JP7456367B2 - 燃料電池用のセパレータ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本明細書が開示する技術は、燃料電池用のセパレータ及びその製造方法に関する。
燃料電池は、複数の燃料電池セルが積層されて構成されている。各々の燃料電池セルは、一対のセパレータ(即ち、アノード側セパレータとカソード側セパレータ)と、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)と、アノード側ガス拡散層と、カソード側ガス拡散層とを備える。MEAは、アノード側ガス拡散層及びカソード側ガス拡散層と一体に成形されて、膜電極ガス拡散層接合体(MEGA:Membrane Electrode and Gas Diffusion Layer Assembly)として用意されることもある。この場合、MEGAを一対のセパレータの間に配置することで、燃料電池セルを構成することができる。
セパレータには、アノードガス、カソードガス及び冷却媒体といった、流体を供給及び排出するための供給孔及び排出孔が設けられている。これらの供給孔及び排出孔は、複数の燃料電池セルが積層されたときに、一連に連結されて連結流路を形成する。そして、各燃料電池セルでは、前述した各種の流体が連結流路から供給され、あるいは連結流路へ排出される。各々のセパレータには、供給孔又は排出孔を取り囲むようにガスケットが設けられており、連結流路から流体が漏洩することが防止される。
特許文献1に、ガスケットを有するセパレータが記載されている。このセパレータでは、供給孔や排出孔を有するセパレータ本体の表面に、環状のガスケットが設けられている。
特開2017-117638号公報
燃料電池の作動中は、流体が流路を通して供給及び排出されるため、流路内の圧力が上昇する。このとき、ガスケットが流路内の圧力に耐えられず、セパレータ本体からガスケットが剥離すれば、連結流路から流体が漏洩するおそれがある。ガスケットの剥離を抑制するためには、接着剤を用いて、セパレータ本体の表面にガスケットを強く接着することが考えられる。しかしながら、接着剤の塗布及びその後の焼付け等といった付加的な工程が必要になるうえ、接着剤が溶出及び揮発することによって、MEAの電解質膜が損傷を受けるおそれがある。従って、接着剤を用いることなく、セパレータ本体の表面とガスケットとを強く接着し得る技術が求められている。
上記の実情を鑑み、本明細書は、接着剤を用いることなく、セパレータ本体の表面に対するガスケットの接着力を高めることのできる技術を提供する。
本明細書が開示する技術は、燃料電池用のセパレータの製造方法に具現化される。この製造方法は、セパレータ本体の表面に粗面化領域を形成する粗面化工程と、前記セパレータ本体の前記表面にガスケットを成形する成形工程とを備える。前記成形工程では、前記粗面化領域の少なくとも一部を含む範囲に、前記ガスケットが成形される。
上記した製造方法では、セパレータ本体の表面に形成された粗面化領域上に、ガスケットが成形される。このような製造方法によると、粗面化領域の微細な凹凸にガスケットが入り込んで硬化するため、いわゆるアンカー効果によって、セパレータ本体とガスケットとが強固に結合する。従って、接着剤を用いることなく、セパレータ本体の表面に対するガスケットの接着力を高めることができる。
本明細書が開示する技術は、燃料電池用のセパレータにも具現化される。このセパレータは、セパレータ本体と、前記セパレータ本体の表面に設けられたガスケットとを備える。前記セパレータ本体の表面は、粗面化領域を有し、前記ガスケットの少なくとも一部は、前記粗面化領域上に位置している。
実施例のセパレータ30を採用した燃料電池10の概略構成を示す図。 燃料電池セル12の概略構成を示す分解図。 燃料電池セル12の概略構成を示す断面図。 燃料電池セル12の平面図。 図4のV-V線における断面図。 図5のVI部の拡大図であり、本実施例のセパレータ本体31の表面31aと第5ガスケット54eとの関係を示す図。 粗面化工程前におけるセパレータ本体31を示す図。 粗面化工程を示す図。 成形工程を示す図。 一変形例である第1粗面化工程を示す図。 一変形例である第2粗面化工程を示す図。 セパレータ本体31の表面31aと第5ガスケット54eとの関係の一変形例。 セパレータ本体31の表面31aと第5ガスケット54eとの関係の一変形例。
