以下、本発明の実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施形態としては、10台の室内機が室外機に並列に接続され、全ての室内機で同時に冷房運転あるいは暖房運転が行える空気調和装置を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
図1に示すように、本実施形態における空気調和装置1は、1台の室外機2と、室外機2に液管8およびガス管9で並列に接続された10台の室内機5-1~5-10(図1では、これらのうちの2台の室内機5-1と5-10のみを描画している)とを備えている。より詳細には、室外機2の閉鎖弁25と各室内機5の液管接続部53とが液管8で接続されている。また、室外機2の閉鎖弁26と各室内機5のガス管接続部54とがガス管9で接続されている。このように、室外機2と10台の室内機5とが液管8およびガス管9で接続されて、空気調和装置1の冷媒回路10が形成されている。
<室外機の構成>
まずは、室外機2について説明する。室外機2は、圧縮機20と、オイルセパレータ21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、室外機膨張弁24と、液管8が接続された閉鎖弁25と、ガス管9が接続された閉鎖弁26と、アキュムレータ27と、室外機ファン28とを備えている。そして、室外機ファン28を除くこれら各装置が、以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路20を形成している。
圧縮機20は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで、運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。圧縮機20の冷媒吐出口は、後述するオイルセパレータ21と吐出管40で接続されている。また、圧縮機20の冷媒吸入口は、アキュムレータ27の冷媒流出口と吸入管42で接続されている。なお、詳細は後述するが、圧縮機20は、冷房運転時は後述する吸入圧力センサ32で検出した吸入圧力を用いて求めた低圧飽和温度が所定の目標低圧飽和温度となるように回転数が制御され、暖房運転時は後述する吐出圧力センサ31で検出した吐出圧力を用いて求めた高圧飽和温度が所定の目標高圧飽和温度となるように回転数が制御される。
オイルセパレータ21は、円筒形状の密閉容器21aを有する遠心分離式のオイルセパレータである。図2に示すように、オイルセパレータ21の密閉容器21aの上面部21aaと後述する四方弁22のポートaとが、流出管41で接続されている。また、オイルセパレータ21の密閉容器21aの下面部21abには、油戻し管47の一端が接続されており、油戻し管47の他端は吸入管42に接続されており、油戻し管47にはキャピラリーチューブ29が設けられている。また、オイルセパレータ21の密閉容器21aの側面部21acの上部には、吐出管40が接続されている。オイルセパレータ21は、圧縮機20から吐出され吐出管40を介して密閉容器21aの内部に流入した冷凍機油を含む冷媒を密閉容器21aの内部で冷媒と冷凍機油とに分離し、分離された冷凍機油を油戻し管47を介して圧縮機20に戻すとともに、分離された冷媒を流出管41へと流出させる。なお、油戻し管47へは、冷凍機油とともに冷媒も流入するが、油戻し管47に設けられたキャピラリーチューブ29により圧縮機20に流れる冷媒量が規制される。
四方弁22は、冷媒回路10における冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、上述したようにオイルセパレータ21の密閉容器21aと吐出管40で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管43で接続されている。ポートcは、アキュムレータ27の冷媒流入口と冷媒配管46で接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁26と室外機ガス管45で接続されている。
室外熱交換器23は、冷媒と、後述する室外機ファン28の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気を熱交換させるものである。上述したように、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と四方弁22のポートbが冷媒配管43で接続されている。また、室外熱交換器23の他方の冷媒出入口と閉鎖弁25が室外機液管44で接続されている。室外熱交換器23は、空気調和装置1が冷房運転を行う場合は凝縮器として機能し、空気調和装置1が暖房運転を行う場合は蒸発器として機能する。
室外機膨張弁24は、室外機液管44に設けられている。室外機膨張弁24は、図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、パルスモータに与えられるパルス数によって開度が調整されることで、室外熱交換器23に流入する冷媒量、あるいは、室外熱交換器23から流出する冷媒量が調整される。室外機膨張弁24の開度は、空気調和装置1が暖房運転を行っている場合は、室外熱交換器23の冷媒出口側(四方弁22のポートb側)における冷媒の過熱度が所定の値(例えば、4deg。以降、第2所定値と記載する)となるように、その開度が調整される。また、室外機膨張弁24の開度は、冷房運転を行っている場合は全開とされる。ここで、第2所定値は、暖房運転時に圧縮機20に吸入される冷媒に液冷媒が混ざる所謂液バックを防止するために必要な冷媒過熱度である。
アキュムレータ27は、前述したように、冷媒流入口が四方弁22のポートcと冷媒配管46で接続されるとともに、冷媒流出口が圧縮機20の冷媒吸入口と吸入管42で接続されている。アキュムレータ27は、冷媒配管46からアキュムレータ28の内部に流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒に分離してガス冷媒のみを圧縮機20に吸入させる。
