JP7442175B2 - 積層体、積層体の製造方法、及び二酸化チタン担持体 - Google Patents

積層体、積層体の製造方法、及び二酸化チタン担持体 Download PDF

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本発明は、積層体、積層体の製造方法、及び二酸化チタン担持体に関する。
二酸化チタン(チタニア)は、従来から照射された光で触媒作用を発現することが知られ、汚れの除去もしくは洗浄、又は抗菌もしくは殺菌等の効果を期待して、例えば、建築物の外壁もしくは屋根材等、又は抗菌もしくは殺菌等が求められる材料(例えば、キッチン、浴室等)などへの利用が広く検討されるに至っている。
具体的には、光触媒を担持させたプラスチック製のシートもしくはフィルム又は部材等の担体に、光触媒が担持された光触媒担持体が知られている。
例えば、基材上に、ポリシロキサン構造を有するポリシロキサンセグメントとビニル系重合体セグメントとが所定の基で結合された複合樹脂を用いた活性エネルギー線硬化性樹脂層と光触媒層とを設けた光触媒担持シートが提案されている。この文献では、耐磨耗性に優れ、触媒作用による担体の分解又は白化の発生が抑えられ、屋外における長期耐候性に優れることが示されている(例えば、特許文献1参照)。
特許第4655251号公報
従来から光触媒作用を利用する技術が検討されて、担体が有機物である場合の劣化に伴う耐候性の低下については改善がなされつつある一方で、光触媒作用を安定的に活用し得るに至っていないのが実状である。
例えば特許文献1のように、ポリシロキサンを有する樹脂を用いた活性エネルギー線硬化性樹脂層と光触媒層とを重ねた層構造では、ポリシロキサン系の材料が用いられることで光触媒による劣化低減が期待される。しかしながら、層構造中の層間でポリシロキサンのケイ素(Si)と光触媒層中のチタン(Ti)とが結合して形成されると考えられるTi-O-Si結合は、結合力自体が比較的弱い。そのため、チタン原子を安定的に層内に保持し難く、長期に亘ってチタニア(TiO)による光触媒作用を維持できない課題がある。
本発明は、上記に鑑みなされたものである。
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、光触媒作用が安定的に維持された二酸化チタン担持体を提供することにある。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、光触媒作用による高分子材料の劣化が低く抑えられて耐候性に優れ、光触媒作用が安定的に維持された積層体及びその製造方法を提供することにある。
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 二酸化チタンを含有し、かつ、ホスホチタノキサン結合(-Ti-O-P-)を有する二酸化チタン担持体である。
<2> 二酸化チタンを含有する第1の層と、下記式1で表される化合物を含有する第2の層と、を有する積層体である。

式1において、Arは芳香族基を表し、Rは、ArとSiとの間を連結する直鎖部位の原子数が2以上である連結基を表し、R11は水素原子又はアルキル基を表す。nは、1~100の整数を表す。
<3> 前記第2の層の、前記第1の層を有する側とは反対側に、更に、樹脂を含有する第3の層を有する前記<2>に記載の積層体である。
<4> 前記樹脂は、ヒドロキシ基を有する前記<3>に記載の積層体である。
<5> 前記樹脂は、水100gに対する溶解性が1g未満である樹脂である前記<3>又は前記<4>に記載の積層体である。
<6> 前記樹脂が、エポキシ樹脂である前記<3>~前記<5>のいずれか1つに記載の積層体である。
<7> 前記エポキシ樹脂が、ポリ(ビスフェノールA-co-エピクロロヒドリン)である前記<6>に記載の積層体である。
<8> 前記Arが、フェニレン基である前記<2>~前記<7>のいずれか1つに記載の積層体である。
<9> 前記Rで表される連結基が、炭素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも2種の原子を含む前記<2>~前記<8>のいずれか1つに記載の積層体である。
<10> 前記Rが、下記式2で表される連結基である前記<2>~前記<9>のいずれか1つに記載の積層体である。

