JP6941545B2 - アンテナ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、パッチアンテナ装置、特に電波を送受信可能とする帯域を広帯域化したパッチアンテナに関する。
パッチアンテナとは、誘電体基板とその表面に放射素子が配置された平面アンテナの一種である。パッチアンテナは、マイクロストリップアンテナ(MSA:Microstrip Antenna)とも呼ばれる。パッチアンテナは、小型であるため様々な用途を有する。
特開2004−128601号公報 国際公開第2015/083457号
しかしながら、パッチアンテナが電波を送受信可能とする帯域は、一般に狭い。そのため、パッチアンテナの帯域は、GPS(Global Positioning System;全地球測位システム)やETC(Electronic Toll Collection System;電子料金収受システム)などの用途で要求される帯域に対して帯域余裕が少ないことや、その帯域に満たないことがあった。かかる用途において、専用品が用いられることがある。
GPS用のパッチアンテナで電波を送受信する周波数帯域が1527MHz帯域であって、帯域余裕が50MHz程度である場合には、そのパッチアンテナだけでは、GPS衛星からの信号と、他の人工衛星からの信号とを同時に受信することができない。同時に受信するには、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、共振周波数がそれぞれ異なる複数のパッチアンテナを組み合わせて用いられることがある。
また、従来のパッチアンテナ装置を、ミリ波アレーアンテナの構成要素としてシュリンクして広帯域化することが試みられていた。その場合、60GHz帯域を送受信可能とする帯域とするとき、その帯域幅は、ほぼ5〜6GHzとなる。しかしながら、Eバンドアンテナ装置では、52GHzから62GHzまでの10GHzの帯域幅で、送受信できることを要する。また、アレー化により広帯域化すると指向性が高くなるため、空間的に広い範囲で広帯域化することができなかった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、電波を送受信できる帯域が広いアンテナ装置を提供することを目的とする。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、第1の領域と、給電方向の外縁の長さが前記第1の領域と異なる第2の領域とが、前記給電方向と交差する方向に連続した平面状の放射素子を備えるアンテナ装置である。
本発明の他の態様は、上述したアンテナ装置であって、少なくとも、第1の領域又は第2の領域の前記外縁において、給電方向と平行な直線部を含む。
本発明の他の態様は、上述したアンテナ装置であって、前記放射素子の外縁の一点に長手方向を前記給電方向として線路の一端が接続され、前記線路の長さは、前記第1の領域と前記第2の領域のうち給電方向の長さが長い方の前記長さに相当し、前記外縁の一点が、前記放射素子の前記給電方向の直交方向の中央部に設けられている。
本発明の他の態様は、上述したアンテナ装置であって、前記線路は、前記第1の領域の共振周波数におけるインピーダンス整合部と、前記第2の領域の共振周波数におけるインピーダンス整合部と、前記第1の領域の共振周波数と前記第2の領域の共振周波数の間の周波数におけるインピーダンス整合部を有する。
本発明の他の態様は、上述したアンテナ装置であって、前記放射素子の前記給電方向の直交方向の幅が、前記第1の領域の前記給電方向の長さ以上である。
本発明の実施形態によれば、単一のアンテナ装置として、電波を送受信できる帯域を広くすることができる。より具体的には、放射素子を構成する第1の放射領域の給電方向の長さを実効波長の1/4とする周波数から所定範囲内の第1の周波数領域の成分と、第2の放射領域の給電方向の長さを1/4実効波長とする周波数から所定範囲内の第2の周波数領域の成分について利得が増加する。従って、第1の放射領域の給電方向の長さと、第2の放射領域の給電方向の長さが等しい場合よりも、放射特性が良好な周波数帯域を特性帯域として信号を送受信できる周波数帯域が広帯域化する。また、周波数帯域の広帯域化において、周波数帯域の空間的な放射領域を狭くすることや、部品点数の増加を伴わない。
