JP7468899B2 - 保護具 - Google Patents

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Description

本発明は、多量の粉じんの発生を伴う作業現場や塗料等の飛散物の発生を伴う作業現場等において着用する保護具であって、特に作業者の視界を確保するための透視窓を備えた保護具に関する。
サンドブラスト作業等の粉じん作業において、粉じんが顔面に向かって飛散することがある場合には、顔面を含む頭部の全体や、その頭部を含む上半身を被覆することのできる作業用フード等の保護具を着用することがある。
例えば、特許文献1に記載の塗装作業時に頭部に着用するフードでは、面体におけるのぞき窓がフレームと、フレームに取り付けられるカートリッジとで構成されている。フレームはフードにボタン止めされていて、そのフレームに組み付けられるカートリッジには、複数枚の透明フィルムが重ねられた状態で納まっている。作業中に、のぞき窓の最前面に位置する透明フィルムが汚れると、そのフィルムをはぎ取ることによって、汚れていないフィルムが現われて、良好な視界を得ることができる。
また、特許文献2に記載の粉じんマスクでは、掛止部を有する縁枠が透視窓に形成され、その透視窓を覆う透明なプラスチックシートの成形品には、その縁枠に対して離脱可能に嵌合する部位が形成されている。
特開昭58-146365号公報 実開平5-65355公報
特許文献1に記載のフードでは、重ねられた透明フィルムをのぞき窓に使用するから、高い光線透過率を有するのぞき窓を得ることが難しい。また、重ねられたフィルムは、その平面状態が板ガラスの如き平坦なものにはなり難い。それゆえ、このフードでは、常に良好な視界を得るということが難しい。
また、特許文献2に記載の防じんマスクでは、透視用のレンズとして薄いプラスチックシートの成形品を使用するから、レンズ表面を平滑にすることが難しく、透視して見える物体の形状がゆがんだものになり易い。
そこで、本発明では、作業用の透視窓を有する保護具であって、その透視窓には硬質であって、高い透明性や高い表面平滑性等を有する材料を目ガラスとして使用することのできる保護具の提供を課題にしている。
なお、本発明で保護具というときには、防災面、溶接面、全面型防じんマスクを含む防じんマスク,防じん用や防火用の作業衣等、人体を保護するために環境条件に応じて用意される着用具を意味している。
前記課題を解決するための本発明には第1の手段と、第2の手段とがある。そのうちの第1の手段に係る第1発明が対象とするところは、次のとおりである。すなわち、作業者身体の少なくとも顔面を覆う被覆部と、前記被覆部に形成されていて前記被覆部の内側から外側を覗き見ることのできる透視窓とを有し、前記透視窓が、互いに直交する上下方向と左右方向と前後方向とを有するものであって、フレーム部と、前記フレーム部に囲まれる態様で前記フレーム部に納められていて、前記前後方向において対向する前方目ガラスと後方目ガラスとを含み、前記後方目ガラスが前記顔面に対向するものである保護具である。
かかる保護具において、本発明が特徴とするところは、以下のとおりである。すなわち、前記フレーム部には、前記上下方向および前記左右方向のいずれかに、前記前方目ガラスを挿入・抜脱して、前記前方目ガラスの交換を可能にする前記前方目ガラスに対しての案内口が形成されている。前記後方目ガラスは、その周縁部が前記フレーム部に対して取り外し可能に固定されている。前記前方目ガラスは、前記上下方向において互いに並行する対向する上端部と下端部および前記左右方向において互いに並行する左端部と右端部のうちのいずれかの端部が前記フレーム部において前記案内口よりも内側にあって、付勢手段の作用下に前記フレーム部および前記後方目ガラスのうちの少なくとも一方に対して前記前方から離間可能に圧接して前記後方目ガラスとの間が閉じた状態にあり、前記いずれかの端部に並行するもう一方の端部は前記前方向に向かって前記後方目ガラスから離間して前記後方から前記フレーム部に接近するか当接するかのいずれかの状態にあり、前記前方目ガラスはまた、前記下端部と前記上端部との間および前記左端部と前記右端部との間のいずれかにおける中間部が前記フレーム部にあって前記前方目ガラスに向かって突出する支点部に当接している。
第1発明の実施態様の一つにおいて、前記前方目ガラスは、前記付勢手段であるばねの付勢に抗して前記前方から前記後方に向かって押圧すると、前記支点部に支えられた状態で前記フレーム部および前記後方目ガラスのうちの少なくとも一方に対して圧接していた前記端部が前記後方目ガラスから離間して前記案内口に臨み、前記フレーム部からの前記前方目ガラスの前記抜脱が可能になる。
