本発明の一態様の運転支援装置は、先行の小型車両と後続の自車両の車間距離を調整している。認識部によってカーブを走行中の小型車両が認識され、判定部によってカーブの中間点の自車両の通過が判定される。カーブの中間点よりも手前の見通しが悪いカーブ前半では、制御部によって車間距離が維持されて、自車両による小型車両の追い越しが禁止される。また、カーブの中間点よりも奥の見通しの良いカーブ後半では、制御部によって車間距離の維持が解除されて、自車両による小型車両の追い越しが可能となる(許容される)。よって、比較的簡易な構成で、カーブの走行中に自車両による小型車両の無理な追い越しを防止することができる。
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。図1は、本実施例のカーブを走行する車両の一例を示す図である。
図1に示すように、自車両10が道路Cのカーブに差し掛かったときに、自車両10の前方を小型車両30が低速走行している。この状況では、小型車両30を追い越したくなるが、小型車両30を追い越すか否かの判断が難しい。特に、道幅が狭い抜け道では、自車両10が小型車両30を追い越し難く、対向車両40が自車両10に迫った状態で小型車両30を無理に追い越すおそれがある。無理な追い越しを抑えるように、一定の車間距離を維持した走行制御が望ましいが、このような走行制御では無理のない追い越しも禁止されるという不具合が生じる。
道路Cが上り坂のカーブの場合や、小型車両30の出力が小さい場合や、小型車両30が自転車である場合には、先行の小型車両30の速度が極端に遅く感じられて、ドライバーが小型車両30を追い越したい衝動に駆られ易い。自転車は走行中にふらつくことがあり、上り坂で自転車を自車両10が追い越す際にはドライバーに慎重な判断が求められる。また、上り坂ではライダーが自転車を押して歩いたり、ライダーが自転車を止めて後続車両に道を譲ったりする場合があるため、小型車両30と自車両10の車間距離を一定に維持した走行制御だけではカバーできない。
一方で、道路Cが下り坂のカーブの場合、自転車や鞍乗型車両は路面の状況によっては転倒するおそれがあり、下り坂で自転車や鞍乗型車両を追い越す際にもドライバーに慎重な判断が求められる。また、下り坂のカーブは上り坂のカーブよりも停止距離が必要になるにも関わらず、小型車両30と自車両10の車間距離が不足がちになることがある。なお、一般にカーブにはカーブミラー51が設置されているが、天候等によってはカーブミラー51に写る対向車両40をドライバーから視認できず、カーブミラー51に写る像を追い越しの判断に使用できない場合が多い。
そこで、本実施例の運転支援装置20(図2参照)は、見通しが悪いカーブ前半では小型車両30と自車両10の車間距離を維持し、見通しが良いカーブ後半では小型車両30と自車両10の車間距離の維持を解除する。また、上り坂のカーブで自転車に道を譲られた場合等には、カーブ前半であっても車間距離の維持を解除している。さらに、長い停止距離が必要な下り坂のカーブでは、上り坂のカーブよりも車間距離が長く設定されている。このように、カーブの走行中に、無理な追い越しは禁止されるが、無理のない追い越しは許容されて的確な運転支援が実現される。
以下、図2を参照して、運転支援装置を搭載した車両について説明する。図2は、本実施例の運転支援装置を搭載した車両の制御ブロック図である。なお、図2の制御ブロック図には、車両の制御ブロックが簡略化して記載されているが、車両が通常備える機能ブロックについては備えているものとする。
図2に示すように、自車両10には、車両前方を撮像する撮像装置11と、GPS(Global Positioning System)信号を受信するGPS装置12と、車両前方の障害物を検知するレーダ装置13と、路側機52(図5参照)と路車間通信する路車間通信装置14とが設けられている。また、自車両10には、路面の勾配を検出する勾配センサ15と、自車両10の駆動源となるエンジンユニット16と、自車両10に対する自動ブレーキを制御するブレーキユニット17とが設けられている。これら各装置は、先行車両に対する車間距離を制御する運転支援装置20に接続されている。