本技術の一実施形態において、粗面化工程でセパレータ本体の表面に形成される粗面化領域は、0.1μmから2.5μmの範囲内の算術平均高さ(Sa)を有していてもよく、さらには、0.5μmから1.5μmの範囲内の算術平均高さ(Sa)を有してもよい。このような構成によると、セパレータ本体の表面に対するガスケットの接着力をより高くすることができる。
ここで、算術平均高さ(Sa)は、ISO 25178で規定されている。算術平均高さ(Sa)は、線の算術平均高さ(Ra)を三次元に拡張したパラメーターであり、表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を表す。そのため、算術平均高さ(Sa)は、面粗さを評価する際に、一般的に利用される。
本技術の一実施形態において、粗面化工程では、セパレータ本体の表面に沿って、粗面化領域を環状に形成し、成形工程では、環状の粗面化領域に沿って、ガスケットを環状に成形してもよい。この場合、特に限定されないが、セパレータ本体は、貫通孔を有しており、粗面化工程では、粗面化領域が貫通孔を取り囲むように、粗面化領域を環状に形成してもよい。但し、他の実施形態として、形成される粗面化領域は、必ずしも環状でなくてもよく、セパレータ本体に設けられる貫通孔の形状及び位置等に応じて適宜変更することができる。同様に、ガスケットは、必ずしも環状でなくてもよく、上記した粗面化領域に沿って成形されていればよい。
上記の一実施形態において、環状に延びる粗面化領域の内側縁は、環状に延びるガスケットの内側縁よりも外側に位置していてもよい。このような構成によると、ガスケットによってシールされる流体(例えば、アノードガス、カソードガス又は冷却媒体)が、セパレータ本体の粗面化領域と直接的に接することを避けることができる。これにより、粗面化されたセパレータ本体の表面が、流体との接触によって劣化することを回避することができる。
上記の一実施形態において、環状に延びる粗面化領域の内側縁は、環状に延びるガスケットの内側縁と外側縁との間の中心よりも外側に位置していてもよい。このような構成によると、セパレータ本体の粗面化領域に、前述した流体が接触することを、より確実に回避することができる。
本技術の一実施形態において、粗面化工程は、セパレータ本体の表面にレーザを照射する工程を含んでいてもよい。このような製造方法によると、例えば、セパレータ本体の表面に、ナノオーダーの凹凸を有する粗面を形成することができる。あるいは、レーザを照射する範囲を、セパレータ本体の表面に沿って走査することにより、例えばマスク等を用意することなく、様々な形状の粗面化領域を簡便に形成することができる。特に、セパレータ本体の表面がナノオーダーの凹凸を有していると、ガスケットがセパレータ本体の表面の凹凸に入り込んで硬化することにより、セパレータ本体とガスケットとがより強固にし得る。
本技術の一実施形態において、粗面化工程は、セパレータ本体の表面に第1の粗面度を与える処理を実施する第1粗面化工程と、第1の粗面度が与らえた領域に、第1の粗面度よりも小さい第2の粗面度を与える処理を実施する第2粗面化工程とを含んでもよい。このような製造方法によると、セパレータ本体の表面とガスケットとの間の接着面積を、効率的に確保することができる。従って、セパレータ本体とガスケットとの接着力を高めることができる。なお、特に限定されないが、第1の粗面度は、マイクロオーダーの凹凸であり、第2の粗面度は、ナノオーダーの凹凸であってもよい。
上記の一実施形態において、第1の粗面度を与える処理は、エッチング処理又はブラスト処理であってもよく、第2の粗面度を与える処理は、レーザ照射処理であってもよい。このような製造方法によると、大量生産に有利なエッチング処理及びブラスト処理と、より微細な凹凸を有する粗面を形成するのに有利なレーザ処理のそれぞれの利点を活かすことができる。
図面を参照して、実施例のセパレータ30及びその製造方法について説明する。図1は、本実施例のセパレータ30が採用された燃料電池10を示す。燃料電池10は、複数の燃料電池セル12を備える。複数の燃料電池セル12は、Y軸方向に沿って積層されている。詳しくは後述するが、燃料電池セル12は、それぞれが単独で発電可能な構成要素である。燃料電池10は、特に限定されないが、例えば、燃料電池車といった燃料電池を電源とする車両に採用することができる。
