JP7443656B2 - レチニルエステルの生産 - Google Patents

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Description

発明の詳細な説明
本発明は、ビタミンAの生産のための重要な構成要素であるレチニルエステル、特に酢酸レチニルなどの生産に関する。レチニルエステルはレチノールの酵素変換によって生成することができ、本プロセスは、アセチル-トランスフェラーゼ(ATF)活性を有し、したがってレチノールを酢酸レチノール/レチニルにアセチル化する酵素の使用を含む。前記プロセスは特に、ビタミンAの生物工学的生産のために有用である。
レチニルエステル、特に酢酸レチニルは、特にビタミンAなどのレチノイドの生産のための重要な中間体又は前駆体である。ビタミンAを含むレチノイドは、食物による供給を受けなければならないヒトにとって非常に重要で不可欠な栄養素の1つである。レチノイドは、特に視覚、免疫系及び成長に関して、ヒトの健康な状態を促進する。
特にビタミンA及びその前駆体である、レチノイドの現在の化学的生産方法は、例えば、高エネルギー消費、複雑な精製工程及び/又は望ましくない副産物などのいくつかの望ましくない特徴を有する。したがって、過去数十年間にわたって、特にビタミンA及びその前駆体であるレチノイドを製造するために、より経済的且つ生態学的であり得る、微生物変換工程を含む他のアプローチが研究されている。
一般に、レチノイドを産生する生物系は産業的に扱いが困難であり、且つ/或いは非常に低レベルの化合物を生じるので、産業規模の単離が経済的利益において実用的でない。これには、このような生物系におけるレチノイドの不安定性、又は比較的高い副産物の生成を含むいくつかの理由がある。
サッカロミケス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)由来のAtf1の作用による、例えばアスタキサンチンなどのカロテノイドのアセチル化は、既に報告されている(国際公開第2014096992号パンフレット)。しかしながら、アスタキサンチンのアセチル化ヒドロキシ基はベータ-イオノン環構造上に位置するので、これらの酵素は通常非常に狭い基質特異性を有するが、レチノールのアセチル化ヒドロキシ基は分子の脂肪性端部上にあって、ベータ-イオノン環上ではない。そのためこれらのアセチル化ヒドロキシ官能基はそれぞれ非常に異なる局所構造状況にあり、したがってその活性部位においてわずかな構造変化を有する種々のATF酵素は、レチノイド対カロテノイドにおいてこれらのヒドロキシ基に対して非常に異なる親和性を有し得る。したがって、既に開示されたようなカロテノイドにおけるSbATF1の活性から、当業者は、レチノイドに対する作用がどのようになるかを予測することができない。
したがって、ベータ-カロテンからビタミンAの生産のためのレチノイド構成要素への変換に対する産物特異性及び/又は生産性が改善された酵素の使用を含む代替(生物工学的)経路を探すことが継続中の課題である。特に、レチノールから例えば酢酸レチニルなどのレチニルエステルへの変換に関与する酵素の生産性を最適化することが望ましい。
驚くことに、我々は今回、レチニルエステル、例えば酢酸レチニルの生成に対して少なくとも約10%の全変換率で、レチノール、好ましくはトランス-レチノールをレチニルエステル、特に酢酸レチニルに変換することができる特異的なアセチルトランスフェラーゼ(ATF)を特定することができた。
特に、本発明は、レチノールをレチニルエステル、特に酢酸レチニルにアセチル化する活性を有する、カロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞などの適切な宿主細胞において発現されるアセチル化酵素[EC2.3.1.84]、特にAtf1に関し、酢酸レチニルの産生に対する全変換率は、前記宿主細胞により産生されるレチノイド混合物内のレチノイドの総量を基準として少なくとも約10%、好ましくは12、15、20、30、40、50、80、90又はさらに100%である、すなわち、レチニルエステル、特に酢酸レチニルの量は、宿主細胞により産生される前記レチノイド混合物中に存在するレチノールの量と比較して、少なくとも10%である。本明細書で定義されるAtf1酵素は、特に、トランス-レチノール、又はトランス-レチノールの割合が少なくとも65%でシス-及びトランス-レチノールを含むレチノール混合物のアセチル化に有用であり、トランス-レチニルエステルの形成がもたらされる。
「アセチルトランスフェラーゼ」、「レチノールアセチル化酵素」、「レチノールアセチル化活性を有する酵素」又は「ATF」という用語は本明細書において互換的に使用され、トランス-アイソフォームで産生される酢酸レチニルが少なくとも80%、約87、90、92、95、97、99又は最大100%までの量で、レチノールから酢酸レチニルへの変換を触媒することができる酵素[EC2.3.1.84]を指す。前記ATFは、レチニルエステル、例えば酢酸レチニルの生成に対して少なくとも約10%、好ましくは12、15、20、30、40、50、80、90又はさらに100%(前記宿主細胞により産生されるレチノイド混合物内のレチノイドの総量を基準として)の全変換率で、レチノール、好ましくはトランス-レチノールをレチニルエステル、特に酢酸レチニルに変換することができる。好ましいアイソフォームはATF1である。
レチノールの酵素触媒作用に関連する「変換」、「酵素変換」、「アセチル化」又は「酵素的アセチル化」という用語は本明細書において互換的に使用され、本明細書で定義されるATF、特にAtf1酵素の作用を指す。
本明細書で使用される場合、「真菌宿主細胞」という用語は、特に、宿主細胞としての酵母、例えば、ヤロウイア属(Yarrowia)又はサッカロミケス属(Saccharomyces)などを含む。
ATF酵素は単離形態(例えば、無細胞系)において使用されてもよいし、又は例えば、カロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞などの適切な宿主細胞において発現されてもよい。酵素は、内在性酵素として発現されても、異種酵素として発現されてもよい。好ましくは、本明細書に記載される酵素は、例えば、カロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞などの適切な宿主細胞に異種酵素として導入及び発現される。
本発明に従う適切なATF、特にAtf1酵素は、例えば、植物、ヒトを含む動物、藻類、酵母を含む真菌、又は細菌などの任意の供給源から得ることができる。特に有用なATF、好ましくはATF1酵素は、酵母、特にサッカロミケス属(Saccharomyces)又はラカンケア属(Lachancea)から得られ、好ましくは、サッカロミケス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)、例えば、SbATF1(AHX23958.1に由来するポリペプチド配列)など、ラカンケア・ミランティナ(Lachancea mirantina)(LmATF1;配列番号33)、又はラカンケア・フェルメンタティ(Lachancea fermentati)、例えばLfATF1(SCW02964.1に由来するポリペプチド配列)若しくはLffATF1(LT598487に由来するポリペプチド配列)などから得られる。さらに、特に有用なATF1酵素は、ペチュニア属(Petunia)、エウオニムス属(Euonymus)、マルス属(Malus)、又はフラガリア属(Fragaria)から選択される植物を含むがこれらに限定されない植物から得られ、好ましくは、P.ヒブリダ(P.hybrida)、例えばPhATF(ABG75942.1に由来するポリペプチド配列)、E.アラトゥス(E.alatus)、例えばEaCAcT(ADF57327.1に由来するポリペプチド配列)、M.ドメスティカ(M.domestica)(AY517491に由来するポリペプチド配列)、又はF.アナナッサ(F.ananassa)(AEM43830.1に由来するポリペプチド配列)から得られる。さらに、特に有用なATF1酵素は、エシェリキア属(Escherichia)、好ましくは、E.コリ(E.coli)から得られ、例えば、EcCAT(EDS05563.1に由来するポリペプチド配列)などである。
