JP2004039385A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電解質膜・電極接合体12が第1および第2セパレータ14、16に挟持されるとともに、前記電解質膜・電極接合体12は、固体高分子電解質膜36と、前記固体高分子電解質膜36を挟持するアノード側電極38およびカソード側電極40とを備える。アノード側電極38を構成するガス拡散層42aは、カソード側電極40を構成するガス拡散層42bよりも大きい表面積を有し、前記ガス拡散層42aの外周縁部45には、第2シール47bの当接面に対応して予め所定のプレス荷重が付与されている。
【選択図】図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質を一対の電極間に配設した電解質・電極接合体が、一組のセパレータで挟持される燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜(陽イオン交換膜)からなる電解質膜の両側に、それぞれアノード側電極およびカソード側電極を対設した電解質(電解質膜)・電極接合体を、セパレータによって挟持することにより構成されている。この種の燃料電池は、通常、電解質・電極接合体およびセパレータを所定数だけ積層することにより、燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
この燃料電池において、アノード側電極に供給された燃料ガス、例えば、主に水素を含有するガス(以下、水素含有ガスともいう)は、触媒電極上で水素がイオン化され、電解質を介してカソード側電極側へと移動する。その間に生じた電子が外部回路に取り出され、直流の電気エネルギとして利用される。なお、カソード側電極には、酸化剤ガス、例えば、主に酸素を含有するガスあるいは空気(以下、酸素含有ガスともいう)が供給されているために、このカソード側電極において、水素イオン、電子および酸素が反応して水が生成される。
【0004】
一般的に、燃料電池は、図7に示すように、電解質膜・電極接合体1と、この電解質膜・電極接合体1を挟持する第1および第2セパレータ2、3とを備えている。電解質膜・電極接合体1は、例えば、固体高分子電解質膜4と、この固体高分子電解質膜4を挟持するアノード側電極5およびカソード側電極6とを備えている。そして、固体高分子電解質膜4と第1および第2セパレータ2、3との間にOリング7a、7bが挟持されており、アノード側電極5およびカソード側電極6にそれぞれ供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスが外部に洩れることを防止している。
【0005】
ところが、上記の従来技術では、固体高分子電解質膜4を挟んで互いに対向して配置されているOリング7a、7bの相対位置が僅かでもずれると、所望のシール性を得ることができず、燃料ガスや酸化剤ガスの漏れが惹起されるおそれがある。しかも、Oリング7a、7bにずれが生じると、固体高分子電解質膜4に捩れが起こり、前記固体高分子電解質膜4とアノード側電極5およびカソード側電極6との間に剥離が生じる場合がある。
【0006】
そこで、本出願人は、電解質膜・電極接合体とセパレータとのシール性を向上させることが可能な燃料電池を提案している(特開2002−25587号公報参照)。この燃料電池は、図8に示すように、電解質膜・電極接合体1aと、第1および第2セパレータ2a、3aとを備えている。電解質膜・電極接合体1aは、固体高分子電解質膜4aと、この固体高分子電解質膜4aを挟持するアノード側電極5aおよびカソード側電極6aとを備えており、前記アノード側電極5aが前記カソード側電極6aよりも大きな表面積に設定されている。
【0007】
第2セパレータ3aの内面側には、カソード側電極6aを囲むようにして固体高分子電解質膜4aに密接し、第1シール8aが取り付けられている。さらに、第1および第2セパレータ2a、3a間には、第1シール8aを囲むようにして第2シール8bが取り付けられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のように、アノード側電極5aの表面積がカソード側電極6aの表面積よりも大きく設定されるとともに、第1シール8aが第2セパレータ3aと固体高分子電解質膜4aとの間に介装されるため、前記アノード側電極5aの外周端縁部には、前記第1シール8aによる加圧部位9が発生している。
【0009】
この加圧部位9には、燃料電池の締め付け荷重により第1シール8aのシール荷重が直接作用しており、アノード側電極5aを構成するカーボンペーパーにへたり等が発生し易い。これにより、アノード側電極5aが圧縮変形してしまい、第1シール8aによるシール効果が低下するおそれがある。