撮像装置11は、180°程度の水平画角(視野角)を持ったステレオカメラやドライブレコーダ等で構成されている。撮像装置11によって車両前方が撮像されると、撮像装置11から運転支援装置20に撮像画像が出力される。GPS装置12は、衛星からGPS信号を受信する受信機である。GPS信号によって自車両10が測位され、GPS装置12から運転支援装置20に自車両10の現在位置が出力される。レーダ装置13は、車両前方に電波を放出して先行車両等の障害物からの反射波を受信する。反射波によって障害物の有無や移動速度が検出され、レーダ装置13から運転支援装置20に障害物の移動速度が出力される。
路車間通信装置14は、カーブ等に設置された路側機52からの報知信号を受信する受信機である。報知信号から各種情報が取り出されて、路車間通信装置14から運転支援装置20に各種情報が出力される。報知信号には、例えば、カーブの存在を示す情報、カーブの中間点を示す情報、天候、路面状況、季節を示す情報が含まれている。勾配センサ15は、センサに加わる加速度の変化を検出する。加速度の変化から路面の勾配が検出され、勾配センサ15から運転支援装置20に路面の勾配が出力される。なお、上り坂の勾配は正の値で示され、下り坂の勾配は負の値で示される。
エンジンユニット16は、運転支援装置20からの制御信号に応じてエンジン出力及びエンジン回転数を調整している。エンジンユニット16によって自車両10が速度制御されて、速度制御によって先行車両と自車両10の車間距離が維持される。ブレーキユニット17は、運転支援装置20からの制御信号に応じて自動ブレーキのブレーキ液圧を調整している。ブレーキユニット17によって自車両10がブレーキ制御されて、ブレーキ制御によって先行車両と自車両10の車間距離が維持される。上り坂では速度制御によって車間距離が維持され、下り坂では速度制御とブレーキ制御を併用して車間距離が維持される。
運転支援装置20は、カーブの走行中に先行の小型車両30と後続の自車両10の車間距離を調整可能に構成されている。運転支援装置20には、カーブを走行中の小型車両30を認識する認識部21と、カーブの中間点の自車両10の通過を判定する判定部22、小型車両30の移動速度を取得する取得部23と、車間距離を制御する制御部24とが設けられている。なお、本実施例の小型車両30には、例えば、自転車、鞍乗型車両、電動小型車両が含まれる。鞍乗型車両には、自動二輪車両だけでなく、自動三輪車両も含まれる。電動小型車両にはキャノピー付きの車両だけでなく、キャノピー無しの車両も含まれる。
認識部21は、撮像装置11から入力された撮像画像に各種画像処理を施して、小型車両画像、カーブミラー画像、カーブミラー51に写った対向車両画像を認識する。例えば、撮像画像の輝度に基づいて背景画像から特定画像が抽出され、特定画像のシルエットの特徴部分に基づいて小型車両画像、カーブミラー画像、対向車両画像が認識される。小型車両画像の有無から自車両10の前方の小型車両30が認識される。カーブミラー画像の有無から自車両10の前方のカーブの存在が認識される。カーブミラー51に写った対向車両画像の有無から前方から自車両10に近づく対向車両40が認識される。
なお、認識部21は、レーダ装置13が受信した反射波に基づいて小型車両30の有無を認識してもよい。認識部21は、GPS信号から得られた自車両10の現在位置を地図データ上に配置して、自車両10の前方のカーブの存在を認識してもよいし、路側機52からの報知信号に応じて、自車両10の前方のカーブの存在を認識してもよい。天候等によっては、カーブミラー51に写った対向車両画像を認識することが難しいが、対向車両画像が認識できなくても、カーブを走行中の小型車両30を認識できれば、本実施例の車間距離の制御を実施することは可能である。