第1発明の実施態様の他の一つにおいて、前記支点部は、前記フレーム部の前記左右方向の両側それぞれに位置する側縁部および前記上下方向の両端のそれぞれに位置する端縁部のいずれかに位置していて前記前方目ガラスの前後両面のうちの後面に当接可能であり、付勢手段であるばねが、前記フレーム部の前記側縁部および前記端縁部のいずれかにあって、前記前方目ガラスの前面に圧接している。
第1発明の実施態様のさらに他の一つにおいて、前記支点部は、前記フレーム部の前記左右方向の両側それぞれに位置する側縁部および前記上下方向の両端のそれぞれに位置する端縁部のいずれかに位置していて前記前方目ガラスの前後両面のうちの前面に当接可能であり、付勢であるばねが、前記フレーム部の前記側縁部および前記端縁部のいずれかにあって、前記前方目ガラスの後面に圧接している。
本発明の第2手段に係る第2発明が対象とするところは、作業者身体の顔面を含む頭部を覆うことのできる被覆部を有する保護具である。
かかる保護具において、第2発明が特徴とするところは、以下のとおりである。すなわち、前記被覆部は、前記内側から外側を覗き見ることのできる作業用の透視窓を有し、前記透視窓が、互いに直交する上下方向と左右方向と前後方向とを有するものであって、アウターフレームとインナーフレームとで形成されるフレーム部を含むとともに、前記フレーム部の内側には前方目ガラスと後方目ガラスとが組み込まれている。前記前方目ガラスと前記後方目ガラスとは、前記前後方向において離間並行してこれら両目ガラス間に空間を形成する態様にあって、前記後方目ガラスは前記顔面に対向する態様で前記フレーム部に固定される一方、前記前方目ガラスは前記フレーム部に固定されることなく、付勢手段の作用下に前記前後方向の後方から前記フレーム部に圧接していて、前記空間から前記上下方向および前記左右方向のいずれか一方向に向かっての前記フレーム部からの抜脱が可能な態様にあり、前記フレーム部には前記空間につながっていて前記前方目ガラスの前記抜脱を可能ならしめる開口部が形成されている。
第2発明の実施態様の一つにおいて、前記保護具は、前記被覆部の内側にエアを供給可能なものであって前記後方目ガラスと前記フレーム部のうちの少なくとも一方には、前記空間と前記被覆部の内側とをつないで、前記被覆部の内側に供給される前記エアの一部を前記空間に流入させることを可能にする通気路が形成されている。
第2発明の実施態様の他の一つにおいて、前記通気路が前記後方目ガラスの外周縁部および前記フレーム部の内周縁部のうちの少なくとも一方に形成されていて、前記通気路を経て前記空間に流入させた前記空気を前記上下方向および前記左右方向のいずれかにおいて前記通気路と対向した位置にある開口部から前記空間の外へ流出させる。
(1)第1の手段に係る第1発明では、フレーム部における案内口よりも内側において、前方目ガラスの上下方向の両端部および左右方向の両端部のうちのいずれかにおける一端部が、ばね付勢の下に後方目ガラスに対して閉じた状態にあるから、前方目ガラス交換用の案内口がフレーム部に形成されていても、保護具の外部に存在する粉じん等がその案内口を通り前方目ガラスと後方目ガラスとの間に侵入することを防ぐことができて、粉じん作業中であっても透視窓は視界が良好なものになる。また、仮に粉じんが案内口から侵入したとしても、その粉じんはアウターフレームと前方目ガラスとの間にある間隙からアウターフレームの外に出るから、視界の妨げになることはない。前方目ガラスと後方目ガラスは板状のものであるから、硬質であって透明性や表面平滑性のよい板ガラスやプラスチック材料の使用が可能になる。さらにはまた、従来の透視窓であれば、前方目ガラスと後方目ガラスとの間のすき間に進入した粉じんは、そのすき間から排出されることがなく、目ガラスを交換するときに、目ガラスどうしが粉じんを挟んでこすり合い、本来は交換する必要のない後方目ガラスにも傷がつくという問題があったが、本発明によれば、そのような問題を解消することもできる。