一実施形態では、本明細書で定義されるATF活性、特にAtf1酵素活性を有する、すなわちレチノールのアセチル化によるレチニルエステル、特に酢酸レチニルの形成に対する活性が増大されたポリペプチドは、ペチュニア・ヒブリダ(Petunia hybrida)(PhATF)などの植物から得ることができ、特に、ABG75942.1に由来するポリペプチド配列に対して少なくとも約60%、70、75、80、85、90、92、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリペプチド、例えば、配列番号11に従うポリペプチドに対して少なくとも60%、例えば、70、75、85、90、92、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリペプチドから選択される。
一実施形態では、本明細書で定義されるATF活性、特にAtf1酵素活性を有する、すなわちレチノールのアセチル化によるレチニルエステル、特に酢酸レチニルの形成に対する活性が増大されたポリペプチドは、エウオニムス・アラトゥス(Euonymus alatus)(EaCAcT)などの植物から得ることができ、特に、ADF57327.1に由来するポリペプチド配列に対して少なくとも約60%、70、75、80、85、90、92、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリペプチド(前記配列は、適切なカロテノイド産生宿主細胞において、本明細書に記載される適切な条件下で発現される)、例えば、配列番号7に従うポリペプチドに対して少なくとも60%、例えば、65、70、80、85、90、92、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリペプチドから選択される。
さらなる実施形態では、本明細書で定義されるATF活性、特にAtf1酵素活性を有する、すなわちレチノールのアセチル化によるレチニルエステル、特に酢酸レチニルの形成に対する活性が増大されたポリペプチドは、E.コリ(E.coli)(EcCAT)などの細菌から得ることができ、特に、EDS05563.1に由来するポリペプチド配列に対して少なくとも約60%、65、70、75、80、85、90、92、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリペプチド、例えば、配列番号5に従うポリペプチドに対して少なくとも60%、例えば、65、70、75、80、85、90、92、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリペプチドから選択される。
一実施形態では、本明細書で定義されるATF活性、特にAtf1酵素活性を有する、すなわちレチノールのアセチル化によるレチニルエステル、特に酢酸レチニルの形成に対する活性が増大されたポリペプチドは、サッカロミケス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)(SbATF1)などの酵母から得ることができ、特に、配列番号1に対して少なくとも約60%、65、70、75、80、85、90、92、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリペプチドから選択される。
別の実施形態では、本明細書で定義されるATF活性、特にAtf1酵素活性を有する、すなわちレチノールのアセチル化によるレチニルエステル、特に酢酸レチニルの形成に対する活性が増大されたポリペプチドは、ラカンケア・ミランティナ(Lachancea mirantina)(LmATF1)などの酵母から得ることができ、特に、配列番号13に対して少なくとも約60%、65、70、75、80、85、90、92、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリペプチドから選択される。
更に別の実施形態では、本明細書で定義されるATF活性、特にAtf1酵素活性を有する、すなわちレチノールのアセチル化によるレチニルエステル、特に酢酸レチニルの形成に対する活性が増大されたポリペプチドは、ラカンケア・フェルメンタティ(Lachancea fermentati)などの酵母から得ることができ、特に、LT598487又はSCW02964.1に由来するポリペプチド配列に対して少なくとも約60%、65、70、75、80、85、90、92、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリペプチド、例えば、配列番号16又は18によってコードされるポリペプチドに対して少なくとも60%、例えば、65、70、75、80、85、90、92、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリペプチドから選択される。
本明細書に記載される宿主細胞は、レチニルエステルの産生に対して少なくとも約10%、好ましくは12、15、20、30、40、50、80、90又はさらに100%の割合でレチノールをレチニルエステル、特に酢酸レチニルに変換することができる。好ましくは、このような全変換率は、少なくとも約65%の割合がトランス-レチノールであり、例えば、少なくとも約68、70、75、80、85、87、90、92、95、98、99又は最大100%までがトランス-アイソフォームのレチノールであり、例えば、約65~90%がトランス-アイソフォームである、シス-及びトランス-レチノールを含むレチノール混合物から得られ、これらは、カロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞において産生される。
好ましくは、本明細書に記載されるような大量のトランス-レチノールを産生するカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞は、レチニルエステルに対して少なくとも約10%の全変換率で、得られたレチノールをレチニルエステル、例えば酢酸レチニルに変換する宿主細胞と同じである。好ましくは、本明細書で定義されるATF、特にAtf1の作用によってレチニルエステル、特に酢酸レチニルに変換され得るレチノール混合物は、少なくとも65%のトランス-レチノール、例えば、約65~90%のトランス-アイソフォームを含み、レチニルエステル混合物中に少なくとも65%の割合のトランス-レチニルエステルをもたらす。
したがって、一実施形態では、本発明は、レチノール混合物中に少なくとも65%の割合のトランス-レチノールを有するシス-及びトランス-レチノールの混合物を含むカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞に関し、前記レチノール混合物は、レチニルエステル、特に酢酸レチニルに対して少なくとも10%の変換率で、レチノール、好ましくはトランス-レチノールからレチニルエステル、例えば酢酸レチニルへの変換を触媒する本明細書で定義される特異的ATF、特にAtf1によって変換され、少なくとも65%の割合のトランス-レチニルエステル、例えばトランス-酢酸レチニルを有し得る。
本明細書で定義される宿主細胞に、遺伝子及び/又はタンパク質、例えば、好ましくは少なくとも65%のエステルがトランス-アイソフォームであるレチニルエステル、特に酢酸レチニルの形成に対する選択性を有するATFなどのコピーをより多く生じさせるための改変は、強力なプロモーター、適切な転写及び/若しくは翻訳エンハンサーの使用、又はカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞への1つ若しくは複数の遺伝子コピーの導入を含み、所与の時間におけるそれぞれの酵素の蓄積の増大をもたらし得る。当業者には、宿主細胞に基づいてどの技術を使用するかが分かる。遺伝子発現の増大又は低減は、例えば、ノーザン、サザン又はウエスタンブロット技術などの当該技術分野で知られている種々の方法によって測定することができる。
