JP7454416B2 - 粘着テープ及びその使用方法 - Google Patents

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Description

本願は、ひび割れしたセメント系構造物に対して、点検時に簡単に施工でき、必要時に剥離でき、施工中はセメント系構造物のひび割れの拡大を防止可能な粘着テープ及びその使用方法に関する。
橋梁やトンネル等に使用されているコンクリート構造物は、時間とともに疲労や塩害やアルカリ骨材反応等によりひび割れが発生することがある。ひび割れた状態で長期間経過すると、ひび割れ部分から雨水や炭酸ガス等がコンクリートの深部まで進入し、鉄筋が腐食することによりコンクリートそのものの強度が低下し、橋梁やトンネルの崩落といった重大な事故を引き起こす可能性がある。このような状況において、コンクリート構造物をはじめとしたインフラの点検が5年に1回確実に行われる枠組みが構築されている。
環境条件にもよるが、ひび割れを放置することはコンクリートの劣化の進行を意味することから、何らかの対処ができることが望ましい。このため、コンクリートにひび割れが生じた早い段階での補修対策が必要となる。コンクリートのひび割れの補修方法として、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する水溶液からなる下地処理剤を塗布してひび割れの内部に浸入させた後、無機フィラーが分散したパテ材を上記ひび割れの内部に充填して補修する方法(例えば、特許文献1)や、コンクリートのひび割れ部分に沿って、自己修復材料を含むペーストを塗布する方法(例えば、特許文献2)が提案されている。
また、本願で開示する発明に関連する技術文献として特許文献3がある。
特開2010-001195号公報 特開2013-014453号公報 特開2017-222799号公報
上記特許文献1及び2に記載のようにひび割れ部に補修材料を直接的に充填又は塗布する方法では、その実施に際して、作業用の足場を設けたり、専門家による補修作業を伴うような大規模工事が必要となる。一方、地方自治体におけるコンクリート構造物の維持管理では、補修費が十分に確保できなかったり、ひび割れに伴う劣化グレードの判断が曖昧になったりするなど、点検者が点検時に発見した比較的幅の広いひび割れにその場で対応できないといった問題があった。
本願は、上記問題を解消するためになされたものであり、セメント系構造物のひび割れを発見した点検者が簡単に施工でき、必要に応じて糊残りなく簡単に剥離でき、施工中はセメント系構造物の劣化を抑制すことができる粘着テープ及びその使用方法を提供する。
本発明の粘着テープは、基材と、粘着層と、金属層と、機能層とをこの順に含み、前記粘着層は、粘着剤を含み、前記機能層は、側鎖結晶化ポリマーと、タック性樹脂とを含み、示差走査熱量測定法で測定した前記側鎖結晶化ポリマーの吸熱ピークが、50℃以上であり、表面粗さRaが100μm以下のセメント系構造物に対する前記粘着層側の粘着力が、JIS Z0237の規定に準じて測定した180°ピール力として、温度23℃、相対湿度50%の環境下で測定した場合に、6N/10mm以上であり、温度60℃、相対湿度5%以下の環境下で測定した場合に、1N/10mm以下であり、前記金属層は、開口部を備え、且つ、外部刺激による加熱が可能であり、前記機能層側のタック性が、JIS Z0237に規定するボールタック試験におけるボールナンバーとして、5以上である。
また、本発明の粘着テープの使用方法は、上記本発明の粘着テープを準備する工程と、前記粘着テープの機能層側を、セメント系構造物の劣化部分に貼り合わせる工程と、前記粘着テープを貼り合わせた前記セメント系構造物を、一定期間、自然環境下で放置する工程と、前記放置後に、前記粘着テープを外部刺激により加熱して、前記粘着テープの粘着力を低下させる工程と、前記セメント系構造物から、粘着力が低下した前記粘着テープを剥離する工程とを含み、前記粘着テープの加熱は、前記粘着テープの機能層に含まれる側鎖結晶化ポリマーの融点以上の温度で実施される。
本願によれば、セメント系構造物の点検者が、点検直後に簡便な方法で貼り付けでき、必要時に糊残りなく簡単に剥離でき、ひび割れを起因とするセメント系構造物の劣化を十分に抑制可能な粘着テープ及びその使用方法を提供できる。
図1は、実施形態の金属層を示す平面図であり、図1Aは、エキスパンドメタル、図1Bは、パンチングメタル、図1Cは、メッシュメタルをそれぞれ示す平面図である。 図2は、実施形態の粘着テープの一例を示す概略断面図である。 図3は、実施形態の粘着テープの他の例を示す概略断面図である。 図4は、実施形態の粘着テープをセメント系構造物のひび割れ部に貼り合わせた状態の一例を示す概略断面図である。 図5は、セメント系構造物に貼り合わせた実施形態の粘着テープを外部刺激により加熱している状態の一例を示す概略断面図である。 図6は、セメント系構造物のひび割れ部から実施形態の粘着テープを剥離した状態の一例を示す概略断面図である。 図7は、セメント系構造物のひび割れ部から従来の粘着テープを剥離した状態の一例を示す概略断面図である。
(粘着テープ)
本願で開示する粘着テープの実施形態について説明する。本実施形態の粘着テープは、基材と、粘着層と、金属層と、機能層とをこの順に備え、上記粘着層は、粘着剤を含み、上記機能層は、側鎖結晶化ポリマーと、タック性樹脂とを含み、示差走査熱量測定法で測定した上記側鎖結晶化ポリマーの吸熱ピークが、50℃以上であり、表面粗さRaが100μm以下のセメント系構造物に対する上記粘着層側の粘着力が、JIS Z0237の規定に準じて測定した180°ピール力として、温度23℃、相対湿度50%の環境下で測定した場合に、6N/10mm以上であり、温度60℃、相対湿度5%以下の環境下で測定した場合に、1N/10mm以下であり、上記金属層は、開口部を備え、且つ、外部刺激による加熱が可能であり、上記機能層側のタック性が、JIS Z0237に規定するボールタック試験におけるボールナンバーとして、5以上である。
上記粘着テープは、その粘着層に粘着剤を含むことにより、セメント系構造物といった凹凸面に追従可能で、且つ、上記粘着テープとセメント系構造物とを確実に接着でき、広い温度領域で外気とセメント系構造物との接触を遮断できる。これにより、セメント系構造物のひび割れ等の劣化部分から雨水やCO2の侵入を抑制できると共に、セメント系構造物の塩害やアルカリ骨材反応を防止することが可能となり、セメント系構造物内に鉄筋等が存在する場合でも、その鉄筋等の腐食を防止でき、ひび割れしたセメント系構造物に対しての保護性能を確保することができる。
