JP7456678B2 - 無人探査車 - Google Patents

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Description

特許法第30条第2項適用 平成30年11月22日~23日にロボット・航空宇宙フェスタふくしま2018にて展示発表。
本発明は、無人探査車に関する。
左右一対の車輪を一対の駆動モータで駆動する無人探査車が、砂や石等で覆われた不整地を走行して探査を行う場合、不整地は、砂や石等の粒子の集積体であって崩れやすいため、無人探査車の駆動車輪は、不整地に対してスリップを引き起こし易い。駆動車輪がスリップすると、駆動車輪が過剰に回転して不整地の砂や岩を掻き出し、駆動車輪は不整地に埋まっていく。駆動車輪が不整地に埋まっていくに従って、駆動車輪が不整地から受ける走行抵抗が大きくなり、走行に要する駆動エネルギーを余分に消費したり、さらには、その走行抵抗の増加や、接地駆動力の低下によって、それ以上の走行を継続することが困難になる、といった不具合がある。
一般に、砂や石で覆われた不整地に対して駆動車輪のスリップを抑制する手段として、駆動車輪の表面に半径方向放射状に複数の凸状の爪を設け、この爪を不整地に食い込ませる事で走破性を増そうとする手段がある。ただし、駆動車輪が一旦スリップをし始めると、この車輪表面の爪が、より多くの砂や石を掻き出すこととなり、駆動車輪は、より深く不整地に埋まっていく、という課題がある。
従来の無人探査車では、本体部が不整地に接地することを想定しておらず、本体部の形状が不整地に接地した際の滑り抵抗を低減するような形状にはなっていない。そのため、駆動車輪が不整地に埋まって本体部が不整地に接触すると、無人探査車には、不整地から本体部が受ける接触抵抗が急激に加わることとなり、さらなる駆動車輪のスリップを誘発し、駆動車輪は、さらに深く不整地に埋まり、走行不能に至ってしまう、という課題もある。
また、無人探査車を、例えば宇宙に運ぶためには、その打ち上げや着陸等にかかる費用が莫大なものとなっており、この費用削減のために、無人探査車の小型軽量化が、重要な課題となっている。
特許文献1に記載の無人探査車では、内部に空洞を有するたらい形状の駆動車輪が、本体部(特許文献1では「メインフレーム」)の幅方向の張り出し部を被せるように装着されている。また、特許文献1の図4で示されているように、本体部の下部にも張り出し部が形成されている。
特開2001-48069号公報
特許文献1に記載の無人探査車では、本体部の張り出し部は、平面状の板で囲われて形成されている。この無人探査車が、登坂等、走行抵抗が大きくて厳しい走行条件の不整地を走行する場合、駆動車輪はスリップをし始め、駆動車輪は不整地に埋まっていき、胴体の張り出し部が不整地に接触する。胴体の張り出し部が不整地に接触すると、駆動車輪に対して大きな抵抗となって作用し、さらなる駆動車輪のスリップを加速させ、やがて、平面で囲われて形成された張り出し部の表面が不整地に食い込むように接地し、最終的には、無人探査車が走行不能に陥る恐れがある。
また、特許文献1に記載の無人探査車では、本体部の幅方向両端に設けられている張り出し部は、本体部の他の部位よりも上下前後方向に小さく形成されており、この張り出し部の内部の搭載スペースが少なくなっている。また、走行車輪は、本体部の幅方向両端に設けられている張り出し部を被せるようにして配置されているが、この本体部の張り出し部との隙間(活用されていない空間)が大きいため、無人探査車全体の大型化を招いてしまう。また、この走行車輪と張り出し部との隙間に、不整地の砂等が多く侵入し易いため、走行抵抗が増加して、無人探査車の走行性能を低下させる恐れがある。
