JP7442294B2 - 真空用ゲートバルブ - Google Patents

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Description

本発明は、例えば半導体製造装置に用いられ、薄型でコンパクトな形態であって、弁体を高速で多数回開閉させてもパーティクルの発生を極めて抑制できる真空用ゲートバルブに関する。
一般に、半導体製造装置において、例えば、真空チャンバに通じるウェハの搬送通路を開閉する仕切弁として長尺矩形板状の弁体を備えた真空用ゲートバルブが用いられる際、弁体の開閉動作に伴い、特に、この弁体のシール材と弁座(シール面)との間では、開閉の際に捩れや摺動或は衝撃などが僅かでも生じると、シール材から微小なパーティクルが生じ、このようなパーティクルの発生によって、極めて高いクリーン度が要求されているウェハの搬送空間が汚染されることになる。このようなパーティクルの発生を可能な限り抑制するため、弁体がシール面を押圧する際に、シール材をシール面に対して略平行に締め付け可能に構成することにより、押圧によるシール材の擦れや捩れの発生を防止するようにした所謂Lモーション動作などで揺動する無摺動型ゲートバルブが用いられている。
この種のバルブにおいて、弁体の揺動によるシール面への押圧は、弁体を支持するステムの駆動で行われるが、この際、ステムは押圧力を弁体に伝えることでシール面から受ける反力により僅かに撓む。ステムの変形(撓み)は、僅かではあるが、この種のバルブでは不可避であり、この変形に伴ってステムから不均一で偏った応力が弁体に伝わる。この応力の影響により、たとえ弁閉時に予めシール面に対して略平行に当接する弁体の揺動が得られるように設計されていても、押圧力に伴うステムの変形によって、僅かではあるが弁体にはシール面に対する傾斜や捩れなどの姿勢の乱れが生じ、結果として、シール材がシール面に対して高精度な平行に保たれず、バルブのシール性が損なわれると共に、シール材とシール面との間には摩擦が生じ、この摩擦に伴ってパーティクルが発生し得る。使用条件によっては、このような悪影響も顕著となる。
さらに、この種のバルブには、このような高いクリーン性(低パーティクル性)を前提として、更なる生産性の向上のため、弁体開閉動作の安定高速な動作が要求されると共に、この種のバルブを含む半導体製造装置には、可能な限り装置を適切に集積するコンパクトデザインの要求も近年益々高まっている。
上記のように、弁閉時の押圧の際に、ステムの変形に起因した、弁体(シール材)のシール面に対して発生し得る姿勢の乱れに対応しようとした技術は、この種のバルブにおける従来技術として種々提案されており、例えば特許文献1の弁体固定構造が挙げられる。同文献1は、この種のゲートバルブにおいて、金属により一体形成された横梁部材を用いた弁体固定構造を開示しており、この横梁部材は、中央連結部及びその両端に隣接する横梁部材の中央範囲においてバルブプレートに対して間隔を有しており、横梁部材が捩れることによりバルブプレートがバルブロッドに対して垂直な揺動軸線の回りに揺動させ、弁閉時に、弾性シール部材を均等に押圧するようにしている。
特許第5655002号公報
しかしながら、特許文献1は、シール部材を押圧して弁閉する際、横梁部材が捩れることが前提であるから、少なくともこの変形に要する分だけ、バルブプレートを余計に押圧する必要があるため、バルブロッドを弁座に向けて移動させるために必要なストローク(開口ストローク)を予め大きくとらねばならない。具体的には、弁体と弁体ホルダから成る厚みの分と、弁体とシール面との間に必要な開口ストロークとの合計に、少なくとも横梁部材の変形代が必要となる。このため、バルブ本体のボデーの横幅が厚くなり、必要最低限の薄型ボデーを構成することができない。特に、近年の真空用ゲートバルブにおいては、僅かなバルブ容積(本体の厚み)の増大であっても半導体製造装置全体に与える影響を無視できなくなる場合も多く、バルブの容積増大は極力回避せねばならない。しかも、横梁部材が変形する分、バルブロッドによる弁閉力が必要となり、弁体の動作機構にも変形応力に応じた駆動力がさらに必要となる。
また、ステムと弁体との間に弾性的な緩衝構造が介在すると、弁体の姿勢を弁座シール面に対して平行とし易いとは言えるものの、その変形代を確保する必要がある分、必要な開口ストロークが増加してボデーの厚みを確保しなければならない問題がある。また、この弾性変形に伴う部材間の摩擦、或は、弾性部材そのものに起因したパーティクルが発生し易くなるおそれもある。
そこで、本発明は上記問題点を解決するために開発されたものであり、その目的とするところは、ステムの全体が撓んでも弁体を弁座シール面に対し略平行に締め切ることができ、さらに、ゲートバルブ弁体部の全体の厚さを薄くして弁体作動幅を極力小さくすることができ、もってボデーの横幅を薄型化することができる弁体固定構造を有する真空用ゲートバルブを提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、バルブのステムに弁体ホルダを取付け、弁体ホルダに弁体が取付けられた真空用ゲートバルブにおいて、弁体ホルダの一面に曲げ強度を増すための横リブと縦リブからなるリブ部と弁体の背面に横方向中央位置に形成された横窪み部とこの横窪み部の中央位置に上方に向けて形成された縦窪み部とが備えられ、リブ部は、横窪み部と縦窪み部に弁体と非接触状態で収納され、弁体ホルダの両端は、横窪み部より長さ方向外側位置の弁体の背面に固定すると共に、弁体ホルダとステムの固定位置は、弁体の上下方向中央位置より上部側であり、弁閉時は、弁体の上下方向中央位置より上部側を押すことで、弁体の中央付近でステムに対してステム全体の撓みと逆方向の弾性曲げを生じさせて弁体を傾動させることにより、弁体と弁座シール面略平行に締め切ようにした真空用ゲートバルブである。
請求項2に係る発明は、弁体ホルダとステムの固定位置には、ステムの上端側面に下方に向かって傾斜させたクサビ形状のステム固定面を形成した真空用ゲートバルブである。
