JP7430908B2 - 水素透過検出のための試料及びその製造方法 - Google Patents

水素透過検出のための試料及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、板状の試料の背面から透過した水素原子あるいは当該試料の材料内部から湧出した水素原子を走査型電子顕微鏡の走査電子により励起させて水素イオンを電子遷移誘起脱離法によって脱離し、走査型電子顕微鏡の電子線の走査に同期して該脱離した水素イオンのESD像を取得する、水素透過検出のための試料及びその製造方法に関するものである。
従来、このような水素透過検出のためには、例えば特許文献1に開示されている水素透過拡散経路観測装置が使用される。水素透過拡散経路観測装置は、走査型電子顕微鏡と、分析室と、試料が装着される隔膜型真空容器と、隔膜型真空容器に接続されて試料の裏面側に水素を供給する水素配管等を備えている。試料は、分析室と隔膜型真空容器の水素を収容する中空部とを仕切る隔膜となる。試料の表面から湧出する水素が、走査型電子顕微鏡像(Scanning Electron Microscope 像、以下、SEM像という)を取得する電子線により励起されて水素イオンとなり、この水素イオンによるESD(Electron Stimulated Desorption)像が、SEM像と共に取得される。
ところで、このような水素透過拡散経路観測装置によれば、図10に示すように、試料117の表面に、局所的な酸化物等の絶縁領域117a及び117bが存在すると、当該絶縁領域117a,117bが局所的にマイナスに帯電して、所謂チャージアップが発生する。このチャージアップの影響によって、当該絶縁領域117a,117bのチャージアップ発生エリアにおいて、電子照射の際に電子が接近しにくくなるため、試料117の表面全体における電子照射密度が不均一になってしまう。従って、このような局所的な絶縁領域117a,117bを有する試料117に関して水素透過検出を行なうためにESD像を取得した場合、図11に示すように、絶縁領域117a,117bの領域に関してチャージアップによって電子の照射密度が低くなってしまう。そのため、当該領域では水素量が少なく計測されてしまう、即ちESD像では白く飛んでしまったり、黒くなって画像が見えなくなったり、あるいは像の歪みが発生することがある。
これに対して、一般的な電子顕微鏡においては、チャージアップしやすい絶縁体やプラスチックの表面にプラスイオンを照射して中性化する手法や、絶縁体やプラスチック自体の測定を行なう場合には表面に薄いカーボンや金属の薄膜をコーティングしてチャージアップの発生を抑制する手法が知られている(非特許文献1及び2参照)。さらに、試料帯電除去装置(特許文献2参照)も知られている。
特開2017-187457号公報 特開2010-173525号公報
渡邊俊哉、「走査電子顕微鏡の原理と応用(観察、分析)」、精密工学会誌, Vol.77, No.11, pp.1021-1026, 2011 日本電子株式会社ホームページ、https://www.jeol.co.jp/words/semterms/a-z_09.pdf
しかしながら、二次電子の測定を行なう場合に、カーボンや金属の薄膜を試料表面にコーティングすることはチャージアップの発生を抑止するために有効ではあるが、水素イオンの測定を行なう場合には水素イオンの透過を妨げるおそれがあることから、このようなカーボンや金属の薄膜は、水素イオンの透過には必ずしも有効ではない。
本発明は、以上の点に鑑み、確実にチャージアップの発生を抑止することができるようにした水素透過検出のための試料及びその製造方法を提供することを目的としている。
上記目的は、本発明の第一の構成によれば、板状の試料の背面から透過した水素原子あるいは当該試料の材料内部から湧出した水素原子を、走査型電子顕微鏡の走査電子により電子遷移誘起で励起させて水素イオンを脱離させ、脱離した水素イオンのESD像を、走査型電子顕微鏡の電子線の走査に同期して取得する水素透過検出のための試料であって、表面領域に局所的に形成された絶縁領域が存在する試料本体と、試料本体の絶縁領域を含む表面全体に亘って配設された水素透過性を備え導電性薄膜と、を備え、導電性薄膜が、試料の表面との間で相互拡散を生じない材料から構成されている、水素透過検出のための試料により達成される。