式2において、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖部位の炭素数が1~6であるアルキレン基を表し、*1はArと結合する結合手であり、*2はSiと結合する結合手である。
<11> 前記Rは、ArとSiとの間を連結する直鎖部位の原子数が5以上である前記<2>~前記<10>のいずれか1つに記載の積層体である。
<12> 前記<2>~前記<11>のいずれか1つに記載の積層体を有する二酸化チタン担持体である。
<13> 基材の上に、水溶性樹脂を含有する第4の層を形成する工程と、前記第4の層の上に、樹脂を含有する第3の層を形成する工程と、前記第3の層の上に、上記の式1で表される化合物を含有する第2の層を形成する工程と、前記第2の層の上に、二酸化チタンを含有する第1の層を形成する工程と、前記第4の層と水性溶媒とを接触させることにより前記基材を除去する工程と、を有する積層体の製造方法である。
本発明の一実施形態によれば、光触媒作用が安定的に維持された二酸化チタン担持体が提供される。
本発明の他の実施形態によれば、光触媒作用による高分子材料の劣化が低く抑えられて耐候性に優れ、光触媒作用が安定的に維持された積層体及びその製造方法が提供される。
調製した二酸化チタンゾル中のTiO粒子の体積基準の粒度分布を示すグラフである。 調製した二酸化チタンゾル中のTiOのX線回折によるピーク強度を示すグラフである。 積層体に対してブラックライトによる照射(4時間)と消灯(4時間)とを5サイクル繰り返した際のチタニア層表面の水接触角の変化を示すグラフである。 図3の4サイクル目におけるブラックライト照射開始後の水接触角の経時変化を示すグラフである。 図3の4サイクル目におけるブラックライト消灯後の水接触角の経時変化を示すグラフである。 光触媒活性及びその耐候性を評価するための評価装置の断面構成を説明するための概略断面図である。 メチレンブルーが消色した状態を説明するための図である。 光触媒層(第1の層)であるチタニア層とPBE層(第3の層)とを隔てるチタニア安定化層(第2の層)によってPBE層中のメチレンブルーの着色が維持された状態を説明するための写真である。 (a)は実施例1の積層体のチタニア層表面のレーザー顕微鏡写真であり、(b)は比較例1の積層体のチタニア層表面のレーザー顕微鏡写真である。 (a)は実施例1の積層体の耐候性試験による変化を示すレーザー顕微鏡写真であり、(b)は比較例1の積層体の耐候性試験による変化を示すレーザー顕微鏡写真である。 本開示の積層体の製造方法の一例を示す概略工程図である。
以下、本発明の二酸化チタン担持体、並びに、積層体及びその製造方法について詳細に説明する。
なお、以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
<二酸化チタン担持体>
本発明の二酸化チタン担持体は、二酸化チタンを含有し、かつ、ホスホチタノキサン結合(-Ti-O-P-)を有するものである。
本発明の二酸化チタン担持体は、内部に含まれる二酸化チタン(TiO)に対してホスホチタノキサン結合(Ti-O-P結合)が形成されている。Ti-O-P結合は、従来から知られているTi-O-Si結合に比べ、Tiと強力に結合しているため、Ti原子を安定的に内部に保持しやすい。
これにより、長期に亘ってTiOの光触媒作用(光触媒活性)を安定的に維持することが可能である。
Ti-O-P結合は、TiOのTiとの間でTi-O-P結合を形成し得る化合物を用いることで形成でき、例えば、分子内に酸素原子(O)とリン原子(P)とが結合したO-P構造部分を有する化合物を用いることで形成されると考えられる。O-P構造部分を有する化合物の一例であるホスホン酸は、分子中に「HO-P(=O)OH」の構造部分を有し、3つの酸素原子はチタン原子との結合を形成することが可能である。
本発明の二酸化チタン担持体は、例えば、二酸化チタンを含有する層と、Ti-O-P結合を形成し得る化合物を含有する層と、を有する積層体を有する態様であってもよく、本発明の二酸化チタン担持体の好ましい態様は、以下に説明する本発明の積層体を有する態様である。
<積層体>
本発明の積層体は、二酸化チタン(TiO)含有する第1の層(以下、「光触媒層」又は「TiO2 layer」ともいう。)と、以下に示す式1で表される化合物を含有する第2の層(以下、「チタニア安定化層」ともいう。)と、を有している。
また、本発明の積層体の好ましい態様は、第2の層の、第1の層を有する側とは反対側に、更に、樹脂を含有する第3の層を有する。第3の層を有することで、第1の層及び第2の層を支持し、第1の層及び第2の層の取り扱いが容易になる。
第3の層の、第2の層を有する側と反対側に、第3の層の側から順に、更に水溶性樹脂を含有する第4の層と基材とを有する態様としてもよい。

式1において、Arは芳香族基を表し、Rは、ArとSiとの間を連結する直鎖部位の原子数が2以上である連結基を表し、R11は水素原子又はアルキル基を表す。nは、1~100の整数を表す。
従来、担体としてプラスチック製の材料を採用した場合には、プラスチック自体が有機物であるため、プラスチック担体に光触媒を直接担持すると、その触媒作用によって担体が劣化し、耐久性が著しく損なわれることが懸念されてきた。
本発明の積層体では、TiO含有する光触媒層(第1の層)と、第1の層に隣接する位置に特定のホスホン酸を有するケイ素ポリマー(式1で表される化合物)を含むチタニア安定化層(第2の層)と、が設けられることで、以下に示す(1)及び(2)の2つの作用が発現し、結果、積層体の高分子材料の劣化を低く抑え、耐候性に優れ、かつ、光触媒作用を長期間安定的に維持し得るものとなる。
特に、第2の層の、第1の層を有する側とは反対側に、更に樹脂を含有する第3の層を有する場合において、以下の(1)の作用が効果的に奏される。
(1)第2の層中における特定のホスホン酸を有するケイ素ポリマーは、例えば以下に示すように、光触媒層(例えば、以下ではTiO2 layer)の面方向に沿って、第2の層中においてSiから伸びる-Ar-R-鎖が複数存在し、その芳香族環(式1中のAr)同士が各々のπ-π結合間で相互作用(π-π相互作用(π-πinteraction))を生じ、このπ-π相互作用が光触媒層(第1の層)の面方向に広がることで、TiOを含む第1の層と、第2の層に隣接する有機材料と、が第2の層(例えば、以下ではPAPS layer)によって隔てられる。例えば、第2の層の、第1の層を有する側とは反対側に樹脂を含有する第3の層を有する場合(即ち、第1の層/第2の層/第3の層の積層構造を有する場合)、第1の層と、第2の層中のポリシロキサン構造と結合する第3の層(例えば、以下ではPBE layer)と、が第2の層によって隔てられる。これにより、光触媒層の触媒作用による有機材料(好ましくは後述の第3の層)の劣化が抑制され、耐候性の向上が図られる。
(2)チタニア安定化層(第2の層)中のホスホン酸を有するケイ素ポリマーは、ホスホン酸構造(-PO(OH))を有しており、隣接する光触媒層中のTiOとの間でホスホチタノキサン結合(Ti-O-P結合)を形成する。そして、Ti-O-P結合は、従来のTi-O-Si結合に比べて、結合力が強いため、Ti原子を安定的に層内に保持しやすく、長期に亘ってTiOの光触媒作用(光触媒活性)を安定的に維持することができる。