図2、図3に示すように、燃料電池セル12は、MEGA26と、アノード側セパレータ28と、カソード側セパレータ30とを備える。MEGA26は、その外周を囲むフレーム部材32によって支持されている。MEGA26は、MEA20と、アノード側ガス拡散層22と、カソード側ガス拡散層24と備える。MEA20は、アノード側ガス拡散層22とカソード側ガス拡散層24との間に配置されており、MEGA26は、これら三者が積層された構成を有する。アノード側ガス拡散層22及びカソード側ガス拡散層24は、ガス透過性を有する導電性材料であり、例えば、カーボン多孔質体により構成される。アノード側セパレータ28及びカソード側セパレータ30は、ガス不透性の導電性材料であり、例えば、チタンを含む基材からなるプレートにより構成される。フレーム部材32は、気密性及び絶縁性を有する樹脂材料により構成される。
図3に示すように、MEA20は、電解質膜14と、アノード電極16と、カソード電極18とを備える。電解質膜14は、アノード電極16とカソード電極18との間に配置されており、MEA20は、これら三者が積層された構成を有する。電解質膜14は、例えば、フッ素系のイオン交換樹脂により形成された、プロトン性のイオン交換膜で構成される。アノード電極16及びカソード電極18は、例えば、白金等の触媒を担持した導電性材料により構成される。なお、図3における各構成部材の厚さは、理解を図るために便宜的に示したものであり、実際の構成部材の厚みを反映しているわけではない。
図3に示すように、アノード側セパレータ28の一方の面には、アノードガスの流路を形成する溝部34が形成されている。この溝部34は、MEGA26のアノード側ガス拡散層22に対向しており、アノード側ガス拡散層22へアノードガスを供給する流路を形成する。アノード側セパレータ28の他方の面には、冷却媒体の流路を形成する溝部38が形成されている。この溝部38は、MEGA26とは反対側に位置しており、隣接する他の燃料電池セル12(図示省略)のカソード側セパレータ30と対向して、燃料電池セル12を冷却するための冷却媒体の流路を形成する。
同様に、図3に示すように、カソード側セパレータ30の一方の面には、カソードガスの流路を形成する溝部36が形成されている。この溝部36は、MEGA26のカソード側ガス拡散層24に対向しており、カソード側ガス拡散層24へカソードガスを供給する流路を形成する。カソード側セパレータ30の他方の面には、冷却媒体の流路を形成する溝部40が形成されている。この溝部40は、MEGA26とは反対側に位置しており、隣接する他の燃料電池セル12(図示省略)のアノード側セパレータ28と対向して、燃料電池セル12を冷却するための冷却媒体の流路を形成する。特に限定されないが、各溝部34、36、38、40は、プレス加工やエッチング処理等により形成される。
図2、図4に示すように、カソード側セパレータ30は、6つの貫通孔42、44、46、48、50、52を備える。6つの貫通孔42、44、46、48、50、52には、第1供給孔42、第1排出孔44、第2供給孔46、第2排出孔48、第3供給孔50、第3排出孔52が含まれる。特に限定されないが、第1供給孔42はアノードガス供給孔であり、第1排出孔44はアノードガス排出孔であり、第2供給孔46はカソードガス供給孔であり、第2排出孔48はカソードガス排出孔であり、第3供給孔50は冷却媒体供給孔であり、第3排出孔52は冷却媒体排出孔である。カソード側セパレータ30の長手方向における両端部には、それぞれ3つの供給孔42、46、50と3つの排出孔44、48、52が配置されている。同様に、図2に示すように、アノード側セパレータ28及びフレーム部材32は、前述した6つの貫通孔42、44、46、48、50、52を備え、それらが長手方向における両端部に配置されている。
図1に示すように、セパレータ28、30及びフレーム部材32に形成された第1供給孔42は、複数の燃料電池セル12がY方向に積層されると、互いに連結されて第1供給連結流路42aを形成する。同様に、第2供給孔46及び第3供給孔50もそれぞれ、複数の燃料電池セル12がY方向に積層されると、互いに連結されて第2供給連結流路46a及び第3供給連結流路50aを形成する。図示省略するが、第1排出孔44、第2排出孔48、第3排出孔52もそれぞれ、複数の燃料電池セル12がY方向に積層されると、第1排出連結流路44a、第2排出連結流路48a及び第3排出連結流路52aを形成する。従って、燃料電池セル12が積層された燃料電池10においては、3つの供給連結流路42a、46a、50aから各燃料電池セル12へ流体が供給され、各燃料電池セル12から3つの排出連結流路44a、48a、52aへ流体が排出される。
