JP7441832B2 - 蛍光共鳴エネルギー移動(fret)を利用したリアルタイムウェスタンブロットアッセイ - Google Patents

蛍光共鳴エネルギー移動(fret)を利用したリアルタイムウェスタンブロットアッセイ Download PDF

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Description

関連出願
本出願は、2018年10月17日に出願された米国特許出願第16/163,136号の利益を主張するものであり、前記米国特許出願の内容は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
(技術分野)
本発明は、一般に、ウェスタンブロットアッセイに関する。特に、本発明は、標的タンパク質の測定がリアルタイムで行われるウェスタンブロットアッセイ、および蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer、FRET)現象に基づくウェスタンブロットアッセイに関する。
ウェスタンブロットは、サンプル中の標的タンパク質を同定、検出、および測定し、それによってサイズ、完全性、修飾、および同一性に関する情報を取得するために、生命科学の領域で広範に利用されている分析的アッセイの一種である。例えば、単一の標的タンパク質または選択された一群のタンパク質の単一または複数のリン酸化などの翻訳後修飾、または全てのリン酸化タンパク質を、確認、定性、および定量することができる。既知または未知の合成(synthetical)サンプル、生物サンプル、または環境サンプル(細胞、組織、体液、糞便、器官、生物体全体、無細胞または酵素ベースのタンパク質発現系、下水、土、穀物、食品など)中のバイオマーカーまたは差次的に発現するタンパク質を同定することができる。
典型的な従来のウェスタンブロットアッセイでは、標的タンパク質(分析的に関心のあるタンパク質)と非標的タンパク質の混合物が含まれているサンプルをゲル電気泳動にかけ、タンパク質を、典型的にはサイズまたは分子量の違いに基づいて分離する。分離されたタンパク質を、次いで、(典型的には電気泳動的に)膜に転写する。次いで、探査(または染色)手順を膜上で行うが、この手順は、多くの場合2段階の手順である。一番目に、一次抗体を膜に加える。この一次抗体は、先に転写ステップによって膜に結合させた標的タンパク質に特異的に結合する。二番目に、二次抗体を膜に加える。この二次抗体は、前記の一次抗体に特異的に結合する。二次抗体は、発色団または酵素(典型的には、Cy5もしくは他のシアニン(cynanine)色素、フルオレセイン、ローダミンなどの蛍光団、またはアルカリホスファターゼもしくは西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素)を備えており、この発色団または酵素は二次抗体に結合している。このようにして、探査手順によって、標的タンパク質は標識され、蛍光、比色、または化学発光検出によるインテロゲーションの準備が整う。探査手順を行う前に、ブロッキング剤を膜に加え、一次抗体が(標的タンパク質にではなく)膜に結合することを防止する。ブロッキング剤、一次抗体、および二次抗体をそれぞれ加えた後、過剰な、未結合のブロッキング剤および抗体を膜から除去するために、その都度洗浄ステップを行わなければならない。
タンパク質(標識された標的タンパク質を含む)の混合物を含む膜を、次いで、蛍光検出機器などの検出機器に装填する。次いで、その機器を稼働させ、標的タンパク質に結合した蛍光団の蛍光を誘起する特定の波長の光を膜(および、上記の理由で、前記のタンパク質)に照射する。これに応答して、蛍光団は光を発し、その光の強度を前記の検出機器で測定する。このようにして生成された検出シグナルは、当業者によって理解されるように、検出された標的タンパク質に関する多様な種類の情報を得るために利用することができる。
ウェスタンブロットアッセイは、最終的な結果(すなわち、データを取得するためのエンドポイント測定)に到達するためにいくつかの連続したステップ(ブロッキング、洗浄、インキュベーションなど)を必要とするので、多くの時間を必要とする。ウェスタンブロットアッセイは、かなりの種類および量の消費材料も必要とするが、最も重要なのは、最適な結合条件、洗浄条件、および検出条件を見いだすために、試行錯誤の実験を繰り返すことが必要なことである。インキュベーション時間および必要なバッファー/溶液は、利用する抗体および抗体ペアの有効性、結合親和性、選択性、および感度、関与する標的タンパク質の量および質(例えば、異なる細胞または組織における発現レベル、タンパク質分解性分解、翻訳後修飾、純度、安定性、単量体または多量体状態など)、サンプルの供給源となる生物の種類、細胞の状態(例えば、病的であるか健康であるか、試薬で処理されているか無処理であるか、など)、熱、化学物質、酵素による前処理、さらなる精製、濾過/遠心分離/サイズ排除による濃縮、吸着、不要な/非特異的なタンパク質の富化または枯渇、ならびに全体的な試薬の構成に依存する。にもかかわらず、ウェスタンブロットは、有用なデータが得られることから、依然として、非常に好まれ、広く利用されているアッセイ技術である。多くの科学分野において、ウェスタンブロットに代わる実用的な技術は存在せず、よって、ウェスタンブロットは、多くの場合、科学的な仕事のためのゴールドスタンダードであり、科学的な発表のために不可欠な要件であるとみなされている。
従来のウェスタンブロットアッセイは、時間がかかることに加えて、「エンドポイント」測定であるとして特徴付けられる場合がある。これは、あらゆるデータは、実験が完了した後、例えば、先に説明した全てのステップが完了し、蛍光検出によって終了した後に初めて得られるということを意味する。特に、探査手順と検出手順は、互いに切り離されており、別々に実施される。ゆえに、アッセイの過程の間、一切データが得られない。したがって、アッセイの中間のステップの影響、例えば抗体の結合、インキュベーション、および洗浄の影響は不明なままであり、研究者が、そのような影響に対応した調整を行うことは不可能である。仮に、アッセイの実験デザインが不適切であるか、最適化されていない場合、エンドポイントのデータは、ネガティブ(すなわち、標的タンパク質が全く検出されない)、不確か(例えば、複数のタンパク質、例えば、標的タンパク質と非標的タンパク質の両方が検出される)、不正確(例えば、検出が非特異的、すなわち間違ったタンパク質が検出される)、または不満足(特異的なバンドが弱すぎるかボーダーライン上である)となる。この問題に対する現在の一般的な解決方法は、実験のための最適な条件を見いだし、有用なデータを得るために、ウェスタンブロットアッセイ全体を必要な回数繰り返すこと、および/またはいくつかのアッセイを異なる実験パラメーターを用いて平行して実施することである。しかしながら、その場合でも、少数の実験パラメーターを変えて評価するにすぎず、やはりアッセイの最適化が成功する保証はない。さらに、従来のウェスタンブロットアッセイのエンドポイント性は残ったままである。よって、アッセイの動力学に関する情報は不明なままであり、したがって、アッセイを改良するため、または所定のサンプルおよび実験条件についての最良のデータを得るために利用することができない。
したがって、上記の問題に対処するウェスタンブロットアッセイのための方法を提供することが望まれる。
上述の問題の全てまたは一部、および/または当業者によって観察された可能性がある他の問題に対処するために、本開示は、下記の実施態様において例示として記載されているように、方法、プロセス、システム、装置、機器、および/またはデバイスを提供する。
ある実施形態によれば、ウェスタンブロットアッセイを実施するための方法は、膜上で支持されたサンプルを準備することであって、前記サンプルは、複数のタンパク質を含み、前記複数のタンパク質は、複数の標的タンパク質を含む、準備すること;前記サンプルを蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)溶液と接触させて探査プロセスを実行し、探査期間の間、前記探査プロセスを進行させることであって、ここで、前記探査プロセスは、第1のプローブと第2のプローブが結合している複数の標識された標的タンパク質を生成させ;前記第1のプローブは、それぞれドナー発色団を含み、前記第2のプローブは、それぞれアクセプター発色団を含み、前記ドナー発色団および前記アクセプター発色団は、FRETのためのドナー-アクセプターペアとして有効であり;および前記FRET溶液は、前記第1のプローブ、もしくは前記第2のプローブ、または前記第1のプローブと前記第2のプローブの両方を含む、進行させること;ならびに前記探査プロセスを実施している間、以下のことによって前記標識された標的タンパク質を測定すること、前記探査プロセスを実施している間、以下のことによって前記標識された標的タンパク質を測定すること(ここで、以下のこととは、前記膜に励起光を照射して、前記ドナー発色団を励起させること(ここで、各標識された標的タンパク質において、励起された前記ドナー発色団は、FRETによって、エネルギーを前記アクセプター発色団に移動させ、これに応答して、前記標識された標的タンパク質は、放射光を放出する);および前記放射光の強度を測定すること)、を含む。
本発明の他のデバイス、装置、システム、方法、特徴、および利点が、以下の図および詳細な説明を吟味すれば、当業者には明白である、または、明白になる。全てのそのような追加のシステム、方法、特徴、および利点が、本説明に含まれ、本発明の範囲内であり、かつ添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
本発明は、以下の図を参照することによって、よりよく理解されうる。図中の構成成分は、必ずしも一定の縮尺ではなく、代わりに、本発明の原理を図示することに重点が置かれている。図において、同様の参照番号は、様々な図全体を通して、対応する部分を示す。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
ウェスタンブロットアッセイを実施するための方法であって、
膜上で支持されたサンプルを準備することであって、前記サンプルは、複数のタンパク質を含み、前記複数のタンパク質は、複数の標的タンパク質を含む、準備すること;
前記サンプルを蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)溶液と接触させて探査プロセスを実施し、探査期間の間、前記探査プロセスを進行させることであって、ここで、
前記探査プロセスは、第1のプローブと第2のプローブが結合している複数の標識された標的タンパク質を生じさせ;
前記第1のプローブは、それぞれドナー発色団を含み、前記第2のプローブは、それぞれアクセプター発色団を含み、前記ドナー発色団および前記アクセプター発色団は、FRETのためのドナー-アクセプターペアとして有効であり;および
前記FRET溶液は、前記第1のプローブ、もしくは前記第2のプローブ、または前記第1のプローブと前記第2のプローブの両方を含む、進行させること;ならびに
前記探査プロセスを実施している間、
前記膜に励起光を照射して、前記ドナー発色団を励起させること(ここで、各標識された標的タンパク質において、励起された前記ドナー発色団は、FRETによって、エネルギーを前記アクセプター発色団に移動させ、これに応答して、前記標識された標的タンパク質は、放射光を放出する);および
前記放射光の強度を測定すること、
によって、前記標識された標的タンパク質を測定すること、
を含む、方法。
(項目2)
前記放射光の前記強度を測定することが、前記サンプルを前記FRET溶液と接触させることと同時または実質的に同時に開始される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記放射光の前記強度を測定することが、前記サンプルを前記FRET溶液と接触させることに続く遅延期間の後に開始される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記放射光の前記強度を測定することに基づいてタイムスキャン検出器シグナルを生じさせることを含み、前記検出器シグナルの大きさが、経時的に変化する、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記放射光の前記強度を測定することが、前記探査期間の間、複数回反復して行われる、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記放射光の前記強度を測定することが、前記探査期間の間、連続した測定期間にわたって行われる、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記探査プロセスが、前記FRET溶液と前記標的タンパク質の間の相互作用を引き起こし、前記複数の標識された標的タンパク質を生じさせ;および
前記放射光の前記強度を測定することが、前記相互作用が平衡に達する前および達する時に行われる、
