JP7420675B2 - 電池診断装置、電池診断方法 - Google Patents

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Description

本発明は、太陽電池の状態を診断する技術に関するものである。
近年、PPA(Power Purchase Agreement)による太陽光発電システムの設置が急激に普及している。PPAにおいては、需要家が敷地や屋根などのスペースを提供し、PPA事業者が太陽光発電システムなどの発電設備の無償設置と運用・保守を実施する。これにともない、太陽光発電システムのメインとなる市場は、メガソーラーに代表される大規模な太陽光発電システムから、10kW程度の中規模太陽光発電システムにシフトしている。
中規模以下の太陽光発電システムにおいては、メガソーラーのような十分な保守体制を整備することがなく、修理を要する故障を全体の約1割が経験しているにも拘らず、保守点検を全体の約7割が未実施という現状にある。そこで、現状の監視装置から取得される発電データを利用して、診断手法を搭載することが注目されている。
中規模以下の太陽光発電システムにおいては、一般に、敷地や屋根などのスペースを利用するために、日射計や気温計などは設置されない。そのため、部分陰やコネクタが断線した状況などを発電データ(太陽電池の動作電圧や動作電流などの計測値)のみから捉えることが必要となるが、これは一般に困難である。
下記特許文献1は、電流の変動の少ない時間帯を選択することにより、部分陰の影響がない安定した時間において、故障診断をすることを記載している。下記非特許文献1は、人工知能を活用して、電流の変動を学習し、部分陰と故障を切り分ける手法を記載している。
特許6278912号
"A Shadow Fault Diagnosis Method Based on the Quantitative Analysis of Photovoltaic Output Prediction Error", Photovoltaics IEEE Journal of, vol. 10, no. 4, pp. 1158-1165, 2020.
大規模な太陽光発電所は、設計段階において、鉄塔などによる陰の位置を把握可能である。また、太陽電池の動作電流の変動量を設計値と照らしあわせることにより、陰が掛かっているか否かを判断することができる。これに対して中規模以下の太陽光発電システムは、敷地や屋根などのスペースを利用するので、設置条件が多岐にわたる。したがって、様々な変動条件が考えられ、一概に、閾値や判別条件を設定するのが困難である。
特許文献1の技術は、安定と判定される電流変動の閾値を設定する必要がある。非特許文献1の技術は、変動の周期に応じて、適用する手法の組み合わせを設定する必要があり、陰かどうかを判定するためには、非常に多くの学習データや訓練データが必要であると考えられる。したがってこれらの従来技術は、多数の発電所が分散されて設置されている中規模太陽電池設備における陰や断線の判定には適していないと考えられる。
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、太陽電池において部分陰または部分断線が生じたことを、動作電流や動作電圧の測定値に基づき精度よく検出することができる、電池診断装置を提供することを目的とする。
本発明に係る電池診断装置は、太陽電池の動作電流と動作電圧を、前記太陽電池が標準日射量と標準温度の下で動作していると仮定した場合における値へ換算し、前記太陽電池が前記標準日射量と前記標準温度の下で動作しているときの標準電流よりも換算標準電流のほうが閾値以上大きければ、前記太陽電池が部分陰状態または部分断線状態にあると診断する。
本発明に係る電池診断装置によれば、太陽電池において部分陰または部分断線が生じたことを精度よく検出することができる。上記以外の課題、構成、効果などについては、以下の実施形態の説明により明らかになる。
太陽電池ストリング1と太陽電池モジュール1aの等価回路図である。 太陽光発電システムの構成例を示す図である。 太陽光発電システムの別構成例を示す図である。 部分陰状態を模式的に示す図である。 部分陰が生じたときにおける太陽電池の動作状態の変動を説明する図である。 部分断線状態を示す図である。 部分断線状態におけるIV特性の例を示す。 正常動作時におけるIV特性を標準日射量と標準温度の下における値へ換算する例を示す。 部分陰状態におけるIV特性を標準日射量と標準温度の下における値へ換算する例を示す。 部分断線状態におけるIV特性を標準日射量と標準温度の下における値へ換算する例を示す。 電池診断装置100が太陽電池の状態を診断する手順を説明するフローチャートである。 電池診断装置100が太陽電池の状態を診断する手順を説明するフローチャートである。 図11A~図11Bの変形例である。 太陽電池が故障したときにおけるIV特性を標準日射量と標準温度の下における値へ換算する例を示す。 実施形態2において電池診断装置100が太陽電池の状態を診断する手順を説明するフローチャートである。