(2)第2の手段に係る第2発明では、前方目ガラスがフレーム部に対して付勢手段による後方からの付勢作用だけで取り付けられているから、汚れたり傷がついたりしたときの前方目ガラスは、その交換が容易である。作業用の透視窓において互いに並行するように配置された前方目ガラスと後方目ガラスとの間の空間に対して、被覆部の内側に供給されるエアの一部をその空間に流入させるたいようでは、前方目ガラスと後方目ガラスとの間にエアの流れを作ることができて、前方目ガラスと後方目ガラスとの間の空間へ外部の粉じん等が侵入することを防ぐことができるから、作業用窓部は視界が良好なものになる。前方目ガラスと後方目ガラスは板状のものであるから、硬質であって透明性や表面平滑性のよい板ガラスやプラスチック材料の使用が可能になる。
図面は、本開示に係る本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
第1発明における保護具が着用状態にあるときの斜視図。 図1のII-II線矢視図。 透視窓の分解組立図。 (a)と(b)とによって、前方目ガラスの抜き取りの手順示す図。 透視窓の一形態を示す図2と同様な図。 第2発明における保護具を示す図1と同様な図。 図6のVII―VII線矢視図。 (a)は実施態様の一例を示す図7と同様な図、(b)は(a)における前方目ガラスの抜き取り手順を示す図。 図8における透視窓の分解組立図。 第2発明における透視窓の一形態を示す図8(a)と同様な図。
添付の図面を参照して、本発明に係る保護具の詳細を説明すると、以下のとおりである。
図1は、本発明の第1発明に係る保護具の一例である作業用フード10が着用状態にあるときの斜視図であって、作業用フード10の前側を示している。作業用フード10は、帆布やゴム引き布等の如き所要の強度を有する生地で形成されていて、その着用者である作業者1の顔面2を含む頭部を覆うことのできる頂部被覆部11と、作業者1の頸部(図示せず)を覆うことのできる中間部被覆部12と、作業者1の肩と胸と背中それぞれの少なくとも一部分を覆うことのできる下部被覆部13とを有している。作業者1は、作業服3を着用した状態にあって、作業用フード10は、その作業服3の上から着用されている。かような作業用フード10は、作業者1にとっての上下方向と左右方向と前後方向とに対応する上下方向Aと左右方向Bと前後方向Cとを有する。本発明において使用する左と右とは、作業者1にとっての左と右とを意味している。図示例の作業用フード10では、各部位が、後記するヘッドバンド19とネックバンド21とを除くと、後記透視窓15を左右方向Bにおいて二等分して上下方向Aへ延びる二等分線Mに関して対称となるように作られている。
作業用フード10において、被覆部11には、作業用フード10の内側に新鮮空気を送り込むためのエアラインホース14が着脱可能に接続されている。また、頂部被覆部11(以下、被覆部11という)の前方部分には、透明な後記目ガラス53,54を介して作業用フード10の内側からその外側を透視することのできる作業用窓部としての透視窓15が形成されている。透視窓15には、目ガラス53,54を保護するための透視可能なネット18が開閉自在に取り付けられている。図1において、そのネット18は、開放状態にある。被覆部11にはまた、その被覆部11の後方部分を作業者1の頭部(図示せず)にほどよく密着させることを可能にする長さ調節可能なヘッドバンド19が取り付けられている。
作業用フード10においてはまた、中間部被覆部12に長さ調節可能なネックバンド21が取り付けられている。ネックバンド21は、中間部被覆部12の左右両側に固定端22を有し、作業者1の頸部をおよそ半周するように、作業用フード10の後方へ延びていて、着用後における作業用フード10の中間部被覆部12を作業者1の頸部または頸部近傍の部位にほどよく密着させることができる。作業用フード10では、作業者1の身体の大きさの如何によって、ネックバンド21が作業者1の頸部よりも上方に位置したり、下方に位置したりすることがある。しかし、いずれの場合においても、ネックバンド21は、作業者1の頸部または頸部近傍における作業用フード10のたるみが頸部の動きの邪魔になることがないように、そのたるみを頸部の後方において小さくまとめて、作業用フード1の着用感を向上させることができる。
作業用フード10の下部被覆部13は、作業者1の胸部または胸部と腹部の一部分とを覆うことができるように左右方向Bに広がる前身頃部分25と、背中を覆うことができるように左右方向Bに広がる後身頃部分26(図6参照)と、肩の少なくとも一部分を覆うことが可能な肩部分27とを有する。前身頃部分25と後身頃部分26とは、作業者1の脇の下にまで広がることによって、互いに分離可能に連結することができる。