請求項3に係る発明は、ステム固定面のステムの下側位置には、厚さを薄くして弾性撓みを生じさせることにより弁体を傾動させるステム撓み部を形成した真空用ゲートバルブである。
請求項4に係る発明は、横窪み部の長さ方向の長さは、弁体の長さ方向の長さの1/2以上である真空用ゲートバルブである。
請求項1に係る発明によると、弁体締め付けの際、弁体ホルダの曲げ撓みが極めて小さいため、開口ストロークは弁座シール面と弁体シール材との間の最少寸法で良く、弁体と弁体ホルダを合わせた全体の作動幅を最少に設定できるので、ボデーの横幅を薄く設定することが可能となるから、ボデーの薄型化に寄与する。しかも、弁閉時に弁体の上下方向中央位置より上部側を押すことで、弁体の中央付近でステムに対してステム全体の撓みと逆方向の弾性曲げを生じさせて弁体を傾動させることにより、弁体と弁座シール面略平行に締め切ることが可能である。さらに、リブ部は、横窪み部と縦窪み部に弁体と非接触状態で収納され、弁体ホルダの両端は、横窪み部より長さ方向外側位置の弁体の背面に固定されているので、弁体に弁体ホルダが撓みや捻じれが最少となる強度で固定されており、全体の厚みを薄くできると共に、弁体ホルダは、2本のステムで締め切る構造と同様の効果があり、弁体締め切りシール性が良好となる。
請求項2に係る発明によると、弁体ホルダとステムの固定位置には、ステムの上端側面に下方に向かって傾斜させたクサビ形状のステム固定面を形成したから、パーティクルの発生を防ぐことができる。
請求項3に係る発明によると、ステム固定面のステムの下側位置には、厚さを薄くして弾性撓みを生じさせることにより弁体を傾動させるステム撓み部を形成したから、弁閉時に弁体を傾動させることができる。
請求項4に係る発明によると、横窪み部の長さ方向長さは、弁体の長さ方向長さの1/2以上にしたから、弁体ホルダの剛性(特に強度が確保しにくい長尺方向の剛性)を適切に高めることができる。よって、無摺動型のゲートバルブにおいて、厚みを増すことなく弁体ホルダの剛性を高め、弁閉時に弁体ホルダの変形(撓み、捩れなどの歪み)を抑制することができる。
本発明の真空用ゲートバルブ(弁体固定構造)の分解斜視図である。 本発明の弁体ホルダを一面側からみた斜視図である。 (a)は、本発明のステムの側面図であり、(b)は、(a)の背面図である。 (a)は、本発明の弁体固定構造の平面図であり、(b)は、(a)の背面図である。 (a)は、本発明の弁体ホルダの平面図であり、(b)は、(a)の正面図であり、(c)は、(a)の底面図である。 (a)は、図4(b)のB-B線断面図であり、(b)は、図5(b)におけるC-C線断面図である。 図4(b)のA-A線断面図である。 本発明の真空用ゲートバルブ(弁体固定構造)の縦断面図である。 図8におけるX線部分の断面図である。 図8における中央線に沿った縦断面図である。 (a)~(d)は、全開状態にある弁体が上昇し、ステムが弁体をボデーに向けて押圧して全閉状態に至る作用を模式的に示した模式図である。 (a)は、図11(a)のD部の部分拡大図であり、(b)は、(a)と同様の状態における従来技術の一例の部分拡大図である。 本願発明における逆圧荷重作用を模式的に示した模式断面図である (a)は1本ステムの場合の模式図であり、(b)は2本ステムの場合の模式図である。
本発明の真空用ゲートバルブの好ましい実施形態(本例)を図面に基づいて詳細に説明する。本発明は、例えば半導体製造プロセスにおいて、極めて高いクリーン度が要求されるチャンバ搬送路などを開閉するLモーション動作型の真空用ゲートバルブに好適である。以下、各部材の構造を説明する。
図1、2、4、5において、弁体ホルダ1は、長尺矩形板状であり、弁体2とは別体として金属などの素材から一体的に形成されており、ステンレス材であれば軽量小型化に好適である。この弁体ホルダ1を弁体2に固定する際に弁体2と対向する一面が対向面1aとなり、その反対側には背面を有する。なお、弁体2においては、弁体シール材3が設けられる側を正面側とし、その反対側を背面2a側とする。
図2、5において、弁体ホルダ1の曲げ強度を増すため、リブ部が対向面側に設けられている。本例のリブ部は、後述するように弁体2の背面側に非接触状態に収納される横リブ4と縦リブ5から成り、横リブ4は、対向面1aの長尺方向(長さ方向)に沿って、後述する横窪み部23の長さLとほぼ同じ長さで設けられ、縦リブ5は、この横リブ4と、弁体ホルダ1の対向面1aの中央において交差する短尺方向(縦方向)に向けて形成される。横リブ4と縦リブ5の長さや厚みなどの形状や配置は、弁体ホルダ1が弁体2の押圧から受ける応力変形に対する剛性を高めることができる形状として、実施に応じて適宜選択されるが、本例では、横リブ4と縦リブ5は、弁体ホルダ1の中央に対して対称的な略T字形状を呈しており、同じ厚みで平面状に対向面1aに突設されている。図5(b)に示すように、横リブ4は、弁体ホルダ1の短尺方向の中心となる中心軸の位置ではなく、対向面1aのステム6側に偏って配置される。
また、図7に示すように、横窪み部23の長尺方向の長さLは、弁体2の長尺方向の長さLの半分(1/2)以上の長さに設けられる。長尺矩形状の弁体ホルダ1は、長尺方向の剛性が弱まるため、このように長い横リブ4(横窪み部23)を確保することにより、弁体ホルダ1の撓みや捩れの発生を抑制できる。
図1、2、4、5、7において、弁体ホルダ1の両端には、上下にホルダ固定部7a、7bが設けられる。本例では、弁体2の背面2aと面接触する固定面8が、弁体ホルダ1の両端に平面状に形成されており、ホルダ固定部7a、7bは、これらの固定面8内に上下対称に設けられる。なお、下側とは弁体ホルダ1の短尺方向において、ステム6が結合される側を意味し、弁体2においても同じ意味であり、同図の上下に同じである。また、ホルダ固定部7a、7bは、何れも4本のボルト9を挿通させる上下2つに並んだ挿通孔7a、7bであり、固定面8内に対称的に形成されている。固定面8は、弁体ホルダ1の中央に対して長尺方向に左右対称的であり、横リブ4の両端部よりも外側の配置となる。
