以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
(1)第1の実施の形態
(1-1)本実施の形態による環境価値取引システムの構成
図1において、1は全体として本実施の形態による環境価値取引システムを示す。この環境価値取引システム1は、インターネット等のネットワーク2を介して接続された1又は複数の環境価値保有者側端末3と、環境価値集約サーバ4と、環境価値取引サーバ5と、1又は複数の環境価値必要者側端末6とを備えて構成される。
環境価値保有者側端末3は、環境価値の保有者(以下、これを環境価値保有者と呼ぶ)がそれぞれ所有するコンピュータ装置であり、CPU(Central Processing Unit)10、メモリ11、補助記憶装置12及び通信装置13などの情報処理資源を備えて構成される。
なお、本実施の形態の「環境価値保有者」は、1又は複数の他国や他地域との間で環境価値受渡協定を締結した国又は地域に属する団体又は個人(行政機関、企業及び一般家庭を含む)である。従って、環境価値保有者は、1又は複数の国や地域に存在する。また環境価値保有者には、再生可能エネルギーの創生者だけでなく、再生可能エネルギーの創生者等から環境価値を購入等することにより取得して保有している者も含まれる。
CPU10は、環境価値保有者側端末3全体の動作制御を司るプロセッサである。またメモリ11は、例えば、不揮発性の半導体メモリから構成され、CPU10のワークメモリとして利用される。補助記憶装置12は、ハードディスク装置やSSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリ等の大容量の不揮発性記憶媒体から構成され、各種プログラムや必要なデータが格納される。通信装置13は、例えばNIC(Network Interface Card)から構成され、ネットワーク2を介した環境価値集約サーバ4との通信時におけるプロトコル制御を行う。
本実施の形態の環境価値保有者側端末3の場合、メモリ11には、対価受領プログラム14が格納され、補助記憶装置12には、その環境価値保有者側端末3の所有者である環境価値保有者が保有する環境価値の情報が登録された保有価値管理テーブル15が格納される。そして環境価値保有者側端末3は、新たな環境価値が創生又は他の環境価値保有者から取得されてその情報が保有価値管理テーブル15に登録されるごとに、その環境価値の情報をネットワーク2を介して環境価値集約サーバ4に送信する。
環境価値集約サーバ4は、CPU20、補助記憶装置21及び通信装置22などの情報処理資源を備えた汎用のサーバ装置から構成される。これらCPU20、補助記憶装置21及び通信装置22の構成及び機能は、環境価値保有者側端末3のCPU10、補助記憶装置12及び通信装置13と同様であるため、ここでの詳細説明は省略する。
環境価値集約サーバ4の補助記憶装置21には、環境価値集約テーブル23が格納されており、各環境価値保有者側端末3からそれぞれ送信されてきた環境価値の情報がすべてこの環境価値集約テーブル23に格納されて集約される。
環境価値取引サーバ5は、複数の国/地域(他の国/地域との間で環境価値受渡協定を締結した国や地域。以下、同様。)に存在する各環境価値保有者と、複数の国/地域に存在する、環境価値を必要とする者(以下、これを環境価値必要者と呼ぶ)との間の環境価値の売買取引を約定させる機能を有するサーバ装置である。
この環境価値取引サーバ5は、CPU30、メモリ31、補助記憶装置32、通信装置33、入力装置34及び表示装置35を備えた汎用のサーバ装置から構成される。CPU30、メモリ31、補助記憶装置32及び通信装置33の構成及び機能は、環境価値保有者側端末3のCPU10、メモリ11、補助記憶装置12及び通信装置13と同様であるため、ここでの詳細説明は省略する。
入力装置34は、環境価値取引サーバ5を運用する事業者が当該環境価値取引サーバ5に対する必要な操作を行うために利用するデバイスであり、例えば、マウスやキーボードなどから構成される。また表示装置35は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどから構成され、必要な画面や情報を表示するために利用される。
なお本実施の形態の場合、環境価値取引サーバ5の補助記憶装置32には、各種プログラムのほか、後述の取引ガイドライン情報40、環境価値受渡協定情報41、環境価値単価管理テーブル42及び為替レート管理テーブル43が格納される。また環境価値取引サーバ5のメモリ31には、後述の環境価値アグリゲーションプログラム44、売り注文出力プログラム45、マッチング方法設定プログラム46、マッチングプログラム47、環境価値クリアプログラム48、環境価値送付プログラム49、収益確保プログラム50及び通貨変換プログラム51が環境価値取引サーバ5の起動時や必要時に補助記憶装置32からロードされて格納される。
環境価値必要者側端末6は、環境価値必要者が所有するコンピュータ装置である。なお、本実施の形態の「環境価値必要者」は、1又は複数の他国/地域との間で環境価値受渡協定を締結した国や地域に属する団体又は個人(行政機関、企業及び一般家庭を含む)である。
環境価値必要者側端末6は、CPU60、メモリ61、補助記憶装置62及び通信装置63などの情報処理資源を備えた汎用のコンピュータ装置から構成される。これらCPU60、メモリ61、補助記憶装置62及び通信装置63の構成及び機能は、環境価値保有者側端末3のCPU10、メモリ11、補助記憶装置12及び通信装置13と同様であるため、ここでの詳細説明は省略する。なお、後述の調達基準情報64及び確保価値管理テーブル65は補助記憶装置62に格納されて保持され、後述の買い判定プログラム66、買い注文出力プログラム67及び対価支払いプログラム68は、環境価値必要者側端末6の起動時や必要時に補助記憶装置62からメモリ61にロードされて、メモリ61により保持される。
図2は、図1について上述した本実施の形態による環境価値取引システム1の論理構成を示す。この図2に示すように、各環境価値保有者側端末3はそれぞれ保有価値管理テーブル15を備え、環境価値集約サーバ4は環境価値集約テーブル23を備えている。
保有価値管理テーブル15は、対応する環境価値保有者が保有する環境価値が登録されるテーブルである。この保有価値管理テーブル15は、図3に示すように、日付欄15A、時間帯欄15B、環境価値欄15C及びエネルギー種別欄15Dを備えて構成される。保有価値管理テーブル15では、1つの行が、対応する環境価値保有者が保有する1つの環境価値に対応する。
そして日付欄15Aには、対応する環境価値を取得した日付が格納され、時間帯欄15Bには、その環境価値を取得した時間帯が格納される。また環境価値欄15Cには、その環境価値の量が格納され、エネルギー種別欄15Dには、その環境価値が創生された再生可能エネルギーのエネルギー種別が格納される。
従って、図3の例の場合、「A国/地域の保有者X」は、「20200401」という日付の「1200(-1230)」という時間帯に「風力発電」により創生された「150」(kWh)の環境価値を取得し、同日の「1230(-1300)」という時間帯も「風力発電」により創生された「150」(kWh)の環境価値を取得したことが示されている。
環境価値集約テーブル23は、上述のように各環境価値保有者側端末3から環境価値集約サーバ4に情報が送信されてきた環境価値を集約するためのテーブルであり、図4に示すように、日付欄23A、時間帯欄23B、環境価値欄23C、保有者欄23D、所属国/地域欄23E及びエネルギー種別欄23Fを備えて構成される。環境価値集約テーブル23では、1つの行がいずれかの環境価値保有者側端末3から環境価値集約サーバ4に情報が送信された1つの環境価値の情報に対応する。
そして日付欄23A、時間帯欄23B、環境価値欄23C及びエネルギー種別欄23Fには、それぞれ対応する環境価値に関して図3について上述した保有価値管理テーブル15の日付欄15A、時間帯欄15B、環境価値欄15C及びエネルギー種別欄15Dにそれぞれ格納された情報と同じ情報が格納される。また保有者欄23Dには、その環境価値を保有する環境価値保有者の識別情報が格納され、所属国/地域欄23Eには、その環境価値保有者が所属する国/地域の識別情報が格納される。
従って、図4の例の場合、「A」という国/地域に属する「X」という環境価値保有者が保有する環境価値は、「20200401」の「12:00」という時間帯に「風力発電」により創生された「150」(kWh)の環境価値であることが示されている。
一方、環境価値取引サーバ5は、取引ガイドライン情報40、環境価値受渡協定情報41、環境価値単価管理テーブル42及び為替レート管理テーブル43と、環境価値アグリゲーション部72、売り注文出力部73、マッチング方法設定部74、マッチング部75、環境価値クリア部76、環境価値送付部77、収益確保部78及び通貨変換部79とを備えて構成される。
取引ガイドライン情報40は、環境価値集約サーバ4の環境価値集約テーブル23に登録された各環境価値を売買するための予め定められたガイドライン(取引ガイドライン)の情報であり、図5に示すように、項目欄40A及び要件欄40Bを備えたテーブル構造を有する。図5では、テーブル構造の1つの行が取引ガイドラインにおける1つの項目に対応する。