判定部22は、カーブミラー51の横を自車両10が通過したか否かによって、カーブの中間点の自車両10の通過を判定している。この場合、撮像装置11から判定部22に撮像画像が入力され、撮像画像に各種画像処理が施されてカーブミラー51が認識される。カーブミラー51はカーブの中間点に設置され、撮像装置11の水平画角は180°程度である。撮像画像内にカーブミラー画像が含まれる間は、カーブの中間点を自車両10が通過していないと判定される。撮像画像内からカーブミラー画像が消えた時点で、カーブの中間点を自車両10が通過した後と判定される。
なお、撮像装置11の水平画角が180°よりも小さくても、カーブミラー51の横を自車両10が通過したか否かを推測可能である。例えば、撮像装置11の水平画角が120°の場合には、撮像画像からカーブミラー画像が消えてからの経過時間をカウントすれば、この経過時間と自車両10の車速からカーブミラー51の横を自車両10が通過したタイミングを推測できる。カーブの中間点の自車両10の通過の判定には、カーブミラー51を撮像した撮像画像の画像認識の代わりに、GPS信号及び地図データ、カーブに設置された路側機52からの報知信号が用いられてもよい。
例えば、GPS信号及び地図データを用いる場合には、GPS信号と地図データが照合されて地図データ上の自車両10の現在位置が求められ、カーブの中間点を自車両10が通過したか否かが判定される。路側機52から報知信号を受信する場合には、報知信号に含まれるカーブの中間点を示す情報から、カーブの中間点を自車両10が通過したか否かが判定される。これら複数の判定処理が状況に応じて適宜選択されてもよい。例えば、画像処理の処理負荷が高いときにGPS信号や報知信号が判定処理に使用され、山道等でGPS信号が途切れるときや路側機52が無いときに撮像画像が判定処理に使用される。
取得部23は、レーダ装置13で検出された小型車両30の移動速度を取得する。小型車両30の停止時や小型車両30の押し歩き時には、取得部23によって平均歩行速度未満の移動速度が取得される。なお、取得部23は、撮像装置11に撮像された撮像画像から小型車両30の移動速度を取得してもよい。地面に設置されたカーブミラー51等を基準にして、撮像画像内のカーブミラー画像と小型車両画像の相対的な位置変化によって移動速度が取得される。例えば、撮像画像内のカーブミラー画像と小型車両画像が同方向に同速度で移動する場合に、地面に固定されたカーブミラー51と同様に小型車両30が停止していると判断される。
制御部24は、認識部21の認識結果に応じて、小型車両30と自車両10の車間距離の維持を開始する。小型車両30が認識され、自車両10の現在位置がカーブの手前と認識され、カーブミラー51内の対向車両40が認識された場合に、車間距離の維持が開始される。見通しの悪いカーブ前半で、対向車両40が前方から近づいている状況では、小型車両30と自車両10の車間距離が維持されることで無理な追い越しが禁止される。カーブミラー51内の対向車両40が認識できなくても、小型車両30が認識されると共に自車両10の現在位置がカーブの手前と認識された場合に車間距離の維持が開始されてもよい。
制御部24は、自車両10と小型車両30の相対速度を監視して、自車両10と小型車両30の相対速度が0以下になるように車間距離を維持している。自車両10と小型車両30の相対速度は、レーダ装置13の検出結果に基づいて監視されてもよいし、撮像装置11の撮像画像に基づいて監視されてもよい。自車両10と小型車両30の相対速度の監視に撮像画像を用いる場合には、撮像画像内の小型車両画像の大きさの変化から相対速度が監視される。自車両10と小型車両30の車間距離は、エンジンユニット16の速度制御及びブレーキユニット17のブレーキ制御によって維持される。
制御部24は、勾配センサ15から入力された路面の勾配に応じて、上り坂のカーブよりも下り坂のカーブで車間距離を長くする。上り坂のカーブの車間距離としては、例えば、徐行速度を10[Km/H]として、平坦路及びアスファルト乾燥路では停止距離が2[m]であることを参考にし、余裕を見て5[m]程度に設定される。また、車間距離は、天候、路面状況、季節を考慮して設定されてもよい。天候、路面状況、季節を示す情報は、上記したように路側機52から送信される報知信号に含まれている。自車両10に作用する重力、雨天時のスリップ等を考慮した適切な車間距離が設定される。
