JP7431493B1 - 楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法及びnc切断機による同穿孔切断方法 - Google Patents

楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法及びnc切断機による同穿孔切断方法 Download PDF

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Abstract

【課題】傾斜貫通孔の切断中は、切断トーチの方向は、常に傾斜貫通孔の傾斜方向となるようにして、精緻な穿孔を可能とし、どのようなサイズの傾斜貫通孔も穿孔できる楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法を提供する。【解決手段】(1)穿孔を想定する楕円内に楕円短径と平行な任意位置で開先を開始するステップと、(2)当該任意位置からピアシングR半円上でトーチ進行反対位置まで切断トーチを垂直で開先を行うステップと、(3)当該位置から切断角度を傾斜貫通孔の傾斜角度にて、ピアシングR半円に沿って楕円短径位置まで切断するステップと、(4)トーチの傾斜角度を傾斜貫通孔の傾斜角度で楕円の全周に沿って開先を行うステップと、(5)楕円全周の開先後ピアシングR半円に沿ってピアシングR半円のトーチ進行側位置で開先を終了するステップとを有する楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法。【選択図】図1

Description

本発明は、楕円ホール、すなわち、傾斜貫通孔の穿孔切断方法及びNC切断機による同穿孔切断方法に関する。
被加工物に開先加工方法としては、例えば、特開平2-137692号公報に開示のものが知られている。特開平2-137692号公報の開示は、発明名称「開先加工方法および加工装置」に係り、「被加工材に両辺を同時に連続して開先加工する」ことを目的とする発明解決課題において(同公報明細書5頁11行~12行参照)、「被加工物に開先加工をする方法であって、多軸方向に移動可能な移動手段に、切断手段と、当該移動手段と切断手段とを制御する制御手段とが設けられ、前記移動手段と切断手段とを制御手段によって制御しつつ被加工物を切断し、変化する開先形状、又は一定の開先形状を連続的に加工する」ことにより(同公報)特許請求の範囲請求項1の記載等参照)、「開先形状が場所により異なっていても、移動手段と、切断手段とを制御手段によって制御しながら作業を続ければ、所望の開先形状を確実に得ることができ、また、・・・開先加工をする切断手段が、多軸方向に移動可能であり、かつ、制御手段を具備していることから、いかなる開先形状の加工でも対処でき、また、・・多方向からの開先加工が可能になり、よって、特に長尺物の被加工物の開先加工の際にこの被加工物に変形をきたすことなく、その2辺を同時に開先加工することができ、さらに、・・作業者は制御盤の操作を行う者のみでよく、作業の能率向上が図れる。」等の効果を奏するものである(同公報明細書12頁8行~13頁10行参照)。
図4及び図5は、特開平2-137692号公報に第4図及び第5図として添付される開示発明による開先加工装置の制御状態を示す図であり、図4は開先加工装置全体のフローチャート、図5は制御装置のフローチャートである。
図4、図5において、符号106は、走行車、108、109、110、111は、横移動台、116は、上下動軸、119は、回転移動台、121は、切断トーチ、141は、判断回路、142、143、144、145、146は、制御回路、150は、操作盤である(なお、符号は、先行技術であることを明らかにするために、本願出願人において、3桁に変更して説明した。)
しかしながら、特開平2-137692号公報の開示は、「長尺物を長手方向に沿って開先加工する場合に利用される開先加工方法および加工装置」であって(同公報明細書産業上の利用分野参照)、傾斜貫通孔(楕円ホール)の開先切断に適用することはできない。
ここに、楕円ホール(傾斜貫通孔)とは、鋼板上に斜めに貫通するパイプ(パイプ断面が真円)の孔をいい、本明細書において使用する「切断」、「開先」、「開先切断」及び「穿孔」の用語は、ほとんど同じ意味で使用している。