JP7428044B2 - 圧電シート - Google Patents

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Description

本発明は、圧電シートに関し、特に振動発電、水位計、音響検出器、マットセンサー、ロボットハンドなどのセンサー等に好適に用いることができる圧電シートに関する。
多孔性樹脂フィルムを用いた多孔エレクトレットは、優れた圧電効果を示すことが知られており、振動発電、センサーデバイス等に広く用いられている。しかし、多孔エレクトレットフィルムは、デバイスに組み込むための電極を形成する際に圧電特性を大きく減退させてしまう問題点があった。
このような問題点に対し、多孔エレクトレットフィルムの表面に接着剤を介して金属を電極として蒸着形成することで高い圧電特性を達成できることが報告されている(特許文献1)。
特開2010-089496号公報
しかし、上記した特許文献1に記載の多孔エレクトレットは、蒸着工程を要するため、製造工程が煩雑である。また、使用時においても、エレクトレットの伸長時に、電極の導通性が失われ、安定した信号が得られないという問題がある。金属箔を貼り合わせるという方法は、製造工程が簡便であるが、金属箔が剛性を有するがゆえに、耐屈曲性が悪く、人体やソフトロボットなどの軟らかい対象物への装着が難しいという問題があった。
そこで、本発明は、耐屈曲性が良好であり、伸長時においても良好な導電特性を有する圧電シートを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、かかる課題を解決することに着目し本発明を完成するに至った。本発明は、その一態様において以下の[1]~[9]を要旨とする。
[1]導電性粒子及び樹脂を含有する電極、及び圧電体を備える、圧電シート。
[2]前記樹脂の25℃における引張貯蔵弾性率(E’)が5kPa以上20MPa以下である[1]に記載の圧電シート。
[3]前記電極における樹脂の含有量が10質量%以上50質量%以下である[1]又は[2]記載の圧電シート。
[4]前記圧電体が、多孔エレクトレットフィルムである[1]~[3]のいずれか1つに記載の圧電シート。
[5]前記多孔エレクトレットフィルムがポリオレフィン系樹脂を主成分として含有する、[4]に記載の圧電シート。
[6]前記多孔エレクトレットフィルムがポリプロピレン系樹脂を主成分として含み、かつ該ポリプロピレン系樹脂が80%以上のβ晶生成能を有する[4]又は[5]に記載の圧電シート。
[7]前記多孔エレクトレットフィルムの厚さが10μm以上200μm以下である[4]~[6]のいずれか1つに記載の圧電シート。
[8]前記多孔エレクトレットフィルムの空隙率が5%以上60%以下である[4]~[7]のいずれか1つに記載の圧電シート。
[9][1]~[8]のいずれか1つに記載の圧電シートを備えるセンサーデバイス。
本発明の圧電シートは、耐屈曲性が良好であり、伸長時においても良好な導電特性を有する。
本発明の一例に係る圧電シートの俯瞰図である。 本発明の一例に係る圧電シートの断面図である。
以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明の内容が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
<圧電シート>
本発明の圧電シートは、導電性粒子及び樹脂を含有する電極を備える。このような電極を用いることにより、耐屈曲性が良好であり、伸長時においても良好な導電特性を有する圧電シートを得ることができる。
以下、まず本圧電シートの特性について詳細に説明する。
(1)起電力
本発明の圧電シートの起電力は0.10V以上100V以下が好ましく、0.2V以上50V以下がより好ましく、0.3V以上10V以下がさらに好ましい。0.1V以上であることで、圧電特性が良好となり、例えばセンサーとして使用した場合に十分な感度を得ることができる。一方、100V以下であることで、センサーやアクチュエーターとして組み込んだ際の火花放電のリスクを低減することができる。なお、本発明の圧電シートの起電力は実施例に記載の方法で測定できる。
(2)厚さ
本発明の圧電シートの厚さは20μm以上500μm以下であることが好ましい。上記下限については、25μmがより好ましく、30μmがさらに好ましい。一方で上限は、400μmがより好ましく、300μmがさらに好ましい。厚さが20μm以上であれば、応答性の圧電シートを得ることができる。また、厚さが500μm以下であれば、ロールtoロールで搬送及び捲回することができ、後の加工が容易である。
なお、圧電シートの厚さは実施例に記載の方法で測定できる。
次に圧電シートの構成について説明する。
1.電極
本発明の圧電シートは、少なくとも1つの電極を備える。
電極は、導電性粒子及び樹脂を含有する。当該樹脂の含有量は、好ましくは10質量%以上50質量%以下である。上記下限については、12質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましい。一方、上限については、40質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。
樹脂の含有量が10質量%以上であることで、圧電シートを伸長したときの導電安定性が良好となる。一方、樹脂の含有量が50質量%以下であることで、導電性が良好となる。
電極の厚さは、好ましくは2μm以上50μm以下、より好ましくは3μm以上40μm以下、さらに好ましくは5μm以上30μm以下である。2μm以上であることで、電極としての導電安定性を発現できる。一方で50μm以下であることで、圧電シートとした際のフレキシブル性を担保することができる。