室外機ファン28は樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外機ファン28は、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
以上説明した構成の他に、室外機2には各種のセンサが設けられている。図1に示すように、吐出管40には、圧縮機20から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサ31と、圧縮機20から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ33が設けられている。冷媒配管46におけるアキュムレータ28の冷媒流入口近傍には、圧縮機20に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する吸入圧力センサ32と、圧縮機20に吸入される冷媒の温度を検出する吸込温度センサ34とが設けられている。なお、上述した吐出圧力センサ31が、本発明の吐出圧力検出手段である。
室外機液管44における室外熱交換器23と室外機膨張弁24との間には、室外熱交換器23に流入する冷媒の温度、あるいは、室外熱交換器23から流出する冷媒の温度を検出するための熱交温度センサ35が設けられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ36が備えられている。
また、室外機2には、本発明の制御手段である室外機制御手段200が備えられている。室外機制御手段200は、室外機2の筐体内部に設けられる図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、図1に示すように、CPU210と、記憶部220と、通信部230と、センサ入力部240とを備えている。
記憶部220は、例えばフラッシュメモリであり、室外機2の制御プログラムや前述した各種センサから取り込んだ検出信号に対応した検出値、圧縮機20や室外機ファン28の駆動状態、室外機膨張弁24の開度、室内機5-1~5-10の各々から受信した運転情報(運転/停止情報、冷房/暖房等の運転モード、室内機3の要求する冷房能力あるいは暖房能力などを含む)、などを記憶する。通信部230は、室内機5-1~5-10の各々と通信を行うインターフェイスである。センサ入力部240は、前述した室外機2の各種センサでの検出結果を取り込んでCPU210に出力する。
CPU210は、センサ入力部240を介して各種センサでの検出値を定期的(例えば、30秒毎)に取り込むとともに、室内機3から送信される運転情報を含む信号を、通信部230を介して取り込む。CPU210は、これら入力された各種情報に基づいて、室外機膨張弁24の開度調整、圧縮機20や室外機ファン28の駆動制御などを行う。
<各室内機の構成>
次に、10台の室内機5-1~5-10について説明する。10台の室内機5-1~5-10は全て同じ構成を有しており、室内熱交換器51と、室内機膨張弁52と、液管接続部53と、ガス管接続部54と、室内機ファン55とを備えている。そして、室内機ファン55を除くこれら各構成装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路50を構成している。
室内熱交換器51は、冷媒と、後述する室内機ファン55の回転により図示しない吸込口から室内機5の内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものである。室内熱交換器51の一方の冷媒出入口と液管接続部53とが室内機液管71で接続され、他方の冷媒出入口とガス管接続部54とが室内機ガス管72で接続されている。室内熱交換器51は、空気調和装置1が冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、空気調和装置1が暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。尚、液管接続部53やガス管接続部54は、各冷媒配管が溶接やフレアナット等により接続されている。
室内機膨張弁52は、室内機液管71に設けられている。室内機膨張弁52は電子膨張弁であり、室内熱交換器51が蒸発器として機能する場合すなわち室内機5が冷房運転を行う場合は、その開度は、室内熱交換器51の冷媒出口側(ガス管接続部54側)での冷媒過熱度が所定の値(例えば、4deg。以降、第1所定値と記載する)となるように調整される。また、室内機膨張弁52は、室内熱交換器51が凝縮器として機能する場合すなわち室内機5が暖房運転を行う場合は、その開度は、室内熱交換器51の冷媒出口(液管接続部53側)での冷媒過冷却度が所定の値(例えば、5deg。以降、第3所定値と記載する)となるように調整される。ここで、第1所定値や第3所定値は、室内機5-1~5-10の各々で十分な冷房能力あるいは暖房能力を発揮するのに必要な冷媒過熱度および冷媒過冷却度である。
室内機ファン55は樹脂材で形成されており、室内熱交換器51の近傍に配置されている。室内機ファン55は、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機5の内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器51において冷媒と熱交換した室内空気を図示しない吹出口から室内へ放出する。
以上説明した構成の他に、室内機5には各種のセンサが設けられている。室内機液管71における室内熱交換器51と室内機膨張弁52との間における室内熱交換器51の近傍には、冷房運転時は室内熱交換器51に流入する冷媒の温度を、また、暖房運転時は室内熱交換器51から流出する冷媒の温度をそれぞれ検出する液側温度センサ61が設けられている。室内機ガス管72における室内熱交換器51の近傍には、冷房運転時は室内熱交換器51から流出する冷媒の温度を、また、暖房運転時は室内熱交換器51に流入する冷媒の温度をそれぞれ検出するガス側温度センサ62が設けられている。また、室内機5の図示しない吸込口付近には、室内機5の内部に流入する室内空気の温度を検出する室内温度センサ63が備えられている。なお、この室内温度センサ63と前述した室外機2の外気温度センサ36が、本発明の吸込温度検出手段である。
