JP7453720B1 - ワックスサーモエレメント及びワックスサーモエレメントの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】狭いスペースにも搭載可能な小型で安価なワックスサーモエレメント及びその製造方法を提供する。【解決手段】ワックスWが封入されたハウジング2と、ハウジング2に対して突没自在なピストンロッド3と、ピストンロッド3に嵌着されてワックスWを封止するリング状のゴム材からなるパッキン4を備えたワックスサーモエレメント1において、ハウジング2を、ワックスWが封入された有底円筒状のカップ20と、カップ20と結合して内圧に対抗し、パッキン4を支持する円盤状のカバー21と、から構成し、カバー21の外周側面に、凹溝24を形成し、カップ20とカバー21とを、カップ20の円筒状の側面を凹溝24に押し込んでカシメ止める側面カシメ2aで結合する。【選択図】図1

Description

本発明は、ワックスサーモエレメントに関し、詳しくは、パッキン型のシール形態として側面カシメでカップにカバーが結合されたパッキン型ワックスサーモエレメント及びその製造方法に関する。
バッテリー式電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)やハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)等の電動車向けの冷却システムでは、モータ、インバータ、バッテリー等の各種デバイスを、冷却媒体を介してクーラーで冷却している。しかし、このような電動車向けの冷却システムは、従来の内燃機関(ICE:Internal Combustion Engine)車の冷却システムより冷却箇所が増えており冷却回路も小型で複雑化してきている。
また、電動車の冷却システムは、各種デバイスを精密に温度制御するため、冷却回路の切り換えに電動バルブが用いられ、複数の回路を一つのバルブで制御する多方弁(マルチポートコントロールバルブ)や、回路毎に一方弁を多数用いて制御する等の制御システムが開発されてきている。しかし、今後、電動車の冷却システムでも切り換えにワックスサーモスタットも用いられることが予測される。その場合、ワックスサーモエレメント(サーモペレット)も狭いスペースにも組込むための小型化やコスト削減が必要とされる。
図7に示す従来のワックスサーモエレメントのスリーブ型(ワックスシール構造)では、カップ(筐体)とスリーブ(シール部材)によってワックスを覆う必要が有る。このため、ワックスサーモエレメントを小型化する際は、筐体となるカップとカバーに合わせて、スリーブを、小さく、薄肉にする必要がある。しかし、スリーブの固定構造、製造工法、強度の問題で、ある一定以下のサイズにする事は困難になってくる。
つまり、図7(b)に示すように、従来のスリーブ型のサーモエレメントでは、カップに対してずれ動き突没するピストンロッドをゴム製のスリーブで覆い、ワックスと遮断しているため、ワックスが漏れ出すおそれは少ない。しかし、従来のスリーブ型のサーモエレメントは、ピストンとゴム材からなるスリーブとの接触面積が広いため摺動抵抗が高くなり、戻しばねで押し戻す際の付勢力も高くなる。また、ピストンが外力(戻しばねの付勢力)で押し戻される際、スリーブに発生する高い摺動抵抗により、スリーブを押し下げる力(脱落させる力)が加わるため、カップとカバーでスリーブを上下で挟み込み、強固に固定する必要が有り、スリーブを固定するための固定構造が必要となる分、カバー径が大きくなり受圧面積も広くなる。このため、ワックスサーモエレメント内の内圧が高くなり、受圧面積も広くなるため、カバーとカップに高い結合強度が必要であった。
そのため、カバーとカップを大きな力で挟み込んで高い結合強度で保持することができるカップの軸方向である上方から下方に向けカップの上部を変形させてカップの変形部をカバーの上に被せる上面カシメで結合する必要があった。そのため、ワックスサーモエレメントにカシメる際の受けとしてフランジを形成する必要があり、径方向の小型化ができないという問題があった。
