JP7445502B2 - センサ - Google Patents

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Description

本発明は、カラーセンタを有する素子を用いたセンサに関する。
NVセンタを有するダイヤモンド素子を用いて光検出磁気共鳴(ODMR:Optically Detected Magnetic Resonance)の原理により磁界を計測するセンサが知られている(例えば、特許文献1参照)。このセンサでは、励起光としての緑色光をNVセンタに照射すると共にマイクロ波を周波数掃引しながらNVセンタに照射し、NVセンタから発せられる赤色蛍光を検出する。このセンサでは、共鳴周波数のマイクロ波がNVセンタに照射されると、NVセンタにおいて電子スピン共鳴が生じてNVセンタから発せられる赤色蛍光の輝度が低下する。ここで、磁界が存在する場合、NVセンタにゼーマン分裂が生じることにより、マイクロ波の周波数掃引時に少なくとも2点の赤色蛍光の輝度低下点が生じる。NVセンタにおけるゼーマン分裂は、磁界強度に比例した大きさで生じるので、2点の赤色蛍光の輝度低下点に対応するマイクロ波の周波数の差(以下、周波数のスプリットという)は、磁界強度に比例して大きくなる。これにより、このマイクロ波の周波数のスプリットの大きさに基づいて磁界強度を検出できる。
国際公開第2015/107907号
ところで、電動車(xEV)の電池残量を計測する電池センサには、電動車の出力電流のレンジの拡大に伴う測定レンジの拡大の要求がある。この電池センサに上述のセンサを用いる場合、マイクロ波の周波数のスプリットの変動のレンジが拡大する。そのため、広い周波数帯域でセンサを動作させることが要求される。また、センサには小型化や部品点数の削減の要求もある。
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、NVセンタ等のカラーセンタを有する素子を用いたセンサを、広い周波数帯域で安定して動作させることができ、且つ、センサの小型化や部品点数の削減にも対応できるセンサを提供することにある。
本発明のセンサは、カラーセンタを有する素子と、放射素子と、前記放射素子に周波数可変の高周波電流を給電して前記放射素子から前記素子に周波数可変のマイクロ波を周波数を掃引しながら放射させる給電器とを備え、前記放射素子は、前記素子の表面に形成された複数のループ導体を備え、前記複数のループ導体は、相互に周方向の長さが異なり、周方向の長さが大きくなるほど外周側に位置するように多重に相互に間隔を空けて配されており、相互に共振周波数が異なり、前記複数のループ導体の共振周波数は、内周側から外周側へかけて低くなり、最も内周側の前記ループ導体の共振周波数は、掃引される前記マイクロ波の周波数の最高値と等しく、最も外周側の前記ループ導体の共振周波数は、掃引される前記マイクロ波の周波数の最低値と等しい
本発明によれば、NVセンタ等のカラーセンタを有する素子を用いたセンサを、広い周波数帯域で安定して動作させることができ、且つ、センサの小型化や部品点数の削減にも対応できる。
本発明の一実施形態に係るセンサの概略を示す図である。 NVセンタを有するダイヤモンド素子の構造を模式的に示す図である。 NVセンタを有するダイヤモンド素子を備え光検出磁気共鳴の原理により磁界強度等を計測するダイヤモンド量子センサの原理を説明するための図である。 マイクロ波の周波数掃引時の赤色蛍光の輝度低下点とマイクロ波の周波数と磁界強度との関係を示すグラフである。 アンテナ及びダイヤモンド素子を示す斜視図である。 放射素子を3個にしたアンテナのモデルを示す図である。 図6Aに示すアンテナの直上での磁界強度(A/m)のシミュレーション結果を示す図である。 放射素子を4個にしたアンテナのモデルを示す図である。 図7Aに示すアンテナの直上での磁界強度(A/m)のシミュレーション結果を示す図である。 放射素子を5個にしたアンテナのモデルを示す図である。 図8Aに示すアンテナの直上での磁界強度(A/m)のシミュレーション結果を示す図である。 放射素子を5個にしたアンテナのモデルA~Eにおける周波数-磁束量の特性を確認したシミュレーション結果を示す図である。 図9に示すアンテナのモデルA~Eの周波数特性を示すグラフである。