さらに、固定面8には切欠部8aを設けている。この切欠部8aは、固定面8と弁体2の背面2aとの当接領域を、許容できる範囲内において減少させるために設けられており、実施に応じて適宜選択できるが、本例では、図2、5に示すように、挿通孔7a、7bの周囲に同心状に環状の切欠面8aを形成している。これにより、固定状態において、弁体2と弁体ホルダ1との当接領域を適切に減少させ、両者の間の摺動を抑制している。
図1、2、4、5、6において、弁体ホルダ1の中央には、ステム6の先端部10を結合させる結合部11が設けられ、この結合部11の位置が、弁体ホルダ1とステム6との固定位置となる。本例の結合部11は、先端部10を挿入させるステム挿入部11を、弁体ホルダ1の中央に短尺方向に向けて肉厚を貫通させた四角穴状に形成している。このような貫通穴であれば、加工容易であると共に、後述するステム6の先端面6aのニゲとなる間隙Gも容易に確保できる。
また、図5、6に示すように、結合部11の内周には、2面状に係合面12a、12bを設けている。具体的には、一方の係合面として、ステム挿入部11の対向面1a側となる内周面には、弁体ホルダ1の短尺方向(結合状態のステム6軸心方向)に略平行な平面部12bとして設け、他方の係合面として、この平面部12bに対向する位置に、同じく短尺方向に対して角度θ傾斜した傾斜面12aとして設けている。これら平面部12b、傾斜面12aは、何れも弁体ホルダ1の長尺方向に略平行である。なお、2面状とは、互いに平行又は平行に近い角度で対向した2面を、この2面に共通する交差方向から捉えた一組を意味する。
次いで、図1、3、6において、ステム6は、概ねコラム状を呈しており、所定の長さで金属などの素材から一体的に形成されており、同図上側の一端には、結合部11と結合できる先端部10が設けられている。この先端部10がステム6の固定位置となる。
弁体ホルダ1とステム6とが結合する固定位置は、弁体ホルダ1が弁体2に固定された固定状態において、弁体2の背面2aの上下方向中央位置(中心軸Sの位置)よりも上部側(ステム結合の逆側)に配置される。
また、この先端部10の側面には、ステム6の上端側面に下方に向かって傾斜させたクサビ形状のステム固定面を形成しており、このステム固定面は、2面状のクサビ面13a、13bから成る。これらクサビ面13a、13bは、結合状態において、係合面12a、12bとそれぞれ隙間のない面接触により圧着固定させることができるように、適合した形状となっている。具体的には、ステム6の軸心方向に略平行に平面部13bが切り欠き状に形成される一方、この平面部13bに対して角度θ傾斜した傾斜面13aが切り欠き状に形成されている。なお、この傾斜面13aや、前記係合面の傾斜面12aの角度θは、何れも約10度が好適であるが、これに制限されず、それぞれ実施に応じて適宜選択できる。また、ステム6の先端面6aには、ステム6軸心方向に向けて、後述のオネジ15を螺着できるメネジ14が設けられている。
また、ステム固定面の下側位置には、ステム6の厚さを薄くして弾性撓みを生じさせることにより、後述するように、弁体2を傾動させることができるステム撓み部16が設けられている。このステム撓み部16は、後述する弁閉時にステム6に押圧の反力が働いた際に、ステム6の剛性を弱めて他の部位より優先的に曲げ変形させるために設けており、実施に応じて適宜選択して設けることができるが、ステム撓み部16の位置としては、先端部10に近いほど、後述する反り返りとの関係で好適である。本例のステム撓み部16は、平面状に切り欠いた切欠面16aから成る。この切欠面16aは、反対側の平面部16bと略平行で、ステム6軸心に沿って所定の長さで設けられる。このように、ステム6の素材を減肉させて設ければ、加工容易であると共に、その撓み強度の調整も容易となる。
図1、4、5、6において、圧着手段は、ステム6をその軸心方向に略平行に弁体ホルダ1に向けて圧着させることにより、弁閉荷重が加わった場合でも両者の間の結合を堅固に維持するための手段であり、実施に応じて適宜の手段を用いることができるが、本例では、オネジ15と、このオネジ15と螺着するステム6のメネジ14と、固定板17と、この固定板17を装着する弁体ホルダ1の装着部18と、から成る。
続いて、図1、4、6において、弁体ホルダ1とステム6との結合状態を説明する。この結合状態とするには、ステム6の先端部10を弁体ホルダ1のステム挿入部11に挿入する。この挿入により、クサビ面である傾斜面13aと、係合面である傾斜面12aとが隙間なく面接触すると共に、クサビ面である平面部13bと、係合面である平面部12bとも隙間なく面接触する。これにより、先端部10は、ステム挿入部11にクサビ係合した状態となる。
固定板17は、結合部11の同図上側(ステムの反対側)に設けられた装着部18に載置され、この状態で、図1に示す2本のボルト19で装着部18に固着される。本例では、固定板17と装着部18の外形は、互いに適合する形状であり、ボルト19の固着によって、互いにずれることなく強固に固着される。
図1、4、6において、上記のように、ステム挿入部11に2面状にクサビ係合しているステム6の先端面6aのメネジ14に向けて、固定板17の中心の穴部を挿通させて、オネジ15を螺着結合させる。オネジ15の頭部と固定板17との間にはワッシャー部材20が設けられる。このオネジ15の締め付けにより、メネジ14の螺着力を介して、ステム6を軸心方向に沿って固定板17に向けて締め付けることにより、クサビ結合を圧着させる。このクサビ結合により、平面部12b、13b同士、或は、傾斜面12a、13a同士は、バルブの開閉に伴いステム6の変形などに起因した応力が繰り返し作用しても、弁体ホルダ1に対してずれることなく堅固に面接触による結合状態を維持できる。なお、堅固とは、部材間の固定や結合に用いており、部材間のずれや摩擦、或は弾性的な変形が実質的に生じることがないことを意味する。
また、この結合状態において、図6(a)に示すように、ステム6の先端面6aと、固定板17の下面との間に、空隙Gを確保するようにしても良い。この空隙Gが確保されている場合、先端面6aが非接触となり、ステム6が撓んでも、他の部位と摩擦を生じることがない。