本発明は、上記課題を解決するため、本体部と、前記本体部の幅方向両端において同軸上に配置された一対の車輪と、前記一対の車輪をそれぞれ駆動する一対の駆動モータと、前記車輪のリム部の外周面に設けられた複数の爪と、前記本体部の後方に設けられ、地面に接地する一対の接地体と、を備える無人探査車であって前記リム部の前記外周面は、正の曲率の曲面で形成されており、前記本体部は、その一部が前記一対の車輪のそれぞれの前記リム部に覆われており、前記一対の前記接地体のそれぞれは、正の曲率で形成された部分球面状の部分を含む接地体外周面を有し、前記接地体外周面が接地するように前記本体部に上下対称に連結されている、無人探査車を提供する。
本発明の無人探査車によれば、小型化を図りながら、砂や石等で覆われた不整地での走行性能を向上させることが出来る。
本発明の実施の形態に係る無人探査車を示す斜視図である。 本発明の実施の形態に係る無人探査車を示す側面図である。 本発明の実施の形態に係る無人探査車を示す正面図である。 本発明の実施の形態に係る無人探査車を示す平面図である。 図2のA-A線断面図である。 図3のB-B線断面図である。 (a)は車輪の不整地への沈み量が少ない状態を示し、(b)は車輪の不整地への沈み量が多い状態を示し、(c)は車輪の不整地への沈み量がさらに多くなって本体部が不整地に接触している状態を示す、不整地を含む図5の部分図である。
本発明に係る無人探査車の実施の形態について、図1~6を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
また、以下の説明に於いて、水平面に対して垂直な鉛直方向を「上下方向」または「高さ方向」というものとする。また、無人探査車1には車輪20が設けられているが、車輪20の回転軸方向を「幅方向」または「左右方向」といい、車輪20の回転軸方向に対して垂直な水平方向を「長さ方向」または「前後方向」というものとする。また、幅方向に於いて、無人探査車1の中心部側(中心に近い側)を「内側」といい、無人探査車1の端部側(中心から遠い側)を「外側」というものとする。
また、以下の説明に於いて、一対で設けられている構成要素については、その一方を説明し、他方の説明を省略することがある。
また、以下の説明に於いて「不整地」とは、整地されていない土地であって、例えば、砂、石、岩、泥等で覆われた土地をいい、特に説明がない限りに於いて、水平な地表を成しているものとする。尚、不整地は、例えば、月の土地、火星の土地等、地球外惑星の土地も含まれるものとする。
図1は、本発明に係る無人探査車1の斜視図であり、無人探査車1の全体が示されている。また、図2は、無人探査車1の側面図であり、図3は、無人探査車1の正面図であり、図4は、無人探査車1の平面図であり、それぞれ無人探査車1の全体が示されている。尚、図3と図5に於いて、図面上方が、無人探査車1の上方にあたり、図4に於いて、図面下方が、無人探査車1の前方にあたる。
図5は、図2のA-A線断面図であり、前から見た断面が示されている。また、図6は、図3のB-B線断面図であり、横から見た断面が示されている。
本体部10は、薄板状の部材で囲われた容器体として形成されている。本体部10の中央領域には、幅方向に平行に伸びる略円筒状の中央部11が形成され、中央部11の幅方向両端領域には、中央部11よりも大なる径の略球状の一対の膨張部12が形成されている。
中央部11は、上方に配置される平面状の中央上面11aと、下方に配置される平面状の中央下面11bと、軸線が幅方向に平行で前方に配置される部分円筒面の中央前面11cと、軸線が幅方向に平行で後方に配置される部分円筒面の中央後面11dとで囲われて、その外面が形成されている。
中央前面11cと中央後面11dとは、それぞれの部分円筒面の径が同一で、かつ、それぞれの部分円筒面の軸線が同軸に配置されている。また、中央上面11aと中央下面11bとは、互いに平行に形成されている。すなわち、中央上面11aと中央下面11bとは、中央前面11cと中央後面11dとの部分円筒面を延長させて成る一つの円筒面を切り欠いた平行面として形成されている。従って、中央上面11aと中央下面11bとの離隔距離は、中央前面11c中央後面11dとの最大距離(円筒直径)よりも短くなっている。
