JP7424108B2 - 熱処理済未燒結積層造形用銅合金粉末及びその製造方法 - Google Patents

熱処理済未燒結積層造形用銅合金粉末及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱処理済未燒結積層造形用に好適な銅合金粉末及びその製造方法に関する。
近年、金属粉末をレーザー光や電子ビームの照射によって焼結するか溶融して固化させることにより、立体的な造形物を製造する金属AM(Additive Manufactuaring)の技術開発がなされている。
この金属AMのうち、レーザーを用いたSLM(セレクティブレーザーメルティング)法では、レーザー光として、ファイバーレーザーなど、近赤外波長域のレーザー光が広く用いられている。適用する金属材料としては、これまで、レーザー光の吸収率が良好であるマルエージング鋼、ステンレス鋼(SUS)、チタン(Ti)などが用いられている。
しかし、従来から、金属AMの粉末粒子材料として、マルエージング鋼、ステンレス鋼(SUS)、チタン(Ti)のみでなく、近赤外波長域のレーザー光の吸収率が低い銅やアルミニウムなども採用したいという要望がある。
銅及び銅合金は、高熱伝導性によるエネルギー拡散が大きいこと、ファイバーレーザーで用いられる、近赤外波長域でのレーザー光の吸収率の低さに起因し、レーザーを用いた溶融が困難、もしくは低効率となってしまう問題があった。
そのため、例えば、以下の特許文献1に記載のように、表面酸化被膜や黒色被膜を用いたレーザー光吸収率の向上手法が既知の技術として知られている。
また、以下の特許文献2には、積層造形向けのCu合金粉末としてクロムまたは珪素を含むCu合金について開示されている。
特開2017-141505号公報 特開2016-211062号公報
ところで、レーザー光の吸収率の低い銅合金の粉末を用いて積層造形を実現させようとする要望は高く、銅合金の粉末について、レーザー光の吸収率を向上させる工夫が必要と考えられる。
先の特許文献1に記載されている技術によると、酸化皮膜の形成により造形物中の酸素量が増加し、それに伴い熱伝導率が低下する問題がある。
先の特許文献2に記載されている技術によると、クロムと珪素の少なくとも何れかを含むCu合金粉末を積層造形用途に用いることで、機械強度および導電率を両立できることは記載されているが、クロムまたは珪素を含む銅合金とレーザー光の吸収率との関係は開示されていない。
また、クロムや珪素などを含む銅合金は、これら元素の添加により電気伝導率や熱伝導率は低下するおそれがあり、熱交換部材などへの適用時にこれらの特性を低下させるおそれがある。
本発明は前記の問題に鑑み創案されたものであり、その目的は、積層造形用途に好適であり、レーザー光の吸収率を向上させた熱処理済未燒結積層造形用銅合金粉末及びその製造方法を提供することにある。
(1)上記目的を達成するために本発明の一形態に係る熱処理済未燒結積層造形用銅合金粉末は、Sを0.01質量%以上1.0質量%以下含む銅合金からなる粉末中に、Cu1.96S、CuSの何れかもしくは複数からなるCu-S系金属間化合物が複数分散されている組織を有し、かつ、粉末のゆるみかさ密度が3.8g/cm以上であることを特徴とする。
(2)本発明の一形態に係る熱処理済未燒結積層造形用銅合金粉末において、波長1064μmのレーザー光に対する1.2eVのバンドギャップを有することが好ましい。
(3)本発明の一形態に係る熱処理済未燒結積層造形用銅合金粉末において、メディアン径(D50)が19~31μmであることが好ましい。
本発明者は、レーザ光吸収率の低い銅粉末に対しレーザー光吸収率を高めるための研究開発を行っており、種々研究を行ったところ、銅合金の素地中にCu-S系の金属間化合物を析出させることで、近赤外波長域のレーザー光の吸収率を向上できることを見出した。
Cu1.96SまたはCuSで示される金属間化合物は、フィバーレーザーの中心波長である1064nmに対応する1.2eV程度のバンドギャップを有すると考えられる。このため、これらの金属間化合物を銅合金からなる粉末表面に分散させるならば、銅合金粉末を提供でき、積層造形用に好適な銅合金粉末を提供できる。