このような問題を解決するべく、上方から下方に向け変形させてカップの変形部をカバーに被せることでカシメて上面カシメで結合するのではなく、カップの軸方向と直交する横方向にカップの側面を変形させてカップとカバーを結合することが考えられる。しかし、このような側面カシメでは、前述の上面カシメ程の結合強度が得られないため、ワックスサーモエレメントの筐体内が高圧力となった場合、カバーのカシメ位置が変位するおそれがあった。
そこで、ワックスサーモエレメントのワックスのシール形態をカバー部の受圧面積(図7(b)の受圧径D3)の大きいスリーブ型から、カバー部の受圧面積の小さいパッキン型(軸シール)(図1(b)の受圧径D2:D2<D3)に変更することで、ワックスサーモエレメントのカバー部が受ける圧力を低減するとともに、ピストンロッドとゴム材の接触面積を低減することで摺動抵抗を小さくし、ピストンロッドを戻すためのスプリングの付勢力を低減することでカップ(ハウジング)内の内圧を小さくして、側面カシメの結合強度でも対応できる設計とし、スリーブの固定構造や強度の問題を解消することが考えられる。
例えば、特許文献1及び特許文献2には、それぞれリング状のゴム材からなるパッキンでワックスを封止するパッキン型のワックスサーモエレメントが開示されている。
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載の従来のパッキン型のワックスサーモエレメントは、径方向の小型化を目的としてワックスのシール形態をパッキン型としているものではなく、カップとカバーの形状はカップにフランジを形成させ、そのカップのフランジにカバーを載せた上で、カップ上部から金属刃で塑性変形させてカップとカバーを結合させる構造であった。つまり、従来のパッキン型のワックスサーモエレメントは、ワックスサーモエレメントにフランジが形成されており、径方向の小型化が達成できていなかった。
また、ワックスサーモエレメントは製品とする上で所定の温度におけるリフト量を一定とすることが求められている。しかし、従来のワックスサーモエレメントにおいては、スリーブや各部品の寸法バラつきにより、ワックス封入部位の内容積のばらつきがある。このため、ワックスサーモエレメントのリフト量を一定値とするためには、組立後にカップの側面や底面を変形させワックス封入部の内容積を調整するインデント工程が必要となり、製作工数がかかるという問題もある。
特許第4293506号公報 特開2021-131142号公報
そこで、本発明は、前記問題点を解決するために案出されたものであり、その目的とするところは、狭いスペースにも搭載可能な小型で安価なワックスサーモエレメント及びその製造方法を提供することにある。
第1発明に係るワックスサーモエレメントは、ワックスが封入されたハウジングと、前記ハウジングに対して突没自在なピストンロッドと、前記ピストンロッドに嵌着されてワックスを封止するリング状のゴム材からなるパッキンを備えたワックスサーモエレメントであって、前記ハウジングは、前記ワックスが封入された有底円筒状のカップと、前記カップと結合して内圧に対抗し、前記パッキンを支持する円盤状のカバーと、を有し、前記カバーの外周側面には、凹溝が形成されており、前記カップと前記カバーとは、前記カップの円筒状の側面が前記凹溝に押し込まれてカシメ止められた側面カシメで結合されていることを特徴とする。
第2発明に係るワックスサーモエレメントは、第1発明において、前記カップの円筒状の内周径は、前記側面カシメ部分を除き略同一径であり、軸に沿った断面において軸に平行な直線状となっており、前記カバーは、前記カップのワックス封入部の内容積に応じて前記カップに対して位置調整されて前記側面カシメで結合されていることを特徴とする。
第3発明に係るワックスサーモエレメントは、第1発明において、前記カップの円筒状の内周径は、前記パッキン部分を除き前記カバーの円盤状の外周径に応じた略同一径であり、前記カバーは、前記カップのワックス封入部の内容積に応じて前記カップに対して位置調整されて前記側面カシメで結合されていることを特徴とする。