項目1に記載の方法。
(項目8)
前記探査プロセスを実施すること、および前記放射光の前記強度を測定することが、未結合の第1のプローブおよび未結合の第2のプローブを前記サンプルから除去せずに行われる、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記サンプルを前記FRET溶液と接触させる前に、前記FRET溶液は、第1のプロー
ブを含んでおり、準備された前記サンプル中で、前記第2のプローブは、前記標的タンパク質に結合している、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記サンプルを前記FRET溶液と接触させる前に、前記FRET溶液は、前記第2のプローブを含んでおり、準備された前記サンプル中で、前記第1のプローブは、前記標的タンパク質に結合している、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記放射光の前記強度を測定することが、前記ドナー発色団によって放出される放射光の強度を測定すること、前記アクセプター発色団によって放出される放射光の強度を測定すること、および前記のことの両方からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記アクセプター発色団が、非蛍光クエンチャーである、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記ドナー発色団および前記アクセプター発色団が、蛍光タンパク質;蛍光色素;ランタニド;遷移金属;アップコンバージョン蛍光体;および量子ドットからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記第1のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第1のプローブ分子を含み、前記第1の発色団が、前記第1のプローブ分子に結合しており;
前記第2のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第2のプローブ分子を含み、前記第2の発色団が、前記第2のプローブ分子に結合している、
項目1に記載の方法。
(項目15)
前記第1のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第1の一次プローブ分子、および前記第1の一次プローブ分子に結合するように構成された第1の二次プローブ分子を含み、前記第1の発色団が、前記第1の二次プローブ分子に結合しており;
前記第2のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第2の一次プローブ分子、および前記第2の一次プローブ分子に結合するように構成された第2の二次プローブ分子を含み、前記第2の発色団が、前記第2の二次プローブ分子に結合している、
項目1に記載の方法。
(項目16)
前記第1のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第1の一次プローブ分子を含み、前記第1の発色団が、前記第1の一次プローブ分子に結合しており;
前記第2のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第2の一次プローブ分子、および前記第2の一次プローブ分子に結合するように構成された二次プローブ分子を含み、前記第2の発色団が、前記二次プローブ分子に結合している、
項目1に記載の方法。
(項目17)
前記第1のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第1の一次プローブ分子、および前記第1の一次プローブ分子に結合するように構成された第1の二次プローブ分子を含み、前記第1の発色団が、前記第1の二次プローブ分子に結合しており;
前記第2のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第2の一次プローブ分子を含み、前記第2の発色団が、前記第2の一次プローブ分子に結合している、
項目1に記載の方法。
(項目18)
前記第1の発色団が、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成されており;
前記第2のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第2のプローブ分子を含み、前記第2の発色団が、前記第2のプローブ分子に結合している、
項目1に記載の方法。
(項目19)
前記第1のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第1のプローブ分子を含み、前記第1の発色団が、前記第1のプローブ分子に結合しており;
前記第2の発色団が、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成されている、
項目1に記載の方法。
(項目20)
前記複数の標的タンパク質が、複数の第1の標的タンパク質、および前記第1の標的タンパク質とは異なる、複数の第2の標的タンパク質を含み;
前記探査プロセスが、前記第1のプローブと前記第2のプローブが結合している第1の標的タンパク質を含む、複数の標識された第1の標的タンパク質、および第3のプローブと第4のプローブが結合している複数の標識された第2の標的タンパク質を生成させ;
前記第3のプローブが、それぞれドナー発色団を含み、前記第4のプローブが、それぞれアクセプター発色団を含み、前記ドナー発色団および前記アクセプター発色団が、FRETのためのドナー-アクセプターペアとして有効であり;
前記探査プロセスを実施している間、前記膜を前記照射することが、
前記膜に第1の励起光を照射して、前記標識された第1の標的タンパク質の前記ドナー発色団を励起させること(ここで、各標識された第1の標的タンパク質において、励起された前記ドナー発色団は、FRETによって、エネルギーを前記アクセプター発色団に移動させ、これに応答して、前記標識された第1の標的タンパク質は、第1の放射光を放出する);および
前記膜に第2の励起光を照射して、前記標識された第2の標的タンパク質の前記ドナー発色団を励起させること(ここで、各標識された第2の標的タンパク質において、励起された前記ドナー発色団は、FRETによって、エネルギーを前記アクセプター発色団に移動させ、これに応答して、前記標識された第2の標的タンパク質は、前記第1の放射光とは異なる波長の第2の放射光を放出する)
を含み;ならびに
前記探査プロセスを実施している間、前記測定することが、前記第1の放射光の強度、および前記第2の放射光の強度を測定することを含む、
項目1に記載の方法。
(項目21)
前記第1のプローブまたは前記第2のプローブの少なくとも1つが、ストレプトアビジン;アビジン;抗体;非免疫グロブリンタンパク質、またはそのドメインもしくは断片);(ポリ)ペプチド;核酸;炭水化物;脂質;および小分子からなる群から選択されるプローブ分子を含む、項目1に記載の方法。
図1は、ウェスタンブロットアッセイを実施するための従来の方法を示すフローダイアグラムである。
図2は、ウェスタンブロットアッセイの一部として実施されうる、SDS-PAGEによるタンパク質分離プロセスの一例を示す。
図3は、ウェスタンブロットアッセイの一部として実施されうる、タンパク質転写プロセスの一例を示す。
図4は、図3に示されたタンパク質転写プロセス後の膜の一例を示す。
図5は、蛍光測定を利用したウェスタンブロットアッセイを示す概略図である。
図6は、本開示のある実施形態によるウェスタンブロットアッセイを実施するための方法の一例を示すフローダイアグラムである。
図7は、FRETメカニズムの一例を示す概略図である。
図8A~8Dは、本開示の種々の実施形態による、ウェスタンブロットアッセイの一部として形成されうる、標識された標的タンパク質の様々な構成の非網羅的な例を示す。
図9は、本開示のある実施形態によって実施されるウェスタンブロットアッセイの一例の概略図である。
図10は、本開示のある実施形態によって実施される3つの異なるウェスタンブロットアッセイの例の概略図である。
図11は、本開示のある実施形態による、多重ウェスタンブロットアッセイの一部として形成されうる、標識された第1の標的タンパク質および標識された第2の標的タンパク質の構成の非網羅的な例を示す。
図12は、本明細書に開示された方法において利用されうる、サンプル分析装置の例の概略図である。
本明細書で用いられる場合、用語「サンプル」は、一般に、1つまたはそれを超える目的のタンパク質を含有することが分かっている、または含有すると推測される生物材料または環境材料を指す。サンプルは、天然であっても、合成であってもよい。サンプルは、取得源から取得したまま直接使用してもよく、前処理してサンプルの性質を変化させた後に使用してもよい。サンプルは、任意の生物学的供給源由来、例えば、細胞、組織、器官、生物体全体、糞便、無細胞もしくは酵素ベースのタンパク質発現システム、または血液、間質液、唾液、水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、乳、腹水、粘液(raucous)、滑液、腹水、膣液、羊水などの生理的流体由来でありうる。サンプルは、例えば、血液から血漿を調製する、粘性の体液を希釈するなどのように、使用前に前処理してもよい。前処理の方法は、濾過、沈殿、希釈、蒸溜、濃縮、妨害成分の不活性化、クロマトグラフィー、分離ステップ、および試薬の添加を含みうる。生理的流体のほかに、環境アッセイまたは食糧生産アッセイを行うために、例えば水、下水、土、穀物、食品など、他の液体サンプルを使用してもよい。さらに、目的のタンパク質(単数または複数)を含有することが分かっている、または含有すると推測される固体物質をサンプルとして使用してもよい。いくつかの例において、固体サンプルを変化させて、液状媒体を形成させること、または目的のタンパク質(単数または複数)を放出させることは有益でありうる。
本明細書で用いられる場合、用語「光」は、一般に、電磁放射を指し、光子として量子化可能である。本開示に関連する場合、光は、紫外(UV)から赤外(IR)の範囲の波長で伝搬しうる。本開示において、用語「光」は、可視域内の電磁放射に限定することを意図するものではない。本開示において、用語「光」、「光子」、および「放射」は、互換的に使用されうる。
本明細書で用いられる場合、「発色団」は、ある特定の波長または複数の波長の入射電磁エネルギーを吸収する分子(またはその部分)または原子を指す。
本明細書で用いられる場合、「蛍光団」は、ある特定の波長の電磁エネルギー(放射光)を、異なる波長の入射電磁エネルギー(励起光)による照射に応答して、放出する発色団を指す。放射光の波長は、典型的には、励起光の波長より長いが、アップコンバージョン蛍光体(UCP)のケースのように、励起光の波長より短いこともありうる。
図1は、ウェスタンブロットアッセイを実施するための従来の方法を示すフローダイアグラム100である。最初のステップとして、タンパク質の混合物を含有するサンプルを、電気泳動分離(ステップ104)のために必要とされるように調製する。例えば、サンプルの成分は、組織、細胞培養物、ウイルス、環境サンプルなどから採取してもよい。サンプルは、必要に応じて、例えばブレンダー、ホモジナイザー、ソニケーター、遠心分離機、フィルターなどを利用して、破砕または他のやり方でさらに処理してもよい。得られる調製サンプルは、典型的には、溶液中の、タンパク質と細胞可溶化物の混合物である。バッファー、試薬などを、必要に応じて、この溶液に加えてもよい。
サンプルを、次いで、電気泳動分離デバイスに装填し、電気泳動にかけ、それによって属性の異なるタンパク質は、互いに空間的に分離される(ステップ108)。利用する電気泳動分離技術に応じて、電気泳動分離が基礎とする属性は、分子量(MW)もしくはサイズ、等電点(pI)、電荷、または2つまたはそれを超えるこれらの属性の組み合わせでありうる。典型的には、選択される電気泳動分離技術は、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)である。
図2は、SDS-PAGEによるタンパク質分離プロセスの一例を示す。ポリアクリルアミドゲルを、サポートプレート204の上に配置する。サンプルを、このゲルの1つまたはそれを超えるレーンに装填し、負に帯電しているSDSで覆う。サポートプレート204を、負に荷電している陰極と正に荷電している陽極の間に装着する。この陰極と陽極の間に、図2にプラス(+)とマイナス(-)で示されているように、電圧を印加する。その結果、タンパク質は、ゲルのレーン中を、正に荷電している陽極に向かって(図2において、矢印で示されているように)、それらのタンパク質の(サイズまたはその他の属性に基づく)異なる電気泳動移動度に依存して、異なる速度で移動する。例えば、より小さなタンパク質は、より大きなタンパク質よりも、ゲル中をより速く移動する。これによって、異なるタンパク質は、各レーンのバンド208に、空間的に分離する。