(4)本発明の一形態に係る積層造形用銅合金粉末の製造方法は、Cu1.96S、CuSの何れかもしくは複数からなるCu-S系金属間化合物が表面に複数分散されている銅合金粉末の製造方法であり、Sを含む銅合金の溶湯を凝固させて得られた、0.01質量%以上1.0質量%以下のSを含有していることを特徴とする合金粉末に対し、300℃以上600℃以下の条件で熱処理することを特徴とする。
本発明の一形態に係る積層造形用銅合金粉末によれば、ファイバーレーザーの中心波長である近赤外波長域でのレーザー光の吸収率に優れるため、ファイバーレーザーを用いた溶融が可能となり、レーザー積層造形用の銅合金粉末として好適に用いることができる。
また、本発明の一形態に係る積層造形用銅合金粉末は、表面の酸化被膜が不要のため、酸化被膜を必要としていた従来の銅粉末に比べ、酸素などの不純物の影響を最小限に抑えることができる。このため、本発明の一形態に係る銅合金粉末を積層造形用とすると、造形物中の酸素量を増やすことがなく、熱伝導率低下を引き起こすことのない積層造形物を製造することを可能とする。
図1は第1実施形態に係る積層造形用銅合金粉末の一例を示す部分断面図である。 図2は実施例において製造した積層造形用銅合金粉末の概形を示す拡大写真である。 図3は実施例1の積層造形用銅合金粉末における熱処理前の金属組織を示す拡大写真と該金属組織におけるSの分布を示す解析図である。 図4は実施例1の積層造形用銅合金粉末における熱処理後の金属組織を示す拡大写真と該金属組織におけるSの分布を示す解析図である。 図5は実施例1の積層造形用銅合金粉末において熱処理後の金属組織における母相部分のCu及びSのEDS分析の検出積算値を示す図である。 図6は実施例1の積層造形用銅合金粉末の熱処理後の金属組織における析出相部分のCu及びSのEDS分析の検出積算値を示す図である。 図7は実施例1において製造した積層造形用銅合金粉末の熱処理前後におけるX線回折パターンを示すグラフである。
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
図1は本発明に係る第1実施形態の積層造形用銅合金粉末の一部を破断して示した側面図である。
本実施形態の積層造形用銅合金粉末1は銅合金からなる粉末本体2の外表面に複数の金属間化合物3が析出されてなる。本実施形態の銅合金粉末1は一例として球形状あるいはそれに類似する形状の粉末本体2と粉末本体2の内部および外周面に析出された複数の微細な粒子状の金属間化合物3を有する。なお、図1では微細な粒子状の金属間化合物3を誇張して描いている。
粉末本体2を構成する銅合金の組成は特に制限されるものではないが、銅に0.01質量%以上1.0質量%以下のS(硫黄)を含有している銅合金を主として用いることができる。
ここで用いる銅合金において、Al、Be、Ca、Cr、La、Mg、Mn、Na、Pb、Sn、Ti、Zn、Zrからなる郡の微量含有元素の合計含有量は0.03質量%以下であることが好ましい。
これらの微量含有元素は、Cuと同程度、もしくは、それ以上に硫化物として安定なため、銅合金中に含まれる量が増加すると、CuにSを添加してもレーザー光の吸収率向上のために必要なCu-S金属間化合物(Cu1.96SまたはCuS)が析出されないおそれがある。そのため、微量含有元素の合計含有量は0.03質量%以下であることが好ましい。
「銅合金粉末のメディアン径」
銅合金粉末1のメディアン径(体積基準の50%平均粒子径))は積層造形用途とした場合、10μm以上、50μm以下であることが好ましい。銅合金粉末1のメディアン径が10μm未満では、粉末の凝集により流動性が低下し、積層造形用原料として不適である。銅合金粉末1のメディアン径が50μmを超える範囲では、レーザー積層造形機にて一般的に用いられる1層あたりの粉末積層厚さに対して、銅合金粉末1の径が大き過ぎるため、均一な粉末積層が出来なくなり、造形不良等の原因となる恐れがある。より好ましい銅合金粉末のメディアン径は、19~31μmである。
「銅合金粉末のゆるみかさ密度」
銅合金粉末1のゆるみかさ密度は積層造形用途とした場合、3.8g/cm以上が望ましい。銅合金粉末1のかさ密度が3.8g/cm未満では、粉末積層時の空隙が多くなり、レーザー溶融後の造形物密度が低下する恐れがある。
「金属間化合物」
金属間化合物3は、Cu1.96S、CuSの何れか一方あるいは両方であり、後述するアトマイズ法により銅合金粉末を形成し、この銅合金粉末に対し300~600℃で熱処理を施して析出させた微粒子状の析出物である。後述するアトマイズ法により溶湯から急冷して製造した銅合金粉末においては、銅合金素地中に過飽和に固溶させたSが含まれており、この銅合金粉末に熱処理を施すことでCuとSの金属間化合物3を複数析出させることができ、目的の銅合金粉末1を得ることができる。