【0010】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、電極を構成する多孔質カーボン部材のへたりを有効に阻止し、簡単な構成で、所望のシール性を確保することが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る燃料電池では、電解質を一対の電極間に配設した電解質・電極接合体が、一組のセパレータで挟持されるとともに、前記電極は、前記電解質に対向する面に電極触媒層を設けた多孔質カーボン部材を備えている。そして、一方の多孔質カーボン部材は、他方の多孔質カーボン部材よりも大きな表面積を有し、前記他方の多孔質カーボン部材の外周部から外方に突出する前記一方の多孔質カーボン部材の外周縁部とセパレータとの間にシールが介装されている。
【0012】
そこで、一方の多孔質カーボン部材の外周縁部には、シールの当接面に対応して予め圧縮処理が施されている。このため、多孔質カーボン部材は、簡単な作業で、面圧強度が大幅に向上しており、燃料電池に圧縮荷重が付与される際に、シール荷重によって圧縮変形を惹起することがない。従って、燃料電池のシール性が有効に向上するとともに、多孔質カーボン部材にへたり等が発生することがなく、所望のシール機能を確実に維持することが可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10の要部分解斜視説明図である。
【0014】
燃料電池10は、電解質膜・電極接合体12が、例えば、金属板材で形成された第1および第2セパレータ14、16に挟持されて構成される。燃料電池10の矢印B方向(図1中、水平方向)の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス供給連通孔30a、冷却媒体を排出するための冷却媒体排出連通孔32b、および燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス排出連通孔34bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
【0015】
燃料電池10の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔34a、冷却媒体を供給するための冷却媒体供給連通孔32a、および酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出連通孔30bが、矢印C方向に配列して設けられる。
【0016】
電解質膜・電極接合体12は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸されてなる固体高分子電解質膜36と、該固体高分子電解質膜36を挟持するアノード側電極38およびカソード側電極40とを備える。
【0017】
アノード側電極38およびカソード側電極40は、図2に示すように、カーボンペーパー等からなるガス拡散層(多孔質カーボン部材)42a、42bと、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層42a、42bの表面に一様に塗布されてなる電極触媒層44a、44bとをそれぞれ有する。電極触媒層44a、44bは、互いに固体高分子電解質膜36を介装して対向するように、前記固体高分子電解質膜36の両面に接合されている。
【0018】
アノード側電極38は、カソード側電極40よりも大きな表面積を有している。アノード側電極38を構成するガス拡散層42aは、カソード側電極40を構成するガス拡散層42bの外周部から外方に距離Hだけ突出する外周縁部45を設ける。この外周縁部45には、第2シール47bの当接面に対応して、後述するように、予めプレス荷重が付与されて圧縮処理が施されている。
【0019】
ガス拡散層(多孔質カーボン部材)42a、42bとしては、例えば、東レ株式会社製のTGP−Hが使用されており、密度が0.35g/cm2〜0.65g/cm2で、気体透過度が20mmAg/mm〜30mmAg/mmである。
【0020】
第1および第2セパレータ14、16の間には、Oリング等の第1シール47aが介装されるとともに、前記第1セパレータ14の面14aと固体高分子電解質膜36との間には、カソード側電極40を周回してOリング等の第2シール47bが介装される。
【0021】
図1に示すように、第1セパレータ14の電解質膜・電極接合体12側の面14aには、例えば、矢印B方向に延在する複数本の溝部からなる酸化剤ガス流路46が設けられるとともに、この酸化剤ガス流路46は、酸化剤ガス供給連通孔30aと酸化剤ガス排出連通孔30bとに連通する。
【0022】
第2セパレータ16の電解質膜・電極接合体12側の面16aには、燃料ガス供給連通孔34aと燃料ガス排出連通孔34bとに連通する燃料ガス流路48が形成される。この燃料ガス流路48は、矢印B方向に延在する複数本の溝部を備えている。第2セパレータ16の面16bには、冷却媒体供給連通孔32aと冷却媒体排出連通孔32bとに連通する冷却媒体流路50が形成される。この冷却媒体流路50は、矢印B方向に延在する複数本の溝部を備えている。
