以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る防振装置用ブラケットについて説明をする。
図1は、本発明の一実施形態に係る防振装置用ブラケット1(単に、「ブラケット1」ともいう。)の正面図である。図1は、ブラケット1を車両に装着したときに、当該ブラケット1を車両の左右方向から視たときの、いわゆる車両装着時左右方向視の図である。以下の説明では、図1は、ブラケット1を車両装着時左方向から視たときの図とする。すなわち、図1の左方向は、車両装着時前方向であり、図1の右方向は、車両装着時後方向である。また、以下の説明では、図1の上方向を、車両装着時上方向とし、図1の下方向を、車両装着時下方向とする。
本実施形態に係るブラケット1は、エンジンを車体に取り付けるための、エンジンマウント用ブラケットである。ブラケット1は、車体に連結可能である。ブラケット1は、貫通穴1Aを有している。本実施形態において、貫通穴1Aは、ブラケット本体2に形成された貫通穴である。貫通穴1Aには、防振装置本体(図示省略)を収容することができる。前記防振装置本体は、エンジンに連結可能である。これによって、ブラケット1は、前記車体と前記エンジンとを、前記防振装置本体を介して連結させることができる。
なお、図面では、前記防振装置本体は省略されている。前記防振装置本体としては、例えば、内筒及び外筒を弾性体(例えば、ゴム)で連結した防振部材が挙げられる。こうした防振部材の場合、前記外筒がブラケット1に取り付けられる一方、前記内筒が前記エンジンに取り付けられる。
ただし、ブラケット1は、当該ブラケット1を前記エンジンに連結させる一方、前記防振装置本体を前記車体に連結させることができる。また、ブラケット1は、エンジンマウント用ブラケットに限定されるものではない。ブラケット1は、エンジン、車体以外の、振動発生側及び振動受け側の一方にブラケット本体2を連結させる一方、前記防振装置本体を、前記振動発生側及び前記振動受け側の他方に連結させることができる。
符号O1は、ブラケット1の中心軸線(以下、単に「中心軸線O1」ともいう。)である。本実施形態において、中心軸線O1は、貫通穴1Aの中心軸線と同軸である。本実施形態において、中心軸線O1が延びる方向を「軸線方向」という。なお、本実施形態において、「軸線方向」は、「車両装着時左右方向」と同義である。また、本実施形態において、中心軸線O1に対して直交する方向を「軸直方向」という。なお、本実施形態において、「軸直方向」は、「車両装着時前後方向」および「車両装着時上下方向」を含む。さらに、本実施形態において、中心軸線O1を垂線する断面(軸直方向断面)において、中心軸線O1の周りを環状に延びる方向を「囲繞方向」という。
ブラケット1は、合成樹脂によって形成されたブラケット本体2と、繊維強化プラスチックによって形成された補強部材3と、を備えている。
ブラケット本体2を形成する前記合成樹脂としては、例えば、熱可塑性合成樹脂、熱硬化性合成樹脂が挙げられる。好適には、前記合成樹脂として、熱可塑性合成樹脂を用いる。こうした熱可塑性合成樹脂としては、例えば、6-6ナイロン、6ナイロン、9ナイロンなどのポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
ブラケット本体2は、前記防振装置本体を囲繞する囲繞部20を有している。
本実施形態において、囲繞部20の内側には、貫通穴1Aが形成されている。本実施形態において、囲繞部20は、第1囲繞部21と、第2囲繞部22と、を有している。貫通穴1Aは、第1囲繞部21と第2囲繞部22とによって形成されている。第2囲繞部22は、前記車体に固定可能な固定基部である。本実施形態では、第2囲繞部22は、第1囲繞部21よりも軸直方向外側に張り出した張出部22aを有している。本実施形態では、張出部22aは、車両装着時前後方向に、第1囲繞部21よりも車両装着時前後方向外側に張り出している。
第1囲繞部21および第2囲繞部22は、同一の前記合成樹脂によって一体的に形成されている。上述のとおり、貫通穴1Aには、前記防振装置本体を収容することができる。このとき、第1囲繞部21は、第2囲繞部22とともに前記防振装置本体を囲繞する。図1に示すように、本実施形態において、第1囲繞部21は、車両装着時左右方向視において、第2囲繞部22に対してアーチ状に架け渡されている、架け渡し部である。