なお、「開先」とは、「パイプ等について母材と必要な溶込みを得るために溶接の前にパイプ等と母材との間に設けられる溝状の窪み」をいうもののようであるが(https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure/welding/trouble/groove.jsp#:~:text=%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E3%81%A8%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%96%E3%83%AB-,%E9%96%8B%E5%85%88%E3%81%A8%E3%81%AF,%E5%85%88%E6%BA%B6%E6%8E%A5%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82&text=%E9%96%8B%E5%85%88%E6%BA%B6%E6%8E%A5%E3%81%AF%E3%80%81%E6%AF%8D,%E3%81%A7%E3%81%AF%E4%B8%8D%E5%8F%AF%E6%AC%A0%E3%81%AA%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82)、本明細書においては、この用語とは異なる意味で使用しており、これらの、「開先」、「切断」、「穿孔」等は、切断トーチによる切断を意味する。
ここで切断トーチに関して、「トーチの進行方向」とは、切断線又はマーキン線(罫書線)として示される切断の際のトーチの切断のための進行方向をいい、この際のトーチの傾く角度を「開先角度」という。製品側に倒れる時はプラスの角度、その逆側に倒れる時はマイナスの角度として示す。
図6は、従来の楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法の概略を示す図であり、所定径のパイプ用の30度傾斜の貫通孔を設ける概略を示す図である。
図6において、符号160は、母材、161は、貫通すべきパイプ、162は、傾斜貫通孔であり、図6に示す傾斜貫通孔162は、半径98mmのパイプ161を30度傾斜、パイプを通すための隙間を2mmとすると、当該傾斜貫通孔162の切断形状は、図7に示すように楕円ホール形状となる(以下、傾斜貫通孔162を「楕円ホール」とも称するが両者は同じものである。)。
図7は、半径98mmのパイプ161を30度傾斜、パイプを通すための隙間を2mmとすると、その傾斜貫通孔162の切断表面形状は、図7に示す楕円状の形状(楕円ホール形状)を呈し、短径(図7の(a)と(c))200mm、長径(図7の(b)と(d))230.94mmの楕円ホール形状となることを示している。
なお、図7に示すような半径98mmパイプの30度傾斜の楕円ホールは、図6に示すように、両長径端面は、30度傾斜であるが、両短径端は、垂直(以下「0度」として示す。)となり、短径から長径、長径から短径等、最大傾斜30度から0度に連続した傾斜の変化となる。
図7に示すような傾斜貫通孔の楕円ホールの開先切断については、形成される円弧(線分)を細かく分割し、少しずつ開先角度(切断角度)を変更させながら切断する必要があった。しかし、その開先角度ごとに分割すること自体が容易ではなく、かなりの手間が掛かるという問題がある。
図8は、楕円ホールに対する開先角度を1度ずつ変更させながら切断する従来の楕円ホール開先切断の概略を示す図である。
ここに開先角度(切断角度)変更とは、切断トーチ(熱切断(熱を用い、材料を局部的に溶融又は燃焼して切断する)の溶接・切断機器)を用いて、その母材との接触角度を変更して切断することを意味する。すなわち、トーチ先端からガス炎、ガスシールドアーク、プラズマアーク、レーザーなどを放出しつつトーチ角度を変更することによって所望する形状の切断を実現するというものである。
図8において、示される楕円は、傾斜貫通孔を穿孔するための母材の鋼板面にケガキ等で示される楕円であり、傾斜貫通孔を穿孔するには、この楕円に沿って所定の傾斜角度で切断を敢行することとなる。
図8において、符号(a)は、楕円の短軸の終点を、(b)は、楕円の長軸の終点を、(c)は、楕円の短軸の始点を、(d)は、楕円の長軸の始点を示し、A1~A30は、反時計回りで(a)~(b)までの回転四分の一位置まで開先角度0度~30度まで開先角度を1度ずつ変更させている範囲の内、5の倍数角度の範囲を、A29~A1は、反時計回りで(b)~(c)まで開先角度30度から0度まで開先角度を1度ずつ変更させる5度分割位置を、B5~B30は、同反時計回りで(c)~(d)までのトーチの0度から30度まで開先角度を1度ずつ変更させる5度分割位置を、B29~B5は、同反時計回りで(d)~(a)までを30度から0度まで1度ずつ開先角度を変更させる5度分割位置を示している。
すなわち、図8は、開始点(a)から(b)まで開先角度0度~30度まで開先角度(切断角度)を1度ずつ変更しつつ切断を敢行し、ついで、(b)~(c)まで開先角度(切断角度)30度~0度まで1度ずつ変更させて開先切断を敢行し、(c)~(d)まで開先角度0度~-30度まで1度ずつ変更させて開先切断を敢行し、(d)~(a)まで開先切断角度-30度~0度まで1度ずつ変更させて楕円周の全周に渡り開先切断を敢行して楕円ホールを穿孔する例を示している。