したがって、第2の層中に含有される式1で表される化合物は、第1の層では、ホスホン酸中の3つの酸素原子が第1の層中のTiOのチタン原子と結合する。これにより、TiOのチタン原子が強く層中に保持され、第1の層と、第2の層と隣接する有機材料と、の間を隔離して有機材料への光触媒作用を低減することができる。
また、積層体が第3の層(例えば以上のPBE layer)を有する場合は、後述するように、ポリシロキサン構造の酸素原子が第3の層中の樹脂のヒドロキシ基と相互作用ないし結合することによって、下記の式1-1で示される構造をとって存在しているものと推定される。これにより、第3の層及び第2の層の密着性にも優れている。

式1-1中のAr及びRは、式1におけるAr及びRと同義であり、好ましい態様も同様である。また、式1-1中の「*」は、結合手を表す。
以下、本発明の積層体を構成する各層について、まず初めに第2の層を説明し、続いて第2の層に隣接する第1の層及び第3の層並びにそれ以外の他の層について詳述する。
-第2の層-
本発明の積層体は、後述する第1の層(光触媒層)に隣接する位置に、式1で表される化合物(ホスホン酸を有するケイ素ポリマー)を含有する第2の層(チタニア安定化層)を有する。本発明の積層体が第2の層を有することで、第2の層に隣接する有機材料に対する光触媒作用が抑えられ、積層体の耐候性に優れる。
本発明の積層体は、後述するように、第2の層の、第1の層(光触媒層)を有する側とは反対側に更に第3の層が設けられ、第1の層及び第3の層の間に第2の層(チタニア安定化層)を有する場合が好ましい。
本発明の積層体が第1の層/第2の層/第3の層の積層構造を有する場合に、光触媒作用のある第1の層と光触媒作用の影響を受けやすい第3の層との間に特定の層を介在するので、積層体の耐候性と光触媒作用との両立を図ることができる。

式1において、Arは、芳香族基を表す。
Arにおける芳香族基は、無置換でもよく、置換基を有してもよい。
芳香族基は、π-π結合が可能な芳香環を有する基であればよく、例えば、フェニレン基、メチルベンゼンジイル基等の単環芳香族炭化水素基;ナフチレン基、アントラセニレン基等の多環芳香族炭化水素基;が挙げられる。
中でも、Arで表される芳香族基は、配向性及び製膜性の点で、フェニレン基が好ましい。
は、ArとSiとの間を連結する直鎖部位の原子数が2以上である連結基を表す。Rが原子数2以上の直鎖部位を有する連結基であることで、ArとSiとの間に一定の距離を保つことができ、化合物の合成上の観点から有利である。
なお、「直鎖部位」とは、2つの元素(ここではAr及びSi)の間を連結する構造を形成している元素のみを指し、側鎖として結合された基は含まれない。以下において同様である。
は、炭素原子(C)、酸素原子(O)、窒素原子(N)及び硫黄原子(S)から選ばれる少なくとも2種の原子を含む基であることが好ましく、C、O、及びSから選ばれる少なくとも2種の原子を含む基であることがより好ましく、C、O、及びSを含む基であることが更に好ましい。
中でも、Rは、下記式2で表される連結基を表す場合が特に好ましい。

式2において、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖部位の炭素数が1~6であるアルキレン基を表す。*1は、Arと結合する結合手であり、*2は、Siと結合する結合手である。
式2中のR及びRは、それぞれ独立に、直鎖部位の炭素数が1~3であるアルキレン基を表す場合が特に好ましい。炭素数が1~3であるアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
における、ArとSiとの間を連結する直鎖部位の原子数としては、5以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。
で表される連結基の例としては、-(CH-、-O-(CH-、-O-CH-S-CH-、-O-CH-S-(CH-、-O-CH-S-CHCH-、-O-(CH-S-(CH-、-O-CHCH(CH)CH-S-(CH-等を挙げることができる。
11は、水素原子又はアルキル基を表す。
11におけるアルキル基としては、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基等が挙げられる。
中でも、R11は、水素原子又は炭素数1~2のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
nは、1~100の整数を表し、30~70の範囲であることが好ましい。
式1で表される化合物の具体例を以下に示す。但し、本発明は、下記具体例に制限されるものではない。