図2,3は、透視窓15における目枠17の構造を示すための図1のII-II線矢視図と、透視窓15の分解組立図であるが、図3ではフード10の図示が省略されている。これらの図から明らかなように、透視窓15は、アウターフレーム51と、インナーフレーム52とによって形成されたフレーム部である目枠17と、これら両フレーム51,52の間に挿入される前方目ガラス53と、インナーフレーム52の後面に止めネジ56によって取り付けられている後方目ガラス54とを有する。アウターフレーム51と、インナーフレーム52とのそれぞれは額縁状のもので、その縁部を形成する頂縁部51a,52aと、底縁部51b,52bと、左右側縁部51c,52c,51d,52dとを有する。頂縁部51a,52aどうし、左側縁部51c,52cどうし、右側縁部51d,52dどうしは密着し、フード10を形成している生地の一部分とともに止めネジ57によって固定されている。なお、止めネジ57は、図3において、一部のものは雌雄の部材が分離した状態で示され、一部のものは部材どうしが結合した状態で示されている。底縁部51bと52bとは、前後方向Cにおいて離間し、前方目ガラス53を上下方向Aにおいて通過させることのできる案内口55(図2参照)を形成している。インナーフレーム52の底縁部52bは、アウターフレーム51の底縁部51bよりも下方へ長く延びていて、止めネジ58によってフード10の生地に固定されている。そのアウターフレーム51の底縁部51bには、後記指先Fを差し入れることが可能な凹部51eが形成されている。アウターフレーム51ではまた、頂縁部51a、底縁部51b、左右側縁部51c,51dによって前方透視部15aが画成されている。インナーフレーム52では、頂縁部52a、底縁部52b、左右側縁部52c,52dによって後方透視部15bが画成されている。前方透視部15aと後方透視部15bとは、好ましくは同形同大で、フード10における透視窓15の透視部を形成している。また、透視窓15においては、アウターフレーム51とインナーフレーム52と後方目ガラス54とによって、前方目ガラス53を案内口55から挿入、抜脱可能な状態で収容することのできる空間61(図2参照)が形成されている。
空間61においては、アウターフレーム51における底縁部51bの左右両側部のそれぞれに付勢手段の一つである板状のばね62(図3参照)が取り付けられていて、ばね62の作用部62aが前方目ガラス53の前面53aに前方から圧接している。また、インナーフレーム52の左右側縁部52c,52dのそれぞれには、前方目ガラス53に向かっての隆起部63を有する支点提供用部材64が取り付けられている。隆起部63の頂部は、前方目ガラス53の後面53bに後方から当接して、前方目ガラス53に対する支点部65として作用する。透視窓15の上下方向Aにおいて、ばね62の作用部62aは、前方目ガラス53の前面53aにおける下方部分に圧接する一方、支点提供用部材64における支点部65は、ばね62の作用部62aよりも上方において前方目ガラス53に当接している。
このようなばね62の作用下にある前方目ガラス53は、上端部53cがアウターフレーム51の頂縁部51aに後方から当接するかまたは接近し、下端部53dがインナーフレーム52の底縁部52bに形成されている張出し部66に支えられている。このような状態にある前方目ガラス53は、フード10の前後方向Cにおいて、下端部53dがばね62の押圧作用を前方から受けることによって、前方目ガラス53の後面53bが支点提供用部材64の支点部65と下端部分とに前方から圧接するとともに、下端部53dが張出し部66に密着した状態になる。一方、上端部53cにおける外面53aがアウターフレーム51の頂縁部51aにおける内面に後方から圧接または接近し、好ましくは圧接していて、空間61において揺れ動くこともなければ、案内口55から抜け落ちるということもない。また、フード10の外部に存在する粉じんが前方目ガラス53の上端部53cおよび下端部53dの近傍から空間61へ侵入することもない。前方目ガラス53の左右側縁部53,54(図3参照)は、アウターフレーム51の左右側縁部51c、51dに覆われているので、これら両側縁部51c,51dの近傍から外部の粉じんが空間61へ侵入することもない。
