JP7424589B2 - 加工方法 - Google Patents

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Description

本開示は、加工方法に関する。
航空機の胴体や主翼等の航空機部品は、長尺状のシートフレーム等の構造部材から構成される。
このようなシートフレームは、強度を向上させる等の目的から、板状の部材に対して、長手方向の断面が所望の断面形状となるように曲折成形されるとともに、シートフレームが適用される胴体及び主翼等が、曲面形状を有することから、長手方向に沿って湾曲した曲線形状を有するように成形される。
このため、シートフレームは、複雑な表面形状をなしている。
このような航空機に用いられるシートフレームに対しては、重量軽減等の目的で、板厚を薄くする加工(以下、「板厚加工」ともいう。)を行うことがある。
従来、複雑な表面形状を有する構造部品の板厚加工には、ケミカルミーリングが使用されている。ケミカルミーリングとは、アルカリや酸を用いた化学的なエッジングにより金属を除去する加工方法である。このケミカルミーリングにより、構造部品の肉厚を一定に薄くすることで、構造部品の軽量化を実現している。
特開2019-206065号公報
ところが、近年は、環境負荷、廃液処理の問題や使用するエネルギ削減の観点から、ケミカルミーリングの撤廃が要望されている。
そこで、機械加工によって、シートフレームに対して板厚加工を行うことが考えられる(例えば特許文献1)。
しかしながら、複数の面を持つシートフレームを段取替えなしに加工する場合、ある面を矯正すると他の面にひずみが生じてしまい、複数の面を同時に矯正することが困難であり、各面をどのように矯正するかについて戦略を立てる必要があった。
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、段取替えをすることなく複数の面に対して板厚加工することができる加工方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本開示の加工方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本開示の一態様に係る加工方法は、治具に設置された被加工材料を工具で加工する加工方法であって、前記被加工材料は、平面視で円弧形状とされた板状のウェブ部及び前記ウェブ部の前記円弧形状に沿った縁から曲折して立設するフランジ部を有し、前記工具は、底刃及び外周刃を有し、前記治具は、前記ウェブ部が載置される載置面及び前記フランジ部が面で当接する当接面を有し、前記フランジ部を前記当接面に押し当てる押圧工程と、前記工具を前記円弧形状の弧の方向に送ることで前記工具の前記外周刃で前記フランジ部を切削するフランジ切削工程と、前記工具を前記弧の方向に送ることで前記工具の前記底刃で前記ウェブ部を切削するウェブ切削工程と、を含む。
また、本開示の参考態様に係る加工品は、平面視で円弧形状とされた板状のウェブ部及び前記ウェブ部の前記円弧形状に沿った縁から曲折して立設するフランジ部を有するとともに、前記ウェブ部の一の面が加工面とされた加工品であって、前記ウェブ部の一端から他端に向かって延びる複数本のカッターマークが前記加工面に形成された加工品であって、隣り合う前記カッターマーク同士の間隔が前記カッターマークの延在方向に沿って変化している部分を有している。
本開示によれば、段取替えをすることなく複数の面に対して板厚加工することができる。
本開示の一実施形態に係るワークの平面図である。 本開示の一実施形態に係るワークを上方斜視図である。 本開示の一実施形態に係る治具の上方斜視図である。 本開示の一実施形態に係る治具の上方斜視図である(クランプ省略)。 本開示の一実施形態に係るワークが治具に設置された状態の上方斜視図である。 図5に示す切断線VI-VIにおける横断面図である。 図5に示す切断線VII-VIIにおける横断面図である。 接線荷重法の概念を示す図である。 本開示の一実施形態に係る治具の載置面を示す横断面図である。 本開示の一実施形態に係るワークが治具へ取り付けられた後、かつ、加工前の被加工面の変位を示した図である。 本開示の一実施形態に係るワークをエンドミルで加工している様子を示す斜視図である。 本開示の一実施形態に係るワークが治具へ取り付けられた後、かつ、加工後の被加工面の変位を示した図である。 本開示の一実施形態に係る加工システムが備えるハードウェア構成の一例を示した概略構成図である。 本開示の一実施形態に係る加工システムが備える機能を示した機能ブロック図である。 本開示の一実施形態に係るウェブ面の加工の一例を示す図である。 本開示の一実施形態に係るウェブ面の加工の一例を示す図である。 本開示の一実施形態に係るウェブ面の加工の流れの概要を示す図である。 本開示の一実施形態に係るフランジ面の加工の一例を示す図である。 本開示の一実施形態に係るフランジ面の加工の流れの概要を示す図である。 本開示の一実施形態に係るR面の計測の一例を示す図である。 本開示の一実施形態に係るR面の計測の一例を示す図である。 本開示の一実施形態に係るR面の計測の一例を示す図である。 本開示の一実施形態に係るR面の計測の一例を示す図である。 本開示の一実施形態に係るR面の加工の流れの概要を示す図である。 本開示の一実施形態に係るR面の加工の一例を示す図である。 本開示の一実施形態に係る加工処理の手順の一例を示すフローチャートである。 本開示の一実施形態に係る加工処理の手順の一例を示すフローチャートである。
以下に、本開示に係る加工方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
[被加工材料について]
まず、本実施形態に係る加工方法によって加工が行われるワーク(被加工材料)10について説明する。
図1には、ワーク10の平面図が示されている。図2には、ワーク10の上方斜視図が示されている。
ワーク10は、例えば、航空機の胴体や主翼等の構造部品として用いられるシートフレームである。ワーク10は、例えば金属製とされている。
金属としては、アルミ合金(例えば7000系アルミ合金や2000系アルミ合金)又はチタン合金(例えば6-4Ti)が例示される。
ワーク10は、ウェブ部11、上フランジ部12(単に「フランジ部12」ともいう。)及び下フランジ部13(単に「フランジ部13」ともいう。)を有する長尺部材である。
ウェブ部11と上フランジ部12とは、R部14を介して接続されている。また、ウェブ部11と下フランジ部13とは、R部15を介して接続されている。また、下フランジ部13の下端(縁)には、R部16が形成されている。
ワーク10は、平面視したときの形状が上フランジ部12及び下フランジ部13を含めて略円弧形状とされ、横断面形状が略Z字形状とされている。平面視したワーク10の円弧方向に沿った長さ寸法は、例えば約6m程度である。
以下、ワーク10を構成する各部分について説明する。
ウェブ部11は、平面視したときに略円弧形状をなす板状部分とされている。
ウェブ部11の幅寸法(半径方向の寸法)は、周方向に沿って略一定とされている。
ウェブ部11の厚さ寸法(板厚)は、後述する加工を行う前において0.05inch~0.15inch(1.27mm~3.81mm)程度とされている。
上フランジ部12は、ウェブ部11の円弧形状に沿った2つの縁のうち外周側の縁に接続されるとともに、その縁から曲折して鉛直上方に向かって立設する板状部分とされている。上フランジ部12は、ウェブ部11に対して、滑らかに曲折するR部(ラウンド部)14を介して接続されている。
上フランジ部12の高さ寸法(立設方向の寸法)は、周方向に沿って略一定とされている。
上フランジ部12の厚さ寸法(板厚)は、後述する加工を行う前において0.05inch~0.15inch(1.27mm~3.81mm)程度とされている。