上記構成によれば、試料の表面に水素透過性を有する導電性薄膜が配設されているので、当該試料を水素透過検出のために走査型電子顕微鏡の走査電子により電子遷移誘起で励起させる際、当該試料の絶縁領域に被覆された導電性薄膜によって、電子が蓄積しようとしても導電性薄膜に沿って移動する。よって、当該絶縁領域が帯電して所謂チャージアップが発生することがなく、上述した電子遷移誘起で励起された水素イオンがチャージアップの影響を受けることなく脱離する。また、試料の表面に特定の導電性薄膜を配設することにより、導電性薄膜と試料の表面との間に相互拡散を生じないので、水素透過検出を行なうべき試料の表面が変化してしまうことがなく、正確な水素透過検出を行なうことができる。
本発明の水素透過検出のための試料は、好ましくは、導電性薄膜が、パラジウム,バナジウム,ニオブ,タンタル,チタン,銀又はこれらの合金の何れかから構成されている。これらのパラジウム,バナジウム,ニオブ,タンタル,チタン,銀又はこれらの合金は、何れも水素透過性を備えることが知られており、所謂水素フィルタとしても使用されているので、本発明における水素透過性を備えた導電性薄膜として使用することができる。
なお、上記試料によって検出される水素原子は、該導電性薄膜に至るまでの透過経路の履歴を情報として記憶していることから、導電性薄膜がこれらの材料から構成されることにより、水素原子が導電性薄膜を透過する際に、これらの履歴情報が消されることはなく、チャージアップの影響のみを排除することが可能である。
本発明による水素透過検出のための試料は、好ましくは、試料本体は、鉄鋼、ステンレス鋼及びSi基板の何れかの材料からなる。
本発明による水素透過検出のための試料は、好ましくは、導電性薄膜が均一の膜厚を有している。試料の表面全体に均一な膜厚の導電性薄膜を配設することにより、試料の電子遷移誘起による水素透過検出を、試料の表面全体に亘って均一に且つ正確に行なうことができる。
前記導電性薄膜が、走査型電子顕微鏡の空間分解能と同程度以下の膜厚を有していることにより、導電性薄膜内での水素原子の水平方向の移動が空間分解能以下に抑制される。従って、導電性薄膜の存在による空間分解能への影響が抑制されるので、電子遷移誘起で励起され脱離する水素イオンの位置を、走査型電子顕微鏡の空間分解能と同程度の精度で計測することができる。
本発明の第二の構成によれば、試料表面上に蒸着により導電性薄膜を形成する、前述した水素透過検出のための試料の製造方法により達成される。
好ましくは、導電性薄膜は、真空蒸着法又は電子ビーム蒸着法により形成される。あるいは、導電性薄膜は、前記試料の表面を損傷しない程度にスパッタリング法により形成されてもよい。
これらの構成によれば、導電性薄膜が、試料の表面に対して蒸着、特に真空蒸着法又は電子ビーム蒸着法、あるいはスパッタリング法により、正確な膜厚で均一に形成される。スパッタリング法の場合には、試料の表面を損傷しない程度のスパッタリングにより導電性薄膜を形成することによって、試料の表面が変化してしまうようなことがなく、正確な水素透過検出を行なうことができる。
本発明によれば、確実にチャージアップの発生を抑止することができるようにした水素透過検出のための試料及びその製造方法を提供することができる。
本発明による水素透過検出のための試料の一実施形態の構成を示す拡大断面図である。 本発明の実施形態における水素ガス透過拡散経路観測装置の構成を模式的に示す図である。 分析室内の水素イオン検出部の構造と試料ホルダーの装着構造等を示す部分拡大図である。 図1の試料を水素透過検出するための装置の制御部の構成を示すブロック図である。 図1の試料を水素透過検出するための装置の電子衝撃脱離全体制御部の構成を示すブロック図である。 電子線の走査とESD像の二次元計測との関係を示す模式図である。 電子線の走査により二次元のESD像を計測するフロー図である。 水素透過検出により得た図1の試料のESD像の一例を示す図である。 図1の試料をさらに拡大した断面図であり、導電性薄膜の膜厚と水素の縦方向及び横方向の移動との関係を説明する図である。 従来の装置で使用される試料の構成を示す拡大断面図である。 図10の試料の水素透過検出により得られたESD像の一例を示す図である。