そして項目欄40Aには、取引ガイドラインの項目が格納され、要件欄40Bには、対応する項目に対する具体的な取り決めが格納される。従って、図5の例の場合、取引ガイドラインとして、「環境価値の売買取引の単位」が「1(MWh)」に定められ、取引可能な環境価値が、「太陽光発電又は風力発電」の「エネルギー種別」の再生可能エネルギーの創生により得られた環境価値に制限されていることが示されている。
また環境価値受渡協定情報41は、国や地域間等で締結された環境価値受渡協定に基づいて作成された、環境価値保有者が属する国/地域から環境価値を受渡可能な国/地域へのFrom-Toリストである。本実施の形態の場合、環境価値受渡協定情報41は、図6に示すように、環境価値を販売する国/地域が縦方向に並べられ、環境価値を購入する可能性がある国/地域が横方向に並べられた対戦表形式で構成されている。
従って、図6の例の場合、「A」、「B」及び「C」のいずれの国/地域も、「J」という国/地域及び「S」という国/地域に属する団体及び個人に対しては環境価値の販売を認めているものの、「T」という国/地域に属する団体及び個人に対しては環境価値の販売が認められていないことが示されている。
環境価値単価管理テーブル42は、環境価値受渡協定情報41において環境価値を購入する可能性がある国/地域として登録された各国/地域における環境価値の単価を管理するために利用されるテーブルであり、図7に示すように、国/地域欄42A及び環境価値単価欄42Bを備えて構成される。環境価値単価管理テーブル42では、1つの行が、環境価値受渡協定情報41において環境価値を購入する可能性がある国/地域として登録された1つの国/地域に対応する。
そして国/地域欄42Aには、対応する国/地域の識別情報が格納され、環境価値単価欄42Bには、その国/地域における環境価値の単価(1kWh当たりの料金)が格納される。従って、図7の例の場合、例えば、「J」という国/地域では、1(kWh)当たりの環境価値の単価が「1.5円」であり、「S」という国/地域では、1kWh当たりの環境価値の単価が「s Unit_S」であることが示されている。
また為替レート管理テーブル43は、1又は複数の他の国/地域との間で環境価値受渡協定を締結したある国/地域から、1又は複数の他の国/地域との間で環境価値受渡協定を締結した他の国/地域への為替レートを管理するために利用されるテーブルであり、図8に示すように、環境価値を販売する国/地域が縦方向に並べられ、環境価値を購入する可能性がある国/地域が横方向に並べられた対戦表形式で構成されている。
環境価値アグリゲーション部72は、環境価値取引サーバ5のCPU30(図1)がメモリ31(図1)に保持された環境価値アグリゲーションプログラム44(図1)を実行することにより具現化される機能部である。この環境価値アグリゲーション部72は、環境価値集約サーバ4(図1)の環境価値集約テーブル23(図4)に蓄積された環境価値を、取引ガイドライン情報に基づく取引ガイドラインの各項目の内容に従って図9に示すような環境価値パッケージ80にパッケージ化する機能を有する。なお、環境価値パッケージ80の構成は、環境価値集約テーブル23(図4)と同様であるため、ここでの詳細説明は省略する。
本実施の形態の場合、図5について上述したように、環境価値の売買取引の単位が「1MWh」であり、かつ取引可能な環境価値が、「太陽光発電又は風力発電」の「エネルギー種別」の再生可能エネルギーの創生により得られた環境価値と定められているため、環境価値アグリゲーション部72は、「太陽光発電又は風力発電」の「エネルギー種別」の再生可能エネルギーの創生により得られた環境価値であって、環境価値集約テーブル23に登録された未だパッケージ化されていない環境価値の合計量が「1MWh」以上となった場合に、これらの環境価値を「1MWh」単位でパッケージ化する。
売り注文出力部73は、環境価値取引サーバ5のCPU30がメモリ31に保持された売り注文出力プログラム45(図1)を実行することにより具現化される機能部である。この売り注文出力部73は、環境価値アグリゲーション部72によりパッケージ化された環境価値(つまり環境価値パッケージ80)を環境価値必要者に売り出すための売り注文を生成し、生成した売り注文を販売可能な環境価値必要者及びマッチング部75にそれぞれ出力する機能を有する。この際、売り注文出力部73は、環境価値パッケージ80の販売可能な国/地域については、環境価値受渡協定情報41を参照して決定する。また売り注文出力部73は、環境価値パッケージ80の販売価格については、環境価値単価管理テーブル42(図7)を参照して決定する。
マッチング部75は、環境価値取引サーバ5のCPU30がメモリ31に保持されたマッチングプログラム47(図1)を実行することにより具現化される機能部である。このマッチング部75は、売り注文出力部73から出力された売り注文に対して、後述のように環境価値必要者側端末6から与えられる買い注文をマッチングする機能を有する。マッチング部75は、「先着順」及び「購入価格が最高値」の2通りのマッチング方法のうち、ユーザにより予め設定されたいずれか一方のマッチング方法により売り注文及び買い注文をマッチングする。
マッチング方法設定部74は、環境価値取引サーバ5のCPU30がメモリ31に保持されたマッチング方法設定プログラム46(図1)を実行することにより具現化される機能部である。このマッチング方法設定部74は、例えば、図10に示すようなマッチング方法設定ダイアログ81を表示装置35(図1)に表示し、このマッチング方法設定ダイアログ81を用いてユーザにより設定されたマッチング方法(図10で「一番早く入札した入札者が落札」が選択された場合には先着順、「最高値で入札した入札者が落札」が選択された場合には購入価格が最高値)により売り注文及び買い注文をマッチングするようマッチング部75を設定する。
環境価値クリア部76は、環境価値取引サーバ5のCPU30がメモリ31に保持された環境価値クリアプログラム48(図1)を実行することにより具現化される機能部である。この環境価値クリア部76は、環境価値集約テーブル23(図4)に登録されている環境価値のうち、そのとき落札された環境価値パッケージ80に含まれるすべての環境価値の情報を当該環境価値集約テーブル23から消去するよう環境価値集約サーバ4(図2)に指示を与える機能を有する。環境価値集約サーバ4は、この指示に従って、指定された環境価値に関する情報を環境価値集約テーブル23から消去する。
環境価値送付部77は、環境価値取引サーバ5のCPU30がメモリ31に保持された環境価値送付プログラム49(図1)を実行することにより具現化される機能部である。この環境価値送付部77は、そのとき落札された環境価値パッケージ(以下、これを落札環境価値パッケージと呼ぶ)80の落札者である環境価値必要者(以下、これを落札環境価値必要者と呼ぶ)に対し、その落札環境価値パッケージ80を送付する機能を有する。
具体的に、環境価値送付部77は、その落札環境価値必要者の環境価値必要者側端末6(図2)が保持する図12について後述する確保価値管理テーブル65に登録されている電力消費量うち、環境価値が紐付けられていない電力消費量に対して、その落札環境価値パッケージ80に含まれる環境価値を紐付けるように確保価値管理テーブル65を更新する。また環境価値送付部77は、その落札環境価値パッケージ80の情報を通貨変換部79に送信すると共に、その落札環境価値パッケージ80の落札価格をその落札環境価値必要者側端末6に通知する。
収益確保部78は、環境価値取引サーバ5のCPU30がメモリ31に保持された収益確保プログラム50(図1)を実行することにより具現化される機能部である。この収益確保部78は、売り注文及び買い注文の約定後に落札環境価値必要者の環境価値必要者側端末6から支払われる対価の一部(例えば、対価の5%)を収益として確保する機能を有する。
また通貨変換部79は、環境価値取引サーバ5のCPU30がメモリ31に保持された通貨変換プログラム51(図1)を実行することにより具現化される機能部である。この通貨変換部79は、為替レート管理テーブル43(図8)を参照して、落札環境価値必要者から支払われた対価のうちの収益確保部78により収益が確保された後の残りの対価を、その落札環境価値必要者が落札した落札環境価値パッケージ80に含まれる各環境価値をそれぞれ保有していた元の環境価値保有者(以下、これを元環境価値保有者と呼ぶ)に支払う機能を有する。
この際、通貨変換部79は、収益が確保された後の対価を、落札環境価値パッケージ80に含まれる各環境価値の量に応じて按分し、按分後の対価をそれぞれ対応する元環境価値保有者が属する国の通貨に変換した上でこれらの元環境価値保有者に支払う。
他方、環境価値必要者側端末6は、調達基準情報64及び確保価値管理テーブル65と、買い判定部90、買い注文出力部91及び対価支払い部92とを備えて構成される。
調達基準情報64は、例えば図11に示すように、不足分の環境価値の調達期限までの残り日数に対する環境価値の調達単価と、一度に調達可能な調達価格の上限値とを含む情報である。不足分の環境価値の調達期限は、公に定められた期限であっても、また環境価値必要者が独自に定めた期限であってもよい。