下フランジ部13は、ウェブ部11の円弧形状に沿った2つの縁のうち内周側の縁に接続されるとともに、その縁から曲折して鉛直下方に向かって立設する板状部分とされている。下フランジ部13は、ウェブ部11に対して、滑らかに曲折するR部(ラウンド部)15を介して接続されている。また、下フランジ部13の下端(縁)には、ウェブ部11の円弧形状における外周側に向かって滑らかに曲折するR部(ラウンド部)16が形成されている。
下フランジ部13の高さ寸法(立設方向の寸法)は、周方向に沿って略一定とされている。
下フランジ部13の厚さ寸法(板厚)は、後述する加工を行う前において0.05inch~0.15inch(1.27mm~3.81mm)程度とされている。
[治具について]
次に、本実施形態に係る加工方法を行う際にワーク10が取り付けられる治具20について説明する。
治具20は、ワーク10に対して後述する加工を適切に行うためにワーク10を適切な位置に適切な状態で固定するための装置である。
図3には、治具20の上方斜視図が示されている。図4及び図5には、ワーク10が載置された状態の治具20の上方斜視図が示されている。図6には、図5に示す切断線VI-VIにおける断面図が示されている。図7には、図5に示す切断線VII-VIIにおける断面図が示されている。
なお、図4では、説明の容易のためにクランプ50が省略されている。
図3に示すように、治具20は、ベース30、設置ブロック40及び4つのクランプ50を有している。
ベース30は、所定の厚さ寸法を有する板状部材とされている。
ベース30の厚さ寸法は、ワーク10を固定する際に発生する負荷に対して十分に耐え得るだけの剛性を発揮する寸法に設定されている。
図3から図6に示すように、設置ブロック40は、ベース30の上面に配置されるとともにベース30に対して固定された部品であって、ワーク10が設置される部分である。
設置ブロック40は、載置面41、上フランジ当接面42(単に「当接面42」ともいう。)及び下フランジ当接面43(単に「当接面43」ともいう。)を有している。
載置面41は、ワーク10のウェブ部11が載置される面である。具体的には、ワーク10が載置されることで、ウェブ部11の被加工面11aの背面にある被載置面11bと接触する面である。
載置面41は、平面視したときにウェブ部11のように略円弧形状をなしている。
上フランジ当接面42は、ワーク10の上フランジ部12が当接する面である。具体的には、ワーク10が載置されることで、上フランジ部12の被加工面12aの背面にあたる被当接面12bと接触する面である。
上フランジ当接面42は、載置面41に対して鉛直上方に向かって延在する面とされている。
下フランジ当接面43は、ワーク10の下フランジ部13が当接する面である。具体的には、ワーク10が載置されることで、下フランジ部13の被加工面13aの背面にあたる被当接面13bと接触する面である。
下フランジ当接面43は、載置面41に対して鉛直下方に向かって延在する面とされている。
なお、ワーク10の被当接面12b、被載置面11b及び被当接面13bと、設置ブロック40の上フランジ当接面42、載置面41及び下フランジ当接面43との形状(略Z字形状)は略一致しているが、形状の基準となるのは、ワーク10よりも剛性が高い設置ブロック40に形成された各面であることは言うまでもない。
図3から図5及び図7に示すように、クランプ50は、ベース30の上面に配置されるとともにベース30に対して回動自在に固定された部品であって、ワーク10の被当接面12b及び被当接面13bを設置ブロック40の上フランジ当接面42及び下フランジ当接面43に押し当てる機能を持つ。
各クランプ50は、設置ブロック40に設置されたワーク10の四隅に相当する位置の近傍に配置されている。
クランプ50は、クランプ本体51、荷重ボルト52及び荷重ブロック53を有している。
クランプ本体51は、回動部51a及び脚部51bを有する略逆U字形状の部品とされている。
回動部51aは、ベース30に設けられたベアリング32の内輪に嵌合される部分であって、ベアリング32とともにクランプ50の回動を実現している。なお、クランプ50の回動軸X(すなわち、回動部51aの回動軸X)は、ベース30の上面に対して直交している。
脚部51bは、ベース30に形成されたベース側段部31と摺動可能に係合することで、クランプ50に作用する荷重を受け持つ部分である。
具体的は、図7に示すように、ベース30の上面から窪むように形成されたベース側段部31とベース側段部31の形状に対応するクランプ側段部51cとが係合することで、脚部51bがクランプ50に作用する荷重(後述する荷重ボルト52から受ける反作用による荷重)を受け持つ。
なお、図4に示すように、ベース側段部31及びクランプ側段部51cは、クランプ50の回動軸Xを中心とした円弧状に形成されている。このため、ベース側段部31とクランプ側段部51cとは、クランプ50の回動を妨げることなく滑らかに摺動することになる。
図3から図5及び図7に示すように、荷重ボルト52は、クランプ本体51の回動部51aに対して螺設されたボルトである。
荷重ボルト52は、ワーク10側の先端が下方に向かって傾斜した状態で回動部51aに設けられている。
荷重ブロック53は、荷重ボルト52の先端に接続された部品である。
荷重ブロック53は、荷重ボルト52の先端に対して3次元的に回動するように接続されている。これは、例えば荷重ボルト52の先端を球面状に形成することで実現される。
以上のように構成された治具20に対して、ワーク10は次のように取り付けられる。
図4及び図5に示すように、まず、ワーク10を設置ブロック40に設置する。このとき、ベース30から立設した位置決めピン33に対してワーク10の端面を当接させることでワーク10が位置決めされる。
これにより、ワーク10の被当接面12b、被載置面11b及び被当接面13bと、設置ブロック40の上フランジ当接面42、載置面41及び下フランジ当接面43とが接触することになる。
次に、荷重ボルト52を軸線周りに回して軸方向に押し込むことで、荷重ブロック53をワーク10の端面に押し付ける。詳細には、荷重ブロック53を上フランジ部12の端面(円弧方向で2箇所)及び下フランジ部13の端面(円弧方向で2箇所)に軽く押し付ける。
このとき、荷重ブロック53が荷重ボルト52の先端に対して3次元的に回動するように構成されているので、荷重ブロック53は上フランジ部12の端面及び下フランジ部13の端面に対して面直に押し付けられることになる。これによって、円弧の接線方向に沿って荷重ボルト52からの荷重を入力することができる。
また、荷重ボルト52が下方に向かって傾斜しているので、ワーク10のウェブ部11は設置ブロック40に押し付けられることになる。
次に、荷重ボルト52を更に押し込み、上フランジ部12の端面及び下フランジ部13の端面を所定の力で押し付ける。ここで、所定の力とは、荷重ボルト52として例えばM16のボルトを使用した場合、1本の荷重ボルト52あたりで30kN~70kNの力である(締め付けトルクは100Nm~190Nm)。
このとき、図8に示すように、上フランジ部12及び下フランジ部13は、接線方向に作用する荷重Fのうち上フランジ当接面42側及び下フランジ当接面43側に向かう成分(Fcosθ)によって上フランジ当接面42及び下フランジ当接面43に自然と押し付けられる(これを「接線荷重法」という(特開2019-141981参照))。
これによって、荷重ボルト52の軸力を利用して、上フランジ部12の被当接面12bを設置ブロック40の上フランジ当接面42に密着させ、下フランジ部13の被当接面13bを設置ブロック40の下フランジ当接面43に密着させることができる。
また、荷重ボルト52の締め付けトルクを調整することで、軸力を緻密に制御することができる。
上フランジ部12の被当接面12bが上フランジ当接面42に密着するとともに下フランジ部13の被当接面12bが下フランジ当接面43に密着すると、上フランジ部12及び下フランジ部13のひずみが矯正される。一方で、矯正されたひずみは、ウェブ部11に集約されることになる。
つまり、この方法では、上フランジ部12及び下フランジ部13のひずみを矯正するとともに、敢えてウェブ部11にワーク10のひずみを集約させることにしている。
ウェブ部11にひずみを集約させたとき、ウェブ部11の被載置面11bは設置ブロック40の載置面41から離れて浮き上がる。