Cu1.96SあるいはCuSで示される金属間化合物は、ファイバーレーザーの中心波長である1064nmに対応する1.2eV程度のバンドギャップを有すると考えられる。このため、通常、2eV程度であるとされるCuのバンドギャップに対し、より低エネルギーで遷移可能な上述の金属間化合物3の析出分散により金属間化合物3がエネルギー吸収を担うため、ファイバーレーザーのレーザー光に対し、銅合金粉末1としての吸収率が向上するものと考えられる。
図3は一例として、後述する実施例において得られたアトマイズ法による積層造形用銅合金粉末の金属組織写真と該金属組織中のSの分布を示し、図4は図3に示す積層造形用銅合金粉末に対し500℃で1時間熱処理した後の金属組織写真の一例と該金属組織中のSの分布を示す。
図4の右側の解析図に明るい輝点で示すように結晶粒内あるいは結晶粒界に粒径1μm以下の複数の粒子状の金属間化合物が析出していることを確認できる。
「銅粉末の製造方法」
本実施形態の積層造形用銅合金粉末1の製造方法は、一例として、銅合金母材を溶解して得た銅合金溶湯を用い、高圧ガス噴霧により球状または球状に類似する形状の粉末を得る手法として知られているガスアトマイズ法を採用できる。
ここで用いる銅合金母材として、0.01質量%以上1.0質量%以下のSを含有している銅合金母材を用いることができる。
また、銅合金母材には、Sの他に、微量含有元素として、Al、Be、Ca、Cr、La、Mg、Mn、Na、Pb、Sn、Ti、Zn、Zrからなる郡のいずれかの元素を1種または2種以上、合計量として0.03質量%以下程度含んでいても良い。
また、銅合金母材の基となる高純度銅として、純度99.99質量%以上99.9999質量%未満の高純度銅を用い、この高純度銅に必要量のCu-S合金を添加して溶解することにより上述の銅合金溶湯を得ることができる。
銅合金粉末1におけるこれら微量元素の含有量測定は、高周波誘導プラズマ発光分析法により実施することができる。
本実施形態においては、ガスアトマイズ法を用いた例を説明したが、粉末製造方法については、この他、水アトマイズ法や遠心力アトマイズ法、誘導結合プラズマ法やプラズマアトマイズ法などによって、銅合金粉末を製造してもよい。
上述の方法により得られた銅合金粉末に対し、雰囲気加熱炉を用い、300℃以上、600℃以下の温度条件、より好ましくは300℃以上、500℃以下の温度条件で10分以上120分以下程度、例えば60分程度加熱後冷却する熱処理を施す。
この熱処理によって、粉末本体2にCu1.96SおよびCuSの何れか一方あるいは両方である金属間化合物を析出させることができる。これらの金属間化合物は、1μm程度以下の粒径を有する微細な粒子状の析出物であり、銅合金粉末の結晶粒内あるいは結晶粒界にランダムに複数析出する。
また、得られた銅合金粉末1の流動調整及び凝集分離を行うために、銅合金粉末1のメディアン径が、10μm以上、50μm以下となるように、分級工程を行うことが望ましい。
分級工程には、篩分法や重力分級、遠心分級などを利用することが出来る。
上述の熱処理後に得られた銅合金粉末1を用い、例えば、3D System社のProX DMPを用いて積層造形を実施できる。
造形条件の一例として、ファイバーレーザーのレーザー出力300W、走査速度200mm/sの条件により積層造形を実施できる。
前述の銅合金粉末であるならば、中心波長1064nmのファイバーレーザーに対するレーザー光の吸収率が高いので、ファイバーレーザー光の照射により銅合金粉末を効率良く発熱させて積層造形物を製造できる。このため、密度が高く、気孔が少なく、硬度の高い積層造形物を製造することができる。
純度(99.999)質量%の高純度銅に必要量のCu-S合金を添加して溶解炉に投入し、銅合金溶湯を作製し、この銅合金溶湯からガスアトマイズ法により表1に示す実施例1~実施例5の銅合金粉末と比較例1~比較例4の銅合粉末を得た。得られた各銅合金粉末を330メッシュ以上、500メッシュ以下の粒度となるように分級した。
表1に実施例1~実施例5の銅合金粉末と比較例1~4の銅合粉末のS含有量を示す。
