JP7457185B1 - 4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オール高含有清酒 - Google Patents

4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オール高含有清酒 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の清酒にはない爽やかな香味であって、木樽に由来しない香味を有する清酒を提供する。【解決手段】4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オール濃度が200ng/L以上である清酒。4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オール濃度は1000μg/L以下であることが好ましい。この清酒は日本の酒税法が定める清酒とすることができる。また、この清酒は醸造により製造することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オールを高濃度で含有する清酒とその製造方法に関する。
清酒は多種の香気成分を含み、その大部分は発酵中に酵母により生産される。確認されている香気成分は、主に、アルコール、エステル、有機酸、カルボニル化合物、アミン、硫黄化合物である。
この中で、清酒中に含まれる量で単独で感知できる成分、即ち、清酒中の濃度を弁別閾値で割った値(オーダーユニット)が1以上である成分は、わずか十数種類である。その他の大部分の成分は単独では感知できない量で存在している。オーダーユニットが1以上である香気成分は、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、乳酸エチル、カプロン酸エチル、4-ヒドロキシ酪酸エチル、カプリル酸エチル、ペラルゴン酸エチル、フェニル酢酸エチル、酢酸フェネチル、カプリン酸エチルといったエステルと、イソアミルアルコール、β-フェネチルアルコール、フェニルエタノール、ラウリン酸エチルといったアルコールである。これらのエステルやアルコールは果実様ないしは花様の香りを有する。
一方、清酒において爽やかな香味といわれるものは、有機酸などの酸味によるものが多く、いわゆる香気成分としての爽やかな香り成分は、樽酒以外に報告されていない。樽酒の爽やかさに関与する成分は、杉樽から清酒に溶出したセスキテルペン類、ジテルペン類、ノルリグナン類であることが知られている(非特許文献1)。日本国酒税法・関連法令ならびに「清酒の製法品質表示基準を定める件」(平成元年11月22日国税庁告示第8号、改正 令和4年7月 国税庁告示第30号、以下「清酒の製法品質表示基準を定める件」という)には、木製の樽で貯蔵し、木香の付いた清酒である場合に「樽酒」と表示できることが定められている。
しかし、樽酒は別途木樽を用意し、その木樽に清酒を貯蔵しなければならず、手間とコストがかかる。
菊正宗酒造社ウェブサイト内検索https://www.kikumasamune.co.jp/rd/theme/taru/1_seibun/seibun.html
本発明は、従来の清酒にはない爽やかな香味であって、木樽に由来しない香味を有する清酒を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決するために研究を重ね、4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オール濃度が200ng/L以上である清酒は、爽やかで、かつ森林、草、又は新鮮な木材のような植物系の香りが感じられる、従来にない香味の清酒であることを見出した。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記〔1〕~〔7〕を提供する。
〔1〕 4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オール濃度が200ng/L以上である、清酒。
〔2〕 4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オール濃度が1000μg/L以下である、〔1〕に記載の清酒。
〔3〕 清酒が日本の酒税法が定める清酒である、〔1〕又は〔2〕に記載の清酒。
〔4〕 清酒の4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オール濃度を200ng/L以上にする工程を含む、清酒の製造方法。
〔5〕 醸造により、清酒の4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オール濃度を200ng/L以上にする、〔4〕に記載の清酒の製造方法。