第2の層中における上記式1で表される化合物の含有量としては、第2の層の全質量に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、第2の層中における上記式1で表される化合物の含有量の上限は、特に制限はなく、100質量%以下とすることができる。上記式1で表される化合物の含有量が1質量%以上であると、積層体の耐候性と光触媒作用との両立を図りやすい。
第2の層の厚みとしては、π-π相互作用による効果が得られる範囲であればよく、例えば、1μm~10μmの範囲とすることができ、1μm~5μmの範囲が好ましい。
第2の層の形成は、特に方法に制限はなく、上記式1で表される化合物を含有する層が形成できればよく、例えば、上記式1で表される化合物と溶媒とを混合した混合溶液を調製し、混合溶液を例えば後述の第3の層の上に塗布し乾燥させることにより形成することができる。
混合溶液中における上記式1で表される化合物の濃度としては、積層体の耐候性と光触媒作用との両立の観点から、混合溶液の全質量に対して、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、混合溶液中における上記式1で表される化合物の濃度の上限は、塗布時の白濁を抑える観点から、10質量%未満が好ましく、5質量%未満がより好ましい。
溶媒としては、少なくとも上記式1で表される化合物を溶解し得る溶媒であればよく、例えば、アルコール、エーテル、トルエン等が挙げられる。中でも、溶解性の点で、アルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノールがより好ましい。
塗布は、例えばスピンコート法又はバーコート法等の公知の塗布方法から適宜選択された任意の方法を使用して行うことができる。
乾燥の方法としても、特に制限はなく、塗布後の自然乾燥、又は加熱及び/もしくは送風等による公知の乾燥方法を適宜選択して行うことができる。
-第1の層-
本発明の積層体は、二酸化チタン(TiO)含有する第1の層(光触媒層)を有する。本発明の積層体が光触媒層を有することで、光触媒作用による効果が得られる。
二酸化チタンとしては、光触媒活性が強く、かつ長期に亘り発現し得る観点から、結晶型がアナターゼ型、ルチル型又はブルッカイト型であるものが好適であり、中でも、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタンが好ましく、アナターゼ型二酸化チタンがより好ましい。
二酸化チタンの結晶構造は、粉末X線回折(XDR;X-ray diffraction)により解析することで特定することができる。
二酸化チタンとして、酸化チタンの結晶構造中に異種元素をドーピングして可視光に応答しやすく設計された化合物を用いてもよい。酸化チタンにドーピングする元素としては、窒素、硫黄、炭素、フッ素、リン等のアニオン元素;クロム、鉄、コバルト、マンガン等のカチオン元素;等が挙げられる。
二酸化チタンの形態としては、粒子、又は、有機溶媒もしくは水の中に分散させたゾルもしくはスラリーのいずれを用いてもよい。
二酸化チタンの粒子を用いる場合、粒子の平均粒径(D50)は、特に限定はないが、0.5nm~5nmが好ましく、より好ましくは1nm~5nmである。
平均粒径(D50)は、強度基準の粒度分布における累積分布50%での粒径を指す。
D50は、レーザー回折散乱法により求められる値であり、例えばレーザー回折/散乱式粒子径測定装置(例えば、Anton-Paar社製のLitesizer 500型)を用いて測定される。
第1の層中における二酸化チタンの含有量としては、第1の層の全質量に対して、0.1質量%~30質量%が好ましく、1質量%~10質量%がより好ましい。
二酸化チタンの含有量が0.1質量%以上であると、光触媒活性により優れたものとなる。また、二酸化チタンの含有量が30質量%以下であると、透明性及び耐久性の点で有利である。
第1の層の厚みとしては、π-π相互作用による効果が得られる範囲であればよく、例えば、1μm~10μmの範囲とすることができ、1μm~5μmの範囲が好ましい。
第1の層の形成は、特に方法に制限はなく、二酸化チタンを含有する層が形成できればよく、例えば、二酸化チタンと溶媒とを混合した混合液(好ましくは二酸化チタン分散液)を調製し、混合液を例えば既述の第2の層の上に塗布し乾燥させることにより形成することができる。
また、混合液には、必要に応じて、二酸化チタンの分散を良好に行うための分散剤、及び分散助剤等の添加剤などを含有してもよい。分散剤としては、例えば、分散樹脂、界面活性剤等が挙げられる。
溶媒としては、例えば、水、アルコール、エーテル、トルエン等が挙げられる。中でも、溶解性の点で、アルコールがより好ましい。
混合液中における二酸化チタンの濃度としては、混合液の全質量に対して、0.1質量%~20質量%が好ましく、1質量%~10質量%がより好ましい。
塗布は、例えばスピンコート法又はバーコート法等の公知の塗布方法から適宜選択された任意の方法を使用して行うことができる。
乾燥の方法としても、特に制限はなく、塗布後の自然乾燥、又は加熱及び/もしくは送風等による公知の乾燥方法を適宜選択して行うことができる。
-第3の層-
本発明の積層体は、支持材として、少なくとも樹脂を含有する第3の層を有する。
本発明の積層体が第3の層を有することで、積層体における支持機能を担い、第1の層及び第2の層の取り扱いが容易になる。
樹脂としては、水100gに対する溶解性が1g未満である樹脂が好ましい。
水100gに対する溶解性が1g未満である樹脂とは、水への溶解性が低い樹脂であることを指し、水100gに対する溶解性は1g未満であることが好ましい。支持材をなす第3の層の水溶解性が低いと、積層体を安定的に保持しやすく、例えば、屋外、又は浴室等の水と接しやすい場所での使用に適したものとなる。
樹脂は、ヒドロキシ基を有する樹脂が好ましい。
樹脂がヒドロキシ基を有することで、第2の層に含まれる式1で表される化合物のポリシロキサン構造の酸素原子が第3の層中の樹脂のヒドロキシ基と相互作用ないし結合する。これにより、上記式1-1で示される構造が形成されることにより、第3の層及び第2の層の密着性にも優れたものとなると推定される。
第3の層に含まれる樹脂としては、ヒドロキシ基を有し、かつ、水100gに対する溶解性が1g未満である樹脂(特定樹脂)であることがより好ましい。
特定樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基を含むポリスチレン、ヒドロキシ基を含むポリアクリル、ヒドロキシ基を含むポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ヒドロキシ基を含むポリアミド、ヒドロキシ基を含むポリカーボネート、ヒドロキシ基を含むエポキシ樹脂(例えば、ポリ(ビスフェノールA-co-エピクロロヒドリン)等)などが挙げられる。
第3の層に含まれる樹脂としては、ヒドロキシ基を含むエポキシ樹脂が好ましく、例えば、ポリ(ビスフェノールA-co-エピクロロヒドリン)は好適である。
ヒドロキシ基を含む特定樹脂は、ヒドロキシ基又はヒドロキシ基を含む置換基で置換されたモノマーの単独重合体又は当該モノマーと当該モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとの共重合体として、あるいは重合体をヒドロキシ基又はヒドロキシ基を含む置換基で置換した置換体として得ることができる。
第3の層中における特定樹脂の含有量としては、第3の層の全質量に対して、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。また、第3の層中における特定樹脂の含有量の上限は、特に制限はなく、100質量%以下であればよく、99質量%以下とすることができる。特定樹脂の含有量が10質量%以上であると、支持機能に優れたものとなる。
第3の層の厚みとしては、支持機能が得られる範囲であればよく、例えば、1μm~10μmの範囲とすることができ、1μm~5μmの範囲が好ましい。
第3の層の形成は、特に方法に制限はなく、特定樹脂を含有する層が形成できればよく、例えば、特定樹脂の成形体(例えば、シート、フィルム)を用いてもよい。また、積層体が、基材、又は後述のように第4の層及び基材を有する態様の場合、基材上又は基材上の第4の層の上に、特定樹脂と溶媒とを混合して調製した混合溶液を第4の層上に塗布し乾燥させることにより形成することができる。
溶媒としては、少なくとも特定樹脂を溶解し得る溶媒であればよく、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロホルム、塩化メチレン等の溶剤、前記溶剤及び水の混合溶媒を挙げることができる。中でも、成膜性の点で、THF、又はTHF及び水の混合溶媒が好ましい。
混合溶液中における特定樹脂の濃度としては、支持機能を付与する観点から、混合溶液の全質量に対して、10質量%以上が好ましく、13質量%以上がより好ましい。また、混合溶液中における特定樹脂の濃度の上限は、塗布性の観点から、30質量%以下の範囲が好適である。
塗布は、例えばスピンコート法又はバーコート法等の公知の塗布方法から適宜選択された任意の方法を使用して行うことができる。
乾燥の方法としても、特に制限はなく、塗布後の自然乾燥、又は加熱及び/もしくは送風等による公知の乾燥方法を適宜選択して行うことができる。
