO、NiO、CoO等のセラミック粒子が挙げられる。これらのセラミック粒子は、一般的な金属粒子よりも融点が高いため、貴金属粒子と混合することによって、印刷後の導電回路パターンの耐熱性の向上を図ることができる。なお、貴金属粒子以外の無機粒子を添加する場合には、無機粉末の総質量を100wt%としたときの貴金属粒子の含有量を50wt%以上にすることが好ましい。これによって、導電回路パターンの導電性と耐熱性を高いレベルで両立できる。
また、無機粉末の平均一次粒子径は、ここに開示される導電性インクの吐出性と経日安定性に影響し得る要素の一つである。具体的には、無機粉末の平均一次粒子径が大きすぎると、貴金属粒子が沈殿しやすくなり、経日安定性の低下が生じ得る。また、無機粉末の一次粒子径自体が大きすぎると、インクジェット装置の吐出口が詰まって吐出性が低下する虞がある。これらの点から、ここに開示される導電性インクでは、無機粉末の平均一次粒子径が500nm以下に設定されている。なお、より良好な吐出性と経日安定性を得るという観点から、無機粉末の平均一次粒子径は、475nm以下が好ましく、450nm以下がより好ましく、425nm以下がさらに好ましく、400nm以下が特に好ましい。一方、平均一次粒子径が小さくなるにつれて貴金属粒子同士が凝集しやすくなる傾向がある。かかる観点から、無機粉末の平均一次粒子径の下限は、150nm以上であることが好ましく、170nm以上がより好ましく、180nm以上がさらに好ましく、200nm以上が特に好ましい。なお、本明細書における「平均一次粒子径」は、SEM(Scanning Electron Microscope)観察画像に基づいて測定された値である。具体的には、導電性インクのSEM画像から、無機粉体の一次粒子をランダムに100個選択し、選択した粒子の算術平均粒子径を平均粒子径としている。
さらに、ここに開示される導電性インクでは、吐出性と経日安定性に影響し得る要素の一つとして、無機粉末の体積(V)も所定の範囲内に調節されている。具体的には、無機粉末の体積(V)が多くなりすぎると、分散剤による凝集抑制効果や沈殿抑制効果が発揮されたとしても、無機粉末の凝集や沈殿を十分に防止できずに吐出性や経日安定性が低下する可能性がある。このため、ここに開示される導電性インクでは、インク総体積を100体積%としたときの無機粉末の体積(V)が7.5体積%以下に設定されている。また、吐出性や経日安定性の低下をより好適に防止するという観点から、無機粉末材料の体積(V)は、7体積%以下であることが好ましく、6体積%以下であることがより好ましく、5体積%以下であることがさらに好ましく、4.6体積%以下であることが特に好ましい。一方、少ない印刷回数で好適な厚みの導電回路パターンを形成するという観点では、インク中の無機粉末の体積(V)を増加させた方が好ましい。かかる観点から、上記無機粉末の体積(V)の下限は、1体積%以上であることが好ましく、1.5体積%以上であることがより好ましく、2体積%以上であることがさらに好ましく、2.5体積%以上であることが特に好ましい。
また、詳しくは後述するが、ここに開示される導電性インクでは、分散剤による凝集抑制効果を適切に発揮させるために、無機粉末の比表面積(SA)と無機粉末の体積(V)と無機粉末の比重(SW)との積をカチオン系分散剤のモル濃度(MD1)で割った値((SA×V×SW)/MD1)が所定の範囲内の値に定められている。但し、無機粉末の比表面積(SA)自体は、上記(SA×V×SW)/MD1が所定の範囲を満たしていれば特に限定されず、所望の値に適宜調節することができる。例えば、無機粉末の比表面積(SA)の下限は、0.5m/g以上であってもよく、1m/g以上であってもよく、1.5m/g以上であってもよく、2m/g以上であってもよい。一方、無機粉末の比表面積(SA)の上限は、5m/g以下であってもよく、4.5m/g以下であってもよく、4m/g以下であってもよく、3.5m/g以下であってもよい。