<実施の形態1>
図1は、太陽電池ストリング1と太陽電池モジュール1aの等価回路図である。太陽電池ストリング1は、太陽電池モジュール1aを複数枚直列に並べることによって構成される。太陽電池モジュール1aは、太陽電池セル12aを複数枚直列に並べ、各太陽電池セル12aがバイパスダイオード12bによってバイパスされたものとして表すことができる。太陽電池セル12aの等価回路は、電流源12c、pn接合ダイオード12e、シャント抵抗12f(並列抵抗)、直列抵抗12gを有する。電流源12cは日射量に比例した電流を供給する。太陽電池モジュール1a内のいずれかの太陽電池セル12aが故障すると、その故障した太陽電池モジュール1aはバイパスダイオード12bによってバイパスされる。
太陽電池の特性について説明する。開放電圧時は、電流源12cの電流が、pn接合ダイオード12eとシャント抵抗12fの組み合わせ12dに流れ込む。簡単のため、シャント抵抗12fが十分に大きいと設定し、直列抵抗12gが十分に小さいと設定する。電圧Vにおいて、セル数がNcellで構成される太陽電池式は、下記式1で表すことができる。I:太陽電池セルの出力電流[A]、Is:ダイオードの逆飽和電流[A]、V:太陽電池セルの出力電圧[V]、Isc:短絡電流[A]、T:太陽電池セルの絶対温度[K]、k:ボルツマン定数、q:電子の電荷量[C]、nf:接合定数、p:日射量[kW/m]である。
I=Isc・p-Is・{exp((q・(V/Ncell))/(n・k・T))}・・・(1)
図2は、太陽光発電システムの構成例を示す図である。太陽光発電システムは、複数の太陽電池ストリング1を束ねるパワーコンディショナ21、DC・DCコンバータ23、インバータ24によって構成される。パワーコンディショナ21は、太陽電池ストリング1に電流が流れ込むのを防止するための逆流防止ダイオード21aおよび21c、電流経路を遮断するための遮断器21bおよび21d、を備える。DC・DCコンバータ23によって、複数の太陽電池ストリング1は一括で制御される。DC・DCコンバータ23によって昇降圧された直流電圧と直流電流は、インバータ24によって交流に変換され系統に連系される。
電池診断装置100は、太陽電池モジュール1a(または太陽電池ストリング1)の状態を診断する装置である。電池診断装置100は、データ取得部110と演算部120を備える。データ取得部110は、太陽電池モジュール1aの動作電圧と動作電流を記述したデータを取得する。例えばパワーコンディショナ21に接続された計測器からこれらを取得してもよいし、その他適当な計測装置からこれらを取得してもよい。演算部120は、その動作電圧と動作電流を用いて、太陽電池モジュール1aの状態を診断する。診断手順については後述する。
図3は、太陽光発電システムの別構成例を示す図である。図2においては、単一のDC・DCコンバータ23に対して複数の太陽電池ストリング1が並列接続されているが、図3においては太陽電池ストリング1ごとにDC・DCコンバータ23(それぞれ23aと23b)を備えている。各DC・DCコンバータ23は、インバータ24に対して並列接続されている。
図4は、部分陰状態を模式的に示す図である。太陽電池ストリング1からの出力電圧は、各太陽電池モジュール1aからの出力電圧の総和である。太陽電池ストリング1が有する太陽電池モジュール1aのうちいずれか一部が陰状態になると、太陽電池ストリング1の動作状態が変動する。同様に、太陽電池モジュール1aの一部が陰状態になった場合においても、太陽電池モジュール1aの動作状態が変動する。いずれの場合においても、太陽電池制御装置は、陰状態の下で発電効率が最大となるように、動作電圧や動作電流を制御する。
図5は、部分陰が生じたときにおける太陽電池の動作状態の変動を説明する図である。図5上段はIV特性(太陽電池の動作電流Iと動作電圧V)を示し、図5下段はPV特性(太陽電池の出力電力Pと動作電圧V)を示す。太陽電池は正常動作時において、出力電力Pが最大となる動作点で動作する。部分陰が生じると、動作電流Iと出力電力Pが低下する。太陽電池制御装置はその後、新たな最適動作点(出力電力Pが最大となる動作点)を探索する。この新たな最適動作点は、局所解に捕捉されることによって必ずしも最適ではない場合がある。