しかしながら、図8に示す例における実際の穿孔においては、母材である鋼板を穿孔する切断トーチの開先方向は、楕円周に沿ったトーチの進行方向に対して、常に垂直となるようにしておかなければならないという問題がある。
図9は、楕円ホールの切断線上の任意点における鋼板上面の端点(TP1)から鋼板下面の端点(TP2)に向かう方向を(矢先が開いている)矢印で表した図である。この矢印の方向は、トーチの開先方向を示し、その長さは開先角度の絶対値に比例して長くなること示している。また、一部の点に対して、切断トーチの進行方向を(矢先が塗りつぶされている)矢印で表している。
ところが、図9に示す穿孔方法(切断方法)においても穿孔面に凹凸が生じる等、精緻な穿孔ができない恐れがあるし、穿孔する傾斜貫通孔のサイズによっては穿孔できないという問題等があち、また、場合によっては、仕上がりも精緻を欠く等の問題もある。
これは、一般的なパイプ(円柱)の直径は50mm~700mm程度であり、貫通させる板(鋼板)となす角度は30度~45度と仮定する。それらを貫通させるための楕円ホール(傾斜貫通孔)の全周の長さは最大で2674mmとなり、開先角度を1度変更させるために必要な距離(長さ)が25mmで、合計180回の角度変更をさせるには4500mmの長さが必要となるからである。
つまり、この場合、鋼板上面に出来る楕円と鋼板下面にできる楕円の外側になる部分を繋げた切断線(A)を作成する、又はそれぞれの内側になる部分を繋げた切断線(B)を作成する、さらには、開先角度を5度ずつや10度ずつの変更として、開先角度の変更回数を抑えることで暫定の開先切断を行うための切断線(C)を作成しなければならないこととなり、(A)の場合は、現場にて余分に切断した部分を埋める(溶接する)作業が発生し、(B)の場合は、現場にて手切りによる開先を取るための切断作業が発生し、(C)の場合も開先角度を大きめや小さめ、中間のいずれに設定するかにより現場での作業内容が変わってくるが上述作業のいずれか、または、組み合わせた作業が発生する等の不都合が生じる。
特開平2-137692号公報
そこで、本願発明は、切断トーチの火の出る方向も開先角度も貫通させるパイプに沿わせて切断できれば目的とする貫通孔となるという発想から次のような方法に至ったものである。すなわち、傾斜貫通孔の切断中は、楕円周に沿った切断トーチの進行方向に対して、切断トーチの開先方向が常に垂直となるように切断することを止めて、切断トーチの火の出る方向(トーチの傾斜角度)が、常に傾斜貫通孔の傾斜方向となるようにすることにより、精緻な穿孔を可能とし、開先角度の変更しなくてもどのようなサイズの傾斜貫通孔も穿孔できる楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本願請求項1に係る発明は、楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法において、(1)穿孔する鋼板表面に想定される楕円に対し、楕円内に楕円短径からピアシングR半径の距離にある平行な直線上にある任意位置を基点として開先切断を開始するステップと、(2)楕円内に楕円短径と平行に前記任意位置からピアシングR半円のトーチ進行の反対側の位置まで切断トーチの傾斜角度を垂直(0度)で開先切断を行うステップと、(3)ピアシングR半円のトーチ進行の反対側の位置からトーチ開先角度(切断角度)を傾斜貫通孔の傾斜角度にて、ピアシングR半円に沿って楕円短径位置まで切断するステップと、(4)トーチの傾斜角度を傾斜貫通孔の傾斜角度を維持したまま、楕円の全周に沿って、開先(切断)を行うステップと、(5)楕円全周に沿った開先(切断)後ピアシングR半円に沿ってピアシングR半円のトーチ進行側の位置で開先(切断)を終了するステップと、を有することを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は、NC切断機における楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法であって、(1)ないし(5)のステップをNC切断機で行うことを特徴とする請求項1に記載の楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法において、ステップ(4)が、NC切断機の「トーチ旋回」を「OFF」にしてトーチの傾斜角度を傾斜貫通孔の傾斜角度を維持したまま、楕円の全周に沿って、開先(切断)を行うステップであることを特徴とする。
開先角度を細かく分割して指示する必要がなく、線分や円弧の長さも気にせずに傾斜貫通孔を穿孔でき、NC開先切断においても、精緻で、かつサイズに係わらない傾斜貫通孔の穿孔が可能となる。このことは、穿孔後の現場での手切り作業がほとんど発生しないことを意味し、設計、現場作業時間を削減できるという実際上の効果を奏する。