図1中、符号20aは、囲繞部20の補強部材配置部分20aである。囲繞部20の補強部材配置部分20aは、囲繞部20において、補強部材3が配置されている部分である。本実施形態において、囲繞部20の補強部材配置部分20aは、囲繞方向に延びている外周部211と、囲繞方向に延びている内周部212と、外周部211と内周部212とを連結しているとともに囲繞方向に延びている連結部213とによって形作られている。
ここで、囲繞方向とは、囲繞部20が中心軸線O1の周りに延びている方向をいう。本実施形態において、外周部211、内周部212および連結部213は、同一の前記合成樹脂によって一体的に形成されている。
補強部材3は、当該補強部材30の内面32がブラケット本体2に埋設されている。
本実施形態では、ブラケット1は、補強部材3をインサート品とした射出成型品である。具体例としては、補強部材3を成形型のキャビティ内に配置し、当該キャビティ内に、前記合成樹脂を射出することによってブラケット本体2を形成する。これによって、補強部材3は、ブラケット本体2に対して埋設された状態で固定される。本実施形態では、補強部材3は、当該補強部材3の内面32が囲繞部20の外面側に埋設された状態で固定される。本実施形態では、補強部材3の内面32をブラケット本体2に埋設する一方、補強部材3の外面33は、ブラケット本体2から露出させている。
図2Aは、補強部材3の平面図である。図2Aにおいて、補強部材30は、平面状に展開された状態で示されている。図2Aでは、補強部材3は、当該補強部材3の内面32が視認されるように示されている。
図2Aを参照すれば、補強部材3は、当該補強部材3を面状に区画する区画端面31を有している。ここで、「補強部材3を面状に区画する」とは、補強部材3の平面視において、当該補強部材3の輪郭形状が多角形状となるようにすることをいう。また、図2Aに示すように、本実施形態では、補強部材3の4つの角部(多角形状の頂点)のそれぞれは、平面視において、角ばった形状(2つの直線が1点で交わる形状)に形成されているが、丸みを帯びた形状(曲線形状)に形成されていてもよい。
図2Aに示すように、本実施形態において、補強部材3の区画端面31は、平面視において、当該補強部材3を矩形状(面状)に区画している。本実施形態では、補強部材3の区画端面31は、短手方向に延びている短手方向延在端面31aと、長手方向に延びている長手方向延在端面31bと、を含んでいる。本実施形態では、補強部材3の区画端面31は、2つの短手方向延在端面31aを含んでいる。図2Aに示すように、2つの短手方向延在端面31aは、平面視において、互いに平行に短手方向に延びている。また、本実施形態では、補強部材3の区画端面31は、2つの長手方向延在端面31bを含んでいる。図2Aに示すように、2つの長手方向延在端面31bは、平面視において、互いに長手方向に平行に延びている。これによって、本実施形態では、補強部材3の区画端面31は、平面視において、当該補強部材3を矩形状に区画している。
図2Bは、補強部材3を、短手方向から示している。図2Bにおいて、補強部材3の長手方向延在端面31bは、正面となるように示されている。
補強部材3の区画端面31の少なくとも一部は、補強部材3の外面33に向かって傾斜している当該補強部材3の内面32によって形作られている傾斜面32aである。傾斜面32aは、補強部材31の外面33に向かうに従って当該補強部材3の外面側端縁3e1に向かって傾斜している。ここで、「補強部材3の外面側端縁3e1」とは、補強部材3の外面33の端縁をいう。また、後述する「補強部材3の内面側端縁3e2」とは、補強部材3の内面32の端縁をいう。
図2Bを参照すれば、本実施形態において、補強部材3の内面32は、傾斜面32aを含んでいる。本実施形態では、傾斜面32aは、補強部材31の長手方向側に向かうに従って外面33に向かって延びている。さらに、本実施形態では、傾斜面32aは、補強部材31の外面33に向かうに従って当該補強部材3の外面側端縁3e1に向かって傾斜している。