<冷媒回路の動作>
次に、本実施形態における空気調和装置1の空調運転時の冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作について、図1を用いて説明する。尚、以下の説明ではまず、空気調和装置1が暖房運転を行う場合について説明し、次に、空気調和装置1が冷房運転を行う場合について説明する。尚、図1における実線矢印は、暖房運転時の冷媒の流れを示している。また、図1における破線矢印は、冷房運転時の冷媒の流れを示している。
<暖房運転>
図1に示すように、空気調和装置1が暖房運転を行う場合は、四方弁22が実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdとが連通するように、また、ポートbとポートcとが連通するように切り換えられる。これにより、冷媒回路10は、各室内熱交換器51が凝縮器として機能するとともに、室外熱交換器23が蒸発器として機能する暖房サイクルとなる。
冷媒回路10が暖房サイクルとして機能する状態で圧縮機20が駆動すると、圧縮機20から吐出された冷媒は、吐出管40を流れてオイルセパレータ21へと流入し、オイルセパレータ21から流出管41へと流れて四方弁22に流入する。そして、四方弁22から流出した冷媒は、室外機ガス管45を流れて、閉鎖弁26を介してガス管9へと流入する。なお、オイルセパレータ21では、冷媒とともに圧縮機20から吐出された冷凍機油が冷媒から分離され、分離された冷凍機油は、図1に一点鎖線矢印で示すようにオイルセパレータ21から流出して油戻し管47を流れ、吸入管42を介して圧縮機20へと戻される。
ガス管9を流れる冷媒は、各ガス管接続部54を介して室内機5-1~5-10に分流する。室内機5-1~5-10に流入した冷媒は、各室内機ガス管72を流れて各室内熱交換器51に流入する。各室内熱交換器51に流入した冷媒は、各室内機ファン55の回転により各室内機5の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。
このように、各室内熱交換器51が凝縮器として機能し、各室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って加熱された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機5-1~5-10が設置された室内の暖房が行われる。
各室内熱交換器51から各室内機液管71に流入した冷媒は、各室内熱交換器51の冷媒出口側での冷媒過冷却度が目標冷媒過冷却度となるように開度が調整された各室内機膨張弁52を通過する際に減圧される。ここで、目標冷媒過冷却度は、室内機5-1~5-10の各々で要求される暖房能力に基づいて定められるものである。また、暖房能力は、各室内機5-1~5-10において、設定された設定温度と検出した室内温度との温度差に基づいて決定されるものである。なお、暖房運転時における各室内熱交換器51の冷媒出口側での冷媒過冷却度が本発明の「運転状態量」に相当し、目標冷媒過冷却度が本発明の「所定の目標値」に相当する。
各室内機膨張弁52で減圧された冷媒は、各室内機液管71から各液管接続部53を介して液管8に流出する。液管8で合流し閉鎖弁25を介して室外機2に流入した冷媒は室外機液管44を流れ、圧縮機20の吐出温度が目標温度となるように開度が調整された室外機膨張弁24を通過する際にさらに減圧される。
室外機膨張弁24で減圧された冷媒は、室外機液管44を流れて室外熱交換器23に流入し、最大回転数とされている室外機ファン28の回転によって室外機5の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から冷媒配管43へと流入した冷媒は、四方弁22、冷媒配管46、アキュムレータ27、吸入管42の順に流れ、圧縮機20に吸入されて再び圧縮される。
<冷房運転>
空気調和装置1が冷房運転を行う場合は、図1に示すように、四方弁22が破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとが連通するように、また、ポートcとポートdとが連通するように切り換えられる。これにより、冷媒回路10は、各室内熱交換器51が蒸発器として機能するとともに、室外熱交換器23が凝縮器として機能する冷房サイクルとなる。
冷媒回路10が冷房サイクルとして機能する状態で圧縮機20が駆動すると、圧縮機20から吐出された冷媒は、吐出管40を流れてオイルセパレータ21へと流入し、オイルセパレータ21から流出管41へと流れて四方弁22に流入する。そして、四方弁22から流出した冷媒は、冷媒配管43を流れて室外熱交換器23へと流入する。室外熱交換器23へと流入した冷媒は、室外機ファン28の回転によって室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮する。室外熱交換器23から室外機液管44へと流出した冷媒は、開度が全開とされている室外機膨張弁24を通過し、閉鎖弁25を介して液管8に流出する。なお、オイルセパレータ21では、冷媒とともに圧縮機20から吐出された冷凍機油が冷媒から分離され、分離された冷凍機油は、図1に一点鎖線矢印で示すようにオイルセパレータ21から流出して油戻し管47を流れ、吸入管42を介して圧縮機20へと戻される。
液管8を流れる冷媒は、各液管接続部53を介して室内機5-1~5-10に流入する。室内機5-1~5-10に流入した冷媒は各室内機液管71を流れ、各室内熱交換器51の各々の冷媒出口側での冷媒過熱度が目標冷媒過熱度となるように開度が調整された各室内機膨張弁52を通過する際に減圧される。ここで、目標冷媒過熱度は、室内機5-1~5-10の各々で要求される冷房能力に基づいて定められるものである。また、冷房能力は、各室内機5-1~5-10において、設定された設定温度と検出した室内温度との温度差に基づいて決定されるものである。なお、冷房運転時における各室内熱交換器51の冷媒出口側での冷媒過熱度が本発明の「運転状態量」に相当し、目標冷媒過熱度が本発明の「所定の目標値」に相当する。