特に部分陰が生じた場合においては、動作電流Iと出力電力Pの低下量がわずかなことがある。このとき、新たな最適動作点へ遷移したとしても、その遷移幅もわずかであるので、部分陰が生じたことを検出できない可能性がある。したがって、部分陰を精度よく検出することができる手法が望まれる。
図6は、部分断線状態を示す図である。ここでは1つの太陽電池ストリング1とパワーコンディショナ21との間のケーブルが断線した例を示した。断線した太陽電池ストリング1はパワーコンディショナ21から切断され、その他の太陽電池ストリング1は接続されたままとなる。
図7は、部分断線状態におけるIV特性の例を示す。ここでは2つの太陽電池ストリングのうち1つが断線した例を示した。正常動作時における動作電流は、部分断線状態において日射量が2倍であるときの動作電流と略同じである。太陽電池の動作状態は、動作電流と動作電圧によって判断するので、動作電流が同じであれば同じ動作状態とみなされる可能性がある。したがって図7のような例においては、制御装置は部分断線が生じたことを検知できない場合がある。換言すると制御装置は、部分断線が生じたとしても、部分断線が生じたのではなく日射量が変動したものとして、正常時における制御処理を継続する可能性がある。したがって、部分断線を精度よく検出することができる手法が望まれる。
本発明者は、太陽電池の動作特性を、標準日射量と標準温度の下における値へ換算することにより、部分陰や部分断線が生じた場合であってもこれらを検知できることを見出した。以下ではその原理について説明する。
図8は、正常動作時におけるIV特性を標準日射量と標準温度の下における値へ換算する例を示す。太陽電池が動作電圧VPEと動作電流IPEにおいて動作しているものとする(図8(a))。正常動作時において、後述する手順によって太陽電池の温度を算出した場合、その算出した温度は太陽電池の実際の温度とよく合致する(図8(b))。さらに、動作電圧VPEと動作電流IPEを、後述する手順によって標準日射量と標準温度(STandard Condition:STCと呼ぶ)の下における値(VP0,IP0)へ換算したとき、その換算値は、標準日射量と標準温度における製品仕様値として定められている標準動作電流IOP_STおよび標準動作電圧VOP_STとよく合致する(図8(c))。
図9は、部分陰状態におけるIV特性を標準日射量と標準温度の下における値へ換算する例を示す。部分陰発生後、制御装置が動作電圧と動作電流を再調整することにより、太陽電池が動作電圧VPEと動作電流IPEにおいて動作しているものとする(図9(a))。部分陰状態において、後述する手順によって太陽電池の温度を算出した場合、その算出した温度は太陽電池の実際の温度よりも小さい(図9(b))。この場合、動作電圧VPEと動作電流IPEを、後述する手順によって標準日射量と標準温度の下における値(VP0,IP0)へ換算したとき、その換算値は、標準日射量と標準温度における製品仕様値として定められている標準動作電流IOP_STよりも大きくなる(図9(c))。これは、計算した温度Tが実際温度よりも小さいので、補正が小さく発生することによると考えられる。
図10は、部分断線状態におけるIV特性を標準日射量と標準温度の下における値へ換算する例を示す。部分断線時、太陽電池が動作電圧VPEと動作電流IPEにおいて動作しているものとする(図10(a))。部分断線状態において、後述する手順によって太陽電池の温度を算出した場合、その算出した温度は太陽電池の実際の温度よりも小さい(図10(b))。この場合、動作電圧VPEと動作電流IPEを、後述する手順によって標準日射量と標準温度の下における値(VP0,IP0)へ換算したとき、その換算値は、標準日射量と標準温度における製品仕様値として定められている標準動作電流IOP_STよりも大きくなる(図10(c))。これは、計算した温度Tが実際温度よりも小さいので、補正が小さく発生することによると考えられる。
図9~図10によれば、動作電流と動作電圧を、標準日射量と標準温度の下における値へ換算したとき、換算標準電流IP0が標準動作電流IOP_STよりも大きければ、少なくとも部分陰または部分断線が発生していると推定できることが分かる。本実施形態1においてはこのことを利用し、動作電流と動作電圧を用いて部分陰や部分断線を検知することができないと従来は考えられていた場合であっても、これらを検知可能とした。