図1は、本発明に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法を実施するための実施例1を示す図であり、傾斜30度の傾斜貫通孔を穿孔するために楕円周に沿ってトーチを時計回りに進行させる例を示す図である。 図2は、本実施例1に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法におけるトーチの傾斜角度と傾斜貫通孔の傾斜角度が一致して、楕円全周に渡り開先(切断)が敢行される概略を示す模式図である。 図3は、実施例1に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法をNC切断機で楕円ホール開先切断する際の要点のみを示すNCデータ抜粋である。 図4は、特開平2-137692号公報に第4図として添付される開示発明による開先加工装置の開先加工装置全体のフローチャートである。 図5は、特開平2-137692号公報に第5図として添付される開示発明による制御装置のフローチャートである。 図6は、楕円ホール(傾斜貫通孔)の概略を示す図であり、所定径のパイプ用の30度傾斜の貫通孔を設ける概略を示す図である。 図7は、半径98mmのパイプ161を30度傾斜、パイプを通すための隙間を2mmとすると、その傾斜貫通孔162の切断形状は、図7に示す楕円ホール形状を呈し、短径(図7の(a)と(c))200mm、長径(図7の(b)と(d))230.94mmの楕円ホール形状となることを示す図である。 図8は、楕円ホール開先角度を1度ずつ変更させながら切断する従来の楕円ホール開先切断の概略を示す図である。 図9は、楕円ホール形成の切断トーチは、楕円周に沿ったトーチの進行方向に対して、常に垂直となる切断トーチの開先方向の概略を示す図である。
本発明に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法を実施するための形態として一実施例を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法を実施するための実施例1を示す図であり、傾斜30度の傾斜貫通孔を穿孔するために楕円周に沿ってトーチを時計回りに進行させる例を示す図である。
図1において、符号αは、傾斜貫通孔穿孔のための鋼板面(表面)に想定される楕円を示し、βは、その中心、矢印は、楕円周に沿ったトーチ進行方向を示す。
また、符号(A)は、楕円短径の終点、(B)は、楕円長径の終点、(C)は、楕円短径の始点、(D)は、楕円長径の始点であり、楕円短径の終点(A)で楕円に内接する半円は、穿孔する楕円短径((A)-(C)間)の四分の一の半径R(ピアシングR)を示す(以下、「ピアシングR半円」とも称する。)ここに、ピアシングとは、切断開始位置をいい、ピアシング位置は、製品の切断線をそのまま切断作業に入ると、切断箇所の周囲に溶け落ちが発生し、綺麗な切断形状とすることができないなど理由で、その対策として、製品の切断形状に影響を与えない位置をピアシング位置として考慮された位置である。
なお、本実施例1に楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法においては、「ピアシングR」を楕円短径((A)-(C)間)の四分の一以下となる半径R(通常は10~30mm程度の半径とするが、楕円短径の四分の一と比較して小さい方を採用する)としている。上述する製品への影響を考慮したものである。
したがって、符号(E)は、当該ピアシングR半円のトーチ進行の反対側の位置、(F)は、当該事後切断を行うためのピアシングR四分の一円弧の終点位置、(G)は、(E)を通るピアシングR四分の一円弧の接線上を楕円短径の始点(C)側へ所定の距離D1(通常は10mm程度)だけ移動した位置、(H)は、(G)と同様にさらにD1だけ移動した位置、(I)は、(E)と(G)の中点位置としている。ここで、(E)を通る円弧の接線は楕円短径と平行になっており、また、楕円長径と垂直になっている。
すなわち、本実施例1に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法においては、図1に示される楕円αに対し、楕円内に楕円短径と平行な任意位置(G)を基点として、開先切断を開始し、当該楕円短径と平行な任意位置(G)において、当初、トーチの傾斜角度は垂直(0度)で開先切断を敢行し、ピアシングR半円のトーチ進行の反対側の位置(E)まで開先角度垂直(0度)で開先切断を敢行することを示すものである。
次に、開先角度=0度の状態で切幅補正を行い、(G)から(I)、(I)から(E)へと移動(空送り)する時に、トーチ角度(=0度)とし、次いで、当該事前切断を行うためのピアシングR四分の一円弧の始点位置(E)を起点として、開先切断を開始する。さらに、この位置(E)において、トーチ開先角度(切断角度)を傾斜貫通孔の傾斜角度30度にして、ピアシングR四分の一円弧に沿って楕円短径の終点(A)まで切断を敢行する。