例えば、調達基準情報64の内容が図11に示すものであった場合、不足分の環境価値を確保する期限までの残り日数が15日よりも多い場合には、消費電力に紐付ける環境価値を調達する際の調達単価は1.3(円/kWh)が上限であり、かかる残り日数が15日以下である場合には、消費電力に紐付ける環境価値を調達する際の調達単価は2.0(円/kWh)が上限となる。また一度の調達額の上限は、3(万円/MWh)となる。
確保価値管理テーブル65は、対応する環境価値必要者のこれまでの消費電力量の実績と、これらの消費電力量に紐付けられた環境価値の確保量及び不足量と、不足している環境価値の確保期限とを管理するために利用されるテーブルである。この確保価値管理テーブル65は、図12(A)に示すように、電力消費実績欄65A及び環境価値情報欄65Bを備えて構成される。確保価値管理テーブル65では、1つの行の過去の所定期間における消費電力量の実績等の情報に対応する。
電力消費実績欄65Aは、期間欄65AA及び消費量欄65ABに区分されている。そして期間欄65AAには、対応する過去の期間が格納され、消費量欄65ABには、対応する環境価値必要者がその期間内に消費した電力量が格納される。また環境価値情報欄65Bは、確保量欄65BA、不足量欄65BB及び確保期限欄65BCに区分されている。そして確保量欄65BAには、対応する期間内に対応する環境価値必要者が確保した環境価値(つまり、消費電力に紐付けられた環境価値)の量が格納され、不足量欄65BBに、その期間内に不足した環境価値の量が格納される。また確保期限欄65BCには、対応する期間において不足した環境価値を確保すべき期限が格納される。
従って、図12(A)の例の場合、例えば「20200215-20200229」の期間では、対応する環境価値必要者は「800」(kWh)を消費しており、その期間にその環境価値必要者が確保した環境価値は「800」(kWh)、であり、その期間における環境価値の不足分は「0」(kWh)で、その不足分の環境価値を「20200401」までに確保すべきことが示されている。ただし、この期間については、既に環境価値の確保が完了して環境価値の不足分が「0」(kWh)であるため、確保すべき環境価値はない。
なお確保価値管理テーブル65は、対応する環境価値必要者による環境価値の調達状況に応じて、上述のように環境価値取引サーバ5の環境価値送付部77により適宜更新される。例えば、ある環境価値必要者の環境価値必要者側端末6に保持されている確保価値管理テーブル65が図12(A)のような状態であり、この状態からその環境価値必要者が1000(kWh)分の環境価値パッケージ80を購入した場合、環境価値送付部77は、図12(B)に示すように、環境価値が紐付けられていない消費電量のうちの確保期限がより近い消費電力に対してそのとき購入された環境価値パッケージ80内の環境価値を順番に紐付けていくように確保価値管理テーブル65を更新する。
買い判定部90は、環境価値必要者側端末6のCPU60(図1)がメモリ61(図1)に保持された買い判定プログラム66(図1)を実行することにより具現化される機能部である。この買い判定部90は、調達基準情報64及び確保価値管理テーブル65を参照して、必要な環境価値を購入可能な場合に購入することを決定する機能を有する。
実際上、買い判定部90は、確保価値管理テーブル65を参照して、調達する必要がある環境価値の量及び調達期限を確認すると共に、調達基準情報64を参照して、環境価値の調達期限までの残り日数に対する調達単価の上限値や、調達価格そのものの上限値を確認する。そして買い判定部90は、これらの確認結果に基づいて、必要かつ購入可能な環境価値パッケージ80(図9)を買い注文すべきことを決定し、決定結果を買い注文出力部91に通知する。
買い注文出力部91は、環境価値必要者側端末6のCPU60がメモリ61に保持された買い注文出力プログラム67(図1)を実行することにより具現化される機能部である。この買い注文出力部91は、買い判定部90からの通知に基づいて、要求された量の環境価値パッケージ80を購入するための買い注文を環境価値取引サーバ5に出力する。
また対価支払い部92は、環境価値必要者側端末6のCPU60がメモリ61に保持された対価支払いプログラム68(図1)を実行することにより具現化される機能部である。この対価支払い部92は、上述のように環境価値取引サーバ5の環境価値送付部77から通知された支払い額を環境価値取引サーバ5に送金する機能を有する。そして、この対価支払い部92により支払われた環境価値パッケージ80の対価が上述のように環境価値取引サーバ5の収益確保部78に与えられる。
さらに環境価値保有者側端末3は、対価受領部93を備えて構成される。対価受領部93は、環境価値保有者側端末3(図1)のCPU10(図1)がメモリ11(図1)に保持された対価受領プログラム14(図1)を実行することにより具現化される機能部である。この対価受領部93は、上述のように環境価値取引サーバ5の通貨変換部79から送信されてきた対価を受領する機能を有する。
(1-2)各機能部の処理
次に、環境価値の取引に関連して環境価値取引サーバ5及び環境価値必要者側端末6の各機能部において実行される各処理の具体的な内容について説明する。なお、以下においては、各処理の処理主体を機能部として説明するが、実際上、その機能部に対応するプログラムに基づいて環境価値取引サーバ5、環境価値必要者側端末6又は環境価値保有者側端末3のCPU30,60,10がその処理を実行することは言うまでもない。
(1-2-1)第1の環境価値アグリゲーション処理
図13は、環境価値取引サーバ5の環境価値アグリゲーション部72(図2)により定期的に実行される第1の環境価値アグリゲーション処理の処理手順を示す。環境価値アグリゲーション部72は、この図13に示す処理手順に従って、可能な場合に環境価値パッケージ80(図9)を生成する。
実際上、環境価値アグリゲーション部72は、この図13に示す第1の環境価値アグリゲーション処理を開始すると、まず、環境価値集約サーバ4から環境価値集約テーブル23のデータを取得する(S1)。また環境価値アグリゲーション部72は、取引ガイドライン情報40(図5)から環境価値の取引単位を取得する(S2)。
続いて、環境価値アグリゲーション部72は、環境価値の積算値Tの値を初期化(「0」にセット)し(S3)、この後、ステップS1でデータを取得した環境価値集約テーブル23のレコードの中からステップS5以降が未処理のレコードを1つ選択する(S4)。
次いで、環境価値アグリゲーション部72は、ステップS4で選択したレコード(以下、図13の説明においてこれを選択レコードと呼ぶ)に対応する環境価値が取引ガイドライン情報40に基づき認識される取引ガイドラインに合致した環境価値であるか否かを判断する(S5)。
例えば、図5の例の場合、取引対象の環境価値が「太陽光発電又は風力発電」の再生可能エネルギーの発電方法により発電されたときに得られたものであることが要件とされているため、環境価値アグリゲーション部72は、このステップS5において、選択レコードに対応する環境価値のエネルギー種別が「太陽光発電又は風力発電」であるか否かを判断することになる。
環境価値アグリゲーション部72は、ステップS5の判断で否定結果を得ると、環境価値集約テーブル23のレコードにステップS5以降が未処理のレコードがあるか否かを判断する(S6)。そして環境価値アグリゲーション部72は、この判断で否定結果を得ると、この第1の環境価値アグリゲーション処理を終了する。
これに対して、環境価値アグリゲーション部72は、ステップS6の判断で肯定結果を得るとステップS4に戻り、この後、ステップS4で選択するレコードをステップS5以降が未処理の他のレコードに順次切り替えながら、ステップS4以降を上述又は後述のように実行する。
一方、環境価値アグリゲーション部72は、ステップS5の判断で肯定結果を得ると、選択レコードに対応する環境価値の値(図4における選択レコードの環境価値欄23Cに格納された値)を積算値Tに加算し(S7)、この後、積算値Tの値がステップS2で取得した取引単位に到達したか否かを判断する(S8)。
そして環境価値アグリゲーション部72は、この判断で否定結果を得ると、ステップS6に進み、ステップS6以降を上述又は後述と同様に実行する。また環境価値アグリゲーション部72は、ステップS8の判断で肯定結果を得ると、今回、積算値Tが取引単位に到達するまで値を加算した各環境価値をパッケージ化して環境価値パッケージ80(図9)を作成する(S9)。
次いで、環境価値アグリゲーション部72は、環境価値集約テーブル23のレコードにステップS5以降が未処理のレコードがあるか否かを判断する(S10)。そして環境価値アグリゲーション部72は、この判断で肯定結果を得るとステップS3に戻り、この後、ステップS3以降の処理を上述と同様に繰り返す。この繰返し処理により、作成可能な数の環境価値パッケージ80が順次作成されていくことになる。
そして環境価値アグリゲーション部72は、やがて作成可能な分の環境価値パッケージ80を作成し終えることによりステップS10で否定結果を得ると、この第1の環境価値アグリゲーション処理を終了する。
(1-2-2)第1の売り注文出力処理
図14は、環境価値取引サーバ5の売り注文出力部73(図2)により実行される第1の売り注文出力処理の処理手順を示す。売り注文出力部73は、上述のようにして環境価値アグリゲーション部72により環境価値パッケージ80が作成されると、この図14に示す処理手順に従って、当該環境価値パッケージ80の売り注文を生成し、生成した売り注文を販売可能な環境価値必要者やマッチング部75(図2)に送信する。