また、図2Bを参照すれば、補強部材3は、厚さtを有するシート部材である。厚さtは、補強部材3の内面32と、当該補強部材3の外面33との間の厚さである。傾斜面32aは、補強部材3の外面側端縁3e1に向かうにしたがって補強部材3の厚さtが減少するように形成されている。補強部材3の外面側端縁3e1では、補強部材3の厚さtは、t=0である。本実施形態では、傾斜面32aは、当該補強部材3の外面33に対して平行な平面32bとともに補強部材3の内面32を形成している。すなわち、本実施形態では、補強部材3の内面32は、傾斜面32aと平面32bとによって形成されている。図2Bに示すように、本実施形態では、内面32の傾斜面32aは、補強部材3の短手方向視(補強部材3の幅方向視)で、補強部材3の短手方向延在端面31aである。なお、本実施形態では、補強部材3の外面側端縁3e1は、補強部材3の短手方向延在端面31aの外面側端縁である。
図2Bを参照すれば、本実施形態において、内面32の傾斜面32aは、外向きに突出している曲面によって形作られている。さらに、本実施形態では、前記曲面の断面輪郭形状は、1つの曲率半径Rによって形成されている。本実施形態では、曲率半径Rは、補強部材3の最大厚さtmaxよりも大きい。本実施形態では、最大厚さtmaxは、補強部材3の内面32における平面32bと、当該補強部材3の外面33との間の厚さである。
図1を参照すれば、ブラケット1において、補強部材3の長手方向延在端面31bは、囲繞部20の囲繞方向に延びている。すなわち、ブラケット1において、補強部材3の長手方向延在端面31bは、囲繞部20の囲繞方向に延びている囲繞方向延在端面である。また、図3を参照すれば、ブラケット1において、補強部材3の短手方向延在端面31aは、囲繞部20の軸線方向に延びている。すなわち、ブラケット1において、補強部材3の短手方向延在端面31aは、囲繞部20の軸線方向に延びている軸線方向延在端面である。
図1に示すように、補強部材3は、ブラケット本体2に埋設されている。補強部材3がブラケット本体2に埋設された場合、図1に示すように、補強部材3の周方向端面31と囲繞部20との間に境界が形成される場合がある。本実施形態では、補強部材3は、当該補強部材3の短手方向延在端面31aとブラケット本体2の囲繞部20との間に境界を形成するように埋設されている。
一方、ブラケット本体2の囲繞部20には、上述のとおり、前記防振装置本体が連結されている。したがって、例えば、図1の白抜き矢印で示すように、ブラケット本体2の囲繞部20には、中心軸線O1から軸直方向外側に向かって荷重(外力)が加わる。本実施形態では、ブラケット1は、上述のとおり、エンジンマウント用ブラケットである。したがって、本実施形態では、ブラケット本体2の囲繞部20には、主として、車両装着時前後方向、車両装着時左右方向、車両装着時上下方向の3軸方向から、荷重が加わる。ブラケット本体2の囲繞部20に加わる荷重は、当該囲繞部20を通して補強部材3に伝達される。すなわち、補強部材3の内面32は、ブラケット本体2からの荷重を直接受ける面となる。
したがって、大きな荷重が補強部材3に伝達されると、当該荷重を補強部材3の内面32で受けることによって、補強部材3の区画端面31と囲繞部20との境界付近には大きな応力集中が生じ得る。このように、補強部材3がブラケット本体2に埋設されている場合、補強部材3の区画端面31に大きな応力集中が生じ得ることを考慮すれば、耐久性の面において、改善の余地がある。本実施形態のような補強部材3の埋設構造では、補強部材3の短手方向延在端面31aと囲繞部20との間には、補強部材3とブラケット本体2との境界が形成されている。したがって、本実施形態のような補強部材3の埋設構造では、補強部材3の短手方向延在端面31aに生じ得る応力集中を軽減することが求められる。