そこで、浮き上がってもなおウェブ部11(被載置面11b)を適切に支持するために、図9に示すような昇降機構44(例えばエアシリンダ)を用いて載置面41を被載置面11bに追従させてもよい。
なお、荷重ボルト52を押し込むにあたって、上フランジ部12及び下フランジ部13が確実に上フランジ当接面42側及び下フランジ当接面43側に誘導されるように、図4に示すように、上フランジ部12及び下フランジ部13を図示しない装置で上フランジ当接面42側及び下フランジ当接面43側に押し込んでもよい。
押し込む箇所は、ワーク10の長さに依らず、上フランジ部12の両端部及び中央部の3箇所、下フランジ部13の両端部及び中央部の3箇所でよい。
なお、ワーク10を治具20に取り付け終えたら、押込みを解除する。
以上のようにして治具20に取り付けられたワーク10において、ウェブ部11の被加工面11aには、図10に示すようなひずみ(起伏/浮上り)の分布が生じている。
なお、図10では、円弧状の被加工面11aを直交座標系で表示している(図12において同じ)。
また、ハッチングで示した凡例は、ベース30にXYZ原点をとったときの、CADモデルに対する実際のワーク10の位置の差である。このため、この数値は絶対的な値ではなく相対的な値であることに留意されたい(図12において同じ)。
[加工方法について]
ワーク10の取付けが完了したら、工具を使用して、ウェブ部11の被加工面11a、上フランジ部12の被加工面12a及び下フランジ部13の被加工面13aを切削する。
図11に示すように、工具は、底刃61及び外周刃62を有する既知のエンドミル(スクエアエンドミル)60とされている。なお、工具は、ラジアスエンドミルであってもよい。
エンドミル60は、底刃61によって形成された加工を行う面が平面とされているものが好ましい。
なお、以下の説明では、スクエアエンドミルを例にしている。
加工方法の概要は以下の通りである。
まず、エンドミル60の外周刃62で、ひずみが矯正された上フランジ部12の被加工面12aを1パスで切削する(フランジ切削工程)。このとき、エンドミル60は一端から他端に向かって略円弧状に送られる。
次に、エンドミル60の底刃61で、ひずみ集約されたウェブ部11の被加工面11aを複数のパスで切削する(ウェブ切削工程)。このとき、エンドミル60は一端から他端に向かって略円弧状に送られる。
パスごとのエンドミル60のピッチをPとしたとき、0≦P≦エンドミル径とされている。
ウェブ部11の被加工面11aの切削は、治具20への取付後加工前においてウェブ部11の被加工面11aに生じていたひずみの形状(分布)に倣うようにして行われる。これにより、ひずみの形状に倣った一定の削込量でウェブ部11の板厚加工をすることができる。
その結果、図12に示すように、切削加工を経たウェブ部11の被加工面11aには、治具20への取付後加工前に生じていたひずみの形状がほとんどそのまま転写されたようなひずみが生じている。ただし、ウェブ部11の板厚は、エンドミル60で削り込んだ分だけ薄くなっていることが分かる。
ウェブ部11の加工に際して、エンドミル60は、ひずみの形状に倣うように姿勢が制御される(詳細については後述する)。このため、加工後のワーク10(加工品)に形成される送り方向に沿った複数本のカッターマークMは、図11に示すような形状になる。
すなわち、隣り合うカッターマークM同士の間隔がカッターマークMの延在方向に沿って滑らかに変化したり、連続する線状のカッターマークMに滑らかな波形状の部分が表れたり、連続する線状のカッターマークMに食い込みのない尖点が表れたりする。また、被加工面11aが、底刃61によって多面的な形状になる。
次に、エンドミル60の外周刃62で、ひずみが矯正された下フランジ部13の被加工面13aを1パスで切削する(フランジ切削工程)。このとき、エンドミル60は一端から他端に向かって略円弧状に送られる。
以上の工程を経ることで、段取替えをすることなく上フランジ部12、ウェブ部11及び下フランジ部13の各被加工面に対して板厚加工を行うことができる。
なお、上記の加工方法において、1回目のウェブ切削工程とフランジ切削工程との間に、R部14の形状に倣った切刃をもつ切削工具(例えばボールエンドミル(図25に示す符号97を参照)やラジアスエンドミル)でR部14を切削する工程を含んでもよい(R部切削工程)。このとき、切削工具は一端から他端に向かって略円弧状に送られる。これによって、形状誤差を持つワークのR部14を、段取替えをすることなくかつ、少ないパスで効率的に板厚加工することができる。
また、フランジ切削工程と2回目のウェブ切削工程との間に、R部15の形状に倣った切刃をもつ切削工具(例えば逆Rカッター(図25に示す符号98を参照))でR部15を切削する工程を含んでもよい(R部切削工程)。このとき、切削工具は一端から他端に向かって略円弧状に送られる。これによって、形状誤差を持つワークのR部15を、段取替えをすることなく、かつ、少ないパスで効率的に板厚加工することができる。
また、2回目のウェブ切削工程の後に、R部16の形状に倣った切刃をもつ切削工具(例えば逆Rカッター)でR部16を切削する工程を含んでもよい(R部切削工程)。このとき、切削工具は一端から他端に向かって略円弧状に送られる。これによって、形状誤差を持つワークのR部16を、段取替えをすることなく、かつ、少ないパスで効率的に板厚加工することができる。
[加工システムについて]
次に、加工システム70について説明する。
加工システム70は、ワーク(対象部品)10の加工制御を行う。具体的には、加工システム70は、エンドミル60を駆動する駆動装置を制御する。
以下の説明では、エンドミル60において底刃61で加工を行う面をエンドミル60の「底面」とし、エンドミル60において外周刃62で加工を行う面をエンドミル60の「側面」とする。そして、ウェブ部11の被加工面11aのように、エンドミル60の底面で加工する被加工面を「ウェブ面」として説明する。上フランジ部12の被加工面12a及び下フランジ部13の被加工面13aのように、エンドミル60の側面で加工する被加工面を「フランジ面」として説明する。R部14及びR部15のようにウェブ面とフランジ面を接続するR部の被加工面を「R面」とする。
図13は、本開示の一実施形態に係る加工システム70が備えるハードウェア構成の一例を示した概略構成図である。図13に示すように、加工システム70は、いわゆるコンピュータであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)81、メインメモリ82、記憶部83、外部インターフェース84、通信インターフェース85、入力部86、及び表示部87等を備えている。これら各部は直接的にまたはバスを介して間接的に相互に接続されており、互いに連携して各種処理を実行する。
CPU81は、例えば、バスを介して接続された記憶部83に格納されたOS(Operating System)により制御を行うとともに、記憶部83に格納された各種プログラムを実行することにより各種処理を実行する。
メインメモリ82は、例えば、キャッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能なメモリで構成され、CPU81の実行プログラムの読み出し、実行プログラムによる処理データの書き込み等を行う作業領域として利用される。
記憶部83は、非一時的な記録媒体(non-transitory computer readable storage medium)であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等である。記憶部83は、例えば、Windows(登録商標)、iOS(登録商標)、Android(登録商標)等の装置全体の制御を行うためのOS、BIOS(Basic Input/Output System)、周辺機器類をハードウェア操作するための各種デバイスドライバ、各種アプリケーションソフトウェア、及び各種データやファイル等を格納する。また、記憶部83には、各種処理を実現するためのプログラムや、各種処理を実現するために必要とされる各種データが格納されている。
