以下に、実施の形態にかかる取引価格予測装置、取引価格予測モデル生成装置、入札支援システムおよび取引価格予測プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施の形態にかかる取引価格予測装置の構成例を示す図である。本実施の形態の取引価格予測装置1は、ブラインドシングルプライスオークション方式の取引市場における商品の取引価格の予測を行う。以下、本実施の形態では、取引価格予測装置1が、JEPXのスポット市場の約定価格を予測する例を説明するが、この例に限らず、取引価格予測装置1は、ブラインドシングルプライスオークション方式の電力取引市場における商品の取引価格の予測を同様に行うことができる。
本実施の形態の取引価格予測装置1は、約定価格を予測するための予測モデルである後述する第1の予測モデルおよび第2の予測モデルを生成し、生成した予測モデルを用いて取引価格の予測を行う。このとき、本実施の形態の取引価格予測装置1は、変動電源による発電の一例であるPV発電によって発電された電力の売入札量を推定し、推定した売入札量を用いて予測モデルの生成のために用いられる買入札量の実績値を補正する。これにより、本実施の形態では、電力買入札量の実績値に含まれるPV発電量の変動の影響を抑制し、取引価格の予測を行うための予測モデルの精度を向上させる。なお、取引価格は約定価格に手数料を考慮したものであり、約定価格を予測することは取引価格を予測することに相当する。このため、以下では、取引価格予測装置1が、取引価格として約定価格を予測する例を説明する。
図1に示すように、本実施の形態の取引価格予測装置1は、通信部11、変動電源入札モデル生成部12、第1のモデル生成部13、第2のモデル生成部14、第1の予測部15、第2の予測部16、提示部17、データ記憶部18、モデル記憶部19、変動電源推定入札量算出部20および買入札量補正部21を備える。
通信部11は、インターネットなどの通信回線を経由して他の装置と通信を行う。通信部11は、他の装置と通信を行うことにより他の装置から情報を取得する取得部である。詳細には、図1に示したように、通信部11は、取引情報提供装置2から取引情報を受信し、受信した取引情報をデータ記憶部18に格納し、電力情報提供装置3から受信した電力情報をデータ記憶部18に格納し、付加情報提供装置4から受信した付加情報をデータ記憶部18に格納する。
取引情報は、スポット市場における取引の実績を示す情報であり、少なくとも日時ごとの約定価格および約定量を含む。電力情報は、電力の需給量の実績値を示す情報であり、少なくとも日時ごとの電力の供給量およびPV発電量を示す情報を含む。なお、電力は需要と供給が一致することを求められているので、供給量の実績値は需要量の実績値とみなすことができる。付加情報は、入札に影響を与える条件の実績値を示す情報であり、例えば、予測対象日時よりも過去に得られた、気象情報、カレンダ情報、および発電機の運転情報といった電力の需要量に影響を与える情報である。気象情報には、気温、天気情報および日射量が含まれる。カレンダ情報は、曜日、平日と祝祭日との別、特定のイベントなどにより電力需要量の増減が予想される日であるか否かを示す情報などである。発電機の運転情報は、例えば、定期点検、故障または事故によって発電機が停止しているか否かを示す情報である。また、電力系統同士を接続している連系線の分断の有無を付加情報に含めてもよい。
取引情報提供装置2は、例えば、JEPXにおいて管理される装置であり、JEPXのスポット市場の取引の実績を記憶しており、上述した取引情報を提供する。電力情報提供装置3は、例えば、電力会社によって管理される装置であり、電力の供給量の実績などを記憶しており、上述した電力情報を供給する。付加情報提供装置4は、上述した付加情報を提供する装置である。付加情報提供装置4は1つでなくてもよく、気象情報を提供する装置、発電機の運転情報を提供する装置など複数の装置で構成されていてもよい。
また、取引情報、電力情報および付加情報のうちの少なくとも1つは、外部の装置から通信によって取得されるかわりに、取引価格予測装置1にユーザーにより入力されてもよい。すなわち、取引情報、電力情報および付加情報を取得する取得部は、取引価格予測装置1において、ユーザーから入力を受け付ける、図1では図示を省略した入力部であってもよい。
変動電源入札モデル生成部12は、変動電源によって発電された電力の一例であるPV発電電力の売入札量を推定する推定部の一例である。図1に示した例では、変動電源はPV発電を行うPV発電設備である。以下、変動電源がPV発電設備である場合を例に挙げて説明するが、変動電源はPV発電設備に限定されない。変動電源入札モデル生成部12は、付加情報の少なくとも一部と変動電源により発電された電力の売入札量との関係を示すモデルである変動電源入札モデルを生成し、生成した変動電源入札モデルをモデル記憶部19に記憶する。変動電源入札モデル生成部12は、例えば、取引情報、電力情報および付加情報のうちの少なくとも1つの実績値を用いて、変動電源入札モデルを生成する変動電源入札モデルの例については後述する。なお、変動電源入札モデルは、変動電源入札モデル生成部12により生成される代わりに、ユーザーから入力されて設定されてもよい。
第1のモデル生成部13は、電力取引市場における買入札量の実績値と当該実績値に対応する情報であって電力の需要に影響する情報である付加情報とを用いて、付加情報と買入札量との関係を示す第1の予測モデルを生成する。具体的には、第1のモデル生成部13は、データ記憶部18に記憶されている取引情報(以下、第1の情報ともいう)とデータ記憶部18から読み出した付加情報(以下、第2の情報ともいう)とを用いて第1の予測モデルを生成する。第1の予測モデルは、予測対象日時における電力の買入札量を予測するための予測モデルであり、例えば、機械学習により生成される学習済みモデルである。第1の予測モデルの生成方法の詳細については後述する。
