JP7432497B2 - 開閉体装置の防火構造 - Google Patents
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Description
本発明の請求項1記載の開閉体装置の防火構造は、建物の壁体15に開口する開口部11の上縁29に沿って設けられ、少なくとも室外側の外板部31が壁体室外面33より室外側へ突出するケース19と、
前記ケース19内における前記外板部31の外板部背面53に対向する外側面55から室内側の内側面57までが所定の厚みを有し、前記内側面57が前記壁体室外面33よりも室内側に位置する不燃材21と、
前記不燃材21を挟んで前記外板部31と反対側の前記ケース19内に、前記外板部31に沿って垂直に設けられるベース板23と、
前記不燃材21と反対側の前記ベース板23の室内側ベース面79に固定され、前記開口部11を開閉するドア27を開閉駆動するための駆動機構部25と、
を具備することを特徴とする。
不燃材21の外側面55は、外板部背面53に当接する。外板部31は、上述のように壁体室外面33より室外側へ突出しているので、不燃材21の外側面55も壁体室外面33より室外側へ突出して配置される。一方、不燃材21の内側面57は、壁体室外面33よりも室内側に位置する。すなわち、不燃材21は、外板部背面53から壁体15の厚み内に位置する厚みを有する。これにより、不燃材21は、ケース19の突出長さに関わらず、壁体室外面33にかぶる位置で壁厚内に入り込んで配置されている。
この開閉体装置の防火構造では、室外側が火元となった場合、壁体室外面33よりも突出するケース19の外側面55が炎に晒されることになる。このとき、ケース19内に設けられている不燃材21は、壁体室外面33よりも室内側に入り込んでいるので、壁体15にかぶる範囲が、火炎に晒されずに済む。これにより、不燃材21の内側面57からケース19内へ伝わる火炎による熱を、不燃材21の内側面57が壁体室外面33よりも外側となる位置、或いは不燃材21の内側面57が壁体室外面33と同じ位置、例えばほぼ面一である構造に比べ、より効果的に抑制することができる。
このように、開閉体装置の防火構造では、ケース19内に収容する不燃材21を壁体15がかぶる(重なる)ように設けたので、火炎によりケース19内に伝わる熱を抑制でき、駆動機構部25に用いられている樹脂材料やケース19内のその他の樹脂材料が引火することを所定の時間抑制することができる。その結果、開閉体装置(自動ドア装置)13を、防火区画に設置することを実現可能とすることができる。
前記不燃材21が、箱体59に収容され、前記外板部背面53に沿って前記ケース19内に配置されることを特徴とする。
鋼板よりなるケース19及び箱体59を外殻として、その収容空間に保持される不燃材21は、外部からの衝撃によっても位置ずれすることなく、所定位置に確実に保持される。これにより、高い断熱性能を維持し続けることができる。
また、不燃材21を箱体59に収容した状態とすることで、剛性を備えた部材とすることができ、可搬性やケース19への固定など取り扱いが容易となる。
前記箱体59は、垂直な本体板61と該本体板61の上下端から水平に平行となり前記不燃材21の厚みと同等の長さで突出する枠片63とでコ字状に形成される一方の収容体60Aと、該一方の収容体60Aと同形状に形成され上下に枠片63を有する他方の収容体60Bとで構成され、前記一方の収容体60Aの上下枠片63のそれぞれ外側面に前記他方の収容体60Bの上下枠片63をそれぞれ重ねて前記一方の収容体60Aと前記他方の収容体60Bとで角筒状空間64を形成し、該角筒状空間64内に前記不燃材21が収容されることを特徴とする。
不燃材21は箱体59に収容された状態となり、剛性を備えた部材とすることができ、可搬性やケース19への固定など取り扱いがより容易となる。
前記不燃材21の内側面57に対して前記ベース板23が室内側に離間して配置されることにより前記不燃材21と前記ベース板23との間に空間部51が形成されることを特徴とする。
この開閉体装置の防火構造では、空間部51を介在させることにより、不燃材21から、或いは箱体59からの熱が直接、ベース板23へ熱伝導により伝わらなくなる。不燃材21とベース板23との間に空間部51を介在させた場合、不燃材21側からベース板23へは、熱伝達により熱が伝わる。熱伝達では、熱伝導と、熱対流と、熱輻射の3形式が混ざり合って熱が移動する。空間部51を介した熱伝達の場合、不燃材21とベース板23とが直接或いは間接的に金属部材等を伝わる熱伝導に比べ、熱の移動量を格段に小さくできる。すなわち空間部51が空気層となり断熱の効果を得られる。これにより、ベース板23に取り付けられる駆動機構部25の温度上昇を抑制することができる。