図4(a),(b)は、透視窓15の空間61から前方目ガラス53を抜き取るときの手順を示す図である。図4(a)では、図2の状態にある前方目ガラス53の上端部53cの近傍に指先Fを当て、ばね62の付勢に抗するように、前方から後方に向かって押圧する。支点部65に支えられている前方目ガラス53は、その下端部53dがばね62を押圧して変形させながら、案内口55を臨む位置にまで来る。そこで、前方目ガラス53をばね62と支点部65とに対して下方に向かって滑らせるように動かすと、下端部53dが案内口55に導かれて空間61の外に出て、アウターフレーム51の底縁部51bに形成された凹部51eに現れるから、指先Fをその凹部51eに入れて、図4(b)に示されるように、前方目ガラス53の下端部53dを摘まんで下方に引っ張れば、空間61から抜き取ることができる。汚れたり、傷がついたりした前方目ガラス53をこのような手順で抜き取った後には、交換用として用意した新品の前方目ガラス53を、その手順とは逆の手順によって、空間61にセットすることができる。なお、透視窓15における後方目ガラス54は、止めネジ56の着脱によって交換することができる。
図5は、図2と同様な図であるが、図2とは異なる構造の透視窓15を例示している。図5におけるアウターフレーム51,インナーフレーム52,後方目ガラス54は、外観上は図2におけるものと同様なものが使用されているが、これらが形成する空間61は、図2のそれと異なっている。図5における空間61では、ばね62がインナーフレーム52の左右側縁部(図示せず)の上方部分に位置して前方目ガラス53の上端部53cの近傍において前方目ガラス53の後面53bに圧接している。また、支点提供用部材64とそれに形成された支点部65とは、アウターフレーム51に形成されていて、前方目ガラス53の前方に位置し、支点部65は前方目ガラス53の前面53aに当接している。前方目ガラス53の上端部53cにおける前面53aをばね62の付勢に抗するように指先Fで押圧すると、前方目ガラス53の下端部53dがインナーフレーム52の張出し部66から外れて、案内口55を臨む位置に来る。その後は、図4(a),(b)と同様にすることで、前方目ガラス53を空間61から抜き取ることができる。
透視窓15が図2や図5に例示の如く形成されているフード10では、前方目ガラス53と後方目ガラス54とに、板状の無機ガラスやプラスチック製品を使用することができる。また、必要ならば、表面硬化処理を施したプラスチック製品を使用することもできる。そのような前方目ガラス53や後方目ガラス54は、透視性や表面平滑性が良くて見るべき対象物は歪むことがなく、また傷つき難いものになる。さらには、交換作業が容易なものにもなり得る。なお、インナーフレーム52に対する後方目ガラス54の取り付けは、止めネジ56に代えてサッシュ形式等を採用することもできる。
図1~5に例示の保護具10では、透視窓15の下方部分、すなわちアウターフレーム51の底縁部51bとインナーフレーム52の底縁部52bとの間に案内口55を形成して、その案内口55において前方目ガラス53の挿入・抜脱を可能にしてある。しかし、保護具10では、アウターフレーム51とインナーフレーム52の左側縁部51c,52cの間や右側縁部51d,52dの間、頂縁部51a,52aの間、底縁部51b,52bの間のいずれかに案内口55に相当する案内口を形成し、その案内口を使用して前方目ガラス53を上下方向Aや左右方向Bにおいて挿入・抜脱することもできる。案内口をそのように形成する場合の一例においては、インナーフレーム52の頂縁部52aと底縁部52bとに支点部65を形成し、アウターフレーム51の頂縁部51aと底縁部52bとには案内口の近傍にばね62を取り付けておき、左右方向Bにおいて、その案内口とは反対側となる適宜の位置において前方目ガラス53をばね62の付勢に抗するように押圧することによって、前方目ガラス53を案内口から取り出すことができる。
図6~9において、図6,7は、図1のフード10における透視窓15とは異なる態様の透視窓115を有するフード110の斜視図と、その斜視図におけるVII-VII線矢視図であり、図8は図7と同様に内部構造を示す図であるが、その構造は図7のものと異なっている。図9は図8の透視窓115についての図3と同様な分解組立図である。なお、フード110は、透視窓115を除けば、フード10と同じものであって、フード110の内側には、エアラインホース14を介してエアが供給される。フード110では、フード10と共通する部分について、フード10で使用した参照符号が使用されている。