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明による水素透過検出のための試料40(以下、試料という)の一実施形態の構成を示している。図1に示すように、試料40は、試料本体41と、試料本体41の表面領域に局所的に配設された酸化物等による絶縁領域、例えば絶縁領域42及び43と、試料40の絶縁領域42及び43を含む表面全体に亘って配設された水素透過性を備えた導電性薄膜44と、を備えている。
試料本体41は、表面領域に局所的に配設された絶縁領域42(43)を備えているが、絶縁領域の数は一つでもよく、数量に制限はない。また、異なる絶縁領域42及び43の厚さは同じでも異なっていてもよい。導電性薄膜44は、試料本体41の表面領域に局所的に配設された酸化物によるチャージアップを防止するために設けた層である。
試料本体41は、例えば鉄鋼,ステンレス鋼、Si基板等の材料から構成されており、板状の偏平な形状を有している。試料本体41の厚さは、例えば100μm~1000μm程度であり、多結晶又は単結晶でもよい。試料本体41の寸法は任意であるが、直径が例えば5mm~20mm程度としてもよい。試料本体41が多結晶の場合には、結晶粒が点欠陥よりも大きい粒径、例えば300μm~1000μm程度でもよい。逆に、試料本体41は、極端に小さく均一な寸法の微結晶で水素透過のない緻密な多結晶でもよい。
絶縁領域42及び43は、どのような絶縁材料から構成されてもよく、例えば試料本体41の表面に形成された酸化膜や窒化膜等の絶縁膜であってもよく、特に製造方法には依存しない。絶縁領域42及び43は、試料本体41に形成した絶縁膜でもよい。
試料40は、図9に示した試料117とほぼ同様の構成であるが、後述するように導電性薄膜44の構成が異なっている。
導電性薄膜44は水素透過性を有する導電性材料、好ましくは試料40の表面との間で相互拡散を生じない材料から構成される。相互拡散を生じないことによって、導電性薄膜44を配設しても、試料40の表面状態に影響を与えて変化させてしまうことがない。
試料40は、表面側の一部に絶縁領域42,43を含み、当該試料40の表面上に水素透過性を備えた導電性薄膜44が配設されている。水素透過性を備えた導電性材料としては、金属材料、例えばパラジウム,バナジウム,ニオブ,タンタル,チタン,銀や、これらの合金が好適である。さらに、金属材料は、上記材料以外にはジルコニウム等や上記の材料にジルコニウム等を加えたこれらの材料の合金を使用してもよい。これらの材料は高い水素透過性を備えており、従来から、所謂水素フィルタとして実用化されており、水素透過検出の際に水素イオンの透過を妨げるようなことはない。
ここで、導電性薄膜44は、本発明による水素透過検出のための試料の製造方法の実施形態によって、試料40の表面に対して化学堆積法(CVD法)や物理堆積法(PVD法)により成膜することができ、蒸着法、例えば真空蒸着法,電子ビーム蒸着法,スパッタリング法等の蒸着方法によって、試料40の表面に対するコーティング膜として形成される。なお、スパッタリング法の場合には、スパッタリングにより試料40の表面に衝突する粒子等によって、試料40の表面を損傷しない程度に導電性薄膜44の形成が行なわれる。これにより、試料40の表面状態が変化してしまわない。
さらに、導電性薄膜44は全体として均一の膜厚を有していると共に、その膜厚は例えば水素透過検出のために使用する走査型電子顕微鏡の空間分解能と同程度以下とする。例えば電子顕微鏡の空間分解能が50nm以下、より好ましくは10nm~20nm程度に選定されるとき、導電性薄膜44は、例えば数nmから20nm程度、好ましくは、2nmから10nmの膜厚を備えるように形成される。導電性薄膜44の膜厚を薄くする必要があるのは、実際の酸化膜42,43のサイズや位置と、酸化膜42,43を透過し導電性薄膜44を経由して表面に湧き出し、電子照射によってイオンとして脱離する水素の脱離位置がずれないようにするためである。逆に、導電性薄膜44の厚さが厚いと導電性薄膜44の中を水素が拡散し、縦の透過方向だけでなく横方向にも移動し、横方向の移動は面分解能を落とすことになるので、この横方向の移動を小さくするために、導電性薄膜の厚さも薄くする必要がある。導電性薄膜44の膜厚に関して、膜厚が厚すぎるとさらに水素透過性が低下してしまうと共に、導電性薄膜44内で水素イオンが水平方向に移動して分解能が低下してしまう。これに対して膜厚が薄すぎると、均一な膜厚の形成が困難であるので、上記の寸法とするのが好ましい。
