JP7454019B2 - 半導体レーザ装置 - Google Patents

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Description

本発明は半導体レーザ装置に関し、特に詳細には、半導体レーザと、そこから出射した光ビームを整形する光学部材とをホルダーに固定してなる半導体レーザ装置に関するものである。
従来、例えば特許文献1に示されているように、半導体レーザ(レーザダイオード)と、そこから出射した光ビームを整形するコリメートレンズ等の光学部材とをホルダーに固定してなる半導体レーザ装置が公知となっている。この種の半導体レーザ装置においては、半導体レーザと取付基板との間に介設された温度一定化制御用ペルチェ素子が変形する等により、点光源である半導体レーザの位置が、光学部材の光軸からの距離を変えるように変動することが認められている。
そのような半導体レーザの位置変動が生じると、そこから出射された光ビームの進行方向が上記光軸に対して傾斜し、その傾斜の角度も変化して、結局は、半導体レーザ装置から出射する光ビームの進行方向(ビーム中心の進行方向)が変位する。なお特許文献1では、そのような光ビームの変位を、光学部材としてのコリメートレンズの光軸に対する「射出ビーム角θの変化」として扱っている(段落0009および図7参照)。こうした光ビームの変位が生じる半導体レーザ装置は、正確かつ経時的に安定した光ビームを必要とする計測用機器等には適用困難である、という問題が認められる。
また、半導体レーザと、そこから出射した光ビームを整形する光学部材とを共通の部材に保持してなる半導体レーザ装置については、特許文献2にも他の例が示されている。この特許文献2には、前述したような半導体レーザの位置変動が生じ得ることも示され(段落0006参照)、また、この位置変動が生じると、後段の光アイソレータの一部等によって光ビームがけられて、光ビーム利用装置に対する光結合効率が低下するといった問題を招くことも示されている(段落0003参照)。
特許文献2には、上記の問題を防止するための構成も示されている。その構成は、コリメートレンズの被設置面上に、コリメートレンズを保持する四角柱状のレンズ保持部材を設け、このレンズ保持部材に対してコリメートレンズを、レンズ光軸が四角柱の長さ方向と揃う状態に保持させ、このレンズ保持部材は4つの外側面がレンズ光軸からの距離が互いに異なる状態に形成したものである。
この構成においては、上記被設置面にレンズ保持部材を接着固定する際、レンズ保持部材の側面を4つの側面から選択して接着可能であるので、その選択次第で、半導体レーザから出射される光ビームの進行方向に対するレンズ光軸の位置ずれ(光軸に直交する方向の位置ずれ)を補償して、それらが一致する状態にすることができる。ただし、この作用効果を奏功できるのは、レンズ保持部材をキャリアの被設置面に接着固定する前の時点だけであり、この接着固定が既になされた完成状態の半導体レーザ装置では、装置使用に伴って増大するような上記位置ずれを補償することはできない。
完成状態の半導体レーザ装置においては、半導体レーザから出射された光ビームの進行方向が、特許文献1に示されるようにレンズ光軸に対して斜め方向に変位しても、あるいは特許文献2に示されるようにレンズ光軸と直交する方向に変位しても、それは半導体レーザ装置を利用している装置において、光ビームの位置が本来想定しているターゲット位置からずれてしまうことから種々の不具合を招くことになる。例えば、ターゲット位置にセットした試薬について各種観測を行う場合は、試薬の観測希望部位とは別の部位を観測してしまうことになる。また、ターゲット位置にセットした物質が発する蛍光を検出する蛍光分析や、ラマン散乱光を検出するラマン分光分析においては、蛍光やラマン散乱光の検出感度が変化して、分析精度が悪化するという不具合が生じる。
特許第2986242号公報 特開2010-232370号公報
特許文献1や2には、半導体レーザ装置において半導体レーザや光学部材を、あるいはそれらを筐体等に保持する部材を、ペルチェ素子等からなる温度調節手段を用いて所定温度に制御する技術もされている。このような技術は、半導体レーザと光学部材との相対位置関係が温度変化によって変わることを防止できるから、上述した種々の不具合を防止する上でも効果的なものであると言える。しかし、半導体レーザ装置内にペルチェ素子等の温度調節手段を組み込む場合は、ペルチェ素子等の他に、その駆動を制御するコントローラ等も必要になるので、半導体レーザ装置が大型化し、またそのコストも高くなってしまう。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、装置の大型化や著しいコスト増を招くことなく、半導体レーザから出射した光ビームの進行方向が変位することを防止できる半導体レーザ装置を提供することを目的とする。