実際上、売り注文出力部73は、環境価値アグリゲーション部72により環境価値パッケージ80が作成されると、この図14に示す第1の売り注文出力処理を開始し、まず、そのとき作成された環境価値パッケージ80の中からステップS21以降が未処理の環境価値パッケージ80を1つ選択する(S20)。
続いて、売り注文出力部73は、ステップS20で選択した環境価値パッケージ(以下、これを選択環境価値パッケージと呼ぶ)80内の各環境価値をそれぞれ保有する各環境価値保有者の所属国/地域を、図13について上述した第1の環境価値アグリゲーション処理のステップS1でデータを取得した環境価値集約テーブル23からそれぞれ取得する(S21)。
次いで、売り注文出力部73は、ステップS21で取得した各所属国/地域が環境価値を販売可能な国/地域をそれぞれ環境価値受渡協定情報41(図6)から取得し、取得した情報に基づいて、選択環境価値パッケージ80を販売可能な国/地域を確認する(S22)。
例えば、図6の例において、選択環境価値パッケージ80に含まれる各環境価値の環境価値保有者が3人おり、これら3人が所属する国/地域がそれぞれ「A」、「B」、「C」であった場合、これら「A」、「B」及び「C」はいずれも「J」及び「S」に環境価値を販売することが認めているため、ステップS22において、選択環境価値パッケージ80を販売可能な国/地域(以下、これを販売可能国/地域と呼ぶ)が「J」及び「S」であることが確認される。
続いて、売り注文出力部73は、ステップS22で確認した選択環境価値パッケージ80の販売可能国/地域の中から1つの販売可能国/地域を選択し(S23)、選択した販売可能国/地域(以下、これを選択販売可能国/地域と呼ぶ)の環境価値の単価を環境価値単価管理テーブル42(図7)から取得する(S24)。
次いで、売り注文出力部73は、次式
により、選択環境価値パッケージ80の販売価格を算出する(S25)。
例えば、図7の例で選択販売可能国/地域のが「J」という国/地域であった場合、「J」の環境価値の単価は1.5(円/kWh)であるため、選択環境価値パッケージ80内の電力価値の合計量が1(MWh)であった場合には、「J」という国/地域の環境価値必要者に対する選択環境価値パッケージの販売価格が次式
のように1500円として算出されることになる。
この後、売り注文出力部73は、選択環境価値パッケージ80に含まれる環境価値の量、これら環境価値が創生された国/地域、及び、これら環境価値のエネルギー種別、並びに、ステップS25で算出した選択環境価値パッケージ80の販売価格を含む売り注文を、選択販売可能国/地域の各環境価値必要者にそれぞれ送信する(S26)。
続いて、売り注文出力部73は、ステップS22で確認したすべての販売可能国/地域についてステップS24以降の処理を実行し終えたか否かを判断する(S27)。そして売り注文出力部73は、この判断で否定結果を得るとステップS23に戻り、この後、ステップS23で選択する販売可能国/地域をステップS24以降が未処理の他の販売可能国/地域に順次切り替えながらステップS23~ステップS27の処理を繰り返す。この繰返し処理により、選択環境価値パッケージ80のすべての販売可能国/地域の各環境価値必要者に対してかかる売り注文が送信される。
そして売り注文出力部73は、やがて選択環境価値パッケージ80のすべての販売可能国/地域の各環境価値必要者に対して上述の売り注文を送信し終えることによりステップS27で肯定結果を得ると、そのとき環境価値アグリゲーション部72により作成されたすべての環境価値パッケージ80についてステップS21以降の処理を実行し終えたか否かを判断する(S28)。
そして売り注文出力部73は、この判断で否定結果を得るとステップS20に戻り、この後、ステップS20で選択する環境価値パッケージ80をステップS22以降が未処理の他の環境価値パッケージ80に順次切り替えながらステップS20~ステップS28の処理を繰り返す。この繰返し処理により、そのとき環境価値アグリゲーション部72により作成されたすべての環境価値パッケージ80について、その販売可能国/地域の各環境価値必要者に対して上述の売り注文が送信される。
そして売り注文出力部73は、やがて上述のすべての環境価値パッケージ80に関する上述の売り注文の送信が完了することによりステップS28で肯定結果を得ると、この第1の売り注文出力処理を終了する。
(1-2-3)第1の買い判定処理
図15は、環境価値必要者側端末6(図2)の買い判定部90(図2)により実行される第1の買い判定処理の処理手順を示す。買い判定部90は、環境価値取引サーバ5から上述の売り注文が与えられると、この図15に示す処理手順に従って、受信した売り注文に対する買い注文を行うか否かを判定する。
実際上、買い判定部90は、かかる売り注文を受信するとこの図15に示す第1の買い判定処理を開始し、まず、図11について上述した調達基準情報64を参照して、調達期限までの日数に対する環境価値の調達単価及び一度の調達額の上限値を確認する(S30)。また買い判定部90は、確保価値管理テーブル65(図12)を参照して、現在調達すべき環境価値の量及びその調達期限を確認する(S31)。
次いで、買い判定部90は、図16について後述する支払い可能額算出処理を実行することにより、そのとき必要としている環境価値に対する支払い可能額を算出する(S32)。そして、買い判定部90は、ステップS32で算出した支払い可能額が売り注文において指定された販売対象の環境価値パッケージ80の販売価格よりも大きいか否かを判断する(S33)。
この判断で否定結果を得ることは、販売対象の環境価値パッケージ80の販売価格が予算よりも高いことを意味する。かくして、このとき買い判定部90は、この第1の買い判定処理を終了する。従って、この場合、かかる売り注文に対する買い注文は行われない。
これに対して、ステップS33の判定で肯定結果を得ることは、販売対象の環境価値パッケージ80の販売価格が予算よりも低いことを意味する。かくして、このとき買い判定部90は、買い注文出力部91に買い注文の出力を指示し(S34)、この後、この第1の買い判定処理を終了する。
なお、ステップS32における買い判定部90の具体的な処理内容を図16に示す。買い判定部90は、第1の買い判定処理のステップS32に進むとこの図16に示す支払い可能額算出処理を開始し、まず、受信した売り注文通知を参照して、そのとき販売対象となっている環境価値パッケージ(以下、これを販売対象環境価値パッケージと呼ぶ)80に含まれる環境価値の量及び販売対象環境価値パッケージ80の販売価格を確認する(S40)。
続いて、買い判定部90は、確保価値管理テーブル65のレコードのうち、ステップS42以降が未処理で、かつ現時点から確保期限が最も近いレコードを1つ選択し(S41)、選択したレコード(以下、図16の説明においてこれを選択レコードと呼ぶ)において環境価値の不足分が「0」よりも大きいか否か(選択レコードの不足量欄65BB(図12(A))に格納されている数値が「0」よりも大きいか否か)を判断する(S42)。そして買い判定部90は、この判断で否定結果を得るとステップS46に進む。
これに対して、買い判定部90は、ステップS42の判断で肯定結果を得ると、販売対象環境価値パッケージ80から選択レコードの環境価値の不足量と同量の環境価値を割り当てる(S43)。
例えば、図12(A)の例の場合、選択レコードが「20200301-20200315」の期間のレコードであり、販売対象環境価値パッケージ80における環境価値の全量が「1MWh」である場合には、この「1MWh」の中から選択レコードにおける環境価値の不足量である「300」(kWh)を割り当てる。
また買い判定部90は、後述のようにステップS41~ステップS46を繰返し処理する際に、そのとき販売対象環境価値パッケージ80における環境価値の残量が、そのときの選択レコードにおける環境価値の不足量よりも少ない場合には、その残量すべてを選択レコードにおける環境価値の不足量に割り当てる。
例えば、図12(A)の例において、選択レコードが「20200316-20200331」の期間のレコードである場合には、売り対象環境価値パッケージにおける環境価値の全量の「1MWh」から、既に「20200301-20200315」の期間のレコードにおける不足分の環境価値と同様の環境価値が「20200301-20200315」の期間のレコードに割り当てているため、選択レコードにおける環境価値の不足量の「800」(kWh)に対してかかる対象環境価値パッケージにおける環境価値の残量は「700」(kWh)しかない。そこで、このような場合には、買い判定部90は、図12(B)のように販売対象環境価値パッケージ80における環境価値の全残量(「700」(kWh))を選択レコード(「20200316-20200331」の期間のレコード)における環境価値の不足量に割り当てる。
続いて、買い判定部90は、図15のステップS30で取得した調達基準情報64に基づいて、直前のステップS43で選択レコードの不足量分に割り当てた環境価値の調達価格を算出する(S44)。