変動電源推定入札量算出部20は、モデル記憶部19に格納されている変動電源入札モデルと、データ記憶部17に格納されている取引情報および電力情報のうち少なくとも1つとを使用し、変動電源によって発電された電力の売入札量の推定値を算出する。または、変動電源推定入札量算出部20は、モデル記憶部19に格納されている変動電源入札モデルと、取引情報および電力情報の予測値と、第1の予測モデルおよび付加情報を使用して算出された買入札量の予測値とを使用し、変動電源によって発電された電力の売入札量の推定値の予測値を算出する。買入札量補正部21は、変動電源推定入札量算出部20により算出された推定値を用いて、買入札量を補正する。後述するように、本実施の形態の処理は、予測モデル生成処理と約定価格の予測処理との2つに大別される。買入札量補正部21は、予測モデル生成処理においては、データ記憶部18から読み出した取引情報(以下、第1の情報ともいう)に含まれる買入札量の実績値を補正し、データ記憶部18に記憶されている取引情報に含まれる買入札量を補正後の買入札量に書き換える。また、買入札量補正部21は、予測処理においては、後述する第1の予測部15によって予測された買入札量である買入札量の予測値を、変動電源推定入札量算出部20により算出された推定値を用いて補正し、補正後の買入札量の予測値を第2の予測部16へ出力する。すなわち、買入札量補正部21は、モデル生成処理では、変動電源による発電によって発電された電力である変動電源電力の電力取引市場における売入札量の推定値を用いて電力取引市場における買入札量の実績値を補正し、予測処理では、第1の予測部15によって予測された買入札量を予測対象日時に対応する売入札量の推定値を用いて補正する。
第2のモデル生成部14は、補正後の買入札量の実績値と、補正後の買入札量に対応する約定価格の実績値と、補正後の買入札量の実績値に対応する付加情報とを用いて、買入札量および付加情報と約定価格との関係を示す第2の予測モデルを生成する。具体的には、第2のモデル生成部14は、データ記憶部18に記憶されている補正後の第1の情報とデータ記憶部18に記憶されている第2の情報とを用いて、第2の予測モデルを生成する。第2の予測モデルは、予測対象日時における電力の約定価格を予測するための予測モデルであり、例えば、機械学習により生成される学習済みモデルである。第2の予測モデルの生成方法の詳細については後述する。
第1の予測部15は、第1の予測モデルと、予測対象日時の付加情報とを用いて、予測対象日時の買入札量を予測する。具体的には、第1の予測部15は、約定価格の予測対象日時の付加情報と第1の予測モデルとを用いて、予測対象日時における電力の買入札量を予測する。詳細には、第1の予測部15は、第1のモデル生成部13によって生成されてモデル記憶部19に記憶されている第1の予測モデルに、予測対象日時の付加情報を入力することで予測対象日時における電力の買入札量を予測する。予測対象日時の付加情報を、以下、第3の情報ともいう。
第2の予測部16は、買入札量補正部21から入力される補正後の買入札量の予測値と、予測対象日時の付加情報と、第2の予測モデルとを用いて、予測対象日時の約定価格を予測する。第2の予測部16は、第1の予測部15によって予測された買入札量と第3の情報とを用いて、予測対象日時における電力の約定価格を予測する。詳細には、第2の予測部16は、第2のモデル生成部14によって生成されてモデル記憶部19に記憶されている第2の予測モデルに、第1の予測部15によって予測された電力の買入札量と第3の情報とを入力することで、予測対象日時における電力の約定価格を予測する。
提示部17は、第1の予測部15によって予測された買入札量および第2の予測部16によって予測された約定価格をユーザーに提示する。提示部17は、第2の予測モデルを第1の予測部15によって予測された買入札量および第2の予測部16によって予測された約定価格とともに提示してもよい。例えば、提示部17は、電力の約定価格の予測に用いられた第2の予測モデルとともに、電力の買入札量の予測値の確率分布と電力の約定価格の予測値の確率分布とを、表示することによりユーザーに提示する。また、提示部17は、買入札量の予測に用いられた第3の情報および第1の予測モデルを表示してもよい。また、提示部17は、第1の予測部15によって予測された買入札量および第2の予測部16によって予測された約定価格を示す情報を別の装置へ送信することにより、ユーザーに提示してもよい。この場合、別の装置がこれらの情報を表示する。
データ記憶部18は、上述した取引情報、電力情報および付加情報を記憶する。これらは第1の予測モデル、第2の予測モデルの生成に用いられる情報であり、例えば、予測対象日時より前の時刻の日時の情報である。モデル記憶部19は、上述した第1の予測モデルおよび第2の予測モデルを記憶する。
なお、上述したように、本実施の形態の取引価格予測装置1は、約定価格を予測するための予測モデルである第1の予測モデルおよび第2の予測モデルを生成するモデル生成機能と、第1の予測モデルおよび第2の予測モデルを用いて約定価格を予測する推論機能との両方を備えているが、モデル生成機能と、推論機能とをそれぞれ別の装置により実現してもよい。例えば、通信部11、変動電源入札モデル生成部12、第1のモデル生成部13、第2のモデル生成部14、データ記憶部18、モデル記憶部19、変動電源推定入札量算出部20および買入札量補正部21を備える取引価格予測モデル生成装置と、第1の予測部15、第2の予測部16、提示部17、モデル記憶部19、変動電源推定入札量算出部20および買入札量補正部21を備える予測装置と、の2つの装置に分かれていてもよい。この場合、予測装置は、取引価格予測モデル生成装置により生成された取引価格予測モデル生成装置により生成された変動電源入札モデル、第1の予測モデルおよび第2の予測モデルを取引価格予測モデル生成装置から取得してモデル記憶部19に記憶する。