1次元(または方向)に沿った分離の代わりとして、当業者によって理解されるように、ゲル電気泳動技術は、タンパク質を2次元に沿って分離するように構成されていてもよい(2次元ゲル電気泳動)。例えば、タンパク質を、1次元に沿って分子量によって分離し、別の次元に沿って等電点によって分離してもよい。
再び図1を参照して、ゲル電気泳動が完了した後、分離されたタンパク質を、免疫染色に適した膜に転写する(ステップ112)。この膜は、非特異的なタンパク質結合を示す材料でできている。すなわち、全てのタンパク質が、その膜材料に、等しく良好に(いかなる特定の種類のタンパク質も選り好みせずに)結合する。典型的な膜は、ニトロセルロースまたはフッ化ポリビニリデン(PVDF)でできている。タンパク質転写技術は、転写が完了した後、空間的に分離されたタンパク質の配置が維持されるように構成されている。タンパク質転写またはブロッティングは、典型的には、エレクトロブロッティングによって行われる。
図3は、ウェスタンブロットアッセイの一部として実施されうるタンパク質転写プロセスの一例を示す。ゲルと分離されたタンパク質とを含むサポートプレート204を、膜312に隣接して配置する。サポートプレート204と膜312を、ろ紙314と316の間に重ねてもよく、この構成成分の積層物を、トランスファーバッファー中に配置する。電気泳動分離プロセスと同様に、負に荷電している陰極と正に荷電している陽極の間に電圧を印加し、これによって、タンパク質はゲルから膜312に引き出される。
図4は、タンパク質転写プロセスが完了した後に得られる膜312の一例を示し、膜312は、ブロッティング装置から取り出されている。膜312は、空間的な分離が保たれたままで、転写されたタンパク質408を含んでいる。
再び図1を参照して、タンパク質転写プロセスが完了した後、標的タンパク質(目的のタンパク質)についての膜312の探査に備えて、ブロッキングステップを実施する(ステップ116)。ブロッキングは、ブロッキング剤を膜312に加えることを含む。ブロッキング剤は、標的タンパク質に結合させることを意図した抗体プローブが、代わりに膜312に結合することを防ぐために有効な組成を有する。典型的には、ブロッキング剤は、乾燥脱脂乳またはウシ血清アルブミン(BSA)などのタンパク質の溶液である。これらのブロッキングタンパク質が、膜312上の(タンパク質転写プロセスからの)タンパク質が結合していないかタンパク質が全く存在しない場所に結合し、または、サンプル中の接着性タンパク質がブロックされ、これにより、続いて加えられる抗体プローブが膜312に結合することが防止される。このようにして、ブロッキングステップは、標的タンパク質を測定する後続のステップの間、バックグラウンドノイズおよび偽陽性を減少させる。
ブロッキングの後、膜312から過剰なブロッキング剤と未結合のタンパク質を除去するために、洗浄ステップを実施する(ステップ120)。この目的に適した洗浄バッファーが用いられる。
ブロッキングおよび洗浄の後、一次抗体を含有する溶液を加え、適切なインキュベーターを用いて、膜312と共にインキュベートする(ステップ124)。インキュベーションは、一次抗体と標的タンパク質との間の特異的な結合が生じるために十分な期間(例えば、数時間または終夜)、制御された温度で(および、おそらく撹拌して)行われる。一次抗体は、標的タンパク質の特定のエピトープを認識することによって、標的タンパク質だけに結合するように(例えば、組成または構造に関して)構成される。非特異的結合(一次抗体と非標的タンパク質との間の結合)は、バックグラウンドノイズの原因となるだけであり、以後の測定プロセスの間に取得する実際の分析検出シグナルに寄与しないので、非特異的結合は最小限であるか、全く起こらないことが理想的である。
一次抗体と共にインキュベートした後、膜312から未結合の一次抗体を除去するために、別の洗浄ステップを実施する(ステップ128)。この目的に適した洗浄バッファーが用いられる。
一次抗体と共にインキュベートし、洗浄した後、二次抗体を含有する溶液を加え、膜312と共にインキュベートする(ステップ132)。この二次抗体とのインキュベーションのプロセスは、一次抗体とのインキュベーションのプロセスと同様である。インキュベーションは、二次抗体と一次抗体との間の特異的な結合が生じるために十分な期間(例えば、1~数時間)、制御された温度で(および、おそらく撹拌して)行われる。二次抗体は、一次抗体だけに結合し、二次抗体と膜312上の他のタンパク質との間に起こる非特異的結合が最小限であるか、全く起こらないように構成される。二次抗体は、蛍光ベースの技術による標的タンパク質の検出を可能にするために、適切な蛍光標識で標識される。時間分解蛍光(Time-Resolved Fluorescence、TRF)による検出を可能にするために、発光寿命が長い(例えば、数マイクロ秒~数ミリ秒)蛍光標識、例えば、ユウロピウム(Eu(III)またはテルビウム(Tb(III)などのランタニドが選択される。
二次抗体と共にインキュベートした後、膜312から未結合の二次抗体を除去するために、さらに別の洗浄ステップを実施する(ステップ136)。ここでも、この目的に適した洗浄バッファーが用いられる。
二次抗体と共にインキュベートし、洗浄した後、標的タンパク質を、例えば、TRFなどの蛍光ベースの技術によって測定する(ステップ140)。標的タンパク質の測定は、膜312を蛍光測定機器内に装填して実施することができ、この蛍光測定機器は、専用の蛍光光度計であってもよく、または蛍光ベースの測定が可能なマルチモードリーダーであってもよい。
図5は、蛍光測定を利用したウェスタンブロットアッセイを示す概略図である。図5は、膜312に結合した標的タンパク質408の1つを示す。一次抗体526は標的タンパク質408に結合し、蛍光標識528で標識された二次抗体528が一次抗体526に結合している。測定ステップ140(図1)は、励起光532を膜312に照射することによって、標的タンパク質408について膜312をスキャンすることを含む。励起光532は、蛍光標識528(図5に示すように、標的タンパク質408のみに結合している)に蛍光を誘起するために有効な波長で伝搬する。励起光532による照射に応答して、蛍光標識528は、励起光532とは異なる(通常、より長い)波長の放射光536を放出する。放射光536は、標的タンパク質408を検出するために測定機器によって利用される検出シグナルを構成する。放射光536は、測定機器の適切な光検出器、例えば、光電子増倍管(PMT)によって受光される。光検出器は、受光した放射光536の強度を測定する。強度の測定値は、サンプル中の標的タンパク質408の量もしくは濃度と相関していてもよく、および/または、標的タンパク質408に関する他の情報を得るために利用してもよい。
本開示で先に述べたように、前記の例のような従来のウェスタンブロットは、「エンドポイント」測定であることから不利である。すなわち、標的タンパク質から放出された検出シグナルの測定は、エンドポイントに行われるだけであり、そのエンドポイントは、(異なるサンプル、プローブ/標識、および/または他の実験パラメーターを有する)異なるアッセイについて、多くの場合、固定された(同一の)所定の時点である。よって、そのエンドポイント(したがって、そのエンドポイント測定)は、多くの場合、特定のいずれか1つのアッセイについて最適化されたものではない。エンドポイントは、多くの場合、インキュベーション(探査)プロセスが化学平衡に達した後、例えば、所望の抗体結合が完了した後に行われるものと仮定されている。しかしながら、現実の実施においては、インキュベーションプロセスは動的なプロセスであり、反応体(プローブおよびタンパク質)は、平衡またはホメオスタシスに到達しようとする時、順方向および逆方向(例えば、会合および解離)に相互作用する。さらに、従来のウェスタンブロットにおいては、サンプルから全ての液体が除去される(すなわち、洗浄ステップ)のを待ってから、エンドポイント測定を行う必要がある。この液体除去/洗浄は、平衡に達しているかどうかとは無関係に、インキュベーションプロセス(プローブ-タンパク質相互作用)を事実上停止または静止させる。よって、エンドポイント測定は、特に、アッセイが、遅い、または逆戻りもしくは解離が起こりやすい、弱い相互作用を含む場合、プローブ-タンパク質相互作用が不完全な時点に行われることが多い。さらに、抗体(または標的タンパク質を探査するために利用される他の種類の分子)は、親和性、選択性、特異性、安定性、純度、および品質が異なる。これらの属性の相異は、ウェスタンブロットアッセイにおける抗体の能力、およびアッセイで得られる検出シグナルの質に影響する。しかしながら、従来のウェスタンブロットにおいては、やはりインキュベーションプロセスが終了した後に行われる、単なるエンドポイント測定であるため、これらの不可欠なパラメーターを考慮することは不可能である。
結果として、従来のウェスタンブロットにおいては、最良のケースでは標的タンパク質の単一の特異的バンドが検出されるが、最悪のケースではバンドが全く検出されず、または全てが非特異的バンドであるか、もしくは単一の特異的バンドと複数の非特異的バンドであるかのいずれかである複数のバンドが検出される。この理由は、抗体溶液が、全てのケースにおいて最良の条件で適用されるわけではないからである。例えば、標的タンパク質に対する抗体の親和性が弱いと、標的タンパク質からの抗体の解離が速く、この解離はエンドポイント測定の前に起こりうる。インキュベーション時間が短すぎても長すぎても問題でありうる。インキュベーション時間が短すぎる場合、抗体と標的タンパク質の間の特異的な結合の量が不十分となりうる。インキュベーション時間が長すぎる場合、より多くのタンパク質への非特異的な抗体の結合が起こりうる、および/または標的タンパク質のエピトープと類似したエピトープを有する非標的タンパク質への非選択的抗体の結合が起こりうる、および/または抗体と標的タンパク質の間の解離が過剰になりうる。全てのケースにおいて、従来のウェスタンブロットで実行されるエンドポイント測定は、所与のアッセイのための最良または最も包括的なデータをもたらさない。
本開示は、エンドポイント実験ではなくて、本質的に動力学的または動的なウェスタンブロットアッセイを提供することによって、これらの問題に対処する。このようなやり方で、全てのアッセイが完了してしまうまで待つことを必要とせず、検出シグナルをリアルタイムで評価しうる(および、最良のデータが見いだされうる)。本開示のウェスタンブロットアッセイは、均質な「混合測定」アッセイであり、探査手順と測定手順が連結されている(すなわち、分離されていない)。検出シグナルは、探査手順が実施されている間に、リアルタイムで取得される。さらに、本明細書で開示されているウェスタンブロットアッセイは、従来のアッセイのいくつかのステップを省略しており、これにより、アッセイに必要とされる総時間が短縮される。特に、一次抗体および二次抗体(primary and second antibodies)(または、他の種類のプローブ分子)を加える別々のステップは必要とされず、標的タンパク質の検出および測定のために未結合抗体(または、他の種類のプローブ分子)を除去することも必要ではなく、それによって、いくつかの洗浄ステップが省略される。本開示によって、探査手順は、本質的に単一のステップで、かつ、所望により、測定ステップと本質的に同時に実施することができ、それによって、タイムスキャン検出シグナル(すなわち、探査プロセスの動力学に従って経時的に変化する検出シグナル)の取得が可能になる。このようなやり方で、本明細書に開示されたウェスタンブロットアッセイによって、濃縮、親和性、および時間に依存する、探査プロセスに含まれる動力学的相互作用(会合と解離の両方を含む)の観察が可能になる。さらに、多くの結合および未結合状態が検出されうる。
加えて、検出シグナルが経時的に取得され、探査プロセスのプローブ-タンパク質相互作用が洗浄/液体除去ステップによって停止されないため、本方法の測定期間は、探査プロセスが相互作用的平衡(これは、標的タンパク質の最大量が標識されることに相当しうる)に達した時点、またはそれに近い時点を含みうる。多くのアッセイについて、平衡点は、サンプルを読み取り、検出シグナルを取得ために最適な時間であるとみなされる。本明細書に開示されている方法は、経時変化する検出シグナルを生成し、探査プロセスの間にリアルタイムで検出シグナルをモニターすることを可能にするので、所望により、本方法の測定ステップまたは測定期間を、平衡点において、または平衡点の近くで終了できる(および/または、探査プロセスを、(例えば洗浄によって)終了できる)。さらに、この測定期間は、平衡に達する前の時点、または時間間隔を含んでいてもよく、それによって、平衡に達する前に起こりうる、潜在的に関心のある種々の動力学または活性を観察することが可能になる。この文脈において、平衡は、プローブとタンパク質の間の会合速度と解離速度が互いに等しくなるか、ほぼ等しくなる(すなわち、必ずしもゼロではない)動的平衡を意味してもよいことが認識されよう。