第4発明に係るワックスサーモエレメントの製造方法は、ワックスが封入されたハウジングと、前記ハウジングに対して突没自在なピストンロッドと、前記ピストンロッドに嵌着されてワックスを封止するリング状のゴム材からなるパッキンを備えたワックスサーモエレメントを製造するワックスサーモエレメントの製造方法であって、前記ハウジングを前記ワックスが封入された有底円筒状のカップと、前記カップと結合して内圧に対抗し、前記パッキンを支持する円盤状のカバーと、から構成し、前記円盤状のカバーの外周側面に凹溝を形成し、前記カップに前記カバーを挿入した後、前記カップの円筒状の側面を前記凹溝に押し込んで塑性変形させることにより側面カシメで前記カップに前記カバーをカシメ止めて結合することを特徴とする。
第5発明に係るワックスサーモエレメントの製造方法は、第4発明において、前記カップの側面を前記凹溝に押し込んで塑性変形させる加工は、金属刃を前記カップに押し当てて塑性変形させるカシメ加工、又は弾性体若しくは流動体の圧力で前記カップを押圧して塑性変形させるバルジ加工により行うことを特徴とする。
第6発明に係るワックスサーモエレメントの製造方法は、第4発明又は第5発明において、前記カップの側面を前記凹溝に押し込んで塑性変形させる加工は、前記カップの内周径及び前記パッキンの体積を考慮し、前記カップのワックス封入部の内容積に応じて、前記ピストンロッドの所定の温度におけるリフト量が一定値となるように前記カバーの位置調整を行った後、カシメ加工することを特徴とする。
第1発明~第6発明によれば、シール形態をカバー部の受圧面積の大きいスリーブ型から、カバー部の受圧面積の小さいパッキン型(軸シール)に変更することで、カバー部が受ける圧力を低減するとともに、ピストンロッドとゴム材の接触面積を低減することで摺動抵抗を小さくし、ピストンロッドを戻すためのスプリングの付勢力を低減することでカップ(ハウジング)内の内圧を小さくして、カップとカバーを上面カシメではなく側面カシメとしたので、上面カシメと相違して受けとなるフランジを設ける必要がなくなり、カップを径方向に小型化することができる。これにより、狭いスペースでもワックスサーモエレメントを搭載することができるとともに、流路を確保して圧力損失を低減することができる。
特に、第2発明、第3発明、第6発明によれば、組立後にワックス封入部の内容積を調整するインデント工程が不要となり、製作工数を低減して製造コストを低減することができる。
図1は、本発明の実施の形態に係るワックスサーモエレメントを示す図であり、(a)が軸に直交する方向に見た正面図、(b)が軸方向に沿った鉛直断面図である。 図2は、同上のサーモエレメントのカバー単体を示す斜視図である。 図3は、本実施形態に係るサーモエレメントの製造方法のカバー位置調整工程を示す工程説明図であり、(a)がカップ20の内径が規定より小さく、パッキン4の重量が規定より重い場合を示し、(b)がカップ20の内径が規定より大きく、パッキン4の重量が規定より軽い場合を示している。 図4は、同上のサーモエレメントの製造方法の金属刃のカシメ加工による側面カシメ工程を示す工程説明図であり、(a)が加工前を示し、(b)が加工後を示している。 図5は、本実施形態に係るサーモエレメントの製造方法のバルジ加工による側面カシメ工程を示す工程説明図であり、(a)が加工前を示し、(b)が加工後を示している。 図6(a)は、変形例1に係るワックスサーモエレメント1’を示す軸方向に沿った鉛直断面図であり、図6(b)は、変形例2に係るワックスサーモエレメント1”を示す軸方向に沿った鉛直断面図である。 図7は、従来のスリーブ型ワックスサーモエレメントを示す図であり、(a)が軸に直交する方向に見た正面図、(b)が軸方向に沿った鉛直断面図である。
以下、本発明の実施の形態に係るワックスサーモエレメントについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
<ワックスサーモエレメントの構成>