本発明による半導体レーザ装置は、
半導体レーザと、
この半導体レーザから出射した光ビームをビーム整形する光学部材と、
前記半導体レーザおよび前記光学部材を固定したLDホルダーと、
前記LDホルダーを接着剤により固定したベース板と、
を備えてなる半導体レーザ装置において、
前記接着剤の中に、略均一形状のスペーサが複数分散されていることを特徴とするものである。
上記の構成において、半導体レーザや光学部材のLDホルダーへの固定は特に限定されるものではなく、接着剤による固定やネジ止め固定を適宜適用することができる。また、上記の「略均一形状」とは、大きさが略均一であることも含む概念である。
上記の構成において、スペーサとしてより具体的には、球状のビーズや、あるいは円柱状のファイバーを好適に用いることができる。上記ビーズの外径は、10μm~100μmの範囲にあることが望ましい。そのようなスペーサとしては、ガラスあるいはセラミックスからなるものを好適に用いることができる。
また上記接着剤としては、絶縁性を有する接着剤が適用されることが望ましい。
他方、上記光学部材は、半導体レーザから出射した光ビームをコリメートビームにする単一のレンズあるいは複数の組合せレンズであることが望ましい。さらに上記光学部材は、上述したようなレンズと、前記光ビームをビーム整形するプリズムペアとの組合せであってもよい。この「ビーム整形」としてより具体的には、光ビームの断面形状を正円に近付けるビーム整形が挙げられる。
本発明者は、前述したように半導体レーザと、この半導体レーザから出射した光ビームをビーム整形する光学部材をLDホルダーに固定し、このLDホルダーを、面精度が種々に異なるベース板に対して接着剤で固定し、あるいはネジで固定してモジュールを作製した。そして、それらのモジュールを基準板にネジで固定した上で、このモジュールの周囲温度を変化させて出射ビーム方位(ビーム中心の進行方向)がどのように変化するか確かめる実験を行った。その結果、モジュールの周囲温度が変化したときにベース板の歪みが発生し、そのことがLDホルダーの向きを変化させてしまい、そのためビーム方位が変化することを突き止めた。ベース板の面精度を上げたり、接着剤で固定しても、ベース板の歪みによるビーム方位の変化を改善できなかった。従来、ビーム方位を安定化させるために、ペルチェ素子等によってモジュールを温度調節する構成も知られているが、そのような構成は装置を小型・低コスト化することを阻害する要因となる。
本発明による半導体レーザ装置は上述した実験の結果に鑑みて、接着剤の中に、略均一形状のスペーサを複数分散させたものである。この構成においては、半導体レーザ装置の周囲温度が変化したときにベース板の歪みが発生しても、その歪みが緩和されるので、ビーム方位の変化が抑制される。こうして本発明によれば、高価かつ大型のペルチェ素子等の手段を用いなくても、ビーム方位が安定した光ビームを得ることができる。
本発明の第1実施形態による半導体レーザ装置の駆動時の状態を示す概略図 図1の半導体レーザ装置を拡大して示す一部破断側面図 本発明外の半導体レーザ装置である比較例1を示す概略図 本発明外の半導体レーザ装置である比較例2の要部を示す一部破断側面図 本発明外の半導体レーザ装置である比較例3の要部を示す一部破断側面図 本発明による半導体レーザ装置と上記比較例1においてそれぞれ発生する光ビーム変位量を示すグラフ 本発明の第2実施形態による半導体レーザ装置の要部を示す一部破断側面図(1)と一部破断平面図(2) 従来の半導体レーザ装置の一例を示す一部破断側面図
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態による半導体レーザ装置1が駆動して、光ビーム(レーザビーム)Lを出射している状態を概略的に示しており、図2はこの半導体レーザ装置1を拡大して詳しく示している。図2に示す通り本実施形態の半導体レーザ装置1は、半導体レーザ素子すなわちレーザダイオード(以下、LDという)10と、このLD10を保持したLDホルダー11と、LDホルダー11に固定された例えば概略円筒状のレンズホルダ12と、このレンズホルダ12に保持された光学部材であるコリメートレンズ13とを有している。なお、LD11からのビーム広がり角が大きいためコリメートレンズ13は、非球面レンズを用いている。非球面レンズは球面レンズと比較して球面収差が小さいので、よりガウスビームに近い高品質のビームが得られる。