本実施形態に係るアンテナ装置の一構成例を示す平面図である。 本実施形態に係るアンテナ装置の放射特性の切り欠き長依存性の例を示す図である。 本実施形態に係るアンテナ装置における切り欠き長の変更例を示す平面図である。 本実施形態に係るアンテナ装置の放射特性の方向依存性の一例を示す図である。 本実施形態に係るアンテナ装置の放射特性の方向依存性の他の例を示す図である。 本実施形態に係るアンテナ装置の給電線路の第3の区間の長さの変更例を示す説明図である。 本実施形態に係るアンテナ装置の放射特性の給電線路における第3の区間の長さの依存性の例を示す図である。 本実施形態に係るアンテナ装置の他の構成例を示す平面図である。
以下、図面を参照して、本発明のアンテナ装置の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るアンテナ装置の一構成例を示す平面図である。図1において、X方向、Y方向は、それぞれ図面の右方、上方に表されている。Z方向は、裏面から表面に向かう方向となる。X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交する方向である。また、X方向、Y方向及びZ方向と逆の方向を、それぞれ「逆X方向」、「逆Y方向」及び「逆Z方向」と呼ぶ。
アンテナ装置1は、誘電体基板BPの一方の表面に放射素子REと、給電線路STとが配置され、誘電体基板のBPの他方の表面(裏面)に接地導体(図示せず)が配置されて構成されるパッチアンテナである。パッチアンテナは、平面アンテナとも呼ばれる。放射素子RE、給電線路ST及び接地導体は、それぞれ導体からなる層をなす。これらの層は、銅、アルミニウムなどの金属板、金属箔、金属膜などのいずれであってもよい。放射素子REと、給電線路STは、Z方向に互いに重なり合わないように配置され、放射素子REの外縁の一点である給電点RPに、給電線路STの長手方向の一端が接合されている。
放射素子RE、接地導体、給電線路STは、それぞれ、放射電極、アース板、マイクロストリップラインとも呼ばれる。給電線路STの長手方向の他端である給電端RIには、給電端子RTが設けられている。給電端子RTは、信号ケーブルCBを接続可能とする。信号ケーブルCBから入力される電気信号は、給電端子RT及び給電線路STを介して放射素子REに供給される。図1に示す例では、給電線路STの長手方向は、X方向に向けられている。つまり、給電方向は、X方向となる。
放射素子REは、第1の放射領域EA1と第2の放射領域EA2とがZ方向に互いに重ならずにY方向に連続した1枚の放射素子として構成される。第1の放射領域EA1、第2の放射領域EA2それぞれの形状は長方形である。第1の放射領域EA1、第2の放射領域EA2それぞれの一辺の方向はX方向に向けられ、他の一辺の方向がY方向に向けられている。第1の放射領域EA1と第2の放射領域EA2とが接している接線ELの方向は、X方向となる。第1の放射領域EA1のX方向の長さLは、第2の放射領域EA2のX方向の長さLよりも長い。
第1の放射領域EA1のX方向の終端のX方向の座標と、第2の放射領域EA2のX方向の終端のX方向の座標とは、同一となる。言い換えれば、第1の放射領域EA1のX方向の頂点の1つと第2の放射領域EA2のX方向の頂点の1つが、接線ELの一端EPにおいて接している。
第1の放射領域EA1の逆X方向の終端のX方向の座標と、第2の放射領域EA2の逆X方向の終端のX方向の座標が異なる。言い換えれば、接線ELの他端である端点RQにおいて、第2の放射領域EA2の逆X方向の頂点の一つが接しているが、第1の放射領域EA1のいずれの頂点も接していない。
別の観点では、放射素子REの領域は、X方向の長さがL、Y方向の長さがLとなる長方形全体から、X方向に向いている接線ELを挟んで一方(図1に示す例では、逆Y方向)の領域が、X方向に長さΔLだけ欠落もしくは短縮した長方形の切り欠き部MA2を有する形状を有する。切り欠き部MA2の長さΔL(以下、「切り欠き長」と呼ぶ)は、第1の放射領域EA1のX方向の長さLから第2の放射領域EA2のX方向の長さLの差L−L相当する。また、接線ELのY方向の位置は、放射素子RE全体のY方向の中央から所定範囲内、つまり、ほぼ中央部となる。
