JP7470756B2 - ブレーキ制御装置、ブレーキ制御装置の制御方法、ブレーキ制御装置の制御プログラム - Google Patents

ブレーキ制御装置、ブレーキ制御装置の制御方法、ブレーキ制御装置の制御プログラム Download PDF

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Description

本発明は、ブレーキ制御装置、ブレーキ制御装置の制御方法およびブレーキ制御装置の制御プログラムに関する。
例えば、特許文献1には、車両のブレーキシステムについて、ブレーキ指令を行う前に、滑走制御弁の異常を検知する滑走制御装置が記載されている。この滑走制御装置は、ブレーキシリンダにブレーキ圧を供給するブレーキ制御装置と、ブレーキシリンダからの作動流体の排出を行う滑走制御弁と、圧力の差圧を検出する差圧検出部と、故障判断部とを備える。故障判断部は、差圧の絶対値が定めた値を超えた場合に、滑走制御弁が異常であると判断する。特許文献1に記載のブレーキシステムは、回転速度センサの出力から車輪が滑走していると判断すると、供給停止弁と排出弁とを作動させて、滑走制御を行う。具体的には、滑走していると判断すると、まず、供給停止弁を閉じて、そのときのブレーキ圧を保持し、それ以上にブレーキ圧がかからないようにする。それでもなお、車輪とレールの粘着が回復傾向にならない場合、さらに、排出弁を開いて、ブレーキシリンダにかかっているブレーキ圧を減少させ、制輪子と車輪の間の圧力を低下させる。
特開2015-009757号公報
ところで、近年、鉄道車両の輸送量増大などの流れを受けて、ブレーキ緩解時の排気応答性に関する要求は高まっている。従来の技術では、エアータンクからブレーキシリンダに導かれる圧縮空気の流量および空気圧を調整するための中継弁の排気動作により、ブレーキの緩解が行われる。そこで、排気応答性を改善するために、中継弁の排気容量を増大させることが考えられるが、スペースやコストの制約から排気容量の向上には限界があり、緩解応答性向上の要求に応えられない場合がある。
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、ブレーキの緩解応答性を向上することが可能なブレーキ制御技術を提供することを目的の一つとしている。
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ制御装置は、ブレーキ指令に応じて、圧縮空気供給源から供給される圧縮空気の圧力を調整する中継弁と、中継弁から供給された圧縮空気により空気ブレーキを作動させるブレーキシリンダと、中継弁とブレーキシリンダとの間の空気流路に設けられ、滑走が生じた際に、ブレーキシリンダに供給する圧縮空気の圧力を調整する滑走制御弁と、中継弁および滑走制御弁を制御する制御部と、を備える。制御部は、空気ブレーキの緩解時に、中継弁および滑走制御弁でブレーキシリンダの圧縮空気を排気する排気動作を実行するように制御する。
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、ブレーキの緩解応答性を向上することが可能なブレーキ制御技術を提供できる。
第1実施形態のブレーキ制御装置が適用された車両を概略的に示す側面図である。 図1のブレーキ制御装置のシステム構成を示すブロック図である。 図1のブレーキ制御装置のシステム構成を示す別のブロック図である。 図1のブレーキ制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部または全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部または全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