各室内機液管71から各室内熱交換器51に流入した冷媒は、各室内機ファン55の回転により室内機5-1~5-10の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。このように、各室内熱交換器51が蒸発器として機能し、各室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って冷却された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機5-1~5-10が設置された室内の冷房が行われる。
各室内熱交換器51から各室内機ガス管72に流出した冷媒は、各ガス管接続部54を介してガス管9に流出する。ガス管9で合流し閉鎖弁26を介して室外機2に流入した冷媒は、室外機ガス管45、四方弁22、冷媒配管46、アキュムレータ27、吸入管42の順に流れ、圧縮機20に吸入されて再び圧縮される。
<冷媒充填量不足の判定方法>
ここまでに説明した冷房運転や暖房運転において、各室内機5-1~5-10のそれぞれで所望の冷房能力あるいは暖房能力を発揮させるために、冷媒回路10には必要量の冷媒(以降、必要冷媒量と記載する場合がある)が充填される。本実施形態の空気調和装置1は、冷媒回路10に充填されている冷媒量が必要冷媒量に対して不足しているか否かを判定する充填不足判定が行えるものである。
充填不足判定は、例えば、空気調和装置1の設置時に、冷媒回路10に冷媒が充填された後に行われる試運転の際に実行され、冷媒回路10が冷房サイクルであっても暖房サイクルであっても実行することが可能である。具体的には、外気温度が所定外気温度(例えば、20℃)より高い場合は冷媒回路10が冷房サイクルとされて充填不足判定が実行され、外気温度が所定外気温度より低い場合は冷媒回路10が暖房サイクルとされて充填不足判定が実行される。
空気調和装置1が冷房運転を行うとき、前述したように、蒸発器として機能する各室内熱交換器51の冷媒出口側における冷媒過熱度がそれぞれ第1所定値となるように、各室内機膨張弁52の開度が調整される。そして、室内機膨張弁52の開度が変化しないのであれば、冷媒回路10に充填されている冷媒量が必要冷媒量より少ない場合の冷媒過熱度は、冷媒回路10に必要冷媒量が充填されているときの冷媒過熱度より大きな値となる。この場合は、冷媒過熱度を第1所定値とするために室内機膨張弁52の開度が、必要冷媒量が充填されている場合と比べてより大きくされるが、冷媒回路10における冷媒の不足量が多ければ、室内機膨張弁52の開度を最大開度としても冷媒過熱度が小さくならず第1所定値に到達しない。
つまり、冷媒回路10を冷房サイクルとした場合は、各室内機5-1~5-10の室内機膨張弁52の開度が全て最大開度となっているにも関わらず、各室内熱交換器51の冷媒出口側における冷媒過熱度がそれぞれ第1所定値となっていなければ、冷媒回路10に充填されている冷媒量が必要冷媒量に対して不足していると判定できる。
また、空気調和装置1が暖房運転を行うとき、前述したように、蒸発器として機能する室外熱交換器23の冷媒出口側における冷媒過熱度が第2所定値となるように、室外機膨張弁24の開度が調整される。そして、室外機膨張弁24の開度が変化しないのであれば、冷媒回路10に充填されている冷媒量が必要冷媒量より少ない場合の冷媒過熱度は、冷媒回路10に必要冷媒量が充填されているときの冷媒過熱度より大きな値となる。この場合は、冷媒過熱度を第2所定値とするために室外膨張弁24の開度が、必要冷媒量が充填されている場合と比べてより大きくされるが、冷媒回路10における冷媒の不足量が多ければ、室外機膨張弁24の開度を最大開度としても冷媒過熱度が小さくならず第1所定値に到達しない。
つまり、冷媒回路10を暖房サイクルとした場合は、室外機2の室外機膨張弁24の開度が最大開度となっているにも関わらず、室外熱交換器23の冷媒出口側における冷媒過熱度が第2所定値となっていなければ、冷媒回路10に充填されている冷媒量が必要冷媒量に対して不足していると判定できる。
ところで、上述した各室内機膨張弁52の開度や室外機膨張弁24の開度がそれぞれ最大開度となるのは、冷媒回路10に充填されている冷媒量が必要冷媒量に対して不足している場合だけではない。具体的には、冷房運転時に室外機2の外気温度センサ36で検出する外気温度が低い(例えば、5℃以下。以降、第1閾温度と記載する)場合は、凝縮器として機能している室外熱交換器23における凝縮圧力が低下することに起因して室外機膨張弁24の冷媒入口側(室外熱交換器23側)における冷媒圧力と冷媒出口側(閉鎖弁25側)における冷媒圧力との圧力差が小さくなる。このため、室外機膨張弁24の開度を大きくしても室外機膨張弁24を通過して各室内機5-1~5-10へと流れる冷媒量が、上記の圧力差が大きい場合と比べて少なくなる。このとき、蒸発器として機能している各室内機5-1~5-10の室内熱交換器51で必要とされる量の冷媒を当該各室内熱交換器51に流すために各室内機膨張弁52の開度が大きくされるが、室内温度によっては各室内機膨張弁52の開度が最大開度とされる場合がある。
また、暖房運転時に各室内機5-1~5-10の室内温度センサ63で検出する室内温度が低い(例えば、15℃以下。以降、第2閾温度と記載する)場合は、凝縮器として機能している各室内熱交換器51における凝縮圧力が低下することに起因して各室内機膨張弁52の冷媒入口側(室内熱交換器51側)における冷媒圧力と冷媒出口側(液管接続部53側)における冷媒圧力との圧力差が小さくなる。このため、各室内機膨張弁52の開度を大きくしても各室内機膨張弁52を通過して室外機2へと流れる冷媒量が、上記の圧力差が大きい場合と比べて少なくなる。このとき、蒸発器として機能している室外機2の室外熱交換器23で必要とされる量の冷媒を当該室外熱交換器23に流すために室外機膨張弁24の開度が大きくされるが、外気温度によっては室外機膨張弁24の開度が最大開度とされる場合がある。