外部インターフェース84は、外部機器と接続するためのインターフェースである。外部機器の一例として、外部モニタ、USBメモリ、外付けHDD等が挙げられる。なお、図13に示した例では、外部インターフェースは、1つしか図示されていないが、複数の外部インターフェースを備えていてもよい。
通信インターフェース85は、ネットワークに接続して他の装置と通信を行い、情報の送受信を行うためのインターフェースとして機能する。
例えば、通信インターフェース85は、例えば、有線又は無線により他の装置と通信を行う。無線通信として、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、専用の通信プロトコルを用いた通信等が挙げられる。有線通信の一例として、有線LAN(Local Area Network)等が挙げられる。
入力部86は、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド等、指示を与えるためのユーザインタフェースである。
表示部87は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。また、表示部87は、タッチパネルが重畳されたタッチパネルディスプレイでもよい。
図14は、加工システム70が備える機能を示した機能ブロック図である。図14に示されるように、加工システム70は、設定部71と、計測パス設定部72と、計測部73と、面モデル生成部74と、部品モデル生成部75と、加工パス設定部76と、移動制御部77と、再計測パス設定部78とを備える。
これら各部によって実現される機能は、例えば、処理回路(processing circuitry)によって実現される。例えば、以下に示す機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶部83に記憶されており、このプログラムをCPU81がメインメモリ82に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。
なお、プログラムは、記憶部83に予めインストールされている形態や、他のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
設定部71は、ワーク10の設計モデルに基づいて、ワーク10に対して、エンドミル60の底面及び側面のそれぞれに対応する加工対象面を設定する。設計モデルとはワーク10の設計形状(理想形状)を示すモデルである。設計モデルは、例えばCADデータである。本実施形態では、ワーク10を、エンドミル60の底面で加工するウェブ面(底面加工面)と、エンドミル60の側面で加工するフランジ面(側面加工面)と、R面とに分割する場合を例として説明する。このように、設定部71は、ワーク10の加工面を、複数の加工対象面に分割する。
計測パス設定部72は、ワーク10の設計モデルに基づいて、計測パスを設定する。具体的には、計測パス設定部72は、分割された加工対象面ごとに、計測パスを設定する。計測パスは、ワーク10に対して計測を実施する位置を示している。計測パスは、例えば、所定間隔で複数設定される。
計測部73は、ワーク10の3次元形状を計測する。計測部73は、計測機器を制御することで計測を実施する。計測機器は、例えばラインレーザ、スキャンプローブ、3Dスキャナ等である。各計測パスの計測を行うことで、ワーク10の3次元形状が計測される。計測は、計測パス上において所定間隔で行われ、計測結果は3次元座標値を持った点群情報となる。
計測は、ワーク10が設計形状に近づくように治具20に固定された状態で行われる。具体的には、図4から図7に示すようにワーク10が治具20で固定される。これによってワーク10の設計モデルが示す設計形状に近づくように矯正される。特に、フランジ面が設計形状に近づくように矯正される。この状態で計測を行うことで、より精度良くワーク10の3次元形状を計測することが可能となる。
面モデル生成部74は、各加工対象面の3次元計測データに基づいて、各加工対象面のそれぞれに対応する面モデルを生成する。具体的には、面モデル生成部74は、計測部73から各加工対象面のそれぞれに対応する計測データを取得する。計測データは、点群情報であるため、各計測位置の間を補間して面形状を示す情報(面モデル)を生成する。すなわち、面モデルは、各加工対象面のそれぞれの実際の形状を示す面情報となる。面モデルの生成方法については、限定されず様々な手法を適用することができる。
部品モデル生成部75は、各面モデルを統合して部品モデルを生成する。具体的には、部品モデル生成部75は、分割して計測及び生成された各面モデルをそれぞれ接続することで、ワーク10の実際の形状を示す部品モデルを生成する。これによって、ワーク10が全体としてモデル化される。
部品モデル生成部75は、各面モデルを統合する場合に、面モデルと面モデルとの接続の連続性に基づく異常判定を行うこととしても良い。例えば、統合した場合に、面モデルと面モデルとの間のギャプ及び段差の少なくともいずれか一方が所定値以上である場合(不連続性がある場合)に、異常と判定する。すなわち、計測や面モデルの生成等の処理に誤りがあり部品モデルが正確に表現できない場合には、異常を判定する。
加工パス設定部76は、計測されたワーク10の3次元形状に基づいて、加工パスを設定する。具体的には、加工パス設定部76は、部品モデルを取得する。そして、部品モデルに基づいて加工パスを設定する。各面モデルが統合された部品モデルにより加工パスが設定されることで、複数面の関係性が考慮された加工パスが設定できる。加工パスは、ワーク10に対して加工を実施する位置を示す。例えばウェブ面である被加工面11aに加工パスが設定される場合には、被加工面11aの円弧形状に合わせて円弧状に加工パスが設定される。例えばフランジ面である被加工面12aに加工パスが設定される場合には、被加工面12aの円弧形状に合わせて円弧状に加工パスが設定される。加工パスの形状については限定されない。
加工パスには、ガイドライン機能だけでなく、エンドミル60の傾斜角を示す情報も含まれる。加工パス設定部76は、傾斜角の設定を行う。傾斜角の具体的な設定については後述する。
移動制御部77は、加工パスに沿ってエンドミル60を移動させる制御を行う。図14に示すように、移動制御部77は、送り方向制御部77aと、ピッチ方向制御部77bと、直交方向制御部77cと、傾斜制御部77dとを備える。
送り方向制御部77aは、加工パスに沿ってエンドミル60を移動させる方向を送り方向として、送り方向にエンドミル60を移動させる。すなわち、送り方向制御部77aは、エンドミル60が加工パスを通過するように、加工パス上でエンドミル60を移動させる。例えば、エンドミル60の底面の中心が加工パスを移動するように制御を行う。
ピッチ方向制御部77bは、ピッチ方向にエンドミル60を移動させる。ピッチ方向とは、送り方向に対して垂直方向である。送り方向と、ピッチ方向と、後述するz方向(例えば鉛直方向)とは互いに直交する関係となる(図11)。加工パスは、例えばウェブ面ではピッチ方向に所定間隔(ステップオーバー)Pで複数設けられる。このため、ピッチ方向制御部77bは、エンドミル60をピッチ方向に所定間隔Pだけ移動させることで、加工パスから加工パスへエンドミル60を移動させる。例えば、ある加工パスの加工が終了した後に、次に加工する加工パス(隣の加工パス)へエンドミル60を移動させる。
直交方向制御部77cは、z方向(切込方向)にエンドミル60を移動させる。すなわち、直交方向制御部77cは、z方向にエンドミル60を移動させて、エンドミル60の側面や底面で加工を行うz方向の位置を調整する。