圧電シートにおいて電極は、少なくとも2層設けられることが好ましい。2層の電極は、後述する圧電体を挟み込むように配置されるとよい。また、電極は、例えば別の電極との短絡を防止するために、圧電体の外周側にはみ出ないように配置されることが好ましい。
本発明の圧電シートは、電極となる層がコーティングによって形成されることが好ましい。コーティング方法としては、グラビアコーティング、ディップコーティング、オフセット印刷、スプレーコーティング、インクジェット印刷、ブレードコーティング、スクリーン印刷などの方法があげられる。これらの中でも電極となる層の前駆体が高粘度であることが多いため、ブレードコーティングやスクリーン印刷が好ましい。
(1)導電性粒子
本発明の電極は、導電性粒子を含有する。導電性粒子としては、炭素粒子、銀粒子、金粒子、銅粒子、ニッケル粒子、アルミニウム粒子、錫粒子、亜鉛粒子などを好適に用いることができ、粒径や材質の異なる粒子を複数混合しても良い。導電性粒子の平均粒径は0.5μm以上が好ましく、より好ましくは0.7μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。上限は30μmが好ましく、より好ましくは20μm、さらに好ましくは10μmである。0.5μm以上であることで、良好な導電性が得られるという効果がある。また、30μm以下であることで、センサーとした際に薄膜化できるという効果がある。
導電性粒子は1種類だけ用いても良いが、複数の粒子を混合して用いることが好ましく、特に、アスペクト比の異なる粒子を混合して用いることが好ましい。例えば、アスペクト比が2未満の球状粒子と、アスペクト比が2以上100以下の偏平状又は不定形の粒子を混合することが好ましい。複数のアスペクト比を有する粒子を混合することで、電極の導電性を安定化する効果がある。
なお、平均粒径及びアスペクト比は、以下の方法により測定できる。
電極の断面SEM画像から10個以上、より好ましくは50個以上、さらに好ましくは100個以上の導電性粒子を選択して粒子の直径を測定し、その平均値を平均粒径とすることができる。なお、導電性粒子が偏平状又は不定形である場合は、粒子の最長径と最短径の平均値を各粒子の直径としてよい。
アスペクト比は、各粒子の最長径と最短径の比率を算出し、その平均値から求めることができる。
また、導電性粒子の含有量は、樹脂100質量部に対して、100質量部以上900質量部以下が好ましい。100質量部以上であると、十分に導電性が得られ、900質量部以下であると電極の成形性が担保できる。以上の観点から、導電性粒子の含有量は、150質量部以上800質量部以下がより好ましく、200質量部以上700質量部以下がさらに好ましい。
(2)樹脂
本発明の電極は、樹脂を含有する。樹脂は、熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。樹脂成分としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などを好適に用いることができる。本発明で用いる樹脂としては、特にシリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂は、オルガノポリシロキサンを主鎖とする樹脂であり、本発明では、液状のシリコーンゴムが好適に用いられる。
樹脂成分の25℃における引張貯蔵弾性率(E’)は、5kPa以上が好ましく、10kPa以上がより好ましく、20kPa以上がさらに好ましい。上限としては20MPaが好ましく、15MPaがより好ましく、10MPaがさらに好ましい。
5kPa以上であることで、電極のベタつきを低減するという効果がある。一方で、20MPa以下であることで、伸長時にも導電性が安定し、信頼性が向上するという効果がある。
なお、引張貯蔵弾性率(E’)は以下の方法で測定できる。
動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製「DVA-200」)を用いると共に引張治具を使用して、測定温度-100~250℃、周波数10Hz、昇温速度3℃/minにおける貯蔵弾性率を測定し、得られるデータから25℃における貯蔵弾性率(E’)を読み取ることで求められる。
2.圧電体
本発明の圧電シートは、圧電体を備える。当該圧電体は、伸縮性の観点から、多孔エレクトレットフィルムであることが好ましい。
多孔エレクトレットフィルムは、多孔体の樹脂フィルムを帯電させたものを好適に用いることができる。多孔エレクトレットフィルムを構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられるが、環境負荷が小さく、帯電処理を行いやすいという点でポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。
(1)ポリオレフィン系樹脂
多孔エレクトレットフィルムは、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含有することが好ましく、中でもポリプロピレン系樹脂を主成分として含有することが好ましい。ここで、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含有する場合、多孔エレクトレットフィルムにおけるポリオレフィン系樹脂の含有量は50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上99.9999質量%以下、より好ましくは80質量%以上99.999質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上99.99質量%以下である。