応力集中を軽減する方法としては、補強部材3の区画端面31を傾斜面することが考えられる。例えば、図4Dに示すように、補強部材3の区画端面31は、補強部材3の短手方向視で、補強部材3の内面32に向かって傾斜している当該補強部材31の外面33によって形作ることができる。しかしながら、補強部材3の区画端面31の内面側端縁3e2が鋭角になる場合、図4Dに示すように、補強部材3の内面32の表面積が大きい一方、補強部材3の外面33の表面積は、補強部材3の内面32の表面積よりも小さい。この場合、補強部材3の内面32に対して軸直方向外側に荷重が加わると、補強部材3の区画端面31の内面側端縁3e2に対して大きな応力集中が生じることが懸念される。
一方、図4Cに示すように、補強部材3の幅方向視で、補強部材3の区画端面31が垂直面である場合、該補強部材の区画端面31は、軸直方向外側の荷重入力に対して平行な形状となる。この場合、図4Cに示すように、補強部材3の内面32の表面積と、補強部材3の外面33の表面積とは同じになる。しかしながら、この場合も、補強部材3の区画端面31の内面側端縁3e2が直角であることから、補強部材3の区画端面31の内面側端縁3e2に対して生じる応力集中の抑制に改善の余地がある。
これに対し、図4Aを参照すれば、本実施形態に係る、ブラケット1において、補強部材3の区画端面31の少なくとも一部は、補強部材3の幅方向視で、補強部材3の外面33に向かって傾斜している当該補強部材3の内面32によって形作られている傾斜面32aである。この場合、補強部材3の内面32に対して軸直方向外側に荷重が加わると、当該荷重を傾斜面32aに沿って逃がすことができる。これによって、補強部材3の区画端面31に対して生じ得る応力集中が抑制される。したがって、本実施形態に係るブラケット1によれば、耐久性を向上させることが可能となる。
特に、本実施形態では、上述のとおり、補強部材3の区画端面31は、短手方向に延びている短手方向延在端面31aを含んでいる。本実施形態では、傾斜面32aは、短手方向延在端面31aである。図4Aに示すように、ブラケット1において、補強部材3の短手方向延在端面31aは、軸線方向延在端面である。すなわち、本実施形態では、補強部材3の短手方向延在端面31aは、軸直方向外側の荷重を、当該荷重の入力方向(軸直方向外側)に対して直交するように受けている。このため、ブラケット1において、補強部材3の短手方向延在端面31aを傾斜面32aとすれば、軸直方向外側に加わる力によって生じる応力集中を効果的に抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、耐久性をさらに向上させることができる。特に、本実施形態では、補強部材3の短手方向延在端面31aは、ブラケット本体2の囲繞部20の外面側に巻き掛けられた補強部材3の長手方向端面である。この場合、補強部材3の短手方向延在端面31aは、補強部材3の巻き掛けに対する復元力などと相まって、軸直方向外側に荷重を受けたときに、応力集中を生じ易い。このため、本実施形態によれば、耐久性をさらに向上させることができる。
また、図4Aを参照すれば、本実施形態において、内面32の傾斜面32aは、外向きに突出している曲面によって形作られている。この場合、傾斜面32aが曲面によって形成されることによって、傾斜面32aに加わる荷重を傾斜面32aに沿ってより効率的に逃がすことができる。したがって、本実施形態によれば、耐久性をより向上させることができる。
特に、図4Aを参照すれば、本実施形態において、前記曲面の断面輪郭形状は、補強部材3の短手方向(長手方向)視で、1つの曲率半径Rによって形作られており、当該曲率半径Rは、補強部材3の最大厚さtmaxよりも大きい。この場合、内面32の傾斜面32aは、曲面を形成しつつ当該傾斜面32aの外面側端縁3e1に向かって緩やかに傾斜する。したがって、本実施形態によれば、耐久性をさらに向上させることができる。
また、本発明によれば、内面32の傾斜面32aは、平面によって形作ることができる。図4Bを参照すれば、傾斜面32aの断面輪郭形状は、補強部材3の短手方向(長手方向)視で、直線によって形作られている。この場合、補強部材3の区画端面31の内面側端縁3e2は、補強部材3の区画端面31と内面32との間の角度が鈍角となる。この場合、図4Cに示すように、補強部材3の幅方向視で、補強部材3の区画端面31が垂直面である場合等に比べて、応力集中を軽減させることができる。