給電点RPは、第1の放射領域EA1の逆X方向の頂点のうち、接線ELの延長線上にある頂点に設置されている。つまり、端点RQは、接線ELの両端のうち給電点RPに近い方である。給電点RPからX方向に切り欠き長ΔLに相当する距離だけ離れた位置が、端点RQの位置となる。なお、放射素子REの領域全体のY方向の長さLは、第1の放射領域EA1のX方向の長さL以上としてもよい。
このような構成により、給電線路STから放射素子REに供給される電気信号の成分のうち、主に第1の放射領域EA1において実効波長の1/4の長さ(以下、「1/4実効波長λ」、と呼ぶ)が長さLとなる周波数fを共振周波数とする成分に共振が発生する。また、主に第2の放射領域EA2において実効波長の1/4の長さ(以下、「1/4実効波長λ」、と呼ぶ)が長さLとなる周波数fを共振周波数とする成分に共振が発生する。仮に、第1の放射領域EA1のX方向の長さLと第2の放射領域EA2のX方向の長さLを等しくすると、それぞれの共振周波数が等しくなる。そのため、第1の放射領域EA1のX方向の長さLと第2の放射領域EA2のX方向の長さLが異なることで、放射特性が他の周波数帯域よりも良好な周波数帯域の帯域幅が、長さLと長さLとが等しい場合における帯域幅よりも広くなる。このことは、信号を送受信できる周波数帯域の広帯域化に貢献する。
給電線路STの長さL’を、周波数fの電気信号の成分の1/4実効波長λ’とする。但し、給電線路STにおける1/4実効波長λ’と放射素子REにおける1/4実効波長λとは、互いに近似するが、完全に等しくならないことがある。これは、放射素子REの周縁部には、フリンジング電界が生ずるためである。また、給電線路STのY方向の幅dは、その区間における周波数fにおける特性インピーダンスZが、給電点RPでの放射素子REの給電インピーダンスZと整合する幅であればよい。より具体的には、特性インピーダンスZは、給電端RIでの入力インピーダンスZとの相乗平均√Z・Zとなればよい。例えば、給電インピーダンスZ、入力インピーダンスZが、それぞれ162Ω、50Ωである場合、特性インピーダンスZが90Ωとなるように幅dを定めておく。よって、給電線路STは、周波数fの成分に対して1/4波長線路として作用し、給電インピーダンスZと入力インピーダンスZとを整合させるための整合線路として機能する。そのため、信号ケーブルCBから供給される周波数fから所定範囲内の第1の周波数帯域の成分を効率よく電波として放射することができる。
他方、給電点RPから端点RQを通過して第2の放射領域EA2に進入する電気信号の成分は、端点RQを頂点とする第2の放射領域EA2内での電気信号の振動を励起する。そこで、給電線路STは、幅dを有する第1の区間の他、幅dをよりも広い幅dを有する第2の区間を給電点RPよりも給電端RIに近い方に有していてもよい。一般に、放射素子の給電インピーダンスは、その中心部から外縁に近づくほど高くなる。そのため、端点RQでの放射素子REのインピーダンスZは、給電点RPでの給電インピーダンスZよりも低くなる。そこで、幅dを有する第1の区間よりも特性インピーダンスがより低い幅がdとなる第2の区間を設けることで、第2の区間を設けない場合よりも、端点RQでのインピーダンスZと、給電端RIでの入力インピーダンスZと整合させることができる。例えば、端点でのインピーダンスZ、入力インピーダンスZが、それぞれ88Ω、50Ωである場合、第2の区間の特性インピーダンスZが62Ωとなるように幅dを定めておけばよい。
そのため、信号ケーブルCBから供給される周波数fから所定範囲内の第2の周波数帯域の成分を効率よく電波として放射することができる。また、第2の周波数帯域の成分の利得を増加させることにより、周波数fを共振周波数とする利得のピークと周波数fを共振周波数とする利得のピークを同等に近づけることができる。そのため、放射特性の周波数依存性が緩やかになる。このことも、信号を送受信できる周波数帯域の広帯域化に貢献する。
また、給電線路STは、給電点RPで終端する第1の区間と、給電端RIで終端する第2の区間との間に、幅dを有する第3の区間を設けてもよい。幅dは、幅dよりも大きく、幅dよりも小さい。よって、第3の区間の特性インピーダンスZは、第1の区間の特性インピーダンスZよりも小さく、第2の区間の特性インピーダンスZよりも大きくなる。そのため、第3の区間の長さを調整することで、周波数fと周波数fの間の周波数fにおいて、給電端RIでの入力インピーダンスZと、放射素子REへの給電インピーダンスZとの整合性が変化する。従って、後述するように、第3の区間の長さを調整することで、周波数fにおける利得を向上させることができる。これにより、信号を送受信できる周波数帯域の広帯域化をさらに図ることができる。