また、共通点のある別々の構成要素には、名称の冒頭に「第1、第2」等と付して区別し、総称するときはこれらを省略する。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
本発明に係るある態様のブレーキ制御装置は、ブレーキ指令に応じて、圧縮空気供給源から供給される圧縮空気の圧力を調整する中継弁と、前記中継弁から供給された圧縮空気により空気ブレーキを作動させるブレーキシリンダと、前記中継弁と前記ブレーキシリンダとの間の空気流路に設けられ、滑走が生じた際に、前記ブレーキシリンダに供給する圧縮空気の圧力を調整する滑走制御弁と、前記中継弁および前記滑走制御弁を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記空気ブレーキの緩解時に、前記中継弁および前記滑走制御弁で前記ブレーキシリンダの圧縮空気を排気する排気動作を実行するように制御する。
この構成によれば、空気ブレーキの緩解時に、中継弁だけでなく、滑走制御弁によっても排気動作が行われるため、排気が加速され、排気応答性が改善される。また、既存の弁を利用するので、構成の複雑化を回避できる。
一例として、前記滑走制御弁は、車両の複数の車軸それぞれに対応して複数設けられ、前記制御部は、前記空気ブレーキの緩解時に、前記複数の滑走制御弁のうちの一部を用いて前記排気動作を実行するように制御する。この場合、ブレーキ緩解時にすべての滑走制御弁が排気動作を行うと、それぞれの滑走制御弁の開閉回数が多くなるところ、一部を動作させることにより、個々の滑走制御弁の平均開閉回数を減らすことが可能で、このことにより滑走制御弁の寿命期間を長くできる。
一例として、前記制御部は、前記複数の滑走制御弁のうち前回の緩解時に使用しなかった滑走制御弁を用いて前記排気動作を実行するように制御する。この場合、複数の滑走制御弁ごとに開閉回数を均等に近づけることができるため、寿命期間の偏りを抑制できる。
一例として、前記ブレーキ制御装置は、それぞれ前記ブレーキシリンダに圧縮空気を供給して前記空気ブレーキを作動させる第1ブレーキおよび第2ブレーキを備え、前記制御部は、前記第1ブレーキが緩解されたときに前記排気動作を実行するように制御し、前記第2ブレーキが緩解されたときには、前記排気動作を実行しないように制御する。この場合、第1ブレーキ緩解時の応答性を改善しつつ、第2ブレーキの動作を確実に確保できる。
一例として、前記第1ブレーキは、常用ブレーキであり、前記第2ブレーキは、非常ブレーキまたは保安ブレーキである。この場合、常用ブレーキ緩解時の応答性を改善しつつ、非常ブレーキや保安ブレーキの動作を確実に確保できる。
一例として、前記制御部は、前記中継弁の排気動作が終了する前に、前記滑走制御弁の排気動作を終了するように制御する。この場合、滑走制御弁の故障率を過度に高めることなく、排気応答性を改善できる。
一例として、前記ブレーキ制御装置は、前記排気動作の実行中の前記ブレーキシリンダの空気圧に基づいて前記滑走制御弁の異常を検知する異常検知部をさらに備える。この場合、異常検知部は、常用ブレーキの通常動作中に滑走制御弁の異常を検知できる。
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態及び変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
[第1実施形態]
以下、図1~図4を参照して、本発明の第1実施形態に係るブレーキ制御装置100を説明する。図1は、ブレーキ制御装置100が適用された鉄道車両90を概略的に示す側面図である。図2は、ブレーキ制御装置100の情報処理に関するシステム構成を示すブロック図である。図3は、ブレーキ制御装置100の空気経路に沿ったシステム構成を示すブロック図である。実施形態のブレーキ制御装置100は、鉄道車両90のブレーキ緩解時の動作を改善可能なブレーキ制御技術を具備している。