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ1の概略を示す図である。この図に示すように、センサ1は、NVセンタを有するダイヤモンド素子2と、励起光としての緑色光GLをダイヤモンド素子2に照射する光学系3と、NVセンタの電子スピン共鳴に起因して生じる光信号を検知する光センサ4と、光センサ4が検知した光信号を処理し、センサ1全体の制御を司る制御・演算処理部5と、ダイヤモンド素子2に周波数可変のマイクロ波を照射するアンテナ10と、アンテナ10に高周波電流を給電する電力増幅器6とを備える。センサ1は、緑色光GLをNVセンタに照射すると共にマイクロ波を周波数掃引しながらNVセンタに照射させ、光検出磁気共鳴の原理により、計測対象の磁界強度、電界強度、温度等を計測する。
ダイヤモンド素子2は、例えば、縦2~5mm×横2~5mmの方形の板状に形成されている。即ち、ダイヤモンド素子2は、縦と横の寸法が10mmに満たない小サイズの板状の素子である。
一方、アンテナ10は、例えば、縦2~5mm×横2~5mmの方形のマイクロ波放射領域を備える平面アンテナである。即ち、アンテナ10は、縦と横の寸法が10mmに満たない小サイズのマイクロ波放射領域を備える平面アンテナである。なお、アンテナ10のマイクロ波MWを放射する面の面積及び形状は、ダイヤモンド素子2の方形の面の面積及び形状と同等であることが好ましい。詳細は後述するが、アンテナ10のマイクロ波MWを放射する面は、ダイヤモンド素子2の方形の面に、直接、形成されている。
図2は、NVセンタを有するダイヤモンド素子2の構造を模式的に示す図である。この図に示すように、NVセンタは、ダイヤモンド格子中の炭素の置換位置に入った窒素(Nitrogen)と、この窒素に隣接する炭素原子が抜けた空孔(Vacancy)との対からなる複合不純物欠陥である。このNVセンタは、中性電荷状態NV0から電子を1個捕獲してNVとなると、磁気量子数m=-1、0、+1の電子スピン3重項状態を形成する。ダイヤモンド量子センサは、この電子スピン3重項状態を用いて磁界や電界や温度や歪み等を計測する。
図3は、NVセンタを有するダイヤモンド素子2を備え光検出磁気共鳴の原理により磁界強度等を計測するダイヤモンド量子センサの原理を説明するための図である。図2及び図3に示すように、NVセンタは、励起光としての緑色光GLを照射されると赤色蛍光RLを発する。この赤色蛍光RLの輝度は、NVセンタが基底状態(電子スピンの磁気量子数m=0の状態)から励起された場合には大きいのに対して、NVセンタが電子スピン共鳴が生じる準位(電子スピンの磁気量子数m=±1の状態)から励起された場合には小さくなる。
ここで、磁界強度が0の場合に共鳴周波数(約2.8GHz)のマイクロ波MWをNVセンタに照射すると、NVセンタが電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)が生じる準位(m=±1)に遷移する。この準位から光励起された電子の一部は、無輻射遷移を経て基底状態に戻ることにより発光に寄与しない。従って、上述のように、NVセンタが電子スピン共鳴が生じる準位から励起された場合、赤色蛍光RLの輝度は低下する。
図4は、マイクロ波MWの周波数掃引時の赤色蛍光RLの輝度低下点とマイクロ波MWの周波数と磁界強度Bとの関係を示すグラフである。このグラフに示すように、磁界強度Bが0の場合には、赤色蛍光RLの輝度低下点は1点のみであるのに対し、磁界強度Bが0より大きな値B,B,B(B>B>B>0)である場合には、赤色蛍光RLの輝度低下点は2点存在する。ここで、2点の赤色蛍光RLの輝度低下点に対応するマイクロ波MWの周波数のスプリットΔf(=f-f)は、磁界強度Bに比例して大きくなる。
ところで、本実施形態のセンサ1は、電動車の電池残量を計測する電池センサとして使用される。ここで、電動車の出力電流のレンジは、例えば10mAから1000Aを超える値までというように広い。それに伴って、本実施形態のセンサ1のアンテナ10には、マイクロ波MWを、例えば1~5GHzのような広い周波数帯域で掃引でき、この広い周波数帯域で安定して高出力である性能が要求される。また、アンテナ10のサイズをダイヤモンド素子2のサイズに合わせて小型化することが要求される。本実施形態では、ダイヤモンド素子2が縦2~5mm×横2~5mmの方形と小型であることから、アンテナ10もダイヤモンド素子2と同様に小型の方形にする必要がある。さらに、アンテナ10の部品点数の削減も要求される。即ち、アンテナ10には、小型化や部品点数の削減という制約の上で上記性能を満たすことが要求される。