膨張部12は、正の曲率の部分球面状の膨張面12aと、幅方向に対して垂直向きの平面状の測面12bとで囲われて、その外面が形成されている。すなわち、側面12bは、膨張面12aを延長させて成る球面を鉛直に切り欠いた円板面として形成されている。また、側面12bは、本体部10の幅方向最端部に配置され、膨張面12aの部分球面の球径よりも小さい径の円板面として形成されている。また、膨張面12aと側面12bとの境目の角部は、丸みを帯びて結ばれている。
また、膨張面12aの球直径は、中央上面11aと中央下面11bとの離隔距離よりも大なる直径で形成され、かつ、中央前面11cと中央後面11dとの最大距離(中央前面11cと中央後面11dとで成る仮想円筒の直径)よりも大なる直径で形成されている。
膨張面12aは、その幅方向内側が、中央上面11a、中央下面11b、中央前面11c、中央後面11d、これら4面と接している。また、膨張面12aは、その幅方向外側が側面12bと接している。そのため、膨張面12aは、中央上面11a、中央下面11b、中央前面11c、中央後面11d、これら4面と、側面12bとの間に配置され、その間の中間領域が膨らんで形成されている。すなわち、図5で示されるように、車輪20の軸線を含む断面に於いて、膨張面12aは、一つの円が上下に分割された一対の部分円として形成されている。
図5で示されるように、側面12bには、車輪20を駆動する駆動モーター14を保持するモーター保持13が取り付けられている。駆動モーター14は、膨張部12の内部に配置され、駆動モーター14の回転動力は、減速歯車15を介して減速されて減速軸16に伝達される。減速軸16は、側面12b、及び、モーター保持13を貫通して、側面12bから幅方向外側に突出している。
膨張部12の内部には、駆動モーター14に電力を供給するバッテリー18aを保持するバッテリー保持18が設置されている。また、膨張部12の内部には、駆動モーター14の駆動状態等を制御する制御基板19aを保持する基板保持19が設置されている。そのため、バッテリー18a、及び、制御基板19aは、膨張部12の内部に配置されている。
ここで、モーター保持13、駆動モーター14、減速歯車15、減速軸16、これらのそれぞれは、左右一対で左右対称に設けられており、一対の減速軸16の回転軸は同軸に配置されている。尚、一対の減速軸16の回転軸は、一対の車輪20の回転軸でもあり、以下の説明に於いて、この減速軸16の回転軸を単に「回転軸」というものとする。
回転軸は、円板状に形成されている側面12bの中心に配置されており、中央上面11a、及び、中央下面11bは、回転軸に対して上下対称に配置されている。すなわち、本体部10は、その外面の形状が、回転軸に対して上下対称に形成されている。
モーター保持14は、幅方向外側の端部が開口しており、この開口部の内周面に車輪20を回転可能に保持する軸受17が取り付けられている。
車輪20は、円盤状に形成されたディスク部21と、ディスク部21の径よりも径大な略筒状に形成されたリム部22と、ディスク部21の外周面からリム部22の幅方向外側の端部に向けて放射状に延出している複数の柱状のスポーク部23とで、一体化して構成されている。
ディスク部21は、軸受17によって回転可能に支持され、減速軸16と相対回転不能に接合され、減速軸16からの回転動力を受けている。
リム部22は、リム外周面22a(リム部22の外周面)が正の曲率の部分球面で形成された薄板状の筒体で成る。そのため、リム内周面22b(リム部22の内周面)は、リム外周面22aに沿った負の曲率の部分球面で形成されている。
リム外周面22aは、幅方向中間領域が膨らんで(正の曲率で)形成されている。すな