ここで、取引価格予測装置1のハードウェア構成について説明する。本実施の形態の取引価格予測装置1は、コンピュータシステム上で、取引価格予測装置1における処理が記述されたプログラムである取引価格予測処理プログラムが実行されることにより、コンピュータシステムが取引価格予測装置1として機能する。図2は、本実施の形態の取引価格予測装置1を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図である。図2に示すように、このコンピュータシステムは、制御部101と入力部102と記憶部103と表示部104と通信部105と出力部106とを備え、これらはシステムバス107を介して接続されている。
図2において、制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、本実施の形態の取引価格予測装置1における処理が記述された取引価格予測処理プログラムを実行する。入力部102は、たとえばキーボード、マウスなどで構成され、コンピュータシステムの使用者が、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部103は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)などの各種メモリおよびハードディスクなどのストレージデバイスを含み、上記制御部101が実行すべきプログラム、処理の過程で得られた必要なデータ、などを記憶する。また、記憶部103は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部104は、ディスプレイ、LCD(液晶表示パネル)などで構成され、コンピュータシステムの使用者に対して各種画面を表示する。通信部105は、通信処理を実施する受信機および送信機である。出力部106は、プリンタなどである。なお、図2は、一例であり、コンピュータシステムの構成は図2の例に限定されない。
ここで、本実施の形態の取引価格予測処理プログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例について説明する。上述した構成をとるコンピュータシステムには、たとえば、図示しないCD(Compact Disc)-ROMドライブまたはDVD(Digital Versatile Disc)-ROMドライブにセットされたCD-ROMまたはDVD-ROMから、取引価格予測処理プログラムが記憶部103にインストールされる。そして、取引価格予測処理プログラムの実行時に、記憶部103から読み出された取引価格予測処理プログラムが記憶部103に格納される。この状態で、制御部101は、記憶部103に格納されたプログラムに従って、本実施の形態の取引価格予測装置1としての処理を実行する。
なお、上記の説明においては、CD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体として、取引価格予測装置1における処理を記述したプログラムを提供しているが、これに限らず、コンピュータシステムの構成、提供するプログラムの容量などに応じて、たとえば、通信部105を経由してインターネットなどの伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
図1に示した変動電源入札モデル生成部12、第1のモデル生成部13、第2のモデル生成部14、第1の予測部15、第2の予測部16、変動電源推定入札量算出部20および買入札量補正部21は、図2に示した記憶部103に記憶された取引価格予測処理プログラムが図2に示した制御部101により実行されることにより実現される。図1に示したデータ記憶部18およびモデル記憶部19は、図2に示した記憶部103の一部である。図1に示した通信部11は、図2に示した通信部105により実現される。
例えば、本実施の形態の取引価格予測処理プログラムは、電力取引市場における買入札量の実績値と当該実績値に対応する情報であって電力の需要に影響する情報である付加情報とを用いて、付加情報と買入札量との関係を示す第1の予測モデルを生成する第1のモデル生成ステップと、変動電源による発電によって発電された電力である変動電源電力の電力取引市場における売入札量の推定値を用いて電力取引市場における買入札量の実績値を補正する第1の補正ステップと、をコンピュータに実行させる。また、本実施の形態の取引価格予測処理プログラムは、補正後の買入札量の実績値と、補正後の買入札量の実績値に対応する約定価格の実績値と、補正後の買入札量の実績値に対応する付加情報とを用いて、買入札量および付加情報と約定価格との関係を示す第2の予測モデルを生成する第2のモデル生成ステップ、をコンピュータに実行させる。さらに、本実施の形態の取引価格予測処理プログラムは、第1の予測モデルと、予測対象日時の付加情報とを用いて、予測対象日時の買入札量を予測する第1の予測ステップと、第1の予測ステップによって予測された買入札量を予測対象日時に対応する売入札量の推定値を用いて補正する第2の補正ステップと、補正後の買入札量の予測値と、予測対象日時の付加情報と、第2の予測モデルとを用いて、予測対象日時の約定価格を予測する第2の予測ステップと、をコンピュータに実行させる。
取引価格予測装置1は複数のコンピュータシステムにより実現されてもよい。また、取引価格予測モデル生成装置と、予測装置との2つの装置に分かれた構成の場合、それぞれが図2に示したコンピュータシステムにより実現される。この場合も、取引価格予測モデル生成装置および予測装置のうちの少なくとも1つが複数のコンピュータシステムによって実現されてもよい。
次に、本実施の形態の動作について説明する。図3は、本実施の形態の予測モデル生成処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、通信部11が予測モデルの生成に用いる情報を取得する(ステップS1)。例えば、通信部11は、過去の一定期間の取引情報、電力情報および付加情報を取得し、データ記憶部18に格納する。なお、各情報の取得は同時に行われる必要はなく、後述する第1の予測モデルの生成までに、各情報が取得されていればよい。