図6は、本開示のある実施形態によるウェスタンブロットアッセイを実施するための方法の一例を示すフローダイアグラム600である。まず、膜上で支持されたタンパク質の混合物を含むサンプルを準備する。この目的で、本方法の最初のステップは、図1に関連して上記したものと同様でありうる。したがって、サンプルは、まず、電気泳動分離のために必要とされるように調製され(ステップ604)、調製したサンプルを、次いで、電気泳動分離デバイスに装填し、電気泳動にかけて異なるタンパク質を互いに分離し(ステップ608)、分離されたタンパク質を、次いで、免疫染色に適した膜に転写し(ステップ612)、標的タンパク質についての膜の探査に備えて、ブロッキングバッファー溶液を加える(ステップ616)。
膜をブロッキングした後、探査プロセスを実施する(ステップ624)。本開示にしたがって、探査プロセスは、サンプルを蛍光共鳴エネルギー移動(FRET、フェルスター共鳴エネルギー移動としても知られる)溶液と接触させることによって開始され、その後、探査プロセスは、探査期間の間進行させる。探査プロセスによって、標的タンパク質は、本明細書で説明されているように、FRETドナー-アクセプターペアで標識される。探査プロセスが実施されている間、標識された標的タンパク質を測定し(ステップ640)、それによって経時的に(複数の検出点もしくは検出間隔として、または連続的に)検出シグナルが生成する。探査期間の持続時間は、最初に、実施される特定のアッセイ用の方法の開発の一部として、前もって決定してもよく、また、本明細書で説明されているようにして取得した経時変化する検出シグナルに基づいて、(所望により、リアルタイムで)調整してもよい。
この文脈において、FRET溶液は、複数の第1のプローブ(またはドナープローブ)および/または前記第1のプローブとは(例えば、組成的および/または構造的に)異なる複数の第2のプローブ(またはアクセプタープローブ)を含む溶液である。各第1のプローブは、第1の発色団(またはドナー発色団)であるか、または第1の発色団(またはドナー発色団)を含み、各第2のプローブは、典型的には前記第1の発色団とは(例えば、組成的および/または構造的に)異なる第2の発色団(またはアクセプター発色団)であるか、または第2の発色団(またはアクセプター発色団)を含む。すなわち、第1のプローブは、第1の発色団だけから構成されていてもよく、または第1の発色団が化学結合、生物学的会合、または親和力などによって付着(または結合、連結、コンジュゲートなど)した、少なくとも1つの(他の)分子(この分子は、本明細書において「プローブ分子」と呼ばれうる)を含んでいてもよい。同様に、第2のプローブは、第2の発色団だけから構成されていてもよく、または第2の発色団が化学結合、生物学的会合、または親和力などによって付着(または結合、連結など)した、少なくとも1つの(他の)分子(この分子は、本明細書において「プローブ分子」と呼ばれうる)を含んでいてもよい。第1のプローブと第2のプローブのそれぞれの構成(例えば、組成、構造など)は、サンプルの標的タンパク質に特異的に結合するように選択される。特に、第1のプローブは、標的タンパク質の第1のエピトープに結合するし、第2のプローブは、同じ標的タンパク質の第2のエピトープに結合する。第1のエピトープと第2のエピトープは異なるが、同じ標的タンパク質上の2つの異なる場所または部位に位置している。このようにして、探査プロセスによって、標的タンパク質は、対応する第1の発色団および第2の発色団で、直接的または(抗体などのプローブ分子を介して)間接的に標識されることになる。
1つの実施形態において、FRET溶液は、少なくとも最初に準備されたとき(すなわち、膜上のサンプルに加えられる前)には、第1の(ドナー)プローブと第2の(アクセプター)プローブの両方を含んでいてもよい。このケースにおいて、サンプルは、少なくとも最初に準備されたとき(すなわち、FRET溶液と接触させる前)には、いずれのプローブも存在しない状態で、タンパク質(目的の標的タンパク質と非標的タンパク質の両方)を含んでいてもよい。別の実施形態において、サンプルを接触させる前、FRET溶液は、第1のプローブを含んでいるが、第2のプローブを含んでいない。このケースにおいて、サンプルは、FRET溶液と接触させる前に、第2のプローブが既にサンプルに加えられ、サンプルの標的タンパク質に結合しているように調製されていてもよい。別の実施形態において、サンプルを接触させる前、FRET溶液は、第2のプローブを含んでいるが、第1のプローブを含んでいない。このケースにおいて、サンプルは、FRET溶液と接触させる前に、第1のプローブが既にサンプルに加えられ、サンプルの標的タンパク質に結合しているように調製されていてもよい。これら全ての実施形態において、FRET溶液は、サンプルを接触させた後、探査プロセスによって、標的タンパク質が、第1の発色団と第2の発色団の両方で完全に標識されるような組成(第1のプローブおよび/または第2のプローブを含む)を有する。
このように標識された標的タンパク質において、対応する第1の発色団および第2の発色団は、ドナー/アクセプターペア(または「FRETペア」)と呼ばれうる。一般に、ドナー/アクセプターペアのドナーおよびアクセプターは、以下に説明するように、ドナーとアクセプターの間でFRETが起こるために有効であるように選択される。第1の発色団またはドナー発色団は、蛍光団である。第2の発色団またはアクセプター発色団は、実施形態に応じて、同様に蛍光団であってもよく、非蛍光発色団であってもよい。第2の発色団は、もし非蛍光性であれば、さらに以下に説明するように、主に第1の発色団(蛍光団)の蛍光発光のクエンチャーとして働いてもよい。FRET種として用いるために適切な発色団の例は、以下に説明する。
FRETメカニズムは、当業者によって理解されるように、ドナー(第1の発色団)からアクセプター(第2の発色団)への、非放射性双極子-双極子カップリングを介した、エネルギーの距離依存的な移動を含む。一般に、ドナー/アクセプターペアの間でFRETが起こるための4つの主要な条件または基準が存在する。第1に、ドナーとアクセプターは、互いに近接していなければならない。要求される距離は、典型的には、1~10ナノメートル(nm)であり、より好ましくは2~9nmである。要求される距離は、FRETベースのエネルギー移動の効率(E)を考慮して定量してもよく、Eは、以下に示すように、ドナーとアクセプターの間の距離(r)の6乗に反比例する:
E=R /(R +r)、
式中、Rは、フェルスター距離(または半径)であり、エネルギー移動効率が50%となる(すなわち、エネルギーの半分が移動する)距離である。フェルスター距離の長さは、当業者によって理解されるように、ドナーとアクセプターのスペクトル/光学特性(以下に示すスペクトルの重なり積分、ならびに溶液の屈折率(n)を含む)に依存する。本開示の方法において、この距離の基準は、探査ステップ624(図6)の間に起こる結合現象の結果として、すなわち、本明細書で説明されているように、FRET溶液を加え、ドナー/アクセプターペアが同じ標的タンパク質に結合した後に満たされうる。
第2に、ドナーの発光スペクトルは、アクセプターの吸収(励起)スペクトルと重なり合っていなければならない。これらのスペクトルが重なり合う度合いまたは程度は、当業者によって理解されるように、スペクトルの重なり合い積分(J)によって定量することができ、Jは、ドナーとアクセプターのスペクトル/光学特性に依存する。一般に、ドナー/アクセプターペアのスペクトルの重なり合いの度合いは、効率的なエネルギー移動が起こるために十分に高いべきであるが、同時に、ドナーとアクセプターのそれぞれのスペクトルは、FRET現象を読み取るために利用される測定機器によって容易に識別できるように、十分に異なっているべきである。
第3に、ドナー/アクセプター遷移双極子配向(互いに相対的な、ドナーの発光双極子モーメントとアクセプターの吸収双極子モーメントの配向)は、ほぼ平行でなければならない。このようにして、FRETによるエネルギー移動のために必要な共鳴条件が満たされうる。
第4に、ドナーの蛍光寿命は、FRETが起こることを可能にするために、十分に長くなければならない。
ドナー(第1の発色団)とアクセプター(第2の発色団)のそれぞれの構成(例えば組成、構造など)は、FRETのためのドナー-アクセプターペアとして有効(すなわち、ドナー-アクセプター間のFRETに適合性である)であるように選択される。この選択は、前記の条件、特にスペクトルの重なり合いを考慮して行ってもよく、ドナーとアクセプターの最大励起波長と最大発光波長を考慮することが含まれる。FRETのためのドナーおよび/またはアクセプターとして利用されうる発色団としては、これらに限定されないが、例えば、蛍光タンパク質、蛍光色素、(金属イオン錯体、例えば、キレートまたはクリプテートとして提供されうるような)ランタニド(Ln(III))金属、(金属イオン錯体、例えば、キレートまたはクリプテートとして提供されうるような)遷移金属、アップコンバージョン蛍光体(UCP)、量子ドット、および非蛍光クエンチャーがあげられる。当業者によって理解されるように、前記クラスの発色団からの種の、種々の組み合わせは、FRETのためのドナー-アクセプターペアとして適切でありうる。
蛍光タンパク質の例としては、これらに限定されないが、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)およびそのバリアント(誘導体)、例えば、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、および青色蛍光タンパク質(BFP);前述のものの強化バージョン、例えば、強化された緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化されたシアン蛍光タンパク質(ECFP)、強化された青色蛍光タンパク質(EBFP)、および強化された黄色蛍光タンパク質(EYFP);赤色蛍光タンパク質(RFPまたはdsRed)および前記タンパク質の修飾バージョン、例えば、単量体の赤色蛍光タンパク質(mRFP);ならびにフィコビリタンパク質、例えば、フィコエリトリン(PE)およびアロフィコシアニン(APC)があげられる。本開示の文脈において、蛍光タンパク質は、別のタンパク質に結合して、融合タンパク質を形成してもよい。
蛍光色素の例としては、これらに限定されないが、例えば、シアニン(例えば、CY3、CY5など)、フルオレセインおよびその誘導体、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセインアミダイト(FAM)、ローダミンおよびその誘導体、例えば、テトラメチルローダミン(TRITC、すなわち、ベースとなるローダミン分子を、イソチオシアネート基(-N=C=S)で(水素原子を置き換えて)官能基化したもの);5-((2-アミノエチル)アミノ)ナフタレン-1-スルホン酸(EDANS);および5-(ジメチルアミノ)-1-ナフタレンスルホニル(ダンシル)基を含む蛍光化合物(本明細書において、ダンシル化合物とも呼ばれる)があげられる。さらなる例としては、最大励起波長が、405nm、430nm、488nm、514nm、555nm、546nm、610nm、647nm、680nm、700nm、および750nm、または約405nm、約430nm、約488nm、約514nm、約555nm、約546nm、約610nm、約647nm、約680nm、約700nm、および約750nmである蛍光色素があげられる。後者の例としては、既に知られている蛍光色素(例えば、シアニン、フルオレセイン、ローダミンなど)を、特性を改善するために化学修飾(例えば、スルホン化を含む)することによって合成した蛍光色素が含まれる。このような合成蛍光色素の例としては、例えば、Thermo Fisher Scientific Inc.,Waltham,Massachusetts,USAから入手できる、ALEXA FLUOR色素のファミリーのメンバー、例えば、ALEXA FLUOR 405、ALEXA FLUOR 430、ALEXA FLUOR 488、ALEXA FLUOR 514、ALEXA FLUOR 546、ALEXA FLUOR 555、ALEXA FLUOR 610、ALEXA FLUOR 647、ALEXA FLUOR 680、ALEXA FLUOR 700、およびALEXA FLUOR 750;AAT Bioquest,Inc.,Sunnyvale,California,USAから入手可能な、前述の最大励起波長の例と類似した最大励起波長を有するIFLUOR(iFluor(商標))色素ファミリーのメンバー(例えば、IFLUOR 700);およびPerkinElmer Inc.,Waltham,Massachusetts,USAから入手できる、発光波長が665nmであるULIGHT(ULight(商標))色素があげられる。
ランタニド金属の例としては、これらに限定されないが、サマリウム(Sm(III))、ジスプロシウム(Dy(III))、ユウロピウム(Eu(III))、およびテルビウム(Tb(III))があげられる。