また、上記粘着テープの機能層は、示差走査熱量測定法で測定した吸熱ピークが50℃以上の側鎖結晶化ポリマーを含んでいるので、上記機能層を50℃以上に加熱することにより、上記粘着テープの粘着力を低下させることができ、セメント系構造物側に粘着層の残渣(糊残り)を生じることなく、セメント系構造物から上記粘着テープを剥がすことができる。具体的には、表面粗さRaが100μm以下のセメント系構造物に対する上記粘着層側の粘着力を、JIS Z0237の規定に準じて測定した180°ピール力として、温度23℃、相対湿度50%の環境下で測定した場合に、6N/10mm以上とすることができ、通常の環境下では粘着力を維持できる。また、表面粗さRaが100μm以下のセメント系構造物に対する上記粘着層側の粘着力を、JIS Z0237の規定に準じて測定した180°ピール力として、温度60℃、相対湿度5%以下の環境下で測定した場合に、1N/10mm以下にすることができ、上記粘着テープを50℃以上に加熱することにより、粘着力を低下させることができ、必要に応じて糊残りなく簡単に剥離できる。
また、上記粘着テープは、外部刺激による加熱が可能な金属層を備えているため、外部刺激による加熱として、例えば、電磁誘導加熱又はマイクロ波加熱という比較的簡便な加熱方法で、上記金属層を加熱できる。更に、上記金属層は、上記粘着層と上記機能層の間に配置されているので、加熱された金属層により、近接する機能層をも加熱でき、これに伴い上記粘着テープの粘着力を低下させることができ、セメント系構造物から上記粘着テープを残渣(糊残り)なく剥がすことができる。
また、上記金属層は、開口部を備えているので、上記開口部を介して、上記粘着層と上記機能層とを接合することができる。
また、上記粘着テープの機能層は、タック性樹脂を含んでいるので、セメント系構造物に上記粘着テープを貼り合わせた直後の初期接着性が高く、貼り合わせ直後の粘着テープの端部の剥離が防止できる。具体的には、上記粘着テープの上記機能層側のタック性を、JIS Z0237に規定するボールタック試験におけるボールナンバーとして、5以上にできる。
更に、上記粘着テープは、基材を備えているため、その基材の色を各種調整することにより、セメント系構造物に貼り付けた場合の美観を損なわずに、点検者が点検直後に簡便な方法で貼り付けでき、必要時に糊残りなく簡単に剥離でき、ひび割れを起因とするセメント系構造物の劣化抑制が可能となる。
上記粘着テープは、通常、上記基材と上記粘着層とが接触し、上記金属層と上記機能層とが接触し、上記粘着層と上記機能層とが、上記金属層の開口部を介して接触している。
本願において、セメント系構造物には、コンクリート構造物及びモルタル構造物が含まれる。
以下、本実施形態の粘着テープの各構成部材について説明する。
<基材>
本実施形態の粘着テープに用いる基材は、後述する粘着層及び機能層を形成する基体となるものである。
上記基材としては、樹脂製基材が挙げられ、その樹脂製基材としては、具体的には、ポリオレフィン系樹脂(低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート:PET、ポリエチレンナフタレート:PEN、ポリブチレンテレフタレート:PBT、ポリブチレンナフタレート:PBN等)、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレン等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系樹脂、及び、これらの樹脂の架橋体等の構成材料からなる基材が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)が機械的特性及び価格面からより好ましい。これらの構成材料は、1種又は2種以上を使用できる。また、上記構成材料は、必要に応じて、官能基を有していてもよい。また、機能性モノマーや改質性モノマーが構成材料にグラフトされていてもよい。
上記基材の表面は、隣接する粘着層との密着性を向上させるために、公知の表面処理が施されていてもよい。上記表面処理としては、具体的には、例えば、コロナ放電処理、オゾン暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理等が挙げられる。また、下塗り剤によるコーティング処理(シリコーン処理等)、プライマー処理、マット処理、架橋処理等が上記基材に施されていてもよい。
上記基材の形態は、単層でもよいし、2層以上積層された積層体でもよい。また、上記基材中には、必要に応じて、充填剤、難燃剤、劣化防止剤、帯電防止剤、軟化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤等の公知の助剤が添加されていてもよい。
上記基材の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは30~300μmであり、より好ましくは50~150μmである。上記基材の厚さが30μm未満の場合、本実施形態の粘着テープ自体の強度が不足する傾向があり、300μmを超えると、コストが高くなる。
<樹脂層>
上記基材の耐候性及び耐薬品性を確保するために、後述する粘着層が形成される基材の主面とは反対側の主面上に、樹脂層を配置することが好ましい。上記樹脂層を構成する樹脂としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂が好ましい。
<粘着層>
本実施形態の粘着テープに用いる粘着層は、上記粘着テープに本来の粘着力を付与するためのものであり、より具体的には、表面粗さRaが100μm以下のセメント系構造物に対する上記粘着テープの粘着層側の粘着力を、JIS Z0237の規定に準じて測定した180°ピール力として、温度23℃、相対湿度50%の環境下で測定した場合に、6N/10mm以上とするために設けるものである。
上記粘着剤は、天然ゴム系粘着成分、合成ゴム系粘着成分、シリコーン系粘着成分、アクリル系粘着成分、及びポリエステル系粘着成分からなる群から選択される少なくとも1種の粘着成分を含んでいる。
[天然ゴム系粘着成分]
天然ゴム系粘着成分としては、ゴムの木(ヘベアブラジリエンシス)の樹脂液のみから採取されるシス-1,4-ポリプレン系からなるゴム等が挙げられる。
[合成ゴム系粘着成分]
合成ゴム系粘着成分としては、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム等が挙げられる。
[シリコーン系粘着成分]
シリコーン系粘着成分としては、付加反応型シリコーン系粘着成分及び過酸化物硬化型シリコーン系粘着成分が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、併用してもよい。
