JP7474973B2 - 装身具の製造方法及びこの方法により製造される装身具 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、金属板の表面に有線七宝、無線七宝又は透明七宝などで形状模様を形成した後に、七宝以外の金属露出面にニッケル、クロム、金、銀などのメッキを施した七宝焼製品が提案されている。
また、特許文献2には、表面金属板に切抜部を設け、この切抜部内に七宝が凹面をなすように又は前記切抜部から七宝が盛り上がるようにした装飾器物が提案されている。
さらに特許文献3には、金属製素地に凹凸模様をプレスや鍛造で形成し、銀メッキを施した後に前記凹凸模様の孔又は溝内に七宝釉を充填した七宝加工方法が提案されている。
図7(a)に示すように、チタンやステンレスなどの金属で形成された装身具1の本体11には、形成しようとする七宝模様の形状に合わせて、その少なくとも一部に孔11aが形成されている。
次いで、図7(b)に示すように、本体11の表面にメッキ層、塗装層、金属蒸着層などの被覆層12を形成する。
この後、図7(c)に示すように、孔11a内に七宝風塗料13(以下、七宝13と記載する)を充填する。
図7(e)に示すような七宝13の表面を本体11の縁部11bと面一にした装身具1を得るには、図7(c)のように七宝13の表面が縁部11bから盛り上がるように孔11aに充填した後、図7(d)に示すように七宝13の表面をグラインダGなどで研磨すればよい。
被覆層12にグラインダGが接触しないぎりぎりを見極めて七宝13を研磨すればよいが、このような加工は非常に困難で熟練を要する上、大量生産には不向きでコスト高になるという問題がある。
また、被覆層12を形成する工程(図7(b)の工程)を七宝13の充填・研磨工程(図7(c)(d)の工程)の後にすることも考えられるが、七宝13が被覆層12の形成時に高温に晒されると炭化・剥離しやすくなるという問題がある。例えば、本体11がチタンで形成されている場合において、その表面に電気メッキ法などでメッキ層を形成する場合は、メッキ後に本体11を200℃~400℃に加熱する熱処理(ベーキング)を行う必要があるが、このような高温で本体11を加熱すると七宝13が炭化・剥離するおそれがある。そのため、このような場合に、本体11に形成できる被覆層12は低温での形成が可能なものに限られ、装身具1の本体11の材質や外観のバリエーションが限定されるという問題がある。
なお、前記カバーを前記本体に対して固定する手段としては、前記カバーを孔又は溝に嵌め込むことによる物理的固定の他、着色剤又は着色剤に含まれる成分を接着剤として利用するもの、前記カバーの周縁及び/又は前記孔や溝の開口周縁に接着剤を塗布して接着するものなどを挙げることができる。
着色剤は、前記孔又は溝に充填し前記カバーを被せた後に加熱して硬化させるが、前記着色剤を硬化させるときの温度は50℃~120℃程度であるので、カバーはこの温度でも変形及び変質等しない材質のもの(例えばポリカーボネートやガラス)を選択する。
例えば光干渉機能を有するコーティング層を形成することで、見る方向によって装身具の色が変化し、例えば着色剤として七宝風塗料を用いた場合に、七宝の持つ透明感と質感と相俟ってさらに美観や優美性を高めることができる。このようなカバーを用いることで、装身具にさらなる付加価値を付与することが可能になる。また、防護機能を有するコーティング層を形成することで、カバー表面の傷つきを防止することができる。
請求項4に記載するように、前記シート状部材の少なくとも一方の面に、予め光干渉機能を含む機能性のコーティング層を形成し、前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成するか、又は、前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成した後に前記コーティング層を形成するようにしてもよい。
また、請求項5に記載するように、前記カバーには文字、図形、模様又はこれらの組み合わせを形成するようにしてもよい。この場合も、前記シート状部材に文字、図形、模様又はこれらの組み合わせを印刷、手書き又は刻印で形成して前記カバー形状に沿ってカバーを打ち抜き又は切り抜き形成するようにしてもよいし、前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成した後、個々のカバーに前記文字、図形、模様又はこれらの組み合わせ(文字等)を印刷、手書き又は刻印で形成するようにしてもよい。
コーティング層とともに塗料などを使って印刷や手書きで文字等をカバーに形成する場合は、コーティング層と文字等を同じ面に形成してもよいし、一方の面にコーティング層を形成し、コーティング層を形成しない他方の面に文字等を形成するようにしてもよい。同じ面にコーティング層と文字等とを階層的に形成してもよく、コーティング層が文字層の下であっても上であってもよい。
また、前記カバーには防護機能や光干渉機能などの機能性コーティング層が形成されていてもよく、前記カバーには文字、図形、模様又はこれらの組み合わせを形成してもよい。