上り坂のカーブでは、自車両10に対して減速方向に重力が作用するため、エンジンユニット16の速度制御によって車間距離が維持される。下り坂のカーブでは、自車両10に対して加速方向に重力が作用するため、エンジンユニット16の速度制御とブレーキユニット17のブレーキ制御が併用されて車間距離が維持される。このように、上り坂と下り坂に適した制御によって車間距離が維持されている。なお、平坦のカーブでは、エンジンユニット16の速度制御だけで車間距離が維持されてもよいし、エンジンユニット16の速度制御とブレーキユニット17のブレーキ制御が併用されて車間距離が維持されてもよい。
制御部24は、判定部22の判定結果に応じて、小型車両30と自車両10の車間距離の維持を解除する。自車両10がカーブの中間点を通過するまでは車間距離が維持され、自車両10がカーブの中間点を通過した後に車間距離の維持が解除される。カーブの中間点よりも手前の見通しが悪いカーブ前半では無理な追い越しが禁止され、カーブの中間点よりも奥の見通しの良いカーブ後半では無理のない追い越しが可能となる(許容される)。また、自車両10がカーブの中間点を通過する前に、取得部23が取得した小型車両30の移動速度に応じて車間距離の維持が解除されてもよい。
例えば、小型車両30として自転車が上り坂のカーブを走行している場合、ライダーが自転車を止めて後続車両に道を譲る状況や、ライダーが自転車を押しながら歩く状況が想定される。このような状況では、自転車の移動速度は人が歩く平均歩行速度4[km/H]未満になる。このため、自車両10がカーブの中間点を通過する前に、小型車両30の移動速度が平均歩行速度未満になったときに車間距離の維持が解除されてもよい。平均歩行速度未満の自転車に、自車両10が追従することがなく、カーブ前半であっても自車両10による自転車の追い越しが可能となる(許容される)。
運転支援装置20の各部の処理は、プロセッサを用いてソフトウェアによって実現されてもよいし、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。プロセッサを用いる場合には、プロセッサがメモリに記憶されているプログラムを読み出して実行することで各種処理が実施される。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)が使用される。また、メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体によって構成されている。
図3及び図4を参照して、運転支援装置の制御処理の一例について説明する。図3は、本実施例の交通シーンの一例を示す図である。図4は、本実施例の運転支援装置のフローチャートの一例を示す図である。ここでは、図2の符号を適宜使用して説明する。また、図3では小型車両として自転車を例示している。
図3(A)に示すように、道路Aが高い位置を通り、道路Bが低い位置を通っており、道路Aと道路Bが道路Cを介して繋がれている。道路Cは道路A、B間の抜け道になっており、道路Aから道路Bに向かって低くなるように傾斜した坂道になっている。道路Cは第1のカーブC1と第2のカーブC2によって逆S字状にカーブしている。第1、第2のカーブC1、C2の中間点には、それぞれカーブミラー51a、51bが設置されている。自車両10が道路Bから道路Cの上り坂の第1のカーブC1に入り、自車両10の前方を自転車30aが走行している。
撮像装置11によって自車両10の前方が撮像され、撮像画像には自転車画像、カーブミラー画像、カーブミラー51aに写された対向車両画像が含まれている。認識部21によって自転車画像から自車両10の前方の自転車30aが認識され、カーブミラー画像から自車両10の前方のカーブの存在が認識され、対向車両画像から自車両10への対向車両40の接近が認識される。そして、制御部24によって自転車30aと自車両10の車間距離が維持されて、見通しの悪いカーブ前半での自車両10による自転車30aの無理な追い越しが禁止される。上り坂の走行中の車間距離L1は下り坂の走行中の車間距離L2(図3(D)参照)よりも短く設定されている。