図4は、取引情報の一例を示す図である。図4に示すように、取引情報は、例えば、時刻すなわち日時ごとの買入札量および約定価格を含む。図5は、電力情報の一例を示す図である。図5に示すように、電力情報は、例えば、時刻すなわち日時ごとの供給量およびPV発電量を含む。供給量およびPV発電量は、推定対象の約定価格に対応する範囲の全電力系統における総量である。例えば、推定対象の約定価格がエリアプライスである場合には、電力情報に含まれる供給量は当該エリアの供給量の総量であり、推定対象の約定価格がシステムプライスである場合には、電力情報に含まれる供給量は日本全体の供給量の総量である。なお、電力情報として、取引価格予測装置1は、電力情報提供装置3から総量を取得するかわりに、推定対象の約定価格に対応する範囲を複数に分割した分割範囲ごとの供給量を電力情報提供装置3から取得し、取得した供給量を加算して総量を求める算出部をさらに備えてもよい。図6は、付加情報の一例を示す図である。図6に示すように、付加情報は、例えば、時刻すなわち日時ごとの気温、天気およびカレンダ情報を含む。なお、付加情報は、図6に示した例に限定されず、発電機の運転情報、冷熱機器の稼働率、原油価格などを含んでいてもよい。
次に、第1のモデル生成部13が、第1の予測モデルを生成する(ステップS2)。詳細には、第1のモデル生成部13は、データ記憶部18から買入札量(買入札量の実績値)を日時とともに読み出し、当該日時の類似日時の付加情報を読み出す。ここで、類似日時は、日時が一致するまたは日時が近いものを示す。日時の近いものは、時間的に近いものを含むが、これに限らず、カレンダ情報が同じものであったり、異なる年の同一日であったり、といった付加情報が近いと思われる日時を含む。第1の予測モデルは、需要に影響を与える付加情報と買入札量との関係を示すモデルであるため、付加情報が一致するまたは付加情報が近いものは同様に扱うことができる。
第1のモデル生成部13は、買入札量と類似日時の付加情報とを組とするデータセットを、複数の日時に関して取得し、複数の日時に対応する複数のデータセットを用いて第1の予測モデルを生成し、モデル記憶部19に格納する。例えば、第1の予測モデルは、下記式(1)に示すような簡易な予測モデルであってもよい。この場合、第1のモデル生成部13は、類似日時における上述したデータセットを複数用いて、下記式(1)に含まれるパラメータα1の値とパラメータα2の値を算出する。なお、以下の式(1)では付加情報のうちの気温を例に挙げている。
買入札量=α1+α2×気温 ・・・(1)
第1の予測モデルの生成方法として、最も簡易なものに上記式(1)を仮定した線形回帰法があるが、これに限らず、サポートベクトル回帰、ベイズ回帰およびその他の手法による回帰分析を用いてもよい。または、データセットのうち補正後の買入札量を正解データとし他のデータを入力データとみなし、ニューラルネットワークをはじめとした機械学習により、付加情報と補正後の買入札量との関係を示す第1の予測モデルを求めてもよい。また、第1のモデル生成部13は、付加情報が類似するものを同一グループとして、第1の予測モデルを、グループごとに生成してもよい。この場合には、第1のモデル生成部13は、日時をキーとして付加情報と取引情報を紐づけることで、モデルの生成対象のグループに対応する取引情報を選択し、選択した取引情報の日時のうちの1つを処理対象日時として設定する。
また、第1のモデル生成部13は、電力需要量に影響を与える条件を示す付加情報の実績値である第2の情報と、予測時に入力として用いられ付加情報と同じ項目の第3の情報との誤差を考慮して、電力の買入札量を確率分布として予測する第1の予測モデルを学習してもよい。
例えば、気温が上昇すると、冷房機器の稼働率が上昇して電力需要量が増加する。電力需要量が増加すると、入札者は確実に電力を確保したいと考えるので、買入札量も増加する。一方、冷房が不要な温度まで気温が低下すると、冷房機器の稼働率が下降するので、電力需要量が減少して、これに伴い電力の買入札量も減少する。このように、付加情報の一例である気温と需要量は相関があり、買入札量と需要量は相関があるため、気温の関数と買入札量との関係を第1の予測モデルとして生成することができる。
なお、電力取引市場において電力需要に影響を与える条件には、前述した気象情報などの他に、冷熱機器の稼働率があり、原油価格がある。このため、付加情報は、気温に限定されず、これらを含んでいてもよい。なお、原油価格は、気温に比べて変化が少ない。このため、付加情報に気温と原油価格などのように複数の情報が含まれる場合、これらの時間変化の大小に応じて類似日時の範囲を異ならせてもよい。
次に、取引価格予測装置1は、第2の予測モデルを生成し(ステップS3)、予測モデルの生成処理を終了する。具体的には、ステップS3では、変動電源入札モデル生成部12が、変動電源入札モデルを生成して、モデル記憶部19に格納し、変動電源推定入札量算出部20が、変動電源入札モデルを用いて第2の予測モデルの生成に用いられる取引情報の各日時に対応する変動電源による電力の売入札量を推定する。なお、変動電源入札モデル生成部12による変動電源入札モデルの生成は、ステップS3で行われる代わりに、予測モデルの生成処理の前の任意のタイミングで行われてもよい。そして、買入札量補正部21が、変動電源推定入札量算出部20により推定された売入札量を用いて、データ記憶部18から読み出した取引情報に含まれる買入札量の実績値を補正し、データ記憶部18に記憶されている取引情報に含まれる買入札量を補正後の買入札量に書き換える。第2のモデル生成部14は、補正後の取引情報とデータ記憶部18から読み出した付加情報とを用いて第2の予測モデルを生成する。