次いで、図1、4、6において、弁体2は、長尺矩形板状であり、金属(アルミ材)などの素材から一体的に形成されており、背面2a側は弁体ホルダ1に固定され、その反対の正面側には、弁体シール材3が設けられる。この弁体シール材3は、図8~10に示すように、弁体2の正面の外周縁側に設けられ、本例では、断面略台形状のアリ溝にOリング3を嵌着させている。このOリング3は、弁閉時にボデー21の弁座22(シール面)に押圧されて弁口を密封シールして弁を閉じる。図示していないが、弁体2は、弁体シール材3を有さなくてもよく、この場合のシール材は、図示しない弁座側に設けられ、弁体の正面はフラットな平面状に設けられる。さらに、弁体シール材3としてはOリング3に限らず、例えば成型パッキンを加硫接着させて設けるなど、実施に応じて適宜選択できる。
図1、4、6において、弁体2の背面2aには、長尺方向に沿って横方向中央位置に横窪み部23を形成している。また、縦窪み部24は、この横窪み部23と、弁体2の背面2aの中央において、短尺方向の上方に向けて形成されている。これら横窪み部23、縦窪み部24の長さや深さなどの形状や配置は、実施に応じて適宜選択できる。本例では、横窪み部23と縦窪み部24は、背面2aの中央に対して長尺方向に対称的な略T字形状を呈しており、同じ深さで平面状に背面2aに突設されている。また、この横窪み部23は、長尺方向の長さLで、弁体ホルダ1の対向面1aの横リブ4と適合する形状に設けられ、縦窪み部24も、弁体ホルダ1の縦リブ5と適合する形状に設けられる。後述する弁体2と弁体ホルダ1との固定状態では、横窪み部23と横リブ4、縦窪み部24と縦リブ5との間に、それぞれ隙間Gが確保されるように収納される。
図1、4、6において、弁体2の背面2a側には、弁体固定部25a、25bが設けられる。本例の弁体固定部25a、25bは、上下に2つずつ、合計4つのネジ孔(メネジ部)であり、固定面8の4つの挿通孔7a、7bに適合するように設けられ、4つのボルト9を螺着できる。具体的には、これらのネジ孔25a、25bは、弁体2の中央に対して長尺方向の対称位置であり、横窪み部23の両端部よりも外側に配置されている。
続いて、弁体ホルダ1と弁体2との固定状態を説明する。この固定状態とするには、弁体ホルダ1の両端2カ所で固定面8を弁体2の背面2aに面接触させ、4つの挿通孔7a、7bの位置を4つのネジ孔25a、25bの位置に合わせ、図1に示すように、4つのボルト9を挿通孔7a、7bに挿通させてボルト9を螺着させることで、固定面8と弁体2の背面2aとを面接触で固着するようにしている。
この固定状態においては、弁体2の背面2aは、両端2カ所の固定面8における面接触領域を除いて、バルブを開閉する間を通して、弁体ホルダ1に対して非接触状態が保たれる構造となっている。
本例の構造では、例えば図1に示した、弁体2の背面2a側の略T字形状を呈する横窪み部23と縦窪み部24から成る凹状領域に対し、例えば図2に示した、弁体ホルダ1の対向面1a側に略T字形状を呈する横リブ4と縦リブ5から成る凸状領域を、図4(a)、図6(a)、図7に示すように、互いに隙間Gを介して嵌り込むように対向させることができる。さらに、弁体2の背面2aの縦窪み部24に続いて、嵌合部26が凹状の溝として延出しており、この嵌合部26には、固定状態において、特に図6(a)に示すように、ステム6のステム撓み部16が隙間を介して嵌合できるようになっている。
このように、弁体2の背面2aと弁体ホルダ1の対向面1aとの間に隙間Gが確保されているため、弁体2の厚みと弁体ホルダ1の厚みの合計を維持乃至最小限の増加に抑えながらも、弁体ホルダ1側を厚肉化することができ、よって、弁体ホルダ1の剛性を高めることができる。また、上記のように、本発明の弁体固定構造は、弁体2と弁体ホルダ1との固定間や、ステム6と弁体ホルダ1との結合間の当接領域を、できる限り減少させている。よって、バルブの開閉(弁体2の押圧)に伴う部材同士の摩擦も低減され、よって、擦れによって生じ得るパーティクルの発生を抑制できるので、極めて高いクリーン性が要求される半導体製造工程に用いる真空用ゲートバルブの弁体固定構造として極めて好適な構造となる。
さらに、弁体ホルダ1は、左右対称位置で上下2点のボルト9によって両端の固定面8が弁体2の背面2aに堅固に固着されるから、弁閉時に弁体2から押圧の反力を受けても、その長尺方向に沿った弁体2の弁体ホルダ1に対する回転や捩れに対する耐久性が極めて高い。また、弁体ホルダ1の両端において、短尺方向に沿って長い矩形状の固定面8の面接触だけで弁体2を固定しており、固定面8以外の部分は非接触なので、弁閉の際、これら対称位置の2点からステム6による押圧力を弁体2に伝えることができる。このため、後述のように、2カ所の固定面8において、それぞれ一本のステムを用いて弁体2に力を与える状況に近似した作用も得られる。なお、固定面8の短尺方向の長さは、弁体2の短尺方向の長さの1/2以上に設定すれば好適である。
続いて、図8~10において、本発明の真空用ゲートバルブと、この真空用ゲートバルブにおける弁体固定構造の作用を説明する。図8において、同図右側は、本例の真空用ゲートバルブの全開状態を示し、同図左側は、全閉状態を示している。
図8において、本例の真空用ゲートバルブは、弁体2のLモーション動作により、バルブボデー21の弁座シール面22に対して弁体シール材3を無摺動に押圧させてバルブを開閉するゲートバルブであり、同図中央の弁体開閉駆動体27がステム6を介して弁体2を昇降動させる。弁体開閉駆動体27の両側上端にはカムローラ28が設けられ、このカムローラ28は、カム部材30のカム溝30a内に摺動可能に配置される。カムローラ28がカム溝30aを移動するストロークをカムストロークという(後述のWは、このカムストロークの水平成分である)。弁体開閉駆動体27の両側下端には支点ローラ29が設けられ、この支点ローラ29は、ハウジング体31の内側下部に昇降方向に形成された図示していない案内溝内に摺動可能に配置される。ハウジング体31は、弁体開閉駆動体27の両側に設けられ、内部には、上側エア室33と下側エア室34の間でエア駆動により昇降するピストン32と、このピストン32に連結されカム部材を上端に備えたピストンロッド35と、エア室に外部からエアを給排するためのシリンダヘッド36を有している。