なお、上述の式((SA×V×SW)/MD1)には、無機粉末の比重(SW)が含まれているが、当該「無機粉末の比重(SW)」は、無機粉末の成分を限定するものではない。換言すると、無機粉末は、導電回路パターンの形成に使用され得る従来公知の貴金属粒子を含む無機粉末を特に制限なく使用できる。詳しくは後述するが、ここに開示される技術によると、使用する無機粉末の比重(SW)に応じて、無機粉末の比表面積(SA)と、無機粉末の体積(V)と、カチオン系分散剤のモル濃度(MD1)を調節することによって、(SA×V×SW)/MD1が所定の範囲を満たすように調節できる。なお、Auの比重は19.3g/cm、Agの比重は10.5g/cm、Ptの比重は21.5g/cm、Pdの比重は12.0g/cm、Rhの比重は12.4g/cm、Irの比重は22.6g/cm、Ruの比重は12.5g/cm、Osの比重は22.6g/cmである。本明細書における「無機粉末の比重(SW)」は、無機粉末の総体積を100体積%としたときの貴金属粒子の体積%と、貴金属粒子以外の無機粒子の体積%と、上記貴金属粒子の比重と、貴金属粒子以外の無機粒子の比重とに基づいて算出した「無機粉末全体の平均比重」を指すものである。
(b)分散剤
ここに開示される導電性インクは分散剤を含有する。分散剤は、無機粉末中の金属粒子に対して高分子吸着による立体障害を形成し、金属粒子の凝集や沈降を抑制する。ここに開示される技術では、貴金属粒子を含むインクにおいて、上述の凝集抑制効果を好適に発揮させるために、カチオン系分散剤と、ノニオン系分散剤とを含有した混合分散剤を用いる。以下、各々の分散剤について説明する。
(b-1)カチオン系分散剤
カチオン系分散剤は、水中で電離して有機陽イオンとなるカチオン性官能基を有する分散剤である。かかるカチオン系分散剤は、酸点が少ない粒子表面にも付着しやすいという特性を有している。換言すると、カチオン系分散剤とノニオン系分散剤とを含む混合分散剤において、カチオン系分散剤は、貴金属粒子の表面に付着する分散剤として機能する。なお、カチオン系分散剤は、無機粉末の凝集抑制に用いられ得る従来公知のカチオン系分散剤を特に制限なく使用できる。かかるカチオン系分散剤の一例として、アミン系分散剤、HypermerKD1(クローダジャパン株式会社製)、DisperBYK-2008(ビックケミー・ジャパン株式会社製)などが挙げられる。アミン系分散剤の好適例として、脂肪酸アミン系分散剤、ポリエステルアミン系分散剤などが挙げられる。また、カチオン系分散剤の平均分子量は、ここに開示される技術の効果を阻害しない限りにおいて適宜調節できる。例えば、カチオン系分散剤の平均分子量は、1×10以上であってもよく、2×10以上であってもよく、3×10以上であってもよく、4×10以上であってもよい。一方、カチオン系分散剤の平均分子量の上限は、5×10以下であってもよく、1×10以下であってもよく、9×10以下であってもよく、8×10以下であってもよい。なお、本明細書における「平均分子量」は、東ソー株式会社製のGPC装置(HLC-8320)を使用し、移動相をテトラヒドロフランとして、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)に基づいて測定した重量平均分子量Mwである。
そして、ここに開示される導電性インクでは、十分な量のカチオン系分散剤を貴金属粒子の表面に適切に付着させるという観点で、無機粉末の比表面積(SA)と、無機粉末の体積(V)と、無機粉末の比重(SW)と、カチオン系分散剤のモル濃度(MD1)とが、下記の式(1)を満たすように調節されている。
1000≦(SA×V×SW)/MD1≦12000 (1)