図1,図2を用いて、本発明の実施の形態に係るワックスサーモエレメント1の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るワックスサーモエレメント1を示す図であり、(a)が軸に直交する方向に見た正面図、(b)が軸方向に沿った鉛直断面図であり、図2は、サーモエレメント1のカバー21単体を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るワックスサーモエレメント1(以下、単にサーモエレメント1ともいう)は、パラフィンワックスなどのワックスWが封入されたハウジング2と、このハウジング2に対して突没自在なピストンロッド3と、このピストンロッド3に嵌着されてワックスWを封止するパッキン4を備えたパッキン型ワックスサーモエレメントである。
このサーモエレメント1は、周囲の温度上昇に伴いハウジング2内のワックスWの膨張でピストンロッド3が突出する仕組みとなっている。勿論、ハウジング2に封入されるワックスは、パラフィンワックスに限られず、マイクロワックスなど、比較的体積変化の大きい所定の熱膨張特性を有する物質であれば本発明に適用可能である。
(ハウジング)
ハウジング2は、ワックスWを封入する容器であり、サーモエレメント1全体の筐体として機能する。このハウジング2は、高温時のワックスWの膨張圧力に対抗可能な所定の強度を有する金属製の容器となっており、本実施形態に係るハウジング2は、ステンレス(SUS430)製の容器が採用されている。
このハウジング2は、ワックスWが封入された有底円筒状のカップ20と、このカップ20と結合して内圧に対抗する円盤状のカバー21など、から構成されており、カップ20とカバー21は、カシメ止められて結合されている。
((カップ))
本実施形態に係るカップ20は、図1(a)に示すように、円筒状の外周径がD1に設定されており、後で詳述する側面カシメ2a部分を除き、上から下まで略同一径となっている。つまり、カップ20は、図1(a)に示すように、側面カシメ2a部分より上の部分であるカップ上部22の外径と、側面カシメ2a部分より下の部分であるカップ下部23の外径がいずれもD1となったストレートな円柱状、即ち、カップ20の軸に平行な直線状となっている。本実施形態に係るカップ20の外周径D1は、7mmに設定されている。
また、本実施形態に係るカップ20の内周径D2も、図1(b)に示すように、側面カシメ2a部分を除き上から下までストレートなカバー21の円盤状の外周径に応じた略同一径となっている。このため、カシメて結合する前は、カバー21がカップ20に対してスライド移動自在であり、後述のように、カバー21は、カップ20のワックス封入部の内容積に応じてカップ20に対して位置調整して側面カシメで結合することが容易となっている。
ここで、側面カシメ2a部分を除き上から下までストレートなカバー21の円盤状の外周径に応じた略同一径となっているとは、図6(a)に示す変形例1に係るワックスサーモエレメント1’に示すように、内周面が同一径であれば外周面がテーパー状に徐々に厚くなっているものや、図示しない段違いに外周面の径が異なる場合も含むものである。その場合であっても、カバー21がカップ20に対してスライド移動自在であり、カバー21がカップ20のワックス封入部の内容積に応じてカップ20に対して位置調整が容易であるからである。図6(a)は、変形例1に係るワックスサーモエレメント1’を示す軸方向に沿った鉛直断面図である。なお、図中の符号は、本発明の実施の形態に係るワックスサーモエレメント1と同じ符号は、同じ部材を指すものであるため、説明は省略する。
また、カップ20の内周径D2は、図6(b)に示すように、2カ所のパッキン部分2bを除き、後述のカバー21の円盤状の外周径に応じた凹溝24の外周径と略同じ同一径となっていても構わない。この場合でも、2カ所のパッキン部分2b,2bとの間に遊びがあれば、その範囲内で側面カシメ2aの位置を調整することでワックス封入部の内容積を微調整することが容易だからである。図6(b)は、変形例2に係るワックスサーモエレメント1”を示す軸方向に沿った鉛直断面図である。