図8右側は、弁体開閉駆動体27(ピストン32)が下端位置となる全開状態であり、上側エア室33のエア圧によりピストン32が下端位置に保持される一方で、スプリング37が上に向けて弁体開閉駆動体27を弾発している。エア圧によるピストン32に連結されたカム部材30の下降力と、スプリング37の弾発力による弁体開閉駆動体27の上昇力とは、カムローラ28がカム溝30a上端部に係止されていることで均衡している。圧縮エアが上側エア室33から抜けていくと、スプリング37の弾発力が勝ってカムローラ28とカム溝30aとの係合を介してピストンロッド35(ピストン32)が上昇させられる。この上昇は、支点ローラ29が案内溝上端と係合して係止される(係止状態)。
この係止状態は、図8左側に示した全閉状態とは異なるが、この図8左側に示した支点ローラ29の位置(高さ)は、この係止状態と同じである。また、図8左側のX線位置で、この係止状態において切断した断面図を、図9に示している。図9は、支点ローラ29が案内溝上端に係止されつつ、弁体シール材3が弁座シール面22から最も離れた(傾いた)状態であり、同図のWは、開口ストロークを示しており、具体的には、係止状態における弁体シール材3と弁座シール面22との間の距離である。この開口ストロークWの分だけ弁体2が揺動することで、弁体シール材3がシール面22に押圧され、全体として弁体2をLモーション動作させてバルブを締め切ることができる。
この開口ストロークWは、図11(c)、(d)に示した同図水平方向のカムストローク成分と次のように対応している。弁体開閉カムストロークWは、弁体2が自由に傾動して弁体シール材3が弁座シール面22に当接するまでの傾動範囲に対応し、弁締切カムストロークWは、この当接後に弁体シール材3を圧縮して最大荷重まで締め付ける傾動範囲に対応している。弁体開閉カムストロークWと弁締切カムストロークWを合せたストローク(カムストロークW=W+W)に対応する傾動範囲の分だけ、弁体2が揺動できる。
なお、本発明の弁体固定構造には、全開と全閉の間を通して、積極的に弾性変形させる部位や、力を緩和する緩衝構造が存在しないため、余計な変形代などを予め確保する必要が無い。このため、必要な弁締切カムストロークWとしては、あくまで最低限の距離で済ませることができる。よって、この開口ストロークWと、弁体ホルダ1と弁体2の厚みを加えた弁体作動幅t(図9)も最小限にできるため、ボデー21の厚みを最小限にできる。
前述の係止状態から、下側エア室34のエア圧の増加に伴い、さらにピストン32(カム部材30)が上昇すると、スプリング37の弾発力によって弁体開閉駆動体27は図8左側の位置に保たれつつ、カム部材30はさらに上昇し、この上昇に伴い、カムローラ28がカム溝30a内を摺動していく。この摺動に伴い、弁体2はシール面22に向けて傾いていくことで、弁体シール材3が弁座シール面22に当接できる。よって、支点ローラ29を支点、カムローラ28を力点、弁体2を作用点とした振り子状の動作により、弁体2が傾いてバルブを閉じる。同図左側は、カムローラ28がカム溝30a下端まで移動して係止され、バルブが全閉となった状態を示している。
図10は、全閉状態である図8左側において、中心線の位置で切断した縦断面図である。上記のように、Lモーションタイプの真空用ゲートバルブは、平面状の弁座シール面22に対して僅かに傾斜させた状態で上端位置まで上昇させ、この傾斜した弁体2をシール面22に向けてステム6を僅かに回転させて押圧するように構成されている。前述の係止状態から、図10においては右回りの回動で弁体2が振られて、弁体シール材3がシール面22に接触した後、さらにシール面22に向けて押圧圧縮されて同図に示す全閉状態に至るが、通常、弁体シール材3がシール面22に当接する位置において、弁体シール材3とシール面22とが平行状態となるように設計される。
しかしながら、この弁体シール材3がシール面22に当接した後、さらに押圧することにより、僅かに弾性のある弁体シール材3が圧縮される分ステム6が揺動すると共に、押圧の反力を受けて、弾性のあるステム6に撓み変形を生じることになるので、全閉状態となるまでに、弁体シール材3と弁座シール面22とが平行となった位置から、さらに押圧代が生じる。このため、弁体2の姿勢が乱され、弁体シール材3とシール面22との平行状態が損なわれ、これによりバルブのシール性が損なわれると共に、弁体シール材3の捩れや擦れによって発塵するおそれもある。この現象は、特に、ステム6が撓むことによる影響が大きい。
本発明の弁体固定構造では、弁閉時において、弁体2の上下方向中央位置Sより上部側を押すことで、弁体2の中央付近でステム6に対してステム6全体の撓みと逆方向の弾性曲げを生じさせて弁体2を傾動させることにより、弁体2と弁座シール面22とを略平行に締め切ることができるようにしている。このため、多くの従来技術に見られる弾性変形を伴う緩衝構造を用いることなく、この押圧時のステム6の撓み変形を適切に矯正(制御)し、押圧の際の弁体シール材3のシール面22に対する平行状態を高精度に維持できる。
図11(a)~(d)は、前述したように、弁閉のために弁体2が上昇していき、ステム6が弁体2をボデーに向けて押圧して全閉状態に至る作用を模式的に示した模式図である。同図(a)は、カムローラ28がカム溝30a上端に係止した状態で弁体2が上昇して行く途中を示しており、同図(b)は、支点ローラ29が案内溝31a上端に係止されて弁体2が揺動を開始する位置を示しており、同図(c)は、カムローラ28がカム溝30aを摺動するカムストロークWの途中位置(弁体開閉カムストロークWと弁締切カムストロークWとの間の境界位置)で、弁体2が揺動して弁体シール材3と弁座シール面22とが当接した状態を示している。本例の真空用ゲートバルブでは、カムローラ28がカム溝30aの上端の係止状態から下端位置に至る途中で、つまり弁体2が揺動し切る途中位置で、弁体シール材3がシール面22に略平行に当接した状態となるように設計されている。