本実施の形態の第2の予測モデルの生成方法について詳細に説明する。なお、以下では、変動電源の例としてPV発電設備を例に挙げて説明する。図7は、本実施の形態の第2の予測モデルの生成処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、取引価格予測装置1は、処理対象日時を設定する(ステップS11)。詳細には、第2のモデル生成部14は、データ記憶部18に記憶されている取引情報のうち、第2の予測モデルの生成に用いる情報を決定し、当該情報に対応する日時のうちの1つを処理対象日時に設定し、設定した対象日時を変動電源入札モデル生成部12へ通知する。例えば、第2のモデル生成部14は、直近の1週間の取引情報を用いて第2の予測モデルを生成する場合、1週間分の取引情報のうち最も早い日時を処理対象日時に設定する。なお、第2の予測モデルの生成に用いる取引情報はこれに限らず、過去1年分であってもよいし、過去数年分であってもよい。また、第2のモデル生成部14は、付加情報が類似するものを同一グループとして、第2の予測モデルを、グループごとに生成してもよい。この場合には、第2のモデル生成部14は、日時をキーとして付加情報と取引情報を紐づけることで、モデルの生成対象のグループに対応する取引情報を選択し、選択した取引情報の日時のうちの1つを処理対象日時として設定する。
次に、取引価格予測装置1は、処理対象日時に対応するPV発電量を用いてPV売入札量を推定する(ステップS12)。詳細には、例えば、変動電源入札モデル生成部12が、発電情報の実績値および取引情報の実績値に基づいて、変動電源入札モデルを生成し、モデル記憶部19へ格納する。ここでは、一例として、変動電源入札モデルは、変動電源により発電された変動発電電力の一例であるPV発電電力の発電量を入力として、PV発電による電力の売入札量であるPV売入札量を出力するモデルであるとする。変動電源入札モデルはこの例に限定されない。変動電源推定入札量算出部20は、処理対象日時に対応するPV発電量を、データ記憶部18に記憶されている電力情報から抽出する。そして、変動電源推定入札量算出部20は、抽出したPV発電量と、モデル記憶部19に格納されている変動電源入札モデルとを用いてPV売入札量の推定し、推定したPV売入札量を買入札量補正部21へ入力する。PV売入札量の推定方法については後述する。
次に、取引価格予測装置1は、処理対象日時に対応する買入札量を推定されたPV売入札量を用いて補正する(ステップS13)。詳細には、買入札量補正部21が、変動電源推定入札量算出部20から入力されたPV売入札量の推定値を用いて、データ記憶部18に記憶されている取引情報のうち処理対象日時に対応する買入札量を読み出して補正する。買入札量補正部21は、例えば、以下の式(2)により、買入札量を補正する。なお、買入札量補正部21は、以下の式(2)の代わりに、買入札量(補正前)をPV売入札割合で除算することで補正後の買入札量を求めてもよい。PV売入札割合は、PV発電量/総需要量または定数である。
補正後の買入札量=買入札量(補正前)-PV売入札量の推定値 ・・・(2)
次に、取引価格予測装置1は、補正後の買入札量を処理対象日時と対応付けて保存する(ステップS14)。詳細には、買入札量補正部21が、データ記憶部18に記憶されている取引情報のうち処理対象日時の買入札量を補正後の買入札量に書き換える。または、買入札量補正部21は、取引情報を更新せずに、取引情報とは別に補正後の買入札量を処理対象日時とともにデータ記憶部18に格納してもよい。
次に、取引価格予測装置1の第2のモデル生成部14は、予測モデルの生成に用いる全買入札量の補正が終了したか否かを判断する(ステップS15)。例えば、予測モデルの生成に用いる全買入札量は期間などにより予め指定され、第2のモデル生成部14は、この期間に対応する補正後の買入札量が全て更新されたか否かを判断する。予測モデルの生成に用いる全買入札量の補正が終了した場合(ステップS15 Yes)、第2のモデル生成部14は、補正後の買入札量を用いて第2の予測モデルを生成し(ステップS16)、処理を終了する。予測モデルの生成に用いる全買入札量の補正が終了していない場合(ステップS15 No)、設定する処理対象日時を変更してステップS11からの処理が繰り返される。
ここで、PV売入札量の推定を用いた補正の効果について説明する。以上説明したように、第2の予測モデルは、買入札量と約定価格の関係を示すモデルである。第2の予測モデルにより得られる関係は、一般に言われる売入札曲線に相当する。このため、以下では、買入札量と約定価格との関係を、売入札曲線とも呼ぶ。取引情報は、上述したように取引市場における約定価格および買入札量の実績値を含む。上述したように、PV発電のように変動電源による発電電力は火力発電などによる発電電力と異なり自然環境などによって発電電力が変動し、この変動に応じて売入札曲線も変動する。
図8は、PV発電量による売入札曲線のばらつきを示す模式図である。図8では、横軸は入札量を示し縦軸は電力市場における価格を示す。図8に示した例では、PV発電による発電量が最も少ないとき(以下、「PV少」ともいう)の売入札曲線#1と、PV発電による発電量が最も多いとき(以下、「PV多」ともいう)の売入札曲線#2との2つの売入札曲線を示している。PV多の場合のPV発電量からPV少の場合のPV発電量を引いた差分は、一般に余剰分となるため、極めて安価な価格で入札されると予想される。図8に示した例では、上記差分の売入札価格は最低入札価格、例えば0.01円/kWhで入札されると仮定している。したがって、売入札曲線#2は、売入札曲線#1を右側にPV発電電力に対応する売入札量の最大値分だけシフトさせた形状となる。PV発電電力は、「PV少」と「PV多」との間でばらつくことになるため、売入札曲線は、売入札曲線#1と売入札曲線#2との間でばらつくことになる。