【0023】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0024】
まず、図3に示すように、プレス機60を介してガス拡散層42a、42bの外周縁部45に予めプレス荷重の付与が行われる。このプレス機60は、固定型である下型62と可動型である上型64とを備えており、この上型64は、ガス拡散層42a、42bの外周縁部45に係合するように、枠形状に構成されている。
【0025】
そこで、下型62のプレス面62aにガス拡散層42a(または42b)が載置された状態で、前記上型64が下降する。このため、プレス面62a上のガス拡散層42a(または42b)は、外周縁部45に対し上型64と下型62を介して所定のプレス荷重が付与される(図4中、ステップS1)。
【0026】
このプレス荷重は、燃料電池10の発電時に付与される面圧以上の面圧を付与するために、前記燃料電池10に付与される圧縮荷重より5%以上高い荷重に設定される。具体的には、プレス機60によりガス拡散層42a(または42b)に対して4MPa〜8MPa程度のプレス荷重が付与されている。
【0027】
次いで、プレス機60を構成する上型64が上昇して、ガス拡散層42a(
または42b)からプレス荷重が除去された際、前記プレス荷重の付与前後における前記ガス拡散層42a(または42b)の厚さ変動量が検出される(ステップS2)。この場合、ガス拡散層42a(または42b)のプレス荷重付与時の厚さからプレス荷重除去時の厚さ変動量が所定の範囲内に至っていない際には(ステップS3中、NO)、ステップS1に戻ってプレス機60によるプレス荷重付与作業が再度行われる。
【0028】
一方、ガス拡散層42a(または42b)の厚さ変動量が、所定の範囲内であれば(ステップS3中、YES)、ステップS4に進んで、燃料電池10の組み立て作業が行われる。さらに、燃料電池10は、必要に応じて複数積層されて燃料電池スタックが構成される。燃料電池スタックには、図示しないタイロッドを介して積層方向に所定の圧縮荷重が付与され(ステップS5)、前記燃料電池スタックの組み立て作業が終了する。
【0029】
ここで、プレス荷重を6MPaとし、厚さ変動量の許容範囲を5μmに設定したところ、図5に示す結果が得られた。すなわち、プレス機60を介してプレス荷重を1回付与した際には、ガス拡散層42a(または42b)の変動量が5μmを僅かに超えていた。そこで、このガス拡散層42a(または42b)に2回以上のプレス荷重を付与したところ、変動量が5μm以内となった。従って、プレス荷重の付与を2回以上行うことにより、所望の面圧強度(例えば、6.5MPa)を有するガス拡散層42a、42bが確実に得られた。
【0030】
なお、プレス荷重を付与しないガス拡散層42a、42bを用いて燃料電池10を組み立てると、このガス拡散層42a、42bの厚さ変動量が30μm以上であった。このため、燃料電池10を組み立てた後に圧縮荷重の付与により、第2シール47bのシール荷重を介してガス拡散層42a、42bが圧縮変形し、所望のシール性を確保することができなかった。
【0031】
これに対して、第1の実施形態では、予めガス拡散層42a、42bの外周縁部45に、第2シール47bの当接面に対応してプレス荷重が付与されており、前記外周縁部45の面圧強度が大幅に向上している。従って、図2に示すように、ガス拡散層42a、42bの外周縁部45は、燃料電池10に圧縮荷重が付与された状態で、第2シール47bによるシール荷重に対する厚さ変動量が所定の範囲内に維持される。
【0032】
これにより、第1の実施形態では、燃料電池10のシール性が有効に向上するとともに、ガス拡散層42a、42bの外周縁部45にへたり等が惹起されることがなく、所望のシール機能を確実に維持することが可能になるという効果が得られる。
【0033】
ところで、燃料電池10を運転するに際しては、図1に示すように、燃料ガス供給連通孔34aに水素含有ガス等の燃料ガスが供給されるとともに、酸化剤ガス供給連通孔30aに酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給される。さらに、冷却媒体供給連通孔32aに純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0034】
このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給連通孔30aから第1セパレータ14の酸化剤ガス流路46に導入され、電解質膜・電極接合体12を構成するカソード側電極40に沿って移動する。一方、燃料ガスは、燃料ガス供給連通孔34aから第2セパレータ16の燃料ガス流路48に導入され、電解質膜・電極接合体12を構成するアノード側電極38に沿って移動する。