また、多孔エレクトレットフィルムは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする場合、その含有量は具体的には50質量%以上、好ましくは70質量%以上99.9999質量%以下、より好ましくは80質量%以上99.999質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上99.99質量%以下である。
ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンとエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネンもしくは1-デセンなどのα-オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、機械的強度の観点からホモポリプロピレンがより好適に使用される。
また、ポリプロピレン系樹脂は、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率が80%以上99%以下であることが好ましく、より好ましくは83%以上98%以下、さらに好ましくは85%以上97%以下である。アイソタクチックペンタッド分率が80%以上であれば、機械的強度が良好である。一方、アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルでさらに規則性の高い樹脂が開発された場合においてはこの限りではない。アイソタクチックペンタッド分率とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素-炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al.(Macromol.8,687(1975))に準拠する。
また、ポリオレフィン系樹脂は、分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnが1.5以上10.0以下であることが好ましい。より好ましくは2.0以上8.0以下、さらに好ましくは2.0以上6.0以下である。Mw/Mnが小さいほど分子量分布が狭いことを意味するが、Mw/Mnを1.5以上とすることで、十分な押出成形性が得られ、工業的に大量生産が可能である。一方、Mw/Mnを10.0以下とすることで、十分な機械的強度を確保することができる。Mw/MnはGPC(ゲルパーエミッションクロマトグラフィー)法によって、ポリスチレン換算値として測定される。
また、ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、0.5g/10分以上15g/10分以下であることが好ましく、1.0g/10分以上10g/10分以下であることがより好ましい。MFRを0.5g/10分以上とすることで、成形加工時において十分な溶融粘度を有し、高い生産性を確保することができる。一方、MFRを15g/10分以下とすることで、十分な強度を確保することができる。なお、MFRはJIS K7210-1(2014年)に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
なお、ポリオレフィン系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法等が挙げられる。
本発明に好適に用いることのできるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、商品名「ノバテックPP」「WINTEC」「WAYMAX」(日本ポリプロ社製)、「バーシファイ」「ノティオ」「タフマーXR」(三井化学社製)、「ゼラス」「サーモラン」(三菱ケミカル社製)、「住友ノーブレン」「タフセレン」(住友化学社製)、「プライムポリプロ」「プライム TPO」(プライムポリマー社製)、「Adflex」「Adsyl」「HMS-PP(PF814)」(サンアロマー社製)、「インスパイア」(ダウケミカル社製)など市販されている商品を使用できる。
多孔エレクトレットフィルムは、結晶形態の一つであるβ晶を多く含むポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなることが好ましい。β晶を多く含むポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる無孔膜状物はそのものでも帯電処理後に優れた圧電特性を示すが、延伸し多孔構造とすることで、より優れた圧電特性が得られる。β晶を利用した多孔構造形成は、延伸過程においてポリプロピレン系樹脂中のβ晶が、α晶に転移する過程で多孔化が生じるため、多孔構造は緻密であり、従来公知である無機フィラーや非相溶性有機物の添加による多孔化と比較し、粒径や分散径に依存しないことから、多孔構造の調製に有利である。
また、多孔エレクトレットフィルムは、β晶活性を有することが好ましい。多孔エレクトレットフィルムのβ晶活性は、延伸前の無孔膜状物においてポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していたことを示す一指標と捉えることができる。延伸前の無孔膜状物中のポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していれば、その後延伸を施すことで微細かつ均一な孔が多く形成されるため、機械特性に優れ、微細かつ均一な孔形成により優れた耐電圧性を得ることができる。