図3(B)に示すように、撮像装置11の水平画角からカーブミラー51aが外れて、撮像画像内からカーブミラー画像が消えた時点で、判定部22によって第1のカーブC1の中間点を自車両10が通過した後であると判定される。そして、制御部24によって自転車30aと自車両10の車間距離の維持が解除されて、見通しの良いカーブ後半での自車両10による自転車30aの無理のない追い越しが可能となる(許容される)。そして、自車両10のドライバーによって前方の対向車両40の存在の有無が目視で確認され、対向車両40が存在しないときには自車両10によって自転車30aが追い越される。
図3(C)に示すように、第1のカーブC1の中間点を自車両10が通過する前であっても、自転車30aの移動速度が平均歩行速度未満の場合には、制御部24によって自転車30aと自車両10の車間距離の維持が解除される。上り坂ではライダーが第1のカーブC1の端に自転車30aを停止して後続車両に道を譲る状況が想定される。この状況では、自転車30aと自車両10の車間距離の維持が解除されることで、平均歩行速度未満の自転車30aに自車両10が追従することがなく、自車両10による自転車30aの無理のない追い越しが可能となる(許容される)。
図3(D)に示すように、自車両10が道路Aから道路Cの下り坂の第2のカーブC2に入り、自車両10の前方を自転車30aが走行している場合も同様である。すなわち、見通しの悪いカーブ前半での自車両10による自転車30aの無理な追い越しが禁止され、見通しの良いカーブ後半での自車両10による自転車30aの無理のない追い越しが可能となる(許容される)。下り坂では自転車30aが後続車両に道を譲る状況は想定し難いが、自転車30aの移動速度が平均歩行速度未満の場合に自転車30aと自車両10の車間距離の維持が解除されてもよい。下り坂の走行中の車間距離L2は上り坂の走行中の車間距離L1(図3(A)参照)よりも長く設定されている。
次に、運転支援装置20の制御処理について説明する。図4に示すように、認識部21によって撮像画像内の小型車両画像とカーブミラー画像の有無が監視される(ステップS01)。認識部21によって小型車両画像とカーブミラー画像が認識されると(ステップS01でYes)、撮像画像内のカーブミラー51に写った画像が判別可能か否かが判定される(ステップS02)。例えば、雨天等の天候情報に応じて、カーブミラー51に写った画像が判別可能か否かが判定される。カーブミラー51に写った画像が判別不能な場合(ステップS02でNo)、ステップS04に処理が移行する。
カーブミラー51に写った画像が判別可能な場合(ステップS02でYes)、カーブミラー51に写った対向車両画像の有無が認識される(ステップS03)。カーブミラー51に写った対向車両画像が認識されない場合(ステップS03でNo)、ステップS01-S03の処理が繰り返される。対向車両画像が認識された場合(ステップS03でYes)、又はカーブミラー51に写った画像が判別不能な場合(ステップS02でNo)、制御部24によって小型車両30と自車両10の車間距離の維持が開始される(ステップS04)。車間距離の維持によって自車両10による小型車両30の無理な追い越しが禁止される。
次に、勾配センサ15によって路面の勾配θが検出される(ステップS05)。路面が平坦である場合(ステップS05でθ≒0)、車間距離が基準距離になるように自車両10の速度制御が実施される(ステップS06)。路面が上り坂である場合(ステップS05で0<θ)、車間距離が基準距離よりも短くなるように自車両10の速度制御が実施される(ステップS07)。路面が下り坂である場合(ステップS05でθ<0)、車間距離が基準距離よりも長くなるように自車両10の速度制御及びブレーキ制御が実施される(ステップS08)。車間距離の設定には、天候、路面状況、季節が考慮されてもよい。