本発明の積層体における第1の層、第2の層及び第3の層の合計の厚みとしては、特に制限はなく、例えば、5μm~20μmの範囲としてもよい。
本発明の積層体は、第3の層の、第2の層を有する側と反対側に、基材を有する態様としてもよい。
また、本発明の積層体は、第1の層、第2の層及び第3の層を含む積層体を作製する場合に積層体を容易に得るための構造として、第3の層の、第2の層を有する側と反対側において、水溶性樹脂を含有する第4の層を有する態様としてもよい。例えば、第3の層の、第2の層を有する側と反対側において、第3の層の側から順に更に、水溶性樹脂を含有する第4の層と、基材と、を有している態様に構成することもできる。
-基材-
本発明の積層体は、更に、基材を有することができる。
基材としては、支持体として利用できるシート又はフィルムを適宜選択すればよく、例えば、ガラス基材、プラスチック基材、金属基材等が挙げられる。
また、積層体が基材を有する場合、本発明の積層体は第3の層と基材との間にさらに水溶性樹脂を含有する第4の層を有する構造としてもよい。
基材及び第4の層の詳細及び好ましい態様については、後述する。
~形態~
本発明の積層体は、本発明の積層体を有することで二酸化チタン担持体として好適に用いることができる。
本発明の積層体は、目的又は場合に応じて、シート、フィルム、又は成形体等の任意の形態で用いることができる。
本発明の積層体をシート又はフィルムの形態で用いる場合、第1の層、第2の層及び第3の層の積層体の第3の層の露出面に粘着層を付設して、被着体に貼り付ける等して用いてもよい。また、第1の層、第2の層及び第3の層の積層構造の第3の層の露出面に基材を有する積層体の場合、被着体の材質、性状等に応じて選択された基材を選択することで、基材が被着体を構成する材料の一部をなす材料として用いることができる。
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法は、基材の上に、水溶性樹脂を含有する第4の層を形成する工程と、第4の層の上に、樹脂を含有する第3の層を形成する工程と、第3の層の上に、既述の式1で表される化合物を含有する第2の層(チタニア安定化層)を形成する工程と、第2の層の上に、二酸化チタン(TiO)を含有する光触媒層である第1の層(チタニア層)を形成する工程と、第4の層と水性溶媒とを接触させることにより基材を除去する工程と、を有する。
本発明の積層体の製造方法は、第3の層と基材との間に第4の層が設けられるので、基材上に第1の層/第2の層/第3の層の積層体を形成した場合に、水性溶媒を用いて水溶性樹脂が溶解することで、第1の層/第2の層/第3の層の積層体を簡易に取り出すことが可能である。
本開示の積層体の製造方法の具体例として、図11を参照して、基材上に第1の層、第2の層及び第3の層を積層した後に基材から積層体を剥離することにより3層構造の積層体を作製する場合を一例に挙げて説明する。
まず、基材12を用意する。この基材12上に、図11(b)のように第4の層として水溶性樹脂含有層(例えば水溶性樹脂としてPVAを用いる場合はPVA層)14を形成する。次いで、形成された水溶性樹脂含有層14上に、図11(c)のように第3の層として樹脂含有層16(例えば、上記のPBE layer)を形成し、図11(d)のように樹脂含有層16上にさらに第2の層としてチタニア安定化層18(例えば、上記のPAPS layer)を形成した後、図11(e)のようにチタニア安定化層18上に第1の層(光触媒層)としてTiOを含むチタニア層20を形成する。このようにして、第1の層/第2の層/第3の層/第4の層/基材の5層構造の積層体を作製することができる。
次に、作製した5層構造の積層体を水(水性媒体)に例えば浸漬等することにより、5層構造の積層体における第4の層を水と接触させて水溶性樹脂含有層(第4の層)14を溶解し、図11(f)のように基材12を除去する。これにより、基材12から第1の層/第2の層/第3の層の3層構造の部分が分離され、3層構造の積層体30を取り出すことができる。
なお、基材が除去されても、第1の層/第2の層/第3の層の積層体は第3の層を有するので、第3の層が第1の層及び第2の層を支持し、第1の層及び第2の層の取り扱い性は良好に保持される。
水性溶媒としては、例えば、水、アルコール、水及びアルコールの混合溶媒等が挙げられる。アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。
第1の層、第2の層、及び第3の層の形成方法については、各層の項において既述したとおりである。
-第4の層-
本発明の積層体の製造方法では、更に、水溶性樹脂を含有する第4の層を設けることができる。例えば本発明の積層体が基材を有する場合、第3の層と基材との間に第4の層を設けることが好ましい。第3の層と基材との間に第4の層を設けることで、第1の層/第2の層/第3の層を有する積層体を基材から剥離して積層体を容易に作製することができる。例えば、第1の層/第2の層/第3の層/第4の層/基材の積層構造とした場合に、水性溶媒を用いて第4の層を溶解することで、第1の層/第2の層/第3の層の積層体を簡易に作製することが可能である。
水溶性樹脂における「水溶性」とは、水100gに対する溶解性が1g以上であることを指し、水100gに対する溶解性は5g以上が好ましい。
水溶性樹脂としては、親水性基を有するポリマーが挙げられる。
親水性基としては、ヒドロキシ基(-OH)、カルボキシ基(-COOH)、アミノ基(-NH)、スルホ基(-SOH)、エーテル基(-O-)等が挙げられる。
水溶性樹脂の例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル、ポリアクリルアミド、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース等)、ゼラチン、カゼイン、澱粉等が挙げられる。
第4の層中における水溶性樹脂の含有量としては、第4の層の全質量に対して、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。水溶性樹脂の含有量が10質量%以上であると、剥離の点で有利である。また、第4の層中における水溶性樹脂の含有量の上限は、特に制限はなく、100質量%以下であればよく、99質量%以下とすることができる。
第4の層の厚みとしては、特に制限はないが、基材の剥離の観点から、例えば、1μm~100μmの範囲とすることができる。
第4の層の形成は、特に方法に制限はなく、水溶性樹脂を含有する層が形成できればよく、例えば、水溶性樹脂と溶媒とを混合した混合溶液を調製し、混合溶液を例えば基材の上に塗布し乾燥させることにより形成することができる。
混合溶液中における水溶性樹脂の濃度としては、塗布性の観点から、混合溶液の全質量に対して、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましい。また、混合溶液中における水溶性樹脂の濃度の上限は、塗布性の点で、20質量%以下の範囲が好適である。
溶媒としては、例えば、水、アルコール、水及びアルコールの混合溶媒等が挙げられる。アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。
塗布は、例えばスピンコート法又はバーコート法等の公知の塗布方法から適宜選択された任意の方法を使用して行うことができる。
乾燥の方法としても、特に制限はなく、塗布後の自然乾燥、又は加熱及び/もしくは送風等による公知の乾燥方法を適宜選択して行うことができる。
-基材-
基材としては、支持体として利用できるシート又はフィルムを適宜選択すればよく、例えば、ガラス基材、プラスチック基材、金属基材等が挙げられる。中でも、好ましい基材はプラスチック基材又はシリコンウェハである。
プラスチック基材としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリル、ポリカーボネート等の公知のポリマー基材の中から適宜選択することができる。
基材の厚みとしては、例えば、50μm~10,000μmの範囲とすることができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
(実施例1)
-基材の準備-
基材として、厚み50μmのシリコンウェハ(Global Waters Co., Ltd.社製)を用意した。
-PVA層(第4の層)の形成-
ポリビニルアルコール(PVA(水溶性樹脂);商品名:ポリビニルアルコール(重合度 約500)、富士フイルム和光純薬株式会社製)の10質量%水溶液を用意し、この水溶液を上記基材の表面にスピンコータ(回転数3000rpm(revolutions per minute)、120秒間)にて塗布した後、定温乾燥器(EO-300V型)(アズワン社製)を用いて90℃で乾燥させることで、PVA層を形成した。
-PBE層(第3の層)の形成-
続いて、下記構造を有するポリ(ビスフェノールA-co-エピクロロヒドリン)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解してポリ(ビスフェノールA-co-エピクロロヒドリン)の15質量%水溶液を調製した。得られた水溶液を、基材上に形成したPVA層の上にスピンコータ(回転数6000rpm、30秒間)にて塗布し、定温乾燥器(EO-300V型)(アズワン社製)を用いて110℃で乾燥させることで、PBE層を形成した。