また、本実施形態において、補強部材3の区画端面31は、長手方向に延びている長手方向延在端面31bを含んでいる。補強部材3を埋設させたことによって、補強部材3の長手方向延在端面31bとブラケット本体2との間に境界が形成されている場合、傾斜面32aは、補強部材3の長手方向延在端面31bであることが好ましい。補強部材3の長手方向延在端面31aがブラケット本体2に対して埋設されている場合、補強部材3の長手方向延在端面31bを傾斜面32aとすれば、軸直方向外側に加わる力によって、当該補強部材3の長手方向延在端面31bに生じる応力集中を抑制することができる。したがって、この場合、耐久性をさらに向上させることができる。
図5は、図1のA-A断面図である。図5は、補強部材配置部分20aを囲繞方向に対して直交する断面で示している。図5において、前記断面は、中心軸線O1を含む平面によって形成された、軸方向断面である。また、図6は、図5の拡大図である。
図6を参照すれば、補強部材配置部分20aを、囲繞方向に対して直交する断面で視たときの、当該補強部材配置部分20aの断面形状は、連結部213の断面幅W3が外周部211の断面幅W1および内周部212の断面幅W2よりも狭いI字状である。
さらに、本実施形態において、内周部212の断面幅W2は、外周部211の断面幅W1よりも狭い。
ここで、図6を参照すれば、「断面幅」とは、図6の軸方向断面視において、軸方向に沿って延びている、対象部分(外周部211、内周部212および連結部213)の軸方向幅である。
図6を参照すれば、本実施形態において、外周部211は、軸方向断面視において、軸方向に沿って扁平な矩形状の断面を有している。外周部211の断面幅W1は、外周部211の軸方向端e1の間の幅である。また、図6を参照すれば、本実施形態において、内周部212は、軸方向断面視において、軸方向に沿って扁平な矩形状の断面を有している。内周部212の断面幅W2は、内周部212の軸方向端e2の間の幅である。また、図6を参照すれば、本実施形態において、連結部213は、軸方向断面視において、軸直方向に沿って扁平な矩形状の断面を有している。連結部213の断面幅W3は、連結部213の軸方向端e3のうちで、互いに軸方向に最も接近した部分の間の幅である。
さらに、本実施形態において、連結部213の側面f3は、外周部211の内周側表面f1と連なっているとともに、前記断面で視たときに、内向きに凹となる曲線で形成された曲面f3aと、内周部212の外周側表面f2と連なっているとともに、前記断面で視たときに、内向きに凹となる曲線で形成された曲面f3bと、を含んでいる。
図6を参照すれば、本実施形態において、外周部211の内周側表面f1は、軸方向断面視において、直線で形作られた平面である。外周部211の内周側表面f1は、軸直方向に対して鋭角側角度αで、外周部211の軸方向端e1に連なっている。同様に、本実施形態において、内周部212の外周側表面f2は、軸方向断面視において、直線で形作られた平面である。内周部212の外周側表面f2は、軸直方向に対して鋭角側角度βで、内周部212の軸方向端e2に連なっている。
さらに、図6を参照すれば、本実施形態において、連結部213の曲面f3aは、軸方向断面視において、曲率半径r1の曲線で形成された、軸線方向内側に凹んだ曲線である。また、本実施形態において、連結部213の曲面f3bは、軸方向断面視において、曲率半径r2の曲線で形成された、軸線方向内側に凹んだ曲線である。曲率半径r1および曲率半径r2は、同一の曲率半径とすることができる。或いは、曲率半径r1および曲率半径r2は、異なる曲率半径とすることができる。
さらに、本実施形態において、外周部211の内周側表面f1と、内周部212の外周側表面f2と、連結部213の側面f3とは、囲繞部20の補強部材配置部分20aに、囲繞方向に延びている凹部23を形成している。