傾斜制御部77dは、エンドミル60の送り方向の軸周り(例えば加工パス周り)の傾斜角を制御する。具体的には、加工パスに設定された傾斜角に応じてエンドミル60を傾斜させる。すなわち、傾斜制御部77dによって、エンドミル60の姿勢制御を行う。傾斜角は、エンドミル60の初期姿勢(例えばエンドミル60の中心軸が鉛直方向と水平)を基準として、エンドミル60の中心軸の傾きにより定義される。例えば、エンドミル60の初期姿勢の傾斜角を0°として、送り方向の軸回りにエンドミル60を5°傾けた場合には、傾斜角は5°となる。姿勢制御を伴うエンドミル60の加工の具体例については後述する。
再計測パス設定部78は、設計モデルに対して誤差の大きい加工対象面を計測する場合に用いられる。本実施形態では、一例として、ウェブ面及びフランジ面に対しては再計測パス設定部78の処理は行わず、R面に対して再計測パス設定部78の処理を行うこととする。
再計測パス設定部78は、計測パスに基づいて計測されたワーク10の3次元形状に基づいて、再計測パスを設定する。つまり、計測パス設定部72は、設計モデルに基づいて計測パスを設定し、再計測パス設定部78は、面モデルに基づいて計測パスを設定する。再計測パス設定部78で処理を行う場合(すなわちR面を対象とする場合)には、加工パス設定部76は、再計測パスに基づいて計測されたワーク10の3次元形状に基づいて、加工パスを設定する。
上述の各部による処理によって、実際のワーク10の形状に基づいて加工が実施される。加工は、ワーク10が設計形状に近づくように治具20に固定された状態で行われる。エンドミル60の姿勢制御を行うことで、加工面の連続性を向上させることができる。
[ウェブ面の加工について]
次に、ウェブ面の具体的な加工について説明する。
図15は、エンドミル60の姿勢制御を行わない場合の例を示している。図16は、エンドミル60の姿勢制御を行う場合の例を示している。図15及び図16では、加工前面91と加工後理想面92とを示している。
ウェブ面では、エンドミル60の底面で加工を行うため、ピッチ方向に所定間隔Pで複数の加工パスが設定される。例えば、ウェブ面に対する加工パスは、部品モデルの表面(すなわち加工前面91)に対して所定深さの位置に設定される。エンドミル60の底面の中心が加工パスを通過するようにエンドミル60が移動されることで、所定深さの削り込みができる。エンドミル60はスクエアエンドミルであり、底面は平面であるものとする。このため、ウェブ面は、エンドミル60の底面により、面(平面)で削り込みが行われる。図15及び図16の例では、加工パスが2つ(第1加工パスPP1及び第2加工パスPP2)設定されている場合を例示する。第1加工パスPP1の加工を行った後に、第2加工パスPP2の加工を行うものとする。
図15のように、ワーク10の表面が平らでなく歪を持っている場合、姿勢制御を行わず、送り方向、ピッチ方向、及びz方向のみを制御して加工を行うと、第1加工パスPP1における加工と、第2加工パスPP2における加工とで、z方向誤差がミスマッチ(段差)ΔMとして現れる。このため、姿勢制御を行わない場合には、各加工パスの加工により、ウェブ面の表面に凸凹が生じる可能性がある。
図16は、本実施形態のように、送り方向、ピッチ方向、z方向、及び傾斜角方向(姿勢)に対して制御を行う場合である。姿勢制御を行う場合には、加工パスのそれぞれに対応して傾斜角が設定される。なお、同じ加工パス上であっても位置ごとに傾斜角が設定され、ある加工パスに対する加工であっても、加工パス上の位置に応じて傾斜角が制御される。
図16は、第1加工パスPP1の傾斜角を0°とし、第2加工パスPP2の傾斜角をα°(α≠0)とする場合を示している。このように、送り方向の軸線周りに回転させて姿勢を制御することで、ミスマッチΔMを抑制して、加工後理想面92に近づくように加工を行うことが可能となる。
傾斜角は、隣り合う加工パスを第1加工パスPP1および第2加工パスPP2とした場合に、第1加工パスPP1におけるエンドミル60の底面で加工した加工面と、第2加工パスPP2におけるエンドミル60の底面で加工した加工面とのミスマッチΔMが閾値以下となるように設定される。すなわち、図15で発生するようなミスマッチΔMが閾値以下となるように、傾斜角が設定される。なお、ミスマッチΔMだけでなく、加工誤差(板厚誤差)ΔEが閾値以下となるように傾斜角が設定されることがより好ましい。加工誤差ΔEとは、加工前面91と加工後面との距離(加工深さ)である。ミスマッチΔM(及び加工誤差ΔE)が閾値以下となるように傾斜角が設定されて加工が行われることで、加工後の面の凸凹が抑制される。
例えばエンドミル60の底面の直径が10mm以上25mm以下である場合には、所定間隔Pは5mm以上20mm以下程度に設定可能である。エンドミル60の底面で面による加工を行うことで、所定間隔Pを広くとって加工工程の抑制を図ることができる。
上記例では、ウェブ面を加工する場合に、所定間隔Pで複数の加工パスが設定される場合を説明したが、所定間隔Pを制御することとしても良い。具体的には、加工パス設定部76は、ウェブ面のピッチ方向の傾斜量に基づいて所定間隔Pを設定する。例えば、ピッチ方向の傾斜量が少ないほど加工パスの間隔を広げることで、エンドミル60の底面で加工しつつ、加工の重複を低減して工数を抑制することができる。一方で、ピッチ方向の傾斜量が大きい場合には間隔を狭くしてより細かく加工を行うこととしてもよい。
図17は、ウェブ面の加工の流れの概要を示す図である。まず、制御ポイントとしてウェブ面を設定し(SW1)、ウェブ面に対して計測パスを設定する(SW2)。そして、干渉チェックを行い(SW3)、計測を実施する(SW4)。SW3の干渉チェックとは、計測に対して治具20が干渉するか否かのチェックである。干渉する場合には以降の処理は実施されない、またはパス修正される。そして、ウェブ面の面モデルを生成し(SW5)、ウェブ面に対して加工パスを設定する(SW6)。そして、干渉チェックを行い(SW7)、ウェブ面に対して加工を実施する(SW8)。SW7の干渉チェックは、加工の実施に対して治具20が干渉するか否かのチェックである。干渉する場合には以降の処理は実施されない、またはパス修正される。
このように、ウェブ面を加工する場合にはピッチ方向に複数の加工パスがされ、加工パスのそれぞれに傾斜角が設定されることで、ウェブ面をより柔軟で高精度に加工することが可能となる。特に、隣り合う加工パスの加工において、エンドミル60の底面で加工したそれぞれの加工面の段差(ミスマッチ)が閾値以下となるように傾斜角が設定されることで、加工パスの間において加工面を滑らかにして不連続性を抑制することができる。
[フランジ面の加工について]
次に、フランジ面の具体的な加工について説明する。
図18は、ワーク10のフランジ面(上フランジ部12の被加工面12a)を加工する場合の例を示している。なお、フランジ面の幅(高さ寸法)は、エンドミル60の側面で加工可能な範囲よりも狭いものとする。
図18に示すように、フランジ面において、加工パスは工具先端に対して、フランジ面を下端から上端まで加工できるように1つ設定される。すなわち、エンドミル60の底面の中心が加工パスを通過するようにエンドミル60が移動される(工具先端点制御)。
さらに、フランジ面の加工パスには、1つの傾斜角(固定傾斜角)が設定される。このため、傾斜制御部77dは、1つの加工パスに沿ってエンドミル60が移動してフランジ面の加工を行う間、エンドミル60を固定傾斜角で一定とする。すなわち、1つのフランジ面に対しては姿勢を変更せず一発加工となる。角度が固定された状態で加工パスに沿ってエンドミル60が移動されることで所定深さの削り込みができる。
固定傾斜角は、フランジ面の計測結果よりフランジ面の長手方向の複数の位置における傾斜角(フランジ面の傾斜角)の平均値または中央値を用いることが好ましい。フランジ面において傾斜のばらつきがあっても、平均値または中央値を固定傾斜角とすることで、過度な削り込みや削り残しを抑制して、フランジ面の傾斜の均等化を図ることができる。