このため、本実施の形態では、第2の予測モデルの入力として用いる買入札量の実績値を、PV売入札量の推定値を用いて補正する。これにより、補正を行わずに買入札量の実績値をそのまま使用して予測モデルを生成する場合に比べて、予測モデルの精度を向上させることができ、これにより約定価格の予測精度を向上させることができる。
図9は、取引情報の約定価格と買入札量の組で表されるデータ点のばらつきを示す模式図である。図9において、丸はPV発電量が多い場合のデータ点を示し、三角はPV発電量が中程度の量の場合のデータ点を示し、四角はPV発電量が少ない場合のデータ点を示している。図9の上側には、補正前の買入札量のデータ点が示され、図9の下側には、補正後の買入札量のデータ点が示されている。図9からわかるように、推定PV売入札量を用いて買入札量を補正することで、取引情報の約定価格と買入札量の組で表されるデータ点のばらつきを抑制することができる。なお、図9に示した上側の図は補正前の買入札量の実績値と約定価格の実績値との関係を示す図であり、図9に示した下側の図は補正後の買入札量の実績値と約定価格の実績値との関係を示す図である。提示部17は、図9に模式的に示したような、補正前の買入札量の実績値と約定価格の実績値との関係と、補正後の買入札量と約定価格の実績値との関係と、を表示することでユーザーに提示してもよい。
次に、変動電源入札モデルと、上述したステップS12におけるPV売入札量の推定とについて説明する。ここで、変動電源入札モデル生成部12は、変動電源入札モデルとして、例えば、PV発電量に、PVの電力市場への供給率を乗じることでPV売入札量の推定値を算出する用いることができる。PVの電力市場への供給率は、定数としてもよいし、買入札量と総需要量との比から求めてもよい。例えば、以下の式(3)に示すように定数を用いるモデルを生成してもよいし、式(4)に示すように、総需要量と買入札量との比を用いたモデルを生成してもよい。下記の式(3)における定数は、例えば、下記式(4)における買入札量/総需要量の年間平均値などを用いることができる。
推定PV売入札量=PV発電量×定数 ・・・(3)
推定PV売入札量=PV発電量×(買入札量/総需要量) ・・・(4)
上記式(4)は、総需要量に対する買入札量の比率を変換係数として、PV発電量を推定PV売入札量に変換することに相当する。図10はPV発電量から推定PV売入札量への変換を示す概念図である。総需要量は、PV発電による発電とその他の供給電力により賄われる。総需要量のうち、PV発電により賄われる分をDAとし、その他の供給電力により賄われる分をDBとする。その他の供給電力は、例えば、火力発電などによる発電電力である。上記式(4)は、PVの電力市場への供給率、すなわち、総需要量(総供給量)に対するPV発電量の比率DA/(DA+DB)が、売入札量におけるPV売入札量MAの売入札量総量MA+MBに対する比率と同一であると仮定した計算式である。図10では、総需要量(総供給量)に対するPV発電量の比が、売入札量の総量におけるPV売入札量の比に相当すると仮定したときのPV発電量からPV売入札量への変換の概念を示している。また、上述したように、電力情報には、供給量が含まれており、これが総需要量に相当する。このため、式(4)の右辺の(買入札量/総需要量)は、電力情報に含まれるPV発電量および供給量の実績値と取引情報における買入札量の実績値とを用いて算出することができる。また、変動電源推定入札量算出部20は、例えば、式(3)または式(4)に例示される変動電源入札モデルと、PV発電量とを用いて、推定PV売入札量を算出する。予測モデル生成処理においては、変動電源推定入札量算出部20が用いるPV発電量は、補正対象の買入札量の実績値に対応するもの、例えば同一日時または類似日時のPV発電量である。なお、変動電源推定入札量算出部20は、後述する予測処理でも、推定PV売入札量を算出するが、このときに用いるPV発電量は、例えば、予測対象の日時に対応する予測されたPV発電量である。
ここで、ステップS16の第2の予測モデルの生成について説明する。第2のモデル生成部14は、補正後の買入札量と約定価格と類似日時の付加情報とを組とするデータセットを、複数の日時に関して取得し、複数の日時に対応する複数のデータセットを用いて第2の予測モデルを生成し、モデル記憶部19に格納する。第2の予測モデルは、電力の買入札量および付加情報と、電力の約定価格との関係を示すモデルである。第2の予測モデルの生成方法は、例えば、付加情報が類似するグループごとに、買入札量と約定価格との関係を学習するものであってもよい。また、補正後の買入札量に対する約定価格の分布をヒストグラムで表して、買入札量と約定価格との関係を学習してもよく、買入札量に対する約定価格の分布を、確率密度推定法を用いて表して、付加情報が類似するグループごとに、買入札量と約定価格との関係を学習してもよい。第2の予測モデルの学習には、線形回帰法、サポートベクトル回帰、ベイズ回帰およびその他の学習方法を用いてもよい。または、データセットのうち約定価格を正解データとし付加情報および買入札量を入力データとみなして、ニューラルネットワークをはじめとした機械学習により、電力の買入札量および付加情報と、電力の約定価格との関係を示す第2の予測モデルを求めてもよい。
ただし、原油価格は、一般的に冷熱機器の稼働率と比較して緩やかに変動する。このため、第2のモデル生成部14が、第2の情報として原油価格を取得する場合、原油価格は、必ずしも、第1のモデル生成部13によって取得された第2の情報と同じ日時に得られたものでなくてもよい。例えば、至近1年間に得られた原油価格であってもよい。すなわち、電力需要に影響を与える条件を示す情報のうち、変動が緩やか(例えば、一定期間内の変動量が閾値未満)な情報は、許容範囲内の変動であると予想される期間内に得られたものであれば、第1のモデル生成部13によって取得された第2の情報と同じ日時に得られたものでなくてもよい。