さらに、前記着色剤は七宝風の模様を現出する塗料であってもよい。
着色剤として七宝風塗料を用い、前記カバーに光干渉機能を有するコーティング層を形成することで、前記七宝風塗料と相俟って、見る方向によって装身具の色が変化する美観と優美性の高い付加価値の高い装身具を得ることが可能になる。また、防護機能を有するコーティング層を形成することで、カバー表面の傷つきにくい装身具を得ることができる。
図1は、本発明の装身具の製造方法を説明する概略図で、装身具を構成する本体の断面図、図2(a)は、本発明の製造方法の手順を説明する流れ図、図2(b)(c)(d)はカバーにコーティング層を形成する場合の本発明の別の製造方法の手順を説明する(a)のA部の部分的な流れ図、図3は、シート部材にカバーの型取りの線を形成した部分斜視図、図4は、この実施形態の装身具の構成を説明する一部を破断した分解斜視図である。
また、図2(a)に示すように、上記した本体11を準備するほか、孔11aに充填する七宝13を準備する(図2(a)のステップS2)。また、アクリル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂又はガラスなどで形成された透明又は半透明のシート状部材を準備する(同S3)。なお、七宝13を硬化させる際には、本体11を50℃~120℃で3時間程度加熱することから、前記シート部材はこのような加熱下でも変形や変質しないもの、例えば、ポリカーボネートやガラスなどで形成されたものを選択する。
着色剤としての七宝13は、加熱硬化前は液状又は半液状のもので、例えば七宝模様のアクセサリを作成する際に使用される市販のものを使用することができる。七宝13に金属粉などを添加するなどして、ラメ模様が七宝13の表面に表れるようにしてもよい。
また、図3(a)(b)に示すように、カバー14の表面又は裏面若しくは表裏両面には、防護機能や光干渉機能などの機能を有するコーティング層Saや、印刷、手書、刻印などによる文字、図形、模様又はこれらの組み合わせ(図示の例ではTOKYOの文字:以下、文字、図形、模様又はこれらの組み合わせを総称して「文字等Sb」と記載する)を形成してもよい。
例えば防護機能を有するコーティング層Saをカバー14に形成することで、カバー14の傷つきを抑制することができる。また、光干渉機能を有するコーティング層Saをカバー14に形成することで、見る方向から色が変化する装身具1を得ることができる。このような光干渉機能を有するコーティング層Saを形成すれば、前記七宝風塗料と相俟って、見る方向によって装身具の色が変化する美観と優美性の高い付加価値の高い装身具1を得ることができる。
また、文字等Sbを形成することで、装身具1に広告性を担持させたり、装身具1の装飾性を高めたりすることができる。
さらに、図2(d)に示すように、図2(a)のAの工程において、型取り線14′に沿ってカバー14を切り抜き又は打ち抜く工程(S5)の後に、カバー14のそれぞれにコーティング層Saを形成する工程(S5′)を設けてもよい。またさらに、特に図示はしないが、予めコーティング層Saが形成されたシート状部材Sを購入して準備するようにしてもよい。
また、文字等Sbは刻印の他、UV塗料などの塗料を用いた印刷や手書きによって形成することができる。印刷や手書きで文字等Sbを形成する工程は、コーティング層Saを形成する前であっても後であってもよい。すなわち、文字等はコーティング層Saの上であってもよいし下であってもよい。さらに、カバー14の一面にコーティング層Saを形成し、コーティング層Saを形成しない他面に文字等Sbを形成するようにしてもよい。
なお、文字等を刻印によって形成する場合は、文字等Sbを形成した後にコーティング層を形成するのが好ましい。
なお、文字等の形成においても、コーティング層Saの場合と同様に、シート状部材Sに文字等Sbを形成した後に、カバー形状に沿ってカバー14を打ち抜き又は切り抜き形成するようにしてもよいし、カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成した後、個々のカバー14に文字等Sbを形成するようにしてもよい。
例えば、加熱硬化の前後で七宝13が膨張又は収縮しない場合(七宝13の容量が変化しない場合)において、七宝13の容量を孔11aの容積からカバー14の体積を差し引いた容積と同じとすれば、カバー14の表面を縁部11bと同一の面内に位置させることができる。
七宝13の加熱硬化後は、必要に応じて洗浄や磨きなどの仕上げを施し(同S11)、図1(e)に示すような装身具1が完成する(同S12)。
図5及び図6は本発明の装身具1の他の実施形態を示す図で、(a)は本体の一部を破断した拡大分解斜視図、(b)は(a)のI-I方向断面図、図6は本発明の装身具のさらに別の実施形態で、本体の断面拡大図である。
図5の装身具は、円柱状の本体11の側面に凹状の孔11aを形成し、この孔11a内に七宝13を充填してカバー14を嵌め込んでいる。カバー14は、本体11の側面に沿うように円弧状に形成するのが好ましい。