分級後の銅合金粉末を加熱炉に収容し、表1に示す熱処理条件(加熱温度:℃、加熱時間:時間)にてそれぞれの銅合金粉末を熱処理し、表面にCu-S金属間化合物を析出させた熱処理済みの銅合金粉末を得た。
熱処理済みの銅合金粉末について、平均粒径と平均円形度とゆるみかさ密度を求めた結果を後記する表1に示す。各銅合金粉末のS含有量、平均粒径、平均円形度、ゆるみかさ密度、析出物の同定を以下に説明する方法で測定した。
「S含有量」
HORIBA製 EMIA-810W(管状炉燃焼-赤外吸収法)を用いて各例の銅合金粉末試料中のS濃度を測定し、後に製造する積層造形物のS濃度も同じ方法で測定した。
「平均粒径の測定」
銅合金粉末の平均粒径の測定は、マイクロトラック社製 MT3300EXIIを用い、湿式による粒子径分布の測定を行い、得られた結果の50%累積粒径を平均粒径とした。
「平均円形度」
銅合金粉末の平均円形度は、Malvern社製乾式混合粒子画像分析装置 Morphologi G3Sを用い、作成した銅合金粉末の円形度を測定した。得られた結果の50%累積円形度を平均円形度とした。
「銅合金粉末のゆるみかさ密度」
銅合金粉末のゆるみかさ密度は、日本粉体工業技術協会規格 SAP05-98:2013に準じて、ホソカワミクロン社製パウダテスターPT-Xを用い、粉体を、150メッシュのふるいを通して自然落下させて容器に充填させたときのゆるみかさ密度を測定した。粉末のゆるみかさ密度の算出においては3回の測定の単純平均値を用いた。
「析出物の同定」
析出物の同定は、X線回折装置により回折パターンを測定し、銅合金粉末中の析出物の同定を行い、Cu-S系金属間化合物が形成されていることを確認した。
「析出物の分散状態の測定」
得られた銅合金粉末の断面をSEM-EDS(エネルギー分散型X線分光装置を搭載した走査型電子顕微鏡)によりS元素のマッピング分析画像を取得し、この断面分析画像を利用し画像解析ソフトウェアWinROOF(三谷商事株式会社製:商品名)を用いて析出物を特定し、析出物の面積率算出を行った。
「積層造形物の作製」
次に、熱処理済みの銅合金粉末(実施例1~実施例5と比較例1~比較例4)を用い、3D System社のProX DMP(3Dプリンタ)を用いて、ファイバーレーザのレーザー出力260W、走査速度200mm/s、造形ピッチ120μmの条件により10mm角キューブ状の積層造形物を作製した。
得られた積層造形物について、造形物密度とビッカース硬さを以下に説明する方法で求めた
「造形物密度」
得られた造形物の密度はJIS Z 8807 固体の密度及び比重の測定方法に準じて測定した。
「ビッカース硬さ」
得られた造形物のビッカース硬さは、造形したサンプルを鏡面研磨した後、マイクロビッカースを用いて押しつけ荷重0.05kgf、押しつけ時間10sの条件で50点打点した平均値を求めた。
以上の測定結果をまとめて以下の表1に記載する。
Figure 0007424108000001
表1に結果を示すように、実施例1~5は、Sを含む銅合金からなる粉末の表面に、Cu1.96S、CuSの何れかもしくは複数からなるCu-S系金属間化合物が複数分散されている組織を有し、粉末のゆるみかさ密度が3.8g/cm以上であるので、積層造形を行った場合に密度が高く、ビッカース硬度が高い造形物を得ることができる。
また、実施例1~5を製造した銅合金粉末の表面に析出している析出物は、後に説明するX線回折法による分析の結果、Cu1.96S、CuSの何れかもしくは両方からなるCu-S系金属間化合物であることが明らかとなった。
実施例1~5の銅合金粉末表面及び内部には、断面観察からの解析の結果、Cu-S系金属間化合物が断面面積率で0.10%以上分散していることが確認された。
実施例1~5の銅合金粉末試料の平均粒径は、19~31μmであり、粉末平均円形度は0.96~0.99であり、粉末ゆるみかさ密度は3.8~4.7g/cmの範囲であった。
実施例1~5の銅合金粉末を用いて積層造形した積層造形物は、密度8.14~8.31g/cmの範囲であり、高い密度を示すとともに、45~80Hvの優れたビッカース硬さを示した。
これらの結果から、本発明に係るCu-S系銅合金粉末を用い、ファイバーレーザー光を用いて積層造形した場合、レーザー光の吸収率を高くできる結果、密度が高く、緻密な構造であり、ビッカース硬度の高い積層造形物を製造できることがわかる。