上記LDホルダー11は図2に示す通り、接着剤14を介して例えば金属板やセラミックス板からなるベース板15に接着固定される。LD10から発散光状態で出射した前方出射光としての光ビーム(レーザビーム)Lは、図1中で右方に進行し、コリメートレンズ13で平行光化された後、所定の用途に利用される。なお、この光ビームLは、LD10内の例えばストライプ部分の両端面に形成された反射膜や部分反射膜等からなるファブリ・ペロー型共振器により発振したレーザビームである。本実施形態では、上記発振器以外の外部共振器は設けられていない。
多くの場合、上記前方出射光と反対方向に出射する後方出射光は、光ビームLの光出力を一定化するAPC(Automatic Power Control)のために、フォトダイオード等によって検出されるが、その検出についての詳しい説明はここでは省略する。
本実施形態では、半導体レーザ装置1の作成時、接着剤14の層中にスペーサとしての真球状ビーズ17(拡大図である図2参照)を複数分散させている。真球状ビーズ17は、ガラスやセラミックスを好適に用いて作成され、その外径は例えば10μm~100μm程度とされる。上記セラミックスとしては、二酸化ケイ素からなるものが好適に用いられるが、それ以外のセラミックスも適用可能である。さらには、ジルコニアやアルミナ製のビーズも適用可能である。一般には、硬度が高く、不純物が少なくて安定性が高い無機材料製のビーズがより好適に用いられ得る。
それらの真球状ビーズ17が分散されていることにより、半導体レーザ装置1の周囲温度が変化してベース板の歪みが生じても、光ビームLの変位が防止される効果が得られる。本実施形態では、接着剤14にビーズ17を分散させた後、その接着剤14によってLDホルダー11をベース板15上に接着固定しているが、ビーズ17が分散された接着剤14の層は、その他の方法によって形成することも可能である。例えば、ベース板15の接着面に予め複数のビーズ17を撒き、その上に接着剤14をディスペンサーで塗布することにより、ビーズ17が分散された接着剤14の層を形成することもできる。
接着剤14の量に対するビーズ17の分散量は、重量比で1%程度確保されていれば、上述した効果を得る上で十分である。ただし、ビーズ17の分散量が余りに少ないと、LDホルダー11やベース板15の接着面を構成する金属の凹凸に埋もれてしまって、本発明の効果を十分に得ることができないことも起こり得るので、一般的な半導体レーザ装置において、ビーズ17の総数は数十個程度以上であることが望ましい。以下、このことを詳しく説明する。
LDホルダー11やベース板15の接着面の面精度がガラスの様に凹凸が無く非常に良いものであるならば、各接着面当りのビーズ個数は最低3個あれば、LDホルダー11とベース板15との間の距離は一定値(ビーズ17の外径と同じ値)になる。1個あるいは2個では、LDホルダー11がベース板15に対して傾くことも起こり得るが、3個有れば傾くことがなく、3個を超えたビーズ17は無駄になる。以上は、上記各接着面が理想的な面であると仮定した上での幾何学的な見地からの判断であるが、上記各接着面の実際の面精度も考慮すると事情は異なってくる。
つまり、上記各接着面が切削加工された金属面である場合、その金属面には一般に数μm~数10μm程度の切削痕が存在する。そのため、3個の中の1つのビーズ17がたまたま切削痕に埋もれてしまうと、LDホルダー11とベース板15との間の距離については、ビーズ17が2個の場合と同等の状態になる。そのように切削痕に埋もれるビーズ17が有っても、それに拘わらず上記距離について所望の状態を実現させるためには、3個を上回るビーズ個数が必要になる。本発明者が以上の見地から、接着剤量に対するビーズ17の好ましい分散量を求めた結果、重量比で1%程度有れば上記所望の状態を実現できることが判った。上記重量比が30%以上となる程に多数のビーズ17が分散されていると、接着剤14の本来の接着機能が低下するので、それを回避するためにも上記重量比を1%程度とするのが望ましい。