わち、幅方向に対して垂直な方向(上下方向や前後方向)に於いて、リム外周面22aの幅方向中間領域の径は、リム外周面22aの幅方向内側端部の径よりも大きく、かつ、リム外周面22aの幅方向外側端部の径よりも大きい。
リム内周面22bは、リム外周面22aの裏側に形成されているため、幅方向中間領域が凹んで(負の曲率で)形成されている。すなわち、幅方向に対して垂直な方向(上下方向や前後方向)に於いて、リム内周面22bの幅方向中間領域の径は、リム内周面22bの幅方向内側端部の径よりも大きく、かつ、リム内周面22bの幅方向外側端部の径よりも大きい。
図5で示されるように、回転軸を含む断面に於いて、リム外周面22a、及び、リム内周面22bは、それぞれに一つの円が上下に分割された一対の部分円として形成されている。また、リム外周面22a、及び、リム内周面22b、及び、膨張面12a、それぞれの部分球面の中心位置は、同一に配置されている。そのため、リム部22は、膨張面12aを覆って配置されている。換言すると、リム部22の幅方向内側の端部は、膨張面12aの幅方向外側の端部(すなわち側面12b)よりも幅方向内側に配置されている。すなわち、リム部22の幅方向内側の端部から膨張部12の幅方向外側端部に至って、車輪20が本体部10を覆っている。
ここで、リム外周面22aの径(球径)は、リム内周面22bの径(球径)よりも大きく形成され、リム内周面22bの径(球径)は、膨張面12aの径(球径)よりも大きく形成されている。
リム内周面22bと、膨張面12aとの間に出来るリム内周隙間25は、リム部22の幅方向内側の端部から膨張部12の幅方向外側端部に至って、一定の離隔距離を保って形成されている。また、リム内周面22bの径(球径)と膨張面12aの径(球径)とは、それぞれの径差を小さく(径比を100%に近く)して形成されている。より具体的には、膨張面12aの径は、リム内周面22bの径(100%)に対して、74%以上に形成されている。また、膨張面12aの径は、リム外周面22aの径(100%)に対して、70%以上に形成されている。
リム外周面22aからは、薄板状に形成された複数の爪24が、リム外周面22aの半径方向に放射状に伸びて設けられている。爪24の幅方向寸法は、リム外周面22aの幅方向寸法よりも長く形成されている。また、爪24の外周面である爪外周面24aは、リム外周面22aに沿った正の曲率の曲面で形成されている。すなわち、図5で示されるように、回転軸を含む断面に於いて、爪外周面24aは部分円であり、リム外周面22aの部分円と中心位置が同一に配置されている。
尚、爪24は、爪24を不整地に食い込ませることで走破性を増そうとする目的で設けられており、技術名称として「グローサ」と呼ばれている。
中央部11の中央前面11cには、カメラ40を保持するカメラ保持穴11eが設けられている。カメラ40は、カメラ保持穴11eに保持されて、中央部11の内部に回転軸に対して上下対称位置に配置されている。
無人探査車1は、カメラ40による撮影情報を利用して、自動で、または、遠隔操作によって走行を行う。そのため、無人探査車1は、カメラ40が向いている方向が前進方向(通常走行の方向)となる。換言すれば、前後方向に見て、中央部11の中心からカメラ保持穴11eに向かう方向が、前進方向となる。
中央部11の中央後面11dからは、棒状に形成されて後方に延出する複数の脚31が設けられている。
複数の脚31の後方先端には、接地体34を保持する接地体保持33が固定されている。接地体34は、略皿状に形成され、接地体保持33に取り付けられ、無人探査車1の最後方に配置されている。
接地体34は、接地体外周面34a(接地体34の外周面)が正の曲率の部分球面で形成された薄板状に形成されている。そのため、接地体内周面34b(接地体34の内周面)は、接地体外周面34aに沿った負の曲率の部分球面に形成されている。