ブレーキ制御装置100の全体構成を説明する。図1に示すように、鉄道車両90は、車体の走行方向で前方に設けられた運転台70と、車体の下部前寄りに配置された第1台車80と、車体の下部後寄りに配置された第2台車81と、第1台車80および第2台車81に設けられた空気ブレーキ5と、圧縮空気供給源8とを備える。ブレーキ制御装置100は、空気ブレーキ5に圧縮空気の圧力(以下、「ブレーキ圧」という)を供給するブレーキ圧供給部1と、運転台70からのブレーキ指令Cbに基づいて、ブレーキ圧供給部1を制御するブレーキ制御部10とを備える。
圧縮空気供給源8は、圧縮空気を供給する空気タンクであり、エアポンプによってタンク内の圧力が所定の範囲に保たれている。
第1台車80および第2台車81には、それぞれ2つの車軸82が前後方向に離隔して設けられる。車軸82の両端に車輪86が取り付けられる。空気ブレーキ5は、車輪86に制動力を生じさせる摩擦材を駆動するブレーキシリンダ56を有する。
鉄道車両90は、それぞれブレーキシリンダ56に圧縮空気を供給して空気ブレーキ5を作動させる第1ブレーキおよび第2ブレーキを備える。一例として、第1ブレーキは、常用ブレーキ11であり、第2ブレーキは、非常用ブレーキ12である。非常用ブレーキ12は、非常ブレーキまたは保安ブレーキである。非常ブレーキは、例えば、事故回避など緊急を要するときに使用されるブレーキである。保安ブレーキは、例えば、常用ブレーキ11の故障時などに常用ブレーキ11をバックアップするためのブレーキである。この例では、非常用ブレーキ12は、非常ブレーキと保安ブレーキとを含む。
ブレーキシリンダ56には、圧縮空気を供給する供給経路となる圧縮空気配管19を介してブレーキ圧供給部1が接続される。このブレーキ圧供給部1から圧縮空気配管19を介して供給される圧縮空気によってブレーキシリンダ圧が上昇することで、ブレーキシリンダ56が作動する。このブレーキシリンダ56の作動により、摩擦材を車輪86の踏面に押しつけ、車輪86に制動力を生じさせる。
図3に示すように、ブレーキ圧供給部1は、第1ブレーキ制御弁2と、第2ブレーキ制御弁3と、複式逆止弁43と、滑走制御弁4と、圧縮空気配管19とを有する。
第1ブレーキ制御弁2は、空気ブレーキ5を常用ブレーキ11として作動させるための弁機構である。第1ブレーキ制御弁2は、中継弁21と、第1ブレーキ制御部75の指令信号により制御される電磁弁22とを含み、ブレーキシリンダ56に供給される圧縮空気の量を調整する弁機構である。電磁弁22は中継弁21のパイロットバルブとして機能する。中継弁21が開くと、圧縮空気供給源8から供給された圧縮空気が複式逆止弁43の一方の入力ポートに出力される。
中継弁21は、電磁弁22を介した第1ブレーキ制御部75の制御に基づき、供給動作と、保持動作と、排気動作とを実行する。供給動作は、空気ブレーキ5に通常のブレーキ力を生じさせるための動作である。保持動作は、ブレーキシリンダ56の内部圧力(空気ブレーキ5のブレーキ圧力)を保持してブレーキ力を維持するための動作である。排気動作は、ブレーキシリンダ56に供給される圧縮空気の一部を外部に排気してブレーキ力を小さくするための動作である。
第2ブレーキ制御弁3は空気ブレーキ5を非常用ブレーキ12として作動させるための弁機構である。この例の非常用ブレーキ12は、常用ブレーキ11をバックアップするための保安ブレーキである。第2ブレーキ制御弁3は、第2ブレーキ制御部76の指令信号により制御される電磁弁を含み、ブレーキシリンダ56に供給される圧縮空気の量を調整する。第2ブレーキ制御弁3が開くと、圧縮空気供給源8から供給された圧縮空気が複式逆止弁43の他方の入力ポートに出力される。
複式逆止弁43は、2つの入力ポートと、1つの出力ポートとを有する弁である。複式逆止弁43は、第1台車80、第2台車81それぞれに対応して2つ設けられる。つまり、第1ブレーキ制御弁2および第2ブレーキ制御弁3から供給された圧縮空気は、それぞれ2分岐して2つの複式逆止弁43に供給される。複式逆止弁43は、上記2つの入力ポートのそれぞれに異なる圧力の流体が与えられた場合に、圧力の大きいほうの流体を出力ポートに供給する。複式逆止弁43の一方の入力ポートは第1ブレーキ制御弁2に接続され、他方の入力ポートは第2ブレーキ制御弁3に接続される。