図11A~図11Bは、電池診断装置100が太陽電池の状態を診断する手順を説明するフローチャートである。電池診断装置100は、例えば診断を実施するように指示されたときや所定周期ごとなどの適当なタイミングで、本フローチャートを実施する。以下図11A~図11Bの各ステップを説明する。各ステップにおける計算式の導出過程については後述する。
(図11A:ステップS1101:その1)
データ取得部110は、太陽電池の動作電圧VPEと動作電流IPEを記述した測定データを取得する。ここでいう太陽電池とは、診断対象となっている電池のことである。したがってデータ取得部110は、太陽電池セル12aを診断するのであれば太陽電池セル12aの動作電圧VPEと動作電流IPEを取得し、太陽電池モジュール1aを診断するのであれば太陽電池モジュール1aの動作電圧VPEと動作電流IPEを取得する。以下のステップにおいても同様に、太陽電池とは、診断対象となっている電池のことである。
(図11A:ステップS1101:その2)
データ取得部110はさらに、太陽電池の仕様値を記述した仕様データを取得する。仕様データは以下の仕様値を記述している。(a)短絡電流ISC_ST、(b)開放電圧VOC_ST、(c)最適動作電流IOP_ST、(d)最適動作電圧VOP_ST、(e)後述する計算式における係数αとβ。αは短絡電流の温度特性[%/℃]であり、βは動作電圧の温度特性[mV/℃]である。仕様データは例えばパワーコンディショナ21から取得してもよいし、電池診断装置100が備える記憶装置にあらかじめ格納しておいてもよい。その他適当な手段によって取得してもよい。
(図11A:ステップS1102)
演算部120は、短絡電流ISCを仕様値ISC_STによって初期化する。
(図11A:ステップS1103)
図11A~図11Bは、太陽電池に対する日射量を検出するセンサと太陽電池の温度を検出するセンサを用いないことを前提としている。そこで演算部120は、太陽電池に対する想定日射量pを計算する。想定日射量pは、標準日射量時の短絡電流ISC_STに対する現在日射量時の短絡電流の比として表すことができる。現在日射量における現在動作電流はIPEであるから、現在日射量における短絡電流はIPE/jと定義できる。したがって想定日射量pは、(現在日射量における短絡電流)/ISC_ST、すなわち下記式2によって表される。この式を用いるのは、現在日射量における最大電力動作点を特定できない事情がある場合において有用である。
(図11A:ステップS1103:計算式)
p=(IPE/j)/ISC_ST ・・・(2)
j=(現在日射量における現在動作点の動作電流)/(現在日射量における短絡電流)
(図11A:ステップS1104)
演算部120は、式1において、298K時のkT/q=0.026を用いて、想定日射量pと電池温度T=298Kにおける動作電圧Vを、下記式にしたがって算出する。
(図11A:ステップS1104:計算式)
=n・0.026・Ncell・ln(p)+Vop_ST
(図11A:ステップS1105)
演算部120は、太陽電池の想定温度Tを、下記式7にしたがって計算する。βは一般にシリコンの温度特性であり、約-2mV/Kである。
(図11A:ステップS1105:計算式)
T=298+(VPE-V)/(Ncell・β) ・・・(7)
(図11A:ステップS1106)
演算部120は、S1103~S1105を所定回数以上(例えば3回)繰り返した場合はステップS1108へスキップ、繰り返していない場合はS1107を実施した後にS1103へ戻る。
(図11A:ステップS1107)
演算部120は、短絡電流ISCを、下記式にしたがって更新し、ステップS1103へ戻る。
(図11A:ステップS1107:計算式)
SC=ISC_ST・{1+(α・(T-298))/100}
(図11B:ステップS1108)
演算部120は、動作電圧VPEと動作電流IPEを、それぞれ下記式にしたがって、標準日射量と標準温度の下における値(VP0,IP0)へ換算する。
(図11B:ステップS1108:計算式)
P0=(VPE-(Ncell・n・0.026/298・T・ln(p))) -Ncell・β・(298-T)
P0={(IPE/j)/p・(1+α・(298-T)/100)}・j
(図11B:ステップS1109)
演算部120は、S1108において計算したIP0が、標準動作電流IOP_STよりも大きいか否かを判定する。IP0のほうが大きければS1110へ進み、それ以外であればS1111へ進む。IP0がIOP_STよりもわずかでも大きければS1110へ進んでもよいし、判定閾値を設けてもよい。例えば、IP0-IOP_ST>判定閾値であればS1110へ進み、それ以外であればS1111へ進んでもよい。