以下、図5~図10を参照してアンテナ10について説明する。図5は、アンテナ10及びダイヤモンド素子2を示す斜視図である。これらの図に示すように、アンテナ10は、放射素子12と、複数のコンデンサ13A,13B,13C,13D,13Eと、給電点14B,14Dとを備える。
放射素子12は、複数のループ状の導体(以下、ループ導体という)12A,12B,12C,12D,12Eを備える。複数のループ導体12A,12B,12C,12D,12E(以下、12A~12Eと記載する場合がある。)は、ダイヤモンド素子2の方形の面に設定されたマイクロ波放射領域に形成されている。ループ導体12A~12Eは、銅箔等の導電性の箔であり、方形のループ状(環状)に形成されている。ループ導体12A~12Eの形成方法としては、例えば銅箔エッチング等が挙げられる。
ループ導体12A~12Eは、相互に周方向の長さが異なる。なお、後述するようにループ導体12A~12Eには1箇所のギャップGが設けられているが、このギャップGの部分を含めたループ導体12A~12Eの周方向の長さを、ループ導体12A~12Eの周長と称する。
ループ導体12A~12Eの周長は、12A、12B、12C、12D、12Eの順に大きくなる。周長が最大(1番目)のループ導体12Eは、マイクロ波放射領域の最外周部に形成されている。周長が2番目のループ導体12Dは、ループ導体12Eより内周側にループ導体12Eとの間に間隔を空けて形成されている。周長が3番目のループ導体12Cは、ループ導体12Dより内周側にループ導体12Dとの間に間隔を空けて形成されている。周長が4番目のループ導体12Bは、ループ導体12Cより内周側にループ導体12Cとの間に間隔を空けて形成されている。周長が5番目(最小)のループ導体12Aは、ループ導体12Bより内周側にループ導体12Bとの間に間隔を空けて形成されている。
ループ導体12A~12Eの中心は、一致している。また、ループ導体12A~12Eは、マイクロ波放射領域の中央部から最外周部まで等間隔で配されている。
5個のギャップGは、同一直線上に並ぶように整列されている。この5個のギャップGを通る直線は、ループ導体12A~12Eの中心を通りループ導体12A~12Eの図中の上下に平行に並んだ対辺と直交する。ここで、それぞれのループ導体12A~12Eは、図中の上下に平行に並んだ対辺を有するところ、ギャップGは、ループ導体12A~12Eの図中の上側の一辺に形成されている。
複数のコンデンサ13A,13B,13C,13D,13E(以下、13A~13Eと記載する場合がある。)は、ダイヤモンド素子2の方形の面における放射素子12が形成された領域に設けられている。複数のコンデンサ13A~13Eは、放射素子12の図中左右方向の中央部に1列に並べて整列されている。
コンデンサ13Aは、ループ導体12AのギャップGに配され、ループ導体12Aの両端と電気的に接続されている。このコンデンサ13Aは、ループ導体12Aの共振周波数を調整する機能を有する。ループ導体12Aの共振周波数は、第1周波数(例えば、約5GHz)に調整されている。この第1周波数は、スプリットΔf(=f-f)が最大になるときの周波数fに対応する。
コンデンサ13Bは、ループ導体12BのギャップGに配され、ループ導体12Bの両端と電気的に接続されている。このコンデンサ13Bは、ループ導体12Bの共振周波数を調整する機能を有する。ループ導体12Bの共振周波数は、第1周波数より低い第2周波数(例えば、約4GHz)に調整されている。
コンデンサ13Cは、ループ導体12CのギャップGに配され、ループ導体12Cの両端と電気的に接続されている。このコンデンサ13Cは、ループ導体12Cの共振周波数を調整する機能を有する。ループ導体12Cの共振周波数は、第2周波数より低い第3周波数(例えば、約3GHz)に調整されている。