なお、パッキン部分2bとは、後述のパッキン4,4’と、パッキン4,4’がカバー21とピストンロッド3の隙間に入らないようにするバックアップリング5や外液の侵入を防止する上端リング6などのパッキン4,4’の封止機能に関連する部分を指している。
((カバー))
カバー21は、図2,図1(b)に示すように、ピストンロッド3を挿通する貫通孔21aが穿設されたドーナツ円盤状の部材であり、カバー21の外周側面には、凹溝24が形成されている。換言すると、カップ20の内周径に応じた上フランジ25,下フランジ26が形成され、その間の側面に上フランジ25及び下フランジ26より径が小さい部分があり、その部分が凹溝24となっている。
なお、後で詳述するが、図1(b)に示すように、カップ20とカバー21とは、カバー21がカップ20のワックス封入部の内容積に応じてカップ20に対して位置調整された上、カップ20の円筒状の側面がこの凹溝24に押し込まれて側面カシメ2aで結合されている。
(ピストンロッド)
ピストンロッド3は、所定径の(図示形態は、直径φ=2.8mm)のステンレス鋼(SUS304)の棒材からなり、ハウジング2内に封入されたワックスWの温度上昇に伴う膨張圧力でハウジング2から突出する機能を有している。
(パッキン)
パッキン4は、フッ化ビニリデン系(FKM)のフッ素ゴムなどのリング状(ドーナツ状)のゴム材からなり、圧縮された状態でワックスW側となるカバー21下のピストンロッド3に嵌着されて、ワックスWを封止する機能を有している。また、このパッキン4とカバー21との間には、フッ素樹脂(PTFE:polytetrafluoroethylene)からなるバックアップリング5が介装されている。このバックアップリング5は、サーモエレメント1の内圧により、パッキン4がカバー21とピストンロッド3の隙間に入らないようにする機能を有している。
また、カップ20の上端は、前記パッキン4と同構成のリング状(ドーナツ状)のゴム材からなるパッキン4’が介装され、ピストンロッド3を挿通するステンレス製の上端リング6が嵌め込まれた上、丸め込まれて封止されている。この上端リング6は、サーモエレメント1の外側を流れる外液がサーモエレメント1内へ侵入することを防止する機能を有している。
<サーモエレメントの製造方法>
次に、図3~図5を用いて、本発明の実施形態に係るワックスサーモエレメントの製造方法について説明する。前述のパッキン型のワックスサーモエレメント1を製造する場合で説明する。なお、本発明の実施形態に係るワックスサーモエレメントの製造方法(以下単にサーモエレメントの製造方法ともいう)が、従来のパッキン型のワックスサーモエレメントの製造方法と相違する点は、インデント工程が無い点とカップ20とカバー21との結合方法が従来と異なる点なので、その点を主に説明し、他の詳細な説明は省略する。
(カバー位置調整工程)
先ず、本実施形態に係るサーモエレメントの製造方法では、図3に示すように、カップ20にワックスWを充填し、ピストンロッド3にパッキン4,4’、バックアップリング5、及びカバー21が装着された状態でカバー21の位置(図示状態では高さ)調整を行うカバー位置調整工程を行う。図3は、本実施形態に係るサーモエレメントの製造方法のカバー位置調整工程を示す工程説明図であり、(a)がカップ20の内径が規定より小さく、パッキン4の重量が規定より重い場合を示し、(b)がカップ20の内径が規定より大きく、パッキン4の重量が規定より軽い場合を示している。
カバー位置調整工程では、カップの内周径D2(図1(b)参照)及びパッキン4の体積を考慮し、カップ20のワックス封入部の内容積に応じて、ピストンロッド3のリフト量が一定値となるように位置調整を行って、カバー21を次工程の加工位置となる所定の位置に固定する。