多孔エレクトレットフィルムのβ晶活性の有無は、示差走査型熱量計を用いて、多孔エレクトレットフィルムの示差熱分析を行い、ポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度が検出されるか否かで判断される。具体的には、示差走査型熱量計で多孔エレクトレットフィルムを25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、さらに25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた際に、再昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)が検出された場合、β晶活性を有すると判断される。
前記β晶活性の有無は、特定の熱処理を施した多孔エレクトレットフィルムのX線回折測定により得られる回折プロファイルでも判断することができる。詳細には、ポリプロピレン系樹脂の結晶融解ピーク温度を超える温度である170~190℃の熱処理を施し、徐冷してβ晶を生成・成長させた多孔エレクトレットフィルムについてX線回折測定を行い、プロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来する回折ピークが2θ=16.0°~16.5°の範囲に検出された場合、β晶活性があると判断される。ポリプロピレン系樹脂のβ晶構造とX線回折測定に関する詳細は、Macromol.Chem.187,643-652(1986)、Prog.Polym.Sci.Vol.16,361-404(1991)、Macromol.Symp.89,499-511(1995)、Macromol.Chem.75,134(1964)、及びこれらの文献中に挙げられた参考文献を参照することができる。
前述したポリプロピレン系樹脂のβ晶活性を得る方法としては、ポリプロピレン系樹脂のα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法や、特許第3739481号公報に記載されているように過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレン系樹脂を添加する方法、及びβ晶核剤を添加する方法などが挙げられるが、本発明においては、β晶核剤を添加してβ晶活性を得ることが特に好ましい。β晶核剤を添加することで、より均質に効率的にポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成を促進させることができ、β晶活性を有する多孔エレクトレットフィルムを得ることができる。
前記β晶活性の程度については、β晶生成能を測定することで定量化ができる。多孔エレクトレットフィルムに含まれるポリプロピレン系樹脂のβ晶生成能は好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。80%以上であることで、圧電シートとした際に好適な圧電特性を発揮することができる。上限については特に制限はないが、β晶生成能は100%以下であることが好ましい。なお、β晶生成能は以下の通り測定できる。
β晶生成能は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、多孔エレクトレットフィルムを示差熱分析し、検出されるポリプロピレン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算される。
β晶生成能(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
例えば、ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレンの場合は、主に145℃以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に160℃以上170℃以下に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。また、例えばポリプロピレン系樹脂が、エチレンが1~4モル%共重合されているランダムポリプロピレンの場合は、主に120℃以上140℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に140℃以上165℃以下の範囲に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。
(2)β晶核剤
多孔エレクトレットフィルムは優れた圧電特性を得るために、β晶核剤が含まれていることが好ましい。β晶核剤が含まれていることによって、β晶活性を有することができる。本発明で用いるβ晶核剤としては以下に示すものが挙げられる。また必要に応じて、2種類以上のβ晶核剤を混合して用いてもよい。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2-ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期表第2族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。