接地体外周面34aは、その中央領域が膨らんで(正の曲率で)形成されている。また、接地体内周面34bは、接地体外周面34aの裏側に形成されているため、その中央領域が凹んで(負の曲率で)形成されている。
また、接地体34は、接地体外周面34aが不整地G(不整地Gは、図7に示す。)に接地する向きに配置され、上下対称に一対で設けられている。すなわち、一対の接地体34の一方の接地体34は、その接地体外周面34aが下向きに配置されて不整地Gに接地し、他方の接地体34は、接地体外周面34aが上向きに配置されている。
また、上下方向に延びる棒状に形成された補助脚32が、補助脚32の両端を一対の接地体保持33で固定されて設けられ、上下一対に設けられた接地体34同士を繋いで保持している。
上下一対に設けられた接地体34の、部分球面で成る一対の接地体外周面34aと、部分球面で成る一対の接地体内周面34bとの、それぞれの中心位置は同一に配置されている。また、一対の接地体外周面34aを延長すると、一つの球面となり、一対の接地体内周面34bを延長した場合にも、一つの球面となる位置に配置されている。
さらに、接地体外周面34aの径(球径)は、リム外周面22aの径(球径)と同一に形成されている。
次に、図7を参照して、無人探査車1の走行性能に関する特徴を説明する。図7は、車輪20の接地面として機能するリム部22が不整地Gに接地している状態を示しており、(a)はリム部22の不整地Gへの沈み量が少ない状態を示し、(b)はリム部22の不整地Gへの沈み量が多い状態を示し、(c)はリム部22の不整地Gへの沈み量が極めて多くなって膨張面12aが不整地Gの地表面Gaに接触している状態を示す、不整地Gを含む図5(図2のA-A線断面図)の部分図である。
ここで、不整地Gは、整地されていない土地であって、例えば、砂、石、岩、泥等が堆積して成る堆積層Gbで成り、その表面は、水平に広がる地表面Gaとして成る。
ここで、図7は、図5と同様に、回転軸を含む鉛直方向の断面線の断面図である。前述したように、リム外周面22aは、正の曲率の部分球面状に形成され、リム外周面22aの上下方向下側の領域が不整地Gに接地している。そのため、リム外周面22aは、リム部22の不整地Gへの沈み量に応じて、接地幅を変化させながら、不整地Gに接地する。より具体的には、リム外周面22aが堆積層Gbの中に沈んでいる領域の弧に対応する弦の長さが、リム外周面22aの接地幅Wとなり、リム部22の沈み量が多くなる程、リム部22の接地幅Wが広くなる。
リム部22の接地幅Wが広くなる程、リム外周面22aの接地面積が広くなり、リム外周面22aの接地面圧が低くなる。リム外周面22aの面圧が低くなると、リム部22の不整地Gへの沈み量が抑制される。
ここで、「沈み量」とは、リム部22が堆積層Gbの中に沈んでも形状変化の影響を受けない領域の地表面Gaから、堆積層Gbの中に沈んでいるリム外周面22aの最も下方の点までの垂直距離、をいうものとする。
図7(a)は、リム部22の不整地Gへの沈み量が少ない状態を示している。より具体的には、沈み量は、リム外周面22aの直径(球の直径)に対して1.5%程度であり、接地幅W(W)は、リム外周面22aの幅に対して40%程度であり、例えば、通常の走行状態である。
リム部22の不整地Gへの沈み量が少なく、リム外周面22aの不整地Gへの接地幅Wが少ない程、リム外周面22aが不整地Gから受ける抵抗が少なく、無人探査車1の走行抵抗を少なく抑えられる。
図7(b)は、リム部22の不整地Gへの沈み量が多い状態を示している。より具体的には、沈み量は、リム外周面22aの直径(球の直径)に対して4%程度であり、接地幅W(W)は、リム外周面22aの幅に対して80%程度であり、例えば、想定範囲内の角度の登坂を走行している状態である。