以上に説明したように、冷媒回路10に必要冷媒量の冷媒が充填されていても空気調和装置1が空調運転を行う際の環境によっては、冷媒過熱度が第1所定値あるいは第2所定値となる前に各室内機膨張弁52あるいは室外機膨張弁24の開度が全開となる場合がある。そして、このような場合に、各室内機膨張弁52あるいは室外機膨張弁24の開度で冷媒回路10における冷媒充填量が不足しているか否かを判定すれば、冷媒回路10に必要冷媒量の冷媒が充填されているにも関わらず、冷媒の充填量が不足していると誤判定する恐れがある。
そこで、本実施形態の空気調和装置1で充填不足判定を行う場合は、凝縮器として機能する熱交換器に取り込まれる空気の温度である吸込温度が所定の閾温度より高いか否かに応じて、充填不足判定の方法を異ならせる。具体的には、吸込温度が閾温度より高い場合、前述した、蒸発器として機能する熱交換器への冷媒流量を調整する膨張弁の開度に基づいて充填不足判定を行う。一方、吸込温度が閾温度より低い場合は、高圧飽和温度と吸込温度との比較結果に基づいて充填不足判定を行う。
冷媒回路10に必要冷媒量の冷媒が充填されている場合は、凝縮器に空気を送るファン(以降、凝縮器ファンと記載する)の回転数を適切に制御することで、高圧飽和温度を吸込温度より高い温度とできる。しかし、冷媒回路10に充填されている冷媒量が必要冷媒量に対して不足している場合は、冷媒回路10に必要冷媒量の冷媒が充填されている場合と比べて凝縮器ファンの回転数を低下させないと高圧飽和温度を吸込温度より高い温度とすることができず、冷媒の不足量が多いと凝縮器ファンを停止させても高圧飽和温度を吸込温度より高い温度とすることができない。
従って、吸込温度が閾温度より低い場合は、高圧飽和温度と吸込温度とを比較し、凝縮器ファンが停止するまでに高圧飽和温度が吸込温度より高い温度となれば、冷媒回路10に必要冷媒量の冷媒が充填されていると判定し、凝縮器ファンが停止しても高圧飽和温度が吸込温度より高い温度とならなければ、冷媒回路10における冷媒量が必要冷媒量に対して不足していると判定する。
以下、冷媒回路10が冷房サイクルである場合と暖房サイクルである場合とに分けて、上述した吸込温度と閾温度の比較結果による充填不足判定の使い分けについて、より具体的に説明する。
まず、冷媒回路10を冷房サイクルとして充填不足量判定を行う場合は、外気温度センサ36で検出する外気温度(吸込温度に相当)が第1閾温度超である場合と第1閾温度以下である場合とで、充填不足量判定の方法を異ならせる。冷房サイクルでの充填不足量判定では、外気温度が第1閾温度超である場合は、前述した各室内機膨張弁52の開度を用いて充填不足量判定を行っても誤判定が起こらないと考えられるため、各室内機膨張弁52の開度を用いて、冷媒回路10における冷媒量が必要冷媒量に対して不足しているか否かを判定する。具体的には、各室内機膨張弁52の開度が最大開度となる前に各室内熱交換器51の冷媒出口側における冷媒過熱度が第1所定値となれば、冷媒回路10に必要冷媒量の冷媒が充填されていると判定する。また、各室内機膨張弁52の開度が最大開度となっているにも関わらず冷媒過熱度が第1所定値となっていなければ、冷媒回路10における冷媒量が必要冷媒量に対して不足していると判定する。
一方、外気温度が第1閾温度以下である場合は、前述した各室内機膨張弁52の開度を用いて充填不足量判定を行うと誤判定が起こる恐れがあると考えられるため、各室内機膨張弁52の開度に代えて、凝縮器として機能している室外熱交換器23における高圧飽和温度と外気温度とを用いて、冷媒回路10における冷媒量が必要冷媒量に対して不足しているか否かを判定する。具体的には、吐出圧力センサ31で検出した吐出圧力を用いて求めた高圧飽和温度と外気温度とを比較し、高圧飽和温度が外気温度よりも高い温度となっていれば、冷媒回路10に必要冷媒量の冷媒が充填されていると判定する。また、高圧飽和温度が外気温度よりも低い温度となっていれば、室外機ファン28(冷房サイクルで充填不足量判定を行う際の、本発明の凝縮器ファンに相当)の回転数を一定の割合で低下させ(例えば、高圧飽和温度と外気温度とを比較する度に回転数を50rpm低下させる)、室外機ファン28が停止しても高圧飽和温度が外気温度よりも低い温度であれば、冷媒回路10における冷媒量が必要冷媒量に対して不足していると判定する。
次に、冷媒回路10を暖房サイクルとして充填不足量判定を行う場合は、各室内温度センサ63で検出する室内温度(本発明の吸込温度に相当)のうちの最も高い温度(以降、最高室内温度と記載する)が第2閾温度超である場合と第2閾温度以下である場合とで、充填不足量判定の方法を異ならせる。暖房サイクルでの充填不足量判定では、最高室内温度が第2閾温度超である場合は、暖房負荷が小さく前述した室外機膨張弁24の開度を用いて充填不足量判定を行っても誤判定が起こらないと考えられるため、室外膨張弁24の開度を用いて、冷媒回路10における冷媒量が必要冷媒量に対して不足しているか否かを判定する。具体的には、室外膨張弁24の開度が最大開度となる前に室外熱交換器23の冷媒出口側における冷媒過熱度が第2所定値となれば、冷媒回路10に必要冷媒量の冷媒が充填されていると判定する。また、室外膨張弁24の開度が最大開度となっているにも関わらず冷媒過熱度が第2所定値となっていなければ、冷媒回路10における冷媒量が必要冷媒量に対して不足していると判定する。
一方、最高室内温度が第2閾温度以下である場合は、暖房負荷が大きく前述した室外機膨張弁24の開度を行うと誤判定が起こると考えられるため、室外膨張弁24の開度に代えて、凝縮器として機能している各室内熱交換器51における高圧飽和温度と最高室内温度とを用いて、冷媒回路10における冷媒量が必要冷媒量に対して不足しているか否かを判定する。具体的には、吐出圧力センサ31で検出した吐出圧力を用いて求めた高圧飽和温度と最高室内温度とを比較し、高圧飽和温度が最高室内温度よりも高い温度となっていれば、冷媒回路10に必要冷媒量の冷媒が充填されていると判定する。また、高圧飽和温度が最高室内温度よりも低い温度となっていれば、最高室内温度となっている室内機の室内機ファン55(暖房サイクルで充填不足量判定を行う際の、本発明の凝縮器ファンに相当)の回転数を一定の割合で低下させ(例えば、高圧飽和温度と最高室内温度とを比較する度に回転数を50rpm低下させる)、当該室内機ファン55が停止しても高圧飽和温度が最高室内温度よりも低い温度であれば、冷媒回路10における冷媒量が必要冷媒量に対して不足していると判定する。