ここで、本実施形態の半導体レーザ装置1における光ビームLの変位量を測定した実験について説明する。通常、半導体レーザ装置(レーザモジュール)1のエンドユーザーは、光学ベースプレート上に半導体レーザ装置1をネジ固定して使うが、この変位量測定に際しては、基準プレート上に半導体レーザ装置1のベース板部分をネジで固定して駆動させる。その駆動状態下で、半導体レーザ装置1から出射する光ビームLの変位量を測定する。
この測定に際しては、図1に示す半導体レーザ1全体を恒温槽(図示せず)に入れて恒温槽の内部温度を変化させ、そのとき半導体レーザ装置1から出射する光ビームLの変位量を測定する。本例では恒温槽内の温度を10℃から40℃の範囲で変化させるが、半導体レーザ装置1もその温度にさらされる。上記恒温槽の内部温度は、半導体レーザ装置1の周囲温度となるが、以下ではこれを単に「周囲温度」と称することにする。
こうして半導体レーザ装置1が温度変化すると、そこから出射する光ビームLのビーム方位(ビーム中心の進行方向)が、図1に実線や破線で示すように角度θの範囲で変化する。なお同図中に実線で示すのが、周囲温度25℃の場合のビーム方位であり、破線で示すのが周囲温度10℃の場合と45℃の場合のビーム方位である。具体的には、光ビームLのポインティング位置(光強度が最大になる位置)をビーム受光側から検出し、その検出位置に基づいてビーム方位を測定する。
ここで、周囲温度が1℃変化したときの変位角度(μrad/℃)でビーム方位変位量を示すことにし、図6にその測定結果を示している。また同図では、本発明外の比較例における変位量も併せて示している。
比較例としては、図3、4および5にそれぞれ概略図示する比較例1、2および3を用意した。なお図3以降の図では、図1および2に示したものと同様の要素については図1および2中と同じ番号を付してあり、それらについての重複した説明は特に必要が無い限り省略する。図3に示す比較例1は、前述したAPCを行う半導体レーザ装置を適用したものであり、LD10はチップ状態のままブロック20の上に固定されている。そしてLD10が発する前方出射光としての光ビームLを平行光化するコリメートレンズ13、およびLD10が発する後方出射光の光強度を検出するフォトダイオード21も、ブロック20と一体化されている。
フォトダイオード21が出力する光強度検出信号S1は、APCコントローラ22に入力される。APCコントローラ22は基本的に、この光強度検出信号S1が設定値より大であればLD10の光出力を下げ、設定値より小であればLD10の光出力を上げるようにLD10の駆動を制御する駆動制御信号S2をLD10に入力する。それにより、光ビームLの光出力が基本的に一定に保たれる。
以上の構成を有する半導体レーザ装置を恒温槽内に収容し、周囲温度を10℃から40℃に変化させたときの、光ビームLの変位量を求めた。この場合も変位量は、半導体レーザ装置の周囲温度が1℃変化したときの変位角度(μrad/℃)で示すが、その値は13.8、13.1、11.5、10.0、8.9(μrad/℃)となった。これらの値を図6において、「比較例1」と注記して示す。それに加えて上記の変位量を、図8に示す従来の半導体レーザ装置における変位量とも比較した。
図8に示す半導体レーザ装置は、LD10と、そこから出射した発散光状態の光ビームLを平行光化するコリメートレンズ13と、平行光化された光ビームLの断面形状を楕円形から正円形に変換するプリズムペアである三角プリズム40、41と、該三角プリズム40、41を通過した光ビームLを一部反射させて分岐するビームスプリッタ42と、以上の要素および上記分岐がなされた一部の光ビームLを検出する光検出器21を収めたケース43とを備えてなるものである。
上記構成を有する半導体レーザ装置において、ビームスプリッタ42を透過した光ビームLは窓ガラス43aを透過してケース43の外に取り出され、所定の用途に利用される。また図示外のコントローラにより、光検出器21が検出した光強度に基づいてLD10の駆動が制御されることにより、取り出される光ビームLの強度が一定化される。そして、上記ケース43とベース板45との間に配されたペルチェ素子44と、図示外のケース内温度検出手段等とを利用して、ケース43の内部温度が所定値に維持される。