具体的には、貴金属粒子の表面には分散剤が付着しにくいため、カチオン系分散剤を用いた場合であっても、無機粉末の比表面積(SA)と無機粉末の体積(V)と無機粉末の比重(SW)との積に対して十分なモル数のカチオン系分散剤を添加する必要がある。かかる観点から、ここに開示される導電性インクでは、上記式(1)のように、(SA×V×SW)/MD1の上限値が12000以下に設定されている。これによって、貴金属粒子の表面に十分な量のカチオン系分散剤を付着させることができる。なお、カチオン系分散剤をより好適に付着させるという観点から、上記(SA×V×SW)/MD1は、10000以下であることが好ましく、7500以下であることがより好ましく、6000以下であることがさらに好ましく、5000以下であることが特に好ましく、例えば4000以下である。一方、カチオン系分散剤のモル濃度(MD1)を多くし過ぎると、貴金属粒子に付着していないカチオン系分散剤(余剰のカチオン系分散剤)がインク内に多量に生じる可能性がある。この場合、余剰のカチオン系分散剤が凝集要因となり、所望の凝集抑制効果が発揮されなくなる可能性がある。かかる観点から、ここに開示される導電性インクでは、上記式(1)のように、(SA×V×SW)/MD1の下限値が1000以上に設定されている。なお、余剰のカチオン系分散剤の発生をより好適に抑制するという観点から、上記(SA×V×SW)/MD1の下限値は、1500以上が好ましく、2000以上がより好ましく、2500以上がさらに好ましく、3000以上が特に好ましい。
なお、上述した無機粉末の比表面積(SA)等と同様に、上記(SA×V×SW)/MD1を1000~12000の範囲内にできれば、カチオン系分散剤のモル濃度(MD1)自体は特に限定されない。例えば、カチオン系分散剤のモル濃度(MD1)は、0.001mol%以上であってもよく、0.005mol%以上であってもよく、0.007mol%以上であってもよく、0.01mol%以上であってもよい。一方、分散剤の体積(V)の上限は、0.5mol%以下であってもよく、0.1mol%以下であってもよく、0.07mol%以下であってもよく、0.05mol%以下であってもよく、0.04mol%以下であってもよい。なお、本明細書における「モル濃度(mol%)」は、インクの各成分(例えば、カチオン系分散剤)の重量%を分子量で割り、mol%を算出し、インクの総mol%が100となるように換算した値である。
(b-2)ノニオン系分散剤
ノニオン系分散剤は、水に溶解した際にイオン化する基を有さない分散剤である。ノニオン系分散剤は、カチオン系分散剤と比べて貴金属粒子の表面に付着し難い一方で、高い分散性を発揮し、吐出性と経日安定性の向上に大きく貢献するという特性を有している。ここに開示される導電性インクでは、上述した通り、カチオン系分散剤が貴金属粒子に付着しているため、当該カチオン系分散剤にノニオン系分散剤が付着する。このように、カチオン系分散剤を介して貴金属粒子にノニオン系分散剤を付着させることによって、貴金属粒子を含むインクであるにもかかわらず、分散剤による凝集抑制効果を好適に発揮させることができる。
ここに開示される導電性インクにおいて、ノニオン系分散剤は、従来公知のノニオン系分散剤を特に制限なく使用できる。かかるノニオン系分散剤の一例として、エーテル系分散剤、エステル系分散剤、エーテルエステル系分散剤、含窒素系分散剤などが挙げられる。ノニオン系分散剤の一例として、HypermerKD13(クローダジャパン株式会社製)、Synperonic PE/L61(クローダ株式会社製)などが挙げられる。なお、カチオン系分散剤と同様に、ノニオン系分散剤の平均分子量は、ここに開示される技術の効果を阻害しない限りにおいて適宜調節することができる。例えば、ノニオン系分散剤の平均分子量は、1×10以上であってもよく、2×10以上であってもよく、3×10以上であってもよく、4×10以上であってもよい。一方、ノニオン系分散剤の平均分子量の上限は、2×10以下であってもよく、1×10以下であってもよく、8×10以下であってもよく、6×10以下であってもよい。
そして、ここに開示される導電性インクでは、カチオン系分散剤にノニオン系分散剤を適切に付着させるという観点から、カチオン系分散剤のモル濃度(MD1)と、ノニオン系分散剤のモル濃度(MD2)とが下記の式(2)を満たすように調節されている。
0.35≦MD2/MD1≦2.25 (2)