本発明の清酒は、4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オール(以下、「4MSPol」と略称することがある)を200ng/L以上含むため、爽やかな香りと、ボタニカルな植物を想起するような香りがミックスされた、従来にない新たな香味を有する。前述した通り、樽酒の杉の木の香りは、セスキテルペン類、ジテルペン類、ノルリグナン類に由来するもので、本発明の清酒は、これより複雑な植物系の香りを有する。また、一般に清酒は他の酒類に比べて重厚感があるが、爽やかな香味を有する本発明の清酒は重厚感が少なくなり、幅広い消費者に受け入れ易いものとなる。
米・米麹を原料として、天然酵母が4MSPolを生産することは知られていない。
本発明では、清酒醸造用酵母と、醸造、特に清酒醸造には通常用いない酵母を併用することにより、4MSPolを200ng/L以上という高濃度で含む清酒を、醸造により製造することに成功した。
香料を添加した清酒は消費者に好まれないため、醸造により4MSPol濃度を高めて、従来にない植物系の爽やかな香りを有する清酒を製造できたことの意義は大きい。また、本発明の清酒は、コスト高な樽酒にしなくても植物系の爽やかな香りを有する点でも商品価値が高い。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、特に指定がない場合、各種化学物質の名称、法令、測定・分析法、表示基準、ウェブサイトのURLは、本出願の出願日前日の時点のものを指す。
(1)4MSPol高含有清酒
清酒
本発明の清酒は、4MSPol濃度が200ng/L以上である清酒である。
本発明の清酒は、米、米麹、及び水を主な原料として酵母により発酵したものであればよいが、中でも、酒税法(特に、日本国の酒税法)で定める清酒であることが好ましい。清酒は、酒税法や酒税法に関わる各種法令(例えば、酒税法施行令など)や通達などにおいて、使用できる原料が、米、米麹、水の他、酒粕、醸造アルコール、焼酎、特定の有機酸などに限定されており、一般に食品添加物として認められている香料などを添加することは認められていない。また、酵素剤の使用量や使用用途についても限定されている。
また、本発明の清酒は、普通酒であってもよく、或いは国税したものであれば庁告示で定められた「清酒の製法品質表示基準」(「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」などで定められる酒類の表示の基準)を満たす特定名称酒、例えば、吟醸酒、大吟醸酒、純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒、特別純米酒、本醸造酒、及び特別本醸造酒などであってもよい。これらの特定名称にあたらない清酒を、本明細書では「普通酒」とする。
また、本発明の清酒は、容器詰め清酒とすることができ、その容器には、「清酒」、または国税庁長官が指定した酒類の地理的表示(基準)である「日本酒」など、清酒を意味する文言が表示されていることが好ましい。
4MSPol濃度
本発明の清酒の4MSPol濃度は、200ng/L以上であり、また、250ng/L以上、300ng/L以上、400ng/L以上、500ng/L以上、1000ng/L(1μg/L)以上、3μg/L以上、10μg/L以上、30μg/L以上、又は50μg/L以上とすることができる。この範囲であれば、4MSPolの植物系の爽やかな香りがしっかり感じられる清酒となる。本発明の清酒の4MSPol濃度は、1000μg/L(1mg/L)以下、500μg/L以下、200μg/L以下、又は100μg/L以下とすることができる。この範囲であれば、4MSPolの香りが際立ち過ぎず、清酒本来の吟醸香とのバランスが良好な清酒となる。
カプロン酸エチル濃度
カプロン酸エチルは、清酒の主要な吟醸香成分であり、リンゴのようなフルーティな香りを清酒に与える。
本発明の清酒のカプロン酸エチル濃度は、0.01mg/L以上、0.1mg/L以上、0.1mg/L以上、又は0.3mg/L以上とすることができる。この範囲であれば、爽やかさと華やかさを兼ね備えた吟醸香が得られる。また、カプロン酸エチル濃度は、10mg/L以下、5mg/L以下、3mg/L以下、1mg/L以下、0.8mg/L以下、又は0.7mg/L以下とすることができる。この範囲であれば、リンゴ様のフルーティな香りが突出することなく、まろやかかつ爽やかな清酒らしい香りを有する清酒となる。
アルコール度数