なお、放射素子REの領域のY方向の長さLは、第1の放射領域EA1のX方向の長さLと等しくすることで、長さLを1/4実効波長λとする周波数fから所定範囲内の第1の周波数帯域の成分の利得が増加する。他方、放射素子REの領域のY方向の長さLは、第2の放射領域EA2のX方向の長さLと等しくてもよい。その場合には、長さLを1/4実効波長λとする周波数fから所定範囲内の第2の周波数帯域の成分の利得が増加する。従って、周波数fから所定範囲内の第1の周波数帯域における放射効率と、周波数fから所定範囲内の第2の周波数帯域における利得が同等になるように、長さLを長さLと長さLのいずれかにするかを定めておけばよい。
(放射特性)
次に、本実施形態に係るアンテナ装置1の放射特性について説明する。
図2は、本実施形態に係るアンテナ装置1の放射特性の切り欠き長ΔL依存性の例を示す図である。
図2において、縦軸は電圧定在波比(VSWR:Voltage Standing Wave Ratio)を示し、横軸は周波数を示す。曲線m0〜m10は、それぞれ異なる切り欠き長ΔLでのVSWRを示す。図3に示すように、m0〜m10の順に、切り欠き長ΔLが大きくなる。VSWRは、その値が小さいほど放射特性が良好であることを示す無次元の指標である。VSWRの最小値は1である。VSWRが1とは、給電線路STへの入力インピーダンスと放射素子REでの給電インピーダンスが完全に整合し、供給された電気信号のエネルギーが完全に電波として放射される理想的な状態を示す。
曲線m0は、ΔLがゼロ、つまり、第1の放射領域EA1のX方向の長さLと第2の放射領域EA2のX方向の長さLとが等しい場合におけるVSWRを示す。曲線m0は、周波数が1820MHzであるときVSWRが最小となる1つの谷を表す。このことは、アンテナ装置1が、共振周波数を1820MHzとする1個の共振点を有することを意味する。
他方、曲線m10は、ΔLが最も大きい場合、つまり、第1の放射領域EA1のX方向の長さL1と第2の放射領域EAのX方向の長さL2の長さの差が最も大きい場合におけるVSWRを示す。曲線m10は、周波数がそれぞれ1730MHz、2000MHzであるとき、VSWRが極小となる2つの谷を表す。このことは、第1の放射領域EA1のX方向への長さLと第2の放射領域EA2のX方向への長さLとが異なる放射素子REが、それぞれ共振周波数の異なる2個の共振点を有することを示す。2つの共振周波数は、それぞれ、1/4実効波長λを長さLとする周波数fと1/4実効波長λを長さLとする周波数fとに相当する。
2つの谷は、曲線m4に対応する切り欠き長ΔL以上の場合に表れ、曲線m3に対応する切り欠き長ΔL以下の場合には表れない。そして、切り欠き長ΔLが大きくなるほど、VSWRを示す曲線の2つの谷が互いに離れる傾向がある。但し、ΔLが大きすぎると、VSWRの値が所定の値(例えば、2)よりも小さくなる周波数帯域(以下、「特性帯域」と呼ぶ)が個々の谷に分かれる。そのため、曲線m5に示すように特性帯域を1つの連続した周波数帯域とし、かつ、できるだけ広くするように切欠き長ΔLを定めることが好ましい。より具体的には、共振周波数f、fの差f−fが、共振周波数fに係る共振の利得についての第1の半値幅Δfから、共振周波数fに係る共振の利得についての第2の半値幅Δfの間の帯域幅(例えば、第1の半値幅Δfと第2の半値幅Δfの平均値)となるように切り欠き長ΔLを定めればよい。
次に、共振周波数の差f−fが、Δf/2+Δf/2となるように、切り欠き長ΔLを定めた場合を例にして、本実施形態に係るアンテナ装置1の放射特性の一例について説明する。
図2の曲線m5に示す例では、VSWRは、周波数1800MHz、1920MHzにおいてそれぞれ極小値1.9、1.4となる。また、VSWRは、1790MHz−1970MHzの周波数帯域においてほぼ2以下となる。2つの共振周波数間の周波数では、VSWRがそれぞれの極小値よりも大きくなるが、VSWRはほぼ2以下に抑えられる。このことは、放射特性の周波数による依存性が緩和されることを示す。この場合では、VSWRがほぼ2以下となる周波数帯域の帯域幅は、約160MHzとなり、共振点の数を1つとする従来のパッチアンテナよりも広くなる。例えば、曲線m0に示す例では、VSWRが2以下となる周波数帯域1790MHz−1870MHzの帯域幅は、80MHzに過ぎない。