例えば、本日が「20200401」であるとして、選択レコードが「20200301-20200315」の期間のレコードである場合、調達期限までの残り日数が14日であるため、図11の例では環境価値の調達単価は「2.0」(円/kWh)となる。また「20200301-20200315」の期間のレコードにおける環境価値の不足量は「300」(kWh)である。よって、このときの環境価値の調達価格PRは、次式
のように「600(円)」として算出される。
これに対して、図12(A)の例において、選択レコードが「20200316-20200331」の期間のレコードである場合、調達期限までの残り日数が30日であるため、図11の例では環境価値の調達単価は「1.3」(円/kWh)となる。また、この場合には、「20200301-20200315」の期間のレコードにおける環境価値の不足量「300」(kWh)に対して既に同量の環境価値が販売対象環境価値パッケージ80から割り当てられているため、選択レコードに割り当てられる環境価値は、不足量の「800」(kWh)に対して販売対象環境価値パッケージ80の全残量の「700」(kWh)になる。よって、このとき環境価値の調達価格PRは、次式
のように「910(円)」として算出される。
次いで、買い判定部90は、販売対象環境価値パッケージ80における環境価値の残量が0となったか否かを判断する(S45)。そして買い判定部90は、この判断で肯定結果を得ると確保価値管理テーブル65のすべてのレコードについてステップS42以降の処理を実行し終えたか否かを判断する(S46)。
そして買い判定部90は、この判断で否定結果を得るとステップS41に戻り、この後、ステップS41で選択するレコードをステップS42以降が未処理の他のレコードに順次切り替えながらステップS41~ステップS46の処理を繰り返す。この繰返し処理により、販売対象環境価値パッケージ80内の環境価値がなくなるまで、確保価値管理テーブル65の各レコードに対して不足量分の環境価値が販売対象環境価値パッケージ80から順次割り当てられることになる。
そして買い判定部90は、やがて販売対象環境価値パッケージ80内の環境価値をすべて確保価値管理テーブル65における環境価値が不足している各レコードに割り当て終え、又は、確保価値管理テーブル65のすべてのレコードについてステップS42以降の処理を実行し終えることによりステップS45又はステップS46で肯定結果を得ると、それまでにステップS44でそれぞれ算出した確保価値管理テーブル65の各レコードにおける不足量分の環境価値の調達価格を合算した値を支払い可能額として算出する(S47)。例えば、上述の例の場合、「600(円)」と「910(円)」とを合算した値である1510(円)を支払い可能額として算出する。
続いて、買い判定部90は、ステップS47で算出した支払い可能額が、図15のステップS30で取得した調達基準情報64に基づき認識される一度の調達額の上限(以下、これを調達上限額と呼ぶ)よりも大きいか否かを判断する(S48)。そして、買い判定部90は、この判断で否定結果を得ると、この支払い可能額算出処理を終了して図15の第1の買い判定処理に戻る。
これに対して、買い判定部90は、ステップS48の判断で肯定結果を得ると、支払い可能価格を調達上限額に書き換え(S49)、この後、この支払い可能額算出処理を終了して図15の第1の買い判定処理に戻る。
(1-2-4)第1のマッチング処理
図17は、環境価値取引サーバ5のマッチング部75(図2)により実行される第1のマッチング処理の処理手順を示す。マッチング部75は、売り注文出力部73(図2)から環境価値パッケージ80の売り注文が与えられると、この図17に示す処理手順に従って、その環境価値パッケージ80の売り注文と、その環境価値パッケージ80の買い注文とをマッチングする。
実際上、マッチング部75は、売り注文出力部73から環境価値パッケージ80の売り注文が与えられると、この図17に示す第1のマッチング処理を開始し、まず、その売り注文の内容を確認する(S50)。具体的に、マッチング部75は、売り注文の対象となる環境価値パッケージ(販売対象環境価値パッケージ)80に含まれる環境価値の合計量と、その販売対象環境価値パッケージ80の販売価格とを確認する。
続いて、マッチング部75は、環境価値必要者側端末6からの買い注文を一定期間受け付ける(S51)。そしてマッチング部75は、かかる一定期間が経過すると、マッチング方法設定部74(図2)により設定されたマッチング方法が「先着順」であったか否かを判断する(S52)。
そしてマッチング部75は、この判断で肯定結果を得ると、ステップS51の一定期間内に受信した買い注文の送信元の環境価値必要者側端末6に対応する環境価値必要者をその販売対象環境価値パッケージ80の落札者に決定する(S53)。
またマッチング部75は、ステップS52の判断で否定結果を得ると、ステップS51の一定期間内に受信した買い注文のうち、購入価格が最高値の買い注文の送信元の環境価値必要者側端末6に対応する環境価値必要者をその販売対象環境価値パッケージ80の落札者に決定する(S54)。
そしてマッチング部75は、この後、そのとき落札された販売対象環境価値パッケージ(落札環境価値パッケージ)80のデータを環境価値クリア部76(図2)に送信すると共に、落札環境価値パッケージ80のデータと、当該落札環境価値パッケージ80の落札者及び落札金額とを環境価値送付部77(図2)に通知する(S55)。そしてマッチング部75は、この後、この第1のマッチング処理を終了する。
(1-2-5)環境価値クリア処理
図18は、環境価値取引サーバ5の環境価値クリア部76(図2)により実行される環境価値クリア処理の処理手順を示す。環境価値クリア部76は、この図18に示す処理手順に従って、図17のステップS55でマッチング部75からデータが送信されてきた落札環境価値パッケージ)80に含まれる各環境価値の情報を、環境価値集約サーバ4(図2)が保持する環境価値集約テーブル23(図4)から消去する。
実際上、環境価値クリア部76は、落札環境価値パッケージ80のデータがマッチング部75から送信されてくるとこの図18に示す環境価値クリア処理を開始し、まず、データが送信されてきた落札環境価値パッケージ80の各レコード(図9の各行)のうち、ステップS61以降が未処理のレコードを1つ選択する(S60)。
続いて、環境価値クリア部76は、環境価値集約サーバ4に保持された環境価値集約テーブル23の各レコードのうち、ステップS60で選択した落札環境価値パッケージ80のレコードに対応するレコードを環境価値集約テーブル23から消去する(S61)。
次いで、環境価値クリア部76は、落札環境価値パッケージ80のすべてのレコードについてステップS61の処理を実行し終えたか否かを判断する(S62)。そして環境価値クリア部76は、この判断で否定結果を得るとステップS60に戻り、この後、ステップS60で選択するレコードを落札環境価値パッケージ80におけるステップS61以降が未処理の他のレコードに順次切り替えながらステップS60~ステップS62の処理を繰り返す。この繰返し処理により、環境価値集約テーブル23の各レコードのうち、落札環境価値パッケージ80の各レコードにそれぞれ対応するレコードが順次環境価値集約テーブル23から消去される。
そして環境価値クリア部76は、やがて落札環境価値パッケージ80の各レコードにそれぞれ対応する環境価値集約テーブル23のレコードをすべて消去し終えることによりステップS62で肯定結果を得ると、この環境価値クリア処理を終了する。
(1-2-6)環境価値送付処理
図19は、環境価値取引サーバ5の環境価値送付部77(図2)により実行される環境価値送付処理の処理手順を示す。環境価値送付部77は、この図19に示す処理手順に従って、落札環境価値パッケージ80のデータを落札環境価値必要者に送付等する。
実際上、環境価値送付部77は、マッチング部75から落札環境価値パッケージ80のデータと、当該落札環境価値パッケージ80の落札者及び落札金額とが与えられると、この図19に示す環境価値送付処理を開始し、まず、そのときその落札環境価値パッケージ80を落札した落札環境価値必要者を確認する(S70)。
続いて、環境価値送付部77は、その落札環境価値必要者の環境価値必要者側端末6にアクセスし当該環境価値必要者側端末6が保持する確保価値管理テーブル65(図12)を更新する(S71)。
具体的に、環境価値送付部77は、その確保価値管理テーブル65の各レコードのうち、環境価値が不足しているレコードであって、確保期間が最も近いレコードから順番に不足量分の環境価値をそれぞれ割り当て、そのレコードの不足量欄の値を「0」に更新する。また環境価値送付部77は、不足量分をすべて割り当てられなかったレコードについてはその不足量欄65BB(図12(A))に格納されている値から割り当てられた環境価値の量を差し引いた値に更新する。
また環境価値送付部77は、かかる確保価値管理テーブル65の更新と併せて、落札環境価値パッケージ80のデータ(図9)を環境価値取引サーバ5の通貨変換部79(図2)に送信すると共に、当該落札環境価値パッケージ80の購入価格を落札環境価値必要者の環境価値必要者側端末6の対価支払い部92(図2)に通知する(S72)。
そして環境価値送付部77は、上述のようにして確保価値管理テーブル65を更新等し終えると、この環境価値送付処理を終了する。
(1-2-7)対価支払い処理