図19は、フランジ面の加工の流れの概要を示す図である。まず、制御ポイントとしてフランジ面を設定し(SF1)、フランジ面に対して計測パスを設定する(SF2)。そして、干渉チェックを行い(SF3)、計測を実施する(SF4)。SF3の干渉チェックとは、計測に対して治具20が干渉するか否かのチェックである。干渉する場合には以降の処理は実施されない、またはパス修正される。そして、フランジ面の面モデルを生成し(SF5)、フランジ面に対して加工パスを設定する(SF6)。そして、干渉チェックを行い(SF7)、フランジ面に対して加工を実施する(SF8)。SF7の干渉チェックとは、加工に対して治具20が干渉するか否かのチェックである。干渉する場合には以降の処理は実施されない、またはパス修正される。
このように、フランジ面については、1つのフランジ面に1つの傾斜角(固定傾斜角)を設定し、加工を行う場合に傾斜角が固定される。このため、フランジ面について傾斜角を均等に加工することができる。
[R面の計測及び加工について]
次に、R面の具体的な計測及び加工について説明する。
R面は、フランジ面とウェブ面とを接続する部分であり、設計モデルに対して大きな誤差が発生しやすい。このため、再計測パス設定部78の処理を用いて、複数計測を実施する。
図20は、設計モデルに基づいてワーク10を計測する場合の例を示す図である。なお、プローブ93を用いて計測を行う場合を例として説明する。設計モデルに基づいて計測パスを設定した場合、設計形状のワーク10に対して計測ポイント(計測パス上のポイント)が設定される。図20では、設計モデルのR面94に計測ポイントをP1、P2、P3として示している。例えば、P1の計測ポイントに対して計測を行うと、加工システム70側では、P1の計測結果として認識される。
しかしながら、設計モデルに対して形状誤差が大きいR面を計測する場合、図21のように、本来は計測ポイント(P1、P2、P3)に対応する実際のワーク10のR面95の計測ポイントであるPa1、Pa2、Pa3を計測したいにも関わらず、プローブ93の計測位置が、計測ポイントとずれた位置(Pb1、Pb2、Pb3)となる可能性がある。このような場合には、加工システム70側では、例えば、Pb1の計測結果をPa1の計測結果として認識してしまう。このため、計測誤差を含む計測結果に基づいて面モデルを生成すると、図22に示すように、実際のワーク10のR面95とは異なる面モデル96が生成される可能性がある。
このため、R面に対する計測を行う場合には、再計測パス設定部78による処理を適用する。具体的には、ウェブ面等と同様に、設計モデルに基づいて計測パスを設定して、計測を行う(図21に対応)。そして、計測結果に基づいて面モデルを生成する(図22に対応)。その後に、再計測パス設定部78により、面モデル(図22の面モデル96)に基づいて計測パスを設定する。すなわち、面モデル上に、計測を実施する箇所を示す計測パス(再計測パス)を設定する。そして、図23に示すように、再計測パスに基づいて計測を実施する。これにより、面モデルに対して設定された計測ポイントと、ワーク10に対して実際計測される計測位置との誤差が少なくなる。そして、再計測パスによる計測結果に基づいて面モデルが再生成される。
加工パス設定部76は、再生成された面モデルに基づいて加工パスを生成する。これによって、設計モデルに対して誤差の大きいR面を、精度よく面モデル化し、加工を実施することができる。
図24は、R面の加工の流れの概要を示す図である。まず、制御ポイントとしてR面を設定し(SR1)、R面に対して計測パスを設定する(SR2)。そして、干渉チェックを行い(SR3)、計測を実施する(SR4)。SR3の干渉チェックとは、計測に対して治具20が干渉するか否かのチェックである。干渉する場合には以降の処理は実施されない、またはパス修正される。そして、R面の面モデルを生成する(SR5)。その後、R面に対して再計測パスを設定する(SR6)。そして、干渉チェックを行い(SR7)、再計測パスに基づく計測を実施し(SR8)、R面の面モデルを再生成する(SR9)。SR7の干渉チェックとは、SR3の干渉チェックと同様である。そして、R面に対して加工パスを設定する(SR10)。そして、干渉チェックを行い(SR11)、R面に対して加工を実施する(SR12)。SR11の干渉チェックとは、加工に対して治具20が干渉するか否かのチェックである。干渉する場合には以降の処理は実施されない、またはパス修正される。
このように、R面に対しては、複数回の計測により面モデルが生成され、加工パスが設定される。
図25は、R面を加工する場合の例を示す図である。図25では、R部14のR面である隅R面99aと、R部15のR面である角R面99bとを加工する場合を示している。隅R面99aを、設計形状と等しい曲率半径のボールエンドミルで加工する場合、ワーク10が設計形状に対して形状誤差を有していると、余計な削り込みが発生してミスマッチが生じる可能性がある。このため、隅R面99aを加工する場合には、ボールエンドミルまたはラジアスエンドミルで加工することが好ましい。なお、隅R面99aの設計形状の曲率半径よりも小さい曲率半径のボールエンドミル97で加工することとしてもよい。
角R面99bを、設計形状と等しい曲率半径の逆Rカッターで加工する場合、ワーク10が設計形状に対して形状誤差を有していると、削り残し・込みが発生してミスマッチが生じる可能性がある。このため、角R面99bを加工する場合には、角R面99bの設計形状の曲率半径よりも大きい曲率半径の逆Rを持ち、かつ、逆R部が90度未満(切刃としてのR部角度が90度未満)の逆Rカッター(コーナーRカッター)98で加工することが好ましい。図25に示すように、逆Rカッター98は、R部のR角度が90度未満となる。逆Rカッター98のR部の両端にはノーズr部があり、このノーズr部はエッジの食い込みやミスマッチを防止して、加工面を滑らかにする。ノーズr部のr角度は必要最低限でよく、例えば10度以上である。
そして、図25に示すように、R面に対して加工パスを設定し、それぞれで姿勢制御しながら加工を行う。加工は上下面との繋ぎ部、R部の最小3パスで加工することが可能である。具体的には、加工パスは、フランジ面とR面の繋ぎ部と、ウェブ面とR面の繋ぎ部と、R部のR面とのそれぞれに対応して設定されることで、3パスで効率的に加工が可能である。なお、面粗度に応じてパス数を調整してもよい。これにより、他の面とのミスマッチの発生が抑制される。特に、角R面99bのような角Rの部分について、シートフレームのような角度誤差を持つワークであっても、逆Rカッター98を用いてR形状に追従して加工を行う。逆R部が90度未満の特殊な逆Rカッター98(通常の逆Rカッターは、逆R部が90度)を用いることで、パス数を少なくして(例えば最小3パス)効率的に角R面99bを加工することが可能となる。R形状に沿って追加工するため、図25に示すように、逆Rカッター98の全面を使用しながら(逆Rカッターの)精度よく加工を行うことができる。すなわち、逆Rカッター98の加工を行う部であるR部の全面を角R面99bに沿うように加工を行う。例えば、通常の逆Rカッターは、R部の一部(全面ではない)をワークの角に当てて加工を行うものである。
なお、上記の例では、図25に示すような工具でR面を加工する場合について説明したが、ラジアスエンドミルを用いても良い。
なお、R部16のR面(角R面)についても同様に加工することとしてもよい。
[加工処理について]
次に、上述の加工システム70による加工処理の一例について図26及び図27を参照して説明する。図26及び図27は、本実施形態に係る加工処理の手順の一例を示すフローチャートである。図26及び図27ではフローを分割して示している。
まず、ワーク10の設計モデルを読み込む(S101)。次に、加工対象面を設定する(S102)。加工対象面とは、ウェブ面、フランジ面、R面である。次に、分割された加工対象面のうち1つを選択する(S103)。次に、R面が選択されているか否かを判定する(S104)。R面でない場合(S104のNO判定)には、設計モデルに基づいて、選択されている加工対象面に対して、計測パスを設定する(S105)。そして、計測パスに基づいて計測を実施する(S106)。
次に、設計モデルと計測結果との差が閾値以下か否かを判定する(S107)。例えば設計モデルと計測結果との差(ズレ)が閾値以下でない箇所が1箇所でもあれば、S107はNO判定となる。設計モデルと計測結果との差が閾値以下でない場合(S107のNO判定)には、計測結果に誤りがあるか、ワーク10の形状が設計モデルと大きく離れているとして、アラームを通知する(S108)。このアラームによって、加工前の段階で不良を通知することができる。