図6~9において、透視窓115は、目枠117を形成するアウターフレーム151とインナーフレーム152とを有するとともに、前方目ガラス153と後方目ガラス154とを有する。アウターフレーム151は、頂縁部151aと、底縁部151bと、左右側縁部151c,151dとを有し、縁部151a、151b,151c,151dによって前方透視部115aが画成されている。インナーフレーム152は、頂縁部152aと、底縁部152bと、左右側縁部115c,115dとを有し、これらの縁部152a,152b,152c,152dによって後方透視部115bが画成されている(左側縁部151c,152cについては図9参照)。アウターフレーム151とインナーフレーム152とは、底縁部151b,152bと、左右側縁部151c,152c、151d,152dとにおいて重なり合い、止めネジ156,157,158によってフード110の被覆部11に取り付けられている。ただし、図9において、止めネジ156,157,158は、一部のもののみが示されている。インナーフレーム152には、後方目ガラス154が止めネジ156を使用して取り付けられている。アウターフレーム151とインナーフレーム152と後方目ガラス154とは一体になって、前方目ガラス153を収容可能な空間161を形成している。その空間161には、上方に向かっての開口161aが形成されている。開口161aは、後記するように前方目ガラス153を交換するための開口および排気口として作用する。アウターフレーム151の頂縁部151a,底縁部151b,左右側縁部151c,151dの後面には、空間161に挿入された前方目ガラス153が付勢手段であるばね162の付勢下に圧接している。ばね162の一例は、上下方向Aへ延びる板ばねであって、ばね162の上端部がインナーフレーム152の頂縁部152aにおける前面に固定されている。前方目ガラス153はまた、その頂縁部153cに対して、仮想線で示した状態にある逆U字形のストッパー部材170が上方から圧接して、前方目ガラス153が開口161aの外へ出ることを防いでいる。ストッパー部材170は、金属またはプラスチック製のもので、図の前後方向Cにおいて弾性的に拡開して、アウターフレーム151の頂縁部151aに取り外し可能に嵌合している。
このように形成されている図8の透視窓115においては、後方目ガラス154の下端部154dには後方目ガラス154の内外面に通じる、すなわち空間161とフード110の内側とをつなぐ溝状または貫通孔としての通気路180が左右方向Bに少なくとも一つ形成されている。フード110の内側にエアラインホース14を介してエアが供給されると、そのエアの一部は通気路180を通り、前方目ガラス153と後方目ガラス154とが作る空間161に流入して上昇し、空間161における頂部の開口161aから流出する。このような空気の上昇流によって、粉じん作業の現場等において、開口161aから空間161に侵入する可能性を持つ粉じんの侵入を防ぐことができる。
ただし、フード110の長時間の使用によって、前方目ガラス153の外面が汚れた場合には、前方目ガラス153をばね163の付勢に抗するように前方から後方に向かって押せば、前方目ガラス153の頂縁部153cが開口161aを臨む位置に来る。そこで、前方目ガラス153を指先で上方に向かってスライドさせれば、前方目ガラス153は開口163から外に出て、交換が可能になる。前方目ガラス153をスライドさせるときに、予めストッパー部材170を外しておけば、前方目ガラス153の取り出しは一層容易になる。すなわち、ストッパー部材170を図7(b)に示すようにアウターフレーム151から外し、汚れた前方目ガラス153を開口161aから取り出すならば、、その前方目ガラス153を新しい前方目ガラス153に交換することが至極容易になる。
図7における前方目ガラス153は、図8の前方目ガラスとは異なっていて、通気路180が形成されていない。したがって、図7における透視窓115では図8の例におけるような防じん効果を得ることはできないが、前方目ガラス153の固定や前方目ガラス153の挿入、抜脱については、図8の例と同じように作用する。
図10は、図8(a)と同様な図であるが、図8(a)とは異なる構造の透視窓115を例示している。図10におけるアウターフレーム151と前方目ガラス153とは、図8におけるものと同じであるが、図10におけるインナーフレーム152の底縁部152bには、その左右方向Bにおいて、少なくとも1つの通気路190が形成されている。通気路190は、図8における通気路180と同様に作用するもので、エアラインホース14を介して供給されるエアの一部を前方目ガラス153と後方目ガラス154との間の空間161に、その空間161の下方部分から流入させた後に、上昇させて、排気口となる頂部の開口161aから流出させることにより、空間161への粉じんの侵入を防ぐことができる。前方目ガラス153は、図8(b)における態様と同様な態様で取り出して、交換することができる。