図20は、落札環境価値パッケージ80を落札した落札環境価値必要者が所有する環境価値必要者側端末6の対価支払い部92により実行される対価支払い処理の処理手順を示す。対価支払い部92は、この図20に示す処理手順に従って、落札した環境価値パッケージ(落札環境価値パッケージ)80の対価を環境価値取引サーバ5に支払う。
実際上、対価支払い部92は、環境価値送付部77から上述のように対応する落札環境価値パッケージ80の購入価格が通知されるとこの図20に示す対価支払い処理を開始し、通知された購入価格分の対価を環境価値取引サーバ5の収益確保部78に支払う(S80)。なお、かかる対価の支払いは、電子マネーやビットコインなどを送付することにより行うようにしてもよい。ただし、環境価値取引サーバ5に対価を直接送付するものではなく、指定金融機関の指定口座にかかる対価分の金額を振り込むようにしてもよい。そして対価支払い部92は、この後、この対価支払い処理を終了する。
(1-2-8)収益確保処理
図21は、環境価値取引サーバ5の収益確保部78(図2)により実行される収益確保処理の処理手順を示す。収益確保部78は、この図21に示す処理手順に従って、落札環境価値必要者から支払われた落札環境価値パッケージ80の対価から環境価値取引サーバ5を運用する事業者の収益を確保する。
実際上、収益確保部78は、落札環境価値パッケージ80を落札した環境価値必要者(落札環境価値必要者)が所有する環境価値必要者側端末6から対価が送金されてくると、この図21に示す収益確保処理を開始し、まず、落札環境価値必要者の環境価値必要者側端末6から送金されてきた対価から、かかる落札環境価値パッケージ80の購入価格に対する一定割合(例えば5%)を環境価値取引サーバ5を運用する事業者の収益として減額する(S90)。
続いて、収益確保部78は、落札環境価値パッケージ80の対価から上述の収益を差し引いた残りの額を通貨変換部79に通知する(S91)。従って、例えば、かかる落札環境価値必要者側端末6から送金されてきた対価の額が1510円であり、環境価値取引サーバ5を運用する事業者が得る収益が5%である場合、当該事象者が得る収益は75.5円となるため、75.5円の少数以下を切り捨てた75円を1510円から差し引いた残りの1435円が通貨変換部79に通知されることになる。そして収益確保部78は、この後、この収益確保処理を終了する。
(1-2-9)通貨変換処理
図22は、環境価値取引サーバ5の通貨変換部79により実行される通貨変換処理の処理手順を示す。収益確保部78は、この図22に示す処理手順に従って、落札環境価値必要者から支払われた落札環境価値パッケージ80の対価から環境価値取引サーバ5を運用する事業者の収益を確保した後の残りの対価を、その落札環境価値パッケージ80に含まれる各環境価値の元環境価値保有者に按分して送金する。
実際上、通貨変換部79は、収益確保部78から落札環境価値パッケージ80の対価から収益を確保した後の残りの対価の額が通知されるとこの図22に示す通貨変換処理を開始し、まず、落札環境価値パッケージ80のレコード(図9の1行)のうち、ステップS101以降が未処理のレコードを1つ選択する(S100)。
続いて、通貨変換部79は、ステップS101で選択したレコード(以下、図22の説明においてこれを選択レコードと呼ぶ)に対応する環境価値の元環境価値保有者に対して支払うべき対価を、次式
により算出する。なお、(5)式において、「該当環境価値」とは、選択レコードに対応する環境価値を指す。
次いで通貨変換部79は、落札環境価値パッケージ80のデータを参照して、選択レコードに対応する環境価値の元環境価値保有者が所属する国/地域を取得すると共に、為替レート管理テーブル43(図8)を参照して、その国/地域への為替レートを取得する(S102)。
そして通貨変換部79は、ステップS102で取得した為替レートに基づいて、ステップS101で算出したかかる元環境価値保有者に対して支払うべき対価を、当該元環境価値保有者が所属国/地域の通貨額に変換し(S103)、変換後の対価をその元環境価値保有者の環境価値保有者側端末3に送金する(S104)。かくして、この対価をその元環境価値保有者側端末3の対価受領部93(図2)が受領することになる。
続いて、通貨変換部79は、落札環境価値パッケージ80のすべてのレコードについてステップS101以降の処理を実行し終えたか否かを判断する(S105)。そして通貨変換部79は、この判断で否定結果を得るとステップS100に戻り、この後、ステップS100で選択するレコードをステップS101以降が未処理の他のレコードに順次切り替えながらステップS100~ステップS105の処理を繰り返す。この繰返し処理により、落札環境価値パッケージ80に含まれる各環境価値の元環境価値保有者に対する現地通貨での対価の支払いが行われる。
そして通貨変換部79は、やがて落札環境価値パッケージ80の各レコードにそれぞれ対応する環境価値の元環境価値保有者に対する対価の支払いを完了することによりステップS105で肯定結果を得ると、この通貨変換処理を終了する。
(1-3)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態の環境価値取引システム1によれば、各国/地域で創生された環境価値を環境価値集約サーバ4で集約し、パッケージ化して販売するため、国/地域又は環境価値保有者ごとに環境価値が取引可能な一定量だけ創生されるのを待つ必要がなく、その分、環境価値の販売を迅速化させることができる。かくするにつき、本環境価値取引システム1によれば、環境価値の創生から取引までの時間を短縮化させることができる。
(2)第2の実施の形態
(2-1)本実施の形態による環境価値取引システムの構成
図1との対応部分に同一符号を付して示す図24は第2の実施の形態による環境価値取引システム100の構成を示す。この環境価値取引システム100は、第1の実施の形態による環境価値取引システムと同様の各種機能に加えて、環境価値取引サーバ101が、環境価値必要者からの要求に応じて、要求に応じた環境価値パッケージ80(図9)を作成してその環境価値パッケージ80をその環境価値必要者に提供する機能(以下、この機能を環境価値パッケージオンデマンド機能と呼ぶ)も搭載されている。
図25は、本実施の形態の環境価値取引システム100の論理構成を示す。本環境価値取引システム100は、かかる環境価値パッケージオンデマンド機能に関連して、環境価値必要者側端末102の補助記憶装置62(図24)に保持された調達基準情報110の内容が第1の実施の形態の調達基準情報64(図11)と異なる点と、環境価値必要者側端末102に調達基準出力部111が設けられている点とが第1の実施の形態による環境価値取引システムと大きく相違する。
また本実施の形態の環境価値取引システム100は、環境価値必要者側端末102の買い判定部112と、環境価値取引サーバ101の環境価値アグリゲーション部120、売り注文出力部121及びマッチング部122とに、それぞれ第1の実施の形態の対応する機能部が備える機能に加えて、かかる環境価値パッケージオンデマンド機能に応じた機能が追加されている点が第1の実施の形態による境価値取引システム1(図1)と相違する。
実際上、本実施の形態の場合、環境価値必要者側端末102の調達基準情報110には、環境価値を調達する際の基準として、図11について上述した情報(不足分の環境価値の調達期限までの残り日数に対する環境価値の調達単価、及び、一度に調達可能な調達価格の上限値)に加えて、その環境価値必要者側端末102を保有する環境価値必要者により予め設定された、そのとき環境価値パッケージオンデマンド機能を利用して取得しようとする環境価値の量と、その環境価値必要者が希望するその環境価値が創生された国/地域と、その環境価値必要者が希望するその環境価値のエネルギー種別との情報が含まれている。
また調達基準出力部111は、環境価値必要者側端末102のCPU60(図24)がメモリ61(図24)に格納された調達基準出力プログラム113を実行することにより具現化される機能部である。調達基準出力部111は、環境価値必要者による環境価値必要者側端末102に対する所定の操作入力に応じて、かかる調達基準情報110を参照して、必要な環境価値の量、その環境価値が創生された国/地域、及び、その環境価値のエネルギー種別を調達基準として指定した環境価値パッケージ80の販売要求(以下、これを環境価値パッケージ販売要求と呼ぶ)を環境価値取引サーバ101に送信する。
環境価値アグリゲーション部120は、環境価値取引サーバ101のCPU30(図24)がメモリ31(図24)に保持された環境価値アグリゲーションプログラム125(図24)を実行することにより具現化される機能部である。この環境価値アグリゲーション部120は、第1の実施の形態の環境価値アグリケーション部44(図2)と同様の機能に加えて、いずれかの環境価値必要者側端末102から上述の環境価値パッケージ販売要求が与えられた場合に、要求された調達基準を満たす環境価値パッケージ80を作成する機能を備える。
具体的に、環境価値アグリゲーション部120は、いずれかの環境価値必要者側端末102から環境価値パッケージ販売要求が与えられた場合、環境価値集約サーバ4にアクセスして、そのとき環境価値集約テーブル23に登録されている環境価値の中から環境価値パッケージ販売要求において指定された創生国/地域と、エネルギー種別とを満たす環境価値を組み合わせるようにして、環境価値パッケージ販売要求において指定された量の環境価値を含む環境価値パッケージ(以下、これをオンデマンド環境価値パッケージと呼ぶ)を作成する。
