JP7462190B2 - 難燃高靭性マグネシウム合金 - Google Patents
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- C22C23/02—Alloys based on magnesium with aluminium as the next major constituent
Description
この発明は、難燃性と靭性とに優れたマグネシウム合金に関する。
マグネシウム合金は軽量化材料として知られており、自動車などの移動体の部品や、モバイルパソコンのボディなど持ち運んで使用する製品に使用されている。例えばハンドルなど靭性を求める部材には、AM50が使用されている。ただし、マグネシウム合金は鋳造する際の溶湯状態で発火するおそれがあり、かつ一度発火すると自己消火性に乏しいという問題がある。このために難燃性に優れたマグネシウム合金が求められている。また、部材としての利用範囲を拡げるため、さらに機械的特性を改善することが求められている。
このような問題に対して、例えば引用文献1でCaとYを添加した鋳造用マグネシウム合金が提案されている。これらの元素は溶湯表面に酸化物の膜を作り、難燃性(発火抵抗性)が向上することが示されている。
しかしながら、YやCaを添加すると難燃性は向上するが、溶解時にスラッジが形成されてしまったり、機械的特性が低下してしまう等の問題が生じる。
そこでこの発明は、AM50をベースに難燃性を向上させながら、優れた機械的特性を発揮するマグネシウム合金を得ることを目的とする。
この発明は、Alを4.4質量%以上5.5質量%以下、Caを0.2質量%以上0.5質量%以下、ミッシュメタルを0.2質量%以上0.4質量%以下、Mnを0.1質量%以上0.6質量%以下含有し、残部がMgと不可避不純物とであるマグネシウム合金により、上記の課題を解決したのである。
Caを上記の範囲で含有すると、このマグネシウム合金を鋳造のために溶湯にしたとき、溶湯表面に強固な保護膜を形成するため、難燃性が向上する。なおかつCaが上記の範囲であれば、このマグネシウム合金を鋳造して得られたマグネシウム合金製部材の機械的特性も優れている。また、ミッシュメタルを上記の範囲で含有すると、このマグネシウム合金を鋳造のために溶湯にしたとき、Caほど強固ではないものの、同様に保護膜を形成して難燃性を向上させる。また、炉壁に対する濡れ性を低下させることができ、それにより発火性を抑制すると言う効果も発揮する。このCaとミッシュメタルとが、異なる原理によって難燃性に寄与するため、これらを複合して添加することで、それぞれの元素含有量を単独で増加させるよりも優れた難燃性向上効果を発揮する。
また、Alが上記の範囲であることで、他の元素と併せて機械的特性を確保しやすくなる。さらに、Mnを上記の範囲で含有することで、不可避不純物として含まれる可能性がある材料由来の鉄を、溶湯中で合金中から除外しやすくなる。
好ましくは、Caを0.4質量%以下、ミッシュメタルが0.35質量%以下という成分を選択し、さらに機械的特性に優れたマグネシウム合金を得ることができる。
このマグネシウム合金は、他の不可避不純物として混入しうる元素を限定的に含んでいてもよい。ただし、その合計量は、本発明の効果を阻害しない範囲に留める必要があり、0.5質量%未満であると好ましく、かつ一つの当該元素あたりの含有量が0.1質量%未満であると好ましい。
この発明により、難燃性に優れ、かつ機械的特性にも優れたマグネシウム合金が得られる。このマグネシウム合金は鋳造の際に発火する可能性が低減するので鋳造させやすく、かつ、鋳造して得られるマグネシウム合金製部材は機械的特性に優れたものとなる。
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明は、難燃性と機械的特性に優れたマグネシウム合金である。
この発明は、難燃性と機械的特性に優れたマグネシウム合金である。
上記マグネシウム合金のAl含有量は、4.4質量%以上であると好ましい。Alはマグネシウム合金の引張強度を向上させる作用があり、4.4質量%未満ではその効果が不十分となる。一方で、5.5質量%以下であると好ましい。Alが多すぎるとマグネシウム合金の伸びが下がりやすくなる傾向にあり、5.5質量%を超えると特にその傾向が顕著になってしまう。
上記マグネシウム合金のCa含有量は、0.2質量%以上である必要がある。Caは、マグネシウム合金を鋳造する際に、溶湯表面に強固な保護膜を形成することができ、この保護膜によって難燃性が向上する。0.2質量%未満ではこの保護膜の形成が不十分で、難燃性の向上効果も不十分になってしまう。一方で、0.5質量%以下である必要があり、0.35質量%以下であると好ましい。Caは大量に添加すると伸びが低下する傾向にあり、0.5質量%を超えると特にその傾向が顕著になってしまう。また、Caが多すぎると溶湯の濡れ性が上がって、炉壁への親和性が上がり、発火し易くなってしまう。