具体的には、ノニオン系分散剤をカチオン系分散剤に適切に付着させるためには、カチオン系分散剤に対して十分なモル数のノニオン系分散剤が添加されている必要がある。かかる観点から、ここに開示される技術では、上記式(2)のように、MD2/MD1の下限値が0.35以上に設定される。これによって、貴金属粒子に付着したカチオン系分散剤にノニオン系分散剤を適切に付着させることができる。なお、カチオン系分散剤をより好適に付着させるという観点から、上記MD2/MD1は、0.4以上が好ましく、0.45以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましく、0.75以上が特に好ましい。一方、カチオン系分散剤に対してノニオン系分散剤を多くし過ぎると、カチオン系分散剤に付着していないノニオン系分散剤(余剰のノニオン系分散剤)が多量に生じてインク粘度を増大させるため、却って吐出性が低下する可能性がある。このため、ここに開示される導電性インクでは、上記式(2)のように、MD2/MD1の上限値が2.25以下に設定されている。なお、余剰のノニオン系分散剤の発生をより好適に抑制して好適な吐出性を確保する観点から、上記MD2/MD1の上限値は、2.1以下が好ましく、2以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。
なお、MD2/MD1が0.35以上2.25以下の範囲内であれば、ノニオン系分散剤のモル濃度(MD2)自体は特に限定されない。例えば、ノニオン系分散剤のモル濃度(MD2)は、0.001mol%以上であってもよく、0.005mol%以上であってもよく、0.007mol%以上であってもよく、0.01mol%以上であってもよい。一方、ノニオン系分散剤のモル濃度(MD2)の上限は、0.5mol%以下であってもよく、0.1mol%以下であってもよく、0.07mol%以下であってもよく、0.05mol%以下であってもよい。
(c)有機溶剤
ここに開示される導電性インクは有機溶剤を含有する。有機溶剤は、ここに開示される技術の効果を阻害しない限り、従来のインクジェットインクに使用され得る有機溶剤を特に制限なく使用できる。なお、インクの吐出性や経日安定性を考慮すると、低粘度かつ高沸点の有機溶剤を特に好ましく用いることができる。かかる有機溶剤の好適例として、グリコールアセテートや脂肪族モノアルコールなどが挙げられる。グリコールアセテートとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート(BDGAC)等が挙げられる。また、脂肪族モノアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、n-アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、イソオクタノール、ノナノール、デカノール、イソウンデカノール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の直鎖又は分岐脂肪族アルコールが挙げられる。なお、上述した分散剤による立体障害をより適切に生じさせるという観点から、上述の有機溶剤のなかでもSP値(Solubility Parameter)が8(cal/cm1/2~9(cal/cm1/2程度の有機溶剤(ブチルジグリコールアセテートなど)が特に好ましい。
(d)その他の成分
ここに開示される導電性インクは、本発明の効果を損なわない範囲で、インクジェットインク(典型的には、無機基材用インクジェットインク)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。かかる添加剤の一例として、ポリビニルアセタール樹脂が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂は、有機溶剤中に分散し、分散剤による沈殿抑制効果を補助する機能を有しているため、ここに開示される導電性インクの添加剤として好適である。ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することによって生成される樹脂を包含する。かかるポリビニルアセタール樹脂の一例として、ポリビニルブチラール樹脂やポリビニルホルマール樹脂(ビニロン)等が挙げられる。