核酸又はアミノ酸への突然変異の発生、すなわち突然変異誘発は、例えば、ランダム若しくは部位特異的(side-directed)突然変異誘発、例えば放射線などの作用物質によって生じる物理的損傷、化学的処理、又は遺伝因子の挿入などによる種々の方法で実施され得る。当業者には、突然変異を導入する方法が分かる。
したがって、本発明は、発現ベクター、又は宿主細胞の染色体DNAに組み込まれた本明細書に記載されるATF、特にAtf1酵素をコードするポリヌクレオチドを含む、本明細書に記載されるカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞に関する。本明細書に記載されるATF、特にAtf1酵素をコードする、発現ベクター上の又は染色体DNAに組み込まれた異種ポリヌクレオチドを含むこのようなカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞は、組換え宿主細胞と呼ばれる。カロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞は、本明細書で定義されるATF、特にAtf1酵素をコードする遺伝子、例えば、配列番号1、3、5、7、9、11、13、16又は18に対して少なくとも約60%の同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドなどの1つ又は複数のコピーを含有し、本明細書で定義されるATF、特にAtf1酵素をコードするこのような遺伝子の過剰発現をもたらし得る。遺伝子発現の増大は、例えば、ノーザン、サザン又はウエスタンブロット技術などの当該技術分野で知られている種々の方法によって測定することができる。
本明細書で開示される配列と、少なくとも約10%の全変換率でレチニルエステル、例えば酢酸レチニルとして得られる、レチノール(好ましくは、トランス-アイソフォーム)からレチニルエステル(好ましくは、トランス-アイソフォーム)、特に酢酸レチニルへのアセチル化に対する優先性とに基づいて、レチノールからレチニルエステル、特に酢酸レチニルへの変換に使用され得る、本明細書で定義されるレチノールアセチル化活性を有するポリペプチドをコードするさらなる適切な遺伝子を容易に推定することができる。したがって、本発明は、新規のアセチル化酵素を同定するための方法に関し、ここで、レチノールの変換からのレチニルエステル、特に酢酸レチニルの産生に対する優先性を有する新規のAFT酵素、特にAtf1酵素のスクリーニングプロセスにおけるプローブとして、配列番号1、3、5、7、9、11、13、16又は18などの既知の配列に対して少なくとも60%、例えば、65、70、75、80、85、90、92、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリペプチドが使用され、好ましくは、レチノールは、少なくとも約65%のレチノールをトランス-レチノールとして含む。アセチル化作用が、産生されるレチノイドの総量を基準として少なくとも約10%のレチニルエステル、特に酢酸レチニルをもたらす限り、ATF活性、特にAtf1活性を有し、本明細書で開示されるあらゆるポリペプチドが、本明細書に記載されるレチノールからのレチニルエステル、特に酢酸レチニルの産生のために使用され得る。
本発明は特に、レチニルエステル、特に酢酸レチニルの生産プロセスにおけるこのような新規のATF、特にAtf1酵素の使用に関し、ここで、レチノールLC-アシルの生産は低減される。このプロセスは、前記ATF、特にAtf1酵素を発現する適切なカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞を用いて実施することができ、好ましくは、前記酵素をコードする遺伝子は異種発現される、すなわち前記宿主細胞に導入される。レチニルエステル、特に酢酸レチニルはさらに、(既知の)適切な化学的又は生物工学的機構の作用によってビタミンAに変換され得る。
したがって、本発明は、本明細書で定義されるAtf1酵素の1つの酵素活性によって酢酸レチニル、好ましくは少なくとも65%の割合のトランス-酢酸レチニルを含むレチニルエステル混合物を生産するためのプロセスに関し、レチノール、好ましくはトランス-レチノール、又は少なくとも65~90%のトランス-アイソフォームを有するレチノール混合物を、前記Atf1酵素と接触させることを含む。特に、本発明は、ビタミンAの生産プロセスに関し、前記プロセスは、(a)本明細書で定義されるAtf1酵素の1つをコードする核酸分子を、本明細書で定義される適切なカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞に導入することと、(b)前記発現されたAtf1の作用によって、好ましくは少なくとも65~90%の割合のトランス-レチノールを有するレチノールを、トランス-及びシス-酢酸レチニルの混合物に酵素変換、すなわちアセチル化することと、(3)当業者に知られている適切な条件下で前記酢酸レチニルをビタミンAに変換することを含む。
「配列同一性」、「同一性%」という用語は、本明細書において互換的に使用される。本発明の目的で、2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の配列同一性の割合を決定するために、配列は最適な比較を目的として整列されることが本明細書において定義される。2つの配列間のアライメントを最適化するために、比較される2つの配列のいずれかにギャップが導入され得る。このようなアライメントは、比較されている配列の全長にわたって行うことができる。或いは、アライメントは、より短い長さ、例えば約20、約50、約100又はそれ以上の核酸/塩基又はアミノ酸にわたって行われてもよい。配列同一性は、報告された整列領域にわたる2つの配列間の同一マッチの割合である。2つのアミノ酸配列間又は2つのヌクレオチド配列間の配列同一性パーセントは、2つの配列のアライメントのためのNeedleman及びWunschアルゴリズム(Needleman,S.B.and Wunsch,C.D.(1970)J.Mol.Biol.48,443-453)を用いて決定され得る。アミノ酸配列及びヌクレオチド配列はいずれも、このアルゴリズムによって整列され得る。Needleman-WunschアルゴリズムはコンピュータプログラムNEEDLEに実装されている。本発明の目的では、EMBOSSパッケージからのNEEDLEプログラムを使用した(バージョン2.8.0以上、EMBOSS:European Molecular Biology Open Software Suite(2000)Rice,Longden and Bleasby,Trends in Genetics 16,(6)pp276-277、http://emboss.bioinformatics.nl/)。タンパク質配列については、置換マトリックスのためにEBLOSUM62が使用される。ヌクレオチド配列につては、EDNAFULLが使用される。使用される任意選択的パラメータは、10のギャップ-オープンペナルティ及び0.5のギャップ伸長ペナルティである。当業者は、これらの異なるパラメータ全てがわずかに異なる結果をもたらし得るが、異なるアルゴリズムを用いたときに2つの配列の全体の同一性の割合は有意に変化されないことを認識するであろう。
上記のプログラムNEEDLEによるアライメントの後、クエリー配列と本発明の配列との間の配列同一性の割合は、以下のように計算される:両方の配列内の同一アミノ酸又は同一ヌクレオチドを示すアライメント内の対応する位置の数を、アライメント内のギャップの総数を差し引いた後のアライメントの全長で除する。本明細書で定義される同一性は、NOBRIEFオプションを使用することによってNEEDLEから得ることができ、プログラムの出力において「最長同一性」として標識される。比較される両方のアミノ酸配列が、そのアミノ酸のいずれにおいても違いがない場合、これらは同一である、すなわち100%の同一性を有する。本明細書で定義される植物に由来する酵素に関して、当業者には、植物由来の酵素が例えば葉緑体プロセシング酵素(CPE)などの特異的酵素により切断され得る葉緑体標的シグナルを含有し得ることが分かる。