上記付加反応型シリコーン系粘着成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業社製のKR3700、KR3701、X-40-3237-1、X-40-3240、X-40-3291-1、X-40-3229、X-40-3270、X-40-3306(いずれも商品名)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSR1512、TSR1516、XR37-B9204(いずれも商品名)、東レ・ダウコーニング社製のSD4584、SD4585、SD4560、SD4570、SD4600PFC、SD4593(いずれも商品名)等が挙げられる。
上記付加反応型シリコーン系粘着成分は架橋剤と共に用いられ、その架橋剤としては特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業社製のX-92-122(商品名)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のCR50(商品名)、東レ・ダウコーニング社製のBY24-741(商品名)等を用いることができる。
上記過酸化物硬化型シリコーン系粘着成分としては、信越化学工業社製のKR100、KR101-10(いずれも商品名)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のYR3340、YR3286、PSA610-SM、XR37-B6722(いずれも商品名)、東レ・ダウコーニング社製のSH4280(商品名)等が挙げられる。
上記過酸化物硬化型シリコーン系粘着成分は架橋剤と共に用いられ、その架橋剤としては特に限定されるものではないが、例えば、ベンゾイールペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1’-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチレンシクロヘキサン、1,3-ジ-(t-ブチルペルオキシ)-ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
[アクリル系粘着成分]
アクリル系粘着成分としては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを共重合させることにより得られるものが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル等が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステルモノマーに、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸等の官能基を含むモノマーや、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、2-メチロールエチルアクリルアミド等を添加して共重合させてもよい。
[ポリエステル系粘着成分]
ポリエステル系粘着成分としては、多価カルボン酸(例えば、ジカルボン酸)とポリアルコール(例えば、ジオール)とを重縮合体化させることにより得られるものが挙げられる。上記ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、ドデセニル無水琥珀酸、フマル酸、琥珀酸、ドデカン二酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族や脂環族ジカルボン酸等や、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,2’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等が挙げられる。上記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチルオクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族グリコール等が挙げられる。
上記粘着剤は、上記粘着成分と共に架橋剤を含むことが好ましく、更に必要に応じて架橋促進剤、充填剤、軟化剤、粘着付与剤、老化防止剤等を含むことができる。
[架橋剤]
上記架橋剤としては、硫黄や、チウラム系のテトラメチルチウラムスルフィド(TMTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、p-キノンジオキシム等が一般的に使用されるが、その中でもTMTDを使用するのが望ましい。
上記架橋剤の添加量は、上記粘着成分100質量部に対して、少なくとも0.05質量部以上が必要であり、0.1~10質量部が望ましい。上記添加量が0.05質量部未満では架橋度が低くなり、粘着剤の作製時に架橋工程に時間を要する傾向がある。また、粘着成分の凝集力が低下するため、粘着テープを剥離した際に被着体に糊残りが生じてしまう傾向がある。一方、上記添加量が10質量部を超えると、架橋度が高くなりすぎて、初期の練り落とし時間が長くなる傾向がある。
[架橋促進剤]
上記架橋促進剤としては、チウラム系、チアゾール系、あるいはジチオカルバミン酸塩等が使用され、それぞれ併用して使用できる。上記架橋促進剤の添加量は、上記粘着成分100質量部に対して、上記架橋剤の種類及び添加量に合わせて添加されるため、通常2~10質量部の範囲で使用することが好ましい。
[充填剤]
上記充填剤は、上記粘着剤に任意の色彩を持たせるために使用され、また、上記粘着成分の補強性を高めるためにも使用される。上記充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー、シリカ、タルク、カーボンブラック等が使用できるが、特に、炭酸カルシウムや酸化チタンを用いることが望ましい。上記充填剤は、2種類以上を併用してもよい。
上記充填剤の添加量は、上記粘着成分100質量部に対して、少なくとも60質量部以上が必要であり、特に、70~250質量部が望ましい。上記添加量が60質量部未満では、粘着成分の凝集力が低下し、250質量部を超えると、ゴム弾性に劣る上、ムーニー粘度が高くなり過ぎ、上記粘着剤の原料としては好ましくない。
[軟化剤]
上記軟化剤は、通常、上記充填剤と共に用いられ、上記軟化剤としては、プロセスオイル、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン等が使用できるが、本粘着層の効果が好適に得られるという理由でプロセスオイルを使用するのが望ましい。上記軟化剤の添加量は、上記粘着成分100質量部に対して、少なくとも30質量部以上が必要であり、30~400質量部が望ましい。上記添加量が30質量部未満では、上記粘着成分と上記充填剤とが均一になりにくく、加工性に劣るものとなり、上記添加量が400質量部を超えると、ムーニー粘度が低くなり過ぎる傾向がある。
[粘着付与剤]