本発明の清酒において、アルコール度数、即ち、アルコール分(v/v%)は、酒税法で定める1%以上22%未満の範囲であればよいが、3v/v%以上が好ましく、5v/v%以上がより好ましく、7v/v%以上がさら好ましい。また、アルコール分は、20v/v%以下が好ましく、18v/v%以下がより好ましく、16v/v%以下がさらに好ましい。この範囲であれば、植物系の爽やかな香りを有すると共に、全体として消費者に好まれる風味を有する清酒となる。
アルコール分(アルコール度数)は、アルコール飲料の全量に対するアルコール(エタノール)の体積濃度を百分率で表示した割合である。アルコール分は、酒税法で認められる国税庁所定分析法、あるいは独立行政法人酒類総合研究所が定める「酒類総合研究所標準分析法」(平成29年4月6日一部改訂、https://www.nrib.go.jp/bun/nribanalysis.html)で測定できるが、本発明におけるアルコール分は、独立行政法人酒類総合研究所が定める「酒類総合研究所標準分析法」の「3.清酒」の規定(以下、「清酒分析法」という)に基づいて分析した値である。
日本酒度
本発明の清酒において、日本酒度は、それには限定されないが、-90以上が好ましく、-60以上がより好ましく、-30以上がさらに好ましい。また、日本酒度は+30以下が好ましく、+20以下がより好ましく、+10以下がさらに好ましい。この範囲であれば、植物系の爽やかな香りを有すると共に、全体として消費者に好まれる風味を有する清酒となる。
日本酒度は、上述の清酒分析法で測定した値である。
酸度
本発明の清酒において、酸度は、それには限定されないが、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.4以上がさらに好ましい。また、酸度は10以下が好ましく、6以下がより好ましく3以下がさらに好ましい。この範囲であれば、植物系の爽やかな香りを有すると共に、全体として消費者に好まれる風味を有する清酒となる。
酸度は、清酒に含まれる、遊離酸(主に乳酸、リンゴ酸、コハク酸など)の総量を示した値である。具体的には、酸度は、10mLの清酒を中和するのに要する、0.1N水酸化ナトリウム溶液のmLを指す。酸度は、上述の清酒分析法で測定した値である。
(2)4MSPol高含有清酒の製造方法
清酒は、酒母に、米麹、掛米、及び水を添加して仕込み、これを糖化、発酵させてもろみを得た後、上槽(もろみの液体画分と酒粕を分離して液体画分を採取する工程であり、酒税法でいう「こす(濾す)」工程であればよい)により製造される。さらに、熱処理、オリの除去、濾過などを行ってもよい。また、米麹、米(掛米)及び水の他、酒粕を原料として用いてもよい。
4MSPol濃度が200ng/L以上である本発明の清酒は、通常の清酒醸造用酵母と、一般的には醸造、特に清酒醸造には用いられない酵母であるCyberlindnera saturnus酵母株を併用すること、より好ましくは独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が運営するNBRC(NITE Biological Resource Center)から分譲可能な株であるCyberlindnera saturnus NBRC 0117株を併用することにより製造できる。
なお、4MSPolの添加によっても4MSPol濃度が200ng/L以上である本発明の清酒を製造することはできるが、本発明の清酒は、4MSPolを添加しなくても、醸造により4MSPol濃度を200ng/L以上にすることができるものである点で商品価値が高い。
これらの酵母株を用いて本発明の清酒を製造する場合、原料米は、例えば、「清酒の製法品質表示基準」で定められる大吟醸あるいは吟醸の精米歩合(60%以下あるいは50%以下)など高精白した米であっても良いが、精米歩合がこれより高い米(低精白米)であっても良い。原料として用いる米は、精米歩合50%以上、55%以上、60%以上、65%以、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上とすることができる。精米は少しだけ行えばよく、例えば、精米歩合99.9%以下、99%以下、97%以下、95%以下、93%以下、90%以下、85%以下、又は80%以下とすることができる。これらの米を原料米(麹米を含む)、特に掛米として用いても、4MSPol濃度が200ng/L以上である本発明の清酒を製造することができる。
仕込みに使用する掛米は、蒸米を用いてもよく、或いは液化した融米を用いてもよい。融米を使用する仕込みは、液化仕込みといわれる。融米は、米や粉砕米に、仕込み水と耐熱性酵素であるα-アミラーゼを添加し、60~90℃で液化することにより得られる。液化だけでなく糖化まで行う場合は、液化終了後60℃程度まで冷却した時点で、グルコアミラーゼを添加して約50~55℃で糖化させればよい。
