JP7428629B2 - 定着部構造および定着部鉄筋組立方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1では、緊張材の定着部において、緊張材の端部(シース管)の周囲に螺旋状のスパイラル筋を配筋する定着部補強構造が開示されている。特許文献1の定着部補強構造におけるスパイラル筋は、コンクリート構造物の表面側において2周以上にわたって鉄筋同士が接触していて、残りの部分は隙間をあけた状態に形成されている。また、スパイラル筋は、緊張材の緊張方向の所定の範囲に対して、連続して緊張材の周囲に設けられている。
プレストレストコンクリート構造物に緊張材を配設する際には、主筋や配力筋の隙間に、シース管や緊張材を配設する必要があることから、スパイラル筋は、主筋などの鉄筋と緊張材等とのわずかな隙間に配筋する必要がある。そのため、スパイラル筋の配筋作業には手間がかかる。また、スパイラル筋は、シース管や緊張材を取り付ける前に予め配置しておく必要があり、施工手順が制約されてしまう。
かかる定着部構造によれば、補強筋により定着部の鉄筋量を増加させるため、割裂引張応力に対して必要な耐力を確保できる。補強筋は、両端に係止部が形成された直線状の部材であるため、コンクリート構造物の主筋や配力筋(鉄筋)の隙間に挿入することができる。そのため、施工手順に制約がなく、施工時の自由度が高い。また、螺旋状のスパイラル筋を配筋する場合に比べて、簡易に配筋することができ、作業効率の向上を図ることができる。
ここで、主筋や配力筋などの鉄筋は、前記定着部における配筋ピッチを前記定着部以外における配筋ピッチよりも小さくするのが望ましい。こうすることで、定着部における鉄筋量を増加して、割裂引張応力に対する耐力の増加を図ることができる。
また、前記定着部における前記配力筋の鉄筋径を、前記定着部以外における配力筋の鉄筋径よりも大きくすることで、定着部における鉄筋量の増加、すなわち、割裂引張応力に対する耐力の増加を図ってもよい。
緊張材の定着部を上下から挟んで対向する一対の横鉄筋および前記定着部を左右から挟んで対向する一対の縦鉄筋を備える口字状の配力筋を、緊張方向と交差する向きで配筋する第一配筋工程と、前記定着部を左右から挟んで対向する位置に緊張方向と交差する向きで一対の補強筋を配筋する第二配筋工程とを備えている。前記第二配筋工程では、一対の前記横鉄筋の上方から前記補強筋を挿入して前記横鉄筋同士を当該補強筋により連結する。
かかる定着部鉄筋組立方法によれば、鉄筋(主筋や配力筋)が組み立てられた定着部において、上方から挿入することにより補強筋を配筋するため、スパイラル筋を配筋する従来の配筋方法に比べて、作業性に優れている。
定着部11では、図1(a)および(b)に示すように、緊張材1にシース管12が周設されていて、シース管12と緊張材1との隙間には、グラウトなどの充填材13が充填されている。また、緊張材1の先端部には、支圧板14が固定されている。
本実施形態の定着部構造2は、緊張材1に沿って配筋された主筋3と、緊張材1の緊張方向と交差する方向に配筋された配力筋(鉄筋)4と、同じく緊張材1の緊張方向と交差する方向に配筋された補強筋5とを備えている。
本実施形態では、緊張材1の周囲を囲うように、四本の主筋3が等間隔に配筋されている。
なお、プレストレストコンクリート構造物Cの構造上必要な鉄筋量を確保することを目的として、定着部11における配力筋4同士の間隔(配筋ピッチ)を定着部11以外における配力筋4同士の間隔よりも小さくしてもよいし、定着部11における配力筋4の鉄筋径を定着部11以外における配力筋4の鉄筋径よりも大きくしてもよい。
補強筋5の下側の端部に形成された係止部52は、本体部51を構成する鉄筋の端部に摩擦圧接により固定された平板(プレート)である。係止部52を構成する平板は、本体部51の断面形状よりも大きな平面形状の板材からなる。
補強筋5の上側の端部に形成された係止部53は、本体部を構成する鉄筋の端部を加工することによりJ字状に形成されたフックである。補強筋5は、下側の係止部52と本体部51との角部を横鉄筋41に係止するとともに、上側の係止部53(フック)を横鉄筋41に係止するように配筋する。
定着部11における鉄筋の組み立て作業(定着部鉄筋組立方法)は、以下の手順により行う。
まず、緊張材1の定着部11の周囲に主筋3および配力筋4を配筋する(第一配筋工程)。本実施形態では、所定本数の配力筋4に緊張材1および主筋3を挿通してなる鉄筋仮組み体を所定の位置に配設し、配力筋4同士の間隔を調整することにより配筋する。
次に、定着部11を左右から挟んで対向する位置に補強筋5を配筋する(第二配筋工程)。補強筋5は、一対の横鉄筋41,41の上方から補強筋5を挿入し、係止部52,53を横鉄筋41,41に係止することで、横鉄筋41同士を連結する。
本解析では、図3に示すように、柱状の試験体Tについて解析を行うものとし、試験体Tのサイズを390×390×820mmの大きさとした。緊張材1の端部には285×285mmの大きさで厚さが40mmの支圧板14が設けられている。また、アンカーヘッドはφ185mmとし、載荷荷重(プレストレス力)を4020kNとした。