コンデンサ13Dは、ループ導体12DのギャップGに配され、ループ導体12Dの両端と電気的に接続されている。このコンデンサ13Dは、ループ導体12Dの共振周波数を調整する機能を有する。ループ導体12Dの共振周波数は、第3周波数より低い第4周波数(例えば、約2GHz)に調整されている。
コンデンサ13Eは、ループ導体12EのギャップGに配され、ループ導体12Eの両端と電気的に接続されている。このコンデンサ13Eは、ループ導体12Eの共振周波数を調整する機能を有する。ループ導体12Eの共振周波数は、第4周波数より低い第5周波数(例えば、約1GHz)に調整されている。この第5周波数は、スプリットΔf(=f-f)が最大になるときの周波数fに対応する。なお、第1~第5周波数は、等間隔で設定することが好ましい。
給電点14Bは、ループ導体12B上に設定されている。この給電点14Bにおいて、同軸ケーブル等の給電線Lの終端がループ導体12Bに電気的に接続されている。この給電線Lの始端は、電力増幅器6(図1参照)に接続されている。
給電点14Dは、ループ導体12D上に設定されている。この給電点14Dにおいて、同軸ケーブル等の給電線Lの終端がループ導体12Dに電気的に接続されている。この給電線Lの始端は、電力増幅器6に接続されている。
以上のような構成のアンテナ10は、電力増幅器6から2本の給電線L,Lを通して2点の給電点14B,14Dにおいて周波数可変の高周波電流を給電され、ループ導体12A~12Eから周波数可変のマイクロ波MWを放射する。アンテナ10に給電される高周波電流の周波数は掃引される。この高周波電流の周波数掃引時の周波数に応じて、ループ導体12A~12Eのいずれかにおいて共振が生じ、共振により増幅された電流に比例した磁界がループ導体12A~12Eから発生する。
以下、本発明者が本実施形態のアンテナ10の効果を確認するために実施したシミュレーションについて図6A~図10を参照して説明する。本発明者は、ループ導体12Sの数による効果の差異を確認するためのシミュレーションを実施した。図6Aは、ループ導体12Sを3個にしたアンテナのモデルを示す図であり、図6Bは、図6Aに示すアンテナの直上での磁界強度(A/m)のシミュレーション結果を示す図である。図7Aは、ループ導体12Sを4個にしたアンテナのモデルを示す図であり、図7Bは、図7Aに示すアンテナの直上での磁界強度(A/m)のシミュレーション結果を示す図である。図8Aは、ループ導体12Sを5個にしたアンテナのモデルを示す図であり、図8Bは、図8Aに示すアンテナの直上での磁界強度(A/m)のシミュレーション結果を示す図である。これらのモデルでは、各ループ導体12Sの上下一対の対辺のうちの上側の一辺にコンデンサ13Sが設定されている。
このシミュレーションでの磁界強度(A/m)は、アンテナの直上の縦5mm×横5mmの方形領域における磁界強度であり、ダイヤモンド素子2の放射素子12が形成された領域における磁界強度を想定している。アンテナの磁界の発生領域は、縦5mm×横5mmの方形領域である。給電点は、ループ導体12Sが3個、4個、5個の何れの場合も、外周側から2番目のループ導体12S上に設定した。即ち、本シミュレーションでは、上述の実施形態のアンテナ10とは異なり、給電点は1点とした。
このシミュレーションでは、1~5GHzのレンジで高周波電流の周波数を掃引した。図6B、図7B、及び図8Bは、高周波電流の周波数が1GHz、2GHz、3GHz、4GHz、5GHzのときのアンテナの直上での磁界強度の分布を示している。これらの図においてハッチングで示す領域は、磁界強度が10A/m以上の領域である。これらの図から、ループ導体12Sの数が多くなるほど、磁界強度が10A/m以上の領域が広くなり、アンテナの特性が良好になることを確認できる。
ここで、図8Bから、5個のループ導体12Sに2GHzの高周波電流を給電した場合が、磁界強度が10A/m以上の領域が最も広くなり、アンテナの特性が最も良好になることを確認できる。本実施形態のアンテナ10の外周側から2番目のループ導体12Dの共振周波数は約2GHzであり、このループ導体12Dには給電点14Dが設定されている(図5参照)。従って、本実施形態のアンテナ10は、本シミュレーションで最も特性が良好になる条件を満たしている。