図4は、本実施形態に係るアンテナ装置1の放射特性の方向依存性の一例を示す図である。図4において、半径の大きさは放射電界の利得を示し、中心からの方向がX−Z平面内の放射方向を示す。0°、90°、180°、−90°は、それぞれX方向、Z方向、逆X方向、逆Z方向を示す。また、利得は、最大値が5dBとなるように正規化されている。
周波数が1850、1900、1950、2000、2050MHzのいずれの周波数も、X方向への利得が最大となりX方向から離れた方向ほど利得が低下する。例えば、放射方向が−30°〜30°の範囲において、利得は3dB以上となる。放射方向が−60°〜60°の範囲において、利得は0dB以上となる。これらの所定の利得が得られる放射方向の範囲は、従来のパッチアンテナと同様である。
図5は、本実施形態に係るアンテナ装置1の放射特性の方向依存性の他の例を示す図である。図5において、半径の大きさは電界強度の利得を示し、中心からの方向がX−Z平面内の放射方向を示す。但し、図5は、周波数が1950MHzでの振動方向がφ方向となるφ成分の利得Eφ、振動方向がθ方向となるθ成分の利得Eθ、全利得Etotalを示す。φ方向はX方向を基準とするX−Y平面内の方向であり、θ方向はZ方向を基準とするX−Y平面からの傾き方向である。利得は、全利得Etotalの最大値が5dBとなるように正規化されている。
図5は、放射電界のうちφ成分が主であり、θ成分が従であることを示す。例えば、放射方向が0°であるとき、全利得Etotalは5dBとなり、φ成分の利得Eφは4dBとなり、θ成分の利得Eθは−1.5dBとなる。放射方向が30°であるとき、全利得Etotalは3dB、φ成分の利得Eφは2.5dBとなり、θ成分の利得Eθは、−4dBとなる。放射方向が−60°〜60°の範囲において、全利得Etotalは−1dB以上、φ成分の利得Eφは−1.5dB以上となり、θ成分の利得Eθは、−10dB以上となる。つまり、X軸周りに主に電波が放射される特性も従来のパッチアンテナと同様である。
次に、図2、図3においてm10に示すように切り欠き長ΔLを定め、かつ、給電線路STの第3の区間を調整した場合を例にして本実施形態に係るアンテナ装置1の放射特性について説明する。
図6に示すように、給電線路STの第3の区間の長さを調整することにより、共振周波数fと共振周波数fとの間の周波数fにおいて、給電端RIでの入力インピーダンスZと、放射素子REへの給電インピーダンスZとの整合性が変化する。そこで、共振周波数の差f−fを、半値幅Δfと半値幅Δfの和とし、周波数fを、共振周波数fと共振周波数fの平均値とするとき、給電端RIでの入力インピーダンスZと、放射素子REへの給電インピーダンスZとが最も整合するように、第3の区間の長さと幅dを定めてもよい。これにより、VSWRが十分に小さい周波数帯域の幅を広げることができる。
図7は、本実施形態に係るアンテナ装置1の放射特性の給電線路STにおける第3の区間の長さによる依存性の例を示す図である。
図7の縦軸、横軸は、それぞれVSWR、周波数(Freq)を示す。曲線m10、m10’は、いずれも図3のm10に示す切り欠き長ΔLで得られたVSWRを示す。この切り欠き長ΔLのもとでは、共振周波数の差f−fが半値幅Δfと半値幅Δfの和となる。また、曲線m10は、それぞれ図6に実線で示す第3の区間のもとで取得されたVSWRを示す。曲線m10に示す例では、周波数1730MHz、2000MHzにおいて、VSWRが1.2、1.45と極小となる。VSWRを2以下とする周波数帯域は、1700MHz−1780MHzの帯域と、1950MHz−2060MHzの帯域とに二分される。また、周波数1860MHzにおいて、VSWRは3.4と極大となる。