その後、トーチの傾斜角度を傾斜貫通孔の傾斜角度である30度を維持したまま、楕円αの全周に沿って、楕円短径の終点(A)-楕円長径の終点(B)-楕円短径の始点(C)-楕円長径の始点(D)-楕円短径の終点(A)の開先切断を敢行する。
次いで、楕円全周に沿った開先切断後、当該事後切断を行うためのピアシングR四分の一円弧に沿ってその円弧の終点位置(F)で開先切断を終了し、所定の傾斜角(30度)楕円ホール(傾斜貫通孔)が形成される。
次に、図2に、トーチ開先角度(切断角度)を傾斜貫通孔の傾斜角度にすることの概念を示す。
図2は、本実施例1に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法におけるトーチの傾斜角度と傾斜貫通孔の傾斜角度が一致して、楕円全周に渡り開先切断が敢行される概略を示す模式図であり、図2において、符号1は、貫通すべきパイプ、2a~2cは、貫通孔の傾斜方向に傾斜するトーチの火の出る方向であるトーチ傾斜角度であり、3は、トーチの開先切断進行方向を示す。
図1及び図2に示すような楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法とすることにより、適切な切断形状となる。
すなわち、本実施例1に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法では、トーチの開先角度を細かく変更させる必要がなく、また、開先切断する楕円の線分や円弧の長さに関係なく、楕円ホール開先切断が可能となるので、楕円ホール開先切断の設計作業の効率が向上することとなる。
また、仕上がりも精緻な傾斜貫通孔とすることができるので、穿孔(開先切断)後の現場での(手切り)作業もほとんど必要とせず、この点でも効率化が図れる。
上述する実施例1に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法を説明したが、本発明に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法は、NC切断機に適用することにより極めて容易に楕円ホール(傾斜貫通孔)の切断(開先切断)が可能となる。なお、NC切断機としては、小池酸素工業製UNITEX-10000Z/11000D、プラズマ切断装置:Super400Plus/Super400Pro2などにNC制御装置形式:FANUC Series-30iを使用することを前提に説明する。
楕円ホール(傾斜貫通孔)を従来のNC開先切断に適用した場合、次のような問題がある。
(1)開先角度ごとに細かく分割してデータを作成することに手間がかかる。
(2)開先角度ごとに細かく分割すると、各線分の長さが開先変化させるために必要な条件(長さ)を満たさない(精度的に不安定)場合が多い。結果的に5~10度ピッチでまとめたり、開先ナシで切断したりする必要がある。
(3)上記の理由により実質的に適切なNC開先切断が出来ないため、現場での手切り作業が発生する。
これは、NC切断機においては、開先角度変化のために必要な距離(線群の長さ)を開先角度変化1度当たり25mm以上確保する必要があるなどからである。
そこで、上述する実施例1に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法をNC切断機に適用するに際して、本実施例2に係るNC切断機による楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法によれば、これらの問題点を容易に解消することができ、かつ次のようなメリットがある。
(1)トーチの開先角度を細かく設定する(変化させる)必要がない。このことは、楕円ホール(傾斜貫通孔)の設計作業(すなわち、図面指示)が容易となる。
(2)施工所等の設計上の取り決めとして開先角度を1度ピッチで設定している場合には、従来手法で1度ピッチの開先角度を設定した場合、1度限りでピッチで変化させた場合と比較して切断形状に差が発生し、切断後に現場での調整(手切り)が必要となることがあるが、上述する実施例1に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法をNC開先切断に適用することにより、このような差は発生せず、また、短い線分上で開先変化を行うために必要な考慮を講ずることがなく、また、このため、切断線(切断のピッチ間隔)を細かく分割する必要がない。
これは、開先角度を貫通させるパイプの傾斜角度に設定するだけでよいため、開先角度を変更させる必要がなく、開先角度を変化させるために必要な線分や円弧の長さを考慮する必要もない。また、開先角度を計算したり設定したりする必要がないため、切断線を細かく分割する必要がない等のメリットがあることとなる。