また、図11(d)は、同図(c)の位置から更にカム部材30が上昇することにより、カム溝30aがカムローラ28を弁座シール面22側(同図左側)へ向けて締め付けている状態を示しており、同図(d)は、バルブのほぼ全閉状態を示している。図12(a)は、図11(d)のD部を拡大した部分拡大断面図であり、図12(b)は、同図(a)と同じ状況の従来技術(特許文献1)を示した比較断面図である。
本発明においては、図11(c)に示すように、カム溝30aの移動に伴ってカムローラ28が力点として弁座シール面22側に押圧されていき、ステム6を介して弁体2が弁座シール面22に向けて略平行に揺動され、カムローラ28がカム溝30aの途中位置において、弁体シール材3が弁座シール面22に当接する。同図(d)には、この力点からステム6が受ける応力分布を概略的に示しており、稜線αは、この応力を受けた結果としてのステム6の曲がりを模式的に示したものである。
ここで、前述のように、弁体ホルダ1(ステム6)の結合状態の固定位置は、中心軸Sよりも上側に配置されている。このため、弁体シール材3が弁座シール面22に当接した際には、ステム6を介して弁体ホルダ1が弁体2を押圧する合力は、弁体2の背面2aの上側に位置し、よって、図12(a)においては、弁体シール材3の上側から押圧が作用する。同図の矢印Fは、この合力を模式的に示しており、この合力の上下方向中央位置(中心軸S)からの距離はHである(以下、矢印FをH荷重という。)。
次いで、図12(a)において、力点からの作用により、ステム6の先端部10は、弁座シール面22に略平行に押圧されるので、固定位置であるステム挿入部11から反力を受ける。この反力により、先端部10は、弁座シール面22と反対側(同図右側)に反り返ろうとする力(以下、先端部撓みという。)が働くことになる。なお、このような反力による先端部撓みは、全てのLモーションタイプのゲートバルブで生じるものであり、前述したように、弁体に最大荷重を加えた際に弁体シール材がシール面に対して擦れたり捩れる原因となる。同図の矢印Fは、この際の反力の起点となる弁座シール面22から受ける反力を模式的に示している。
図12(a)において、右側に向けて先端部10が反り返ろうとする力を受けて、弁体ホルダ1には、ステム挿入部11を介して、同図右回転方向に傾動しようとする力が働くことになる。
これに対して、本例では、ステム6の他の部位よりも曲げ強度が低く設定され、優先的に撓むことができるステム撓み部16が設けられている一方で、弁体ホルダ1は、応力変形に対する高い剛性が確保されていると共に、図示していないが、上下方向に所定の間隔で2点のホルダ固定部7a、7bで弁体2の背面2aに固着されている。このため、ステム6に先端部撓みが働いても、弁体ホルダ1自身にはほとんど捩れ変形が生じることがない上に、回転に対して強固な上下2点固着により、図12(a)において右回転方向の力を受けても、弁体ホルダ1と弁体2との間の固着状態にもずれや変形を生じることなく堅持される。このため、ステム6が反り返ろうとする応力は、ほとんどすべてステム撓み部16の曲がり変形(以下、先端部逆撓みという。)に反映される。この先端部逆撓みの曲げ位置(つまり、図12(a)において、稜線αの接線の傾きが略垂直方向となる位置)は、中心軸Sの位置と略一致している。
図12(a)において、弁体ホルダ1は、この先端部の逆撓みを拘束しているので、同図右回転方向へ傾動しようとする応力(逆撓み荷重)を受けている。このため、図示していないが、弁体ホルダ1が背面2aに対して上下で2点固着している位置のうち、特に下側のホルダ固定部7bの位置を中心として、弁体ホルダ1の固定面8が、背面2aに押圧力を与えることになる。同図の矢印Fは、この先端部逆撓みの荷重の合力を模式的に示したものであり、少なくとも弁体2の中心軸Sよりも下側の位置となる(以下、矢印Fを逆撓み荷重という。)。
このため、弁体ホルダ1は、弁閉時の押圧力を受けると、同図において、弁体2の中心軸Sよりも上側にH荷重を与えつつ、弁閉荷重の増加に伴い、先端部逆撓みの働きによって、下側ホルダ固定部7bの位置を中心に、逆撓み荷重が増加してく。この中心軸Sの上側に作用するH荷重と下側に作用する逆撓み荷重とは、前述のように、先端部逆撓みの曲げ位置が、中心軸Sの位置に略一致する状態で、ほぼ釣り合うことになる。
結果として、弁体ホルダ1は、弁体シール材3が弁座シール面22に対して略平行に当接した状態を維持しながら、先端部10と結合部11との間に摩擦や変形をほとんど生じることなく、背面2aの中心位置付近に荷重の合力を与えることができ、背面2aへ与える弁閉力を、上下側で略均等にすることができる。このため、弁閉時(最大荷重時)に、弁体シール材3と弁座シール面22との間に擦れや捩れなど、弁閉力の均一性(平行性)が低い場合に生じる現象を抑制しながらも、弁体シール材3を弁座シール面22に対して略平行に締め切ることが可能となり、もってバルブの高シール性や低パーティクル性を向上させることができる。
さらに、先端部10のクサビ結合においては、弁体ホルダ1の中心軸線に略平行であって、傾斜面12aと傾斜面13aとが、図12(a)に示した固定幅βにより、2面状に互いに隙間のない面接触で圧着されている。このため、先端部撓みを拘束するステム挿入部11内周の傾斜面12aが傾斜面13aに対して与える力は、ほとんど傾斜面13aの垂直方向の成分のみとなり、互いにずれる水平方向の成分は極めて小さい。同様に、対向面1a側においても、平面部12bと平面部13bが互いに与える力は略垂直方向成分が大きく、互いにずれる水平方向の成分は極めて小さくなる。また、固定幅βが十分に大きいため、大きな接触面積により十分な圧着力が確保されている。よって、圧着固定している2面の何れからも、弁体ホルダ1とステム6との間の摺動の発生を抑制できる。したがって、弁体ホルダ1とステム6との結合部分からの摩擦を抑制してパーティクルの発生を抑制できる。