本明細書で定義されるATF、特にAtf1酵素は、酵素活性を変更しないアミノ酸置換、すなわち野生型酵素に関して同じ特性を示し、レチノールからレチニルエステル、特に酢酸レチニルへの変換を触媒するアミノ酸置換を保有する酵素も包含し、ここで、レチノール、例えば、少なくとも65%のトランス-レチノールを含むレチノール混合物の少なくとも約10%は、レチニルエステル、特に酢酸レチニルに変換される。このような突然変異は「サイレント変異」とも呼ばれ、本明細書に記載される酵素の(酵素)活性を変更しない。
本発明に従う核酸分子は、本明細書で定義されるポリペプチドをコードする核酸配列の一部のみ又は断片、例えば、プローブ若しくはプライマーとして使用され得る断片、又は本明細書で定義されるATF、特にATF1の一部をコードする断片を含み得る。ATF遺伝子、特にATF1遺伝子のクローニングから決定されるヌクレオチド配列は、他の種からの他の相同体の同定及び/又はクローニングにおいて使用するために設計されるプローブ及びプライマーの作成を可能にする。プローブ/プライマーは、通常、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含み、これは、通常、本明細書で開示されるヌクレオチド配列の少なくとも約12若しくは15、好ましくは約18若しくは20、より好ましくは約22若しくは25、さらにより好ましくは約30、35、40、45、50、55、60、65、若しくは75以上の連続ヌクレオチド、又はこれらの断片若しくは誘導体に対して好ましくは高ストリンジェント条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。
このようなハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な例は、約45℃における6x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中のハイブリダイゼーションと、その後の、50℃、好ましくは55℃、より好ましくは60℃、さらにより好ましくは65℃における1xSSC、0.1%SDS中の1回又は複数回の洗浄である。
高ストリンジェント条件には、例えば、100μg/mlサケ精子DNAを含むか又は含まないDigEasyHyb溶液(Roche Diagnostics GmbH)、又は50%ホルムアミド、5xSSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、0.02%ドデシル硫酸ナトリウム、0.1%N-ラウロイルサルコシン、及び2%ブロッキング試薬(Roche Diagnostics GmbH)を含む溶液などの溶液中でジゴキシゲニン(DIG)標識DNAプローブ(DIG標識化系;Roche Diagnostics GmbH,68298 Mannheim,Germanyを用いて調製)を用いた42℃における2時間~4日間のインキュベーションと、その後、室温において2xSSC及び0.1%SDS中で5~15分間フィルターを2回洗浄し、次に、65~68℃において0.5xSSC及び0.1%SDS又は0.1xSSC及び0.1%SDS中で15~30分間2回洗浄することが含まれる。
本明細書で定義される特異的ATF、特にAtf1酵素の1つをコードする酵素/ポリヌクレオチドの発現は、カロテノイド/レチノイドの産生に適しており、且つ本明細書に記載される機能的等価物又は誘導体を含む本明細書で開示される酵素の1つをコードする核酸の発現を可能にする(微)生物を含む任意の宿主系において達成することができる。適切なカロテノイド/レチノイド産生宿主(微)生物の例は、細菌、藻類、酵母を含む真菌、植物又は動物細胞である。好ましい細菌は、例えばエシェリキア・コリ(Escherichia coli)などのエシェリキア属(Escherichia)、ストレプトミケス属(Streptomyces)、パンテア属(Pantoea)(エルウィニア属(Erwinia))、バチルス属(Bacillus)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、シネココックス属(Synechococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ミクロコックス属(Micrococcus)、ミクソコックス属(Mixococcus)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、ブラディリゾビウム属(Bradyrhizobium)、ゴルドニア属(Gordonia)、ディエトジア属(Dietzia)、ムリカウダ属(Muricauda)、スフィンゴモナス属(Sphingomonas)、シノコキスティス属(Synochocystis)、例えばパラコックス・ゼアキサンチニファキエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens)などのパラコックス属(Paracoccus)のものである。好ましい真核微生物、特に酵母を含む真菌は、サッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などのサッカロミケス属(Saccharomyces)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)などのアスペルギルス属(Aspergillus)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などのピキア属(Pichia)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)などのハンゼヌラ属(Hansenula)、フィコミケス・ブラケスレアヌス(Phycomyces blakesleanus)などのフィコミケス属(Phycomyces)、ムコール属(Mucor)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、スポロボロミケス属(Sporobolomyces)、キサントフィロミセス属(Xanthophyllomyces)、ファフィア属(Phaffia)、例えばブラケスレア・トリスポラ(Blakeslea trispora)などのブラケスレア属(Blakeslea)、又はヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)などのヤロウイア属(Yarrowia)から選択される。特に好ましいのは、例えば、ヤロウイア属(Yarrowia)若しくはサッカロミケス属(Saccharomyces)などの真菌宿主細胞における発現、又はエシェリキア属(Escherichia)における発現、より好ましくは、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)又はサッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)における発現である。
宿主細胞に応じて、レチノールのアセチル化のための本明細書で定義されるポリヌクレオチドは、それぞれの宿主細胞における発現のために最適化され得る。当業者には、このような改変ポリヌクレオチドを作成する方法が分かる。本明細書で定義されるポリヌクレオチドは、このような宿主最適化核酸分子が本明細書で定義されるそれぞれの活性を有するポリペプチドを依然として発現する限り、これらも包含することが理解される。