図4に示すように、カソード側セパレータ30は、セパレータ本体31と、複数のガスケット54a-54eとを備える。セパレータ本体31は、前述したように、チタンを含む基材からなるプレートにより構成されている。複数のガスケット54a-54eには、第1ガスケット54a、第2ガスケット54b、第3ガスケット54c、第4ガスケット54d及び第5ガスケット54eが含まれる。第1ガスケット54a、第2ガスケット54b、第3ガスケット54c及び第4ガスケット54dは、第1供給孔42、第1排出孔44、第2供給孔46及び第2排出孔48の周囲にそれぞれ環状に設けられており、4つの貫通孔42、44、46、48をそれぞれ取り囲んでいる。第5ガスケット54eは、MEGA26に対向する範囲と、第3供給孔50と、第3排出孔52とを取り囲むように、環状に設けられている。各々のガスケット54a-54eは、例えば、ゴムや熱可塑性樹脂等で構成されており、射出成形によって成形される。各々のガスケット54a-54eは、複数の燃料電池セル12が積層された状態で、対応する連結流路42a、44a、46a、48a,50a、52aからアノードガス、カソードガス又は冷却媒体といった流体が漏洩することを防止する。アノードガスは水素ガス(又は水素を含有するガス)であり、カソードガスは酸素ガス(又は酸素を含有するガス)である。冷却媒体は、例えば冷却水である。
図5に示すように、カソード側セパレータ30では、セパレータ本体31の表面31aに、第5ガスケット54eが設けられている。アノード側セパレータ28では、セパレータ本体29の表面に、溝部56が形成されている。この溝部56は、カソード側セパレータ30とは反対側に位置し、かつ、隣接する他の燃料電池セル12(図示省略)に設けられた第5ガスケット54eを受け入れるように構成されている。これにより、セパレータ本体31の表面31aに設けられている第5ガスケット54eは、複数の燃料電池セル12がY方向に積層されたときに、隣接する他の燃料電池セル12(図示省略)の溝部56に受け入れられ、アノード側セパレータ28と当接する。即ち、第5ガスケット54eは、各燃料電池セル12間のカソード側セパレータ30とアノード側セパレータ28とをシールする。また、上記した通り、燃料電池セル12内では、カソード側セパレータ30とアノード側セパレータ28との間には、フレーム部材32が配置されている。特に限定されないが、上述した各溝部34、36、38、40と同様に、溝部56は、プレス加工やエッチング処理等により形成される。なお、溝部56は、各セパレータ28、30等の構成及び形状によっては、必ずしも必要とされない。図5における各構成部材の厚さは、理解を図るために便宜的に示したものであり、実際の構成部材の厚みを反映しているわけではない。
図6を参照して、本実施例のセパレータ本体31の表面31aと第5ガスケット54eとの関係を説明する。カソード側セパレータ30において、セパレータ本体31の表面31aには、粗面化領域58が設けられている。粗面化領域58は、粗面化された領域であって、後述する粗面化工程において形成される。粗面化領域58は、第5ガスケット54eの位置に合わせて設けられ、第5ガスケット54eが、粗面化領域58上に設けられている。第5ガスケット54eは、後述する成型工程において成形される。粗面化領域58は、第5ガスケット54eに沿って環状に延びており、内側縁60と、外側縁62とを有する。同様に、第5ガスケット54eは、内側縁64と、外側縁66とを有する。特に限定されないが、本実施例におけるセパレータ本体31では、粗面化領域58の内側縁60及び外側縁62が、それぞれ、第5ガスケット54eの内側縁64及び外側縁66よりも外側に位置している。即ち、粗面化領域58が形成された範囲内に、第5ガスケット54eの全体が成形されている。但し、第5ガスケット54eは、その全体が必ずしも粗面化領域58内に位置する必要はない。第5ガスケット54eの少なくとも一部が、粗面化領域58上に位置していればよい。なお、粗面化領域58及び第5ガスケット54eは、必ずしもカソード側セパレータ30の表面31aに設けられる必要はなく、カソード側セパレータ30の表面31aに代えて、アノード側セパレータ28の表面に設けられてもよい。
セパレータ本体31の表面31aには、その他の第1ガスケット54aから第4ガスケット54dの位置に対しても、同様の粗面化領域58が設けられている。それらの粗面化領域58もまた、ガスケット54a-54dに沿って環状に延びており、粗面化領域58の少なくとも一部を含む範囲に、ガスケット54a-54dが形成されている。