一方で、従来技術(特許文献1)を示した図12(b)では、弁体51をサポートするホルダに相当する部材(横梁部材)50は、弁体51の上下方向中央位置(中心軸S’)から距離H’であるが、弁体51との固着位置は、弁体51の上下方向中央位置にほぼ一致しており、弁体シール材52が弁座シール面53に当接した際には、同図において、右回転方向に傾動するように捩れ変形する。このため、弁体51に最大荷重が加わった際には、同図の矢印fで示したように、弁体51の中心軸S’付近に押圧力を与えることで、弁体シール材52を略平行に弁座シール面53に締め付ける構造が採られている。
しかしながら、同図の構造は、特に横梁部材50の中央領域における撓み量が大きくなり易い。このため、全閉状態に至るために必要な開口ストロークが、この変形代の分大きくなる。さらに、この変形代を予め確保する必要がある分、弁体固定構造の厚み(横梁部材50背面と弁体正面との間の厚み)が大きくなる。同図(b)のHを、この弁体固定構造の厚みとし、Hを、横梁部材50の厚みとする一方で、同図(a)のHを、本発明の弁体固定構造の厚み(弁体ホルダ1の背面と弁体2の正面との間の厚み)とし、Hを、弁体ホルダ1の厚みとした場合は、H≧Hとなり、肉厚により高い剛性を確保しつつも、H≦Hとなっている。よって、特許文献1の弁体固定構造では、バルブに必要な厚みが大きくなる欠点がある。
しかも、同図(b)に矢印gで示したように、横梁部材50は、最大荷重が作用する弁閉の度に、必ず同図右回転方向に捩れる構造を採っているため、弁閉する度に、横梁部材50と弁体51やステム54との間の固定部位に強い応力が掛かり、これらの部位から摩擦によるパーティクルが生じるおそれや、部材の強度が損なわれるおそれもある。
これに対し、図12(a)に示した本発明構造では、このような弾性変形を前提としないから、必要最小限の駆動力と作動スペースでバルブを構成することができると共に、摩擦や強度の低下も生じ難い利点を有する。
また、本発明のバルブでは、図11(d)に示したように、弁体2が傾動する支点ローラ29が弁体開閉駆動体27の最下部なので、傾動半径Rが最大限に確保された構造であるから、支点が弁体開閉駆動体の途中位置にある振り子構造と比較して、少なくとも弁体開閉駆動体27との関係で、弁体2の締め付けに必要な開口ストロークWも最小限にできる。本例では、この弁体開閉カムストロークWに対応する傾動角度は0.5度程度となり、この構造における最小開口寸法にほぼ等しい角度で済ませることができる。
さらに、弁締切カムストロークWは、より詳細には、ステム6(先端部撓み)の撓み代と、弁体ホルダ1の中央部の変形代との和から成るが、前述のように、高い剛性によって弁体ホルダ1の変形代は最小限に抑えられていると共に、ステム6の撓み代(図12(a)においてγで示した撓み角度)も、高い剛性の素材(例えばSUS630)により変形強度を確保しておけば、小さく抑えることができる。よって、弁締切カムストロークWも最小化されている。したがって、本発明では、カムストロークWに考慮される各要素を、それぞれ限りなく最小化できるように構成している。
上記に加え、カムストロークWの大きさに応じて、図10に示した弁体2の昇降動方向に対するカム溝30aの傾斜角度φも大きくとる必要があるが、カムストロークWを最小化することにより、この傾斜角度φも最小化することができる。これに応じて、カム溝30aから受ける抵抗を低減できるため、同じ駆動力であっても弁体2を弁座シール面22に押し付ける力も増すため、カム溝30aの昇降方向のストロークもアクチュエータのサイズも小さくすることができ、よって、バルブのコンパクト化に寄与する。
続いて、図13、14を用いて、本発明の弁体固定構造においては、ステム1本使い構造でありながら、従来の2本のステムを用いた場合と同様の効果が得られる点について説明する。図13は、図7に示した本発明の弁体固定構造の断面図において、弁体2に逆圧荷重が作用した場合を模式的に示した模式断面図である。図14(a)は、ステムが1本の弁体に逆圧荷重が作用した場合を示した模式図であり、同図(b)は、ステムが2本の弁体に逆圧荷重が作用した場合を示した模式図である。
図13は、図示しないボデーシール面に対して弁体シール材3が締め付けられている状態において、図示しない流路から逆圧が弁体2に作用している状態を模式的に示している。同図において、矢印Pは、流路から弁体2の正面側に対して略垂直かつ略均等に作用する逆圧(例えば0.1MPa)を示しており、上述のように、弁体ホルダ1は高い剛性を発揮するため、このような逆圧作用下においてもほぼ撓んだり変形することはない。
一方、弁体2は、弁体ホルダ1ほどの剛性がないため、同図に模式的に示したようなパターンの変形が生じ得る。弁体2は背面2a側の左右2点で剛性の高い弁体ホルダ1と固定面8の面接触を介して固着状態であるため、この固着領域以外の領域が変形し易く、具体的には、同図に示したように、弁体2の中央領域と、弁体シール材3がシール面に密着している弁体2正面側の外周縁領域が逆圧作用による変形を生じやすい。ただし、逆圧Pの大きさを含めて、通常の使用条件下において、本発明の弁体固定構造は、弁体中央領域が逆圧により凹状に変形しても、隙間Gは常に確保され、弁体2の背面2a(凹リブ)と弁体ホルダ1の対向面1a(凸リブ)との間は接触することがないよう設計される。
図13に示したように、弁体2の外周縁領域が逆圧作用で変形することにより、弁体シール材3は、図示しないシール面から離間する方向に力が働くため、バルブのシール性が損なわれる。同図のδは、このような変形で弁体シール材3がシール面位置から離間し得る撓み量を模式的に示している。この撓み量δは、逆圧Pの増加に伴って増加し、例えばδ=0.2単位程度になるとバルブのシール性が失われる限界量となる。この限界量は、バルブや、その使用条件等に応じて予め定まる。