本発明の水素透過検出のための試料40は以上のように構成されており、この試料40の水素透過検出を行なう場合について説明する。
図2は本発明の実施形態における水素ガス透過拡散経路観測装置10の構成を模式的に示す図であり、図3は分析室11内の水素イオン検出部20の構造と試料ホルダー12の装着構造等を示す部分拡大図である。図2に示すように、水素ガス透過拡散経路観測装置10は、走査型電子顕微鏡15を備え、この走査型電子顕微鏡15の分析室11内では、試料ホルダー12に上部に配設された試料40に電子線を照射する電子源16を備えている。さらに、分析室11には、分析室11で試料40に照射された電子線16aにより生じる二次電子を検出する二次電子検出器51と、電子源16から照射された電子線16aにより生じる水素イオンを検出する水素イオン検出部20と、試料40の裏面側に接続される水素配管14に水素を供給するガス供給部19と、制御部50と、を備えている。
試料40は、分析室11内で図示しない試料加熱部により加熱されてもよい。また、試料40は、試料ホルダー12の図示しない試料搭載部に固定、又は、溶接等により接着される。図3に示すように、試料40は、試料ホルダー12と共に走査型電子顕微鏡15の分析室11内に配置される。これにより、試料ホルダー12の中空部12aと分析室11との間が試料40により仕切られるので、試料40が分析室11と中空部12aとを仕切る隔膜となる。
水素イオン検出部20は、試料40の表面から生じる水素イオンを収集する収集機構21と、水素イオン以外を除去するイオンエネルギー分解部22と、イオンエネルギー分解部22を通過した水素イオンを検出するイオン検出部23と、から成る。
試料ホルダー12には、水素ガス供給部19から供給され試料ホルダー12の中空部12aの内部に存在する水素が、試料40の裏面側に接触していて、試料40の裏面側から内部に導入される。この水素は試料40の内部を拡散して、試料40の表側の表面に到達して試料40の表面から放出される。つまり、水素や重水素は試料40の裏面側から表面に透過する。この試料40の表面に到達した水素に電子線16aを照射することで、電子励起脱離(ESD)により試料40から水素イオンが脱離し、この水素イオンが収集機構21で集束されることにより水素イオン検出部20で検出される。
水素イオン検出部20では、ESD法により試料40の表面で発生する水素イオンを検出する。電子線16aの走査により検出した水素イオンによる二次元の像を、ESD像又はESDマップとも呼ぶ。
試料40の表面側の近傍には、脱離イオンを効率よく収集するための収集機構21が配設されている。図示の収集機構21は例えば金属線のメッシュからなり、グリッド構造のレンズである。収集機構21で収集した目的ガスのイオン、例えば水素イオンは水素イオン検出部20に入射する。イオンエネルギー分解部22では、例えば水素イオンを選別してイオン検出器23に入射させる。
イオンエネルギー分解部22は、イオン検出器23が試料40に直接対向しないように蓋形状を有する金属電極からなる。イオンエネルギー分解部22は、円筒形や円錐を含む形状の電極を用いることができる。イオンエネルギー分解部22は、円筒形の電極に適当な正電圧を印加し、電場により目的ガスのイオン、例えば水素イオンだけをイオン検出器23に導き、試料40に電子線16aが照射されて発生する光と電子を除去することができる。イオン検出器23は、例えばセラトロンや二次電子増倍管を用いることができる。
制御部50は、電子源16から照射する電子線16aの走査により試料40から発生する二次電子によるSEM像を取得し、且つ試料40の内部や表面の点欠陥部分より湧出する水素原子を、電子線の電子衝撃脱離(ESD)により水素イオン化して、水素イオンのESD像を電子線の走査に同期して取得する。