遷移金属の例としては、これらに限定されないが、ルテニウム(Ru(II))、オスミウム(Os(II))、およびレニウム(Re(I))があげられる。
ランタニドおよび遷移金属は、発光寿命が、バックグラウンド蛍光または散乱光の寿命よりもはるかに長いので、時間分解FRET(time-resolved FRET、TR-FRET)を実施するためのドナーとして特に有用である。これにより、FRETによるアクセプターからの発光シグナルを、障害となるバックグラウンドシグナルが完全に消失した後に測定することが可能になり、それによってシグナル/ノイズ(S/N)比が改善される。本開示における利便性のために、別段の指定があるか、または文脈により別段の要求がない限り、用語FRETは、用語TR-FRETを包含する。
UCPの例としては、これらに限定されないが、反ストークスシフト(すなわち、アップコンバージョン)を示す、ランタニドをドープした、または遷移金属をドープした無機化合物があげられる。前記無機化合物は、アップコンバージョン活性を可能にするか、または増強する1つまたはそれを超えるドーパントでドープした透明ホスト格子を含む結晶材料でありうる。ある特定のUCPの主成分となる無機化合物としては、これらに限定されないが、例えば、種々のハロゲン化物(例えば、NaYF、YF、LaF)、酸化物(例えば、Y、ZrO)、およびオキシ硫化物(例えば、YS、LaS)があげられる。適切なドーパントとしては、これらに限定されないが、例えば、三価のランタニドイオンおよび遷移金属、例えば、エルビウム(Er3+)、ツリウム(Tm3+)、ホルミウム(Ho3+)、プラセオジム(Pr3+)、ネオジウム(Nd3+)、ジスプロシウム(Dy3+)、イッテルビウム(Yb3+)、および/またはサマリウム(Sm3+)があげられる。別の例としては、Riuttamaki,Terhi,UPCONVERTING PHOSPHOR TECHNOLOGY:Exceptional Photoluminescent Properties Light Up Homogeneous Bioanalytical assays,University of Turku Publications(2011)(その全ての内容が参照により本明細書中に援用される)に記載されているようなUCPが利用される。別の例としては、適切なUCPは、Intelligent Material Solutions Inc.,Princeton,New Jersey,USAによって製造され、かつSigma-Aldrich,Inc.,St.Louis,Missouri,USAから商業的に入手できるSUNSTONE(登録商標)UCPナノ粒子でありうる。
量子ドットは、本明細書に記載されている実施形態によるプローブ分子に結合することができる蛍光無機半導体ナノ粒子(粒子は、典型的には直径が2~10nmであるが、これより大きくてもよい)を包含する。本開示の目的および利便性のために、用語「発色団」または「蛍光団」は、別段の指定があるか、または文脈により別段の要求がない限り、量子ドットを包含する。量子ドットは、ドナーまたはアクセプターとして利用されうる。一般に、任意の種類の量子ドットが、本明細書に開示されている方法において利用されうる。量子ドットは、コア-シェル配置を有していてもよく、このコアと、まわりのシェルは、別々の組成を有する。量子ドットは、外表面に結合したリガンドも含んでいてもよく、または、特定の目的のために、他の化学的部分で官能化されていてもよい。典型的には、選択される量子ドットは、水溶性であるか、適切なプロセスによって水に可溶化できる量子ドットであり、タンパク質またはプローブにコンジュゲートさせることができる。例えば、量子ドットは、水溶性、およびある特定のコンジュゲートに対する親和性を付与または増強するために有効な、外側の(例えば、ポリマー)コーティングを有していてもよい。量子ドットのために選択される組成は、所望の性質、例えば、バンドギャップエネルギーまたは波長感度に基づいてもよい。さらに、量子ドットのサイズは、所望の範囲の電磁放射を吸収するように選択されてもよい。一般に、臨界サイズより小さい所与の量子ドット種については、より小さいサイズであると、より短い(より青側の)波長に対してより感受性が高く、より大きいサイズであると、より長い(より赤側の)波長に対してより感受性が高い。
一般に、前述の要件を考慮して、量子ドットは、種々のII-VI族、I-III-VI族、III-V族、IV族、IV-VI族、およびV-VI族材料から選択されうる。例としては、これらに限定されないが、II-VI族材料、例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、CdS、CdSe、CdTe、CdO、HgS、HgSe、HgTe、HgO、MgS、MgSe、MgTe、MgO、CaS、CaSe、CaTe、CaO、SrS、SrSe、SrTe、SrO、BaS、BaSe、BaTe、およびBaO;I-III-VI族材料、例えば、CuInS、Cu(In,Ga)S、CuInSe、およびCu(In,Ga)Se;III-V族材料、例えば、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、およびInSb;IV族材料、例えば、Si、Ge、およびC;IV-VI族材料、例えば、GeSe、PbS、PbSe、PbTe、PbO、SnSe、SnTe、およびSnS;ならびに、V-VI族材料、例えば、SbTe、BiTe、およびBiSeがあげられる。遷移金属化合物、例えば、Fe、Ni、およびCuの酸化物、硫化物、およびリン化物が適用可能である。量子ドットの例には、二元、三元、四元などの、前述の種を含む合金または化合物(例えば、SiGe、InGaAs、InGaN、InGaAsP、AlInGaPなど)がさらに包含される。他の量子ドットとしては、他の種類の半導体材料(例えば、ある特定の有機ポリマー材料)があげられうる。コア-シェル構造を有する量子ドットについては、シェルは、前述の種または他の種の1つから構成されていてもよく、コアとシェルのそれぞれの組成は、上述したように、異なる。
いくつかのさらなる例としては、ピーク発光波長が520nm、540nm、および560nmである量子ドットがあげられる。追加の例としては、Thermo Fisher Scientific Inc.,Waltham,Massachusetts,USAから入手可能なQdot(登録商標)ナノ粒子があげられる。1つの特定の例において、量子ドットは、セレン化カドミウム(CdSe)またはテルル化カドミウム(CdTe)などのコア、硫化亜鉛(ZnS)などのシェル、ならびに水溶性および所望のコンジュゲートに対する親和性を向上させるように構成された両親媒性ポリマーの外部コーティングを有していてもよい。例えば、Dennis and Bao,Quantum dot-Fluorecent Protein Pairs as Novel Fluoresence Resonance Energy Transfer Probes,Nano.Lett.,Vol 8,No.5,American Chemical Society(2008)(その全ての内容が参照により本明細書中に援用される)を参照のこと。
非蛍光クエンチャーの例としては、これらに限定されないが、4-(4-ジメチルアミノフェニルアゾ)ベンゾイル(Dabcylとも呼ばれる);4-(4-ジエチルアミノフェニルアゾ)ベンゼンスルホニル(Dabsylとも呼ばれる);および2,4-ジニトロフェニル(Dnpとも呼ばれる)があげられる。
上述したように、前述の発色団種の種々の組み合わせが、FRETのためのドナー-アクセプターペアとして適切でありうる。同じ標的タンパク質に結合させるためのドナーとアクセプターの特定のペアの選択は、実施される特定の実験に依存する。計測手段(例えば、光源(単数および複数)、光検出器(単数および複数)、励起フィルター(単数および複数)、発光フィルター(単数および複数)など)もまた、当業者によって理解されるように、適宜選択および/または構成される。
図7は、FRETメカニズムの一例を示す概略図である。第1の(ドナー)発色団742と第2の(アクセプター)発色団746は、互いに近接した位置にある。第1の発色団742は、第1の発色団742を電気的に励起するために適切な第1の波長の励起光732で照射されている。第1の発色団742と第2の発色団746の間の距離が十分に近く、前記したFRETが起こるための他の条件が満たされている場合、第1の発色団742は、第2の発色団746に非放射性エネルギーを移動させる。これに応答して、第2の発色団746は、もし蛍光性であれば、励起光732の第1の波長とは異なる、第2の波長の放射光736を放出する。放射光736の強度は、蛍光検出技術のケースにように、適切な光検出器によって測定することができる。上記のように、FRETが起こるための距離の基準は、探査プロセスの間に同じ標的タンパク質へ第1の発色団742/第2の発色団746ペアが結合することによって満たされうる。
FRETベースの非放射エネルギー移動は、当業者によって理解されるように、励起光732の照射に応答して同様に起こりうる第1の発色団742によるいずれの蛍光発光、ならびに、FRET現象に応答して第2の発色団746によって放出される放射光736とも異なり、かつ独立したものである。すなわち、FRETベースのエネルギー移動それ自体は蛍光ではない。しかしながら、第2の発色団746からの放射光736の強度は、FRET現象を検出するために利用することができ、FRETの効率と相関関係がありうる。
代わりに、第1の発色団742の励起光732による照射に応答して第1の(ドナー)発色団742が放出する放射光の強度は、光検出器によって測定しうる。このケースにおいて、FRETに応答した第1の発色団742の蛍光のクエンチ(すなわち、第1の発色団742による蛍光発光強度の減少)が測定されうる。ここで、第2の発色団746は、上記のように、クエンチャーとしてのみ働くものであってもよく、それ自体は蛍光性でなくてもよい(または、その蛍光をフィルターで除去してもよく、その他の方法によって、測定しなくてもよい)。同様に、FRETによる第1の発色団742の励起状態寿命の減少も測定しうる。
代わりに、または前述の検出モードに加えて、第1の発色団742によって放出される放射光と、第2の発色団746によって放出される放射光736の両方を測定してもよい。このような測定は、必要な場合、(2つの異なる発光波長に対して感受性のある)2つの異なる光検出器を用いて行ってもよい。1つの例として、2つのシグナルからレシオメトリック測定値を取得することができ、これによって、当業者によって理解されるように、有益な情報がもたらされうる。
前述の検出モードは、当業者によって理解されるように、プロテアーゼアッセイなどにおいて、酵素的切断現象を確認するためにも利用されうる。例えば、切断によって、FRETのために必要とされる第1の発色団742と第2の発色団746の間の空間的な近接性が、もはや満たされなくなりうる(すなわち、第1の発色団742と第2の発色団746との間を隔てる距離が長くなる)。このような現象は、例えば、結果として生じる、(もはやクエンチングが起こらないことによる)第1の発色団742の蛍光の増加を測定することによって検出しうる。
上記のように、探査プロセスによって、第1のプローブと第2のプローブが結合した、標識された標的タンパク質が生じる。図8A~8Dは、本開示の種々の実施形態による、ウェスタンブロットアッセイの一部として形成されうる、標識された標的タンパク質の様々な構成の非網羅的な例を示す。各実施形態において、第1の(ドナー)プローブ852と第2の(アクセプター)プローブ856は、標的タンパク質808に結合している。第1のプローブ852は、第1の(ドナー)発色団842であるか、または第1の(ドナー)発色団842を含み、第2のプローブ856は、第2の(アクセプター)発色団846であるか、または第2の(アクセプター)発色団846を含む。第1のプローブ852および/または第2のプローブ856は、実施形態に応じて、プローブ分子、例えば抗体も含んでいてもよい。
図8Aに示す実施形態においては、第1のプローブ852は、標的タンパク質808に直接的に結合するように構成された第1の(ドナー)抗体862を含み、第1の発色団842は、第1の抗体862に結合している。第2のプローブ856は、標的タンパク質808に直接的に結合するように構成された第2の(アクセプター)抗体866を含み、第2の発色団846は、第2の抗体866に結合している。第1の抗体862と第2の抗体866が標的タンパク質808(の各エピトープ)に直接的に結合しているため、これらの抗体は一次抗体と呼ばれる。
図8Bに示す実施形態においては、第1のプローブ852は、標的タンパク質808に直接的に結合するように構成された第1の(ドナー)一次抗体862、および第1の一次抗体862に特異的に結合するように構成された第1の(ドナー)二次抗体872を含む。第1の発色団842は、第1の二次抗体872に結合している。第2のプローブ856は、標的タンパク質808に直接的に結合するように構成された第2の(アクセプター)一次抗体866、および第2の一次抗体866に特異的に結合するように構成された第2の(アクセプター)二次抗体876を含む。第2の発色団846は、第2の二次抗体876に結合している。