次に、設計モデルと計測結果との差が閾値以下である場合(S107のYES判定)には、選択されている加工対象面について、計測結果に基づいて面モデルを生成する(S109)。次に、分割された各加工対象面のすべての計測が終了したか否かを判定する(S110)。すべての計測が終了していない場合(S110のNO判定)には、選択された加工対象面と異なる加工対象面を選択し(S111)、S104を再度実行する。
R面が選択されている場合(S104のYES判定)には、R面の設計モデルに基づいて計測パスを設定する(S112)。そして、計測パスに基づいて計測を実施する(S113)。次に、設計モデルと計測結果との差が閾値以下か否かを判定する(S114)。S114がYES判定である場合には、S107へ処理が移行する。差が閾値以下でない場合(S114のNO判定)には、計測結果に基づいてR面の面モデルを生成する(S115)。そして、生成された面モデルに基づいて再計測パスを設定し(S116)、再度の計測を実施する(S113)。S115及びS116の処理によって、計測誤差が少なくなり、S114はYES判定となりやすくなる。
そして、すべての計測が終了した場合(S110のYES判定)には、各面モデルを統合して、部品モデルを生成する(S117)。次に、部品モデルに矛盾があるか否かを判定する(S118)。S118では、具体的には、面モデルと面モデルとの間のギャプ及び段差の少なくともいずれか一方が所定値以上である場合に、矛盾があり(S118のYES判定)と判定される。S118がYES判定である場合には、正確に部品モデルが生成できていないとして、アラームを通知する(S119)。
S118がNO判定である場合には、特定の加工対象面を選択し(S120)、部品モデルに基づいて選択された加工対象面に対応する加工パスを生成する(S121)。加工パスは、姿勢制御のための傾斜角情報も含んで設定される。そして、各加工対象面のすべてに対して加工パスが設定されたか否かを判定する(S122)。すべての加工対象面に対して加工パスが設定されていない場合(S122のNO判定)には、選択された加工対象面と異なる加工対象面を選択し(S123)、S121を再度実行する。すべての加工対象面に対して加工パスが設定された場合(S122のYES判定)には、加工パスに基づいて、各加工対象面に対する加工をそれぞれ実施する(S124)。S124では、例えば、フランジ面、ウェブ面、及びR面など、予め設定された順番で各加工対象面の加工が実施される。
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、フランジ部12,13を当接面42,43に押し当てる押圧工程と、エンドミル60を円弧形状の弧の方向に送ることでエンドミルの外周刃62でフランジ部12,13を切削するフランジ切削工程と、エンドミル60を弧の方向に送ることでエンドミル60の底刃61でウェブ部11を切削するウェブ切削工程と、を含むので、段取替えをすることなくフランジ部12,13及びウェブ部11の各面に対して板厚加工を行うことができる。
また、当接工程によって、フランジ部12,13を当接面42,43に沿った形状とするとともに、ウェブ部11には敢えてひずみを引き起こすこととした。これによって、フランジ部12,13はひずみのない滑らかな面となるのでエンドミル60の外周刃62による板厚加工が容易になる、また、ウェブ部11はひずみが生じた面となるが、エンドミル60の姿勢を制御することでひずみの形状に倣った切削(板厚加工)を実現できる。
また、R部14,15,16の形状に倣った切刃を有する工具(ボールエンドミル97や逆Rカッター98)を使用することで、少ないパスで効率的に、かつ、高精度にR部14,15,16を加工することができる。
ここで、逆Rカッター98を使用する場合、切刃の全面でR部15,16を切削することができる。なお、一般的に、逆Rカッターは、稜線をもつような角部に対してラウンド形状を形成する際に使用される。この場合、切刃の全面を切削に使用することはない。
また、押圧工程では、フランジ部12,13の端部に接線方向に沿う荷重を入力することでフランジ部12,13を当接面42,43に押し当てるので、簡便な荷重の入力方法によってフランジ部12,13を均等かつ強力に当接面42,43に押し当てることができる。
また、フランジ切削工程では、フランジ部12,13を1パスで切削するので、滑らかなシングルコンターとされた加工面(加工済みの面)とすることができる。
また、ウェブ切削工程では、ウェブ部11を複数のパスで切削するので、エンドミル60の姿勢を制御することでひずみの形状に倣った切削を実現できる。
また、ウェブ切削工程では、押圧工程でウェブ部11に生じたひずみの形状に倣うようにエンドミル60の姿勢を変化させてエンドミル60を送るので、ひずみの形状に因らず一定の削込量でウェブ部11の板厚加工をすることができる。すなわち、ひずみの形状をほぼ転写するようにウェブ部11の板厚加工をすることができる。
また、ウェブ部11の一端から他端に向かって延びる複数本のカッターマークMが加工面に形成され、隣り合うカッターマークM同士の間隔がカッターマークMの延在方向に沿って変化している部分を有するので、カッターマークMの形状によりひずみの形状を予測することできる。また、カッターマークMの形状の変化により、エンドミル60が予定していたパスを通過したかどうか、エンドミル60の挙動(姿勢)に異常がなかったかどうか等を判断することができる。
このようなカッターマークMが形成されたウェブ部11の被加工面11aにおいては段差(ミスマッチ)が抑制されているので、ミスマッチ部分における応力集中を低減できる。これによって、手仕上げをすることなく、強度的に必要とされるウェブ部11の板厚が確保され、かつ、ミスマッチに起因した応力集中の発生が抑制された加工品を提供できることになる。
以上の通り説明した実施形態に係る加工方法は、例えば以下のように把握される。
すなわち、本開示の一態様に係る加工方法は、治具(20)に設置された被加工材料(10)を工具(60)で加工する加工方法であって、前記被加工材料は、平面視で円弧形状とされた板状のウェブ部(11)及び前記ウェブ部の前記円弧形状に沿った縁から曲折して立設するフランジ部(12,13)を有し、前記工具は、底刃(61)及び外周刃(62)を有し、前記治具は、前記ウェブ部が載置される載置面(41)及び前記フランジ部が面で当接する当接面(42,43)を有し、前記フランジ部を前記当接面に押し当てる押圧工程と、前記工具を前記円弧形状の弧の方向に送ることで前記工具の前記外周刃で前記フランジ部を切削するフランジ切削工程と、前記工具を前記弧の方向に送ることで前記工具の前記底刃で前記ウェブ部を切削するウェブ切削工程と、を含む。
本態様に係る加工方法によれば、治具に設置された被加工材料を工具で加工する加工方法であって、被加工材料は、平面視で円弧形状とされた板状のウェブ部及びウェブ部の円弧形状に沿った縁から曲折して立設するフランジ部を有し、工具は、底刃及び外周刃を有し、治具は、ウェブ部が載置される載置面及びフランジ面が当接する当接面を有し、フランジ部を当接面に押し当てる押圧工程と、工具を円弧形状の弧の方向に送ることで工具の外周刃でフランジ部を切削するフランジ切削工程と、工具を弧の方向に送ることで工具の底刃でウェブ部を切削するウェブ切削工程と、を含むので、段取替えをすることなくフランジ部及びウェブ部の各面に対して板厚加工を行うことができる。
また、当接工程によって、フランジ部を当接面に沿った形状とするとともに、ウェブ部には敢えてひずみを引き起こすこととした。これによって、フランジ部はひずみのない滑らかな面となるので工具の外周刃による板厚加工が容易になる、また、ウェブ部はひずみが生じた面となるが、工具の姿勢を制御することでひずみの形状に倣った切削(板厚加工)を実現できる。