<充填不足判定時の冷媒回路の動作について>
次に、図2を用いて、ここまでに説明した充填不足判定を行うときの冷媒回路10の動作について説明する。図2に示すのは、充填不足判定を行うときに冷媒回路10の各装置の動作を定めた充填不足判定時動作テーブル300である。この充填不足判定時動作テーブル300では、充填不足判定時に冷媒回路10を冷房サイクルとした場合と暖房サイクルとした場合の各々について、室外機2の圧縮機20、室外機ファン28、および、室外機膨張弁24の動作と、各室内機5-1~5-10の室内機ファン55と室内機膨張弁52の動作を定めている。
充填不足判定時動作テーブル300における冷房サイクル時については、圧縮機20は、吸入圧力センサ32で検出する低圧圧力が、各室内機5-1~5-10で要求される冷房能力に基づいて定められた所定の目標低圧圧力となるように回転数が制御される。室外機ファン28は、吐出圧力センサ31で検出した高圧圧力が、外気温度センサ36で検出した外気温度に応じた高圧圧力となるように回転数が制御される。室外機膨張弁24の開度は全開(最大開度)とされる。各室内機ファン55は、制御上の最大風量(例えば、室内機から吹き出される風量が強-中-弱と調節できる場合は、「強」とした場合)となるように回転数が制御される。各室内機膨張弁52は、蒸発器として機能する各室内熱交換器51の冷媒出口側における冷媒過熱度が第1所定値となるように開度が調整される。
充填不足判定時動作テーブル300における暖房サイクル時については、圧縮機20は、吐出圧力センサ31で検出する高圧圧力が、各室内機5-1~5-10で要求される暖房能力に基づいて定められた所定の目標高圧圧力となるように回転数が制御される。室外機ファン28は、吸入圧力センサ31で検出した低圧圧力が、圧縮機20への液バックの発生に繋がらない所定の範囲の値となるように回転数が制御される。室外機膨張弁24の開度は、蒸発器として機能する室外熱交換器23の冷媒出口側における冷媒過熱度が第2所定値となるように開度が調整される。各室内機ファン55は、制御上の最大風量となるように回転数が制御される。各室内機膨張弁52は、凝縮器として機能する各室内熱交換器51の冷媒出口側における冷媒過冷却度が第3所定値となるように開度が調整される。
本実施形態の空気調和装置1で充填不足判定を行う際は、冷媒回路10を冷房サイクルもしくは暖房サイクルとし、上述した充填不足判定時動作テーブル300に記載したように各装置を動作させて冷媒回路10が安定するのを待ち、冷媒回路10が安定すれば、蒸発器として機能する熱交換器への冷媒流量を調整する膨張弁の開度を用いて、あるいは、高圧飽和温度と吸込温度との比較結果に基づいて充填不足判定を行う。ここで、冷媒回路10が安定したか否かは、吐出圧力センサ31で検出した高圧圧力が複数回(例えば、3回)連続で所定の範囲内の圧力(例えば、±0.2MPa)となれば冷媒回路10が安定したと判定され、暖房サイクル時は目標高圧圧力から算出される温度が所定の範囲内の温度(例えば、±2℃)となれば冷媒回路10が安定したと判定される。
<充填不足判定に関わる処理の流れ>
次に、ここまでに説明した充填不足判定を行う際の処理の流れについて、図3乃至図5を用いて説明する。図3乃至図5に示す各フローチャートは、充填不足判定を行う際に室外機制御手段200のCPU210が行う処理を示すものであり、各フローチャートにおいてSTは処理のステップを示しこれに続く数字はステップの番号を示す。
以下、まずは、図3を用いて充填不足判定を冷房サイクルあるいは暖房サイクルのどちらで行うかを決定する処理を説明し、次に、図4を用いて暖房サイクルでの充填不足判定に関わる処理を説明し、最後に、図5を用いて冷房サイクルでの充填不足判定に関わる処理を説明する。
<充填不足判定を行う冷凍サイクル状態の決定>
充填不足判定の実行が、例えば空気調和装置1の設置作業者によって指示されると、この指示を受けた室外機制御手段200のCPU210は、図3に示すフローチャートのように処理を行って充填不足判定を冷房サイクルあるいは暖房サイクルのどちらで行うかを決定する。なお、図3において、外気温度をTo、所定外気温度をTotとしている。
まず、CPU210は、外気温度Toを取り込む(ST100)。なお、CPU210は、取り込んだ外気温度Toを記憶部220に記憶する。次に、CPU210は、取り込んだ外気温度Toが所定外気温度Totより高い温度であるか否かを判断する(ST101)。なお、所定外気温度Totは、予め定められて記憶部220に記憶されており(本実施形態では、前述したように20℃)、CPU210は、外気温度Toを取り込む度に所定外気温度Totを記憶部220から読みだして外気温度Toと比較する。
ST101の処理において、取り込んだ外気温度Toが所定外気温度Totより高い温度であれば(ST101-Yes)、CPU210は、冷媒回路10を冷房サイクルとして充填不足判定を実行することを決定する(ST102)。一方、取り込んだ外気温度Toが所定外気温度Totより高い温度でなければ(ST101-No)、CPU210は、冷媒回路10を暖房サイクルとして充填不足判定を実行することを決定する(ST103)。そして、ST102あるいはST103のいずれかの処理を終えたCPU210は、充填不足判定を行う冷媒回路10の状態の決定に関わる処理を終了する。
<冷房サイクルでの充填不足判定>
上述した、充填不足判定を行う冷凍サイクル状態の決定処理によって、冷媒回路10を冷房サイクルとして充填不足判定を行うと決定された場合(図3の処理において、ST102が選択された場合)は、CPU210は、図4に示すフローチャートのように処理を行って冷房サイクルでの充填不足判定を実行する。なお、図4において、第1閾温度をTs1、室内機膨張弁52の開度である室内機膨張弁開度をDi、吐出圧力をPh、高圧飽和温度をThsとしている。