米の品種には特に限定はなく、酒造好適米(例えば、山田錦、五百万石など)、あるいは一般食用米であっても良く、うるち米、もち米であってもよく、清酒醸造に用いることができる米であればよい。また、国内産米と海外産米のどちらでもよいが、地理的表示(基準)上、国内産米が好ましい。
米麹は、蒸した米に麹菌(Aspergillus oryzae)を増殖させたものである。清酒の製造に使用する米麹は、「清酒の製法品質表示基準を定める件」において、「米こうじとは、白米にこうじ菌を繁殖させたもので、白米のでんぷんを糖化させることができるものをいい、特定名称の清酒は、こうじ米の使用割合(白米の重量に対するこうじ米の重量の割合をいう。以下同じ)が、15%以上のものに限るものとする。」と定められている。
使用する麹菌は、清酒の製造に使用できるものであればよく、例えば、ビオック社製の大吟醸、酒母用、醪用、機械製麹用、純米吟醸用、純米酒用、本醸造用、経済酒用、良い香り、液化仕込み用や、樋口松之助商店社製のひかみ吟醸用、ハイ・G、ダイヤモンド印、もと立用、醪用、ひかみ醪用20号、ひかみ醪用30号、ひかみ特選粉状A、エースヒグチ、ヒグチ粉状菌、白峯、かおり、強力糖化菌、液化仕込み用などが挙げられる。
仕込みは、上記のように調製した酒母、掛米、米麹、及び水を発酵タンクに投入して行う。仕込みでは、一段で全て添加してもよいが、多段に分けてもよいし、上槽前に四段として仕込んでもよい。酵母濃度が薄まらないように、三段仕込みが好ましい。三段仕込みは、もろみ造りにおいて、酒母に米麹及び掛米を三段階に分けて添加する方法であり、酵母に与える環境の変化を最小限にして、酵母の活性を損なわないようにする方法である。
もろみの発酵期間は、10~40日間とすればよく、好ましくは15~40日間、より好ましくは20~30日である。この期間は、三段仕込みの場合は、留添(留後)から上槽までの期間としてもよい。もろみの発酵温度は、5~25℃とすればよく、好ましくは10~20℃である。
発酵が終了した後、酒粕を除去し、清酒画分(上槽酒)を回収する。例えば、圧搾、ろ過などにより、酒粕と清酒画分を分離すればよい。上槽酒は、さらに必要に応じて、ろ過、オリの除去、加熱処理、活性炭処理などに供すればよい。
本発明の精酒は、容器詰めされたものであってよい。容器の素材としては、ガラス、プラスチック、紙類、陶器、木材、及びこれらを組み合わせたものが挙げられる。容器の種類としては、カップ(コップ)、紙パック、パウチ、ビン、ポリタンク、及び樽などが挙げられる。
なお、本発明の清酒は、樽酒ではないものとすることができる。即ち、本発明の清酒は、木樽由来の成分を含まないものとすることができる。
本発明は、清酒の4MSPol濃度を200ng/L以上にする工程を含む、清酒の製造方法を包含する。
製造される清酒は、植物系の爽やかな香りを有するものである。この清酒は、日本国の酒税法で定める清酒とすることができる。即ち、日本国の酒税法が規定する「清酒」となるように、香料を添加することなく、4MSPol濃度200ng/L以上となるように調整して、醸造により製造することができる。その他は、本発明の清酒について説明した通りである。
以下、本発明を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)定量方法
4MSPol濃度
清酒中の4MSPolの濃度は、標品(4MSPol、購入先: Aaron chemicals社(米国))を内部標準としてLC-MSにて測定した。15度(15v/v%)エタノール水溶液及び上撰に相当する市販酒A(地理的表示で言う日本酒、普通酒、アルコール度数15度、日本酒度1.2、酸度1.4、アミノ酸度1.1)のそれぞれに、4MSPol標品を最終濃度0ng/L、10ng/L、100ng/L、又は1000ng/Lとなるように添加し、検量線を作成したところ、r2≧0.99であり、十分に信頼できることが明らかとなった。また、LC-MSでピークが検出できなかったサンプルは、非検出とし0ng/Lとした。また、僅かにピークが検出されるものについては、推定値として算出した。
他の香気成分の濃度は、同様に各標品を内部標準としてGC-MSあるいはLC-MSで測定した。
清酒の一般分析方法
後述する各清酒の酒質の分析を行った。具体的には、アルコール度数は、「3-4 アルコール分 A)-2 振動式密度計法」、日本酒度は、「3-3 比重(日本酒度) B)振動式密度計法」、酸度は、「3-5 総酸」に基づいて行った。
(2)清酒の官能試験1
清酒に4MSPolの標準品を添加して表1、表2に示す組成とし、熟練した専門パネルが香りの官能評価を行った。清酒は、上記の市販清酒A(表1)と、市販清酒B(地理的表示で言う日本酒、純米酒)を水で希釈したもの(アルコール度数7度、日本酒度-3.5、酸度0.9、アミノ酸度0.6)(表2)をそれぞれ用いた。4MSPolの標準品は定量試験に用いたものと同じものを用いた。4MSPolを添加しないサンプルをSTDとした。STDは、市販清酒A及び市販清酒Bの水希釈品ともに4MSPolが非検出であり、4MSPol濃度0ng/Lとした。