本願の発明者が、電力取引市場における電力の入札動向を検討した結果、電力取引市場において、電力の約定価格は、買入札量に対して不連続に階段状に変化し、同じ買入札量で複数の約定価格が設定されることがあるという知見が得られた。これは、ある買入札量に対して複数の約定価格が離散的に対応していることを意味する。第2の予測モデルは、電力の買入札量に対して複数の離散的な約定価格が相応の確率で対応することを表現可能な学習方法で学習される。このため、第2の予測モデルを表す関係式は複雑なものになることが予想される。ただし、第2の予測モデルを第1の予測モデルと同様な単純な関係式で近似した場合は、例えば、約定価格=α1+α2×買入札量、といった式で第2の予測モデルを表すことができる。この場合、第2のモデル生成部14は、第1の情報と第2の情報を用いて、パラメータα1の値とパラメータα2の値を学習する。
以上のモデル生成処理により、第1の予測モデルと第2の予測モデルが生成されてモデル記憶部19に格納される。図11は、本実施の形態の予測処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、第1の予測部15は、予測対象の日時を設定する(ステップS21)。
次に、第1の予測部15は、予測対象日時に対応する付加情報すなわち第3の情報を取得する(ステップS22)。第1の予測部15は、例えば、通信部11を介して、付加情報提供装置4から第3の情報を取得してもよいし、ユーザーからの入力により付加情報を取得してもよい。
次に、第1の予測部15は、付加情報を入力として第1の予測モデルを用いて買入札量を予測する(ステップS23)。詳細には、第1の予測部15は、モデル記憶部19に記憶されている第1の予測モデルへ付加情報を入力することにより、買入札量の予測値を得る。第1の予測部15は、買入札量の予測値を第2の予測部16へ通知する。
次に、取引価格予測装置1は、買入札量の予測値を補正する(ステップS24)。詳細には、変動電源推定入札量算出部20が、予測対象日時に対応する付加情報に含まれる天気情報などに基づいて予測対象日時のPV発電量を予測し、PV発電量の予測値と変動電源入札モデルとを用いて、推定PV売入札量を予測し、推定PV売入札量の予測値を買入札量補正部21へ出力する。なお、推定PV売入札量の予測値の算出方法は、例えば、モデル生成時の推定PV売入札量と同様の方法を用いることができる。買入札量補正部21は、推定PV売入札量の予測値を用いて買入札量を補正する。詳細には、買入札量補正部21は、買入札量の予測値から推定PV売入札量の予測値を減算することで、買入札量の予測値を補正する。なお、モデル生成時と同様に、買入札量補正部21は、PV売入札割合の予測値で除算することで、補正を行ってもよい。PV売入札割合の予測値は、PV発電量の予測値/総需要量の予測値または定数である。
次に、取引価格予測装置1は、補正後の買入札量の予測値と付加情報と第2の予測モデルとを用いて約定価格を予測する(ステップS25)。詳細には、第2の予測部16は、モデル記憶部19に記憶されている第2の予測モデルへ付加情報と補正後の買入札量の予測値とを入力することにより、約定価格の予測値を得る。第2の予測部16は、約定価格の予測値を提示部17へ通知する。
次に、提示部17は、約定価格の予測値を提示し(ステップS26)、予測処理を終了する。提示部17は、例えば、約定価格の予測値を表示してもよいし、約定価格の予測値を他の装置へ装置してもよい。また、提示部17は、第1の予測モデルおよび第2の予測モデルのうちの少なくとも1つを約定価格の予測値とともに提示してもよい。また、提示部17は、図9に示したような補正の前後の約定価格と入札量の実績値の組を表示してもよい。
電力の約定価格は買入札量に対して離散的に変化するので、電力の約定価格を、平均値または分散値といった代表値で提示するのは困難である。そこで、提示部17が、第2の予測モデルと、電力の買入札量の確率分布と、電力の約定価格の確率分布との対応関係を可視化し、第2の予測モデルを用いて買入札量の確率分布から約定価格の確率分布が導出される過程を認識可能な態様で提示してもよい。
このように、取引価格予測装置1では、電力の約定価格の予測に用いられた第2の予測モデル、電力の買入札量の予測値および電力の約定価格の予測値を可視化し、第2の予測モデルを用いて買入札量の確率分布から約定価格の確率分布が導出される過程を認識可能な態様で提示する。これにより、入札者は、JEPXのスポット市場のように入札動向が非公開の取引市場であっても、予測結果の約定価格が決定される取引状況を把握することができ、予測結果の妥当性を判断することができる。
なお、モデル生成処理は、予測処理の前に実施されるが、予測処理が行われた後に、新たな情報を用いて第1の予測モデルおよび第2の予測モデルが更新されてもよい。そして、更新された第1の予測モデルおよび第2の予測モデルを用いた予測処理が行われてもよい。
以上のように、本実施の形態では、PV売入札量の推定値を用いて買入札量の実績値を補正し、補正した買入札量を用いて予測モデルを生成する。これにより、補正を行わない場合に比べて、PV売入札量のばらつきの影響を抑えて予測精度を向上させることができる。
また、本実施の形態の取引価格予測装置1は、約定価格を予測した第2の予測モデル、予測結果の買入札量および予測結果の約定価格を提示する提示部17を備えるので、入札者は、約定価格が決定される取引状況を把握でき、予測結果の妥当性を判断できる。
また、本実施の形態の取引価格予測装置1において、第1の予測部15は、予測対象日時に実績値を取得可能な第3の情報を第1の予測モデルに適用して、予測対象日時における買入札量を予測する。第2の予測部16は、予測対象日時に実績値を取得可能な第3の情報と買入札量の予測結果とを第2の予測モデルに適用して、予測対象日時における約定価格を予測する。これにより、予測モデルによる予測結果の妥当性を、予測対象日時における実績値を用いて客観的に検証することができる。