上記粘着付与剤としては、特に限定されるものではなく、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール系樹脂、不均化ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等が使用できる。上記粘着付与剤の添加量は、上記粘着成分100質量部に対して、15~70質量部が望ましい。上記添加量が15質量部未満では、所望の粘着力を発揮できない傾向があり、また、上記添加量が70質量部を超えると、低温条件下での使用において、初期接着性が低下する傾向にある。
[老化防止剤]
上記粘着層を構成する粘着剤の耐老化性向上のためには老化防止剤の添加が効果的である。上記老化防止剤としては、例えばフェノール系、アミン系、ベンズイミダゾール系、硫黄系、燐系の老化防止剤を用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの中でも、フェノール系、硫黄系の老化防止剤を用いることが好ましい。これらの老化防止剤を1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
粘着剤の老化の主な要因は、主に粘着剤を構成する粘着成分の酸化劣化である。老化防止剤は、粘着成分の酸化劣化を抑制する機構の違いから分類され、ラジカル連鎖禁止型と過酸化物分解型とに分けられる。
上記ラジカル連鎖禁止型の老化防止剤は、分子内にラジカルと反応しやすいフェノール性の「-OH」や「-NH」を有している。そして、劣化によりポリマー中に生成したラジカル等と反応して、不活性化することで自動酸化を停止する効果がある。フェノール系、アミン系の老化防止剤は、ラジカル連鎖禁止型である。
一方、過酸化物分解型の老化防止剤は、硫黄あるいは燐を含む化合物、ベンズイミダゾール系化合物が代表的であり、ポリマー中に生成したヒドロペルオキシド(ROOH)を分解し、安定な物質(ROH等)に変える。
上記老化防止剤としては、上記粘着剤を任意の色に着色することを考えると、非汚染性のフェノール系老化防止剤が望ましい。上記老化防止剤の添加量は、上記粘着成分100質量部に対して、2~10質量部が望ましい。上記添加量が2質量部未満では、上記粘着剤が劣化する傾向があり、上記添加量が10質量部を超えても、添加効果に大きな変化はない。
上記粘着層の厚さは、セメント系構造物の凹凸面への追従性に応じて決定でき、特に制限されるものではないが、200~5000μmが好ましく、500~1000μmがより好ましい。上記粘着層の厚さが、200μm未満だと、セメント系構造物のひび割れ表面の凹凸に追従できない傾向があり、また、温度23℃、相対湿度50%の環境下でのJIS Z0237の規定に準じて測定した180°ピール力が6N/10mmを得られない傾向にある。一方、上記粘着層の厚さが、5000μmを超えても、ひび割れ表面の凹凸に対する追従性に大きな変化はないが、剥離時にセメント系構造物に糊残りが生じる傾向がある。
<機能層>
本実施形態の粘着テープに用いる機能層は、上記機能層を50℃以上で加熱した際に上記粘着テープの粘着力を低下させる機能、及び、セメント系構造物に上記粘着テープを貼り合わせた直後の初期接着性を高める機能を付与するためのものである。上記機能層は、側鎖結晶化ポリマーとタック性樹脂とを含んでいる。
[側鎖結晶化ポリマー]
上記側鎖結晶化ポリマーは、上記機能層を50℃以上で加熱した際に上記粘着テープの粘着力を低下させる機能を発揮させる成分である。上記側鎖結晶化ポリマーは、示差走査熱量測定法(DSC)で測定した吸熱ピークが50℃以上である。DSCは、測定試料と基準物質との間の熱量の差を示差走査熱量計で計測することで、測定試料の融点等を測定する熱分析手法であり、上記基準物質としてα-アルミナ等を用いることができる。
上記側鎖結晶化ポリマーは、炭素数18以上のアルカン鎖を有する直鎖アクリレートと、溶解度パラメータ(SP値)が7.3~9.5のアクリル系モノマーとの共重合体であることが好ましい。
上記炭素数18以上のアルカン鎖を有する直鎖アクリレートとしては、例えば、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、リグノセリチルアクリレート、セロチニルアクリレート、モンタンニルアクリレート、メリシンニルアクリレート等を使用できる。上記直鎖アクリレートを用いることにより、上記側鎖結晶化ポリマーのDSCで測定した吸熱ピークを50℃以上とすることができる。
また、上記溶解度パラメータが7.3~9.5のアクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等を使用できる。上記アクリル系モノマーを用いることにより、上記側鎖結晶化ポリマーと上記タック性樹脂との相溶性を向上できる。
また、上記側鎖結晶化ポリマーの重量平均分子量は、1000~15000であることが好ましく、5000~12000がより好ましい。
上記粘着テープの機能層における上記側鎖結晶化ポリマーの含有量は、上記タック性樹脂100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。上記含有量が1質量部より少ないと、50℃以上で加熱した後の粘着力が低下せず、セメント系構造物からの剥離が難しくなる。また、上記含有量が20質量部より多いと、50℃まで加熱する前に、夏場の高温時に剥離してしまう恐れがある。
このような側鎖結晶化ポリマーを用いると、温度を50℃まで上げた場合に上記粘着テープの粘着力が低下する理由は定かではないが、次のように考えている。即ち、上記側鎖結晶化ポリマーは粘着力が小さく、通常、上記側鎖結晶化ポリマーの温度が示差走査熱量測定法で測定したポリマー融点より低い場合には、機能層のタック性樹脂の中に埋まった状態で存在しているが、上記側鎖結晶化ポリマーの温度が示差走査熱量測定法で測定したポリマー融点より高くなると、上記側鎖結晶化ポリマーの粘度が低下して、分子量が小さい側鎖結晶化ポリマーが、被着体と機能層との界面に移動して、上記粘着テープの粘着力が低下するものと考えられる。
[タック性樹脂]
上記タック性樹脂は、上記機能層に、セメント系構造物に上記粘着テープを貼り合わせた直後の初期接着性を高める機能を付与する成分である。上記タック性樹脂としては、上記粘着テープの機能層側のタック性を、JIS Z0237に規定するボールタック試験におけるボールナンバーとして、5以上とすることができる樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、アラミド系樹脂、天然ゴム系樹脂、合成ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、及びウレタン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂が使用できる。