図1を参照すれば、本実施形態において、凹部23は、2つの囲繞方向端表面214を有している。囲繞方向端表面214は、凹部23の囲繞方向端を形成する表面である。囲繞方向端表面214は、凹部23が囲繞方向に延びる範囲を規定する。囲繞方向端表面214は、外周部211の内周側表面f1、内周部212の外周側表面f2および連結部213の側面f3のそれぞれと連なっている。すなわち、本実施形態において、凹部23は、外周部211、内周部212、連結部213および囲繞方向端表面214によって形成されている。さらに、本実施形態において、囲繞方向端表面214は、貫通穴1Aに連なっている。これによって、本実施形態では、凹部23は、囲繞方向端において、貫通穴1Aに開放されている。
特に、本実施形態では、囲繞部20の補強部材配置部分20aにおいて、内周部212の断面幅W2は、第2囲繞部22に向かうに従って広くなっている。本実施形態では、断面幅W2は、第2囲繞部22に対して一定の距離まで近づくと、当該断面幅W2の最大幅をとる。そして、断面幅W2は、当該断面幅W2の最大幅からさらに第2囲繞部22に向かうに従って狭くなっている。図7及び図8の斜視図を参照すれば、本実施形態において、内周部212の軸方向端e2は、第2囲繞部22付近で、曲率半径r22の曲線によって形作られている。
囲繞部20の補強部材配置部分20aは、補強部材3が配置されることによって補強されている。補強部材3は、繊維強化プラスチック(FRP)によって形成されている。
(連続)繊維強化プラスチックは、繊維状要素に合成樹脂を含ませて強度を向上させた複合材料である。前記繊維強化プラスチックとしては、例えば、プリプレグが挙げられる。前記繊維状要素としては、例えば、ガラス繊維織物、炭素繊維織物、金属繊維織物、有機繊維、ブラケット本体2よりも曲げ強度が高い繊維織物、これらの織物を含むその他の物が挙げられる。好適には、前記繊維状要素として、ガラス繊維織物を用いる。また前記繊維強化プラスチックとしては、例えば、方向性を有した前記繊維状要素に合成樹脂を含ませたUD(Uni Direction)材、編み込んだ繊維状要素に合成樹脂を含ませた織物材が挙げられる。ブラケット1は、例えば、補強部材3をインサート品として、射出成形によって一体に形成することができる。本実施形態に係るブラケット1では、例えば、前記繊維状要素は、囲繞方向に指向する向きに配列されている。
図1を参照すれば、補強部材3は、囲繞部20の囲繞方向に延びているとともに当該囲繞部20に配置されている。
本実施形態において、補強部材3は、第1囲繞部21に配置されている。補強部材3は、帯状の補強部材である。図5を参照すれば、本実施形態では、補強部材3の断面幅は、外周部211の断面幅W1と等しい。詳細には、補強部材3の長手方向延在端面31bは、外周部211の軸方向端e1と一致している。
図3を参照すれば、本実施形態において、第2囲繞部22には、2つの固定穴22hが形成されている。2つの固定穴22hは、図7に示すように、平面視において、第1囲繞部21を挟んで、軸直方向に間隔を置いて配置されている。本実施形態において、固定穴22hは、ブラケット本体2に設けられた窪み2cに配置されている。窪み2cは、第1囲繞部21の一部を切り欠いた形状である。
また、図7を参照すれば、本実施形態において、補強部材3は、車両装着時において、中心軸線O1を挟んで、補強部材配置部分20aの、車両装着時前方向部分および車両装着時後方向部分が均等に補強されるように配置されている。ただし、補強部材3が補強する部分は、車両装着時前後方向で異ならせることができる。
また、本実施形態において、補強部材3は、補強部材配置部分20aの外周部211に配置されている。
図9及び図10を参照すれば、本実施形態において、補強部材3は、ブラケット本体2の囲繞部20の補強部材配置部分20aにおいて、当該補強部材配置部分20aの外周部211の外周面を被覆している。これによって、本実施形態において、補強部材3は、ブラケット本体2の補強部材配置部分20aにおいて、ブラケット1の外周面を形成している。
こうした防振装置用ブラケットは、囲繞部20によって形成された貫通穴1Aに、前記防振装置本体を収容する。このため、囲繞部20には、応力が集中し易い。
これに対し、従来の防振装置用ブラケットとしては、軽量化と耐久性向上との両立を目的に、合成樹脂によって形成されたブラケット本体の囲繞部の外周部に、繊維強化プラスチックによって形成された補強部材を固定したものがある。