この際、環境価値アグリゲーション部120は、環境価値集約テーブル23に登録されている環境価値のうち、環境価値パッケージ販売要求において指定された創生国/地域やエネルギー種別の調達基準を満たし、かつ価格が最も安い環境価値から順番に選択するようにしてオンデマンド環境価値パッケージを作成する。
売り注文出力部121は、環境価値取引サーバ101のCPU30がメモリ31に保持された売り注文出力プログラム126(図24)を実行することにより具現化される機能部である。売り注文出力部121は、第1の実施の形態の売り注文部45(図2)と同様の機能に加えて、上述のように環境価値パッケージ販売要求に応答して環境価値アグリゲーション部120が作成したオンデマンド環境価値パッケージの売り注文を生成する機能を有する。この際、売り注文出力部121は、環境価値単価管理テーブル42(図7)を参照してかかるオンデマンド環境価値パッケージの販売価格を算出し、算出した販売価格に関する情報を含む売り注文を生成する。また売り注文出力部121は、このようにして生成した売り注文をマッチング部122と、かかる環境価値パッケージ販売要求の送信元の環境価値必要者側端末102とに出力する。
マッチング部122は、環境価値取引サーバ101のCPU30がメモリ31に保持されたマッチングプログラム127(図24)を実行することにより具現化される機能部である。マッチング部122は、第1の実施の形態のマッチング部47(図2)と同様の機能に加えて、上述のオンデマンド環境価値パッケージの売り注文に対する、かかる環境価値パッケージ販売要求の送信元の環境価値必要者側端末102からの買い注文を優先的にマッチングする機能を備える。
環境価値必要者側端末102の買い判定部112は、環境価値必要者側端末102のCPU60(図24)がメモリ61(図24)に保持された買い判定プログラム128(図24)を実行することにより具現化される機能部である。買い判定部112は、第1の実施の形態の買い判定部90(図2)と同様の機能に加えて、環境価値取引サーバ101の売り注文出力部121から与えられた売り注文に基づいて、かかるオンデマンド環境価値パッケージを購入するか否かを判定する機能を備える。実際上、買い判定部112は、かかる売り注文に基づき認識されるオンデマンド環境価値パッケージ80に含まれる環境価値の量が環境価値パッケージ販売要求で要求した量以上であり、かつ当該オンデマンド環境価値パッケージ80の販売価格が調達基準情報110で定められた調達基準を満たす場合にそのオンデマンド環境価値パッケージ80を購入すべきことを決定し、決定結果を買い注文出力部91に通知する。
この通知を受領した買い注文出力部91は、第1の実施の形態と同様に、かかるオンデマンド環境価値パッケージ80を購入するための買い注文を環境価値取引サーバ101に出力する。また、この買い注文を受信した環境取引サーバ101のマッチング部122は、上述のようにこの買い注文を上述のオンデマンド環境価値パッケージ80に優先的にマッチングする。これにより、かかるオンデマンド環境価値パッケージ80がかかる環境価値パッケージ販売要求の送信元の環境価値必要者側端末102を保有する環境価値必要者に優先的に販売される。
(2-2)各機能部の処理
次に、かかる環境価値パッケージオンデマンド機能に関連して環境価値取引サーバ101及び環境価値必要者側端末6の各機能部において実行される各処理の具体的な内容について説明する。以下においても、各処理の処理主体を機能部として説明するが、実際上は、その機能部に対応するプログラムに基づいて環境価値取引サーバ101のCPU30又は環境価値必要者側端末102のCPU60がその処理を実行することは言うまでもない。
(2-2-1)第2の環境価値アグリゲーション処理
図26は、いずれかの環境価値必要者側端末から上述の環境価値パッケージ販売要求が与えられた場合に環境価値取引サーバ101の環境価値アグリゲーション部120(図25)により実行される第2の環境価値アグリゲーション処理の処理手順を示す。環境価値アグリゲーション部120は、この図26に示す処理手順に従って、その環境価値パッケージ販売要求において指定された調達基準(必要な環境価値の量、その環境価値が創生された国/地域、及び、その環境価値のエネルギー種別)を満たすオンデマンド環境価値パッケージ80を作成する。
実際上、環境価値アグリゲーション部120は、かかる環境価値パッケージ販売要求がいずれかの環境価値必要者側端末101から与えられると、この図26に示す第2の環境価値アグリゲーション処理を開始し、まず、環境価値パッケージ販売要求において指定された調達基準を取得する(S110)。また環境価値アグリゲーション部120は、環境価値集約サーバ4から環境価値集約テーブル23のデータを取得する(S111)。
続いて、環境価値アグリゲーション部120は、環境価値の積算値Tの値を初期化(「0」にセット)し(S112)、この後、ステップS111でデータを取得した環境価値集約テーブル23のレコードの中からステップS114以降が未処理でかつ最安値のレコードを1つ選択する(S113)。
次いで、環境価値アグリゲーション部120は、ステップS113で選択したレコード(以下、図26の説明においてこれを選択レコードと呼ぶ)に対応する環境価値が、取引ガイドライン情報40に基づき認識される取引ガイドラインと、環境価値パッケージ販売要求において指定された調達基準とに合致した環境価値であるか否かを判断する(S114)。
そして環境価値アグリゲーション部120は、この判断で否定結果を得るとステップS113に戻り、この後、ステップS113で選択するレコードをステップS114以降が未処理でかつ最安値のレコードに順次切り替えながらステップS113以降の処理を実行する。
これに対して、環境価値アグリゲーション部120は、ステップS114の判断で肯定結果を得ると、選択レコードの環境価値の量(図4における選択レコードの環境価値欄23Cに格納された値)を積算値Tに加算し(S115)、この後、積算値Tの値が環境価値パッケージ販売要求において指定された必要な環境価値の量に到達したか否かを判断する(S116)。
そして環境価値アグリゲーション部120は、この判断で否定結果を得ると、ステップS113に戻り、ステップS113以降を上述又は後述と同様に実行する。また環境価値アグリゲーション部120は、やがてステップS116の判断で肯定結果を得ると、今回、積算値Tが取引単位に到達するまで値を加算した各環境価値をパッケージ化してオンデマンド環境価値パッケージ80を作成し(S117)、この後、この第2の環境価値アグリゲーション処理を終了する。
(2-2-2)第2の売り注文出力処理
図27は、環境価値取引サーバ101の売り注文出力部121(図25)により実行される第2の売り注文出力処理の処理手順を示す。売り注文出力部121は、環境価値アグリゲーション部120により上述のオンデマンド環境価値パッケージ80が作成されると、この図27に示す第2の売り注文出力処理を開始する。
そして売り注文出力部121は、まず、そのとき作成されたオンデマンド環境価値パッケージ80の販売価格を算出する(S120)。具体的に、売り注文出力部121は、オンデマンド環境価値パッケージ80に含まれる各環境価値の合計価格に手数料(例えば、数%)を加算した値をそのオンデマンド環境価値パッケージ80の販売価格として算出する。
続いて、売り注文出力部121は、オンデマンド環境価値パッケージ80に含まれる各環境価値の量、これら環境価値が創生された国/地域、及び、これら環境価値のエネルギー種別、並びに、ステップS120で算出した当該オンデマンド環境価値パッケージ80の販売価格を含む売り注文を生成し、生成した売り注文をマッチング部122と、環境価値パッケージ販売要求の送信元の環境価値必要者側端末102とに出力する(S121)。そして売り注文出力部121は、この後、この第2の売り注文出力処理を終了する。
(2-2-3)第2の買い判定処理
図28は、環境価値必要者側端末102(図25)の買い判定部112(図2)により実行される第2の買い判定処理の処理手順を示す。買い判定部112は、環境価値取引サーバ5から上述の売り注文が与えられると、この図28に示す処理手順に従って、当該売り注文として通知された売り注文に対する買い注文を行うか否かを判定する。
実際上、買い判定部112は、かかる売り注文を受信するとこの図28に示す第1の買い判定処理を開始し、まず、売り注文として通知された、対象とするオンデマンド環境価値パッケージ80に含まれる環境価値の量が環境価値パッケージ販売要求として環境価値取引サーバ101に通知した環境価値の量(注文量)よりも多いか否かを判断する(S130)。
そして買い判定部112は、この判断で否定結果を得ると、この第2の買い注文処理を終了する。従って、この場合には、かかる売り注文に対する買い注文が環境価値取引サーバ101に送信されないことになる。