また、定着部11には、図4(a)に示すように、軸方向に沿って四本の主筋3を配筋するとともに、矩形状の配力筋4を所定の間隔で配筋した。主筋3および配力筋4には、D13の鉄筋を使用した。配力筋4は、定着部11における配筋ピッチをその他の区間における配筋ピッチより小さく(本実施例では1/2)して、密に配筋した。
さらに、実施例では、定着部11における12本の配力筋4をD22とし、それ以外の区間はD13のままとした。
スパイラル筋6は、D19の鉄筋をφ310mmで8巻にした螺旋状に加工したものを使用した。スパイラル筋6は、配力筋4の内側に配筋するとともに、緊張材1の端部(定着部11)を囲むように配筋した。比較例1では、鉄筋径を変化させることなく、配力筋4を配筋した。ここで、本解析では、実施例と比較例1との間で、定着部11における配力筋4の鉄筋径を変化させることで、定着部11における鉄筋量が同程度になるようにした。
さらに、比較例2として、図4(c)に示すように、補強筋5またはスパイラル筋6を使用しない場合についても解析を行った。
解析結果を図5および図6に示す。ここで、図5はコンクリートの最大主ひずみを示す図であって、(a)は実施例、(b)は比較例1、(c)は比較例2である。また、図6は鉄筋の軸ひずみを示す図であって、(a)は実施例、(b)は比較例1、(c)は比較例2である。
また、図5(a)、(b)および図6(a)、(b)に示すように、実施例と比較例1とを比較すると、コンクリート最大主ひずみおよび鉄筋の軸ひずみに大きな差は生じなかった。
したがって、従来のスパイラル筋6に代えて、本実施形態の補強筋を採用することで、緊張材1の定着部11に生じる割裂引張応力に対向する補強構造を形成することができることが確認できた。
前記実施形態では、補強筋5を上下方向に配筋する場合について説明したが、補強筋5の向きは限定されるものではなく、たとえば、補強筋5を横向きに配筋してもよい。すなわち、一対の縦鉄筋42,42を補強筋5で連結してもよい。
前記実施形態では、補強筋5の一方の係止部52をプレートにより形成し、他方の係止部53をフックとしたが、係止部52,53の構成は限定されるものではなく、例えば、両端がプレートにより形成されていてもよい。また、係止部52,53は、鉄筋(主筋3または配力筋4等)に係止可能であれば、プレートやフックに限定されるものではなく、例えば、本体部51の先端に固定されたナットや、本体部51の先端を鉤型に加工したものであってもよい。
前記実施形態では、配力筋4が矩形状の場合について説明したが、配力筋(鉄筋)4の形状は限定されるものではなく、例えば、図7(a)および(b)に示すように、プレストレストコンクリート構造物Cが版状の部材等で、複数の緊張材1が並設されるような場合には、複数の緊張材1を挟んで対向するように配筋された直線状の鉄筋であってもよい。なお、図7(a)および(b)における符号「43」は定着部11に配筋されたフープ筋である。
前記実施形態では、配力筋4が緊張材1と交差する方向に配筋されている場合ついて説明したが、主筋3が緊張材1と交差する方向に配筋されていてもよい。このとき、補強筋5は、主筋3に係止させる。
11 定着部
2 定着部構造
3 主筋
4 配力筋(鉄筋)
5 補強筋
51 本体部
52 係止部
53 係止部
C プレストレストコンクリート構造物
Claims (4)
- 緊張材の定着部の周囲において緊張方向と交差する方向で前記定着部を挟んで対向するように配筋された上下一対の横鉄筋および左右一対の縦鉄筋とを備える口字状の配力筋と、
前記横鉄筋同士を連結する一対の補強筋と、を備える定着部構造であって、
前記補強筋は、直線状の本体部と、前記本体部の両端に形成された前記横鉄筋に係止するための係止部と、からなり、
少なくとも一方の端部に形成された前記係止部は、摩擦圧接により固定された平板であることを特徴とする、定着部構造。 - 前記配力筋は、前記緊張材の軸方向に間隔をあけて複数配筋されており、
前記定着部における前記配力筋同士の前記間隔は、前記定着部以外における配力筋同士の間隔よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の定着部構造。 - 前記配力筋は、前記緊張材の軸方向に沿って間隔をあけて複数配筋されており、
前記定着部における前記配力筋の鉄筋径は、前記定着部以外における配力筋の鉄筋径よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の定着部構造。 - 緊張材の定着部を上下から挟んで対向する一対の横鉄筋および前記定着部を左右から挟んで対向する一対の縦鉄筋を備える口字状の配力筋を、緊張方向と交差する向きで配筋する第一配筋工程と、
前記定着部を左右から挟んで対向する位置に、緊張方向と交差する向きで一対の補強筋を配筋する第二配筋工程と、を備える定着部鉄筋組立方法であって、
前記第二配筋工程では、一対の前記横鉄筋の上方から前記補強筋を挿入して前記横鉄筋同士を当該補強筋により連結することを特徴とする、定着部鉄筋組立方法。
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