図1は本発明の実施形態に係る開閉体装置の防火構造を備える開閉体装置の正面図である。
本実施形態に係る開閉体装置の防火構造は、火災などによる屋外からの火炎を最小限に食い止めて屋内側への延焼を防止し、屋外からのもらい火を遮り、外部からの延焼を防止するための「防火設備」への適用を目的とするものである。すなわち、開閉体装置の防火構造は、延焼の防止を目的として外壁の延焼のおそれのある部分及び防火区画の開口部11に設けられる。さらに、開閉体装置の防火構造は、両面から火炎を遮断することができ、耐火建築物内の防火区画に設けられる「特定防火設備」としての適用も目的とする。本実施形態において、開閉体装置は、自動ドア装置13を一例として説明する。
なお、本発明において、「室外(屋外)」とは、延焼を防ぎたい「室内(屋内)」の外、すなわち火元側についてを室外または屋外と称し、火元側であるこの室外からの炎を、延焼を防ぎたい室内へ伝わらないようにするもので、建物の壁面開口部11に防火設備として設置される自動ドア装置13である。
ケース19は、開口部11の上縁29に沿って設けられる。ケース19は、少なくとも室外側の外板部31が壁体室外面33より室外側へ突出する。また、ケース19は、室内側の内板部35が壁体室内面37より室内側へ突出する。なお、本実施形態において、室内側へ突出する内板部35は、後述する点検蓋39となる。
ケース19内には、不燃材21が収容される。不燃材21は、ケース19の長手方向(図1の左右方向)及び高さ方向いっぱいに端から端まで充填状態で配置される。本実施形態において、ケース19の長手方向の寸法は、開口部11の間口幅とほぼ等しく、例えば3300mm程度である。ケース19内において、駆動機構部25は、不燃材21と空間部51を隔てて配置されている。不燃材21は、不燃性、耐火性、断熱性等を有する所謂不燃材料であって、例えばロックウールを好適に用いることができる。また、この不燃材21としては、グラスウールやケイ酸カルシウム板、石膏ボードなどとしてもよく、さらには、これら素材を組み合わせたものとしてもよい。本実施形態でのロックウールは、厚み10~80mm、標準密度80~200kg/m3 のものを用いることができる。より好ましくは厚み35mm、標準密度150kg/m3 とすることができる。ロックウールは、矩形板状に成形したものが使用される。この不燃材21としては、例えばニチアス株式会社製のMG製品を用いることができる。MG製品では例えば製品名「MGボード」(登録商標)、熱伝導率0.043W/m・k以下を好適に用いることができる。
自動ドア装置13は、組立方法の一例として、連結プレート49により一体に固定された上部アングル材65、上部アングル材67および下部アングル材69に、駆動機構部25の取り付けられたベース板23を固定することにより、駆動ユニットとして予め組み立てることができる。
これにより、取り扱いにくい不燃材21を、ケース19内の所定位置に高精度に、しかも極めて容易にセットすることができる。
その後、移動体にはドア27が吊下状態で連結される。
なお、箱体59は、上記した本体板61と上下の枠片63とでコ字状に形成される構成を、向かい合わせで配置し、上下の枠片63同士を連結し、対向する両本体板61の間に不燃材21を収容させる構成としてもよく、例えば図5(a)に示すように、箱体59の構造を、垂直な本体板61と、この本体板61の上下端から水平に平行となり不燃材21の厚みtと同等の長さで突出する枠片63とでコ字状に形成される一方の収容体60Aと、この一方の収容体60Aと同形状に形成され上下に枠片63を有する他方の収容体60Bとで構成して、一方の収容体60Aの上下枠片63のそれぞれ外側面に他方の収容体60Bの上下枠片63をそれぞれ重ねるように向かいあわせ、不燃材21を挟み、一方の収容体60Aと他方の収容体60Bとで角筒状空間64を形成して、この角筒状空間64内に不燃材21を収容させる構成としてもよい。このような構成とすることで、不燃材21は、本体板61に前後が挟まれ、上下を各枠片64にて覆われる。箱体59に収容された不燃材21は、図5(b)に示すように、外板部背面53に沿って、ケース19内に配置される。この構成であれば、不燃材21を四方から覆う矩形管状の箱体59を構成でき、剛性をさらに向上させ、可搬性やケース19への組込みなど取り扱いをより容易なものとすることが可能となる。