ここで、ESDは、材料から湧出して表面に滞在している水素原子に照射された電子が当たったとき、水素原子の中の電子が励起状態となり、あるいは剥ぎ取られて、水素原子がイオン化することにより表面に結合した状態から反結合状態になって脱離する現象で、ESD像はこの脱離した水素イオンを撮像して得られる。そして、制御部50により試料40のSEM像とESD像とを同期させることによって、検出した水素イオンの位置情報を得て、試料40の点欠陥の位置を検出することができる。
次に、水素ガス透過拡散経路観測装置10における制御部50の構成及び動作について、より詳細に説明する。
図4は制御部50のブロック図であり、図5は電子衝撃脱離全体制御部52の構成を示すブロック図であり、図6は電子源16の走査と、ESD像の二次元計測との関係を示す模式図である。図4に示すように、制御部50は、走査型電子顕微鏡15を制御する電子顕微鏡全体制御部51と、ESD像の取得をする電子衝撃脱離全体制御部52と、を含んで構成されている。制御部50は、電子顕微鏡全体制御部51の他には、試料40の走査型電子顕微鏡像(SEM像)取得するための二次電子検出部53と、電子光学系制御部54と、SEM用の画像演算部55と、高電圧安定化電源56と、入力装置57と、ディスプレイ58と、記憶装置59等から構成されている。電子顕微鏡全体制御部51は、二次電子検出部53と電子光学系制御部54とSEM用の画像演算部55と高電圧安定化電源56と記憶装置59とを制御するように構成されている。走査型電子顕微鏡15の分析室11内に配設される二次電子検出器18の出力は、二次電子検出部53に入力される。
次に、電子衝撃脱離全体制御部52について説明する。
図5に示すように、ESD像の取得を制御する電子衝撃脱離全体制御部52は、二次元のマルチチャンネルスケーラー60と、パルス係数部61と、同期制御部62と、測定信号の二次元平面への並べ替え部63と、マイクロプロセッサ72等から構成されている。分析室11内に配設される水素イオン検出部20の出力は、電子衝撃脱離イオン検出部67を介してその出力67aがパルス計数部61に入力される。電子衝撃脱離全体制御部52には電子光学系制御部54から走査信号が入力され、SEM像と同期して制御される。さらに、電子衝撃脱離全体制御部52には、ディスプレイ65と記憶装置66が接続されている。
マイクロプロセッサ72は、マイクロコントローラ等のマイコン,パーソナルコンピュータ,現場でプログラム可能なゲートアレイであるFPGA(Field-Programmable Gate Array)でもよい。
図4に示したように電子光学系制御部54から電子衝撃脱離全体制御部52に出力された走査信号は、図5に示す電子衝撃脱離全体制御部52の同期制御部62を介して垂直走査信号62aとして、電子源16の第一の偏向コイル16bに出力される。また、水平走査信号62bは同期制御部62から電子源16の第二の偏向コイル16cに出力される。さらに、同期制御部62から走査位置に関する情報62cがマイクロプロセッサ72に出力される。
パルス計数部61から出力される水素イオンのカウント数信号61aは、各走査位置の水素イオンのカウント数信号としてマイクロプロセッサ72に出力される。
マイクロプロセッサ72で生成されたESD像は、入出力インターフェース(I/O)72aを介してディスプレイ65に出力され、且つ入出力インターフェース(I/O)72bを介して記憶装置66に出力される。
次に、電子衝撃脱離全体制御部52の動作について説明する。
図6に示すように、電子源16から発生した電子線16aは、第一の偏向コイル16bと第二の偏向コイル16cを通過することにより、水平方向と垂直方向に走査されて試料40に二次元に照射される。
図6に示す同期制御部62において発生されるデジタル信号である垂直走査信号62aのクロック信号は、デジタルアナログ変換器(DAC)62dにより鋸波に変換されて、電子源16の第一の偏向コイル16bに印加される。同様に、デジタル信号である水平走査信号62bのクロック信号は、デジタルアナログ変換器(DAC)62eにより鋸波に変換されて、電子源16の第二の偏向コイル16cに印加される。
1パルスの撮影タイミング信号(Shoot timing、以下ST信号という)によって、垂直走査信号(Vertical clock)が、合計2048パルス発生するように制御が開始される。1パルスの垂直走査信号のパルス幅の期間に、水平方向の画素信号(Horizontal clock)が合計2048パルス出力される。これにより、2048行×2048列(=4194304)の約419万画素の二次元走査を生成する。つまり、パルス計数部61でカウントされる信号は、ST信号,垂直走査用のクロック信号,水平走査用のクロック信号からなる複数のカウンターを同期させることで、各走査位置におけるイオン検出器23からの水素イオンのカウント数とすることができる。