したがって、複式逆止弁43の出力ポートは、第1ブレーキ制御弁2からの圧縮空気および第2ブレーキ制御弁3からの圧縮空気のうちの圧力の大きい方の圧縮空気を出力する。つまり、第1ブレーキ制御弁2が開くときは、空気ブレーキ5を常用ブレーキ11として作動させるための圧縮空気が出力ポートから出力され、第2ブレーキ制御弁3が開くときは、空気ブレーキ5を非常用ブレーキ12として作動させるための圧縮空気が出力ポートから出力される。各複式逆止弁43の出力ポートから出力された圧縮空気は、それぞれ2分岐して2つの滑走制御弁4に入力される。
滑走制御弁4は、中継弁21とブレーキシリンダ56との間の空気流路に設けられ、車輪86で滑走が生じた際に、ブレーキシリンダ56に供給する圧縮空気の圧力を調整する弁である。この例の滑走制御弁4は、滑走制御部77で滑走が生じていると判断された場合に、ブレーキシリンダ56に供給されるブレーキ圧を小さくしてブレーキ力を小さくするように機能する。滑走制御弁4は、鉄道車両90の複数の車軸82それぞれに対応して複数設けられる。具体的には、滑走制御弁4は、鉄道車両90の4つの車軸82それぞれに対応して4つ設けられる。4つの滑走制御弁4を区別する場合は、鉄道車両90の前方から順に4-A、4-B、4-C、4-Dのように符号にアルファベットを付す。
滑走制御弁4は、滑走制御部77の制御に基づき、供給動作と、保持動作と、排気動作とを実行する。供給動作は、空気ブレーキ5に通常のブレーキ力を生じさせるための動作である。保持動作は、ブレーキシリンダ56の内部圧力(空気ブレーキ5のブレーキ圧力)を保持してブレーキ力を維持するための動作である。排気動作は、ブレーキシリンダ56に供給される圧縮空気の一部を外部に排気してブレーキ力を小さくするための動作である。滑走制御部77は、4つの滑走制御弁4の一部または全部を同時に排気動作させることができる。
非常ブレーキや保安ブレーキの動作を確実に確保する観点から、実施形態では、ブレーキ制御部10は、常用ブレーキ11(第1ブレーキ)が緩解されたときに排気動作を実行するように制御し、非常用ブレーキ12(第2ブレーキ)が緩解されたときには、排気動作を実行しないように制御する。つまり、非常用ブレーキ12の緩解時に、中継弁は排気動作に使用され、滑走制御弁4は排気動作に使用されない。
滑走制御弁4から供給された圧縮空気は、それぞれ3分岐して2つのブレーキシリンダ56と、異常検知部7とに供給される。
異常検知部7は、滑走制御弁4の排気動作の実行中のブレーキシリンダ56の空気圧に基づいて滑走制御弁4の異常を検知する気圧スイッチである。ブレーキ制御装置100は、4つの滑走制御弁4のそれぞれに対応して4つの異常検知部7を備える。異常検知部7は、ブレーキシリンダ56の空気圧を検知した結果をブレーキ制御部10に提供する。ブレーキ制御部10は、異常検知部7の検知結果に基づいて滑走制御弁4は異常と判定した場合、報知部79を用いて人が覚知可能な方法で異常を報知する。
特許文献1に記載の滑走制御装置は、制輪子が車輪の回転に抵抗を与えない範囲で予圧をかけ、滑走防止弁を作動させない状態で、異常の有無を判断するため、制御負担および圧力の無駄が生じる。これに対して、異常検知部7は、常用ブレーキ11の通常動作中に滑走制御弁4の異常を検知できる。
ブレーキ制御部10を説明する。ブレーキ制御部10は、運転台70からのブレーキ指令Cbおよびその他の装置からの入力信号に基づいて、第1ブレーキ制御弁2と、第2ブレーキ制御弁3と、滑走制御弁4とを制御する。
図2、図3に示す各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ、CPU、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