次に、小型車両30の移動速度が平均歩行速度未満か否かが判定される(ステップS09)。小型車両30の移動速度が平均歩行速度未満の場合(ステップS09でYes)、制御部24によって小型車両30の停車状態又は押し歩き状態が認識される。このため、カーブ前半であっても制御部24によって車間距離の維持が解除される(ステップS11)。小型車両30の移動速度が平均歩行速度以上の場合(ステップS09でNo)、撮像画像内のカーブミラー画像の有無に応じて、判定部22によってカーブの中間点を自車両10が通過したか否かが判定される(ステップS10)。
撮像画像にカーブミラー画像が含まれている間は、カーブの中間点を自車両10が通過していないと判定され(ステップS10でNo)、ステップS05-S10までの各処理が繰り返される。撮像画像からカーブミラー画像が消えると、カーブの中間点を自車両10が通過したと判定され(ステップS10でYes)、制御部24によって車間距離の維持が解除される(ステップS11)。車間距離の維持の解除後は、ドライバーによって自車両10による小型車両30の追い越しが判断される。ステップS01-S11の各処理は、自車両10がカーブに差し掛かる度に実施される。
図5及び図6を参照して、運転支援装置の制御処理の他の一例について説明する。図5は、本実施例の交通シーンの他の一例を示す図である。図6は、本実施例の運転支援装置のフローチャートの他の一例を示す図である。制御処理の他の一例は、上記の制御処理の一例とは報知信号又はGPS信号を用いる点で主に相違している。ここでは、図2の符号を適宜使用して説明する。また、図5では小型車両として自転車を例示している。
図5(A)に示す交通シーンでは、図3(A)に示す交通シーンとは路側機52a-52dが設置されている点で異なっている。上記したように、道路Aと道路Bが道路Cを介して繋がれており、道路Cは第1のカーブC1と第2のカーブC2によって逆S字状にカーブしている。第1のカーブC1の入口付近及び中間点にはそれぞれ路側機52a、52bが設置され、第2のカーブC2の入口付近及び中間点にはそれぞれ路側機52c、52dが設置されている。自車両10が道路Bから道路Cの上り坂の第1のカーブC1に入り、自車両10の前方を自転車30aが走行している。
撮像装置11によって自車両10の前方が撮像され、認識部21によって撮像画像から自車両10の前方の自転車30aが認識される。さらに、第1のカーブC1の入口付近の路側機52aから自車両10に報知信号が送信され、報知信号からカーブの存在を示す情報が取り出されて、認識部21によって自車両10の前方のカーブの存在が認識される。そして、制御部24によって自転車30aと自車両10の車間距離が維持されて、見通しの悪いカーブ前半での自車両10による自転車30aの無理な追い越しが禁止される。上り坂の走行中の車間距離L1は下り坂の走行中の車間距離L2(図5(C)参照)よりも短く設定されている。
図5(B)に示すように、第1のカーブC1の中間点の路側機52bから自車両10に報知信号が送信され、報知信号からカーブの中間点を示す情報が取り出されて、判定部22によって第1のカーブC1の中間点を自車両10が通過したと判定される。そして、制御部24によって自転車30aと自車両10の車間距離の維持が解除されて、見通しの良いカーブ後半での自車両10による自転車30aの無理のない追い越しが可能となる(許容される)。自車両10のドライバーによって前方の対向車両40の存在の有無が目視で確認され、対向車両40が存在しないときには自車両10によって自転車30aが追い越される。
図5(C)に示すように、自車両10が道路Aから道路Cの下り坂の第2のカーブC2に入り、自車両10の前方を自転車30aが走行している場合も同様である。すなわち、見通しの悪いカーブ前半での自車両10による自転車30aの無理な追い越しが禁止され、見通しの良いカーブ後半での自車両10による自転車30aの無理のない追い越しが可能となる(許容される)。下り坂の走行中の車間距離L2は上り坂の走行中の車間距離L1(図5(A)参照)よりも車間距離が長く設定されている。なお、報知信号の代わりに、GPS信号によって自車両10にカーブの存在やカーブの中間点が通知されてもよい。