-チタニア安定化層(第2の層)の形成-
次いで、下記の化合物(1)〔前記式1で表される化合物;n=50〕をメタノールに溶解し、化合物(1)の1質量%水溶液を調製した。得られた水溶液を、PBE層の上にスピンコータにて回転数2000rpm、20秒間の条件で塗布し、更に回転数3000rpm、40秒間の条件で塗布を行い、塗布層を形成した。その後、形成した塗布層を定温乾燥器(EO-300V型)(アズワン社製)を用いて90℃で乾燥させて、チタニア安定化層を形成した。

-チタニア層(第1の層)の形成-
次いで、テトラブトキシチタン(Ti(OnBu))1当量と、アセチルアセトン2当量と、p-トルエンスルホン酸0.2当量と、をブタノール及び水の混合溶媒下で混合し、70℃で24時間反応させて加水分解することにより、二酸化チタンが5質量%の二酸化チタンゾルを調製した。
調製した二酸化チタンゾルについて、レーザー回折/散乱式粒子径測定装置(Anton-Paar社製のLitesizer 500型)を用いてレーザー回折散乱法により平均粒径(D50)を測定した。測定結果を図1に示す。
結果、二酸化チタンゾル中のTiO粒子のD50は、1.8nmであった。
また、二酸化チタンゾル中のTiO粒子の結晶構造をX線回折(XDR)により解析した。測定結果を図2に示す。
結果、TiOは、アナターゼ型二酸化チタンであることを確認した。