上記機能層の厚さは特に限定されないが、通常、5~100μmに設定される。上記機能層の厚さが上記範囲内であれば、前述の、上記粘着テープを50℃以上で加熱した際に上記粘着テープの粘着力を低下させる機能、及び、セメント系構造物に上記粘着テープを貼り合わせた直後の初期接着性を高める機能を発揮できるからである。
<金属層>
本実施形態の粘着テープに用いる金属層は、上記金属層を外部刺激により加熱することにより、加熱した金属層に近接する機能層を加熱する機能を付与するためのものである。上記外部刺激による加熱としては、電磁誘導加熱又はマイクロ波加熱を採用できる。
上記電磁誘導加熱は、電磁誘導を利用した直接加熱方式であり、加熱したい材料だけを選択的に加熱可能である。また、電磁誘導加熱は、電磁誘導により被加熱物に電流を流して発熱させるため、金属層の加熱が可能である。また、上記マイクロ波加熱は、300MHz~300GHzの電磁波の作用により被加熱物の分子運動とイオン伝導により発熱させるため、金属層の加熱が可能である。
上記金属層は、アルミニウム、鉄、銅、銀、金、ニッケル、白金、亜鉛、鉛及びステンレス鋼からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
一方、上記金属層は、粘着層と機能層との間に配置されるため、粘着層と機能層との接合を確保するために、開口部を備えている。
上記金属層は、開口部を備え、外部刺激による加熱が可能であればその形態は特に限定されないが、例えば、エキスパンドメタル、パンチングメタル、メッシュメタル等を使用できる。これらを金属層として使用する場合、その開口径は、開口部に内接する円の直径として、0.02~10.00mmの大きさであることが好ましい。
また、金属不織布も小さな開口部を有するので、上記金属層として使用できる。上記金属不織布を金属層として用いる場合には、金属不織布のフラジール法で測定した通気度が、0.5~500cm3/cm2/secであることが好ましい。
上記金属層の開口率は、10~85%であることが好ましい。上記開口率が、10%未満では粘着層と機能層との接合力が低下し、粘着層と機能層とが剥離してしまう虞があると共に、上記粘着テープの粘着力が低下する傾向にある。また、上記開口率が、85%を超えると外部刺激による加熱が困難となる傾向がある。
上記金属層の厚さは、10~500μmであることが好ましい。上記厚さが、10μm未満では外部刺激により機能層を50℃以上に加熱できない傾向にあり、500μmを超えると粘着層と機能層との接合が困難になる傾向がある。
図1は、本実施形態の粘着テープに用いることができる代表的な金属層を例示した平面図であり、図1Aは、エキスパンドメタル、図1Bは、パンチングメタル、図1Cは、メッシュメタルをそれぞれ示す。
続いて、本実施形態の粘着テープの製造方法について説明する。本実施形態の粘着テープの製造方法は特に限定されないが、例えば、下記の工程を組み合わせることにより、上記粘着テープを製造できる。
(1)前述の基材と、前述の粘着層の成分を含む粘着層形成塗料と、前述の機能層の成分を含む機能層形成塗料と、金属層とを準備する工程
(2)上記基材の片面に上記粘着層形成塗料を塗布して粘着層を作製した後、その粘着層の上に金属層を貼り合わせる工程
(3)別の離型フィルムに上記機能層形成塗料を塗布して離型フィルム付き機能層を作製する工程
(4)上記金属層の上に上記離型フィルム付き機能層の機能層側を貼り合わせる工程
また、下記の工程を組み合わせることによっても上記粘着テープを製造できる。
(1)前述の基材と、前述の粘着層の成分を含む粘着層形成塗料と、前述の機能層の成分を含む機能層形成塗料と、金属層とを準備する工程
(2)上記基材の片面に上記粘着層形成塗料を塗布して粘着層を作製した後、その粘着層の上に金属層を貼り合わせ、その上に離型フィルムを貼り合わせる工程
(3)別の離型フィルムに上記機能層形成塗料を塗布して離型フィルム付き機能層を作製する工程
(4)上記金属層の上に貼り合わせた離型フィルムを剥離しながら、金属層の上に上記離型フィルム付き機能層の機能層側を貼り合わせる工程
上記工程で、粘着層と金属層とを貼り合わせた際に、粘着層を構成する粘着剤が金属層の開口部に侵入し、その開口部に侵入した粘着剤により、粘着層が金属層を介して機能層と接合される。また、上記工程で製造した粘着テープは、上記機能層の離型フィルムを剥がして使用する。
次に、本実施形態の粘着テープを図面に基づき説明する。図2は、本実施形態の粘着テープの一例を示す概略断面図である。図2において、粘着テープ10は、基材11の上に粘着層12を備え、粘着層12の上に開口部13aを有する金属層13を備え、金属層13の上に機能層14を備えている。金属層13の開口部13aには、粘着層12の粘着剤が充填されており、この開口部13aに充填された粘着剤により、粘着層12と機能層14とは金属層13を介して接合される。
また、図3は、本実施形態の粘着テープの他の例を示す概略断面図である。図3において、粘着テープ20は、基材11の上に粘着層12を備え、粘着層12の上に開口部13aを有する金属層13を備え、金属層13の上に機能層14を備え、更に機能層14の上に剥離シート15を備えている。粘着テープ20は、剥離シート15を備えている以外は、図2に示す粘着テープ10と同じ構成である。
本実施形態の粘着テープは、JIS K7126に規定する20℃での二酸化炭素透過率が、0.5g/(m2・24hr・1atm)以下であることが好ましい。上記二酸化炭素透過率が上記範囲内であれば、セメント系構造物の劣化を促進する二酸化炭素は勿論、セメント系構造物の劣化を促進する塩素イオン、水、酸素等も遮断することができる。
(粘着テープの使用方法)
本願で開示する粘着テープの使用方法の実施形態について説明する。本実施形態の粘着テープの使用方法は、本願で先に開示した粘着テープを準備する工程と、上記粘着テープの機能層側を、セメント系構造物の劣化部分に貼り合わせる工程と、上記粘着テープを貼り合わせた上記セメント系構造物を、一定期間、自然環境下で放置する工程と、上記放置後に、上記粘着テープを外部刺激により加熱して、上記粘着テープの粘着力を低下させる工程と、上記セメント系構造物から、粘着力が低下した上記粘着テープを剥離する工程とを含み、上記粘着テープの加熱は、上記粘着テープの機能層に含まれる側鎖結晶化ポリマーの融点以上の温度で実施される。
本実施形態の粘着テープの使用方法によれば、セメント系構造物の点検直後に簡便に上記粘着テープをセメント系構造物の劣化部分に常温で貼り付けて、確実に接着を維持できると共に、必要に応じて外部刺激により加熱することにより糊残りなく簡単に剥がすことができる。また、上記粘着テープをセメント系構造物の劣化部分に貼り付けている間、セメント系構造物の劣化を防止できると共に、上記粘着テープ自体の耐久性及び耐疲労性が大きいため、長期間に渡ってセメント系構造物の劣化を防止できる。更に、上記粘着テープは、その粘着層に着色可能なため、上記粘着テープ自体の色を、セメント系構造物の色に合わせることができるため、セメント系構造物に貼り付けても美観を損ねない。