上記した構成では、セパレータ本体31の表面31aに形成された粗面化領域58上に、各々のガスケット54a-54eが成形されている。このような構成によると、粗面化領域58の微細な凹凸に、ガスケット54a-54eの基部が入り込んで硬化する。そのため、いわゆるアンカー効果によって、セパレータ本体31と各々のガスケット54a-54eとが強固に結合する。従って、接着剤を用いることなく、セパレータ本体31の表面31aに対するガスケット54a-54eの接着力を高めることができる。
図7~図9を参照して、燃料電池用のセパレータ30の製造方法を説明する。図7には、粗面化工程前におけるセパレータ本体31を示す。図8に示すように、先ず、粗面化工程が実施される。一例ではあるが、この粗面化工程では、レーザ装置68により、セパレータ本体31の表面31aにレーザが照射される。これにより、セパレータ本体31の表面31aに粗面化領域58が形成される。特に限定されないが、本実施例における粗面化工程では、セパレータ本体31の表面31aに沿って、粗面化領域58が環状に形成され、それぞれの粗面化領域58が、6つの貫通孔42、44、46、48、50、52の少なくとも一つを取り囲むように、環状に形成される。
次いで、図9に示すように、成形工程が実施される。この成形工程では、セパレータ本体31の表面31aに、第1ガスケット54a-第5ガスケット54eが成形される。なお、図9では、第5ガスケット54eのみが代表して図示されている。上記した通り、ガスケット54a-54eは、例えば、ゴムや熱可塑性樹脂等で構成されており、成形装置70を用いた射出成形によって成形される。成形装置70は、ステージ(図示省略)と金型72とを備える。成形工程では、ステージ上に配置されたセパレータ本体31の表面31aに対して金型72が下降し、セパレータ本体31の表面31aにガスケット54a-54eが成形される。各々のガスケット54a-54eが成形される範囲や形状は、成形装置70の構成、例えば金型72の形状によって適宜変更可能であり、粗面化領域58の少なくとも一部を含む範囲に成形されればよい。特に限定されないが、本実施例の製造方法では、セパレータ本体31の表面31aに沿って粗面化領域58が環状に形成されており、各々のガスケット54a-54eについても、環状の粗面化領域58に沿って環状に成形される。
上記した製造方法では、セパレータ本体31の表面31aに形成された粗面化領域58上に、各々のガスケット54a-54eが成形される。このような製造方法によると、粗面化領域58の微細な凹凸に、ガスケット54a-54eの基部が入り込んで硬化する。そのため、いわゆるアンカー効果によって、セパレータ本体31とガスケット54a-54eとが強固に結合する。従って、接着剤を用いることなく、セパレータ本体31の表面31aに対するガスケット54a-54eの接着力を高めることができる。
図10、図11を参照して、粗面化工程の変形例を説明する。粗面化工程は、図10に示す第1粗面化工程と、図11に示す第2粗面化工程を含んでもよい。セパレータ本体31の表面31aに第1の粗面度を与える処理を実施する工程を、本明細書では、第1粗面化工程と称する。第1の粗面度が与らえた領域に、第1の粗面度よりも小さい第2の粗面度を与える処理を実施する工程を、本明細書では、第2粗面化工程と称する。
図10に示すように、第1粗面化工程では、セパレータ本体31の表面31aに第1の粗面度を与える処理が実施される。第1の粗面度を与える処理としては、例えば、ブラスト処理を用いることができる。ブラスト処理では、ブラスト装置74から微細な研磨剤等を噴射することで、セパレータ本体31の表面31aに第1の粗面度が付与される。
図11に示すように、第2粗面化工程では、第1の粗面度が与らえた領域に、第1の粗面度よりも小さい第2の粗面度を与える処理が実施される。第2の粗面度を与える処理としては、例えば、レーザ照射処理を用いることができる。レーザ照射処理では、レーザ装置76を用いて、セパレータ本体31の表面31a上の第1の粗面度が与らえた領域の一部又は全部に、レーザが照射される。これにより、セパレータ本体31の表面31aでは、第1の粗面度を有する領域に、第2の粗面度が付与される。なお、第1の粗面度を与える処理及び第2の粗面度を与える処理の各々は、必ずしもブラスト処理及びレーザ照射処理である必要はなく、第1の粗面度よりも第2の粗面度が小さくなる処理をそれぞれ適宜選択することができる。例えば、第1の粗面度を与える処理として、ブラスト処理に代えて、エッチング処理を用いてもよい。
上記した変形例では、セパレータ本体31の表面31a上に形成される、第1の粗面度を有する領域に、第2の粗面度が付与される。これにより、第1の粗面度のみを付与する場合よりも、セパレータ本体31の表面31aとガスケット54a-54eとの間の接着面積を、効率的に拡大することができる。従って、セパレータ本体31の表面31aに対するガスケット54a-54eの接着力を高めることができる。