(3)一般的NC切断機においては、楕円ホール(傾斜貫通孔)の開先切断に対して、楕円ホールのサイズは、開先角度の変化を行うために必要な長さを開先角度ごとに満たせるだけの全周長であるサイズでなければならないが、上述する実施例1に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法を適用することにより、このような制限を受けることがなく、楕円ホールの開先に対するサイズ制限はほぼなくなる。
本実施例2に係るNC切断機による楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法について、より詳しく説明すれば、次のようにいうことができる。
NC切断機の仕様制限から開先変化を行うために必要な長さ、例えば、板厚にもよるが、板厚20mm以上の場合、1 度ピッチごとの開先角度を設定してNC開先切断することは実際上不可能であるが、上述する実施例1に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法をNC開先切断に適用することにより、開先設定は1か所だけで済み、全ての楕円ホール切断を実現できることとなる。
例えば、NC切断機におけるNC切断可能な真円ホールは、直径25mm以上である必要があるが、上述する実施例1に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法をNC開先切断に適用することにより、直径25mm以下の真円ホールの開先も可能であり、楕円ホール開先においても、開先サイズに対する制限は解消することとなる。
また、NC切断機の仕様制限から開先変化を行うために必要な長さ(切断速度にもよるが、50~200mmの距離で開先角度変化量2度以内を推奨されているため、開先角度変化1度当たり25mm以上は必要と言える)が規定されており、仮にパイプの傾斜角度を10度とすると、パイプの半径が160mm以上でなければ全周長が1000mm(25mmx40分割)とならない。つまり、パイプの半径が50mm以下となると傾斜角度が3度以上で適用不可能となり、楕円ホールをNC開先切断することは実際上不可能である。
そこで、上述する実施例1に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法をNC切断機に適用することにより、トーチの傾斜角度(開先角度)は1回設定すれば良いだけとなり、つまり、開先角度変化がなくなるため、真円として切断可能なサイズである直径25mm以上のサイズであれば、楕円ホールは切断可能となり(それ以下の楕円ホールはほぼ存在しない)、実際上サイズの制限は解消することとなる。
図3は、本実施例2に係るNC切断機による楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法の要点のみを示すNCデータ抜粋であり、NC切断機の切断開始状態を示している。
なお、図3に示す例においては、プラズマトーチの制御方式としては、トーチの角度設定であるSコード、切幅補正を行うコードであるDコードによるSD方式を採用している。Sコードと旋回で制御するためである。
図3において、M71は、「トーチ原点復帰」、M45は、「初期高さ設定」を示す。また、M25は、「トーチ旋回ON」である。
ここで、「トーチの旋回」とは、NC切断機のトーチの進行方向に対して、トーチの「開先方向」を常に垂直に保つようにトーチのヘッドを旋回(回転)させること、すなわち、NC切断機におけるトーチが一箇所だけの当接を防ぐためにトーチ先が旋回(トーチ先が所定角度で360度グルグル回る状態)することをいい、NC切断機における開先切断を行う場合、切断開始の際には原則として「トーチの旋回」を「ON」(トーチ先が所定角度で360度グルグル回る状態)にしておき、NC切断機において、「トーチ旋回ON」とすることにより、トーチの移動方向に対して常に垂直となるように追従することができることとなる。すなわち、図1に示す例で説明すれば、楕円内の楕円短径と平行な任意位置(H)で「トーチの旋回」を「ON」にし、(G)まで移動(空送り)させることでトーチの開先方向が楕円短径と垂直になり、楕円長径の始点から終点に向かう方向になる。
そして、M26は、「トーチ旋回OFF」、すなわち、上述するトーチ先端の旋回を停止させ、図3に示すように、図1に示すピアシングR半円のトーチ進行の反対側の位置(G)において、NC切断機のトーチの旋回を停止させて、トーチの火の出る方向(トーチの傾斜角度)が固定される。つまり、「トーチの旋回」を「OFF」にする((G)に到達後)ことにより、トーチの開先方向が、トーチの進行に追従しないで、開先方向が変化しない、常に一定の角度を保つこととなるのである。