また、本開示の一態様に係る加工方法は、治具に設置された被加工材料を複数種類の工具で加工する加工方法であって、前記被加工材料は、平面視で円弧形状とされた板状のウェブ部、前記ウェブ部の前記円弧形状に沿った縁から曲折して立設するフランジ部、及びウェブ部とフランジ部とを滑らかに接続するR部(14,15)を有し、一の前記工具は、底刃及び外周刃を有し、他の前記工具(97,98)は、前記R部の形状に倣った切刃を有し、前記治具は、前記ウェブ部が載置される載置面及び前記フランジ部が面で当接する当接面を有し、前記フランジ部を前記当接面に押し当てる押圧工程と、前記一の前記工具を前記円弧形状の弧の方向に送ることで前記一の前記工具の前記外周刃で前記フランジ部を切削するフランジ切削工程と、前記一の前記工具を前記弧の方向に送ることで前記一の前記工具の前記底刃で前記ウェブ部を切削するウェブ切削工程と、前記他の前記工具を前記弧の方向に送ることで前記他の前記工具の前記切刃で前記R部を切削するR部切削工程と、を含む。
本態様に係る加工方法によれば、段取替えをすることなくフランジ部、ウェブ部及びR部の各面に対して板厚加工を行うことができる。また、R部の形状に倣った切刃を有する工具を使用することで、少ないパスで効率的に、かつ、高精度にR部を加工することができる。
また、本開示の一態様に係る加工方法において、前記押圧工程では、前記フランジ部の端部に接線方向に沿う荷重を入力することで前記フランジ部を前記当接面に押し当てる。
本態様に係る加工方法によれば、押圧工程では、フランジ部の端部に接線方向に沿う荷重を入力することでフランジ部を当接面に押し当てるので、簡便な荷重の入力方法によってフランジ部を均等かつ強力に当接面に押し当てることができる。
また、本開示の一態様に係る加工方法において、前記フランジ切削工程では、前記フランジ部を1パスで切削する。
本態様に係る加工方法によれば、フランジ切削工程では、フランジ部を1パスで切削するので、滑らかなシングルコンターとされた加工面(加工済みの面)とすることができる。
また、本開示の一態様に係る加工方法において、前記ウェブ切削工程では、前記ウェブ部を複数のパスで切削する。
本態様に係る加工方法によれば、ウェブ切削工程では、ウェブ部を複数のパスで切削するので、工具の姿勢を制御することでひずみの形状に倣った切削を実現できる。
また、本開示の一態様に係る加工方法において、前記ウェブ切削工程では、前記押圧工程で前記ウェブ部に生じたひずみの形状に倣うように前記工具の姿勢を変化させて前記工具を送る。
本態様に係る加工方法によれば、ウェブ切削工程では、押圧工程でウェブ部に生じたひずみの形状に倣うように工具の姿勢を変化させて工具を送るので、ひずみの形状に因らず一定の削込量でウェブ部の板厚加工をすることができる。すなわち、ひずみの形状をほぼ転写するようにウェブ部の板厚加工をすることができる。
また、本開示の参考態様に係る加工品は、平面視で円弧形状とされた板状のウェブ部及び前記ウェブ部の前記円弧形状に沿った縁から曲折して立設するフランジ部を有するとともに、前記ウェブ部の一の面が加工面とされた加工品であって、前記ウェブ部の一端から他端に向かって延びる複数本のカッターマークが前記加工面に形成された加工品であって、隣り合う前記カッターマーク同士の間隔が前記カッターマークの延在方向に沿って変化している部分を有している。
本態様に係る加工品によれば、ウェブ部の一端から他端に向かって延びる複数本のカッターマーク(M)が加工面に形成され、隣り合うカッターマーク同士の間隔がカッターマークの延在方向に沿って変化している部分を有するので、カッターマークの形状によりひずみの形状を予測することできる。また、カッターマークの形状の変化により、工具が予定していたパスを通過したかどうか、工具の挙動(姿勢)に異常がなかったかどうか等を判断することができる。
また、本開示の参考態様に係る加工品において、前記カッターマークは、前記一端から前記他端に向かう連続した線において波形状に形成された部分を有している。
また、本開示の参考態様に係る加工品において、前記カッターマークは、前記一端から前記他端に向かう連続した線において尖点を有している。
10 ワーク(対象部品)
11 ウェブ部
11a 被加工面
11b 被載置面
12 上フランジ部
12a 被加工面
12b 被当接面
13 下フランジ部
13a 被加工面
13b 被当接面
14 R部
15 R部
16 R部
20 治具
30 ベース
31 ベース側段部
32 ベアリング
33 位置決めピン
40 設置ブロック
41 載置面
42 上フランジ当接面
43 下フランジ当接面
44 昇降機構
50 クランプ
51 クランプ本体
51a 回動部
51b 脚部
51c クランプ側段部
52 荷重ボルト
53 荷重ブロック
60 エンドミル
61 底刃
62 外周刃
70 加工システム
71 設定部
72 計測パス設定部
73 計測部
74 面モデル生成部
75 部品モデル生成部
76 加工パス設定部
77 移動制御部
77a 送り方向制御部
77b ピッチ方向制御部
77c 直交方向制御部
77d 傾斜制御部
78 再計測パス設定部
81 CPU
82 メインメモリ
83 記憶部
84 外部インターフェース
85 通信インターフェース
86 入力部
87 表示部
91 加工前面
92 加工後理想面
93 プローブ
94 R面
95 R面
96 面モデル
97 ボールエンドミル
98 逆Rカッター
99a 隅R面
99b 角R面
P 所定間隔
PP1 第1加工パス
PP2 第2加工パス
ΔE 加工誤差
ΔM ミスマッチ(段差)

Claims (6)

  1. 治具に設置された被加工材料を工具で加工する加工方法であって、
    前記被加工材料は、平面視で円弧形状とされた板状のウェブ部及び前記ウェブ部の前記円弧形状に沿った縁から曲折して立設するフランジ部を有し、
    前記工具は、底刃及び外周刃を有し、
    前記治具は、前記ウェブ部が載置される載置面及び前記フランジ部が面で当接する当接面を有し、
    前記フランジ部を前記当接面に押し当てる押圧工程と、
    前記工具を前記円弧形状の弧の方向に送ることで前記工具の前記外周刃で前記フランジ部を切削するフランジ切削工程と、
    前記工具を前記弧の方向に送ることで前記工具の前記底刃で前記ウェブ部を切削するウェブ切削工程と、
    を含む加工方法。
  2. 治具に設置された被加工材料を複数種類の工具で加工する加工方法であって、
    前記被加工材料は、平面視で円弧形状とされた板状のウェブ部、前記ウェブ部の前記円弧形状に沿った縁から曲折して立設するフランジ部、及びウェブ部とフランジ部とを滑らかに接続するR部を有し、
    一の前記工具は、底刃及び外周刃を有し、
    他の前記工具は、前記R部の形状に倣った切刃を有し、
    前記治具は、前記ウェブ部が載置される載置面及び前記フランジ部が面で当接する当接面を有し、
    前記フランジ部を前記当接面に押し当てる押圧工程と、
    前記一の前記工具を前記円弧形状の弧の方向に送ることで前記一の前記工具の前記外周刃で前記フランジ部を切削するフランジ切削工程と、
    前記一の前記工具を前記弧の方向に送ることで前記一の前記工具の前記底刃で前記ウェブ部を切削するウェブ切削工程と、
    前記他の前記工具を前記弧の方向に送ることで前記他の前記工具の前記切刃で前記R部を切削するR部切削工程と、
    を含む加工方法。
  3. 前記押圧工程では、前記フランジ部の端部に接線方向に沿う荷重を入力することで前記フランジ部を前記当接面に押し当てる請求項1又は2に記載の加工方法。
  4. 前記フランジ切削工程では、前記フランジ部を1パスで切削する請求項1から3のいずれか1項に記載の加工方法。
  5. 前記ウェブ切削工程では、前記ウェブ部を複数のパスで切削する請求項1から4のいずれか1項に記載の加工方法。
  6. 前記ウェブ切削工程では、前記押圧工程で前記ウェブ部に生じたひずみの形状に倣うように前記工具の姿勢を変化させて前記工具を送る請求項5に記載の加工方法。
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