図12、図13を参照して、セパレータ本体31の表面31aと第5ガスケット54eとの関係の変形例を説明する。一例ではあるが、図12に示すように、環状に延びる粗面化領域58の内側縁60は、環状に延びる第5ガスケット54eの内側縁64よりも外側に位置する。本変形例の構成によると、第5ガスケット54eによってシールされる冷却媒体が、セパレータ本体31の粗面化領域58と直接的に接することを避けることができる。これにより、粗面化されたセパレータ本体31の表面31aが、冷却媒体との接触によって劣化することを回避することができる。
一例ではあるが、図13に示すように、環状に延びる粗面化領域58の内側縁60は、環状に延びる第5ガスケット54eの内側縁64と外側縁66との間の中心Cよりも外側に位置する。本変形例の構成によると、セパレータ本体31の粗面化領域58に、冷却媒体が接触することを、より確実に回避することができるため、粗面化されたセパレータ本体31の表面31aが、冷却媒体との接触によって劣化することを回避することができる。
以上、いくつかの具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは組み合わせによって技術的有用性を発揮するものである。
10 :燃料電池
12 :燃料電池セル
28 :アノード側セパレータ
29 :セパレータ本体
30 :カソード側セパレータ
31 :セパレータ本体
31a :表面
42 :第1供給孔
44 :第1排出孔
46 :第2供給孔
48 :第2排出孔
50 :第3供給孔
52 :第3排出孔
54a、54b、54c、54d、54e :ガスケット
58 :粗面化領域
60 :内側縁
64 :内側縁
66 :外側縁
68 :レーザ装置
70 :成形装置
74 :ブラスト装置
76 :レーザ装置
C :中心

Claims (9)

  1. 燃料電池用のセパレータの製造方法であって、
    セパレータ本体の表面に粗面化領域を形成する粗面化工程と、
    前記セパレータ本体の前記表面にガスケットを成形する成形工程と、
    を備え、
    前記成形工程では、前記粗面化領域の少なくとも一部を含む範囲に、前記ガスケットが成形され、
    前記粗面化工程は、前記セパレータ本体の前記表面に第1の粗面度を与える処理を実施する第1粗面化工程と、前記第1の粗面度が与らえた領域に、前記第1の粗面度よりも小さい第2の粗面度を与える処理を実施する第2粗面化工程とを含み、前記第1の粗面度は、マイクロオーダーの凹凸であり、前記第2の粗面度は、前記マイクロオーダーの凹凸の表面に形成されたナノオーダーの凹凸である、セパレータの製造方法。
  2. 前記粗面化領域の算術平均高さ(Sa)は、0.1μmから2.5μmの範囲内である、請求項1に記載のセパレータの製造方法。
  3. 前記粗面化領域の算術平均高さ(Sa)は、0.5μmから1.5μmの範囲内である、請求項1に記載のセパレータの製造方法。
  4. 前記粗面化工程では、前記セパレータ本体の前記表面に沿って、前記粗面化領域を環状に形成し、
    前記成形工程では、環状に延びる前記粗面化領域に沿って、前記ガスケットを環状に成形する、請求項1から3のいずれか一項に記載のセパレータの製造方法。
  5. 前記セパレータ本体は、貫通孔を有しており、
    前記粗面化工程では、前記粗面化領域が前記貫通孔を取り囲むように、前記粗面化領域を環状に形成する、請求項4に記載のセパレータの製造方法。
  6. 環状に延びる前記粗面化領域の内側縁は、環状に延びる前記ガスケットの内側縁よりも外側に位置する、請求項4又は5に記載のセパレータの製造方法。
  7. 環状に延びる前記粗面化領域の前記内側縁は、環状に延びる前記ガスケットの前記内側縁と外側縁との間の中心よりも外側に位置する、請求項6に記載のセパレータの製造方法。
  8. 前記粗面化工程は、前記セパレータ本体の前記表面にレーザを照射する工程を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のセパレータの製造方法。
  9. 前記第1の粗面度を与える処理は、エッチング処理又はブラスト処理であり、
    前記第2の粗面度を与える処理は、レーザ照射処理である、請求項1から8のいずれか一項に記載のセパレータの製造方法。
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