したがって、一実施形態では、本発明は、本明細書で定義されるATF、特にAtf1酵素をコードするポリヌクレオチドを含むカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞に関し、これは、宿主細胞又は酵素の成長又は発現パターンに影響を与えずに、前記宿主細胞における発現のために最適化されている。特に、カロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞は、酵母、例えば、ヤロウイア属(Yarrowia)又はサッカロミケス属(Saccharomyces)、例えば、サッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)又はヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)などから選択され、本明細書で定義されるATF、特にAtf1酵素をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、15、17、又は19に対して少なくとも60%、例えば、65、70、75、80、85、90、92、95、97、98、99%又は最大100%までの同一性を有するポリヌクレオチドから選択される。
本発明に関して、例えば、微生物、真菌、藻類又は植物などの生物は、原核生物の国際命名規約又は藻類、真菌、及び植物の国際命名規約(メルボルン規約)によって定義されるような、同じ生理学的特性を有するこのような種の同義語又はバソニムも含むことが理解される。したがって、例えば、ラカンケア・ミランティナ(Lachancea mirantina)菌株は、日本由来のジゴサッカロミケス(Zygosaccharomyces)種IFO11066菌株の同義語である。
本発明は、例えば、ビタミンAの生産における構成要素として使用され得るレチニルエステル、特に酢酸レチニルを生産するためのプロセスに関し、ここで、レチニルエステルは、本明細書に記載されるATF、特にAtf1酵素の作用により本明細書で開示されるレチノールのアセチル化によって生成され(特に、少なくとも65%をトランス-レチノールとして含むレチノールの変換から得られる少なくとも65%のトランス-アイソフォームのレチニルエステルを含む)、アセチル化酵素は、好ましくは、本明細書に記載される適切な条件下、適切な宿主細胞において異種発現される。産生されるレチニルエステル、特に酢酸レチニルは、培地及び/又は宿主細胞から単離され、任意選択的にさらに精製され得る。本明細書で定義される前記アセチル化エステルは、ビタミンAをもたらす多段階プロセスにおける構成要素として使用することができる。ビタミンAは、当該技術分野で知られているように培地及び/又は宿主細胞から単離され、任意選択的にさらに精製され得る。
好ましくは、本明細書に記載されるATF、特にAtf1酵素の使用によるレチノールのアセチル化は、宿主細胞により産生されるレチノイド混合物中に存在するアセチル化レチノイド、すなわちレチニルエステルの、少なくとも約10%、例えば、12、15、20、30、40、50、80、90又はさらに100%の増大をもたらす。好ましいのは、本明細書で定義されるAtf1酵素の作用によるトランス-レチノールからトランス-レチニルエステルへのアセチル化である。
ベータ-カロテン産生遺伝子、本明細書で定義されるATF遺伝子、特にATF1遺伝子、任意選択的に、ベータ-カロテン酸素化酵素をコードする遺伝子、任意選択的に、レチナール還元酵素をコードする遺伝子、及び/又はビタミンAの生合成に必要とされるさらなる遺伝子を発現することができる宿主細胞、すなわち微生物、藻類、真菌、動物又は植物細胞は、好気性又は嫌気性条件下で適切な栄養分が補充され、それぞれのカロテノイド産生宿主細胞に対して当業者により知られているような水性培地中で培養され得る。任意選択的に、このような培養は、当該技術分野において知られている電子の移動に関与するタンパク質及び/又は補助因子の存在下で行われる。宿主細胞の培養/成長は、バッチ、流加バッチ(fed-batch)、半連続又は連続モードで行うことができる。宿主細胞に応じて、好ましくは、例えば、ビタミンA及びその前駆体(レチナール、レチノール、レチニルエステルなど)などのレチノイドの産生は、当業者に知られているように異なり得る。ヤロウイア属(Yarrowia)及びサッカロミケス属(Saccharomyces)から選択されるベータ-カロテン及びレチノイド産生宿主細胞の培養及び単離は、例えば、国際公開第2008042338号パンフレットに記載されている。E.コリ(E.coli)から選択される宿主細胞におけるベータ-カロテン及びレチノイドの産生に関して、方法は、例えば、米国特許出願公開第20070166782号明細書に記載されている。
本明細書で使用される場合、酵素に関して「比活性」又は「活性」という用語は、その触媒活性、すなわち所与の基質からの産物の形成を触媒するその能力を意味する。比活性は、規定温度において所与の期間に規定量のタンパク質によって消費される基質及び/又は産生される産物の量を定義する。通常、比活性は、タンパク質1mg当たり1分間に消費される基質又は形成される産物のμmolで表される。通常、μmol/分はU(=単位)で略される。したがって、μmol/分/(タンパク質mg)又はU/(タンパク質mg)という比活性の単位の定義は、本文書を通して互換的に使用される。酵素は、インビボで、すなわち本明細書で定義される宿主細胞内、又は適切な基質が存在する適切な(無細胞)系内でその触媒活性を実施すれば活性である。当業者には、酵素活性の測定方法が分かる。レチノールの変換からのレチニルエステルの産生、特に酢酸レチニルの産生について本明細書で定義される適切なATF、特にAtf1の能力を評価するための分析方法は当該技術分野において知られており、例えば、国際公開第2014096992号パンフレットの実施例4などに記載されている。簡単には、レチニルエステル、特に酢酸レチニル、レチノール、トランス-レチナール、シス-レチナール、ベータ-カロテンなどの産物の力価は、HPLCによって測定することができる。
本明細書で使用される場合、カロテノイド産生宿主細胞は、それぞれのポリペプチドがインビボで発現され且つ活性であり、カロテノイド、例えばベータ-カロテンの産生をもたらす宿主細胞である。カロテノイド産生宿主細胞を作成するための遺伝子及び方法は当該技術分野において知られており、例えば、国際公開第2006102342号パンフレットが参照される。産生されるカロテノイドに応じて、異なる遺伝子が関与し得る。
本明細書で使用される場合、レチノイド産生宿主細胞は、それぞれのポリペプチドがインビボで発現され且つ活性であり、ベータ-カロテンからレチナール、レチノール及びレチニルエステルへの酵素変換によって、レチノイド、例えば、ビタミンA及びその前駆体の産生をもたらす宿主細胞である。これらのポリペプチドは、本明細書で定義されるATFを含む。ビタミンA経路の遺伝子、及びレチノイド産生宿主細胞の作成方法は、当該技術分野において知られている。
本明細書で使用されるレチノイドは、レチナール、レチノール酸、レチノール、レチノイン酸メトキシド(retinoic methoxide)、酢酸レチニル、レチニルエステル、4-ケト-レチノイド、3ヒドロキシ-レチノイド又はこれらの組合せを含むが、これらに限定されないアポカロテノイドとしても知られているベータカロテン切断産物を含む。本明細書で使用される長鎖レチニルエステルは、少なくとも約8個、例えば、9、10、12、13、15又は20個の炭素原子及び最大約26個まで、例えば、25、22、21個又はそれより少ない炭素原子からなり、好ましくは最大約6個までの不飽和結合、例えば、0、1、2、4、5、6個の不飽和結合を有する炭化水素エステルを定義する。長鎖レチニルエステルは、リノール酸、オレイン酸又はパルミチン酸を含むが、これらに限定されない。レチノイドの生合成は、例えば、国際公開第2008042338号パンフレットに記載されている。
本明細書で使用されるレチナールは、IUPAC名(2E,4E,6E,8E)-3,7-ジメチル-9-(2,6,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)ノナ-2,4,6,8-テトラエナールで知られている。これは、本明細書では互換的にレチンアルデヒド又はビタミンAアルデヒドと称され、シス-及びトランス-アイソフォームの両方、例えば、11-シスレチナール、13-シスレチナール、トランス-レチナール及び全トランスレチナールなどが含まれる。