図8に示す従来の半導体レーザ装置を恒温槽内に収容し、前述と同様に該半導体レーザ装置の周囲温度を変化させた場合の光ビームLの変位量は6(μrad/℃)となった。図6に示した比較例1における光ビームLの変位量は、この従来の半導体レーザ装置における変位量よりも大きい。比較例1はペルチェ素子等による温度調節がなされていない構成であるため、ベース板の歪みによる影響を受けることが、変位量増大の要因になっていると推察される。
それに対して、本実施形態の半導体レーザ装置1として、真球状ビーズ17の外径を10、30μm、70μmとした3タイプのものを作成し、各タイプの半導体レーザ装置1について上記と同様に光ビームLの変位量を求めた。各タイプにおける光ビームLの変位量(μrad/℃)は、それぞれ5.9、4.7、1.9となった。これらの値を図6において、「本発明」と注記して示す。この図6から、本発明によれば、本発明を実施しない場合と比較して、光ビームLの変位量を小さく抑え得ることが明らかである。この光ビームLの変位量を小さく抑える効果は、真球状ビーズ17の外径が大であるほどより顕著なものとなる。つまり一般的に、スペーサの外形がより大きい方が。周囲温度変化時に生じるベース板の歪の影響がより緩和されると推察される。
図4に示す比較例2は、本実施形態の半導体レーザ装置1から、真球状ビーズ17を取り除いた形のものである。つまり、この比較例2の半導体レーザ装置は、接着剤14の層中に複数の真球状ビーズ17を分散させることなく作成されたものである。この比較例2の半導体レーザ装置においてLD10から出射した光ビーム(前方出射光)の変位量は、接着剤14としてUV接着剤を用いた場合と、シリコーン系接着剤を用いた場合とで異なり、前者の場合はサンプル3例において8.9、10.0、12.9(μrad/℃)、後者の場合はサンプル2例において8.7、12.3(μrad/℃)となった。これらの数値も、図6に示した本発明適用の場合における値よりも明らかに大である。この場合は、ビーズ17が分散されている場合と比べて、接着剤の厚さがコントロールされていないため、周囲温度変化時に生じるベース板の歪の影響がビーム変位を生じさせていると推察される。
図5に示す比較例3は、LDホルダー11をベース板15に接着せずに、皿ネジ30を用いてベース板15に締付け固定したものである。なお本例において(本発明の実施形態においても同様であるが)ベース板15は、低コスト化を図るために、切削加工ではなく板金加工によって形成されており、その板厚は1mm~2mmである。板金加工を採用したことから、ベース板15は切削加工した場合と比べて歪みが多く、面精度が悪く、平面性も劣っている。そこで、この比較例3の半導体レーザ装置においてLD10から出射した光ビーム(前方出射光)の変位量は11.5(μrad/℃)であり、図6に示した本発明の場合の値よりも明らかに大である。ベース板15が上記の通り平面性が劣っていることから、周囲温度変化時にビーム変位がより大きくなると推察される。
次に図7を参照して、本発明の第2実施形態である半導体レーザ装置2について説明する。この図7では半導体レーザ装置2の一部破断側面形状を(1)に、一部破断平面形状を(2)に示している。この半導体レーザ装置2は、図1および図2に示した半導体レーザ装置1と対比すると、レンズホルダ12に連結する例えば四角筒状のプリズムホルダ18が設けられ、このプリズムホルダ18内に光学部材としての2つの三角プリズム40、41が保持されている点で異なるものである。
この半導体レーザ装置2において、LD10から出射する光ビームLは、その接合面に平行な方向と垂直な方向とで拡がり角が異なることから、それら両方向の外径の比が1:3程度と互いに異なる楕円形のビーム断面形状を有するものとなっている。この楕円ビーム状態は、光ビームLがコリメートレンズ13によって平行光化された後も維持される。しかしレーザビーム利用装置、例えば光磁気ディスク等に対して情報を読み書きする装置等においては、楕円ビームではなく真円ビームが望まれることも多い。本実施形態の半導体レーザ装置2は、そのような要求を満足するためにプリズムペア、つまり2つの三角プリズム40、41を備えたものである。それらの三角プリズム40、41は例えば石英から形成され、各々隣合う2つの頂角が45°とされたものである。