しかしながら、上記従来の防振装置用ブラケットは、囲繞方向に対して直交する断面で視たときの、当該囲繞部の断面形状が矩形である。したがって、上記従来の防振装置用ブラケットには、さらなる軽量化を図りつつ、耐久性を確保することについて、別の見方をすれば、さらなる耐久性の向上を図りつつ、重量増を伴わないことについて、改善の余地があった。
これに対し、ブラケット1は、図5に示すように、ブラケット本体2の囲繞部20において、当該囲繞部20の補強部材配置部分20aを、囲繞方向に延びている外周部211と、囲繞方向に延びている内周部212と、外周部211と内周部212とを連結しているとともに囲繞方向に延びている連結部213とによって形作っている。
加えて、ブラケット本体2は、図6に示すように、補強部材配置部分20aを囲繞方向に対して直交する断面で視たときの、当該補強部材配置部分20aの断面形状を、連結部213の断面幅W3が外周部211の断面幅W1および内周部212の断面幅W2よりも狭いI字状としている。言い換えれば、ブラケット1は、ブラケット本体2の囲繞部20の、当該囲繞部20の補強部材配置部分20aの断面形状を、電車の軌道等としての、レールの形状にしている。
ブラケット1によれば、補強部材配置部分20aの断面形状をI字状としたことにより、さらなる軽量化を図りつつ、耐久性を確保することが可能となる。別の見方をすれば、ブラケット1によれば、さらなる耐久性の向上を図りつつ、重量増を伴わないようにすることが可能となる。
また、ブラケット1において、内周部212の断面幅W2は、外周部211の断面幅W1よりも狭くなっている。この場合、内周部212の断面幅W2を狭くした分だけ、さらに軽量化を図ることができる。
また、ブラケット1において、連結部213の側面f3は、内向きに凹となる曲線で形成された曲面f3aと、内向きに凹となる曲線で形成された曲面f3bと、を含んでいる。この場合、負荷入力時において、ブラケット本体2に生じる応力集中が軽減されることによって耐久性を向上させることができる。
また、ブラケット1において、外周部211の内周側表面f1と、内周部212の外周側表面f2と、連結部213の側面f3とは、囲繞部20の補強部材配置部分20aに、囲繞方向に延びている凹部23を形成している。この場合、製造品質を容易に確保することができる。
囲繞部20に補強用のリブ等の肉盛り部を設ければ、囲繞部20を補強することができる。
しかしながら、囲繞部20に前記肉盛り部を設けた場合、射出成型時において、樹脂流れの合流及び離間等、当該樹脂流れの離合が起き易い。従って、この場合、製品に生じ得るウェルドラインの抑制または目立たなくするための制御等を行う必要があり、製造品質を確保しづらかった。
これに対し、ブラケット1において、凹部23は、外周部211の内周側表面f1と、内周部212の外周側表面f2と、連結部213の側面f3とによって形成されており、前記肉盛り部が存在しない。この場合、前記防振装置本体からの荷重を受ける内周部212側の面積を確保するとともに、応力が発生する外周部211側の面積を増やし、さらに、連結部213の断面積を小さくすることができる。これにより、製品の軽量化(無駄肉がない)を図りつつ、ブラケット1の射出成型時において、樹脂流れが均一化し、補強部材3を適用し易くなる。従って、ブラケット1によれば、製造品質を容易に確保することができる。
また、ブラケット1は、外周部211の内周側表面f1に、射出成型のゲート痕Gを有しているものとすることができる。この場合、補強部材3がブラケット本体2に対して美観を損なうことなく強固に固定される。
ブラケット1の成形方法としては、例えば、補強部材3をインサート品としてブラケット本体2とともに射出成型を行う、いわゆるハイブリッド成型が挙げられる。
しかしながら、こうしたハイブリッド成型においては、金型内に供給された合成樹脂が補強部材3の外周面側へ意図せず回り込むことがあった。こうした合成樹脂の回り込みは、製品完成時の補強部材3の外周面における美観を損なうことがある。一方、合成樹脂の回り込みを防止するため、射出成型用のゲートを、金型内の補強部材3から遠い位置に配置することが考えれる。しかしながら、この場合、合成樹脂が金型内の補強部材3から遠い位置から射出されることによって、当該合成樹脂を補強部材3に密着させるための圧力が不十分になることがあった。