ここで、カップ20の内周径D2及びパッキン4の体積を考慮するとは、図3(a)に示すように、密度が均一なパッキン4の重量を計測することで体積を推定するため、カップ20の内周径D2が正規の値D2より実際の計測値がD2’とD2’<D2と小さくなっている場合、又は/及びパッキン4の重量が正規の重量より重い場合は、ワックス封入部の内容積が正規の値より小さくなっていることになるので、このような場合は、ワックス封入部の内容積を所定の値にするために、カバー21の設置位置(高さ)を所定の高さH1より高めのH1’とする(H1<H1’)に設定することを指している。
逆に、図3(b)に示すように、カップ20の内周径D2が正規の値D2より実際の計測値がD2”とD2”>D2と大きくなっている場合、又は/及びパッキン4の重量が正規の重量より軽い場合は、ワックス封入部の内容積が正規の値より大きくなっていることになるので、このような場合は、ワックス封入部の内容積を所定の値にするために、カバー21の設置位置(高さ)を所定の高さH1より低めのH1”とする(H1>H1”)に設定する。
本工程を行って次工程でカップ20とカバー21をカシメて結合するだけで、従来行っていたインデント工程を不要とすることができ、製作工数を削減してサーモエレメント1の製造コストを低減することができる。つまり、従来のワックスサーモエレメントにおいては、ワックス封入部の内容積のばらつきを修正するために、組立後にカップの側面等(底面の場合もある)に側面凹部等の押込み具合でワックス封入部の内容積を調整するインデント工程を行っていた。しかし、本カバー位置調整工程を行うだけで、実際に凹部を設ける等の失敗を伴う加工工程を実行しなくてもよくなり、生産効率が向上するとともに製作工数を削減することができる。
(側面カシメ工程)
次に、本実施形態に係るサーモエレメントの製造方法では、前工程で位置決めしたカバーの位置において、カップ20の円筒状の側面をカバー21の凹溝24に押し込んで塑性変形させることにより側面カシメでカップ20にカバー21をカシメ止めて結合する側面カシメ工程を行う。つまり、本実施形態に係るサーモエレメントの製造方法では、カップ20とカバー21との結合方法が、背景技術で述べたように、従来の上面カシメではなく側面カシメとなっている。側面カシメの具体的な加工方法は、少なくても金属刃によるカシメ加工とバルジ加工の二種類の方法がある。
<金属刃によるカシメ加工>
先ず、図4を用いて、金属刃によるカシメ加工方法について説明する。図4は、本実施形態に係るサーモエレメントの製造方法の金属刃のカシメ加工による側面カシメ工程を示す工程説明図であり、(a)が加工前を示し、(b)が加工後を示している。
図4に示すように、金属刃のカシメ加工による側面カシメ工程では、前述の側面カシメ2aの形状に応じた左右一対の金属刃C1,C1で両側から挟み込んでカップ20の側面に押し当ててカップ20の側面をカバー21の凹溝24に押し込んで塑性変形させ、カップ20にカバー21をカシメ止めて結合する。
このとき、側面カシメ2aは、背景技術で述べたフランジのある上面カシメと相違して、側面からカップ20を塑性変形させるため、想定より過度な力で変形をさせた場合(変形過大)、カバー21が変形してしまい貫通孔21aでガイドしているピストンロッド3が作動不良になる恐れがある。
そのため、金属刃のカシメ加工による側面カシメ工程では、カップ20を変形させるが、カバー21が変形しない金属刃C1の可動域(変形量=潰す量)を厳密に管理し、カバー21が変形しない範囲に金属刃C1の可動域を限定する。
<バルジ加工>
次に、図5を用いて、バルジ加工方法について説明する。図5は、本実施形態に係るサーモエレメントの製造方法のバルジ加工による側面カシメ工程を示す工程説明図であり、(a)が加工前を示し、(b)が加工後を示している。
図5に示すように、バルジ加工による側面カシメ工程では、バルジ加工装置10に、前述のカバー位置調整工程でカバー21の位置が調整固定されたサーモエレメント1をセットし、弾性体の圧力でカップ20の側面をカバー21の凹溝24に押し込んで塑性変形させ、カップ20にカバー21をカシメ止めて結合する。