図2に示すように、ブレーキ制御部10は、受信部71と、記憶部73と、第1ブレーキ制御部75と、第2ブレーキ制御部76と、滑走制御部77と、報知制御部78とを含む。
受信部71は、運転台70からのブレーキ指令Cbおよびその他の装置からの入力信号を受信する。特に、受信部71は、常用ブレーキ指令と、非常用ブレーキ指令とを受信する。常用ブレーキ指令は、ブレーキ操作に応じて指定された目標ブレーキ力を発生させるように空気ブレーキ5を作動させるための指令である。非常用ブレーキ指令は、空気ブレーキ5を非常時に作動させるための指令である。非常用ブレーキ指令は、例えば、運転士によるブレーキ操作や鉄道車両90の外部装置からの緊急停止信号の受信に応答して鉄道車両90の運転台70から受信部71に供給される。また、受信部71は、異常検知部7の検知結果を受信する。
記憶部73は、各種データを記憶する。例えば、記憶部73は、ブレーキ制御部10に入出力されるデータを時系列的に記憶する。また、記憶部73には、ブレーキ制御部10の制御プログラムが格納される。
第1ブレーキ制御部75は、常用ブレーキ指令に基づいて、電磁弁22を制御する。第2ブレーキ制御部76は、非常用ブレーキ指令に基づいて、第2ブレーキ制御弁3を制御する。
滑走制御部77は、空気ブレーキ5の制御中に、車輪86に滑走が生じているか否かを判断する。滑走制御部77は、公知の様々な方法を採用して車輪86の滑走を検知する。例えば、滑走制御部77は、車軸の回転速度と車両の並進速度との比較に基づいて滑走しているか否かを判断できる。
報知制御部78は、異常検知部7で検知したブレーキシリンダ56の空気圧が、予め設定された圧力変化パターンの範囲外であるとき、滑走制御弁4は異常と判定し、判定結果を外部に出力する。この例の報知制御部78は、滑走制御弁4は異常と判定した場合、報知部79を駆動して音、光、画像等の人が覚知可能な方法で異常を報知する。
このように構成されたブレーキ制御装置100の動作の一例を説明する。図4は、ブレーキ制御装置100の動作の一例のプロセスS110を示すフローチャートである。このプロセスは、通常走行中の鉄道車両90において、空気ブレーキ5が常用ブレーキとして操作されたときの動作プロセスである。
プロセスS110が開始されると、ブレーキ制御部10は、運転台70から常用ブレーキ指令Cbがあるかどうかを判定する(ステップS111)。常用ブレーキ指令Cbがない場合(ステップS111のN)、ブレーキ制御部10は、プロセスをステップS111の先頭に戻し、待機ループを形成する。このループの間、中継弁21は排気動作、滑走制御弁4は供給動作を継続する。
常用ブレーキ指令Cbがある場合(ステップS111のY)、ブレーキ制御部10は、中継弁21に供給動作をさせるように第1ブレーキ制御弁2を制御する(ステップS112)。次に、ブレーキ制御部10は、滑走制御弁4に供給動作をさせる(ステップS113)。この結果、圧縮空気供給源8の圧縮空気が、中継弁21と滑走制御弁4とを介してブレーキシリンダ56に供給され、摩擦材が押し付けられて車軸82に制動力が発生する。つまり、空気ブレーキ5は、常用ブレーキ指令Cbに応じて常用ブレーキとして機能する。
次に、ブレーキ制御部10は、常用ブレーキ緩解指令があるかどうかを判定する(ステップS114)。常用ブレーキ緩解指令がない場合(ステップS114のN)、ブレーキ制御部10は、プロセスをステップS114の先頭に戻し、待機ループを形成する。このループの間、中継弁21と滑走制御弁4は供給動作を継続する。
常用ブレーキ緩解指令がある場合(ステップS114のY)、ブレーキ制御部10は、中継弁21に排気動作をさせるように第1ブレーキ制御弁2を制御する(ステップS115)。