これに対し、曲線m10’は、図6において破線で示すように曲線m10に示す例よりも、第3の区間の長さdを長く(例えば、9.5mm)して取得されたVSWRを示す。曲線m10’に示す例では、周波数1750MHz、1980MHzにおいて、VSWRが1.25、1.2と極小となる。これら2つの周波数間で、VSWRを極大とする周波数1860MHzが存在し、そのVSWRは1.8となり2以下に抑えられる。このことは、放射特性の周波数による依存性が緩和されることを示す。即ち、VSWRを2以下とする周波数帯域は、1700MHz−2080MHzと1つの連続した帯域となる。この帯域幅380MHzは、共振点の数を1つとする従来のパッチアンテナよりも広くなる。この帯域幅では、例えば、GPS衛星からの電波の受信と近接する帯域において他の用途のための帯域余裕を確保することできる。また、この帯域幅を60GHz帯域に換算すると約11.4GHzとなる。そのため、単一のアンテナ装置1を用いたEバンドでの送受信が可能となる。
以上に説明したように、本実施形態に係るアンテナ装置1は、第1の放射領域EA1と給電方向の長さが第1の放射領域EA1と異なる第2の放射領域EA2とが、給電方向と交差する方向に連続した平面状の放射素子REを備える。
この構成により、第1の放射領域EA1の給電方向の長さLを1/4実効波長λとする周波数fから所定範囲内の第1の周波数領域の成分と、第2の放射領域EA2の給電方向の長さLを1/4実効波長λとする周波数fから所定範囲内の第2の周波数領域の成分について共振が生じる。従って、長さLと長さLが互いに等しい場合よりも、放射特性が良好な周波数帯域を特性帯域として信号を送受信できる周波数帯域が広帯域化する。また、広帯域化において、空間的な放射領域を狭くすることや、部品点数の増加を伴わない。
また、アンテナ装置1において、放射素子REの給電方向の直交方向であるY方向の幅Lが、第1の放射領域EA1の給電方向の長さL又は第2の放射領域EA2の給電方向の長さLである。
この構成により、給電方向の長さLを1/4実効波長λとする周波数fから所定範囲内の第1の周波数領域の成分の共振、又は給電方向の長さLを1/4実効波長λとする周波数fから所定範囲内の第2の周波数領域の成分の共振がさらに促される。そのため、幅Lを長さLと長さLのいずれにするかにより、放射特性が良好な周波数帯域が拡張するように、それぞれの共振の強度を調整することができる。
また、アンテナ装置1において、放射素子REの外縁の一点である給電点RPに長手方向を給電方向として給電線路STの一端が接続される。給電線路STの長さは、第1の放射領域EA1と第2の放射領域EA2のうち給電方向の長さが長い方の長さLに相当する。給電線路STは、長さLを1/4実効波長λ’とする周波数fにおける特性インピーダンスZが、給電点RPにおける給電インピーダンスZと給電線路STの他端である給電端RIへの入力インピーダンスZとの相乗平均となる幅dを有する区間を有する。
この構成により、給電線路STは、給電点RPにおける給電インピーダンスZと給電線路STの他端への入力インピーダンスZとを整合させる1/4波長変成器としても作用する。そのため、給電端RIに入力される電気信号の第1の周波数領域の成分は電波として有効に放射される。
また、アンテナ装置1において、給電線路STは、幅がdとなる第1の区間よりも広い幅dを有する第2の区間を有する。第2の区間は、第1の区間よりもインピーダンスが低下する。また、放射素子REにおいて、給電点RPよりも中心部に近い端点RQの方が、給電インピーダンスが低くなる。そのため、第2の区間を有しない場合よりも、第2の周波数帯域の成分について給電点RPにおける給電インピーダンスZと給電線路STの他端である給電端RIへの入力インピーダンスZとを、より整合させることができる。従って、第2の周波数領域の成分の共振が促され、放射特性が向上する。
また、アンテナ装置1において、給電点RPは、放射素子REの給電方向の直交方向の中央から所定範囲内に設けられている。
この構成により、給電端RIに入力される電気信号が第1の放射領域EA1と第2の放射領域EA2にほぼ均等に供給される。第1の周波数帯域の成分の強度と第2の周波数帯域の成分の強度がほぼ等しくなるため、放射特性が良好な周波数帯域が拡張する。
また、アンテナ装置1において、第1の放射領域の給電方向の長さLを1/4実効波長λとする第1の周波数fとし、第2の放射領域の給電方向の長さLを1/4実効波長λとする第2の周波数fとし、第1の周波数fと第2の周波数fとの差Δfを、第1の周波数fを共振周波数とする第1の共振の半値幅をΔf、第2の周波数fを共振周波数とする第2の共振の半値幅をΔfとしたとき、Δf/2+Δf/2以下とする。
この構成により、放射特性が所定の放射特性よりも良好な周波数帯域を1つの連続した周波数帯域とし、かつ極力拡張することができる。