次に、運転支援装置20の制御処理について説明する。図6に示すように、認識部21によって撮像画像内の小型車両画像の有無が監視されると共に、報知信号又はGPS信号に基づいてカーブの有無が監視される(ステップS21、S22)。認識部21によって小型車両画像が認識され(ステップS21でYes)、さらに認識部21によってカーブが認識された場合(ステップS22でYes)、制御部24によって小型車両30と自車両10の車間距離の維持が開始される(ステップS23)。車間距離の維持によって自車両10による小型車両30の無理な追い越しが禁止される。
次に、勾配センサ15によって路面の勾配θが検出される(ステップS24)。路面が平坦である場合(ステップS24でθ≒0)、車間距離が基準距離になるように自車両10の速度制御が実施される(ステップS25)。路面が上り坂である場合(ステップS24で0<θ)、車間距離が基準距離よりも短くなるように自車両10の速度制御が実施される(ステップS26)。路面が下り坂である場合(ステップS24でθ<0)、車間距離が基準距離よりも長くなるように自車両10の速度制御及びブレーキ制御が実施される(ステップS27)。車間距離の設定には、天候、路面状況、季節が考慮されてもよい。
次に、小型車両30の移動速度が平均歩行速度未満か否かが判定される(ステップS28)。小型車両30の移動速度が平均歩行速度未満の場合(ステップS28でYes)、制御部24によって小型車両30の停車状態又は押し歩き状態が認識される。このため、カーブ前半であっても制御部24によって車間距離の維持が解除される(ステップS30)。小型車両30の移動速度が平均歩行速度以上の場合(ステップS28でNo)、報知信号又はGPS信号に基づいて判定部22によってカーブの中間点を自車両10が通過したか否かが判定される(ステップS29)。
カーブの中間点を自車両10が通過していないと判定された場合(ステップS29でNo)、ステップS24-S29までの各処理が繰り返される。カーブの中間点を自車両10が通過したと判定された場合(ステップS29でYes)、制御部24によって車間距離の維持が解除される(ステップS30)。車間距離の維持の解除後は、ドライバーによって自車両10による小型車両30の追い越しが判断される。ステップS21-S30の各処理は、自車両10がカーブに差し掛かる度に実施される。
以上、本実施例によれば、カーブの中間点よりも手前の見通しが悪いカーブ前半では、先行の小型車両30と後続の自車両10の車間距離が維持されて、自車両10による小型車両30の追い越しが禁止される。カーブの中間点よりも奥の見通しの良いカーブ後半では、小型車両30と自車両10の車間距離の維持が解除されて、自車両10による小型車両30の追い越しが可能となる(許容される)。よって、比較的簡易な構成で、カーブの走行中に自車両10による小型車両30の無理な追い越しを防止することができる。
また、本実施例によれば、既存のカーブミラー51、路側機52、GPS信号を有効活用して、一般的な画像処理技術や通信技術によって実現され、比較的簡易かつ安価に運転支援装置20を形成することができる。
なお、本実施例では、運転支援装置が自動四輪車に搭載された一例について説明したが、運転支援装置が小型車両を除く車両に搭載されていればよい。例えば、排気量が大きな(50[cc]よりも大きな)自動二輪車や自動三輪車等の鞍乗型車両に運転支援装置が搭載されてもよい。ここで、鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
また、本実施例では、運転支援装置がエンジン自動車に搭載された一例について説明したが、運転支援装置は、エンジン自動車に限らず、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車等の他の車両に搭載されてもよい。さらに、運転支援装置は自動運転車両に搭載されてもよい。このように、運転支援装置が搭載された自車両は、小型車両を除く車両でもよいし、自動運転車両でもよい。
また、本実施例では、路車間通信によって路側機から自車両に天候、路面状況、季節が通知されたが、他の無線通信によって自車両に天候、路面状況、季節が通知されてもよい。また、天候、路面状況、季節の全てが自車両に通知される必要はなく、天候、路面状況、季節の少なくとも1つが通知されればよい。