なお、ポリビニルアセタール樹脂の分子量は、ここに開示される技術の効果を阻害しない限りにおいて適宜調節することができる。例えば、ポリビニルアセタール樹脂の平均分子量が小さくなり過ぎると、沈殿抑制効果を補助する機能が低下する傾向がある。このため、ポリビニルアセタール樹脂の平均分子量は、1×10以上が適当である。なお、沈殿抑制作用をより好適に発揮させるという観点から、上記平均分子量の下限は、2×10以上が好ましく、3×10以上がより好ましく、4×10以上がさらに好ましく、5×10以上が特に好ましい。一方、ポリビニルアセタール樹脂の平均分子量が大きくなり過ぎると、導電性インクの粘度が上昇するため、インクの吐出性が却って低下する可能性がある。かかる観点から、ポリビニルアセタール樹脂の平均分子量の上限は50×10以下が適当である。なお、好適な吐出性を確保するという観点から、上記平均分子量の上限は、25×10以下であることが好ましく、15×10以下であることがより好ましく、11×10以下であることがさらに好ましく、10×10以下であることが特に好ましい。
また、ポリビニルアセタール樹脂の含有量についても同様に、ここに開示される技術の効果を阻害しない限りにおいて適宜調節することができる。ここで、ポリビニルアセタール樹脂の含有量は、有機溶剤の重量(W)に対するポリビニルアセタール樹脂の重量(WPA)の割合(WPA/W)の観点で調節することが好ましい。具体的には、分散剤による沈殿抑制効果を適切に補助するという観点から、上記WPA/Wは0.1wt%以上が適当である。なお、より好適な沈殿抑制作用を発揮させるという観点から、上記WPA/Wの下限は、0.2wt%以上が好ましく、0.4wt%以上がより好ましく、0.8wt%以上がさらに好ましく、1wt%以上が特に好ましい。また、ポリビニルアセタール樹脂の含有量は、無機基材の表面に対するインクの定着強度にも影響し得る。かかる観点からは、WPA/Wを0.5wt%以上にすることが好ましい。一方、ポリビニルアセタール樹脂の含有量が多すぎると、導電性インクの粘度が上昇して吐出性が低下する可能性がある。かかる観点から、WPA/Wの上限値は3wt%以下が適当である。なお、より好適な吐出性を確保するという観点から、WPA/Wの上限は、2.5wt%以下が好ましく、2wt%以下がより好ましく、1.75wt%以下がさらに好ましく、1.5wt%以下が特に好ましい。
なお、ここに開示される導電性インクは、ポリビニルアセタール樹脂以外の添加剤を含んでいてもよい。なお、ポリビニルアセタール樹脂以外の添加剤の種類および添加量については、従来公知の技術常識に基づいて適宜変更でき、本発明を特徴づけるものではないため、詳しい説明を省略する。
2.導電性インクの調製
次に、ここに開示される導電性インクを調製(製造)する手順について説明する。ここに開示される導電性インクは、上述の各成分を混合した後、無機粉体の解砕・分散を行うことによって調製され得る。図1は導電性インクの製造に用いられる撹拌粉砕機を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明は、ここで開示される導電性インクを限定することを意図したものではない。
ここに開示される導電性インクを製造するに際には、先ず、上述した各成分を秤量して混合することによって当該インクの前駆物質であるスラリーを調製する。このときに使用した無機粉末によって「無機粉末の比重(SW)」が決定される。そして、本工程では、調整後の導電性インクにおいて、上記式(1)および式(2)を満たすように、「無機粉末の体積(V)」と、「カチオン系分散剤のモル濃度MD1」と、「ノニオン系分散剤のモル濃度MD2」の各々が調節される。