そして、得られた二酸化チタンゾルを、チタニア安定化層の上にスピンコータ(回転数6000rpm、120秒間)にて塗布した後、定温乾燥器(EO-300V型)(アズワン社製)を用いて70℃で乾燥させて、光触媒層であるチタニア層を形成した。
以上のようにして、チタニア層(光触媒層;第1の層)/チタニア安定化層(第2の層)/PBE層(第3の層)/PVA層(第4の層)/基材の積層構造を有する積層体を作製した。
(比較例1)
実施例1において、PVA層上に形成したPBE層(第3の層)の上に、チタニア安定化層を形成せずにチタニア層(光触媒層;第1の層)を形成したこと以外、実施例1と同様にして、チタニア層(光触媒層;第1の層)/PBE層(第3の層)/PVA層(第4の層)/基材の積層構造を有する積層体を作製した。
(評価)
上記のようにして作製した積層体に対して、以下の評価を行った。評価した結果を図3~図10に示す。
-耐久性-
(1)接触角変化
作製した積層体を、遮光した箱の中に収容し、ブラックライトを用いて波長254nmの光を照度5mW/cmとして4時間照射し、照射終了後4時間消灯状態で静置すること(明暗処理)を5サイクル繰り返し、各サイクルでの照射前後における水接触角を測定した。そして、測定値を指標として、積層体における光触媒作用の持続性を評価した。
実施例1で作製した積層体における水接触角の測定結果を図3~図5に示す。
水接触角は、積層体のチタニア層の表面に水を1滴滴下し、接触角計(SImage Entry 5、Excimer Inc.社製)を用いて測定した。
結果としては、実施例1の積層体では図3に示されるように、明暗処理を5サイクル繰り返した場合にも、水接触角の昇降の程度に著しい変化は認められず、光触媒作用を安定的に維持可能な持続性を有していることが確認された。これに対し、比較例1の積層体では、図3のような水接触角の昇降を維持できず、水接触角の昇降の変化が次第に小さくなり、明暗処理を5サイクル繰り返した際の5サイクル目には昇降の変化は著しく小さいものとなった。
さらに図4に、実施例1の積層体の4サイクル(4th)時における水接触角を、照射開始から1時間おきに測定した結果を示す。図4のように、チタニア層の光触媒作用によって、表面の水接触角は1時間で36.4°から9.2°へ低下するという著しい変化が現れ、光照射で短時間に良好な親水状態が形成されることが確認された。
図5は、実施例1の積層体について、親水状態を形成した後に消灯した状態(暗室)での水接触角の変化を示すグラフである。消灯後は、4時間程度かけて水接触角が初期の状態まで回復することが分かる。
(2)加速試験
実施例1及び比較例1で作製した積層体について、各々のチタニア層(光触媒層)の表面を目視により観察し、膜質を評価した。実施例1及び比較例1で作製した積層体のチタニア層の表面のレーザー顕微鏡(VK-8510、株式会社キーエンス製)写真を図9に示す。
なお、図9において、(a)は実施例1の積層体におけるチタニア層の表面を示し、(b)は比較例1の積層体におけるチタニア層の表面を示す。
図9から明らかなように、実施例1の積層体では、均一性の高い膜が形成されており、チタニア層における二酸化チタンは膜表面に均質に担持されていることが分かる。これに対し、比較例1の積層体では、チタニア層に二酸化チタンの凝集による不均質な構造が認められた。
次に、実施例1及び比較例1で作製した積層体に対してキセノンウェザーメーター(NX75、スガ試験機株式会社製)を用いて耐候性試験を行い、試験後の積層体の透明性を目視により評価した。耐候性試験は、日本工業規格(JIS)K7350-2:2008に従い、乾燥雰囲気(照度60W/cm、温度63℃、湿度0%RH)と湿潤雰囲気(照度60W/cm、温度38℃、湿度100%RH)とを、乾燥雰囲気の状態を108分間とし、湿潤雰囲気の状態を18分間として交互に切り替える操作を繰り返し行った。照射時間は、日本国における1年分の全天日射量と試験機における300nm~400nmの1時間分の照射量から算出し、6ヶ月経時が20.1時間、12ヶ月経時が40.2時間とした。
実施例1及び比較例1で作製した積層体のレーザー顕微鏡写真を図10に示す。なお、図10において、(a)は実施例1の積層体を示し、(b)は比較例1の積層体を示す。
その結果、図10に示すように、実施例1の積層体では、6ヶ月、12ヶ月経時で部分的に白濁の発生が見られたものの、透明性を維持していた。これに対し、比較例1の積層体では、6ヶ月経時で白濁が全面に発生し透明性が低下し、試験開始から12ヶ月の時点で白濁による透明性の劣化が顕著に現れた。
-光触媒活性の耐候性-
実施例1で作製した積層体を水中に浸漬し、PVA層を溶解して基材を積層体から除去し、チタニア層(光触媒層)/チタニア安定化層/PBE層からなる3層積層体とした。
そして、3層積層体を、図6に示すように、容器に収容されたメチレンブルー水溶液(濃度30μmol/L)中に浸漬し、3層積層体に対して、容器の開口側(即ち、積層体のPBE層(PBE layer)側)から波長254nmの紫外光を照射した。
結果を図7~図8に示す。
まず、実施例1の積層体では、光照射によってメチレンブルーは消色し、図7に示すように無色透明な液に変化した。このことから、液中の有機物であるメチレンブルーは還元されて、図7のように化合物構造が変化したものと考えられる。これは、チタニア層の光触媒作用によるものであり、上記の水接触角の低下と相関しており、上記の水接触角の低下を裏付けるものと考えられる。
更に、実施例1の積層体では、図7~図8に示すように光照射後の液は無色透明に変化したものの、図8から明らかなように、容器の開口側から観た3層積層体には青色が残存していた。
PBE層はメチレンブルーによって青着色されていたが、PBE層の表面はほぼ液面に位置し、PBE層は液中のチタニア層とチタニア安定化層で隔てられているため、PBE層中に入り込んだメチレンブルーがチタニア層からの光触媒作用を受けなかったものと考えられる。つまり、チタニア安定化層は、光触媒活性を保持しつつも、積層体の劣化を抑えており、耐候性に優れていることを裏付けた。
本発明の積層体は、例えば、建築物の内壁材、外壁材、屋根材等の建材;抗菌又は殺菌等が求められる製品、部品又は材料(手すり、浴室、洗面所、キッチン等);汚れ等のセルフクリーニングが求められる製品、部品又は材料:などの用途に好適に用いることができる。