このバルジ加工装置10は、図5に示すように、スライド自在の一対の押し治具J1,J1と、これらの円環状の押し治具J1,J1の圧力を受ける受け台W1を備え、受け台W1と押し治具J1との間に円環状の弾性体E1を介装し、押し治具J1をスライド移動させることで弾性体E1を押圧して圧縮し、受け台W1の無い開放された側に弾性体E1の圧力を向わせることで、弾性体E1と弾性体E1との間にサーモエレメント1を両側から挟み込んで弾性体E1の圧力でカップ20の側面をカバー21の凹溝24に押し込んで塑性変形させ、カップ20にカバー21をカシメ止めて結合する。なお、弾性体E1は、弾性体に限られず、水や粘性体などの流動体とすることもできる。流動体であれば、弾性体E1と同様に、圧力をかける方向と違う方向にも圧力を伝達することができるからである。
このとき、金属刃によるカシメ加工と同様に、側面カシメ2a(図4参照)は、背景技術で述べたフランジのある上面カシメと相違して、側面からカップ20を塑性変形させるため、想定より過度な力で変形をさせた場合(変形過大)、カバー21が変形してしまい貫通孔21aでガイドしているピストンロッド3が作動不良になる恐れがある。
そのため、バルジ加工による側面カシメ工程では、カップ20を変形させカバー21が変形しない圧力を厳密に管理し、カバー21が変形しない範囲に弾性体E1に作用する圧力を限定する。
また、量産時の構成部品の寸法バラつきや加工機・治具の寸法変動に起因したカシメ不良(変形過小)による強度不足も懸念されるが、バルジ加工による側面カシメ工程では、前述のように、カップ20を変形させカバー21が変形しない圧力を厳密に管理することで、カシメ不良(変形過小)も解消し得る。
以上説明した、本実施の形態に係るサーモエレメント1及びその製造方法によれば、受圧面積の小さいパッキン型(軸シール)に変更することで、カバー21が受ける圧力を低減するとともに、スリーブ型よりピストンロッド3とゴム材の接触面積を低減することで摺動抵抗を小さくし、ピストンロッド3を戻すためのスプリングの付勢力を低減することでハウジング2内の内圧を小さくした上で、カップ20とカバー21を側面カシメ2aで結合したので、上面カシメと相違して受けとなるフランジを設ける必要がなくなり、カップ20の外周径D1及び内周径D2を同一径のストレートな円柱状の外周面とすることができ、カップ20を径方向に小型化することができる。
図7(a)に示したように、上面カシメのスリーブ型のワックスサーモエレメントの場合、カップのフランジ部分の外周径は、11.8mmとなっており、カップの一般部の外周径は、9mmとなっていた。
これに対して、サーモエレメント1では、図1(a)に示したように、カップ20の外周径D1は、ストレートな円柱状となっており、カップ上部22の外径とカップ下部23の外径は、いずれもD1=7mmとなっており、4.8mmも径方向に小型することができている。これにより、狭いスペースでもサーモエレメント1を搭載することができるとともに、流路を確保して圧力損失を低減することができる。
その上、サーモエレメント1及び変形例1に係るサーモエレメント1’では、図1(b),図6(a)に示したように、カップ20の内周径D2が側面カシメ2a部分を除き上から下までストレートなカバー21の円盤状の外周径に応じた略同一径となっている。このため、カシメて結合する前は、カバー21がカップ20に対してスライド移動自在であり、カバー21はカップ20のワックス封入部の内容積に応じてカップ20に対して位置調整して側面カシメで結合することが容易である。
また、変形例2に係るサーモエレメント1”では、図6(b)に示したように、2カ所のパッキン部分2bを除き、カバー21の円盤状の外周径に応じた凹溝24の外周径と略同じ同一径となっている。このため、2カ所のパッキン部分2b,2bとの間の遊びの範囲内で側面カシメ2aの位置を調整することでワックス封入部の内容積を微調整することが容易である。
さらに、サーモエレメント1及びその製造方法によれば、前述のように、カバー位置調整工程を行うだけで、組立後にワックス封入部の内容積を調整するインデント工程が不要となり、製作工数を低減して製造コストを低減することができる。