一方で、図14(a)は、弁体固定構造に拘わらず、通常のゲートバルブの構造(弁体40の長尺方向長さM)において、ステム41が弁体の中央に1本設けられる場合の逆圧荷重作用を概略的に示している。同図において、ステム41が弁体40中央に固定されているので、弁体40の中央領域の剛性は高く変形し難いが、弁体40の外周縁領域の剛性が不足しており、同図では、所定の逆圧に曝された状態における弁体シール材42の撓み量δを示している。
これに対し、図14(b)では、通常のゲートバルブの構造(弁体の長尺方向長さN)において、ステム43が弁体の左右対称位置に2本設けられる場合を示しており、同図においては、本発明に係る図13に示した構造と同様に、弁体40の中央領域と、弁体40の外周縁領域が、相対的に大きく変形している。図14(b)では、同図(a)と同じ大きさの逆圧に曝された状態における弁体シール材42の撓み量δを示している。
図14に示すように、逆圧作用や弁体固定構造などが同じ条件下では、弁体シール材42の撓み量δに関しては、ステム43を2本用いている方が、弁体40の大きさの面で有利である(すなわち、ステム2本使いの方が撓み量δが小さい)。例えば、δ=0.2単位とした場合は、同じ逆圧条件下において長さN=M×1.4程度の大きさの弁体を用いることができる。しかしながら、通常、ステム2本使い構造のゲートバルブ(同図(b))は、ステム1本使い構造のゲートバルブ(同図(a))に比べて、ステムが1本多いためにコストが増大する上に、バルブ構造も大型化・重量化する欠点がある。
また、図示していないが、弁体の背面を全面的に支持する弁体全面受け構造の弁体ホルダも公知である。例えば、アルミ製弁体に対し、その背面側と略同形に所定の肉厚でステンレス製により一体的に形成されたゲートホルダが用いられる。このような弁体全面受けゲートホルダを用いれば、ステム1本使い構造であっても、剛性が弱まる弁体の外周縁領域の撓み変形にも強度を持たせることができるため、同じ逆圧条件下であっても、図14(a)に示したほどの撓み量が生じることを防ぐこともできる。しかしながら、このようなゲートホルダを用いると、弁体の重量が増加し、弁体の動作性が損なわれると共に、バルブのコスト性やコンパクト性も損なわれ易くなる欠点がある。さらに、このゲートホルダであっても、ステム2本使い構造ほどの撓み量の抑制も得られにくい。
これに対し、図13に示すように、本発明においては、ステム1本使い構造を採りつつ、上記のような重量のある全面受けゲートホルダを用いることもなく、実質的にステム2本使い構造の利点を享受できる。すなわち、同図に示すように、弁体ホルダ1の剛性が高いため、左右2カ所の固定面8においては、背面2aが堅固に固着している弁体2の方も、逆圧作用下においても、ほとんど変形することがなく、例えば、弁体2の背面2aの横窪み部23の長尺方向長さLに対し、弁体2の長尺方向長さLは約1.4倍まで許容されることが実証されている。
この点、図13の横リブ4の長さLを、図14(a)の弁体40の長さMに対応させ、図13の弁体2の長さLを、図14(b)の弁体40の長さNに対応させて、横窪み部23の長さLをステム1本使い構造に用いることができる弁体の長尺方向長さと考えると、本発明の弁体固定構造においては、弁体の長尺方向長さの面では、実質的にはステム2本使い構造と同様の利点を得られることがわかる。
このように、本発明の弁体固定構造では、少なくとも従来のゲートバルブの弁体固定構造に用いられる長尺矩形状の弁体よりも、横幅が大幅に広い弁体を用いることができる。とりわけ、上記弁体全面受け構造のゲートホルダと同等の大きな弁体強度(弁体外周縁領域の小さな撓み量)を実現しながらも、当該ゲートホルダより重量を概ね半減できる。さらに、本発明の弁体ホルダは、高い剛性によりバルブの開閉動作において特に中央部の変形が極めて小さいため、カムストロークWを最小限に設定できるから、同等の性能でありながら、弁締切力を増やしたり、弁を薄型化させたり、アクチュエータの小型化が可能となる。
更に、本発明は、前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
1 弁体ホルダ
1a 対向面(一面)
2 弁体
2a 背面
3 弁体シール材
4 横リブ(リブ部)
5 縦リブ(リブ部)
6 ステム
10 先端部(固定位置)
11 結合部(固定位置)
13a 13b クサビ面(ステム固定面)
16 ステム撓み部
22 弁座シール面
23 横窪み部
24 縦窪み部
隙間(非接触)
S 弁体の上下方向中央位置(弁体の短尺方向中心軸)
横窪み部の長さ方向の長さ
弁体の長さ方向の長さ

Claims (4)

  1. バルブのステムに弁体ホルダを取付け、弁体ホルダに弁体が取付けられた真空用ゲートバルブにおいて、前記弁体ホルダの一面に曲げ強度を増すための横リブと縦リブからなるリブ部と前記弁体の背面に横方向中央位置に形成された横窪み部とこの横窪み部の中央位置に上方に向けて形成された縦窪み部とが備えられ、前記リブ部は、前記横窪み部と縦窪み部に前記弁体と非接触状態で収納され、前記弁体ホルダの両端は、前記横窪み部より長さ方向外側位置の前記弁体の背面に固定すると共に、前記弁体ホルダと前記ステムの固定位置は、前記弁体の上下方向中央位置より上部側であり、弁閉時は、前記弁体の上下方向中央位置より上部側を押すことで、前記弁体の中央付近で前記ステムに対して前記ステム全体の撓みと逆方向の弾性曲げを生じさせて前記弁体を傾動させることにより、前記弁体と弁座シール面略平行に締め切ようにしたことを特徴とする真空用ゲートバルブ。
  2. 前記弁体ホルダと前記ステムの固定位置には、前記ステムの上端側面に下方に向かって傾斜させたクサビ形状のステム固定面を形成した請求項1に記載の真空用ゲートバルブ。
  3. 前記ステム固定面の前記ステムの下側位置には、厚さを薄くして弾性撓みを生じさせることにより前記弁体を傾動させるステム撓み部を形成した請求項2に記載の真空用ゲートバルブ。
  4. 前記横窪み部の長さ方向の長さは、前記弁体の長さ方向の長さの1/2以上である請求項1乃至3の何れか1項に記載の真空用ゲートバルブ。
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