これに対し、例えば、図6を参照すれば、ブラケット1において、ゲート痕Gは、ブラケット本体2において、外周部211の内周側表面f1に形成されている。言い換えれば、補強部材3をインサート品としてブラケット本体2とともに、ブラケット1を射出成型する場合、金型内での合成樹脂の供給は、補強部材3の内周面から行われている。このように、補強部材3の内周面から合成樹脂の供給を行えば、補強部材3の外周面への樹脂回り込みを抑制することができる。また、この場合、合成樹脂が金型内の補強部材3に近い位置から射出されることによって、合成樹脂を補強部材3に密着させるための圧力を高めることができる。
特に、ブラケット1では、ゲート痕Gは、外周部211の軸方向角部2eを含む領域に形成されている。外周部211の軸方向角部2eは、外周部211の軸方向端e1と内周側表面f1とが連なる部分である。言い換えれば、金型内での合成樹脂の供給は、補強部材3の軸方向端3e3近傍の、当該補強部材3の内周面側から行われている。この場合、合成樹脂は補強部材3の軸方向端3e3を金型に対して抑え込むように供給されるため、補強部材3の外周面への樹脂回り込みを効果的に抑制することができる。
さらに、ブラケット1において、ゲート痕Gは、外周部211の軸方向角部2eから、軸方向端e1に沿って、ブラケット本体2と補強部材3との境界(外周部211(ブラケット本体2)の外周面2f)に至るまで延びている。言い換えれば、金型内での合成樹脂は、補強部材3の軸方向端3e3に最も近い位置において、補強部材3の内周面に対して一定の入力角度(90度を除く、角度0度を超える鋭角)をもって、当該補強部材3の軸方向端3e3を金型に対して抑え込むように供給されている。この場合、合成樹脂は、補強部材3直近の外周部211の内周側から射出されることによって、補強部材3の外周面への樹脂回り込みをさらに抑制することができる。
なお、図11および図12を参照すれば、ゲート痕Gは、軸方向両側に形成されている。ただし、ゲート痕Gは、軸方向一方側および軸方向他方側の少なくとも一方に形成されていればよい。本実施形態において、ゲート痕Gは、車両装着時左右方向両側に形成されている。また、ゲート痕Gは、軸方向一方側および軸方向他方側のそれぞれにおいて、1つずつ形成されている。ただし、ゲート痕Gは、軸方向一方側および軸方向他方側の少なくとも一方において、少なくとも1つとすることができる。本実施形態において、ゲート痕Gは、車両装着時左右方向両側において、それぞれ、車両装着時後方向に、1つずつ形成されている。なお、図13は、図1のA-A断面を右正面平面側から示す斜視図である。図13によれば、図2のA-A断面は、車両装着時後方向上側から視ると、図13のように、ゲート痕Gはない。
上述したところは、本発明の一実施形態を例示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、囲繞部20の形態(形状)は、上述の実施形態の形態(形状)に限定されるものではない。また、補強部材3は、ブラケット本体2に対して埋設する部分は、貫通穴1Aを取り囲むように形成された囲繞部20に限定されない。補強部材3は、貫通穴を取り囲むことなく、U字形状、I字形状のように、2つの端部が連結されてない部分に埋設させることができる。
例えば、囲繞部20は、軸方向視において、楕円形状であるが、真円形状、矩形形状など、様々な形状とすることができる。また、図1を参照すれば、本実施形態において、補強部材3の外周面は、ブラケット本体2の囲繞部20の外面と一致させているが、囲繞部20の外面よりも外側に突出させることによって、囲繞部20の外面との間に段差を設けることができる。また、補強部材3は、ブラケット1の外周面として、外部からの視認が可能なように、ブラケット本体2の囲繞部20に埋設されているが、外部からの視認ができないように、囲繞部20に対して完全に埋設することができる。また、図8を参照すれば、第2囲繞部22の取付面は、平面によって形成されている。ただし、第2囲繞部22の取付面は、車体等の取付側の形状に応じた形状の面によって形成することができる。