図8Cに示す実施形態においては、第1のプローブ852は、標的タンパク質808に直接的に結合するように構成された第1の(ドナー)一次抗体862を含み、第1の発色団842は、第1の一次抗体862に(第1の二次抗体なしで)結合している。第2のプローブ856は、標的タンパク質808に直接的に結合するように構成された第2の(アクセプター)一次抗体866、および第2の一次抗体866に特異的に結合するように構成された第2の(アクセプター)二次抗体876を含む。第2の発色団846は、第2の二次抗体876に結合している。
図8Cに示す実施形態と類似の実施形態において、第1のプローブ852は、第1の一次抗体862に特異的に結合するように構成された第1の二次抗体を含み、第1の発色団842は、第1の一次抗体862に直接的に結合するのではなく、第1の二次抗体に結合している。また、この実施形態においては、第2のプローブ856の第2の発色団846は、第2の一次抗体866に(第2の二次抗体なしで)直接的に結合している。
図8Dに示す実施形態においては、第1のプローブ852は、いかなる抗体も、他の種類のプローブ分子も含まない。代わりに、第1の発色団842は、標的タンパク質808に直接的に結合するように構成されている。第2のプローブ856は、標的タンパク質808に直接的に結合するように構成された第2の(アクセプター)一次抗体866を含み、第2の発色団846は、第2の一次抗体866に結合している。
図8Dに示す実施形態と類似の実施形態において、第1のプローブ852は、標的タンパク質808に直接的に結合する第1の(ドナー)一次抗体862を含み、第1の発色団842は、第1の一次抗体862に結合している。しかしながら、第2のプローブ856は、いかなる抗体も、他の種類のプローブ分子も含まない。代わりに、第2の発色団846は、標的タンパク質808に直接的に結合するように構成されている。
よって、図8Dに示されているような実施形態において、発色団(例えば、第1の発色団842)は、サンプルを準備するときに(すなわち、本明細書に開示されている方法の一部として、FRET溶液をサンプルに加えて標的タンパク質808をドナー/アクセプターペアで完全に標識する前に)、既に標的タンパク質808に結合していてもよい。このような発色団は、本明細書に開示されているウェスタンブロットアッセイのためのサンプル調製の一部として、または、さらにサンプル調製の前に、既に標的タンパク質に直接的に結合されていてもよい。例として、発色団は、酵素の蛍光基質であってもよく、トランスポータータンパク質の蛍光リガンドであってもよく、標的タンパク質の一部であってもよく(例えば、遺伝子操作蛍光タンパク質融合物)、標的タンパク質で前処理されていてもよく(例えば、化学的にコンジュゲートされたタンパク質)、または、標的タンパク質に結合している、代謝によって生成された蛍光中間体であってもよい(例えば、他のタンパク質による代謝を受けた後の細胞内の標的タンパク質などの、レセプタータンパク質に結合している蛍光プロドラッグ)。一般に、発色団結合標的タンパク質は、処理された細胞から得ることができ(細胞内標識)、生物学的標識法または化学的標識法によって無細胞タンパク質からin vitroで得ることができ、またはウェスタンブロット分析のためのサンプルを取得する前に、生物(例えば、動物)を処置することによってin vivoで得ることができる。
本明細書で用いられる場合、用語「抗体」(Ag)(または免疫グロブリン(Ig))は、当業者によって一般に理解される通常の意味による、Y字型のタンパク質を指す。一般に、本明細書に開示されている方法においてプローブとして機能することができる抗体、抗体断片およびドメイン(ScFv、Fab、dAb、二重特異性抗体、ナノボディー、およびそれらの人工的なバリアント、ならびに非免疫グロブリンタンパク質)が利用されうる。1つの非網羅的な例として、図8Bに示す構成において、第1の一次抗体862はマウス抗体であってもよく、第1の二次抗体872はヤギ抗マウス抗体であってもよく、第2の一次抗体866はウサギ抗体であってもよく、第2の二次抗体876はロバ抗ウサギ抗体であってもよい。
より一般的には、抗体に加えて、または抗体に代えて、第1のプローブ852および/または第2のプローブ856は、本明細書に開示されている方法において、プローブとして機能することができる他の種類のプローブ分子であってもよく、または、プローブとして機能することができる他の種類のプローブ分子を含んでいてもよい。他の種類のプローブ分子としては、これらに限定されないが、例えば、ストレプトアビジン、アビジン、非免疫グロブリン(非Ig)タンパク質(または、タンパク質のドメインまたは断片)、(ポリ)ペプチド、核酸(例えば、デオキシリボ核酸またはDNA、リボ核酸またはRNA)、糖または他の種類の炭水化物、脂肪酸または他の種類の脂質、および適切な構造の小分子があげられうる。小分子の1つの非網羅的な例は、ビオチンであり、ビオチンは、当業者によって理解されるように、ビオチン化タンパク質の捕捉の場合のように、ストレプトアビジンまたはアビジンに対して、高い親和性および特異性で結合する。小分子の他の非網羅的な例としては、ホウ素-ジピロメテン(BODIPY)蛍光色素で標識することができる小分子、例えば、1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール(カルシトリオール)、およびエストロゲン、アンドロゲンなどのステロイドなどがあげられる。
再び図6を参照して、探査プロセス(ステップ624)は、FRET溶液をサンプルに加えることによって、すなわち、サンプルをFRET溶液と接触させることによって開始される(よって、探査期間が始まる)。探査プロセスの間(よって、探査期間の間)、FRET溶液と共に供給された未結合プローブは、特定の結合現象によって標的タンパク質と結合する。この目的のために、探査プロセスは、制御されたインキュベーション条件(例えば、温度、圧力など)下、必要に応じて、適切なハードウェア(または実験器具)を利用して、また当業者によって理解されるように行ってもよい。探査期間、すなわち、探査プロセス(ステップ624)の継続時間は、サンプルの標的タンパク質808をドナー-アクセプターペアで標識し、経時変化する検出シグナルを取得するために必要な長さである。1つの非網羅的な例として、探査期間の持続時間(FRET溶液の添加によって開始する)は、5分間、10分間、20分間、30分間、60分間(1時間(hr))、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、および24時間の範囲内でありうる。
本方法により、探査プロセス(ステップ624)を実施している間に、標識された標的タンパク質808が測定される(ステップ640)。言い換えると、標的タンパク質808は、探査期間の全て、または一部の間に測定される。さらに言い換えると、標的タンパク質808は、探査期間と少なくとも部分的に重なり合う測定期間の間に測定される。測定期間は、探査期間の開始と同時、または探査期間の開始のしばらく後に開始されうる。すなわち、発光シグナル(単数および複数)の測定は、サンプルをFRET溶液と接触させるのと同時、または実質的に同時に開始してもよい。測定期間は、探査期間の終了(停止)の前、終了(停止)と同時、または終了(停止)の後に終了してもよい(測定を停止しうる)。よって、本明細書に開示されている方法においては、測定は、探査プロセスと連結されている。これは、従来の、単一のエンドポイント測定(これは、上述のように、探査プロセスが完了した後に行われる)とは対照的である。
いくつかの実施形態において、強度の測定は、サンプルとFRET溶液との接触に続く遅延期間の後に開始される。遅延期間は、例えば、本明細書で説明されているような時間分解測定を可能にするために設けられてもよい。このようなケースにおいて、遅延期間は、バックグラウンド蛍光およびその他の短寿命のノイズ源が有意に減退するために十分な長さでありうる。非網羅的な例として、遅延期間は、1秒またはそれより短い持続時間、例えば、ミリ秒オーダーであってもよい。
標的タンパク質808の測定には、膜(および(上記のように)サンプルの分離されたタンパク質を含む、膜に支持されたサンプル)を励起光732(図7)で照射し、第1の発色団842を励起することが含まれる。第2の発色団846でも同様に適切に標識されている、照射を受けた標的タンパク質において、励起によってFRETが誘起される。すなわち、励起された第1の発色団842が、FRETによって、エネルギーを同じドナー-アクセプターペアの第2の発色団846に移動させる。これに応答して、第2の発色団は(もし蛍光団であれば)、放射光736を放出する(図7)。放射光736の強度が測定される。この測定値は、当業者によって理解されるように、サンプル中で検出された標的タンパク質の濃度と相関していてもよく、標的タンパク質に関する他の情報を得るために利用してもよい。これに代えて、または加えて、上記のように、第1の発色団842からの放射光を測定してもよい。
上記のように、探査プロセスと測定プロセスを連結することにより、本方法は、検出器シグナルの強度が探査プロセスの種々の条件に従って経時的に変化する、タイムスキャン検出器シグナルを生成させる。検出器シグナルを動的に、またはリアルタイムで取得することによって、探査プロセスの動力学(および、所望により、全探査プロセス)に関する有益な情報がもたらされ、結合活性(会合と解離の両方)を連続的(リアルタイム)な形でモニターすることが可能となり、ならびに、平衡および/または平衡付近でのデータ取得が確実になる。さらに、動的なデータ取得によって、所定のアッセイを、所定の条件のセットに最適化すること、例えば、特定の標的タンパク質、サンプル、機器、操作パラメーターなどに最適化することが容易になる。とりわけ、未結合の第1のプローブ、未結合の第2のプローブ、または他の材料および液体をサンプルから最初に除去することを必要とせずに、探査プロセスの実施、および放射光強度の測定が行われる。これは、従来のウェスタンブロットの不均一なセッティング(これが、動的なデータ取得を不可能にするはずである)とは対照的である。
図9は、本開示のある実施形態によって実施されるウェスタンブロットアッセイの例の概略図である。具体的には、図9は、タイムスキャン検出器シグナル(強度対時間で測定、任意単位)、および検出器シグナルを取得している間の異なる時点における膜を示す。横軸(時間)は、開始から終了までの探査期間に対応する。図9は、探査期間中の異なる状態、具体的には探査プロセスの間の5つ異なる時点またはステージにおける、膜上の標的タンパク質の1つのバンドを示す。
図9の例に示すように、探査プロセスの開始(左端)ステージの間、特定の結合現象はまだ起こっておらず、したがって、測定される検出器シグナルの強度レベルはベースラインにある。次の(第2の)ステージの間、特定の結合現象(プローブ分子と標的タンパク質の間の会合)が起こり始め、したがって、測定される検出器シグナルの強度レベルは、図示のように上昇する。次の(第3の)ステージの間、特定の結合現象の数は、検出器シグナルのピークによって示されるように、極大に達する。続くステージにおいて、その前には標的タンパク質に結合していたいくつかのプローブ分子が、非結合になる(解離)。その結果、測定される検出器シグナルの強度レベルは、最終的にはベースラインまで低下する。
図9の例において明らかなように、この特定のアッセイの実験条件は、検出器シグナルが、探査プロセスの中間ステージにおいて最適化されているものである。検出器シグナルが探査プロセスの間にリアルタイムで取得される本開示による方法によって、このような観察の実施が可能になる。対照的に、従来のウェスタンブロットアッセイのエンドポイント測定は、探査プロセスの修了後まで行われず、したがって、図9に示される経時変化する検出シグナルをもたらさないであろう。さらに、探査プロセスの最終(右端)ステージにおける膜の状態から明らかなように、従来のウェスタンブロットアッセイは、この時間的なエンドポイントまでに起こってしまった解離によって、標的タンパク質を全く検出することができないであろう。よって、この例においては、従来のウェスタンブロットアッセイのエンドポイント測定は、偽陰性の結果をもたらすであろう。
図9に示すようなタイムスキャン検出器シグナルを生成するために、検出シグナルの強度の測定は、探査期間の間、反復して(例えば、所望の検出頻度で複数回)、または探査期間の間、(実質的に)連続して行ってもよい。いずれのケースにおいても、データポイントを集めて、タイムスキャン検出器シグナルを生成しうる。