香りの評価は下記基準で行った。
5点:STDより爽やかさを強く感じる
4点:STDより爽やかさをやや強く感じる
3点:STDより爽やかさを感じる
2点:STDより爽やかさをわずかに感じる
1点:STDと同じ爽やかさ
7名のパネルの評価点を用いて有意差検定(t検定)を行った。結果を、表1、表2に示す。4MSPol無添加STDの清酒に対して有意差がない場合を×、p<0.05で有意差がある場合を〇、p<0.01で有意差がある場合を◎で示す。
Figure 0007457185000001
Figure 0007457185000002
市販清酒A、市販清酒Bの希釈品の何れも、4MSPol濃度が0ng/L(STD)と100ng/Lとの間には有意差がなく(p>0.05)、200ng/L以上でSTDとの間に統計的有意差があった(p<0.01)(t検定、片側)。4MSPol濃度100ng/Lと200ng/Lとの間に、爽やかな香味を感じる臨界点があることが分かる。
また、4MSPol濃度が100,000ng/Lより高いサンプルについては、4名のパネルから、香りが強すぎて爽やかさの判別不能であるとのコメントがあった。なお、市販酒A、Bともにカプロンエチルの含有量は、1mg/L以下であることを確認している。
(3)清酒の官能試験2
熟練したパネル7名に、市販清酒Aと市販清酒Bの200ng/L以上のサンプルに対して、どのような爽やかさを感じるかを質問に対したところ、6名が「森林や木材の香りがする」と回答し、6名が「草などの青臭い香りがする」と回答した。
(4)4MSPol高含有清酒の製造
清酒醸造用酵母(商標登録:きょうかい酵母)であるK901株及び酵母Cyberlindnera saturnus(NRBC0117株、NITEなどから購入可)を用いて、米麹と掛米(共に国産米で、精米歩合87%前後)を用いて、一段仕込み、10日間発酵を行った。
K901株のみを使用して醸造した清酒は、4MSPol濃度0ng/L、アルコール度数15.7度、酸度3.1、日本酒度9.4、カプロン酸エチル濃度0.4mg/Lであった。一方、K901株とCyberlindnera saturnus(NRBC0117株)を混合使用して醸造した清酒は、4MSPol濃度495ng/L、アルコール度数12.8度、酸度2.4、日本酒度-0.1、カプロン酸エチル濃度0.3mg/Lであった。
清酒醸造用に汎用されている酵母K901株に、酵母Cyberlindnera saturnus(NRBC0117株)を併用することで4MSPolが検出可能に生成した。また、酵母K901株に、酵母Cyberlindnera saturnus(NRBC0117株)を併用した場合、発酵経過が悪かったため、発酵条件を工夫すればより高濃度の4MSPol(800ng/L以上)を含む清酒が醸造できることが示唆された。
また、本試験醸造物を蒸留して、4MSPol濃度を高めた焼酎を製造し、それを清酒の原料として用いれば、より高濃度の4MSPol含有清酒を醸造することができる。
(5)市販の清酒に含まれる4MSPol濃度
前述した通り、市販清酒A及び市販清酒Bの4MSPol濃度は非検出(0ng/L)であった。また、爽やかな香りが特長である市販清酒C、D、Eの4MSPol濃度を測定した結果を表3に示す。
Figure 0007457185000003
爽やかな香りが特長である市販清酒C、D、Eは、何れも、4MSPolは非検出あるいはごく微量含まれているのみであった。
本発明の清酒は、植物系の爽やかな香りを有する。樽詰めすることなく、また香料を添加することなく醸造により得られた清酒で、このような爽やかな香味を有する清酒は従来知られていない。また、この清酒は、遺伝子組換え酵母株を使用しなくても製造できる利点も有する。従って、本発明の清酒は、商品価値が非常に高い。

Claims (3)

  1. 4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オール濃度が200ng/L以上である、日本国の酒税法が定める清酒。
  2. 4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オール濃度が1000μg/L以下である、請求項1に記載の清酒。
  3. 醸造により、清酒の4-メチル-4-スルファニルペンタン-2-オール濃度を200ng/L以上にする工程を含む、清酒の製造方法。
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