次に、図1に示すような撹拌粉砕機100を用いて、スラリーの撹拌と無機粉体の解砕を行う。具体的には、上記したスラリーに解砕用ビーズ(例えば、直径0.05mmのジルコニアビーズ)を添加した後に、供給口110から撹拌容器120内にスラリーを供給する。この撹拌容器120内には、複数の撹拌羽132を有したシャフト134が収容されている。かかるシャフト134の一端はモータ(図示省略)に取り付けられており、当該モータを稼働させてシャフト134を回転させることによって複数の撹拌羽132でスラリーを送液方向Dの下流側に送り出しながら撹拌する。この撹拌の際に、スラリーに添加された解砕用ビーズによって貴金属粒子が解砕され、微粒化した無機粉体がスラリー中に分散される。
そして、送液方向Dの下流側まで送り出されたスラリーは、フィルター140を通過する。これによって、解砕用ビーズや微粒化されなかった無機粉体がフィルター140によって捕集され、無機粉体が微粒化された状態で十分に分散された導電性インクが排出口150から排出される。本工程において、フィルター140の孔径、解砕用ビーズの平均粒子径、スラリーを撹拌粉砕機100に供給する回数などを調節することによって、導電性インクにおける「無機粉体の平均一次粒子径」と「無機粉末の比表面積SA」を所望の範囲に調節できる。
このようにして得られた導電性インクは、分散剤による凝集抑制効果が適切に発揮されるように(すなわち、上述の式(1)および式(2)を満たすように)、種々の条件が調節されているため、貴金属粒子を含んでいるにもかかわらず、高いレベルの吐出性と経日安定性を得ることができる。
3.導電性インクの用途
次に、ここに開示される導電性インクの用途について説明する。ここに開示される導電性インクは、電子部品の製造に使用される。なお、本明細書において「電子部品に使用される」とは、ここに開示される導電性インクを無機基材の表面に直接付着させる態様だけでなく、転写紙等の中間材を介して間接的に無機基材の表面に付着させる態様も包含し得る。
(1)印刷
図2はインクジェット装置の一例を模式的に示す全体図である。図3は図2中のインクジェット装置のインクジェットヘッドを模式的に示す断面図である。
ここに開示される導電性インクは、図2に示すようなインクジェット装置1によって、印刷対象の表面に印刷される。印刷対象である無機基材Wは、特に限定されず、一般的な電子部品の基材として使用され得るものを特に制限なく使用できる。なお、ここに開示される導電性インクは、高融点金属粒子の一種である貴金属粒子を含む無機粉末を用いているため、1200℃以上の高温焼成が施されるアルミナ製や窒化アルミニウム製の無機基材Wに特に好ましく使用され得る。
図2に示すインクジェット装置1の構造について説明する。かかるインクジェット装置1は、導電性インクを貯蔵するインクジェットヘッド10を備えている。このインクジェットヘッド10は、印刷カートリッジ40の内部に収容されている。印刷カートリッジ40は、ガイド軸20に挿通されており、当該ガイド軸20の軸方向Xに沿って往復動するように構成されている。また、図示は省略するが、このインクジェット装置1は、ガイド軸20を垂直方向Yに移動させる移動手段を備えている。これによって、インクジェット装置1は、無機基材Wの所望の位置に導電性インクを吐出できる。
図2に示すインクジェットヘッド10には、例えば、図3に示されるようなピエゾ型のインクジェットヘッドが用いられる。かかるピエゾ型のインクジェットヘッド10には、ケース12内にインクを貯蔵する貯蔵部13が設けられており、当該貯蔵部13が送液経路15を介して吐出部16と連通している。この吐出部16には、ケース12外に開放された吐出口17が設けられていると共に、当該吐出口17に対向するようにピエゾ素子18が配置されている。かかるインクジェットヘッド10では、ピエゾ素子18を振動させることによって、吐出部16内のインクを吐出口17から無機基材W(図2参照)に向けて吐出する。このとき、ここに開示される導電性インクは、分散剤による凝集抑制効果が適切に発揮されるように調製されているため、貯蔵部13において長期間に亘ってインク粘度を低い状態に維持できる。このため、吐出口17から精度高くインクを吐出することができ、印刷対象である無機基材Wの表面に精密なパターン(画像)を印刷できる。
(2)焼成