次に、ブレーキ制御部10は、第2ブレーキ(非常ブレーキおよび保安ブレーキ)の緩解指令があるかどうかを判定する(ステップS116)。第2ブレーキの緩解指令がない場合(ステップS116のN)、ブレーキ制御部10は、プロセスをステップS116の先頭に戻し、待機ループを形成する。このループの間、中継弁21は排気動作を継続し、滑走制御弁4は供給動作を継続する。
第2ブレーキの緩解指令がある場合(ステップS116のY)、ブレーキ制御部10は、滑走制御弁4に排気動作をさせる(ステップS117)。つまり、ブレーキ制御部10は、空気ブレーキ5の緩解時に、中継弁21および滑走制御弁4でブレーキシリンダ56の圧縮空気を排気する排気動作を実行するように制御する。実施形態では、排気動作に使用される滑走制御弁4は、常用ブレーキが緩解される度に、滑走制御弁4-A、4-B、4-C、4-Dの順で変更される。
常用ブレーキ11を緩解するたびに、すべての滑走制御弁4を排気動作に使用してもよい。しかし、常用ブレーキ11を緩解するたびに、すべての滑走制御弁4を排気動作に使用すると、弁の開閉回数が増え、寿命期間が短くなる懸念がある。そこで、ステップS117において、ブレーキ制御部10は、空気ブレーキ5の緩解時に、複数の滑走制御弁4のうちの一部を用いて排気動作を実行するように制御する。例えば、ブレーキ制御部10は、4つの滑走制御弁4それぞれの使用回数の偏りを減らし、使用回数がほぼ均等に近づくように排気動作に使用する滑走制御弁4を変更してもよい。複数の滑走制御弁4それぞれは、圧縮空気配管19を介してすべてのブレーキシリンダ56に通じており、一部で排気動作することにより、すべてのブレーキシリンダ56のブレーキ圧を下げることができる。
このステップで、ブレーキ制御部10は、複数の滑走制御弁4のうち前回の緩解時に使用しなかった滑走制御弁4を用いて排気動作を実行するように制御してもよい。例えば、前回の緩解時に滑走制御弁4-Aを使用した場合、次回の緩解時に滑走制御弁4-A以外が排気動作に使用されてもよい。ブレーキ制御部10は、常用ブレーキ11が緩解される度に、排気動作に使用する滑走制御弁4を、滑走制御弁4-A、4-B、4-C、4-Dの順で変更してもよい。
排気応答性を改善する観点から、滑走制御弁4の排気動作開始のタイミングは、早いことが望ましく、例えば、中継弁21の排気動作開始タイミングの前または同時であってもよい。滑走制御弁4の寿命期間を延ばす観点から、滑走制御弁4の排気動作期間は短いことが望ましい。そこで、実施形態では、ブレーキ制御部10は、中継弁21の排気動作が終了する前に、滑走制御弁4の排気動作を終了させる。
滑走制御弁4の排気動作期間を短くする観点から、ブレーキ制御部10は、空気ブレーキ5の緩解時における滑走制御弁4の排気動作期間を所定の期間(例えば、2秒)に制限してもよい。例えば、ブレーキ制御部10は、空気ブレーキ5の緩解時における滑走制御弁4の排気動作を、開始から所定の期間経過後に終了するように制御してもよい。滑走制御弁4の排気動作の開始および終了のタイミングは、所望の排気応答性を実現するように、実験またはシミュレーションにより設定できる。
次に、ブレーキ制御部10は、排気動作の実行中のブレーキシリンダ56の空気圧が正常かどうかを判定する(ステップS118)。このプロセスで、ブレーキ制御部10は、滑走制御弁4の排気動作の実行中のブレーキシリンダ56の空気圧が予め設定された範囲内であるか否かを判定する。
ブレーキシリンダ56の空気圧が正常でない場合(ステップS118のN)、ブレーキ制御部10は、滑走制御弁4は異常と判定する(ステップS119)。滑走制御弁4が異常である場合、ブレーキ制御部10は、報知部79を用いて人が覚知可能な方法で異常を報知する。
ステップS119を実行したら、プロセスS110は終了する。ブレーキシリンダ56の空気圧が正常である場合(ステップS118のY)、プロセスS110は終了する。
上記のプロセスは一例であり、各種の変形が可能である。プロセスS110は繰り返し実行されてもよい。