リム部22の不整地Gへの沈み量が多くなるに連れて、リム外周面22aの接地幅Wが広くなると、リム外周面22aの不整地Gとの接地面積が増加し、リム外周面22aの不整地Gとの接地面圧が低下するため、リム部22の不整地Gへのさらなる沈み量の増加を抑制させる。
図7(c)は、リム部22の不整地Gへの沈み量が極めて多く、膨張面12aが地表面Gaに接触している状態を示している。より具体的には、沈み量は、リム外周面22aの直径(球の直径)に対して8%程度であり、接地幅W(W)は、リム外周面22aの幅に対して100%に達し、例えば、想定よりも大きい角度の登坂を走行している状態である。この状態では、リム外周面22aの幅方向内側の端部が堆積層Gb中に沈んでいるため、堆積層Gbの一部が、リム内周隙間25に入り込んでいる。
地表面Gaが膨張面12aに接触すると、無人探査車1が不整地Gから受ける接地面圧は、膨張面12aの接地部にも分散されるため、これ以上のリム部22の不整地Gへの沈み量の増加を抑制させる。
また、膨張面12aが地表面Gaに接触しても、膨張面12aの地表面Gaとの接触領域は、球面状で滑らかな形状であるため、膨張面12aが地表面Gaから受ける接触抵抗は少なく、無人探査車1の進行方向に対する走行抵抗の増加も少ない状態を保つ。
また、リム内隙間25に入り込んだ堆積層Gbは、リム部22が回転を継続していると、リム内周面22bとの接触抵抗によって連れ回され、膨張面12aよりも上方にあるリム内隙間25に持ち上げられる。膨張面12aよりも上方にあるリム内隙間25にまで持ち上げられた堆積層Gbは、重力によって、膨張面12aに落ちる。膨張面12aは正の曲率の球面状に形成されているため、膨張面12aに落とされた堆積層Gbは、膨張面12aの幅方向外側と幅方向内側とに分散される。膨張面12aに落とされた堆積層Gbのうち、膨張面12aの幅方向内側に分散された堆積層Gbは、中央部11の中央上面11a、中央前面11c、中央後面11dに移送され、その後、中央部11の下方の不整地G
に落とされる。
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、一対のリム部22の間に配置されている中央部11の上下方向に於ける最大寸法は、リム部22の内部に配置されている膨張部12の上下方向に於ける最大寸法よりも小さいため、不整地Gから中央部11までの距離が長くなり、地表面Gaから凸状の障害物があっても、この障害物との接触を最小限に抑えるため、無人探査車1の走行性能が向上する。また、上下方向に狭い空間を走行する場合には、無人探査車1の上方から下向きに凸状の障害物があったとしても、同様の作用によって、無人探査車1の走行性能が向上する。
また、リム内周隙間25の上下方向に於ける空間寸法は、リム内周面22bの直径(100%)に対して小さく(13%以下)形成されており、リム内周隙間25に入り込む堆積層Gbの侵入量が抑制されるため、想定以上に厳しい条件の不整地であっても、無人探査車1の走行を可能にさせる。
また、膨張面12aの径(球径)は、リム外周面22aの直径(100%)に対して大きく(70%以上)形成されており、リム内周隙間25に入り込む堆積層Gbが膨張面12aに接触したとしても、リム部22の沈み量は少なく抑えられるため、想定以上に厳しい条件の不整地であっても、無人探査車1の走行を可能にさせる。
また、膨張面12aは、正の曲率の滑らかな面で形成されており、リム内周隙間25に入り込む堆積層Gbが膨張面12aに接触したとしても、この接触抵抗の増加が抑制されるため、無人探査車1の走行性能が向上する。
また、リム内周隙間25に侵入した堆積層Gbは、車輪20の回転に連られて膨張面12aの上方に運ばれ、その後、重力によって、膨張面12aに落ち、その一部は、膨張面12aから中央部11に移送される。すなわち、車輪20の回転を継続(無人探査車1の走行を継続)することで、リム内隙間25に侵入した堆積層Gbを排出させるため、無人探査車1の走行性能が向上する。