上記マグネシウム合金のミッシュメタル(以下「Mm」と略記する。)含有量は、0.2質量%以上である必要がある。Mmはマグネシウム合金を鋳造する際に、溶湯表面に保護膜を形成して難燃性を向上するCaに類似する作用を発揮する。また、Mmの含有量が上がると溶湯の濡れ性を抑制し、炉壁への親和性を低下させることで、発火しにくくする効果を発揮する。生成する保護膜の強度ではCaの方が優れているが、Caは濡れ性を上げるという難燃性低下に繋がる作用があるため、この濡れ性を抑制させるMmをCaと複合的に用いることで、相乗的に高い難燃性を発揮することができる。Mmが0.2質量%未満ではこれらのCaと併せた複合的な難燃性向上効果が不十分になってしまう。一方で、Mmの含有量は0.4質量%以下である必要がある。Mmが増えすぎると機械的特性が低下する。
なお、MmはCeやLaなどの希土類元素の合金であり、一般的に使用されているものが材料として利用できる。Mmに含まれる個々の元素についてはYを除いて特に限定はない。ただし、希土類元素の中でもYについては、多すぎると溶湯内部にスラッジを形成しやすくなる問題を有する。このため、Yの含有量は上記マグネシウム合金の0.3質量%未満であると好ましく、0.01質量%未満であると特に好ましい。
上記マグネシウム合金のMn含有量は、0.1質量%以上である必要があり、0.25質量%以上であると好ましい。Mnが含まれていると鋳造の際に溶湯中に含まれる鉄を除去する効果が発揮されるが、0.1質量%未満ではその除去効果が不十分で、マグネシウム合金中に鉄が残存し、耐食性が低下する。一方で、Mn含有量は0.6質量%以下である必要があり、0.35質量%以下であると好ましい。Mnが多すぎるとAlとの金属間化合物やMnの単体が析出しやすくなる傾向にあり、0.6質量%を超えるとこの問題が無視できなくなる。
上記マグネシウム合金は、上記の成分の他に、Beを5ppm以上20ppm以下の範囲で含有していてもよい。Beを含むことでさらに難燃性を向上させることができる。ただし、人体への影響の面から20ppm以下にすることが望ましい。
上記マグネシウム合金は、残部としてMgの他に、この発明にかかる効果を阻害しない範囲で、不純物となる上記以外の元素を含有してもよい。ただし、含有する量は原材料や製造時の問題から不可避的に含有される不可避不純物として含まれる程度に抑えることが好ましい。その不可避不純物となる元素の合計量は、0.5質量%未満であると好ましく、0.1質量%未満であるとより好ましい。予期せぬ元素が多すぎると上記の元素の範囲であっても、物性に支障を来すおそれがあるからである。また、一つの元素あたりの含有量は、0.1質量%以下であると好ましく、0.01質量%以下であるとより好ましく、検出限界未満であると特に好ましい。
上記不可避不純物となる元素としては、例えばFe、Zn、Zr、C、Si、Cu、Niが挙げられる。この中でも特に、Mnによって除去されるFeは、0.004質量%以下であるとより好ましい。
なお、この発明における含有量の値は、原料における比ではなく、合金として得られた素材あるいは鋳造や鍛造などにより製品を製造した時点における含有量を示す。
上記マグネシウム合金の残部はMgである。この発明にかかるマグネシウム合金は、一般的なマグネシウム合金の製造方法で得ることができ、このマグネシウム合金で製品を製造する際には、一般的な鋳造方法(例えば砂型鋳造)により製造することができる。例えば、重油炉、ガス炉、電気炉などを用いて合金の溶解を行い、各形状の鋳型に鋳造する方法が挙げられる。
上記マグネシウム合金を鋳造する際には、難燃性が高いため、従来の類似のマグネシウム合金を鋳造する場合に比べて、安全性が向上する。
上記マグネシウム合金により製造される部材としては、伸び、引張強度、靭性などを要求する部品に好適に用いることができる。マグネシウム合金全般に言える特性として、他の合金よりも軽量であるという利点があり、軽量でありなおかつ伸び、引張強度、靭性に優れた部材を製造することができる。このような効果が求められ、上記マグネシウム合金を好適に用いることができる部材としては、例えばハンドル、シートフレーム、インスツルメントパネルが挙げられる。
上記マグネシウム合金が発揮すると期待される具体的な靭性の値としては、JIS Z 2242(ISO148-1)に従った衝撃試験における吸収エネルギーが24.0J以上である。
以下、この発明にかかるマグネシウム合金を実際に製造した例を挙げて報告する。
<燃焼試験>
下記の表1のそれぞれの例に示す成分比(単位:質量%、―は検出限界未満。以下同じ)となるように、溶鉱炉内にそれぞれの材料を投入した。なお、以下の表に示す値は目標値ではなく、実際に得られた合金の成分比を測定した値である。溶融させた状態で、溶湯表面の状態を目視で観察した。溶湯に問題がなかったものを「Good」、溶湯に問題があったものを「Bad」として示す。実施例1は、炉壁に残った溶湯からの発火は若干見られたものの、溶湯表面は保護膜に覆われ、大きな燃焼はなかった。一方で、比較例1、2は炉壁だけではなく、溶湯表面の中央部からも燃焼した。比較例3は実施例1同様、燃焼は見られなかったが、溶湯内にスラッジが発生してしまった。