本明細書で使用される「カロテノイド」という用語は、当該技術分野においてよく知られている。これは、2つの20炭素ゲラニルゲラニルピロリン酸分子の連結により天然で形成される長い40炭素の結合イソプレノイドポリエンを含む。これらには、4-ケト位置又は3-ヒドロキシ位置で酸化されてカンタキサンチン、ゼアキサンチン、又はアスタキサンチンをもたらし得る、フィトエン、リコペン、及び例えばベータ-カロテンなどのカロテンが含まれるが、これらに限定されない。カロテノイドの生合成は、例えば、国際公開第2006102342号パンフレットに記載される。
本明細書で使用されるビタミンAは、水溶液中に見られるビタミンAの任意の化学形態(例えば、その遊離酸形態で非解離、又はアニオンとして解離)であり得る。本明細書で使用される用語は、生物工学的ビタミンA経路における全ての前駆体又は中間体を含む。また、酢酸ビタミンAも含む。
本明細書に記載されるレチニルエステルは、好ましくは、酢酸レチニル及び/又は他のエステル、例えば長鎖レチニルエステルなどを含むアセチル化形態を含む「レチニルエステル混合物」の形態で存在する。好ましくは、レチニルエステル混合物は、少なくとも約65%、例えば、70、75、80、90、92、95、97、99又は最大100%までの酢酸エステルであるレチニルエステル、すなわち酢酸レチニルを含む。
「長鎖レチニルエステル」という用語は、少なくとも約8個、例えば、9、10、12、13、15又は20個の炭素原子及び最大約26個まで、例えば、25、22、21個又はそれより少ない炭素原子からなり、好ましくは最大約6個までの不飽和結合、例えば、0、1、2、4、5、6個の不飽和結合を有する炭化水素エステルを定義する。長鎖レチニルエステルは、レチニル-リノラート(retinyl-linolate)、オレイン酸レチニル又はパルミチン酸レチニルを含むが、これらに限定されない。
本発明は特に、以下の実施形態(1~(17)を特徴とする。
(1)アセチル化活性、例えば、レチノールアセチル化活性、好ましくはアセチルトランスフェラーゼ(ATF)[EC2.3.1.84]を有する酵素、より好ましくは、アセチルトランスフェラーゼ1(Atf1)活性を有する酵素を含むカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞であって、前記酵素が、レチノール、好ましくはトランス-レチノールから、前記宿主細胞により産生されるレチノイドの総量を基準として少なくとも10%の割合のアセチル化レチノール、すなわち酢酸レチニルを有する酢酸レチニル混合物への変換を触媒する、カロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞。
(2)レチノールアセチル化活性、好ましくはアセチルトランスフェラーゼ[EC2.3.1.84]活性、より好ましくはアセチルトランスフェラーゼ1活性を有する酵素を含むカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞であって、前記宿主細胞が、酢酸レチニルを含むレチニルエステル混合物を産生し、混合物が、少なくとも約65%、好ましくは80、87、90、92、95、97、99又は最大100%までのトランス-アイソフォームのレチニルエステルを含む、カロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞。
(3)レチニルエステルが酢酸レチニルから選択される、実施形態(1)又は(2)のカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞。
(4)異種アセチルトランスフェラーゼ、好ましくは異種アセチルトランスフェラーゼ1を含む、実施形態(1)、(2)又は(3)のカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞。
(5)アセチルトランスフェラーゼ、好ましくはアセチルトランスフェラーゼ1が植物、ヒトを含む動物、藻類、酵母を含む真菌又は細菌から選択され、好ましくは、サッカロミケス属(Saccharomyces)、フラガリア属(Fragaria)、エシェリキア属(Escherichia)、エウオニムス属(Euonymus)、マルス属(Malus)、ペチュニア属(Petunia)、又はラカンケア属(Lachancea)から選択される、実施形態(1)、(2)、(3)又は(4)のカロテノイド産生宿主細胞。
(6)アセチルトランスフェラーゼが、サッカロミケス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)、フラガリア・アナナッサ(Fragaria ananassa)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、エウオニムス・アラトゥス(Euonymus alatus)、マルス・ドメスティカ(Malus domestica)、ペチュニア・ヒブリダ(Petunia hybrida)、ラカンケア・ミランティナ(Lachancea mirantina)又はラカンケア・フェルメンタティ(Lachancea fermentati)から選択されるアセチルトランスフェラーゼ1である、実施形態(5)のカロテノイド産生宿主細胞。
(7)アセチルトランスフェラーゼ1が、配列番号1、3、5、7、9、11、13、16又は18に従うポリペプチドに対して少なくとも60%の同一性を有するポリペプチドから選択される、実施形態(6)のカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞。
(8)宿主細胞が植物、真菌、藻類又は微生物から選択され、好ましくは、酵母を含む真菌から、より好ましくは、サッカロミケス属(Saccharomyces)、アスペルギルス属(Aspergillus)、ピキア属(Pichia)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、フィコミケス属(Phycomyces)、ムコール属(Mucor)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、スポロボロミケス属(Sporobolomyces)、キサントフィロミセス属(Xanthophyllomyces)、ファフィア属(Phaffia)、ブラケスレア属(Blakeslea)又はヤロウイア属(Yarrowia)から、さらにより好ましくは、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)又はサッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)から選択される、実施形態(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)又は(7)のカロテノイド産生宿主細胞。
(9)宿主細胞が植物、真菌、藻類又は微生物から選択され、好ましくは、エシェリキア属(Escherichia)、ストレプトミケス属(Streptomyces)、パンテア属(Pantoea)、バチルス属(Bacillus)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、シネココックス属(Synechococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ミクロコックス属(Micrococcus)、ミクソコックス属(Mixococcus)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、ブラディリゾビウム属(Bradyrhizobium)、ゴルドニア属(Gordonia)、ディエトジア属(Dietzia)、ムリカウダ属(Muricauda)、スフィンゴモナス属(Sphingomonas)、シノコキスティス属(Synochocystis)又はパラコックス属(Paracoccus)から選択される、実施形態(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)又は(7)のカロテノイド産生宿主細胞。