また、本実施形態に使用する粘着テープは、その粘着層に粘着剤を含むことにより、セメント系構造物の表面といった凹凸面に追従可能で、広い温度領域で外気とセメント系構造物との接触を遮断でき、セメント系構造物のひび割れ等の劣化部分から雨水やCO2の侵入を抑制できると共に、セメント系構造物の塩害やアルカリ骨材反応を防止することが可能となり、セメント系構造物内に鉄筋等が存在する場合でも、その鉄筋等の腐食を防止でき、ひび割れしたセメント系構造物に対しての保護性能を確保することができる。
また、上記粘着テープの機能層は、側鎖結晶化ポリマーを含んでいるので、上記機能層を、上記側鎖結晶化ポリマーの融点以上の温度で加熱することにより、上記粘着テープの粘着力を低下させることができ、セメント系構造物側に粘着層の残渣(糊残り)を生じることなく、セメント系構造物から上記粘着テープを剥がすことができる。これにより、セメント系構造物のひび割れ部等の劣化部分の大きさを目視で容易に確認でき、その時点(通常は前回の点検時から5年経過時)において本格的な補修工事が必要か否か判断できる。一般的には、この時点で当該セメント系構造物の劣化(ひび割れ)が大きく進んでいる場合には、補修工事がなされ、当該セメント系構造物の劣化が進んでいない場合には、更に5年間の経過観察が行われる。
更に、上記粘着テープは、粘着層と機能層との間に、外部刺激による加熱が可能な金属層を備えているので、上記外部刺激として、例えば、電磁誘導、マイクロ波照射等の簡便な方法を使用でき、比較的簡便な方法で、機能層を加熱して、粘着テープの粘着力を低下させることができ、セメント系構造物から粘着テープを残渣(糊残り)なく剥がすことができる。
上記粘着テープの粘着層の厚さは、前述のように、200~5000μmであることが好ましく、500~1000μmがより好ましい。上記粘着層の厚さが200μmを下回ると、上記粘着層がセメント系構造物の表面の凹凸に追従できず粘着力が低下する傾向にあり、5000μmを超えてもセメント系構造物の表面の凹凸に対する追従性に大きな変化がないからである。
上記追従性の観点からは、上記粘着テープの粘着層の厚さと機能層の厚さとを合計した総厚さが、上記セメント系構造物のJIS B0601に規定する十点平均粗さRzの0.5倍以上の厚さであることがより好ましい。
続いて、本実施形態の粘着テープの使用方法について図面に基づき説明する。以下の粘着テープの使用方法では、セメント系構造物として、コンクリート構造物を用いた例について説明する。先ず、図4に示すように、コンクリート16のひび割れ部17の上に、本実施形態の粘着テープ10の機能層14側を貼り合わせる。この際、粘着テープ10を基材11側から加圧してもよい。
図4の状態で、次回の点検時まで一定期間放置する。その放置期間、例えば、5年間は、コンクリート16のひび割れ部17が粘着テープ10で覆われているため、それ以上コンクリートの劣化は進行しないか、又はその進行が遅くなる。
次に、例えば、5年後の次回点検時に、図5に示すように、粘着テープ10に、電磁誘導、マイクロ波照射等の外部刺激18を加えて金属層13を加熱することにり、機能層14を、例えば、50~60℃に加熱する。その際、粘着テープ10の機能層14には、前述の側鎖結晶化ポリマーを含んでいるため、上記加熱時に粘着テープ10の粘着力が低下する。そのため、その後にコンクリート16から粘着テープ10を剥離しても、図6に示すように、コンクリート16の表面に上記粘着層の糊残りが生じることがない。これにより、コンクリートの劣化状態の確認が容易となる。その後、コンクリート16のひび割れ部17の大きさ、深さ等を中心に、コンクリート構造物の全体の劣化状況を検討し、その後の補修計画を作成する。例えば、ひび割れ部17が、粘着テープ10を貼り合わせた5年前と比べて著しく拡大している場合は、至急補修計画を立てることができる。
以上の工程により、簡便な方法でコンクリートの劣化防止と、コンクリート構造物の修復の必要性の判断が可能となる。
上記工程では、図2に示した粘着テープ10を用いた例を示したが、図3に示した粘着テープ20を用いる場合には、剥離シート15を剥がした後、粘着テープ20の機能層14側をコンクリートに貼り合わせればよい。
また、図7は、コンクリートのひび割れ部から従来の粘着テープを剥離した状態の一例を示す概略断面図である。従来の粘着テープは、側鎖結晶化ポリマー含む機能層を備えていないので、常温でそのまま剥離する場合は勿論、加熱して剥離する場合でも、図7に示すように、コンクリート17の表面に粘着層の糊残り12aが生じやすい。
以下、本願で開示する粘着テープを実施例に基づいて詳細に説明する。但し、以下の実施例は、本願で開示する粘着テープを制限するものではない。また、実施例中の「部」は「質量部」を示す。
(実施例1)
<機能層形成塗料の作製>
先ず、以下に示す材料をミキサーで十分に溶解・混合して機能層形成塗料を作製した。
(1)レギュラーブチルゴム(エクソン社製、商品名“ブチル268”):40部
(2)脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学社製、商品名“アルコンP125”):25部
(3)ポリイソブチレンゴム(BASF社製、商品名“オパノールB100”):25部
(4)ポリブテン(日油社製、商品名“ニッサンポリブテン30N”):10部
(5)トルエン:400部
(6)ベヘニルアクリレート(炭素数:25)/アクリル酸共重合体(側鎖結晶化ポリマー、重量平均分子量:7500):10部
<粘着層形成塗料の作製>
次に、以下に示す材料をニーダーで十分に混練して粘着層形成塗料(ブチルゴム系粘着剤)を作製した。
(1)部分架橋ブチルゴム(伸工貿易社製、商品名“ケーラー5215A”):100部
(2)架橋剤(大内新興化学工業社製、商品名“バルノックGM”):0.1部
(3)充填剤(炭酸カルシウム):209.4部
(4)軟化剤(プロセスオイル):386.6部
(5)粘着付与剤(C5樹脂、日本ゼオン社製、商品名“クイントンA100”):21.8部
<粘着テープの作製>
先ず、基材PETフィルム(東レ社製、商品名“S-10”、厚さ:50μm)の片面に、上記粘着層形成塗料を、厚さが500μmとなるようにカレンダ塗布して粘着層を形成し、その後、その粘着層の上に、開口部を備えた金属層として厚さが100μmのエキスパンドアルミシート(開口率:約20%)を貼り合わせた。
その後、上記エキスパンドアルミシートの上に、離型PETフィルム(中本パックス社製、商品名“NS-50-ZW”、厚さ:50μm)を、ニップ圧0.5MPa、温度80℃で貼り合わせて、基材PETフィルム/粘着層/開口部を備えた金属層(エキスパンドアルミシート)/離型PETフィルムからなる粘着層・金属層積層体を作製した。