本発明者は、複数のループ導体12Sの給電点の位置による効果の差異を確認するためのシミュレーションを実施した。図9は、ループ導体12Sを5個にしたアンテナのモデルA~Eにおける周波数-磁束量の特性を確認したシミュレーション結果を示す図である。このシミュレーションにおいて、モデルAは、最も内周側のループ導体12S上に給電点を設定したものであり、モデルBは、内周側から2番目のループ導体12S上に給電点を設定したものであり、モデルCは、内周側から3番目のループ導体12S上に給電点を設定したものであり、モデルDは、内周側から4番目のループ導体12S上に給電点を設定したものであり、モデルEは、最も外周側のループ導体12S上に給電点を設定したものである。アンテナの磁界の発生領域は、縦5mm×横5mmの方形領域である。
このシミュレーションから、内側から4番目のループ導体12S上に給電点を設定したモデルDが、広い周波数帯域に亘って安定して高出力という効果が最大化することを確認できる。本実施形態のアンテナ10の内側から4番目のループ導体12Dには給電点14Dが設定されている(図5参照)。従って、本実施形態のアンテナ10は、本シミュレーションで確認された広い周波数帯域に亘って安定して高出力という効果を最大化するための条件を満たしている。
本発明者は、ループ導体12Sを多重化することによる広帯域化を確認するためのシミュレーションを実施した。図10は、図9に示すモデルA~Eの周波数特性を示すグラフである。このグラフの横軸は高周波電流の周波数、縦軸は磁界強度である。
本シミュレーションで用いるモデルA~Eのそれぞれのループ導体12Sの共振周波数は、内周側ほど高く外周側ほど低くなるように設定されている。このグラフから、アンテナから発生する磁界強度は、高周波電流の周波数がそれぞれのループ導体12Sの共振周波数と一致するときに増幅されることを確認できる。従って、ループ導体12Sを多重化することによりアンテナの広帯域化を実現できる。
以上説明したように、本実施形態に係るアンテナ10では、相互に周長が異なる複数のループ導体12A~12Eが、周長が大きくなるほど外周側に位置するように多重に相互に間隔を空けて配されており、相互に共振周波数が異なる。このような構成を採用したことにより、それぞれのループ導体12A~12Eの共振周波数を計測対象の磁界強度やそのレンジに応じて適宜設定できる。また、方形のマイクロ波放射領域内での磁界強度が高い領域を広げることができる。さらに、アンテナ10から発生される磁界強度を共振を利用して増幅できる。これにより、アンテナ10をダイヤモンド素子2のサイズに合わせて小型化した場合でも、その小型化されたアンテナ10が、1~5GHzのような広い周波数帯域で安定して高出力のマイクロ波MWを放射することが可能になる。さらに、複数のループ導体12A~12Eを、直接、ダイヤモンド素子2の表面に形成したことにより、通常の平面アンテナが必要とする基板を不要にできる。従って、NVセンタを有するダイヤモンド素子2を用いたセンサ1を、小型化や部品点数の削減という制約の上で、広い周波数帯域で安定して動作させることが可能になる。
また、本実施形態に係るアンテナ10によれば、発生する磁界強度を共振を利用して増幅するので、小型化の制約の上でアンテナ10を高出力化すると共に、アンテナ10に入力するエネルギーを低減することができる。
また、複数のループ導体12A~12Eが形成されたダイヤモンド素子2は、放熱板として機能する。従って、複数のループ導体12A~12Eで熱が発生した場合でも、その熱による影響をダイヤモンド素子2の放熱機能により緩和できる。
また、複数のループ導体12A~12Eをダイヤモンド素子2の平坦な表面に、直接、形成したことにより、ループ導体12A~12Eとダイヤモンド素子2との平行性を確保できる。
また、本実施形態に係るアンテナ10によれば、複数のループ導体12A~12Eのうちの2つのループ導体12B,12Dに給電点が設定されていることにより、給電点がループ導体12Dの1点のみに設定されている場合に比して、方形のマイクロ波放射領域の中心側の磁界強度を高めることができる。
また、本実施形態に係るアンテナ10によれば、複数のループ導体12A~12Eのうちの最も外周側から2番目のループ導体12Dに給電点14Dが設定されている。これにより、給電点が最も外周側のループ導体12Eに設定されている場合に比して、広い周波数帯域に亘って安定して高出力という効果が大きくなる(図9参照)。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせてもよい。