(図11B:ステップS1110~S1111)
演算部120は、S1109の判断がYesであれば、太陽電池に部分陰または部分断線が生じていると判定し、その旨の診断結果を出力する。S1109の判断がNoであれば、太陽電池が正常動作している旨の診断結果を出力する。
図12は、図11A~図11Bの変形例である。太陽電池に対する日射量pと太陽電池の温度Tそれぞれの計測値を取得できるのであれば、S1102~S1107は省略することができる。ただしこの場合は、S1101において、日射量pと温度Tを記述した測定データをデータ取得部110が取得する必要がある。測定データは例えばパワーコンディショナ21から取得してもよいし、その他適当な計測器などから取得してもよい。
<実施の形態1:S1104における計算式の導出過程>
式1において、ISC=ISC_ST、298K時のkT/q=0.026、I=ISC_ST・p・jを用いると、Vは下記式3によって表すことができる。
=n・0.026・ln(((1-j)・ISC_ST・p)/Is)・・・(3)
p=1.0の時の標準動作電圧VOP_STは、下記式4によって表される。
OP_ST=n・0.026・ln(((1-j)・ISC_ST)/Is)・・・(4)
式3から式4を引いて、電圧差を算出すると、下記式5を得る。
-VOP_ST=n・0.026・ln(p)・・・(5)
したがって下記式6を導出できる。S1104においてはこの式6を用いる。
=(V-VOP_ST)+VOP_ST
=n・0.026・ln(p)+VOP_ST・・・(6)
<実施の形態1:S1108における計算式の導出過程>
STCは、日射量1.0kW/m、温度298Kである。温度Tにおける逆方向飽和電流をIS_Tとすると、式3を変形して下記式8と式9を得る。
PE=n・0.026/298・T・ln(((1-j)・Isc・p)/IS_T)・・・(8)
P1=n・0.026/298・T・ln(((1-j)・Isc)/IS_T)・・・(9)
式8から式9をひくと、下記式10を得る。
PE-VP1=n・0.026/298・T・ln(p)・・・(10)
したがってVP1は下記式11によって表すことができる。
P1=VPE-(VPE-VP1
=VPE-n・0.026/298・T・ln(p)・・・(11)
P1を常温であるVP0に変換すると下記式12を得る。式11を式12へ代入することにより、S1108における計算式を得る。
P0=VP1-β・Ncell・(298-T)・・・(12)
P0を算出した後で、IP0を求める。温度TにおけるIscは、下記式13で表される。
Isc=(IPE/j)/p・・・(13)
Iscを常温時におけるIsc0に戻すと、下記式14を得る。
Isc0=((IPE/j)/p)・(1+α・(298-T)/100)・・・(14)
よって、IP0は下記式15で表される。S1108においてはこの式15を用いる。
P0=Isc0・j
=j・((IPE/j)/p)・(1+α・(298-T)/100)・・・(15)
<実施の形態1:まとめ>
本実施形態1に係る電池診断装置100は、動作電流IPEと動作電圧VPEを、STCにおける値(VP0,IP0)へ換算し、その換算標準電流IP0が標準動作電流IOP_STを超えていれば、部分陰または部分断線が生じていると診断する。IPEをSTCにおける値IP0へ換算した後に標準電流IOP_STと比較することにより、動作電流IPEから診断することが困難な部分陰や部分断線を、精度よく検知することができる。
本実施形態1に係る電池診断装置100は、日射量の測定値と電池温度の測定値が得られない場合は、動作電流IPEと動作電圧VPEと仕様値を用いて想定日射量pと想定温度Tを計算することを繰り返すことにより、日射量と電池温度を推定する。これにより、例えば小規模設備などのように測定値が得られない環境においても、部分陰や部分断線を精度よく検知することができる。
<実施の形態2>
実施形態1においては、部分陰または部分断線のいずれかを診断することを説明した。本発明の実施形態2では、これに加えて太陽電池自体の故障が発生しているか否かを診断する動作例を説明する。さらに、部分陰と部分断線を区別する動作例を説明する。太陽電池システムの構成は実施形態1と同じである。