これらのβ晶核剤の中でも、得られる圧電シートの圧電特性の面でアミド化合物が好ましい。アミド化合物としては、N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキシアミド、N,N’-ジシクロヘキシルテレフタルアミド、N,N’-ジフェニルヘキサンジアミド等が挙げられ、中でもN,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキシアミドが好ましい。アミド化合物は極性が高いアミド基を有するため、結晶構造中に電荷を局在化させることができ、高い圧電特性を有すると考えられる。
一方で、アミド化合物のように極性が高い化合物は、極性が低いポリプロピレン系樹脂とは静電的な相互作用により分散性が悪く、凝集しやすいという問題がある。しかしながら、一般的なβ晶核剤は、一定の温度域ではポリプロピレン系樹脂に溶解するという特性を有している。この特性により、ポリプロピレン系樹脂にβ晶核剤が均一に分散され、β晶核剤由来の結晶が均一に析出されやすくなる。よって、極性が低いポリプロピレン系樹脂中に極性の高いアミド化合物の結晶が均一に分散され、高い圧電特性を有することができると考えられる。
市販されているβ晶核剤の具体例としては、新日本理化社製β晶核剤「エヌジェスターNU-100」、β晶核剤の添加されたプロピレン系樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B-022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)-PP BE60-7032」、mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP-LN」などが挙げられる。
多孔エレクトレットフィルム中のβ晶核剤の含有量は、β晶核剤の種類またはポリプロピレン系樹脂の組成などにより適宜調整することができるが、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し0.0001質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.001質量部以上3.0質量部以下がより好ましく、0.01質量部以上1.0質量部以下がさらに好ましい。0.0001質量部以上であれば、製造時において十分にポリプロピレン系樹脂のβ晶を生成成長させ、十分なβ晶活性が確保できる。そのため、多孔フィルムとした際にも十分なβ晶活性が確保でき、帯電処理することで所望の圧電特性を有する多孔エレクトレットフィルムが得られる。一方、5.0質量部以下の添加であれば、経済的にも有利になるほか、フィルム表面へのβ晶核剤のブリードなどがなく好ましい。
多孔エレクトレットフィルムには、その性質を損なわない程度に添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶核剤、着色剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、滑剤、難燃剤、導電剤、エラストマーなどの各種添加剤が適宜含まれていてもよい。
多孔エレクトレットフィルムの厚さは、好ましくは10μm以上200μm以下である。厚さを上記範囲内とすることで、圧電シートを必要以上に厚くすることなく、圧電特性を良好にできる。このような観点から、多孔エレクトレットフィルムの厚さは、より好ましくは15μm以上150μm以下、さらに好ましくは20μm以上120μm以下である。
多孔エレクトレットフィルムの空隙率は、好ましくは5%以上60%以下である。空隙率を上記範囲内とすることで、外圧によって生じる塑性変形による圧電特性の劣化を抑制できるという効果がある。好ましくは7%以上55%以下、さらに好ましくは9%以上50%以下である。
空隙率の測定方法は以下のとおりである。
測定試料の実質量W1を測定し、多孔エレクトレットフィルムの原料である樹脂組成物の密度に基づいて空隙率が0%の場合の質量W0を計算し、これらの値から下記式に基づいて空隙率を算出する。
空隙率(%)={(W0-W1)/W0}×100
多孔エレクトレットフィルムは、それ自身単層構成でも良いが、多孔構造や材質の異なる層を2層以上積層していてもかまわない。この場合、多孔フィルム同士を接着剤等で貼り合わせて作成することもできるが、多層口金を用いた場合、一括で積層構造を得ることができ、生産性の面で好ましい。
3.その他の層
本発明の圧電シートは、デバイスに組み込む際のハンドリング性や電気特性を向上する目的で、上記で挙げた構成部材以外に、保護層、電極タブ、シールド層、緩衝層などの構成部材を有してもよい。圧電シートは、これら構成部材を有することで、各構成部材に応じた機能を圧電シートに付与することができる。
また、電極タブは、例えば電極が複数層設けられる場合には電極の層数に応じて設けられるとよく、例えば電極が2層設けられる場合には、電極タブもその層数に応じて2つ設けられるとよい。
4.圧電シートの層構成
図1、2に、本発明の圧電シートの好ましい一例を具体的に示す。図1、2において、圧電シート10は、電極11、多孔エレクトレットフィルム12、電極11がこの順に設けられる積層構造を有する。圧電シート10において両面の電極11のそれぞれ上面には、電極タブ13も形成され、接続される。
勿論、図1、2に示す圧電シート10は、本発明の圧電シートの一例を示すものであり、本発明の要旨を逸脱しない限りいかなる変更がなされてもよい。
<圧電シートの製造方法>
以下、一例として、本発明の圧電シートが多孔エレクトレットフィルムと電極とを備える場合の製造方法を説明する。本発明の圧電シートは以下に説明する製造方法により製造される圧電シートに限定されるものではない。