例えば、本実施形態では、励振対象のカラーセンタを有する素子をNVセンタを有するダイヤモンド素子としたが、当該素子を、スズ(Sn)と空孔とからなるSnVカラーセンタを有するダイヤモンド素子、シリコン(Si)と空孔とからなるSiVカラーセンタを有するダイヤモンド素子、又はゲルマニウム(Ge)と空孔とからなるGeVカラーセンタを有するダイヤモンド素子等の他のものにしてもよい。
また、本実施形態では、ループ導体12A~12Eの共振周波数を調整するためにコンデンサ13A~13Eを各ループ導体12A~12Eに設けたが、ループ導体12A~12Eの共振周波数がコンデンサ13A~13Eによる調整無しで所望の値になるのであれば、コンデンサ13A~13Eを設けなくてもよい。また、コンデンサ13A~13Eを設ける場合、コンデンサ13A~13Eを全てのループ導体12A~12Eに設けることは必須ではなく、コンデンサ13A~13Eを設けるループ導体12A~12Eとコンデンサ13A~13Eを設けないループ導体12A~12Eとが混在してもよい。この場合、コンデンサ13A~13Eの設置数が1個であってもよい。
また、本実施形態では、5個のループ導体12A~12Eを設けたが、ループ導体12A~12Eの数は、カラーセンタを有する素子のサイズに応じて適宜増減してもよい。また、本実施形態では、ループ導体12A~12Eの形状を方形としたが、円形や三角形等の他のループ形状にしてもよい。また、本明細書に記載の「ループ導体」は、一又は複数のギャップのあることにより有端のものと、ギャップがないことにより無端のものとの双方を含む。さらに、本実施形態では、2個のループ導体12B,12Dに給電点14B,14Dを設定したが、給電点の数や位置は、アンテナ10から発生する磁界強度及び磁界強度分布やカラーセンタを有する素子のサイズ等に応じて適宜設定すればよい。給電線の本数は1本であってもよい。
1 :センサ
2 :ダイヤモンド素子(素子)
3 :光学系
4 :光センサ
6 :電力増幅器(給電器)
12 :放射素子
12A~12E:ループ導体
13A~13E:コンデンサ
14B,14D:給電点
G :ギャップ
GL :緑色光
RL :赤色蛍光
MW :マイクロ波

Claims (5)

  1. カラーセンタを有する素子と、
    放射素子と、
    前記放射素子に周波数可変の高周波電流を給電して前記放射素子から前記素子に周波数可変のマイクロ波を周波数を掃引しながら放射させる給電器と
    を備え、
    前記放射素子は、前記素子の表面に形成された複数のループ導体を備え、
    前記複数のループ導体は、相互に周方向の長さが異なり、周方向の長さが大きくなるほど外周側に位置するように多重に相互に間隔を空けて配されており、相互に共振周波数が異なり、
    前記複数のループ導体の共振周波数は、内周側から外周側へかけて低くなり、
    最も内周側の前記ループ導体の共振周波数は、掃引される前記マイクロ波の周波数の最高値と等しく、
    最も外周側の前記ループ導体の共振周波数は、掃引される前記マイクロ波の周波数の最低値と等しいセンサ。
  2. 前記複数のループ導体の少なくとも一つは、給電点が設定されている請求項1に記載のセンサ。
  3. 前記給電点は、前記複数のループ導体のうちの最も外周側から2番目のものに設定されている請求項2に記載のセンサ。
  4. 前記複数のループ導体の少なくとも一つは、ギャップが形成され、
    前記ギャップに配され、前記ギャップが形成された前記ループ導体と電気的に接続されたコンデンサを備える請求項1~3の何れか1項に記載のセンサ。
  5. 緑色光を前記素子に照射する光学系と、
    前記素子から発生する赤色蛍光の輝度を検出する光センサと
    を備え、
    前記光センサが検出する前記赤色蛍光の輝度に応じて、磁界、電界、及び温度の少なくとも一つを計測する請求項1~4の何れか1項に記載のセンサ。
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