これらに対し比較例1の銅合金粉末は、熱処理を施していないために金属間化合物の析出がみられない。このため、比較例1の銅合金粉末を利用し、積層造形物を作製しても密度が低くビッカース硬度も著しく低い造形物が作製された。
比較例2の銅合金粉末は、銅合金粉末に含まれるS濃度が低いため、金属間化合物の析出がみられない。このため、比較例1の銅合金粉末を利用し、積層造形物を作製しても密度が低くビッカース硬度も著しく低い造形物が作製された。
比較例3の銅合金粉末は、銅合金粉末に含まれるS濃度が高いため、造形物の密度が8.0未満と低い値となった。これは、レーザー溶融時にS蒸気やヒュームが多く発生し、それらの巻き込みによって、造形密度が低下したと考えられる。
比較例4の銅合金粉末は、粉末平均円形度が低く粉末ゆるみかさ密度が低いため、積層造形物を作製しても密度が著しく低く、造形物の空孔の影響で有意なビッカース硬度を測定できない造形物が作製された。
比較例5の銅合金粉末は、熱処理温度を650℃で行い、熱処理温度を高くし過ぎた試料であるが、銅合金粉末が焼結して密着してしまい、積層造形用には適用できない焼結体となった。
図2は、表1に示す実施例1の銅合金粉末の表面外観を示す顕微鏡写真である。この銅合金粉末の外径は約30μmであり、粉末概形はほぼ球形状を呈している。
図3は、表1に示す実施例1の銅合金粉末の熱処理前の金属組織写真を示し、図4は、同実施例の400℃×1時間熱処理後の金属組織写真を示す。図3の金属組織写真の右側にSの分布を示す解析写真を示し、図4の金属組織写真の右側にSの分布を示す解析写真を示すが、図4の解析写真に示すように明るいS濃度の高い部分による輝点が熱処理後に複数生じている。
図5及び図6は、図4に示す銅合金粉末の表面部分を拡大した写真であり、それぞれ図5は母相部分のCu及びSのEDS分析の検出積算値を示し、図6は析出相部分のCu及びSのEDS分析の検出積算値を示している。
図3~図6を対比して明らかなように、熱処理後の試料には、組織表面及び内部に微細な金属間化合物が複数析出していることがわかる。なお、図5に示す母相部分のCu及びSの検出積算値と、図6に示す析出相部分のCu及びSの検出積算値の比較から、図6に示す析出相部分はS濃度が高いため、Cu-S系金属間化合物であると想定できる。
次に、表1に示す実施例1の試料に関し、X線回折装置による回折パターンを求めた結果を図7に示す。
図7に示す回折パターンにおいて、44degree前後と50degree前後に存在する鋭い大きなピークは銅由来のパターンである。
その他、図7における27degree前後、33degree前後、39degree前後、45degree前後に存在する小さなピークは、Cu1.96Sに由来するピークである。
このため、銅合金粉末の表面に析出している析出物はCu1.96Sなる組成の金属間化合物であることが分かった。
以上の対比から、積層造形用途として、Cu1.96S、CuSの何れかもしくは両方からなるCu-S系金属間化合物が複数分散されている組織を有し、粉末のゆるみかさ密度が3.8~4.7g/cm、粉末平均粒径が19~31μm、粉末平均円形度が0.95~0.99の銅合金粉末であれば、密度の高い、ビッカース硬度の高い積層造形物を確実に製造できることが分かった。
1…銅合金粉末、2…粉末本体、3…金属間化合物。

Claims (4)

  1. Sを0.01質量%以上1.0質量%以下含む銅合金からなる粉末中に、Cu1.96S、CuSの何れかもしくは複数からなるCu-S系金属間化合物が複数分散されている組織を有し、かつ、粉末のゆるみかさ密度が3.8g/cm以上であることを特徴とする熱処理済未燒結積層造形用銅合金粉末。
  2. 波長1064μmのレーザー光に対する1.2eVのバンドギャップを有することを特徴とする請求項1に記載の熱処理済未燒結積層造形用銅合金粉末。
  3. メディアン径(D50)が19~31μmである請求項1または請求項2に記載の熱処理済未燒結積層造形用銅合金粉末。
  4. Cu1.96S、CuSの何れかもしくは複数からなるCu-S系金属間化合物が表面に複数分散されている銅合金粉末の製造方法であり、Sを含む銅合金の溶湯を凝固させて得られた、0.01質量%以上1.0質量%以下のSを含有していることを特徴とする合金粉末に対し、300℃以上600℃以下の条件で熱処理することを特徴とする積層造形用銅合金粉末の製造方法。
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