次に、離型PETフィルム(中本パックス社製、商品名“NS-50-ZW”、厚さ:50μm)の片面に、上記機能層形成塗料を塗布し、110℃で5分乾燥することにより、乾燥後の厚さが7μmの機能層を備えた機能層積層体を形成した。
続いて、上記粘着層・金属層積層体から離型PETフィルムを剥離しながら、金属層(エキスパンドアルミシート)の上に上記機能層積層体の機能層側を、ニップ圧0.5MPaで貼り合わせることにより、実施例1の粘着テープを作製した。
(実施例2)
開口部を備えた金属層として用いた厚さが100μmのエキスパンドアルミシートの開口率を約50%に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の粘着テープを作製した。
(実施例3)
開口部を備えた金属層として用いた厚さが100μmのエキスパンドアルミシートの開口率を約80%に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の粘着テープを作製した。
(実施例4)
開口部を備えた金属層として用いたエキスパンドアルミシートに代えて、厚さが100μmのパンチングアルミシート(開口率:約20%)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の粘着テープを作製した。
(実施例5)
開口部を備えた金属層として用いたエキスパンドアルミシートに代えて、厚さが100μmのエキスパンドステンレス鋼シート(開口率:約20%)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の粘着テープを作製した。
(比較例1)
開口部を備えた金属層として用いた厚さが100μmのエキスパンドアルミシートの開口率を約90%に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の粘着テープを作製した。
(比較例2)
開口部を備えた金属層として用いた厚さが100μmのエキスパンドアルミシートの開口率を約5%に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の粘着テープを作製した。
(比較例3)
金属層を積層しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例3の粘着テープを作製した。
(比較例4)
開口部を備えた金属層として用いたエキスパンドアルミシートに代えて、開口部を備えない厚さが100μmのPETフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例4の粘着テープを作製した。
次に、上記実施例1~5及び上記比較例1~4で作製した粘着テープについて、粘着力及びボールタック性を下記のように評価した。
<モルタルに対する粘着力>
先ず、エンジニアリングテストサービス社製のモルタル板(150mm×70mm×10mmを18枚準備し、その各モルタル板の被着面の任意の3点の表面粗さRaをキーエンス社製のレーザー顕微鏡“VK-9710”で測定した。その結果、モルタル板18枚の各測定点の表面粗さRaは、19.0~83.2μm(全て100μm以下)の範囲内にあった。
次に、準備した18枚のモルタル板について、それぞれ2枚ずつを実施例1~5、比較例1~4の被着体に割り当てた。
続いて、作製した粘着テープから離型PETフィルムを剥離し、粘着テープの機能層側を上記モルタル板の被着面に貼り付けて測定サンプルを作製し、その測定サンプルを温度23℃、相対湿度50%に設定した恒温槽の中に入れて、JIS Z0237の規定に準じて粘着力(180°ピール力)を測定した。次に、同様にして作製した別の測定サンプルを相対湿度5%に設定した恒温槽の中に入れて、電磁誘導加熱装置により60℃に加熱した後に、JIS Z0237の規定に準じて粘着力(180°ピール力)を測定した。但し、比較例3及び比較例4の粘着テープは、電磁誘導加熱装置による加熱ができなかったため、温度60℃、相対湿度5%の恒温槽の中に入れて、JIS Z0237の規定に準じて粘着力(180°ピール力)を測定した。
<コンクリートに対する粘着力>
先ず、土木学会のコンクリート標準示方書(基準編)の表面被覆材の耐候性試験方法(JSCE-K 511-2018)に記載の試験用基板の作製方法に準じて、コンクリート板(150mm×70mm×10mm)を2枚作製し、そのコンクリート板の被着面の任意の3点の表面粗さRaをキーエンス社製のレーザー顕微鏡“VK-9710”で測定した。その結果、コンクリート板の各測定点の表面粗さRaは、23.3~88.3μm(全て100μm以下)の範囲内にあった。
次に、上記モルタル板の場合と同様にして、上記コンクリート板に対する実施例1の粘着テープの温度23℃及び温度60℃での粘着力を測定した。
最後に、上記両温度での粘着力の測定の後に、粘着テープを完全に剥がした後のモルタル板及びコンクリート板の被着面を観察し、粘着剤の糊残りの有無を確認した。
上記結果を表1及び表2に示す。
Figure 0007454416000001
Figure 0007454416000002
表1及び表2において、糊残り「無し」とは、被着面に糊残りが全く観察されなかったものであり、糊残り「有り」とは、被着面のほぼ全面に糊残りが観察されたものである。
<ボールタック性>
傾斜角が30度である傾斜台に、離型PETフィルムを剥離した粘着テープを機能層が上面になるように固定し、高炭素クロム軸受鋼材からなるボールをJIS Z 0237(2009)に記載された方法で転がした。このとき、ボールの直径が2/32インチから1インチまでの大きさのものを用いた。そして、ボールを転がしたときに機能層の表面で停止するボールのうち、最大径のボールナンバーの値を特定し、本ボールタック試験におけるボールナンバーとした。
ここで、ボールナンバーは、ボールの直径を32倍することで求められる。即ち、直径1インチのものをボールナンバー32といい、2/32インチのものをボールナンバー2という。ボールナンバーが大きいほど、粘着テープのタック力(軽い力で被着体に接着する力)が強いことを示す。ボールナンバーが3より小さくなると、タック性がかなり小さくなるため、テープエッジ面からの浮きが発生し易くなる傾向にある。
上記結果を表3に示す。
Figure 0007454416000003
モルタル板を用いた表1から、実施例1~5、比較例1、3の粘着テープは、23℃粘着力において6N/10mm以上の強粘着状態を満足する結果を得たことが分かる。また、実施例1~5の電磁誘導による60℃加熱後の粘着力は、1N/10mm未満に低下しており、電磁誘導加熱により糊残りなく粘着テープを剥がすことができた。