続いて、ESD像の取得方法について説明する。
図7は走査による二次元のESD像を計測するフロー図である。図7に示すように、二次元のESD像の取得は、以下のステップで行なうことができる。
ステップ1:試料40の表面から脱離した水素イオンが、イオン検出器23で検出される。
ステップ2:イオン検出器23で検出した水素イオンの定量計測を、パルス計数部61で行なう。
ステップ3:図6に示した垂直走査用のクロック信号及び水平走査用のクロック信号を生成する同期制御部62により、試料40の二次元の各測定点の水素イオンのカウントを行なう。
ステップ4:ステップ3で測定した試料40の二次元の各測定点の水素イオンのカウント数を記憶装置66のメモリーに保存する。
ステップ5:垂直走査用のクロック信号及び水平走査用のクロック信号を元に記憶装置66のメモリーに保存されたイオン信号を二次元画像(ESD像)として並べ替える。
ステップ6:ステップ5で取得したESD像をディスプレイ65に表示し、画像及び数値データとして記憶装置66に保存する。
これにより、SEM像と同じ領域のESD像が取得される。
上記ステップ1~6のESD像の取得は、計測機器制御に特化したプログラム製作環境で作製したソフトウェアで実行することができる。このようなソフトウェアとしては、National Instruments社製のLabVIEW(登録商標)(http://www.ni.com/labview/ja/)を用いることができる。上記ステップ1~6のESD像は、マイクロプロセッサ72において、LabVIEWで作製したプログラムで実行される二次元のマルチチャンネルスケーラー60により取得できる。
水素ガス透過拡散経路観測装置10においては、SEM像は従来と同様にして得ることができる。二次電子検出器18からの信号は、制御部50の二次電子検出部53で検知され、電子顕微鏡全体制御部51によりディスプレイ58に表示される。
このようにして、水素ガス透過拡散経路観測装置10によれば、試料40に関して二次電子によるSEM像と上記ステップ6で取得したESD像を比較することにより、例えば金属から成る試料40の組織の局所構造と水素透過との関連を調べることが可能となる。例えば、局所構造としては、金属の結晶粒サイズやその結晶構造と水素透過、つまり水素放出能とを比較することができる。
ここで、水素放出位置の空間分解能は、本質的には走査型電子顕微鏡15の倍率に依存するため、走査型電子顕微鏡15の倍率と同等まで向上できるので、50nm以下、例えば2~10nm、つまり10nm以下の分解能が得られる。走査型電子顕微鏡15の倍率の限界は、走査型電子顕微鏡15とその周囲の振動除去と電子ビーム径により決まる。
なお、試料40の表面に配設される導電性薄膜44の膜厚が走査型電子顕微鏡15の空間分解能と同程度の膜厚であることから、導電性薄膜44の存在によって、水素放出位置の空間分解能が低下するようなことはない。これにより、記憶装置59に保存された試料40のSEM像と記憶装置66に保存された試料40のESD像を同じ位置分解能で比較することにより、SEM像から試料表面側の点欠陥とESD像から水素イオンの放出位置に関する構造情報を取得することができる。さらに、ESD像から取得した水素イオンの放出位置に関する構造情報とSEM像で取得した点欠陥により、試料40の点欠陥の位置を特定することができる。
さらに、水素イオンの検出を走査型電子顕微鏡15の二次電子検出の限界と一致させるためには、電子と水素イオンの飛行時間の差が問題となるが、測定中の電子走査の時間を遅くすること、又はイオン検出器23と試料40の距離を短くすることで対応することができる。
このようにして、本発明の試料40を用いて水素透過検出を行なう場合、導電性薄膜44の存在によって絶縁領域42,43の領域にてチャージアップが発生しないので、絶縁領域42,43の領域で電子密度が低下するようなことはなく、取得されるESD像は、図8に示すように絶縁領域42,43の領域においても、水素量が確実に計測され得ることになる。