まず、CPU210は、冷媒回路10を冷房サイクルとする(ST1)。次に、CPU210は、各室内機5-1~5-10に充填不足判定に関わる制御を行うよう指示する(ST2)。具体的には、CPU210は、通信部230を介して各室内機5-1~5-10に対して、図2に示す充填不足判定時動作テーブル300に記載のように、冷房サイクル時における室内機ファン55と室内機膨張弁52の制御を行うよう指示する旨の信号を送信し、この信号を受信した各室内機5-1~5-10は、室内機ファン55と室内機膨張弁52をそれぞれ充填不足判定時動作テーブル300に記載の通りに制御する。
次に、CPU210は、充填不足判定を開始する(ST3)。具体的には、CPU210は、冷房サイクル時における圧縮機20と室外機ファン28と室外機膨張弁24をそれぞれ図2に示す充填不足判定時動作テーブル300に記載の通りに制御する。
次に、CPU210は、冷媒回路10が安定したか否かを判断する(ST4)。具体的には、CPU210は、吐出圧力センサ31で検出した高圧圧力が複数回(例えば、3回)連続で所定の範囲内の圧力(例えば、±0.2MPa)となれば、冷媒回路10が安定したと判断する。
冷媒回路10が安定していなければ(ST4-No)、CPU210は、ST4に処理を戻して冷媒回路10が安定するのを待つ。冷媒回路10が安定すれば(ST4-Yes)、CPU210は、外気温度センサ36で検出された外気温度Toをセンサ入力部240を介して取り込む(ST5)。
次に、CPU210は、ST5で取り込んだ外気温度Toが第1閾温度Ts1以上の温度であるか否かを判断する(ST6)。外気温度Toが第1閾温度Ts1以上の温度であれば(ST6-Yes)、CPU210は、各室内機5-1~5-10の室内機膨張弁開度Diを通信部20を介して取り込み(ST7)、取り込んだ各室内機膨張弁開度Diが全て最大開度であるか否かを判断する(ST8)。
取り込んだ各室内機膨張弁開度Diが全て最大開度であれば(ST8-Yes)、CPU210は、冷媒回路10に充填されている冷媒量が必要充填量に対して不足していると判定し(ST9)、この判定結果を報知して(ST10)、冷房サイクル時の充填不足判定に関わる処理を終了する。一方、ST8において取り込んだ各室内機膨張弁開度Diが全て最大開度でなければ(ST8-No)、CPU210は、冷媒回路10に必要充填量の冷媒が充填されている、つまり、適正充填量であると判定し(ST11)、この判定結果を報知して(ST10)、冷房サイクル時の充填不足判定に関わる処理を終了する。なお、ST10における判定結果の報知は、例えば、室外機2に表示部が設けられていれば当該表示部に判定結果を表示して報知してもよく、また、判定結果を各室内機5-1~5-10に通知して各室内機5-1~5-10の表示部に判定結果を表示して報知してもよい。
ST6において、外気温度Toが第1閾温度Ts1以上の温度でなければ(ST6-No)、CPU210は、吐出圧力センサ31で検出した吐出圧力Phをセンサ入力部240を介して取り込み、取り込んだ吐出圧力Phを用いて高圧飽和温度Thsを算出する(ST12)。
次に、CPU210は、ST12で算出した高圧飽和温度ThsがST5で取り込んだ外気温度Toより高い温度であるか否かを判断する(ST13)。高圧飽和温度Thsが外気温度Toより高い温度であれば(ST13-Yes)、CPU210は、ST11に処理を進める。高圧飽和温度Thsが外気温度Toより高い温度でなければ(ST13-No)、CPU210は、室外機ファン28の回転数を所定の割合で低下させる(ST14)。前述したように、室外機ファン28の回転数を低下させる際の所定の割合は、吐出圧力Phや外気温度Toを取り込んでST13の判断が「No」となる度に所定回転数(本実施形態では、50rpm)だけ低下させる。
そして、CPU210は、室外機ファン28の回転数が0rpm、つまり、室外機ファン28が停止したか否かを判断する(ST15)。室外機ファン28が停止していれば(ST15-Yes)、CPU210は、ST9に処理を進めて冷媒回路10に充填されている冷媒量が必要充填量に対して不足していると判定する。室外機ファン28が停止していなければ(ST15-No)、CPU210は、ST12に処理を戻してST12~ST15の処理を繰り返す。
<暖房サイクルでの充填不足判定>
前述した、充填不足判定を行う冷凍サイクル状態の決定処理によって、冷媒回路10を暖房サイクルとして充填不足判定を行うと決定された場合(図3の処理において、ST103が選択された場合)は、CPU210は、図5に示すフローチャートのように処理を行って暖房サイクルでの充填不足判定を実行する。なお、図5において、室内温度をTi、最高室内温度をTimax、第2閾温度をTs2、室外機膨張弁24の開度である室外機膨張弁開度をDoとしている。
まず、CPU210は、冷媒回路10を暖房サイクルとする(ST21)。次に、CPU210は、各室内機5-1~5-10に充填不足判定に関わる制御を行うよう指示する(ST22)。具体的には、CPU210は、通信部230を介して各室内機5-1~5-10に対して、図2に示す充填不足判定時動作テーブル300に記載の暖房サイクル時における室内機ファン55と室内機膨張弁52の動作を行うよう指示する旨の信号を送信し、この信号を受信した各室内機5-1~5-10は室内機ファン55と室内機膨張弁52をそれぞれ充填不足判定時動作テーブル300に記載の通りに制御する。
次に、CPU210は、充填不足判定を開始する(ST23)。具体的には、CPU210は、暖房サイクル時における圧縮機20と室外機ファン28と室外機膨張弁24をそれぞれ図2に示す充填不足判定時動作テーブル300に記載の通りに制御する。
次に、CPU210は、冷媒回路10が安定したか否かを判断する(ST24)。具体的には、CPU210は、吐出圧力センサ31で検出した高圧圧力が複数回(例えば、3回)連続で所定の範囲内の圧力(例えば、±0.2MPa)となれば、冷媒回路10が安定したと判断する。