従来構造と実施形態に係る構造に対して行った遮炎性能試験について説明する。
1.試験体取り付け
ケースの外板部を加熱面側として試験体を壁炉前面に設置した。
2.加熱方法・試験時間
加熱温度がISOに規定されている標準加熱温度曲線となるよう、特定防火設備の試験時間である60分間の加熱を行った。
すなわち、壁炉前面に設置した試験体を炉内から1時間燃やし続けて最終的に945℃とした。
3.判定方法
加熱時間中、以下の基準を満足するか否かを確認した。
(1)非加熱側へ10秒を超えて継続する火炎の噴出がないこと。
(2)非加熱側へ10秒を超えて継続する発炎がないこと。
(3)火炎が通る亀裂等の損傷および隙間を生じないこと。
図2に示す構造とした。すなわち、不燃材21をケース19と箱体59とで収容し、空間部51を隔てて垂直に配置したベース板23に駆動機構部25を設けた。不燃材21は、壁体室外面33にかぶる位置で壁厚内に入り込んで配置した。
図2に示す構造において、駆動機構部を設けたベース板を壁体室外面とほぼ同じ位置で垂直に配置し、外板部とベース板との間は、不燃材を充填せずに空間部のままとした。
ケース内の駆動機構部が火元となり、ケースとドアの隙間から火の漏れることが確認された。
従来構造と同じ1時間燃やした試験においても非加熱側に火炎の噴出、発炎が確認されなかった。
従来構造では、外板部とベース板との間に不燃材が充填されず、かつベース板の位置が壁体室外面とほぼ同じであったため、空間部における熱伝達により、室内側ベース面が、駆動機構部を構成する樹脂、例えばポリスチレンの引火温度370℃以上となったことが予想される。その結果、可燃性のガスが発生し、主にポリスチレン等の樹脂材料が発火したものと推測される。
なお、本実施形態に係る構造において、熱抵抗に基づく加熱面の裏面温度を計算した結果、空間部51を設けない場合であっても、加熱面の温度945℃、ロックウールの厚み35mm、密度150kg/m3 、熱伝導率を0.33W/m・kとしたとき、ベース板の裏面温度は、327.8℃となり、ポリスチレンの引火温度370℃以下となる。
13…開閉体装置(自動ドア装置)
15…壁体
19…ケース
21…不燃材
23…ベース板
25…駆動機構部
27…ドア
29…上縁
31…外板部
33…壁体室外面
51…空間部
53…外板部背面
55…外側面
57…内側面
59…箱体
Claims (4)
- 建物の壁体に開口する開口部の上縁に沿って設けられ、少なくとも室外側の外板部が壁体室外面より室外側へ突出するケースと、
前記ケース内における前記外板部の外板部背面に対向する外側面から室内側の内側面までが所定の厚みを有し、前記内側面が前記壁体室外面よりも室内側に位置する不燃材と、
前記不燃材を挟んで前記外板部と反対側の前記ケース内に、前記外板部に沿って垂直に設けられるベース板と、
前記不燃材と反対側の前記ベース板の室内側ベース面に固定され、前記開口部を開閉するドアを開閉駆動するための駆動機構部と、
を具備することを特徴とする開閉体装置の防火構造。 - 前記不燃材が、箱体に収容され、前記外板部背面に沿って前記ケース内に配置されることを特徴とする請求項1記載の開閉体装置の防火構造。
- 前記箱体は、垂直な本体板と該本体板の上下端から水平に平行となり前記不燃材の厚みと同等の長さで突出する枠片とでコ字状に形成される一方の収容体と、該一方の収容体と同形状に形成され上下に枠片を有する他方の収容体とで構成され、前記一方の収容体の上下枠片のそれぞれ外側面に前記他方の収容体の上下枠片をそれぞれ重ねて前記一方の収容体と前記他方の収容体とで角筒状空間を形成し、該角筒状空間内に前記不燃材が収容されることを特徴とする請求項2記載の開閉体装置の防火構造。
- 前記不燃材の内側面に対して前記ベース板が室内側に離間して配置されることにより前記不燃材と前記ベース板との間に空間部が形成されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の開閉体装置の防火構造。
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