図13は、太陽電池が故障したときにおけるIV特性を標準日射量と標準温度の下における値へ換算する例を示す。故障時において、太陽電池が動作電圧VPEと動作電流IPEにおいて動作しているものとする(図13(a))。故障状態において、図11Aの手順によって太陽電池の温度を算出した場合、その算出した温度は太陽電池の実際の温度よりも大きい(図13(b))。これにより、動作電圧VPEと動作電流IPEを、図11A~図11Bの手順によって標準日射量と標準温度の下における値(VP0,IP0)へ換算したとき、その換算値は、標準日射量と標準温度における製品仕様値として定められている標準動作電流IOP_STよりも小さくなる(図13(c))。これは、計算した温度Tが実際温度よりも大きいので、過補正が発生することによると考えられる。
太陽電池が故障しているとは、太陽電池が正常な電圧や電流を出力できない状態のことである。例えば以下の状態がこれに該当する。(a)太陽電池モジュール1a内のいずれかの太陽電池セル12aが破損して動作しなくなった場合、その太陽電池セル12aは故障している。(b)さらにバイパスダイオード12bが動作して太陽電池モジュール1aがバイパスされるようになった場合、その太陽電池モジュール1aも故障していることになる。(c)太陽電池セル12aまたは太陽電池モジュール1aが経年劣化し、その劣化程度が許容範囲を超えた場合、その太陽電池セル12aまたは太陽電池モジュール1aは故障している。
図14は、本実施形態2において電池診断装置100が太陽電池の状態を診断する手順を説明するフローチャートである。電池診断装置100は、例えば診断を実施するように指示されたときや所定周期ごとなどの適当なタイミングで、本フローチャートを実施する。以下図14の各ステップを説明する。
(図14:ステップS1400)
データ取得部110は、測定データを取得する。測定データは例えば、太陽電池の動作電圧VPEと動作電流IPEを1分間隔である程度の長時間(例:1日)にわたって記述したデータである。データ取得部110はさらに、仕様データを取得する。
(図14:ステップS1401)
演算部120は、動作電圧VPEと動作電流IPEを、標準日射量と標準温度の下における値(VP0,IP0)へ換算する。計算手順は図11A~図12で説明したものと同じである。
(図14:ステップS1402)
演算部120は、標準日射量と標準温度の下における値へ換算した換算標準電流IP0が標準動作電流IOP_ST以下であるか否かを判定する。IOP_ST以下であればS1403へ進み、それ以外であればS1404へ進む。S1109と同様に、判定閾値を設けてもよい。例えば、IP0>IOP_ST+判定閾値であればS1404へ進み、IP0≦IOP_ST-判定閾値であればS1403へ進み、それ以外であればS1403へ進んで太陽電池が正常であると診断してもよい。
(図14:ステップS1403)
演算部120は、IP0がIOP_ST-よりも閾値以上下回っていれば、太陽電池が故障していると診断する。演算部120は、IP0とIOP_ST-との間の差分が閾値以内であれば、太陽電池が正常であると診断する。
(図14:ステップS1404)
演算部120は、太陽電池が部分陰または部分断線していると診断する。
(図14:ステップS1405~S1406)
演算部120は、測定データが記述している測定値のうち所定時間分(例えば8時間分)にわたってS1401~S1404を完了した場合はS1407へ進み(S1405:Yes)、完了していなければ(S1405:No)次の測定データに進んで(S1406)S1401~S1404を実施する。
(図14:ステップS1407~S1409)
演算部120は、S1402においてIP0がIOP_STを超えている(またはIOP_STを閾値以上超えている、以下同様)時間が一時的である場合は(S1407:Yes)、太陽電池に部分陰が生じていると診断する(S1408)。演算部120は、S1402においてIP0がIOP_STを超えている時間が一時的ではない場合は(S1407:No)、太陽電池に部分断線が生じていると診断する(S1409)。
(図14:ステップS1407:補足)
本ステップにおいて、一時的であるか否かは、例えば所定時間連続してその状態が継続しているか否かによって判断すればよい。このときの判断時間長は、S1400において取得する測定データの測定期間と必ずしも同じでなくてもよい。例えばS1400においては1日分の測定データを蓄積し、S1407においてはIP0がIOP_STを超えている状態が8時間以上連続していれば部分断線と判断してもよい。
<実施の形態2:まとめ>
本実施形態2に係る電池診断装置100は、換算標準電流IP0が標準電流IOP_STを閾値以上下回っていれば、太陽電池が故障していると診断する。これにより、部分陰と部分断線に加えて故障を診断することができる。
本実施形態2に係る電池診断装置100は、換算標準電流IP0が標準電流IOP_STを超えている状態が一時的であれば部分陰と診断し、一時的でなければ部分断線と診断する。これにより、部分陰と部分断線を区別することができる。