ここに開示される製造方法では、所望のパターンが印刷された無機基材Wを、最高焼成温度が1200℃以上(好ましくは1200℃~2000℃、より好ましくは1300℃~1600℃)になるような条件で焼成する。これによって、有機溶剤が蒸発し、分散剤等の樹脂材料が焼失すると共に、無機粉末が無機基材Wの表面に定着し、導電回路パターンが形成される。このとき、ここに開示される導電性インクには、融点1200℃以上の高融点金属粒子の一種である貴金属粒子が含まれているため、焼成中に無機粉末が溶融して導電回路パターンの形状が崩れることを防止できる。また、貴金属は、他の高融点金属よりも高い導電性を有しているため、高性能の導電回路パターンの形成に貢献できる。このため、ここに開示される導電性インクによると、高性能の耐プラズマ性の電子部品(静電チャック等)を適切に製造できる。
[試験例]
以下、本発明に関する試験例を説明するが、かかる試験例は本発明を限定することを意図したものではない。
<サンプルの作成>
無機粉末と分散剤と有機溶剤とを含む23種類のインクジェットインク(例1~23)を調製した。具体的には、各材料を混合したスラリーを調製し、解砕用ビーズ(直径0.05mmのジルコニアビーズ)を使用した解砕・分散処理を行うことによって、例1~23のインクを得た。各例で使用した材料を以下で説明する。
(無機粉末)
本試験では、貴金属粒子としてパラジウム粒子(融点:1552℃、比重SW:12.0)を含む無機粉末を使用した。なお、表1に示すように、本試験では、無機粉末の平均一次粒子径と、比表面積SAと、含有量(体積%)を各例で異ならせた。
(分散剤)
まず、本試験において使用した分散剤を以下に列挙する。
・分散剤C1:カチオン系分散剤(クローダジャパン株式会社製:Hypermer KD-1)
・分散剤C2:カチオン系分散剤(日油株式会社製、AD-508E)
・分散剤C3:カチオン系分散剤(クローダジャパン株式会社製:Hypermer KD-3)
・分散剤N1:ノニオン系分散剤(クローダジャパン株式会社製:Hypermer KD-13)
・分散剤N2:ノニオン系分散剤(クローダ株式会社製:Synperonic PE/L61)
・分散剤N3:ノニオン系分散剤(クローダジャパン株式会社製:Hypermer KD-14)
・分散剤A1:アニオン系分散剤(クローダジャパン株式会社製:Hypermer KD-4)
・分散剤A2:アニオン系分散剤(クローダジャパン株式会社製:Hypermer KD-16)
例14と例18を除く各例では、第1の分散剤と第2の分散剤を混合した混合分散剤を使用した。各例で使用した分散剤を表1に示す。一方、例14では、ノニオン系分散剤である分散剤N1のみを含む導電性インクを調整した。また、例18では、カチオン系分散剤である分散剤C1のみを含む導電性インクを調整した。そして、本試験では、「(SA×V×SW)/MD1」および「MD2/MD1」が各例で異なるように、分散剤のモル濃度(MD1、MD2)と、無機粉末の比表面積(SA)と、無機粉末の体積(V)を調節した。各例における(SA×V×SW)/MD1およびMD2/MD1を表1に示す。
(有機溶剤)
有機溶剤として、株式会社ダイセル製のブチルジグリコールアセテート(BDGA)を使用した。なお、本試験では、各例における有機溶剤の重量(W)を30gに設定した。また、本試験では、添加剤として、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製、エスレックシリーズ)を有機溶剤に添加した。
<評価試験>
(1)吐出性
インクジェット装置(富士フィルム株式会社製:マテリアルプリンター DMP-2850)を使用し、各例のインクを10pl/dot、1200dpiの吐出条件で無機基材(アルミナ製)の表面に膜状に印刷した。このとき、上記インクジェット装置に付属のカメラを用いて吐出状態を目視で観察した。ここでは、吐出口から無機基材に向かって直線的にインクが吐出された場合を「◎」、吐出口からインクが吐出された場合を「○」、吐出口からインクが吐出されなかった場合を「×」と評価した。評価結果を表1に示す。