【0035】
従って、各電解質膜・電極接合体12では、カソード側電極40に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極38に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0036】
次いで、アノード側電極38に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス排出連通孔34bに沿って矢印A方向に排出される。同様に、カソード側電極40に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出連通孔30bに沿って矢印A方向に排出される。
【0037】
また、冷却媒体供給連通孔32aに供給された冷却媒体は、第1および第2セパレータ14、16の冷却媒体流路50に導入された後、矢印B方向に沿って流通する。この冷却媒体は、電解質膜・電極接合体12を冷却した後、冷却媒体排出連通孔32bから排出される。
【0038】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池80の一部断面説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0039】
燃料電池80は、電解質膜・電極接合体12と、金属板材で形成された第1および第2セパレータ82、16とを備える。第1セパレータ82には、固体高分子電解質膜36に当接する第2シール84が焼き付け等によって一体的に設けられている。
【0040】
このように構成される第2の実施形態では、第2シール84が第1セパレータ82に設けられているため、燃料電池80全体としての部品数が削減されるとともに、この燃料電池80の組み立て作業性が一層容易かつ迅速に遂行されるという効果が得られる。
【0041】
なお、第1および第2の実施形態では、Oリング等の第1シール47aを用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、ガスケット等の他のシール構造を採用してもよい。
【0042】
【発明の効果】
本発明に係る燃料電池では、一方の多孔質カーボン部材が、他方の多孔質カーボン部材よりも大きな表面積を有するとともに、前記一方の多孔質カーボン部材の外周縁部には、シールの当接面に対応して予め圧縮処理が施されているため、前記外周縁部は、簡単な作業で、面圧強度が大幅に向上している。これにより、燃料電池に圧縮荷重が付与される際に、シール荷重によって多孔質カーボン部材に圧縮変形が惹起されることがなく、燃料電池のシール性が有効に向上するとともに、多孔質カーボン部材にへたり等が発生することがなく、所望のシール機能を確実に維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池の要部断面説明図である。
【図3】前記燃料電池を構成するガス拡散層の外周縁部にプレス荷重を付与するプレス機の使用説明図である。
【図4】前記燃料電池の組み立て作業を説明するフロチャートである。
【図5】前記ガス拡散層に対するプレス荷重の有無および付与回数と厚さ変動量との関係説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の一部断面説明図である。
【図7】従来技術に係る燃料電池の要部断面説明図である。
【図8】別の従来技術に係る燃料電池の要部断面説明図である。
【符号の説明】
10、80…燃料電池 12…電解質膜・電極接合体
14、16、82…セパレータ 30a…酸化剤ガス供給連通孔
30b…酸化剤ガス排出連通孔 32a…冷却媒体供給連通孔
32b…冷却媒体排出連通孔 34a…燃料ガス供給連通孔
34b…燃料ガス排出連通孔 36…固体高分子電解質膜
38…アノード側電極 40…カソード側電極
42a、42b…ガス拡散層 44a、44b…電極触媒層
45…外周縁部 47a、47b、84…シール
46…酸化剤ガス流路 48…燃料ガス流路
50…冷却媒体流路 60…プレス機
62…下型 64…上型
Claims (1)
- 電解質を一対の電極間に配設した電解質・電極接合体が、一組のセパレータで挟持されるとともに、
前記電極は、前記電解質に対向する面に電極触媒層を設けた多孔質カーボン部材を備え、
一方の多孔質カーボン部材は、他方の多孔質カーボン部材よりも大きな表面積を有し、前記他方の多孔質カーボン部材の外周部から外方に突出する前記一方の多孔質カーボン部材の外周縁部と前記セパレータとの間にシールが介装される燃料電池であって、
前記一方の多孔質カーボン部材の前記外周縁部には、前記シールの当接面に対応して予め圧縮処理が施されていることを特徴とする燃料電池。
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