膨張部12は、中央部11よりも膨張してリム部22の内部に配置されているため、膨張部の内部の搭載スペースが増加すると共に、搭載スペースの無駄が省かれ、無人探査車1全体の幅方向寸法を短く出来るため、無人探査車1の小型軽量化が図られる。
無人探査車1が走行する時、接地体外周面34aは不整地Gに対して滑りを生じることになるが、不整地Gに接地している接地体外周面34aは、下方を向いて、下方に凸状(正の曲率)の球面で形成されており、接地体外周面34aが接地面から受ける抵抗を抑制するため、無人探査車1の走行性能が向上する。尚、無人探査車1が旋回する時は、接地体外周面34aは、横滑り(幅方向の滑り)を生じるが、その場合でも、前述同様の作用によって、接地体外周面34aが接地面から受ける抵抗を抑制する。
無人探査車1は、上下対称な形状に構成されているため、無人探査車1が上下逆さまにひっくり返ったとしても、元の姿勢に戻す必要が無く、そのままの状態で無人探査車1の走行を継続することが出来る。
上下に一対の接地体外周面34aは、それぞれの接地体外周面34aを延長すると一つの球になる配置になっており、接地体外周面34aの径(球径)は、リム外周面22aの径(球径)と同一に形成されているため、接地体34は、車輪20と同等の走行性能を有することが可能となる。また、無人探査車1が上下逆さまにひっくり返ったとしても、本
体部11が常に水平に保たれ、カメラ40の撮影向きも常に水平に保たれる。
(付記)
尚、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
膨張面12aの形状については、例えば、楕円体の表面や角に丸を設けた円柱の表面等、滑らかな正の曲率の曲面であれば、部分球面状に限らない。同様に、リム外周面22aや接地体外周面34aの形状についても、例えば、楕円体の表面や角に丸を設けた円柱の表面等、滑らかな正の曲率の曲面であれば、部分球面状に限らない。また、膨張面12aの形状は、例えば、部分的に平面部を設けても良い。
中央部11の表面形状については、例えば、切り欠きを有さない円柱の表面等、その上下方向の最大寸法が、膨張面12aの上下方向の寸法よりも小さければ良い。
爪24の形状については、例えば、リム外周面22aに幅方向に延びる長穴を設けて、その壁面を爪24としても良い。
1…無人探査車、10…本体部、11…中央部、11a…中央上面、11b…中央下面、11c…中央前面、11d…中央後面、11e…カメラ保持穴、12…膨張部、12a…膨張面、12b…側面、13…モーター保持、14…駆動モーター、15…減速歯車、16…減速軸、17…軸受、18…バッテリー保持、18a…バッテリー、19…基板保持、19a…制御基板、20…車輪、21…ディスク部、22…リム部、22a…リム外周面、22b…リム内周面、23…スポーク部、24…爪、24a…爪外周面、25…リム内周隙間、31…脚、32…補助脚、33…接地体保持、34…接地体、34a…接地体外周面、34b…接地体内周面、40…カメラ

Claims (1)

  1. 本体部と、前記本体部の幅方向両端において同軸上に配置された一対の車輪と、前記一対の車輪をそれぞれ駆動する一対の駆動モータと、前記車輪のリム部の外周面に設けられた複数の爪と、前記本体部の後方に設けられ、地面に接地する一対の接地体と、を備える無人探査車であって
    前記リム部の前記外周面は、正の曲率の曲面で形成されており、
    前記本体部は、その一部が前記一対の車輪のそれぞれの前記リム部に覆われており、
    前記一対の前記接地体のそれぞれは、正の曲率で形成された部分球面状の部分を含む接地体外周面を有し、前記接地体外周面が接地するように前記本体部に上下対称に連結されている、
    無人探査車。
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