コリメートレンズ13によって平行光とされた光ビームLは、上記の三角プリズム40、41を通過することにより、同図(1)内の外径つまり上記接合面に垂直な方向の外径はそのまま維持される一方、同図(2)内の外径つまり上記接合面に平行な方向の外径は1/2.7倍に縮小されて、真円ビームに変換される。このように構成された半導体レーザ装置2においても、同図(1)に示すように、ベース板15上にLDホルダー11を固定する接着剤14の層中に真球状ビーズ17を複数分散させておくことにより、第1実施形態の半導体レーザ装置1におけるのと同様の効果を得ることができる。
なお本実施形態では、2つの三角プリズム40、41はプリズムホルダ18を介してレンズホルダ12に取り付けられているが、それらの三角プリズム40、41はレンズホルダ12とは別体にして、ベース板15の上に直接取り付けられてもよい。そのようにする場合でも、LD10から出射する光ビームLの出射方向に対して鈍感になるように半導体レーザ装置を設計しておけば、上記出射方向が10(μrad/℃)程度変動しても、三角プリズム40、41を通過した後の光ビームLの進行方向を変動させる作用は無視できる程度となる。
また接着剤14としては、絶縁性を有するものを使用するのが望ましい。つまりLD10のパッケージが、該LD10のアノードまたはカソードに接続している場合は、LDホルダー11とLD10との電気的導通が生じて問題を招き得るが、絶縁性を有する接着剤14を用いておけば、その電気的導通に起因する問題の発生を防止可能となる。それに対してLD10が、そのパッケージから電気的に浮いている場合は、非絶縁性の接着剤14を用いても構わない。
また本発明は、LD10の発振波長が例えば488nm、赤色域の640nm、青色域の450nm、青紫域の405nm等である場合でも、それらの場合全てに対して問題無く適用可能である。
1、2 半導体レーザ装置
10 レーザダイオード
11 LDホルダー
12 レンズホルダ
13 コリメートレンズ
14 接着剤
15、45 ベース板
17 真球状ビーズ
18 プリズムホルダ
20 ブロック
21 フォトダイオード
22 APCコントローラ
30 皿ネジ
40、41 三角プリズム
42 ビームスプリッタ
43 ケース
44 ペルチェ素子
L 光ビーム

Claims (10)

  1. 半導体レーザと、
    前記半導体レーザから出射した光ビームをビーム整形する光学部材と、
    前記半導体レーザおよび前記光学部材を、所定の用途に使用可能な状態に固定したLDホルダーと、
    前記LDホルダーを接着剤により固定したベース板と、
    を備えてなる半導体レーザ装置において、
    前記接着剤が、前記LDホルダーおよびベース板の前記半導体レーザからの光ビームの出射方向と略平行に延びる面同士を接着し、
    前記接着剤の中に、略均一形状のスペーサが複数分散されていることを特徴とする半導体レーザ装置。
  2. 前記スペーサが、球状のビーズである請求項1に記載の半導体レーザ装置。
  3. 前記スペーサが、円柱状のファイバーである請求項1に記載の半導体レーザ装置。
  4. 前記接着剤が、絶縁性を有する接着剤である請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
  5. 前記光学部材が、前記半導体レーザから出射した光ビームをコリメートビームにする単一のレンズあるいは複数の組合せレンズである請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
  6. 前記光学部材が、前記半導体レーザから出射した光ビームをコリメートビームにする単一のレンズあるいは複数の組合せレンズである請求項4に記載の半導体レーザ装置。
  7. 前記光学部材が、前記半導体レーザから出射した光ビームをコリメートビームにするレンズと、該光ビームをビーム整形するプリズムペアとからなる請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
  8. 前記光学部材が、前記半導体レーザから出射した光ビームをコリメートビームにするレンズと、該光ビームをビーム整形するプリズムペアとからなる請求項4に記載の半導体レーザ装置。
  9. 前記光学部材が、前記半導体レーザから出射した光ビームをコリメートビームにするレンズと、該光ビームをビーム整形するプリズムペアとからなる請求項5に記載の半導体レーザ装置。
  10. 前記ビーム整形が、前記光ビームの断面形状を正円に近付けるビーム整形である請求項7に記載の半導体レーザ装置。
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