冷媒回路10が安定していなければ(ST24-No)、CPU210は、ST24に処理を戻して冷媒回路10が安定するのを待つ。冷媒回路10が安定すれば(ST24-Yes)、CPU210は、各室内機5-1~5-10の室内温度センサ63でそれぞれ検出された室内温度Tiを、通信部20を介して取り込み、取り込んだ各室内温度Tiの中から最高室内温度Timaxを選定する(ST25)。
次に、CPU210は、ST25で選定した最高室内温度Timaxが第2閾温度Ts2以上の温度であるか否かを判断する(ST26)。最高室内温度Timaxが第2閾温度Ts2以上の温度であれば(ST26-Yes)、CPU210は、室外機膨張弁開度Doを取り込み(ST27)、取り込んだ室外機膨張弁開度Doが最大開度であるか否かを判断する(ST28)。
取り込んだ室外機膨張弁開度Doが最大開度であれば(ST28-Yes)、CPU210は、冷媒回路10に充填されている冷媒量が必要充填量に対して不足していると判定し(ST29)、この判定結果を報知して(ST30)、暖房サイクル時の充填不足判定に関わる処理を終了する。一方、ST28において取り込んだ室外機膨張弁開度Doが最大開度でなければ(ST28-No)、CPU210は、冷媒回路10に必要充填量の冷媒が充填されている、つまり、適正充填量であると判定し(ST31)、この判定結果を報知して(ST30)、暖房サイクル時の充填不足判定に関わる処理を終了する。
ST26において、外気温度Toが第2閾温度Ts2以上の温度でなければ(ST26-No)、CPU210は、吐出圧力センサ31で検出した吐出圧力Phをセンサ入力部240を介して取り込み、取り込んだ吐出圧力Phを用いて高圧飽和温度Thsを算出する(ST32)。
次に、CPU210は、ST32で算出した高圧飽和温度ThsがST25で選定した最高室内温度Timaxより高い温度であるか否かを判断する(ST33)。高圧飽和温度Thsが最高室内温度Timaxより高い温度であれば(ST33-Yes)、CPU210は、ST31に処理を進める。高圧飽和温度Thsが最高室内温度Timaxより高い温度でなければ(ST33-No)、CPU210は、最高室内温度Timaxとなっている室内機の室内機ファン55の回転数を所定の割合で低下させる(ST34)。前述したように、室内機ファン55の回転数を低下させる際の所定の割合は、吐出圧力Phや室内温度Tiを取り込んでST33の判断が「No」となる度に所定回転数(本実施形態では、50rpm)だけ低下させる。
そして、CPU210は、最高室内温度Timaxとなっている室内機の室内機ファン55の回転数が0rpm、つまり、当該室内機ファン55が停止したか否かを判断する(ST35)。当該室内機ファン55が停止していれば(ST35-Yes)、CPU210は、ST29に処理を進めて冷媒回路10に充填されている冷媒量が必要充填量に対して不足していると判定する。当該室内機ファン55が停止していなければ(ST35-No)、CPU210は、ST32に処理を戻してST32~ST35の処理を繰り返す。
以上説明したように、本実施形態の空気調和装置1では、充填不足判定を行う際に、冷媒回路10を冷房サイクルもしくは暖房サイクルとし、充填不足判定時動作テーブル300に記載したように各装置を動作させて冷媒回路10が安定するのを待ち、冷媒回路10が安定すれば、蒸発器として機能する熱交換器への冷媒流量を調整する膨張弁の開度を用いて、あるいは、高圧飽和温度と吸込温度との比較結果に基づいて充填不足判定を行う。これにより、外気温度に応じて冷媒回路10の状態を適切な状態としつつ、吸込温度と閾温度の比較結果に応じて冷媒回路10における冷媒の充填量が適切であるか否かを判定する方法を異ならせているので、空気調和装置1の運転環境に関わらず正確に冷媒回路10における冷媒の充填量が適切であるか否かを判定することができる。
なお、以上に説明した本発明の実施形態では、1台の室外機2に複数台の室内機5-1~5-10が接続される場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、1台の室外機2に1台の室内機5(室内機5-1~5-10のいずれか1台)が接続される空気調和装置にも同様に適用可能である。このような空気調和装置で、冷房サイクルで充填不足判定を行うときに外気温度が第1閾温度以下である場合は、室内機5の室内機膨張弁52の開度を用いて冷媒回路10における冷媒の充填量が適切であるか否かを判定すればよい。また、暖房サイクルで充填不足判定を行うときに室内機5で検出した室内温度が第2閾温度以上でない場合は、高圧飽和温度と室内温度を比較して冷媒回路10における冷媒の充填量が適切であるか否かを判定すればよい。
また、以上に説明した本発明の実施形態では、吸込温度が閾温度より低くて高圧飽和温度と吸込温度とを比較して充填不足判定を行うときに、蒸発器ファンを停止しても高圧飽和温度が吸込温度、あるいは、最高吸入温度(本実施形態の最高室内温度に相当)を超えない場合に、冷媒回路10における冷媒の充填量が必要充填量に対して不足していると判断した。これに代えて、蒸発器ファンを停止しても高圧飽和温度が吸込温度より所定温度高い温度である第1閾吸込温度、あるいは、最高吸入温度より所定温度高い温度である第2閾吸込温度を超えない場合に、冷媒回路10における冷媒の充填量が必要充填量に対して不足していると判断してもよい。
冷媒回路10における冷媒の充填量が必要充填量に対して不足しているときでも、圧縮機20は駆動し続けており、実際の高圧飽和温度は、吐出圧力を用いて算出した温度より圧縮機20による冷媒の加熱分(例えば、圧縮機20の機構部の発熱による冷媒の加熱)だけ高い温度となる場合がある。この場合、高圧飽和温度が吸込温度あるいは最高吸入温度を超えて、冷媒回路10における冷媒の充填量が適切であると誤判定する場合がある。そこで、圧縮機20の加熱分を吸込温度に加えた温度を第1閾吸込温度として、あるいは、圧縮機20の加熱分を最高吸込温度に加えた温度を第2閾吸込温度として、これら各閾吸込温度と高圧飽和温度を比較すれば、圧縮機20の加熱分を排除した、より正確な不足冷媒判定が行える。なお、圧縮機20の加熱分は、予め試験などを行って求めておけばよく、一例として圧縮機20の加熱分は1℃~2℃である。