例えば、第3の情報を予測モデルに適用して得られた予測値と、予測対象日時における約定価格の実績値との差である誤差が許容範囲を超える検証結果が得られた場合に、予測した約定価格が外れた原因が検討される。
例えば、まず、(1)の原因として、天気予報の外れによって需要予測以降の各予測が外れた場合が検討される。天気予報が当たっていた場合、(2)の原因として、第1の予測モデルに問題があるために買入札量の予測が外れた場合が検討される。第1の予測モデルによる買入札量の予測が当たっていた場合、(3)の原因として、第2の予測モデルに問題があるために約定価格の予測が外れた場合が検討される。第2の予測モデルによる約定価格の予測が適切だった場合、(4)の原因として、図4に示したように、買入札量に対して約定価格が不連続に階段状に変化することに起因して約定価格の誤差が大きくなったか否かが検討される。
従来の取引価格の予測は、一般的に気温などから直接的に取引価格を予測する予測モデルのみを用いるので、(1)に示した原因と、(2)から(4)に示した原因による複合的な状態とが検討されるだけであった。これに対して、本実施の形態に係る取引価格予測装置1では、買入札量を予測する第1の予測モデルと、第1の予測モデルの予測値を用いて取引価格を予測する第2の予測モデルとを用いるので、特に(3)および(4)に示した原因の検討を行うことが可能であり、より詳細な検討ができる。例えば、第1の予測モデルによって予測された買入札量の予測値に問題がないと判断された場合には、第2の予測モデルに入力した情報と第2の予測モデルから出力された情報とを検討して、取引価格の予測値が過去の同一条件における取引価格の実績値から乖離して分布していると判断される場合、(3)に示した原因で取引価格に大きな誤差を生じたと判断することができる。この場合、第2の予測モデルの学習に用いるデータの絞り込み条件を見直して再学習を行う。これにより、精度の高い取引価格の予測が可能となる。
さらに、本実施の形態の取引価格予測装置1において、第2の予測モデル、買入札量の予測値および約定価格の予測値を可視化して、第2の予測モデルを用いて電力の買入札量の確率分布から約定価格の確率分布が導出される過程を認識可能な態様で提示する。これにより、入札者は、約定価格の予測値が決定された過程を把握することができ、予測結果の妥当性を判断することができる。
また、本実施の形態の取引価格予測装置1によって予測された約定価格は、スポット市場への入札処理を行う入札装置へ入力されてもよい。すなわち、取引価格予測装置1は、入札支援システムの一部であってもよい。図12は、本実施の形態の取引価格予測装置1を備える入札支援システムの構成例を示す図である。入札支援システムは、本実施の形態の取引価格予測装置1と入札装置5と備える。取引価格予測装置1によって予測された約定価格は、入札装置5へ入力される。入札装置5は、予測された約定価格を用いて、JPEXの電力取引システム6に対して入札処理を実施する。
また、以上の説明では、変動電源による発電としてPV発電を考慮したが、PV発電以外の風力発電、水力発電、デマンドレスポンスなど他の変動電源による発電による影響も同様に考慮することができる。図13は、風力発電とPV発電を考慮した取引価格予測装置1aの構成例を示す図である。取引価格予測装置1aは、図1に示した取引価格予測装置1の変動電源入札モデル生成部12の代わりに変動電源入札モデル生成部12aを備えている。図1に示した取引価格予測装置1の構成要素と同様の機能を有する構成要素には図1と同一の符号を付している。変動電源入札モデル生成部12aは、PV発電に加えて、風力発電により発電された電力についても入札モデルを生成する。すなわち、変動電源入札モデル生成部12aは、複数の変動電源の例示であるPV発電設備および風力発電設備のそれぞれについて、変動電源別に、変動電源入札モデルを生成して、モデル記憶部19に格納する。本実施の形態では、変動電源ごとに売入札量が推定される。
図13に示した取引価格予測装置1aは、電力情報としてPV発電量、供給量に加えて風力発電による電力量である風力発電量も取得する。変動電源入札モデル生成部12aは、PV売入札量に関する上述した変動電源入札モデルと同様に、風力発電量を用いて風力発電に関する上述した変動電源入札モデルを生成する。変動電源推定入札量算出部20は、変動電源ごとに、上記取引価格予測装置1で説明した例と同様に、売入札量を推定する。例えば、変動電源による電力の発電量の実績値に定数を乗算することで変動電源による電力の売入札量の推定値が算出されてもよいし、変動電源による電力の発電量の実績値に、買入札量を総需要量で除した値を乗算することで変動電源による電力の売入札量の推定値が算出されてもよい。買入札量補正部21は、PV売入札量の推定値と風力発電による売入札量の推定値である推定風力売入札量とを用いて、上記式(2)のかわりに下記式(5)によって、買入札量を補正する。
補正後の買入札量=買入札量(補正前)-推定PV売入札量-推定風力売入札量
・・・(5)
また、風力発電の発電量は、風速などの天気情報に依存するので、風力発電を考慮する場合には、付加情報に例えば風速を含む天気情報を含めておく。これにより、予測処理において風速などを用いて風力発電量を推定し、推定した風力発電量を用いて推定風力売入札量を算出することができる。図13に示した取引価格予測装置1aの上記の補正方法以外の動作は、取引価格予測装置1と同様である。なお、約定価格の予測処理で、補正を行う場合には、PV発電に加えて風力発電の分も補正する。
以上のように、複数の種類の変動電源に関して変動電源ごとに売入札量の推定値を用いて買入札量の実績値を補正し、補正した買入札量を用いて予測モデルを生成する。これにより、補正を行わない場合に比べて、変動電源による発電の売入札量のばらつきの影響を抑えて予測精度を向上させることができる。
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。