これに対して、買い判定部112は、ステップS130の判断で肯定結果を得ると、調達基準情報110(図25)を参照して、かかるオンデマンド環境価値パッケージ80の販売価格が予め環境価値必要者により設定された支払い可能額未満であるか否かを判断する(S131)。そして、買い判定部112は、この判断で否定結果を得ると、この第2の買い判定処理を終了する。従って、この場合にも、かかる売り注文に対する買い注文が環境価値取引サーバ101に送信されないことになる。
これに対して、買い判定部112は、ステップS131の判断で肯定結果を得ると、買い注文出力部91に買い注文の出力を指示し(S132)、この後、この第2の買い判定処理を終了する。
なお、買い注文を行うか否かを環境価値必要者が判断するようにしてもよい。この場合には、売り注文として通知されたかかるオンデマンド環境価値パッケージ80の販売価格を環境価値必要者側端末102に表示させ、その表示を確認した環境価値必要者がそのオンデマンド環境価値パッケージ80を購入するか否かを判断して判断結果に応じた操作入力をその環境価値必要者側端末102に行うようにすればよい。
(2-2-4)第2のマッチング処理
図29は、環境価値取引サーバ101のマッチング部122(図25)により実行される第2のマッチング処理の処理手順を示す。マッチング部122は、売り注文出力部121(図25)から上述のオンデマンド環境価値パッケージ80の売り注文が与えられると、この図29に示す処理手順に従って、売り注文出力部121により生成されたそのオンデマンド環境価値パッケージ80の売り注文と、対応する環境価値パッケージ販売要求の送信元の環境価値必要者側端末102から与えられた買い注文とをマッチングする。
実際上、マッチング部122は、売り注文出力部121からオンデマンド環境価値パッケージ80の売り注文が与えられると、この図29に示す第2のマッチング処理を開始し、まず、その売り注文の内容を確認する(S140)。具体的に、マッチング部122は、売り注文の対象となるオンデマンド環境価値パッケージ80に含まれる環境価値の合計量と、そのオンデマンド環境価値パッケージ80の販売価格とを確認する。
続いて、マッチング部122は、かかる環境価値パッケージ販売要求の送信元の環境価値必要者側端末102からの買い注文が与えられたか否かを判断する(S141)。またマッチング部122は、この判断で否定結果を得ると、ステップS140の実行後、一定時間が経過したか否かを判断する(S142)。そしてマッチング部122は、この判断で否定結果を得るとステップS141に戻り、この後、ステップS141又はステップS142で肯定結果を得るまでステップS141-ステップS142-ステップS141のループを繰り返す。
そしてマッチング部122は、やがてかかる環境価値パッケージ販売要求の送信元の環境価値必要者側端末102からの買い注文が与えられることなく一定時間が経過することによりステップS142で肯定結果を得ると、売り注文出力部121にその旨を通知し(S143)、この後、この第2のマッチング処理を終了する。
なお、かかる通知を受領した売り注文出力部121は、図14について上述した第1の売り注文出力処理を実行することにより、そのとき販売対象としていたオンデマンド環境価値パッケージ80の売り注文を生成し、生成した売り注文を販売可能な環境価値必要者やマッチング部75(図2)に送信する。このように、かかる環境価値パッケージ販売要求の送信元の環境価値必要者側端末102からかかるオンデマンド環境価値パッケージ80に対する買い注文が発行されなかった場合には、かかるオンデマンド環境価値パッケージ80は通常の環境価値パッケージ80と同様に販売される。
これに対して、マッチング部122は、ステップS141の判断で肯定結果を得ると、かかる環境価値パッケージ販売要求の送信元の環境価値必要者側端末102に対応する環境価値必要者を、そのオンデマンド環境価値パッケージ80の落札者に決定する(S144)。
そしてマッチング部122は、この後、そのとき落札されたオンデマンド環境価値パッケージ80のデータを環境価値クリア部76(図25)に送信すると共に、そのオンデマンド環境価値パッケージ80のデータと、当該オンデマンド環境価値パッケージ80の落札者及び落札金額とを環境価値送付部77(図25)に通知する(S145)。そしてマッチング部122は、この後、この第2のマッチング処理を終了する。
なお、この場合には、この後、環境価値クリア部76や環境価値送付部77、収益確保部78(図25)及び通貨変換部79(図25)などにより第1の実施の形態と同様の処理が行われる。これによりそのオンデマンド環境価値パッケージ80の落札者(環境価値パッケージ販売要求の送信元の環境価値必要者側端末102に対応する環境価値必要者)からの販売料金の徴収や、オンデマンド環境価値パッケージ80に含まれていた環境価値の元の保有者への対価の支払いが行われることになる。
(2-3)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態の環境価値取引システム100では、環境価値取引サーバ101が、環境価値必要者からの要求に応じたオンデマンド環境価値パッケージ80を作成してその環境価値必要者に提供するため、環境価値必要者が必要時に必要な条件(調達基準)に合致した環境価値を取得することができる。従って、本環境価値取引システム100によれば、第1の実施の形態の環境価値取引システム1により得られる効果に加えて、環境価値必要者から見たシステムの利便性を格段的に向上させることができるという効果をも得ることができる。
(3)他の実施の形態
なお上述の第1及び第2の実施の形態においては、環境価値保有者端末3の保有価値管理テーブル15に新たな環境価値の情報が登録されるごとに、その情報をその環境価値保有者端末3が環境価値集約サーバ4に送信するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、環境価値集約サーバ4が定期的に各環境価値保有者端末3から保有価値管理テーブル15に新たに登録された環境価値を収集するようにしてもよい。
また上述の第1及び第2の実施の形態においては、環境価値を販売する環境価値販売者が環境価値保有者である場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、アグリゲータが一部又は全部の環境価値保有者がそれぞれ保有する環境価値を取り纏めて販売するようにしてもよい。この場合、かかる環境価値販売者は、取り纏め対象となる各環境価値保有者の環境価値保有者端末3から新たな環境価値の情報を収集し、これらの情報を環境価値集約サーバ4に送信するようにすればよい。
さらに上述の第1及び第2の実施の形態においては、環境価値パッケージ80の販売対象となる環境価値販売対象者が環境価値必要者である場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、アグリゲータ等の環境価値の販売仲介者が環境価値パッケージ80を購入し、これを環境価値必要者に再販するようにしてもよい。
さらに上述の第1及び第2の実施の形態においては、環境価値アグリゲーション部72が環境価値の元となる再生可能エネルギーのエネルギー種別を考慮することなく環境価値集約サーバ4の環境価値集約テーブル23に登録された未処理の環境価値をパッケージ化するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、環境価値アグリゲーション部72が、同一のエネルギー種別の再生可能エネルギーの創生により得られた環境価値のみを纏めてパッケージ化するようにしてもよい。
さらに上述の第1及び第2の実施の形態においては、環境価値保有者の販売希望金額等を考慮することなく環境価値パッケージ80(図9)を作成及び販売したり、環境価値必要者の要求を聞き受けることなく環境価値パッケージ80を作成及び販売するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、環境価値保有者の販売希望金額等を考慮して環境価値パッケージ80を作成及び販売したり、環境価値必要者が要求する環境価値パッケージ80を作成して販売するようにしてもよい。
この場合、例えば、図4との対応部分に同一符号を付した図23に示すように、環境価値集約サーバ4の環境価値集約テーブル23に日付欄23A、時間帯欄23B、環境価値欄23C、保有者欄23D、所属国/地域欄23E及びエネルギー種別欄23Fに加えて希望単価欄23Gを設け、この希望単価欄23Gにその環境価値の環境価値保有者が希望するその環境価値の単価を格納して管理するようにする。
そして、環境価値アグリゲーション部72が、環境価値集約テーブル23に登録されている環境価値を希望単価の安い順にソートして希望単価が安い順に買い注文分だけパッケージ化するようにすればよい。この際、例えば、環境価値必要者から要求されたエネルギー種別の再生可能エネルギーの創生により得られた環境価値のみを纏めてパッケージ化し、これをその環境価値必要者に販売するようにしてもよい。
さらに上述の第2の実施の形態においては、オンデマンド環境価値パッケージ80の作成を依頼する際、取得しようとする環境価値の量と、その環境価値必要者が希望するその環境価値が創生された国/地域と、その環境価値必要者が希望するその環境価値のエネルギー種別とを調達基準として指定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これらの一部又は他の条件を調達基準として指定するようにしてもよい。