図10は、本開示のある実施形態によって実施される3つの異なるウェスタンブロットアッセイ(WB I、WB II、およびWB III)の例の概略図である。具体的には、各アッセイについて、図10は、探査プロセスが進行している間、かつ(本明細書に開示されている方法によって)検出器シグナルを取得している間の、横軸(時間)に沿って、5つの異なる時点(ステージ)における膜を示す。各アッセイの膜について、図10は、タンパク質の3つの(縦方向に)分離されたバンドを示し、真ん中のバンドが特異的バンド(標的タンパク質を含む)であり、上下のバンドは非特異的バンド(非標的タンパク質を含む)である。図10は、本明細書に開示されている方法に従って取得された、これらのアッセイに対応する動力学的タイムスキャン検出器シグナルも含む。
図10の第1のアッセイ(WB I)において、標的タンパク質を測定するための最適な時間は探査プロセスの最初のステージの間にあることがわかり、その後、標的タンパク質の検出および測定に対応する検出器シグナルは解離のために低下し、そのため、最後のステージの間は、標的タンパク質は検出できない。一方、最初のステージの後、検出可能な非特異的な結合現象が起こり始め、最後のステージの間まで検出可能なままである。したがって、このアッセイについては、標的タンパク質を測定するための最適な時間は最初のステージの間であり、これは本開示の方法によって実行される動的なリアルタイム測定によって可能になる。対照的に、従来のウェスタンブロットアッセイは、この最適な結果を見逃すであろう。さらに、最終(右端)ステージの膜の状態から明らかなように、従来のウェスタンブロットアッセイのエンドポイント測定は、偽陰性(標的タンパク質が検出されない)、および偽陽性(非標的タンパク質が検出される)をもたらすであろう。
図10の第2のアッセイ(WB II)において、標的タンパク質を測定するための最適な時間は探査プロセスの中間ステージの間にあることがわかり、これは、本開示の方法によって行われる動的なリアルタイム測定によって観察可能であるが、従来のウェスタンブロットアッセイによって行われるエンドポイント測定によって観察することはできないであろう。ここでもまた、従来のウェスタンブロットアッセイは、この最良の結果を見逃すであろう。さらに、最後のステージ(ここに従来のウェスタンブロットアッセイは限定される)においては、検出器シグナルは、標的タンパク質と非標的タンパク質の両方からの、種々の強度の応答の複合シグナルである。このような複合シグナルは、解釈が困難であろうし、そのデータに関する不正確または誤った分析または結論につながりうる。
図10の第3のアッセイ(WB III)において、標的タンパク質を測定するための最適の時間は、探査プロセスの最後のステージの間にあることがわかり、ここでは、標識された標的タンパク質だけが検出器シグナルに寄与する。この特定のアッセイにおいては、従来のウェスタンブロットアッセイによって、標的タンパク質に関する良好なデータの取得に成功しうる。しかしながら、エンドポイント測定であるため、探査プロセスの過程の間、従来のウェスタンブロットアッセイによって検出器シグナルは取得されず、したがって、探査プロセスの間、タンパク質、結合現象、相互作用などのいずれに関しても、潜在的に有用な情報を何も得ることができないという事情に変わりはない。
いくつかの実施形態において、本開示は、多重ウェスタンブロットアッセイを提供する。本文脈において、「多重化」は、同じウェスタンブロットサンプルに含まれる複数(2つまたはそれを超える)の異なる標的タンパク質を同時に(または平行して)、かつ、本明細書に説明されているような探査プロセスの間にリアルタイムで測定することを指す。多重化実施形態において、FRET溶液は、対応する異なる標的タンパク質に特異的に結合するように構成された異なるプローブペアを含む。異なるプローブペアは、対応する異なる標的タンパク質に結合したときに、異なるドナー-アクセプターペアを形成する。これらのドナー-アクセプターペアは、少なくとも、アクセプター分子が異なる波長の放射光を放出するという意味で異なっており、これによって、測定中に異なる標的タンパク質を識別することが可能になる。
多重化は、2つまたはそれを超える異なる目的の標的タンパク質、例えば、2つまたはそれを超える異なるバイオマーカーを、単一のウェスタンブロットアッセイで測定するために有用である。多重化は、また、異なるサンプル間における全タンパク質装填の正規化のため、例えば、ウェスタンブロットアッセイを実施する間に起こる(例えば、サンプル調製、ゲルサポートへのサンプル装填、膜へのタンパク質転写などにおける)何らかの実験エラーの影響を修正または補償するためにも利用されうる。このケースにおいて、標的タンパク質の1つは、目的の標的タンパク質が正規化されるハウスキーピングタンパク質であってもよい。ハウスキーピングタンパク質のウェスタンブロット正規化のための使用は、一般に、当業者によって理解されている。ハウスキーピングタンパク質(または他の分子)としては、これらに限定されないが、例えば、アクチン、チューブリン、および酵素であるグリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)があげられる。
別の実施形態において、ブロッティング膜は、少なくとも2つの異なる目的の標的タンパク質、すなわち、第1の標的タンパク質と第2の標的タンパク質を含む。第1の標的タンパク質は、非修飾タンパク質であり、第2の標的タンパク質は、この非修飾タンパク質の修飾形態(またはバリアント)である。このようなケースにおいて、修飾タンパク質と非修飾タンパク質の比を、標識された修飾タンパク質から取得された第1の検出シグナルおよび標識された非修飾タンパク質から取得された第2の検出シグナルについての測定された強度に基づいて算出することが望ましい場合がある。1つの非網羅的な例として、多くの細胞経路においてタンパク質はリン酸化(当業者によって理解されるように、リン酸化はキナーゼ酵素を用いた触媒作用を介して行われる)によって活性化されるため、リン酸化タンパク質を研究することが望ましいことが多い。このケースにおいて、修飾タンパク質は、非修飾(非リン酸化)タンパク質のリン酸化形態でありうる。所望により、リン酸化タンパク質と非リン酸化タンパク質の比は、測定された各検出器シグナル強度に基づいて算出しうる。
1つの実施形態において、多重ウェスタンブロットアッセイを実施するための方法は、図6に関連して上述した方法と類似している。異なる標的タンパク質は、ブロッティング膜上の異なるレーンに配置される。探査プロセスの間に膜に加えられるFRET溶液は、対応する異なる標的タンパク質に結合したときに異なるドナー-アクセプターペアを形成するために必要な種類の、複数の発色団(および、実施形態に応じて、結合したプローブ分子)を含む。発色団のいくつかは、上記のように、FRET溶液を加えた時点で、すでにサンプル中に含まれていてもよい。異なるドナー-アクセプターペアの異なるドナー蛍光団を励起するための必要に応じて、異なる波長の励起光を発生させるように構成された複数の光源が利用されうる。これに代えて、(少なくとも、所定のアッセイのために必要とされる励起波長の範囲にわたる)広帯域光を発生させるように構成された単一の光源を利用してもよい。他の代替として、複数の光源(励起光ビームが複数のビームに分割される単一の光源)を、励起光の異なる波長を透過するように構成された異なる励起光フィルターと組み合わせて利用してもよい。同様に、異なる標的タンパク質によって放出される放射光を測定するために、複数の光検出器を利用してもよい。個々の光検出器は、放射光の異なる波長を測定するように構成されていてもよい。例えば、個々の光検出器は、異なる特定の波長で伝搬する放射光に対して高感度でありうる。別の例として、各光検出器が、概して同じ波長域にわたって放射光の測定が可能であるが、別々にフィルターされた放射光を受光することもありうる。すなわち、放射光の異なる波長を透過するように構成された異なる放射光フィルターが、各光検出器の光路中に配置されていてもよい。
図11は、本開示のある実施形態による、多重ウェスタンブロットアッセイの一部として形成されうる、標識された第1の標的タンパク質1105よび標識された第2の標的タンパク質1107の構成の非網羅的な例を示す。本実施形態において、第1の標的タンパク質1105と第2の標的タンパク質1107は、ブロッティング膜上の異なるバンドに分かれている。探査プロセスの間、膜を、第1の(ドナー)プローブ1152、第2の(アクセプター)プローブ1156、第3の(ドナー)プローブ1153、および第4の(アクセプター)プローブ1157を含有するFRET溶液と接触させる。
本例において、第1のプローブ1152は、第1の(ドナー)プローブ分子1162(例えば、抗体または他の種類の分子)、および第1の(ドナー)プローブ分子1162に結合した第1の(ドナー)発色団1142を含む。第2のプローブ1156は、第2の(アクセプター)プローブ分子1166、および第2の(アクセプター)プローブ分子1166に結合した第2の(アクセプター)発色団1146を含む。探査プロセスの間、第1のプローブ分子1162と第2のプローブ分子1166は、第1の標的タンパク質1105に結合し、それによって、適切な励起に応答して、第1の発色団1142と第2の発色団1146の間でFRETが起こるのに十分なドナー-アクセプターペアが形成される。
また本例において、第3のプローブ1153は、第3の(ドナー)プローブ分子1163、および第3の(ドナー)プローブ分子1163に結合した第3の(ドナー)発色団1143を含む。第4のプローブ1157は、第4の(アクセプター)プローブ分子1167、および第4の(アクセプター)発色団1147を含む。探査プロセスの間、第3のプローブ分子1163と第4のプローブ分子1167は、第2の標的タンパク質1107に結合し、それによって、適切な励起に応答して、第3の発色団1143と第4の発色団1147の間でFRETが起こるのに十分なドナー-アクセプターペアが形成される。
第1の標的タンパク質1105および第2の標的タンパク質1107は、他の実施形態のように、探査プロセスの過程の間に測定してもよい。本実施形態において、膜は、第1の励起光と第2の励起光で照射され、この照射は同時に行われてもよい。第1の励起光は、第1の(ドナー)発色団1142を励起するために有効な第1の励起波長で伝搬し、第2の励起光は、第3の(ドナー)発色団1143を励起するために有効な第2の励起波長で伝搬する。典型的には、第1の発色団1142と第3の発色団1143は異なり、その場合、必要とされる第1の励起波長と第2の励起波長は異なる。照射された各標識された第1の標的タンパク質1105において、励起された第1の発色団1142は、FRETによって、エネルギーを第2の発色団1146に移動させ、これに応答して、第2の蛍光団1146は(もし蛍光団であれば)、第1の放射光を放出する。照射された各標識された第2の標的タンパク質1107において、励起された第3の発色団1143は、FRETによって、エネルギーを第4の発色団1147に移動させ、これに応答して、第4の発色団1147は(もし蛍光団であれば)、第1の放射光と波長が異なる第2の放射光を放出する。次いで、第1の放射光と第2の放射光のそれぞれの強度は、光検出器(単数および複数)で測定され、この測定は同時に行われてもよい。
多重ウェスタンブロットアッセイのために標識された標的タンパク質の他の実施形態は、図8B~8Dに関連して上述したものと同様の、または類似する構成を包含しうる。
図12は、本明細書に開示された方法において利用されうる、サンプル分析装置1200の例の概略図である。一般に、光学ベースの試料分析機器において提供される種々の構成成分の構造および操作は、当業者によって理解されるので、本明細書においては、本開示の対象の理解を助けるために、ごく簡潔に説明する。
サンプル分析装置1200は、本明細書で説明されているようにして調製したウェスタンブロット膜1212を支持するように構成された容器1204を含む。そして、膜1212は、検出器シグナルを取得する標的タンパク質1208を含む、複数のタンパク質を保持している。容器1204は、また、本明細書で説明されているように、FRET溶液1214を保持するように構成されている。1つの実施形態において、容器1204は、サンプル分析装置1200に取り外し可能に装着された、またはサンプル分析装置1200に取り付けられた、密閉型のカートリッジ、または密閉型のカートリッジの一部である。FRET溶液1214は、膜1212がFRET溶液1214に浸漬(すなわち、FRET溶液1214を吸収し、かつFRET溶液1214で覆われる)され、それによって探査プロセスが開始されるように、適切な分注デバイス1218を用いて容器1204に加えられてもよい。1つの実施形態において、分注デバイス1218は、自動または半自動液体分注システムの一部であるピペットチップ、またはインジェクター針であってもよく、自動または半自動液体分注システムは、当業者によって理解されるように、配管、ポンプ(単数および複数)、リザーバ(単数および複数)などの他の構成成分を含む。