第1実施形態によれば、空気ブレーキの緩解時に、中継弁だけでなく、滑走制御弁によっても排気動作が行われるため、排気が加速され、排気応答性が改善される。また、既存の弁を利用するので、構成の複雑化を回避できる。
以上が第1実施形態の説明である。
以下、本発明の第2、第3実施形態を説明する。第2、第3実施形態の図面及び説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
本発明の第2実施形態は、ブレーキ制御装置100の制御方法である。この方法は、ブレーキ指令Cbに応じて、圧縮空気供給源8から供給される圧縮空気の圧力を調整する中継弁21と、中継弁21から供給された圧縮空気により空気ブレーキ5を作動させるブレーキシリンダ56と、中継弁21とブレーキシリンダ56との間の空気流路に設けられ、滑走が生じた際に、ブレーキシリンダ56に供給する圧縮空気の圧力を調整する滑走制御弁4と、を備えるブレーキ制御装置に関する。この方法は、空気ブレーキ5の緩解時に、中継弁21および滑走制御弁4でブレーキシリンダ56の圧縮空気を排気する排気動作を実行するステップ(S115~S117)を含む。
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
本発明の第3実施形態は、ブレーキ制御装置100の制御プログラムP100である。この制御プログラムP100は、ブレーキ指令Cbに応じて、圧縮空気供給源8から供給される圧縮空気の圧力を調整する中継弁21と、中継弁21から供給された圧縮空気により空気ブレーキ5を作動させるブレーキシリンダ56と、中継弁21とブレーキシリンダ56との間の空気流路に設けられ、滑走が生じた際に、ブレーキシリンダ56に供給する圧縮空気の圧力を調整する滑走制御弁4と、を備えるブレーキ制御装置に関する。この制御プログラムP100は、空気ブレーキ5の緩解時に、中継弁21および滑走制御弁4でブレーキシリンダ56の圧縮空気を排気する排気動作を実行するステップ(S115~S117)をコンピュータに実行させる。
第3実施形態の制御プログラムP100のこれらの機能は、ブレーキ制御装置100の機能ブロックに対応する複数のモジュールが実装されたアプリケーションプログラムとして、ブレーキ制御部10のストレージ(例えば記憶部73)にインストールされてもよい。第3実施形態の制御プログラムP100は、ブレーキ制御装置100に組み込まれたコンピュータのプロセッサ(例えばCPU)のメインメモリに読み出しされて実行されてもよい。
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。上述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除などの多くの設計変更が可能である。上述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容にも設計変更が許容され得る。
[変形例]
以下、変形例を説明する。変形例の図面及び説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
実施形態の説明では、第2ブレーキ制御弁3が、単一の弁で構成される例を示したが、これに限定されない。例えば、第2ブレーキ制御弁は、パイロットバルブと、このバルブの出力により制御されるメインバルブとを含んでもよい。
実施形態の説明では、中継弁21が複式逆止弁43の上流側に設けられる例を示したが、これに限定されない。例えば、中継弁は、複式逆止弁の下流側に設けられてもよい。この場合、第1ブレーキ制御弁と第2ブレーキ制御弁とを電磁弁で構成できる。
実施形態の説明では、第1ブレーキ制御弁2および第2ブレーキ制御弁3が車両ごとに1つずつ設けられる例を示したが、これに限定されない。例えば、第1ブレーキ制御弁および第2ブレーキ制御弁は、車両ごとに複数ずつ設けられてもよい。
上述の変形例は、各実施形態と同様の作用と効果を奏する。