なお、図示してはいないが、図8における透視窓115であっても、図10における透視窓115であっても、インナーフレーム152と後方目ガラス154とに通気路180と通気路190とを同時に形成することも可能である。
1 作業者(着用者)
2 顔面
3 作業服
10 作業用フード(作業衣、保護具)
11 頂部被覆部(被覆部)
15 透視窓
15a 透視部
15b 透視部
17 フレーム部(目枠)
51 アウターフレーム
51a 頂縁部(端縁部)
51b 底縁部(端縁部)
51c,51d 側縁部
52 インナーフレーム
52a 頂縁部(端縁部)
52b 底縁部(端縁部)
52c,52d 側縁部
53 前方目ガラス
53a 前面
53b 後面
53c 頂縁部
53d 底縁部
53e,53f 側縁部
54 後方目ガラス
54a 前面
54b 後面
55 案内口
61 空間
62 付勢手段(ばね)
65 支点部
110 作業用フード(作業衣、保護具)
111 頂部被覆部(被覆部)
115 透視窓
151 アウターフレーム
152 インナーフレーム
117 目枠(フレーム部)
153 前方目ガラス
153a 前面
153b 後面
154 後方目ガラス
154a 前面
154b 後面
154d 下端部
161 空間
161a 開口部
162 付勢手段(ばね)
180 通気路
190 通気路
A 上下方向
B 左右方向
C 前後方向

Claims (4)

  1. 作業者身体の少なくとも顔面を覆う被覆部と、前記被覆部に形成されていて前記被覆部の内側から外側を覗き見ることのできる透視窓とを有し、前記透視窓が、互いに直交する上下方向と左右方向と前後方向とを有するものであって、フレーム部と、前記フレーム部に囲まれる態様で前記フレーム部に納められていて、前記前後方向において対向する前方目ガラスと後方目ガラスとを含み、前記後方目ガラスが前記顔面に対向するものである保護具であって、
    前記フレーム部には、前記上下方向および前記左右方向のいずれかに、前記前方目ガラスを挿入・抜脱して、前記前方目ガラスの交換を可能にする前記前方目ガラスに対しての案内口が形成されており、
    前記後方目ガラスは、その周縁部が前記フレーム部に対して取り外し可能に固定され、
    前記前方目ガラスは、前記上下方向において互いに並行する対向する上端部と下端部および前記左右方向において互いに並行する左端部と右端部のうちのいずれかの端部が前記フレーム部において前記案内口よりもう内側にあって、付勢手段の作用下に前記フレーム部および前記後方目ガラスのうちの少なくとも一方に対して前記前方から離間可能に圧接して前記後方目ガラスとの間が閉じた状態にあり、前記いずれかの端部に並行するもう一方の端部は前記前方向に向かって前記後方目ガラスから離間して前記後方から前記フレーム部に接近するか当接するかのいずれかの状態にあり、前記前方目ガラスはまた、前記下端部と前記上端部との間および前記左端部と前記右端部との間のいずれかにおける中間部が前記フレーム部にあって前記前方目ガラスに向かって突出する支点部に当接していることを特徴とする前記保護具。
  2. 前記前方目ガラスは、前記付勢手段であるばねの付勢に抗して前記前方から前記後方に向かって押圧すると、前記支点部に支えられた状態で前記フレーム部および前記後方目ガラスのうちの少なくとも一方に対して圧接していた前記端部が前記後方目ガラスから離間して前記案内口に臨み、前記フレーム部からの前記前方目ガラスの前記抜脱が可能になる請求項1記載の保護具。
  3. 前記支点部は、前記フレーム部の前記左右方向の両側それぞれに位置する側縁部および前記上下方向の両端のそれぞれに位置する端縁部のいずれかに位置していて前記前方目ガラスの前後両面のうちの後面に当接可能であり、付勢手段であるばねが、前記フレーム部の前記側縁部および前記端縁部のいずれかにあって、前記前方目ガラスの前面に圧接している、請求項1または2記載の保護具。
  4. 前記支点部は、前記フレーム部の前記左右方向の両側それぞれに位置する側縁部および前記上下方向の両端のそれぞれに位置する端縁部のいずれかに位置していて前記前方目ガラスの前後両面のうちの前面に当接可能であり、付勢であるばねが、前記フレーム部の前記側縁部および前記端縁部のいずれかにあって、前記前方目ガラスの後面に圧接している、請求項1または2記載の保護具。
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