なお、導電性薄膜44は、水素透過検出の空間分解能に対する影響をできるだけ抑制するために、その膜厚を十分に薄くすることが望ましい。その際、図9に示すように、導電性薄膜44内での水素の横方向(表面に沿った方向)の移動は空間分解能より低いことが望ましいことから、導電性薄膜44の膜厚を水素透過検出のために必要な空間分解能以下とすることが望ましい。図9においては、試料40の中を透過する水素46を白丸印で示している。
本発明の水素透過検出のための試料40によれば、確実にチャージアップの発生を抑止することができる。これにより、その表面に酸化膜等が形成された試料本体41の表面を導電性薄膜44で被覆することで、試料本体41及び絶縁領域42,43から試料40の表面に湧出した水素の透過をチャージアップの発生を抑止して測定することができる。
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。例えば、上述した実施形態においては、試料40は鉄鋼,ステンレス鋼,Si基板等の材料から構成されているが、これに限らず、絶縁材料から構成されていてもよいことは明らかである。
10 水素ガス透過拡散経路観測装置
11 分析室
12 試料ホルダー
12a 中空部
14 水素配管
15 走査型電子顕微鏡
16 電子源
18 二次電子検出部
19 ガス供給部
20 水素イオン検出部
21 収集機構
22 イオンエネルギー分解部
23 イオン検出器
40 水素透過検出のための試料
41 試料本体
42,43 絶縁領域
44 水素透過性を備えた導電性薄膜
46 水素
50 制御部
51 電子顕微鏡全体制御部
52 電子衝撃脱離全体制御部
53 二次電子検出部
54 電子光学系制御部
55 SEM用の画像演算部
56 高電圧安定化電源
57 入力装置
58 ディスプレイ
59 記憶装置
60 二次元のマルチチャンネルスケーラー
61 パルス計数部
61a 水素イオンのカウント数信号
62 同期制御部
62a 垂直走査信号
62b 水平走査信号
62c 走査位置に関する情報
62d,62e デジタルアナログ変換器
63 測定信号の二次元平面への並べ替え部
64 ESD用の画像演算部
65 ディスプレイ
66 記憶装置
67 電子衝撃脱離イオン検出部
72 マイクロプロセッサ
72a,72b 入出力インターフェース

Claims (8)

  1. 板状の試料の背面から透過した水素原子あるいは当該試料の材料内部から湧出した水素原子を、走査型電子顕微鏡の走査電子により電子遷移誘起で励起させて水素イオンを脱離させ、該脱離した水素イオンのESD像を、前記走査型電子顕微鏡の電子線の走査に同期して取得する、水素透過検出のための試料であって、 表面領域に局所的に形成された絶縁領域が存在する試料本体と、 前記試料本体の絶縁領域を含む表面全体に亘って配設された水素透過性を備え導電性薄膜と、を備え、 前記導電性薄膜が、前記試料の表面との間で相互拡散を生じない材料から構成されている、水素透過検出のための試料。
  2. 前記導電性薄膜が、パラジウム,バナジウム,ニオブ,タンタル,チタン,銀又はこれらの合金の何れかから構成されている、請求項1に記載の水素透過検出のための試料。
  3. 前記試料本体は、鉄鋼、ステンレス鋼及びSi基板の何れかの材料からなる、請求項1又は2に記載の水素透過検出のための試料。
  4. 前記導電性薄膜が、均一の膜厚を有している、請求項1から3の何れかに記載の水素透過検出のための試料。
  5. 前記導電性薄膜が、走査型電子顕微鏡の空間分解能と同程度以下の膜厚を有している、請求項1から4の何れかに記載の水素透過検出のための試料。
  6. 前記試料表面上に、蒸着により前記導電性薄膜を形成する、請求項1から5の何れかに記載の水素透過検出のための試料の製造方法。
  7. 前記導電性薄膜が、真空蒸着法又は電子ビーム蒸着法により形成される、請求項6に記載の水素透過検出のための試料の製造方法。
  8. 前記導電性薄膜が、前記試料の表面を損傷しない程度にスパッタリング法により形成される、請求項6に記載の水素透過検出のための試料の製造方法。
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