すなわち、M07は、「プラズマピアシングスタート」、すなわち、プラズマ等を発生させて実際の切断工程に入ることを、M26では、図1に示すピアシングR半円のトーチ進行の反対側の位置(E)での「トーチ旋回OFF」状態で、同位置(E)で、M07のコードを入力することで、トーチの開先角度を傾斜貫通孔の傾斜角度に設定することを、S1300は、位置(E)からのピアシングR四分の一円弧の切断中にトーチの開先角度を貫通させるべきパイプの傾斜角度となることを意味する。
図3に示すように、実施例1に係る楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法をNC切断機上で敢行する本実施例2に係るNC切断機による楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法とすることにより、NC切断機のトーチ旋回をOFFにして楕円形状から求めた開先角度を一回設定するだけで、その状態で楕円形状に沿ってNC開先切断することができ、傾斜貫通孔の開先(穿孔)について、適切な切断形状の穿孔とすることができる。
また、本実施例2に係るNC切断機による楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法によれば、開先角度を細かく変化させる必要がないので、設計作業(データ作成)に時間を要せず、また、開先変化が無いため、切断機仕様に関する開先角度を変化させるために必要な線分の長さを気にする必要がなく、この点でも作業時間短縮等となり便宜であるなど一層の効果がある。
すなわち、NC切断機に入力されたデジタル図面からNC切断機が開先に必要な「楕円」を認識し、開先に必要なNCデータを作成するので、NC切断機側において、新たに設定変更等をする必要はなく、このことは、NC切断機のトーチ旋回をOFFにすること(M26)だけで(つまり、上記で説明した内容がNCデータとして反映され、NC切断機が保有する既存のNCデータ出力用プログラムに盛り込まれる)、穿孔する傾斜貫通孔の楕円形状から求めた開先角度を一箇所だけ設定したNCデータを作成することができ、そのデータ通りにNC切断機が開先切断を行い、NCデータ通りに切断できることとなり省力化の効果は著しい。
本発明は、楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法に利用される。
1 傾斜貫通孔
2a~2c トーチ
3 トーチの開先(切断)進行方向
106 走行車
108、109、110、111 横移動台
116 上下動軸
119 回転移動台
121 切断トーチ
141 判断回路
142、143、144、145、146 制御回路
150 操作盤
160 製品(部材)
161 貫通すべきパイプ
162 傾斜貫通孔
α 楕円
β 楕円中心
(A) 楕円短径位置
(B) 楕円長径位置
(C) 楕円短径他方位置
(D) 楕円長径他方位置
(E) 当該ピアシングR半円のトーチ進行の反対側の位置
(F) ピアシングR半円のトーチ進行側の位置
(G) ピアシング位置
(H) さらにD1だけ移動した位置

Claims (2)

  1. (1)穿孔する鋼板表面に想定される楕円に対し、楕円内に楕円短径からピアシングR半径の距離にある平行な直線上にある任意位置を基点として開先切断を開始するステップと、
    (2)楕円内に楕円短径と平行に前記任意位置からピアシングR半円のトーチ進行の反対側の位置まで切断トーチの傾斜角度を垂直(0度)で開先切断を行うステップと、
    (3)ピアシングR半円のトーチ進行の反対側の位置からトーチ開先角度(切断角度)を傾斜貫通孔の傾斜角度にて、ピアシングR半円に沿って楕円短径位置まで切断するステップと、
    (4)トーチの傾斜角度を傾斜貫通孔の傾斜角度を維持したまま、楕円の全周に沿って、開先(切断)を行うステップと、
    (5)楕円全周に沿った開先(切断)後ピアシングR半円に沿ってピアシングR半円のトーチ進行側の位置で開先(切断)を終了するステップと、
    を有することを特徴とする楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法。
  2. (1)ないし(5)のステップをNC切断機で行うことを特徴とする請求項1に記載の楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法において、ステップ(4)が、NC切断機の「トーチ旋回」を「OFF」にしてトーチの傾斜角度を傾斜貫通孔の傾斜角度を維持したまま、楕円の全周に沿って、開先(切断)を行うステップであることを特徴とするNC切断機における楕円ホール(傾斜貫通孔)の穿孔切断方法。
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