図6の装身具は、本体11に貫通状の孔11a′が形成されていて、その両側からカバー14が嵌め込まれている。本体11の表と裏とでカバー14に異なるコーティング層Saや異なる文字等Sbを形成してもよいし、表と裏とでカバー14の形状(すなわち孔11a′の開口形状)を異ならせてもよい。
なお、図6の例では、表裏両面側のカバー14を、縁部11bよりも僅かに凹ませて位置させている。
さらに予め設定された容量の着色剤を本体11の孔11a内に自動充填し、予め設定された形状に形成されたカバーを例えばエア吸引のハンド部を備えたカバー搬送装置で本体11まで搬送して孔11a内に嵌め込むようにすることで、自動生産及び大量生産が可能になり、美観と優雅性とを併せ持ち高級感のある装身具をより安価かつ低コストで製造することが可能なる。
例えば、上記の説明で本体11は金属であるとして説明したが、本発明は樹脂、セラミック、木、竹など金属以外の材料で形成された本体11を有する装身具にも適用が可能である。
また、着色剤も七宝13に限らず樹脂塗料や漆(人工漆を含む)など他の着色剤も使用が可能である。また、着色剤は有色に限らず無色であってもよい。なお、七宝13を用いる場合は、上記したように七宝13が接着剤として作用してカバー14を本体11に固定することができるが、カバー14を本体11に対して固定する他の手段としては、カバー14を孔又は溝の開口部分に嵌め込んで物理的に固定する手段、着色剤又は着色剤に含まれる成分を接着剤として利用する手段、カバー14の周縁及び/又は前記孔又は溝の開口周縁に接着剤を塗布して固定する手段などを挙げることができる。
さらに、本体11には有底の孔11a又は貫通状の孔11a′を形成するものとして説明したが、孔11a,11a′の代わりに溝を形成してもよい。
また、上記の説明でカバー14の表面、裏面又は表裏両面にはコーティング層Saや文字等Sbを形成するものとして説明したが、コーティング層Saや文字等Sbは必ずしもカバー14に形成する必要はなく、また、コーティング層Saのみ又は文字等Sbのみをカバー14の表面、裏面又は表裏両面に形成するものとしてもよい。
さらに装身具の一例として眼鏡、ネックレス、ブレスレット、ブローチ、イヤリング、アンクレッド、指輪、時計側及び時計ベルトを挙げたが、本発明はこれ以外の装身具にも広範に適用が可能である。
11 本体
11a 孔
11b 縁部
12 被覆層
13 七宝(着色剤)
14 カバー
14′ カバー型取り線
S シート状部材
Sa コーティング層(機能層)
Sb 文字等
Claims (6)
- 本体の少なくとも一部に孔又は溝が形成され、この孔又は溝に着色剤が充填されるとともに、前記本体の表面にメッキ層、塗装層、金属蒸着層を含む被覆層が形成された眼鏡、ネックレス、ブレスレット、ブローチ、イヤリング、アンクレッド、指輪、時計側又は時計ベルトを含む装身具の製造方法において、
液状又は半液状の前記着色剤を準備し、
前記孔又は溝の形状に一致させた形状の透明又は半透明のカバーを準備するとともに、前記孔又は溝の容積に基づいて前記カバーの肉厚及び前記着色剤の容量を予め設定し、
前記本体に前記被覆層を形成し、
前記孔又は溝に前記着色剤を充填し、
前記着色剤の上に前記カバーを被せ、充填する前記着色剤の容量と前記カバーの肉厚とから、前記カバーの表面を前記孔又は溝の表面に対して予め設定された高さ位置に位置させ、
前記本体を加熱して前記着色剤を硬化させることで前記カバーを前記本体に対して固定したこと、
を特徴とする装身具の製造方法。 - 前記カバーは、一枚のシート状部材に予め複数のカバー形状を配置し、前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成されることを特徴とする請求項1に記載の装身具の製造方法。
- 前記カバーの少なくとも一方の面に、予め光干渉機能を含む機能性のコーティング層を形成することを特徴とする請求項1に記載の装身具の製造方法。
- 前記シート状部材の少なくとも一方の面に、予め光干渉機能を含む機能性のコーティング層を形成し、前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成すること、又は、前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成した後に前記コーティング層を形成することを特徴とする請求項2に記載の装身具の製造方法。
- 前記シート状部材に文字、図形、模様又はこれらの組み合わせを形成し、前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成すること又は前記カバー形状に沿って打ち抜き又は切り抜き形成した後に前記文字、図形、模様又はこれらの組み合わせを形成することを特徴とする請求項2に記載の装身具の製造方法。
- 前記着色剤が七宝風の模様を現出するものであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の装身具の製造方法。
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