多孔エレクトレットフィルムは、一般的には製膜工程、延伸工程、及び帯電処理工程を得て製造されるが、本発明の圧電シートにおいては電極形成後に帯電処理を行うことが好ましい。以下、製膜工程、延伸工程、電極形成工程、及び帯電処理について順次説明する。
(1)製膜工程
製膜工程では、多孔エレクトレットフィルムを構成する材料よりなる無孔膜状物が製膜される。製膜工程においては、多孔エレクトレットフィルムを構成する材料を、公知の方法で製膜する限り特に限定されないが、例えば多孔エレクトレットフィルムを構成する樹脂(材料樹脂)を加熱溶融してフィルム状に製膜すればよい。具体的には、Tダイ法、インフレーション法などにより製膜すればよく、中でもTダイ法を採用するのが好ましい。また、実用的には、Tダイから材料樹脂を溶融押出してキャストロール(チルロール、キャストドラムなど)によりキャスト成形するのが好ましい。また、材料樹脂は、適宜添加剤が配合され、また2種以上の樹脂成分が混合され、2以上の成分を含む樹脂組成物として製膜されてもよい。
多孔エレクトレットフィルムを構成する材料は、混練装置において混練された後に製膜されてもよい。混練を行う際、用いる混練装置を特に限定するものではない。例えば単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機など、公知の押出機を用いることができる。また、押出機には、設備構造及び必要性に応じて、ベント口に減圧機を接続し、多孔エレクトレットフィルムを構成する材料より水分や低分子量物質を除去してもよい。
上記のとおりキャストロールを使用する場合、Tダイから押出されたシート状の溶融樹脂(樹脂組成物)をキャストロール上に押し出し、回転するキャストロール上に密着させながら引き取りフィルム状物に成形するとよい。また、キャストロールにフィルム状物を密着させるために、タッチロール、エアナイフ、電気密着装置などをキャストロールに付けてもよい。
また、溶融樹脂(樹脂組成物)を冷却しながらフィルムに成形する際、キャストロールの温度は100℃以上が好ましい。より好ましくは110℃以上で、さらに好ましくは120℃以上である。本発明ではポリプロピレン系樹脂の結晶部分と非晶部分での延伸工程時による開孔によっても、空孔率の増加が可能であるため、キャストロールの温度を100℃以上とし、高い結晶化度の無孔膜状物を得ることが好ましい。また、キャストロールの温度は140℃以下が好ましく、より好ましくは135℃以下、さらに好ましくは130℃以下である。キャストロールの温度を140℃以下とすることで、フィルム製膜時にキャストロールからの剥離が容易である。
得られる無孔膜状物において、両端部を除いた有効部分の厚さは30μm以上500μm以下であるのが好ましく、中でも40μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。また、300μm以下がより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましい。無孔膜状物の厚さが30μm以上であれば、延伸時に破断を防ぐことができ、無孔膜状物の厚さが500μm以下であれば、無孔膜状物の延伸を行いやすくすることができる。
多孔エレクトレットフィルムの無孔膜状物での層構成に関しては、上記の単層構成のみだけでなく、他の層を組み合わせた構成であってもよい。
(2)延伸工程
次に、得られた無孔膜状物に対して延伸処理を行う。無孔膜状物に対して延伸処理を行うことで、無孔膜状物を容易に多孔フィルムにすることができる。延伸処理では、無孔膜状物に対して一軸延伸あるいは二軸延伸を行なうとよい。一軸延伸は縦一軸延伸であってもよいし、横一軸延伸であってもよい。二軸延伸は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。これらのうち逐次二軸延伸を採用すると、多孔構造の制御が比較的容易であり、機械強度や収縮率など他の諸物性とのバランスがとりやすい。逐次二軸延伸は、特に限定されないが、例えば縦延伸した後に、横延伸するとよい。なお、膜状物の流れ方向(MD)への延伸を「縦延伸」といい、流れ方向に対して垂直方向(TD)への延伸を「横延伸」という。
延伸温度は、用いる樹脂組成物の組成、結晶融解ピーク温度、結晶化度等によって適時選択する必要があるが、縦延伸温度は、好ましくは60℃以上140℃以下であり、より好ましくは80℃以上120℃以下である。縦延伸温度を140℃以下とすることで、主成分であるポリプロピレン系樹脂の融点以下で破断なく延伸が可能となるため好ましい。一方、60℃以上とすることで、延伸時の破断が抑制できるため好ましい。
横延伸温度は、好ましくは90℃以上160℃以下であり、より好ましくは100℃以上150℃以下である。前記横延伸温度が規定された範囲内であることによって、空孔が十分に形成され、空孔率を高めることができ、十分な圧電特性を有することができる。また、逐次二軸延伸の場合には、例えば縦延伸時に生じた空孔が拡大されて多孔層の空孔率を増加することができる。
なお、以上説明した温度は、一軸延伸又は逐次二軸延伸の場合の温度であるが、同時二軸延伸の場合の延伸温度は、上記観点から、好ましくは90℃以上140℃以下、より好ましくは100℃以上120℃以下の範囲内で調整すればよい。
延伸倍率は、所望する空孔率に合わせて任意に選択すればよいが、一軸延伸あたりの延伸倍率は1.1倍以上20倍以下が好ましく、より好ましくは1.5倍以上18倍以下であり、さらに好ましくは2倍以上16倍以下である。一軸延伸あたりの延伸倍率を1.1倍以上とすることで白化が進行して、微小なクレーズが伸長することにより、延伸による多孔化が十分に生じる。また、20倍以下とすることで、製造時のフィルムの破断トラブルを抑制することができる。また、逐次二軸延伸の場合には、各軸当たり上記で規定した延伸倍率で延伸することによって、先の延伸時に生じた空孔が後の延伸時に変形することもない。