Claims (12)

  1. 光触媒活性を有する二酸化チタンを含有する第1の層と、
    下記式1で表されるケイ素ポリマーを含有する第2の層と、を有し、
    前記第1の層中の前記二酸化チタンと前記第2の層中のケイ素ポリマーとがホスホチタノキサン結合(-Ti-O-P-)を形成している積層体。


    式1中、Arは芳香族基を表し、Rは、ArとSiとの間を連結する直鎖部位の原子数が2以上である連結基を表し、R11は水素原子又はアルキル基を表す。nは、1~100の整数を表す。
  2. 前記第2の層の、前記第1の層を有する側とは反対側に、更に、樹脂を含有する第3の層を有する請求項1に記載の積層体。
  3. 前記樹脂は、ヒドロキシ基を有する請求項2に記載の積層体。
  4. 前記樹脂は、水100gに対する溶解性が1g未満である樹脂である請求項2又は請求
    項3に記載の積層体。
  5. 前記樹脂が、エポキシ樹脂である請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の積層体。
  6. 前記エポキシ樹脂が、ポリ(ビスフェノールA-co-エピクロロヒドリン)である請求項5に記載の積層体。
  7. 前記Arが、フェニレン基である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の積層体。
  8. 前記Rで表される連結基が、炭素原子、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも2種の原子を含む請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の積層体。
  9. 前記Rが、下記式2で表される連結基である請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の積層体。


    式2中、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖部位の炭素数が1~6であるアルキレン基を表し、*1はArと結合する結合手であり、*2はSiと結合する結合手である。
  10. 前記Rは、ArとSiとの間を連結する直鎖部位の原子数が5以上である請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の積層体。
  11. 請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の積層体を有する二酸化チタン担持体。
  12. 基材の上に、水溶性樹脂を含有する第4の層を形成する工程と、
    前記第4の層の上に、樹脂を含有する第3の層を形成する工程と、
    前記第3の層の上に、下記式1で表されるケイ素ポリマーを含有する第2の層を形成する工程と、
    前記第2の層の上に、光触媒活性を有する二酸化チタンを含有する第1の層を形成する工程と、
    前記第4の層と水性溶媒とを接触させることにより前記基材を除去する工程と、
    を有する積層体の製造方法。


    式1中、Arは芳香族基を表し、Rは、ArとSiとの間を連結する直鎖部位の原子数が2以上である連結基を表し、R11は水素原子又はアルキル基を表す。nは、1~100の整数を表す。
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