<本発明の変形例について>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
以上の実施形態において、電池診断装置100はパワーコンディショナ21に接続されているが、電池診断装置100の配置はこれに限るものではなく、太陽電池の動作電圧と動作電流を取得できるのであればその他任意の配置をとることができる。例えばパワーコンディショナ21の一部を電池診断装置100として構成することもできる。
以上の実施形態において、データ取得部110と演算部120は、その機能を実装した回路デバイスなどのハードウェアを用いて構成することもできるし、その機能を実装したソフトウェアを演算装置が実行することにより構成することもできる。
1:太陽電池ストリング
1a:太陽電池モジュール
12a:太陽電池セル
100:電池診断装置
110:データ取得部
120:演算部

Claims (14)

  1. 太陽電池の状態を診断する電池診断装置であって、
    前記太陽電池の動作点における動作電流と前記動作点における動作電圧を取得するデータ取得部、
    前記動作電流と前記動作電圧を用いて前記太陽電池を診断する演算部、
    を備え、
    前記演算部は、前記動作電流と前記動作電圧を、前記太陽電池が標準日射量と標準温度の下で動作していると仮定した場合における値へ換算した、換算標準電流と換算標準電圧へ換算し、
    前記演算部は、前記太陽電池が前記標準日射量と前記標準温度の下で動作しているときの標準電流よりも、前記換算標準電流のほうが第1閾値以上大きければ、前記太陽電池が部分陰状態であるかまたは前記太陽電池が部分断線状態にある旨の診断結果を出力する
    ことを特徴とする電池診断装置。
  2. 前記データ取得部は、前記太陽電池に対する日射量を測定することにより得た測定日射量と、前記太陽電池の温度を測定することにより得た測定温度とを記述した測定データを取得し、
    前記データ取得部はさらに、前記太陽電池の仕様値を記述した仕様データを取得し、
    前記演算部は、前記測定日射量と前記測定温度と前記仕様値を用いて、前記換算標準電流と前記換算標準電圧を計算する
    ことを特徴とする請求項1記載の電池診断装置。
  3. 前記データ取得部は、前記太陽電池の仕様値を記述した仕様データを取得し、
    前記演算部は、前記仕様値を用いて前記太陽電池に対する仮想日射量を計算するとともに前記仕様値を用いて前記太陽電池の仮想温度を計算する、推定処理を繰り返し実施することにより、前記太陽電池に対する日射量と前記太陽電池の温度を推定する
    ことを特徴とする請求項1記載の電池診断装置。
  4. 前記仕様データは、前記仕様値として、前記太陽電池の短絡電流と前記太陽電池の最適動作電圧を記述しており、
    前記演算部は、前記推定処理のなかで、前記動作電流と前記短絡電流を用いて、前記仮想日射量を計算し、
    前記演算部は、前記推定処理のなかで、前記仮想日射量と前記最適動作電圧を用いて、前記仮想日射量と前記標準温度の下における前記太陽電池の仮想動作電圧を計算し、
    前記演算部は、前記推定処理のなかで、前記仮想動作電圧と前記動作電圧を用いて、前記仮想温度を計算する
    ことを特徴とする請求項3記載の電池診断装置。
  5. 前記演算部は、前記標準電流よりも、前記換算標準電流のほうが第2閾値以上小さければ、前記太陽電池が故障している旨の診断結果を出力する
    ことを特徴とする請求項1記載の電池診断装置。
  6. 前記データ取得部は、前記太陽電池に対する日射量を測定することにより得た測定日射量と、前記太陽電池の温度を測定することにより得た測定温度とを、測定期間にわたって記述した測定データを取得し、
    前記演算部は、前記標準電流と前記換算標準電流を比較する処理を、前記測定期間のうち所定時間にわたるものに対して実施し、
    前記演算部は、前記標準電流よりも前記換算標準電流のほうが前記第1閾値以上大きい状態が前記所定時間以上連続している場合は、前記太陽電池が部分断線状態にある旨の診断結果を出力する
    ことを特徴とする請求項1記載の電池診断装置。
  7. 前記データ取得部は、前記太陽電池に対する日射量を測定することにより得た測定日射量と、前記太陽電池の温度を測定することにより得た測定温度とを、測定期間にわたって記述した測定データを取得し、
    前記演算部は、前記標準電流と前記換算標準電流を比較する処理を、前記測定期間のうち所定時間にわたるものに対して実施し、