(3)電極形成工程
続いて、電極を形成する際の電極前駆体を作成し、これを延伸工程で得られた多孔フィルムに塗工することで電極を形成することができる。電極前駆体は樹脂と導電性粒子、必要に応じて希釈溶剤を添加し、これらを混練することで得ることができる。混練する方法としては、ロールミル、遊星ミル、アトライター、ホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル、撹拌羽根による撹拌などが挙げられるが、高粘度であることが多いため、ロールミルや遊星ミルを用いることが好ましい。
電極前駆体を多孔フィルムに塗工する方法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、ブレードコート、スプレーコート、ディップコートなどが挙げられるが、これらの中でも高粘度に適したブレードコートやスクリーン印刷が好ましい。
形成される電極の形状は、用途によってベタ塗り、格子状アレイ、不定形など様々な形を選択することができる。
また、樹脂が硬化性樹脂である場合には、塗工した電極前駆体を硬化すればよい。例えば、熱硬化性樹脂であれば、熱硬化性樹脂が硬化する限りいかなる温度で行ってもよいが、例えば、40℃以上150℃以下程度で行うとよい。電極前駆体の硬化は、特に限定されないが、例えば後述する帯電処理の前に行うとよい。
(4)帯電処理
ついで、電極を形成した多孔フィルムに帯電処理を行なうことで本発明の圧電シートを得ることができる。帯電処理は連続式であってもよいし、バッチ式であってもよい。この際、電極を形成した多孔フィルムの両面に、絶縁性のフィルムを挟んで帯電処理を行なうことが好ましい。帯電処理を行なう際の電極は、フィルムの表裏に針状電極、ワイヤー電極、ロール状電極、板状電極などの電極間にフィルムを通し、電極間に電界を印加する方式でもよいし、フィルムの表裏に直接、塗布や蒸着により電極を形成した後に、電界を印加する方式でもよい。印加する電界としては好ましくは0.1MV/m以上10MV/m以下、より好ましくは0.2MV/m以上8MV/m以下、さらに好ましくは0.3MV/m以上6MV/m以下である。0.1MV/m以上であることで、多孔エレクトレットフィルムが優れた圧電特性を有することができる。10MV/m以下であることで、帯電処理時の絶縁破壊を生じさせないという効果がある。
(5)その他
ついで、上記で得られた圧電シートに、絶縁性や信頼性の向上を目的に保護層やシールド層を形成しても良い。形成する方法としては、接着剤を用いた貼り合わせや、熱ラミネートなどが好適に用いられる。
<圧電シートの用途>
本発明の圧電シートは、例えば振動発電、水位計、音響検出器、マットセンサー、ロボットハンドなどに使用することができるが、特に、伸縮性や柔軟性に優れるので、ソフトロボットや生体センシングなど軟らかいものに向けたセンサーデバイスに適している。本圧電シートの用途は、特に限定されないが、例えば圧電素子として使用すればよく、圧電シートに作用された圧力を電圧に変換して、圧電シートに作用される圧力を検知したり、発電したりすることができる。
また、圧電シートはセンサーデバイスとして上記した各種機器に組み込むとよい。本発明の圧電シートは、例えばリード線や回路実装を施すことで、本シートを備えたセンサーデバイスとすることができる。
<語句の説明など>
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格;JIS K6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の圧電シートについてさらに詳しく説明するが、本発明は何ら制限を受けるものではない。
実施例、比較例で使用する材料は以下の通りである。
(ポリプロピレン系樹脂)
・A-1;ホモポリプロピレン(ノバテックPP FY6HA、MFR:2.4g/10分[230℃、2.16kg荷重]、Mw/Mn=3.2、日本ポリプロ社製)
(β晶核剤)
・B-1:N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキシアミド(NU-100、新日本理化社製)
(酸化防止剤)
・C-1;トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトとテトラキス[3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリスリトールとの1:1混合物(IRGANOX-B225、BASF社製)
(実施例1)
(多孔フィルムの製造)
ポリプロピレン系樹脂(A-1)100質量部、β晶核剤(B-1)0.2質量部、酸化防止剤(C-1)0.1質量部を混合して、二軸押出機にて280℃で溶融押出することで樹脂組成物を得た。リップ開度1mmのTダイに繋がれた押出機に前記樹脂組成物を投入して成形を行ない、キャストロールに導かれて厚さが100μmの無孔膜状物を得た。その後、フィルムテンター設備(京都機械社製)にて、延伸温度100℃で横方向に7倍延伸し、多孔フィルムを得た。得られた多孔フィルムはβ晶活性を有し、含有されるポリプロピレン系樹脂のβ晶生成能は92%、空隙率は20%であった。
(電極前駆体の製造)