(10)酢酸レチニルを含むレチニルエステルがさらにビタミンAに変換される、実施形態(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)又は(9)のカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞。
(11)アセチルトランスフェラーゼ[EC2.3.1.84]の酵素活性、好ましくはアセチルトランスフェラーゼ1の活性によって酢酸レチニルを含むレチニルエステル混合物を生産するためのプロセスであって、レチノールを前記アセチルトランスフェラーゼ、好ましくはアセチルトランスフェラーゼ1と接触させることを含み、レチノールの少なくとも約65~90%がトランス-アイソフォームである、プロセス。
(12)実施形態(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)又は(10)のカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞を用いる、実施形態(11)のプロセス。
(13)(a)本明細書で定義されるアセチルトランスフェラーゼ[EC2.3.1.84]をコードする核酸分子を、適切なカロテノイド産生宿主細胞、好ましくは、実施形態(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)又は(9)のカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞に導入するステップと、
(b)少なくとも約65~90%をトランス-レチノールとしてトランス-及びシス-レチノールを含むレチノールを、シス-及びトランス-酢酸レチニルを含む酢酸レチニル混合物に酵素変換するステップと、
(c)適切な培養条件下で酢酸レチニルをビタミンAに変換するステップと
を含む、ビタミンAの生産プロセス。
(14)トランス-及びシス-酢酸レチニルを含む酢酸レチニル混合物を生産するための、上記の及び本明細書で定義されるアセチルトランスフェラーゼ[EC2.3.1.84]の使用であって、酢酸レチニルの少なくとも約65~90%がトランス-アイソフォームであり、アセチルトランスフェラーゼが、実施形態(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)又は(10)のカロテノイド産生宿主細胞、特に真菌宿主細胞において異種発現され、前記酢酸レチニル混合物がトランス-及びシス-レチノールを含むレチノール混合物の変換によって得られ、レチノールの少なくとも約65~90%がトランス-アイソフォームである、使用。
(15)アセチルトランスフェラーゼ[EC2.3.1.84]の酵素活性、好ましくはアセチルトランスフェラーゼ1の活性によって酢酸レチニルを含むレチニルエステル混合物を生産するためのプロセスであって、レチノールを前記アセチルトランスフェラーゼ、好ましくはアセチルトランスフェラーゼ1と接触させることを含み、混合物中のトランス-アイソフォームのシス-アイソフォームに対する比率が少なくとも約4である、プロセス。
(16)(a)アセチルトランスフェラーゼ[EC2.3.1.84]をコードする核酸分子を適切なカロテノイド産生宿主細胞に導入するステップと、
(b)レチノールを、少なくとも約4:1の比率のトランス-及びシス-酢酸レチニルを含む酢酸レチニル混合物に酵素変換するステップと、
(c)適切な培養条件下でレチノールをビタミンAに変換するステップと
を含む、ビタミンAの生産プロセス。
(17)少なくとも約4:1の比率のトランス-及びシス-酢酸レチニルを含む酢酸レチニル混合物を生産するためのアセチルトランスフェラーゼ[EC2.3.1.84]の使用であって、アセチルトランスフェラーゼが適切なカロテノイド産生宿主細胞において異種発現される、使用。
以下の実施例は説明のためだけのものであって、本発明の範囲を限定することは全く意図されない。本出願全体を通して引用される全ての参考文献、特許出願、特許、及び公開特許出願、特に国際公開第2008042338号パンフレット、国際公開第2014096992号パンフレット、国際公開第2016172282号パンフレット、国際公開第2009126890号パンフレット、米国特許第20070166782号明細書、米国特許第20160130628号明細書の内容は、参照によって本明細書に援用される。
[実施例]
[実施例1:一般的な方法、菌株、及びプラスミド]
本明細書に記載される全ての基本的な分子生物学及びDNA操作手順は、一般的に、Sambrook et al.(eds.),Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press:New York(1989)、又はAusubel et al.(eds).Current Protocols in Molecular Biology.Wiley:New York(1998)に従って実施される。
[振とうプレートアッセイ]
通常、800μlの0.25%酵母抽出物、0.5%ペプトン(0.25X YP)に、10μlの新たに成長させたヤロウイア属(Yarrowia)を播種し、800μlの鉱油(Drakeol5、Penreco Personal Care Products,Karns City,PA,USA)でオーバーレイし、炭素源として鉱油中5%のコーン油及び/又は水相中5%のグルコースを用いた。24ウェルプレート(Microplate Devices 24 Deep Well Plates Whatman 7701-5102)において形質転換体を成長させ、マットシール(Analytical Sales and Services Inc.Plate Mats 24010CM)で被覆し、Qiagen Airpore Tape Sheets(19571)で無菌密封し、Inforsマルチプレートシェーカー(Multitron)においてYPD培地中30℃、800RPMで4日間振とうさせた。鉱油画分を振とうプレートウェルから取り出し、フォトダイオードアレイ検出器を用いて、順相カラムでHPLCにより分析した。この方法は実施例2、3、4において使用される。
[DNA形質転換]
菌株をYPDプレート培地上で一晩成長させることにより形質転換させる。50μlの細胞をプレートからこすり取り、1μgの形質転換DNA、通常は組込み形質転換のための直鎖DNA、40%のPEG 3550MW、100mMの酢酸リチウム、50mMのジチオスレイトール、5mMのTris-Cl(pH8.0)、0.5mMのEDTAを含む500μl中、40℃で60分間のインキュベーションにより形質転換させ、選択培地に直接プレーティングするか、或いは優性抗生物質マーカー選択の場合は、細胞をYPD液体培地において30℃で4時間増殖させた後、選択培地にプレーティングする。
[DNA分子生物学]
pUC57ベクター(GenScript,Piscataway,NJ)においてNhel及びMlul末端を用いて遺伝子を合成した。国際公開第2016172282号パンフレットの場合のように、通常、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)形質転換におけるマーカー選択のために、遺伝子をMB5082「URA3」、MB6157HygR、及びMB8327NatRベクターにサブクローニングした。遺伝子及びマーカーHindlll/Xbal(MB5082)又はPvull(MB6157及びMB8327)のランダム非相同末端結合によるクリーンな遺伝子挿入のために、それぞれゲル電気泳動及びQiagenゲル精製カラムにより精製した。MB5082「URA3」マーカーは、FOAにおけるURA3カセットの環状切除(circular excisant)の選択を可能にする無償性の反復隣接配列のために再使用が可能であった。NatR及びHygRマーカーは、隣接Lox部位のために切除をもたらすCreリコンビナーゼの一過性発現によって除去することができる。
[プラスミドのリスト]