サンプル分析装置1200は、本明細書で説明されているように、1つまたはそれを超える異なる励起波長で1つまたはそれを超える励起光ビーム1232を生成し、その光ビーム(単数および複数)を膜1212に向けるように構成された、1つまたはそれを超える光源1222をさらに含む。実施形態に応じて、光源(単数および複数)1222は、広帯域光源(例えば、キセノン閃光ランプ)、または1つまたはそれを超える発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、レーザーなどを含んでいてもよい。光源1222と膜1212の間の光路(単数または複数)に、適切な励起光学系(図示せず)を配置してもよい。励起光学系は、例えば、1つまたはそれを超えるレンズ、アパーチャ、フィルター、波長セレクター、光ガイド、ミラー、ビームスプリッター、ビームエキスパンダー、光路スイッチなどを含んでいてもよい。
サンプル分析装置1200は、本明細書で説明されているように、1つまたはそれを超える異なる励起波長の1つまたはそれを超える放射光ビーム1236を受光し、測定するように構成された、1つまたはそれを超える光検出器1240をさらに含む。光検出器1240は、典型的には光電子増倍管(PMT)であるが、他の種類の光検出器、例えば、フォトダイオード、電荷撮像素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)デバイスなどのアクティブピクセルセンサー(APS)なども適切でありうる。膜1212と光検出器(単数および複数)1240の間の光路(単数または複数)に、発光フィルター1244および他の適切な発光光学系(図示せず)を配置してもよい。発光フィルター1244に加えて、発光光学系は、例えば、1つまたはそれを超えるレンズ、読取ヘッド、アパーチャ、フィルター、波長セレクター、光ガイド、ミラー、ビームスプリッター、モノクロメーター、回析格子、プリズム、光路スイッチなどを含んでいてもよい。サンプル分析装置1200は、膜1212のイメージを取得するためのデバイス、例えばカメラ(図示せず)も含んでいてもよい。
「連絡する(communicate)」および「と...連絡している(in...communication with)」という用語(例えば、第1の構成成分は「と連絡する(a first component‘‘communicates with’’)」、または第2の構成成分「と連絡している(‘‘is in communication with’’a second component)」)は、本明細書において、2つまたはそれを超える構成成分もしくは要素の間の、構造的、機能的、機械的、電気的、信号的、光学的、磁気的、電磁気的、イオン的、または流体的な関係を指すために用いられることが理解されよう。そのため、1つの構成成分が第2の構成成分と連絡すると呼ばれる事実は、追加の構成成分が、第1の構成成分と第2の構成成分の間に存在しうる、ならびに/または第1の構成成分および第2の構成成分と機能的に関連もしくは結合しうることを排除することを意図するものではない。
本発明の種々の態様または詳細は、本発明の範囲を逸脱することなく変更されうることが理解されよう。さらに、上述の説明は、例証を目的とするものにすぎず、限定を目的とするものではなく、本発明は特許請求の範囲によって定義される。

Claims (20)

  1. ウェスタンブロットアッセイを実施するための方法であって、
    複数のタンパク質であって、複数の標的タンパク質を含む、複数のタンパク質を準備すること;
    前記複数のタンパク質を電気泳動によって分離し、分離した前記複数のタンパク質を膜に移して、前記膜上で支持されたサンプルを準備すること;
    前記サンプルを蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)溶液と接触させて探査プロセスを実施し、探査期間の間、前記探査プロセスを進行させることであって、ここで、
    前記探査プロセスは、前記FRET溶液と前記標的タンパク質の間の相互作用を引き起こして、第1のプローブと第2のプローブが結合している複数の標識された標的タンパク質を生じさせ;
    前記第1のプローブは、それぞれ第1のドナー発色団を含み、前記第2のプローブは、それぞれ第1のアクセプター発色団を含み、前記第1のドナー発色団および前記第1のアクセプター発色団は、FRETのための第1のドナー-アクセプターペアとして有効であり;および
    前記FRET溶液は、前記第1のプローブ、もしくは前記第2のプローブ、または前記第1のプローブと前記第2のプローブの両方を含む、
    探査プロセスを進行させること;ならびに
    前記探査プロセスを実施している間、
    前記膜に励起光を照射して、前記第1のドナー発色団を励起させることであって、各標識された標的タンパク質において、励起された前記第1のドナー発色団は、FRETによって、エネルギーを前記第1のアクセプター発色団に移動させ、これに応答して、前記標識された標的タンパク質は、放射光を放出する、励起させること;および
    前記放射光の強度を前記相互作用が平衡に達する前および達する時に測定すること、
    によって、前記標識された標的タンパク質を測定すること、
    を含む、方法。
  2. 前記放射光の前記強度を測定することが、前記サンプルを前記FRET溶液と接触させることと同時または実質的に同時に開始される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記放射光の前記強度を測定することが、前記サンプルを前記FRET溶液と接触させることに続く遅延期間の後に開始される、請求項1に記載の方法。
  4. 前記放射光の前記強度を測定することに基づいてタイムスキャン検出器シグナルを生じさせることを含み、前記検出器シグナルの大きさが、経時的に変化する、請求項1に記載の方法。
  5. 前記放射光の前記強度を測定することが、前記探査期間の間、複数回反復して行われる、請求項1に記載の方法。
  6. 前記放射光の前記強度を測定することが、前記探査期間の間、連続した測定期間にわたって行われる、請求項1に記載の方法。
  7. 前記探査プロセスを実施すること、および前記放射光の前記強度を測定することが、未結合の第1のプローブおよび未結合の第2のプローブを前記サンプルから除去せずに行われる、請求項1に記載の方法。
  8. 前記サンプルを前記FRET溶液と接触させる前に、前記FRET溶液は、第1のプロー
    ブを含んでおり、準備された前記サンプル中で、前記第2のプローブは、前記標的タンパク質に結合している、請求項1に記載の方法。
  9. 前記サンプルを前記FRET溶液と接触させる前に、前記FRET溶液は、前記第2のプローブを含んでおり、準備された前記サンプル中で、前記第1のプローブは、前記標的タンパク質に結合している、請求項1に記載の方法。
  10. 前記放射光の前記強度を測定することが、前記第1のドナー発色団によって放出される放射光の強度を測定すること、前記第1のアクセプター発色団によって放出される放射光の強度を測定すること、および前記のことの両方からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  11. 前記第1のアクセプター発色団が、非蛍光クエンチャーである、請求項1に記載の方法。
  12. 前記第1のドナー発色団および前記第1のアクセプター発色団が、蛍光タンパク質;蛍光色素;ランタニド;遷移金属;アップコンバージョン蛍光体;および量子ドットからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  13. 前記第1のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第1のプローブ分子を含み、前記第1のドナー発色団が、前記第1のプローブ分子に結合しており;
    前記第2のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第2のプローブ分子を含み、前記第1のアクセプター発色団が、前記第2のプローブ分子に結合している、
    請求項1に記載の方法。
  14. 前記第1のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第1の一次プローブ分子、および前記第1の一次プローブ分子に結合するように構成された第1の二次プローブ分子を含み、前記第1のドナー発色団が、前記第1の二次プローブ分子に結合しており;
    前記第2のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第2の一次プローブ分子、および前記第2の一次プローブ分子に結合するように構成された第2の二次プローブ分子を含み、前記第1のアクセプター発色団が、前記第2の二次プローブ分子に結合している、
    請求項1に記載の方法。
  15. 前記第1のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第1の一次プローブ分子を含み、前記第1のドナー発色団が、前記第1の一次プローブ分子に結合しており;
    前記第2のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第2の一次プローブ分子、および前記第2の一次プローブ分子に結合するように構成された二次プローブ分子を含み、前記第1のアクセプター発色団が、前記二次プローブ分子に結合している、
    請求項1に記載の方法。
  16. 前記第1のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第1の一次プローブ分子、および前記第1の一次プローブ分子に結合するように構成された第1の二次プローブ分子を含み、前記第1のドナー発色団が、前記第1の二次プローブ分子に結合しており;
    前記第2のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第2の一次プローブ分子を含み、前記第1のアクセプター発色団が、前記第2の一次プローブ分子に結合している、
    請求項1に記載の方法。
  17. 前記第1のドナー発色団が、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成されており;
    前記第2のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第2のプローブ分子を含み、前記第1のアクセプター発色団が、前記第2のプローブ分子に結合している、
    請求項1に記載の方法。
  18. 前記第1のプローブが、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成された第1のプローブ分子を含み、前記第1のドナー発色団が、前記第1のプローブ分子に結合しており;
    前記第1のアクセプター発色団が、前記標的タンパク質に直接的に結合するように構成されている、
    請求項1に記載の方法。
  19. 前記複数の標的タンパク質が、複数の第1の標的タンパク質、および前記第1の標的タンパク質とは異なる、複数の第2の標的タンパク質を含み;
    前記探査プロセスが、前記第1のプローブと前記第2のプローブが結合している第1の標的タンパク質を含む、複数の標識された第1の標的タンパク質、および第3のプローブと第4のプローブが結合している複数の標識された第2の標的タンパク質を生成させ;
    前記第3のプローブが、それぞれ第2のドナー発色団を含み、前記第4のプローブが、それぞれ第2のアクセプター発色団を含み、前記第2のドナー発色団および前記第2のアクセプター発色団が、FRETのための第2のドナー-アクセプターペアとして有効であり;
    前記探査プロセスを実施している間、前記膜を前記照射することが、
    前記膜に第1の励起光を照射して、前記標識された第1の標的タンパク質の前記第1のドナー発色団を励起させることであって、各標識された第1の標的タンパク質において、励起された前記第1のドナー発色団は、FRETによって、エネルギーを前記第1のアクセプター発色団に移動させ、これに応答して、前記標識された第1の標的タンパク質は、第1の放射光を放出する、励起させること;および
    前記膜に第2の励起光を照射して、前記標識された第2の標的タンパク質の前記第2のドナー発色団を励起させることであって、各標識された第2の標的タンパク質において、励起された前記第2のドナー発色団は、FRETによって、エネルギーを前記第2のアクセプター発色団に移動させ、これに応答して、前記標識された第2の標的タンパク質は、前記第1の放射光とは異なる波長の第2の放射光を放出する、励起させること
    を含み;ならびに
    前記探査プロセスを実施している間、前記測定することが、前記第1の放射光の強度、および前記第2の放射光の強度を測定することを含む、
    請求項1に記載の方法。
  20. 前記第1のプローブまたは前記第2のプローブの少なくとも1つが、ストレプトアビジン;アビジン;抗体;非免疫グロブリンタンパク質、またはそのドメインもしくは断片);(ポリ)ペプチド;核酸;炭水化物;脂質;および小分子からなる群から選択されるプローブ分子を含む、請求項1に記載の方法。


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