一方、金属層の開口率を約90%とした比較例1の粘着テープは、23℃粘着力が大きく、通常の使用では強粘着状態であり、粘着テープの剥離を防止できた。しかし、電磁誘導による加熱では、金属層全体として均一な加熱ができず、加熱後の粘着力は1N/10mmを超え、完全には糊残りなく粘着テープを剥がすことはできなかった。即ち、比較例1では、電磁誘導による加熱を行ったところ、金属層自体が存在する部分は60℃まで昇温したが、金属層の開口率が大きいため、金属層の開口部の温度は30℃程度までしか上がらず、開口部を含めた金属層の全体としては、不均一な温度分布となった。そのため、粘着テープ全体としての粘着力が低下せず、1N/10mmを超えた。
また、金属層の開口率を約5%とした比較例2の粘着テープは、23℃粘着力が小さく、貼り合わせ後に粘着テープに剥離が発生した。これは、金属層の開口率が小さかったため、粘着層の粘着機能が十分に発揮できなかったからと考えられる。
また、金属層を積層しなかった比較例3の粘着テープは、23℃粘着力が大きく、通常の使用では強粘着状態であり、粘着テープの剥離を防止できた。しかし、金属層を積層しなかったため、電磁誘導による加熱ができず、代わりに恒温層で加熱を行ったが、60℃加熱後の粘着力は、1N/10mmを超えており、加熱を行っても完全には糊残りなく粘着テープを剥がすことができなかった。
また、金属層に代えてPETフィルムを用いた比較例4の粘着テープは、23℃粘着力が小さく、貼り合わせ後に粘着テープに剥離が発生した。これは、PETフィルムにより、粘着層の粘着機能が遮断されたためと考えられる。
更に、コンクリート板を用いた表2から、コンクリート板に対する粘着力についても、モルタル板に対する粘着力と同様の結果を得たことが分かる。
本願で開示する粘着テープは、簡便な方法でセメント系構造物の劣化防止が可能であり、取り扱い性に優れた粘着テープとして幅広く利用でき、特に土木・建設分野において有用である。
10、20 粘着テープ
11 基材
12 粘着層
12a 糊残り
13 金属層
13a 開口部
14 機能層
15 剥離シート
16 コンクリート
17 ひび割れ部
18 外部刺激

Claims (15)

  1. 基材と、粘着層と、金属層と、機能層とをこの順に含む粘着テープであって、
    前記粘着層は、粘着剤を含み、
    前記機能層は、側鎖結晶化ポリマーと、タック性樹脂とを含み、
    示差走査熱量測定法で測定した前記側鎖結晶化ポリマーの吸熱ピークが、50℃以上であり、
    表面粗さRaが100μm以下のセメント系構造物に対する前記粘着層側の粘着力が、JIS Z0237の規定に準じて測定した180°ピール力として、温度23℃、相対湿度50%の環境下で測定した場合に、6N/10mm以上であり、温度60℃、相対湿度5%以下の環境下で測定した場合に、1N/10mm以下であり、
    前記金属層は、開口部を備え、且つ、外部刺激による加熱が可能であり、
    前記金属層の開口率が、10~85%であり、
    前記機能層側のタック性が、JIS Z0237に規定するボールタック試験におけるボールナンバーとして、5以上であることを特徴とする粘着テープ。
  2. 前記基材と前記粘着層とが接触し、前記金属層と前記機能層とが接触し、前記粘着層と前記機能層とが、前記金属層の開口部を介して接触している請求項1に記載の粘着テープ。
  3. 前記金属層は、エキスパンドメタル、パンチングメタル及びメッシュメタルからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる請求項1又は2に記載の粘着テープ。
  4. 前記金属層の厚さが、10~500μmである請求項1~のいずれか1項に記載の粘着テープ。
  5. 前記金属層は、アルミニウム、鉄、銅、銀、金、ニッケル、白金、亜鉛、鉛及びステンレス鋼からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1~のいずれか1項に記載の粘着テープ。
  6. 前記外部刺激による加熱が、電磁誘導加熱又はマイクロ波加熱である請求項1~のいずれか1項に記載の粘着テープ。
  7. 前記側鎖結晶化ポリマーは、炭素数18以上のアルカン鎖を有する直鎖アクリレートと、溶解度パラメータが7.3~9.5のアクリル系モノマーとの共重合体であり、
    前記側鎖結晶化ポリマーの重量平均分子量が、1000~15000である請求項1~のいずれか1項に記載の粘着テープ。
  8. 前記機能層における前記側鎖結晶化ポリマーの含有量が、前記タック性樹脂100質量部に対して、1~20質量部である請求項1~のいずれか1項に記載の粘着テープ。
  9. 前記機能層に含まれるタック性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、アラミド系樹脂、天然ゴム系樹脂、合成ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、及びウレタン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂である請求項1~のいずれか1項に記載の粘着テープ。
  10. 前記機能層の厚さが、5~100μmである請求項1~のいずれか1項に記載の粘着テープ。
  11. 前記粘着層に含まれる粘着剤が、天然ゴム系粘着成分、合成ゴム系粘着成分、シリコーン系粘着成分、アクリル系粘着成分、及びポリエステル系粘着成分からなる群から選択される少なくとも1種の粘着成分を含む請求項1~10のいずれか1項に記載の粘着テープ。
  12. 前記粘着層の厚さが、200~5000μmである請求項1~11のいずれか1項に記載の粘着テープ。
  13. JIS K7126に規定する20℃での二酸化炭素透過率が、0.5g/(m2・24hr・1atm)以下である請求項1~12のいずれか1項に記載の粘着テープ。
  14. 請求項1~13のいずれか1項に記載の粘着テープを準備する工程と、
    前記粘着テープの機能層側を、セメント系構造物の劣化部分に貼り合わせる工程と、
    前記粘着テープを貼り合わせた前記セメント系構造物を、一定期間、自然環境下で放置する工程と、
    前記放置後に、前記粘着テープを外部刺激により加熱して、前記粘着テープの粘着力を低下させる工程と、
    前記セメント系構造物から、粘着力が低下した前記粘着テープを剥離する工程とを含み、
    前記粘着テープの加熱は、前記粘着テープの機能層に含まれる側鎖結晶化ポリマーの融点以上の温度で実施されることを特徴とする粘着テープの使用方法。
  15. 前記粘着テープにおいて、前記粘着層の厚さと前記機能層の厚さとを合計した総厚さが、前記セメント系構造物のJIS B0601に規定する十点平均粗さRzの0.5倍以上の厚さである請求項14に記載の粘着テープの使用方法。
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