使用するプラスミド、菌株、ヌクレオチド及びアミノ酸配列は、表1、2及び配列表に記載される。ヌクレオチド配列番号2、4、6、8、10、12、15、17及び19は、ヤロウイア属(Yarrowia)における発現に対してコドン最適化される。
Figure 0007443656000001
Figure 0007443656000002
[順相レチノール法]
Waters 717オートサンプラーに取り付けたWaters 1525バイナリーポンプを用いて、サンプルを注入した。安全シリカガードカラムキットを有するPhenomenex Luna 3μ Silica(2),150x4.6mmを使用して、レチノイドを分離した。移動相は、アスタキサンチン関連化合物に対する1000mLのヘキサン、30mLのイソプロパノール、及び0.1mLの酢酸、又はゼアキサンチン関連化合物に対する1000mLのヘキサン、60mLのイソプロパノール、及び0.1mLの酢酸のいずれかからなる。それぞれの流速は、0.6mL/分である。カラム温度は周囲温度である。注入容積は20μLである。検出器は、210nmから600nmまでを収集するフォトダイオードアレイ検出器である。表3に従って分析物を検出した。
Figure 0007443656000003
[サンプル調製]
条件に応じて種々の方法によりサンプルを調製した。全培養液又は洗浄培養液サンプルのために、秤量したPrecellys(登録商標)管に培養液を入れ、移動相を添加した。製造指示書に従って最高設定3XにおいてPrecellys(登録商標)ホモジナイザー(Bertin Corp,Rockville,MD,USA)内でサンプルを処理した。洗浄培養液中、サンプルを微量遠心管において10000rpmで1分間、1.7ml管内で回転させ、培養液をデカントし、1mlの水を添加し、混合し、ペレットにし、デカントして、元の容積にした。混合物を再度ペレットにし、適切な量の移動相中に入れ、Precellys(登録商標)ビーズビーティングにより処理した。鉱油画分の分析のために、サンプルを4000RPMで10分間回転させ、ポジティブディスプレイスメントピペット(Eppendorf,Hauppauge,NY,USA)により油を上部からデカントして除去し、移動相中に希釈し、ボルテックスにより混合し、HPLC分析によりレチノイド濃度を測定した。
[発酵条件]
発酵は既に記載された条件と同一であり、好ましくはシリコーン油又は鉱油のオーバーレイと、好ましくは、0.5L~5Lの全容積のベンチトップ反応器内に供給されたグルコース又はコーン油である攪拌槽とを用いた(国際公開第2016172282号パンフレットを参照)。一般的に、生産性が増大された流加バッチ攪拌漕反応器を用いて同じ結果が観察され、レチノイドの生産のためのシステムの有用性が実証された。好ましくは、5%のグルコースを用いて発酵をバッチ処理し、溶解酸素が急落した後に20%のシリコーン油を添加し、供給を再開して、供給プログラムを通して20%の溶解酸素を達成した。或いは、供給物としてコーン油を使用し、脂肪族レチノイドを捕集するための第2の相として鉱油を使用した。
[実施例2:ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)におけるレチノイドの産生]
異種ATF1の発現のために、トランスレチノール産生菌株ML17968を、100ug/mlのハイグロマイシンを含有するリッチ培地(YPD)での選択のためにハイグロマイシン耐性マーカー(HygR)に連結されたアセチルトランスフェラーゼ遺伝子断片を含有する精製Pvull遺伝子断片で形質転換した。プレーティングの前に培養物をYPD中で4時間増殖させて、抗生物質耐性遺伝子を合成した。特に、オーバーレイとしてのシリコーン油と共に0.25X YP中の炭素源として10%のグルコースを用いて、振とうプレートアッセイにおいてアシル化について単離株をスクリーニングし、成功した単離株をグルコース供給物及びシリコーン油オーバーレイと共に流加バッチ攪拌漕反応器においてさらにスクリーニングし、生産性の一桁の増大が示され、レチノイドの生産における有用性が示された。分析からのデータは表4に示される。

[実施例3:サッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)におけるレチノイドの産生]
通常、ベータカロテン菌株は、当該技術分野において知られている(例えば、米国特許出願公開第20160130628号明細書又は国際公開第2009126890号パンフレットに記載される)ような標準的方法に従って、ベータカロテンを産生している構築されたゲラニルゲラニルシンターゼ、フィトエンシンターゼ、リコペンシンターゼ、リコペンシクラーゼなどの酵素をコードする異種遺伝子で形質転換される。本明細書で定義されるATF酵素を導入すること、及び/又は過剰発現させることにより、特に少なくとも60%のトランス-アイソフォームを有する酢酸レチニルの産生に関して同様の結果が得られる。さらに、ベータカロテンオキシダーゼ遺伝子で形質転換される場合、レチナールを産生することができる。さらに、レチノールデヒドロゲナーゼで形質転換されると、レチノールを産生することができる。任意選択的に、内在性レチノールアシル化遺伝子を欠失させることができる。このアプローチを用いて、トランス-アイソフォームに対する特異性、又は酢酸レチニルに対する生産性に関して同様の結果が得られる。

Claims (7)

  1. アセチルトランスフェラーゼ1[EC2.3.1.84]活性を有する異種酵素を含みかつ発現するレチノール産生宿主細胞であって、前記酵素が、前記宿主細胞により産生されるレチノイド混合物中のレチノイドの総量を基準として少なくとも40%の酢酸レチニルの割合でレチノールから酢酸レチニルへの変換を触媒し、前記宿主細胞が、ヤロウイア・リポリティカであり、前記アセチルトランスフェラーゼ1が、ラカンケア・ミランティナから得られるアセチルトランスフェラーゼ1である、レチノール産生宿主細胞。
  2. 前記アセチルトランスフェラーゼ1が、配列番号13に従うアセチルトランスフェラーゼ1に対して少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドから選択される、請求項に記載のレチノール産生宿主細胞。
  3. トランス-レチノールのアセチル化に対する優先性のあるレチノールアセチル化活性を有する酵素を含む、請求項1又は2に記載のレチノール産生宿主細胞。
  4. 酢酸レチニルがさらにビタミンAに変換される、請求項1~のいずれか一項に記載のレチノール産生宿主細胞。
  5. アセチルトランスフェラーゼ1[EC2.3.1.84]の酵素活性によって、酢酸レチニルを含むレチニルエステル混合物を生産するためのプロセスであって、レチノールを、前記アセチルトランスフェラーゼ1と接触させることを含み、前記レチノールの少なくとも65~90%がトランス-アイソフォームであり、請求項1~4のいずれか一項に記載のレチノール産生宿主細胞を用いる、プロセス。
  6. (a)アセチルトランスフェラーゼ1[EC2.3.1.84]をコードする核酸分子を、請求項1~のいずれか一項に記載の適切なレチノール産生宿主細胞に導入するステップと、
    (b)少なくとも65~90%をトランス-レチノールとしてトランス-及びシス-レチノールを含むレチノールを、シス-及びトランス-酢酸レチニルを含む酢酸レチニル混合物に酵素変換するステップと、
    (c)適切な培養条件下で酢酸レチニルをビタミンAに変換するステップと
    を含む、ビタミンAの生産プロセス。
  7. トランス-及びシス-酢酸レチニルを含む酢酸レチニル混合物を生産するためのアセチルトランスフェラーゼ[EC2.3.1.84]の使用であって、前記酢酸レチニルの少なくとも65~90%がトランス-アイソフォームであり、前記アセチルトランスフェラーゼが請求項1~のいずれか一項に記載のレチノール産生宿主細胞において異種発現され、前記酢酸レチニル混合物がトランス-及びシス-レチノールを含むレチノール混合物の変換によって得られ、前記レチノールの少なくとも65~90%がトランス-アイソフォームである、使用。
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