樹脂成分として液状シリコーンゴム「KE-1820(信越化学工業社製)」19質量部と、導電性粒子として不定形銀粒子「SF-70(フェロジャパン社製)」54質量部と、球状銀粒子「SPN-10JS(三井金属社製)」23質量部と、希釈溶剤として芳香族炭化水素系溶剤「YS-150(山一化学工業社製)」4質量部とを、遊星撹拌機「あわとり練太郎ARV-501(シンキー社製)」を用いて混練することで、電極前駆体を得た。
なお、液状シリコーンゴム単体の硬化後の25℃における引張弾性率は270kPaであった。
(圧電シートの作製)
12cm角に切り出した多孔フィルムの両面に、スクリーン印刷を用いて電極前駆体を6cm角ではみ出さずに向かい合うように両面に塗布し、四方を金枠で固定して100℃のオーブンで1時間硬化させることで、両面に電極を形成した。
続いて、得られた積層体を20μmの厚さのポリエチレンフィルムを2枚用いて両側からはみ出さないように挟み込み、アース板の上に置き、電極間20mmとした針状電極から-10kVの電荷を60秒間常温で印加することで帯電処理を行なった。
続いて、ポリエチレンフィルムを取り除き、導電性銅箔粘着テープ「E20CU」(DIC社製、電極厚さ9μm、接着層厚さ11μm)を用いて以下に示す通り電極タブを形成し図1、2に示す圧電シート10を作製した。
(実施例2)
厚さが200μmの無孔膜状物を用いた点以外は実施例1と同様にして圧電シートを得た。
(比較例1)
電極前駆体として、銀ナノペースト「NPS-JL(ハリマ化成社製)」を用い、硬化温度を150℃とした点以外は、実施例1と同様にして圧電シートを得た。
(比較例2)
電極前駆体を用いて塗布するのではなく、代わりに導電性アルミ箔テープ 「No.AL-50BT」(3M社製、厚さ80μm)を6cm角で向かい合うように両面に貼り付けることで電極形成を行なった点以外は、実施例1と同様にして、圧電シートを得た。
(比較例3)
電極前駆体を用いて塗布するのではなく、代わりにアルミニウムを6cm角で40Åの厚さで向かいあうように両面に真空蒸着することで電極形成を行なった点以外は、実施例1と同様にして、圧電シートを得た。
実施例および比較例で得られた圧電シートに関して、厚さ、起電力、耐屈曲性、信頼性について以下の方法で測定した。
(1)厚さ
1/1000mmのダイアルゲージを用いて圧電シートの厚さを無作為に10点測定して、その平均値を求めた。
(2)起電力
圧電シート上に厚さ10mmの発泡ポリプロピレンシートを置き、その上から高さ30cmの落差でソフトボール(3号ボール(ナガセケンコー社製)、重さ190g)を5回落下させ、発生する起電力を、オシロスコープを用いることで測定し、その平均値を記録した。なお、ノイズが大きく測定できないものについては起電力が便宜上1mV未満であるものとし、下記表1では「-」と表記した。
(3)耐屈曲性
圧電シートについて、直径5cmの円筒に捲回し1分間保持し、その後、巻きほどき、平板上に鞍部が上面となるように置き、端部の浮き上がり量を測定することで、耐屈曲性を評価した。
(評価基準)
A(good):端部の浮き上がり量が3cm未満
B(poor):端部の浮き上がり量が3cm以上
(4)信頼性
圧電シートについて、電極の存在する6cm角の対角線上の電気抵抗を、テスターを用いて測定し、続いて、引張試験機にて圧電シートを1%伸長した状態で電気抵抗を測定し、前後の電気抵抗の変化率を算出した。なお、伸長後の電気抵抗が検出限界以上に大きいものについては便宜上99999%とした。また、ノイズが大きく測定できないものについては、下記表1では「-」と表記した。
(電気抵抗の変化率) = (伸長後の電気抵抗-伸長前の電気抵抗)/(伸長前の電気抵抗)×100(%)
(評価基準)
A(good):電気抵抗の変化率が200%未満
B(poor):電気抵抗の変化率が200%以上
表1に実施例、比較例に関する評価結果を示す。
実施例1及び2より、圧電シートが導電性粒子及び樹脂を含有する電極を備えることにより、耐屈曲性が良好となり、伸長時においても良好な導電特性を有することがわかった。
一方で、比較例1では、電極の導電性が発現せずセンサーとして使用できなかった。これは、銀ナノペーストが樹脂成分を含まないため、低粘度であり、多孔フィルム中に侵入したためと考えられる。比較例2では、樹脂成分を含有しないアルミ箔が電極であったため、剛性が高く、耐屈曲性が不十分であった。比較例3では、電極が樹脂成分を含まない、金属蒸着膜であったため、フィルムの伸縮により導通パスが断絶しやすく、信頼性が不十分であった。
10 圧電シート
11 電極
12 多孔エレクトレットフィルム
13 電極タブ

Claims (5)

  1. 導電性粒子及び樹脂を含有する電極、及び圧電体を備える、圧電シートであって、前記圧電体がポリプロピレン系樹脂を主成分として含み、かつβ晶核剤を含む多孔エレクトレットフィルムであり、
    前記樹脂の25℃における引張貯蔵弾性率(E’)が5kPa以上20MPa以下であり、前記電極における樹脂の含有量が10質量%以上50質量%以下である、圧電シート。
  2. 前記ポリプロピレン系樹脂が80%以上のβ晶生成能を有する請求項に記載の圧電シート。
  3. 前記多孔エレクトレットフィルムの厚さが10μm以上200μm以下である請求項1又は2に記載の圧電シート。
  4. 前記多孔エレクトレットフィルムの空隙率が5%以上60%以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の圧電シート。
  5. 請求項1~のいずれか1項に記載の圧電シートを備えるセンサーデバイス。
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