以上、本発明の実施形態に係るワックスサーモエレメント1及びその製造方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。特に、各部材の素材や寸法等は、あくまでも例示であり、同等の強度を有する他の材料に適宜変更できることは云うまでもない。
なお、リフト量とは、ピストンロッドの上昇量を指すのではなくハウジングからのピストンロッドの突出量(長)を指し、サーモエレメント1を図示形態と上下逆や横方向に寝かせて設置しても使用できる概念であることは云うまでもない。
1,1’,1”:サーモエレメント(パッキン型ワックスサーモエレメント)
2:ハウジング(筐体)
2a:側面カシメ
2b:パッキン部分
20:カップ
21:カバー
21a:貫通孔
22:カップ上部
23:カップ下部
24:凹溝
25:上フランジ
26:下フランジ
3:ピストンロッド
4,4’:パッキン
5:バックアップリング
6:上端リング
W:ワックス
C1:金属刃
10:バルジ加工装置
J1:押し治具
W1:受け台
E1:弾性体(流動体)

Claims (6)

  1. ワックスが封入されたハウジングと、前記ハウジングに対して突没自在なピストンロッドと、前記ピストンロッドに嵌着されてワックスを封止するリング状のゴム材からなるパッキンを備えたワックスサーモエレメントであって、
    前記ハウジングは、前記ワックスが封入された有底円筒状のカップと、前記カップと結合して内圧に対抗し、前記パッキンを支持する円盤状のカバーと、を有し、
    前記カバーの外周側面には、凹溝が形成されており、
    前記カップと前記カバーとは、前記カップの円筒状の側面が前記凹溝に押し込まれてカシメ止められた側面カシメで結合されていること
    を特徴とするワックスサーモエレメント。
  2. 前記カップの円筒状の内周径は、前記側面カシメ部分を除き略同一径であり、軸に沿った断面において軸に平行な直線状となっており、
    前記カバーは、前記カップのワックス封入部の内容積に応じて前記カップに対して位置調整されて前記側面カシメで結合されていること
    を特徴とする請求項1に記載のワックスサーモエレメント。
  3. 前記カップの円筒状の内周径は、前記パッキン部分を除き前記カバーの円盤状の外周径に応じた略同一径であり、
    前記カバーは、前記カップのワックス封入部の内容積に応じて前記カップに対して位置調整されて前記側面カシメで結合されていること
    を特徴とする請求項1に記載のワックスサーモエレメント。
  4. ワックスが封入されたハウジングと、前記ハウジングに対して突没自在なピストンロッドと、前記ピストンロッドに嵌着されてワックスを封止するリング状のゴム材からなるパッキンを備えたワックスサーモエレメントを製造するワックスサーモエレメントの製造方法であって、
    前記ハウジングを前記ワックスが封入された有底円筒状のカップと、前記カップと結合して内圧に対抗し、前記パッキンを支持する円盤状のカバーと、から構成し、
    前記円盤状のカバーの外周側面に凹溝を形成し、
    前記カップに前記カバーを挿入した後、前記カップの円筒状の側面を前記凹溝に押し込んで塑性変形させることにより側面カシメで前記カップに前記カバーをカシメ止めて結合すること
    を特徴とするワックスサーモエレメントの製造方法。
  5. 前記カップの側面を前記凹溝に押し込んで塑性変形させる加工は、金属刃を前記カップに押し当てて塑性変形させるカシメ加工、又は弾性体若しくは流動体の圧力で前記カップを押圧して塑性変形させるバルジ加工により行うこと
    を特徴とする請求項4に記載のワックスサーモエレメントの製造方法。
  6. 前記カップの側面を前記凹溝に押し込んで塑性変形させる加工は、前記カップの内周径、及び前記パッキンの体積を考慮し、前記カップのワックス封入部の内容積に応じて、前記ピストンロッドの所定の温度におけるリフト量が一定値となるように前記カバーの位置調整を行った後、カシメ加工すること
    を特徴とする請求項4又は5に記載のワックスサーモエレメントの製造方法。
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