    前記演算部は、前記標準電流よりも前記換算標準電流のほうが前記第1閾値以上大きい状態が、前記所定時間のなかで一時的に生じている場合は、前記太陽電池が部分陰状態にある旨の診断結果を出力する
    ことを特徴とする請求項1記載の電池診断装置。
  8. 太陽電池の状態を診断する電池診断方法であって、
    前記太陽電池の動作点における動作電流と前記動作点における動作電圧を取得するステップ、
    前記動作電流と前記動作電圧を用いて前記太陽電池を診断するステップ、
    を有し、
    前記診断するステップにおいては、前記動作電流と前記動作電圧を、前記太陽電池が標準日射量と標準温度の下で動作していると仮定した場合における値へ換算した、換算標準電流と換算標準電圧へ換算し、
    前記診断するステップにおいては、前記太陽電池が前記標準日射量と前記標準温度の下で動作しているときの標準電流よりも、前記換算標準電流のほうが第1閾値以上大きければ、前記太陽電池が部分陰状態であるかまたは前記太陽電池が部分断線状態にある旨の診断結果を出力する
    ことを特徴とする電池診断方法。
  9. 前記取得するステップにおいては、前記太陽電池に対する日射量を測定することにより得た測定日射量と、前記太陽電池の温度を測定することにより得た測定温度とを記述した測定データを取得し、
    前記取得するステップにおいてはさらに、前記太陽電池の仕様値を記述した仕様データを取得し、
    前記診断するステップにおいては、前記測定日射量と前記測定温度と前記仕様値を用いて、前記換算標準電流と前記換算標準電圧を計算する
    ことを特徴とする請求項8記載の電池診断方法。
  10. 前記取得するステップにおいては、前記太陽電池の仕様値を記述した仕様データを取得し、
    前記診断するステップにおいては、前記仕様値を用いて前記太陽電池に対する仮想日射量を計算するとともに前記仕様値を用いて前記太陽電池の仮想温度を計算する、推定処理を繰り返し実施することにより、前記太陽電池に対する日射量と前記太陽電池の温度を推定する
    ことを特徴とする請求項8記載の電池診断方法。
  11. 前記仕様データは、前記仕様値として、前記太陽電池の短絡電流と前記太陽電池の最適動作電圧を記述しており、
    前記診断するステップにおいては、前記推定処理のなかで、前記動作電流と前記短絡電流を用いて、前記仮想日射量を計算し、
    前記診断するステップにおいては、前記推定処理のなかで、前記仮想日射量と前記最適動作電圧を用いて、前記仮想日射量と前記標準温度の下における前記太陽電池の仮想動作電圧を計算し、
    前記診断するステップにおいては、前記推定処理のなかで、前記仮想動作電圧と前記動作電圧を用いて、前記仮想温度を計算する
    ことを特徴とする請求項10記載の電池診断方法。
  12. 前記診断するステップにおいては、前記標準電流よりも、前記換算標準電流のほうが第2閾値以上小さければ、前記太陽電池が故障している旨の診断結果を出力する
    ことを特徴とする請求項8記載の電池診断方法。
  13. 前記取得するステップにおいては、前記太陽電池に対する日射量を測定することにより得た測定日射量と、前記太陽電池の温度を測定することにより得た測定温度とを、測定期間にわたって記述した測定データを取得し、
    前記診断するステップにおいては、前記標準電流と前記換算標準電流を比較する処理を、前記測定期間のうち所定時間にわたるものに対して実施し、
    前記診断するステップにおいては、前記標準電流よりも前記換算標準電流のほうが前記第1閾値以上大きい状態が前記所定時間以上連続している場合は、前記太陽電池が部分断線状態にある旨の診断結果を出力する
    ことを特徴とする請求項8記載の電池診断方法。
  14. 前記取得するステップにおいては、前記太陽電池に対する日射量を測定することにより得た測定日射量と、前記太陽電池の温度を測定することにより得た測定温度とを、測定期間にわたって記述した測定データを取得し、
    前記診断するステップにおいては、前記標準電流と前記換算標準電流を比較する処理を、前記測定期間のうち所定時間にわたるものに対して実施し、
    前記診断するステップにおいては、前記標準電流よりも前記換算標準電流のほうが前記第1閾値以上大きい状態が、前記所定時間のなかで一時的に生じている場合は、前記太陽電池が部分陰状態にある旨の診断結果を出力する
    ことを特徴とする請求項8記載の電池診断方法。
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