上述した各実施形態及び変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態及び変形例それぞれの効果をあわせもつ。
5 空気ブレーキ、 7 異常検知部、 8 圧縮空気供給源、 10 ブレーキ制御部、 11 常用ブレーキ、 12 非常用ブレーキ、 19 圧縮空気配管19、 21 中継弁、 41 滑走制御弁、 43 複式逆止弁、 56 ブレーキシリンダ、 70 運転台、 90 鉄道車両、 100 ブレーキ制御装置。

Claims (9)

  1. ブレーキ指令に応じて、圧縮空気供給源から供給される圧縮空気の圧力を調整する中継弁と、
    前記中継弁から供給された圧縮空気により空気ブレーキを作動させるブレーキシリンダと、
    前記中継弁と前記ブレーキシリンダとの間の空気流路に設けられ、滑走が生じた際に、前記ブレーキシリンダに供給する圧縮空気の圧力を調整する滑走制御弁と、
    前記中継弁および前記滑走制御弁を制御する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、前記空気ブレーキの緩解時に、前記中継弁および前記滑走制御弁で前記ブレーキシリンダの圧縮空気を排気する排気動作を実行するように制御するブレーキ制御装置。
  2. 前記滑走制御弁は、車両の複数の車軸それぞれに対応して複数設けられ、
    前記制御部は、前記空気ブレーキの緩解時に、前記複数の滑走制御弁のうちの一部を用いて前記排気動作を実行するように制御する、請求項1に記載のブレーキ制御装置。
  3. 前記制御部は、前記複数の滑走制御弁のうち前回の緩解時に使用しなかった滑走制御弁を用いて前記排気動作を実行するように制御する、請求項2に記載のブレーキ制御装置。
  4. それぞれ前記ブレーキシリンダに圧縮空気を供給して前記空気ブレーキを作動させる第1ブレーキおよび第2ブレーキを備え、
    前記制御部は、前記第1ブレーキが緩解されたときに前記排気動作を実行するように制御し、前記第2ブレーキが緩解されたときには、前記排気動作を実行しないように制御する、請求項1に記載のブレーキ制御装置。
  5. 前記第1ブレーキは、常用ブレーキであり、前記第2ブレーキは、非常ブレーキまたは保安ブレーキである、請求項4に記載のブレーキ制御装置。
  6. 前記制御部は、前記中継弁の排気動作が終了する前に、前記滑走制御弁の排気動作を終了するように制御する、請求項1に記載のブレーキ制御装置。
  7. 前記排気動作の実行中の前記ブレーキシリンダの空気圧に基づいて前記滑走制御弁の異常を検知する異常検知部をさらに備える、請求項1に記載のブレーキ制御装置。
  8. ブレーキ指令に応じて、圧縮空気供給源から供給される圧縮空気の圧力を調整する中継弁と、前記中継弁から供給された圧縮空気により空気ブレーキを作動させるブレーキシリンダと、前記中継弁と前記ブレーキシリンダとの間の空気流路に設けられ、滑走が生じた際に、前記ブレーキシリンダに供給する圧縮空気の圧力を調整する滑走制御弁と、を備えるブレーキ制御装置に関して、
    前記空気ブレーキの緩解時に、前記中継弁および前記滑走制御弁で前記ブレーキシリンダの圧縮空気を排気する排気動作を実行するステップを含むブレーキ制御装置の制御方法。
  9. ブレーキ指令に応じて、圧縮空気供給源から供給される圧縮空気の圧力を調整する中継弁と、前記中継弁から供給された圧縮空気により空気ブレーキを作動させるブレーキシリンダと、前記中継弁と前記ブレーキシリンダとの間の空気流路に設けられ、滑走が生じた際に、前記ブレーキシリンダに供給する圧縮空気の圧力を調整する滑走制御弁と、を備えるブレーキ制御装置に関して、
    前記空気ブレーキの緩解時に、前記中継弁および前記滑走制御弁で前記ブレーキシリンダの圧縮空気を排気する排気動作を実行するステップをコンピュータに実行させるブレーキ制御装置の制御プログラム。
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