(変形例)
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
図1では、第1の放射領域EA1の形状と、第2の放射領域EA2の形状が、それぞれ長方形である場合を例にしたが、これには限られない。第1の放射領域EA1は、給電点RPからのX方向の長さの最大値がLとなる部分を有し、その部分が直線部をなす形状であればよい。例えば、図8に示すように、第1の放射領域EA1の形状は、給電点RPから接線ELの一端EPまでのX方向の長さがLであれば、X方向よりもY方向に傾いた方向に給電点RPに対向する部分の外縁が円弧をなしていてもよい。給電点RPよりもY方向にずれた部分では、X方向の長さは最大値Lよりも小さい。このような形状でも、1/4実効波長λを長さLとする周波数fにおいて共振が生じる。
また、第2の放射領域EA2は、端点RQからのX方向の長さの最大値がLとなる部分を有し、その部分が直線部をなす形状であればよい。例えば、図8に示すように、端点RQから接線ELの一端EPまでのX方向の長さLであれば、第2の放射領域EA2の形状は、X方向よりも逆Y方向に傾いた方向に対して端点RQに対向する部分の外縁が円弧をなしていてもよい。給電点RPよりも逆Y方向にずれた部分では、X方向の長さは最大値Lよりも小さい。このような形状でも、1/4実効波長λを長さLとする周波数fにおいて共振が生じるためである。
また、図8に示す例では、給電線路STは、幅dを有する区間を備え、幅dを有する第2の区間や、幅dを有する第3の区間を備えていないが、これには限られない。図1に示すように、給電線路STは、幅dを有する第2の区間を備えてもよい。これにより、共振周波数fにおける端点RQでのインピーダンスZと、給電端RIでの入力インピーダンスZとを整合させることができる。これにより、周波数fにおける共振を促し、周波数fから所定範囲内の第1の周波数帯域における放射効率と、周波数fから所定範囲内の第2の周波数帯域における放射効率を同等に近づけることができるので、放射効率が所定の放射効率よりも高くなる特性領域を広くすることができる。また、給電線路STは、幅dを有する第3の区間をさらに備えてもよい。これにより、共振周波数fと共振周波数fとの間の周波数fにおける給電端RIでの入力インピーダンスZと放射素子REへの給電インピーダンスZをより整合させることができる。これにより、周波数f又はその近傍の周波数においてに低下しがちな放射効率が高くなるので、放射効率が所定の放射効率よりも高くなる特性領域を広くすることができる。
1…アンテナ装置、EA1…第1の放射領域、EA2…第2の放射領域、EL…接線、MA2…切り欠き部、RI…給電端、RP…給電点、RQ…端点、RT…給電端子、ST…給電線路

Claims (5)

  1. 第1の領域と、給電方向の外縁の長さが前記第1の領域と異なる第2の領域とが、前記給電方向と交差する方向に連続し、前記給電方向における前記第1の領域の給電点側の終端の座標と、前記給電方向における前記第2の領域の給電点側の終端の座標とが異なる平面状の放射素子
    を備えるアンテナ装置。
  2. 少なくとも、第1の領域又は第2の領域の前記外縁において、給電方向と平行な直線部を含む
    請求項1に記載のアンテナ装置。
  3. 前記放射素子の外縁の一点に長手方向を前記給電方向として線路の一端が接続され、
    前記線路の長さは、前記第1の領域と前記第2の領域のうち給電方向の長さが長い方の前記長さに相当し、
    前記外縁の一点が、前記放射素子の前記給電方向の直交方向の中央部に設けられている
    請求項1又は請求項2に記載のアンテナ装置。
  4. 前記線路は、前記第1の領域の共振周波数におけるインピーダンス整合部と、前記第2の領域の共振周波数におけるインピーダンス整合部と、前記第1の領域の共振周波数と前記第2の領域の共振周波数の間の周波数におけるインピーダンス整合部を有する
    請求項3に記載のアンテナ装置。
  5. 前記放射素子の前記給電方向の直交方向の幅が、前記第1の領域の前記給電方向の長さ以上である
    請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
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