(2)経日安定性
インク調製直後の無機粉末の平均粒子径(D1)と、60℃で1ヶ月保持した後の無機粉末の平均粒子径(D2)とを、マルバーン・パーティカル株式会社製のゼータサイザーを用い、動的光散乱法に基づいて測定した。そして、インク調製直後の平均粒子径(D1)に対する保持試験後の平均粒子径(D2)の割合(D2/D1)を算出した。そして、本評価では、当該D2/D1が1以下の場合を「◎」、1超1.5未満の場合を「○」、1.5以上の場合を「×」と評価した。評価結果を表1に示す。
Figure 0007477338000001
表1に示すように、例1~10では、吐出性と経日安定性の何れにおいても好適な結果が得られた。このことから、カチオン系分散剤とノニオン系分散剤を混合した分散剤を使用し、「無機粉体の平均一次粒子径」、「無機粉体の体積」、「(SA×V×SW)/MD1」、および「MD2/MD1」の各々を所定の範囲に調節することによって、貴金属粒子を含む導電性インクの吐出性と経日安定性を改善できることが分かった。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1 インクジェット装置
10 インクジェットヘッド
12 ケース
13 貯蔵部
15 送液経路
16 吐出部
17 吐出口
18 ピエゾ素子
20 ガイド軸
40 印刷カートリッジ
100 撹拌粉砕機
110 供給口
120 撹拌容器
132 撹拌羽
134 シャフト
140 フィルター
150 排出口

Claims (7)

  1. 電子部品の製造に用いられる導電性インクジェットインクであって、
    少なくとも、平均一次粒子径が500nm以下の貴金属粒子を含む無機粉末と、分散剤と、有機溶剤とを含有し、
    前記インクジェットインクの総体積を100体積%としたときの前記無機粉末の体積が7.5体積%以下であり、
    前記分散剤が、カチオン系分散剤と、ノニオン系分散剤とを含み、
    下記の式(1)および式(2)を満たすことを特徴とする、導電性インクジェットインク。
    1000≦(SA×V×SW)/MD1≦12000 (1)
    0.35≦MD2/MD1≦2.25 (2)
    なお、上記式(1)および式(2)中の「SA」は前記無機粉末の比表面積であり、「V」は前記インクジェットインクの総体積を100体積%としたときの前記無機粉末の体積であり、「SW」は前記無機粉末の比重であり、「MD1」は前記インクジェットインクの総モル数を100mol%としたときの前記カチオン系分散剤のモル濃度であり、「MD2」は前記インクジェットインクの総モル数を100mol%としたときの前記ノニオン系分散剤のモル濃度である。
  2. 前記無機粉末の平均一次粒子径が150nm以上である、請求項1に記載の導電性インクジェットインク。
  3. 前記インクジェットインクの総体積を100体積%としたときの前記無機粉末の体積Vが1.5体積%以上である、請求項1または2に記載の導電性インクジェットインク。
  4. 前記無機粉末の総重量を100質量%としたときの前記貴金属粒子の質量が50質量%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性インクジェットインク。
  5. 前記貴金属粒子は、白金族元素から選択される少なくとも一種の元素を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性インクジェットインク。
  6. ポリビニルアセタール樹脂をさらに含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の導電性インクジェットインク。
  7. 前記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂および/またはポリビニルホルマール樹脂である、請求項6に記載の導電性インクジェットインク。
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