また、本実施例における追い越しとは、後続の自車両が進路を変えて先行の小型車両の前方に出る場合だけでなく、後続の自車両が進路を変えずに先行の小型車両の前方に出る場合も含んでいる。
また、ECU(Electronic Control Unit)に運転支援用のプログラムをインストールすることで、ECUを運転支援装置として使用してもよい。このプログラムは、記憶媒体に記憶される。記憶媒体は、特に限定されないが、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体でもよい。
以上の通り、本実施例の運転支援装置(20)は、先行の小型車両(30)と後続の自車両(10)の車間距離を調整する運転支援装置であって、カーブを走行中の小型車両を認識する認識部(21)と、カーブの中間点の自車両の通過を判定する判定部(22)と、自車両がカーブの中間点を通過するまで、小型車両と自車両の車間距離を維持し、自車両がカーブの中間点を通過した後に車間距離の維持を解除する制御部(24)と、を備えている。この構成によれば、カーブの中間点よりも手前の見通しが悪いカーブ前半では、先行の小型車両と後続の自車両の車間距離が維持されて、自車両による小型車両の追い越しが禁止される。カーブの中間点よりも奥の見通しの良いカーブ後半では、小型車両と自車両の車間距離の維持が解除されて、自車両による小型車両の追い越しが可能となる(許容される)。よって、比較的簡易な構成で、カーブの走行中に自車両による小型車両の無理な追い越しを防止することができる。
本実施例の運転支援装置において、判定部は、カーブミラーを撮像した撮像画像の画像認識、GPS信号から得られた地図データ上の自車両の現在位置、カーブに設置された路側機からの信号のいずれかに基づいて、カーブの中間点の自車両の通過を判定する。この構成によれば、簡易な構成で、カーブの中間点の自車両の通過を判定することができる。
本実施例の運転支援装置において、カーブにおける小型車両の移動速度を取得する取得部(23)を備え、自車両がカーブの中間点を通過する前に、小型車両の移動速度が平均歩行速度未満になると、制御部は車間距離の維持を解除する。この構成によれば、小型車両の移動速度が平均歩行速度未満になったときに、車間距離の維持が解除されて、平均歩行速度未満の小型車両に自車両が追従することがない。よって、カーブ前半であっても、後続の自車両に道を譲るために小型車両が停車した場合等には、自車両が小型車両を追い越すことができる。
本実施例の運転支援装置において、カーブは、上り坂のカーブ又は下り坂のカーブであり、制御部は、上り坂のカーブよりも下り坂のカーブで車間距離を長くする。この構成によれば、自車両に作用する重力を考慮して適切な車間距離を設定することができる。
本実施例の運転支援装置において、制御部は、上り坂のカーブでは速度制御によって車間距離を維持し、下り坂のカーブでは速度制御とブレーキ制御を併用して車間距離を維持する。この構成によれば、上り坂と下り坂に適した制御によって車間距離が維持されている。
本実施例の運転支援装置において、認識部は、カーブミラー内の対向車両(40)を認識し、制御部は、カーブミラー内の対向車両が認識された場合に、車間距離の維持を開始する。この構成によれば、カーブ前半に対向車両が存在しない場合には、車間距離の維持が実施されずに自車両による小型車両の追い越しが可能となる(許容される)。
本実施例の運転支援装置において、制御部は、天候、路面状況、季節の少なくとも1つを考慮した車間距離を設定する。この構成によれば、雨天や冬季のスリップを考慮して適切な車間距離を設定することができる。
本実施例の運転支援装置において、自車両が小型車両を除く車両である。この構成によれば、カーブの走行中に小型車両を除く車両による小型車両の無理な追い越しが防止される。
本実施例の運転支援装置において、自車両が自動運転車両である。この構成によれば、カーブの走行中に自動運転車両による小型車両の無理な追い越しが防止される。
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。