下記の表1のそれぞれの例に示す成分比(単位:質量%、―は検出限界未満。以下同じ)となるように、溶鉱炉内にそれぞれの材料を投入した。なお、以下の表に示す値は目標値ではなく、実際に得られた合金の成分比を測定した値である。溶融させた状態で、溶湯表面の状態を目視で観察した。溶湯に問題がなかったものを「Good」、溶湯に問題があったものを「Bad」として示す。実施例1は、炉壁に残った溶湯からの発火は若干見られたものの、溶湯表面は保護膜に覆われ、大きな燃焼はなかった。一方で、比較例1、2は炉壁だけではなく、溶湯表面の中央部からも燃焼した。比較例3は実施例1同様、燃焼は見られなかったが、溶湯内にスラッジが発生してしまった。
<引張試験>
下記の表2のそれぞれの例に示す成分比となる、AM50に類似した試験片を鋳造した。ただし、比較例2は既存の規格におけるAM50に従っている。また、実施例1と比較例2は上記の燃焼試験と同じ合金である。これらの試験片について、万能試験機(INSTRON製、5982型)を用いて引張強度(JIS Z 2241(ISO-6892-1に対応)規格中3.10.1「引張強さ(tensile strength)」)、降伏強度(同規格中3.10.2「降伏応力(yield strength)」)、伸び(同規格中3.3「伸び(elongation)」)を測定した。その結果を表2に示す。それぞれの値について、降伏強度(0.2%耐力)が125MPa以上、引張強度が250Mpa以上、かつ伸びが15%以上である例をGoodと評価し、いずれかの条件を満たさない例をBadと評価した。
下記の表2のそれぞれの例に示す成分比となる、AM50に類似した試験片を鋳造した。ただし、比較例2は既存の規格におけるAM50に従っている。また、実施例1と比較例2は上記の燃焼試験と同じ合金である。これらの試験片について、万能試験機(INSTRON製、5982型)を用いて引張強度(JIS Z 2241(ISO-6892-1に対応)規格中3.10.1「引張強さ(tensile strength)」)、降伏強度(同規格中3.10.2「降伏応力(yield strength)」)、伸び(同規格中3.3「伸び(elongation)」)を測定した。その結果を表2に示す。それぞれの値について、降伏強度(0.2%耐力)が125MPa以上、引張強度が250Mpa以上、かつ伸びが15%以上である例をGoodと評価し、いずれかの条件を満たさない例をBadと評価した。
<衝撃試験>
上記の引張試験で用いたそれぞれの合金を用いて、試験片を鋳造した。この試験片について、シャルピー式衝撃試験機((株)森試験機製作所製)を用いてシャルピー衝撃値を測定した(JIS Z 2242(ISO148-1に対応)、試験温度20℃、サンプル温度20℃)。その値を表3に示す。測定した吸収エネルギーが24.0J以上である例をGoodと評価し、そうでない例をBadと評価した。
上記の引張試験で用いたそれぞれの合金を用いて、試験片を鋳造した。この試験片について、シャルピー式衝撃試験機((株)森試験機製作所製)を用いてシャルピー衝撃値を測定した(JIS Z 2242(ISO148-1に対応)、試験温度20℃、サンプル温度20℃)。その値を表3に示す。測定した吸収エネルギーが24.0J以上である例をGoodと評価し、そうでない例をBadと評価した。
<耐食性試験>
上記の実施例1及び比較例2と同じ合金を用いて、試験片を鋳造した。この試験片について、複合サイクル試験機(板橋理化工業(株)製)を用いて中性塩水噴霧試験(JIS Z 2371(ISO9227に対応))を行い、24時間後の腐食減量を測定した。その値を表4に示す。腐食減量が0.25%以下である例をGoodとした。実施例1の合金では、従来合金であるAM50である比較例2と大差がなく、耐食性の点でも問題なく使用できるものであることが確かめられた。
上記の実施例1及び比較例2と同じ合金を用いて、試験片を鋳造した。この試験片について、複合サイクル試験機(板橋理化工業(株)製)を用いて中性塩水噴霧試験(JIS Z 2371(ISO9227に対応))を行い、24時間後の腐食減量を測定した。その値を表4に示す。腐食減量が0.25%以下である例をGoodとした。実施例1の合金では、従来合金であるAM50である比較例2と大差がなく、耐食性の点でも問題なく使用できるものであることが確かめられた。
Claims (2)
- Alを4.4質量%以上5.5質量%以下、Caを0.2質量%以上0.5質量%以下、ミッシュメタルを0.2質量%以上0.4質量%以下、Mnを0.1質量%以上0.6質量%以下含有し、残部がMgと不可避不純物とであるマグネシウム合金。
- Caを0.4質量%以下、ミッシュメタルを0.35質量%以下含有する請求項1に記載のマグネシウム合金。
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