JP6172530B2 - 太陽光発電システムの異常診断方法 - Google Patents
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Description
太陽電池モジュールは可動部品がないため故障しにくいが、初期不良はもちろん、屋外に長期間設置されるため、一部に故障が起こる場合がある。
太陽電池モジュールの異常(故障)を検出する方法として、目視による検査、サーモメーターによる発熱の検査、テスターによる電気的特性の検査が行われている。これらの検査は、太陽電池モジュール1つ1つに対して行われるので、メガソーラーなどの大規模な太陽光発電システムでは、検査のために膨大な作業が必要となる。
(1)日射量と温度の情報から発電量を予想し、その予想値と実際の発電量とを比較することにより異常を検出する方法(特許文献1、2)
(2)太陽光発電アレイの出力電流から電流電圧特性(I-V特性)を求め、そのI-V特性曲線の微分曲線から異常を検出する方法(特許文献3)
(3)太陽電池の電流電圧特性(I-V特性)を計測し、あらかじめ準備しておいたI-V特性と比較することにより異常を診断する方法(特許文献4)
[1]太陽光発電システムにおいて異常診断の対象となる設備単位(x)を構成する太陽電池モジュールまたは太陽電池セルについて、異なる入射太陽光強度と太陽電池温度の条件での複数パターンのI-V曲線(a)を予め取得し、これらのI-V曲線(a)をデータベース化しておき、このデータベースを利用して太陽光発電システムの異常診断を行う方法であり、
設備単位(x)のI-V曲線(B)を実測により求めるステップS1と、
データベースのI-V曲線(a)のなかから選択される、設備単位(x)を構成する太陽電池モジュールまたは太陽電池セルの個数分のI-V曲線(a)を組み合わせ、これらI-V曲線(a)の重ね合わせにより設備単位(x)のI-V曲線(A)を計算するステップであって、開放電圧Voc’、短絡電流Isc’、最大出力動作電流Imp’および最大出力動作電圧Vmp’が、それぞれI-V曲線(B)の開放電圧Voc、短絡電流Isc、最大出力動作電流Impおよび最大出力動作電圧Vmpの85%〜115%の範囲となるI-V曲線(A)が得られるまで、組み合わせるI-V曲線(a)を変えながら繰り返し計算を行うステップS2と、
ステップS2においてI-V曲線(A)を得るために組み合わせた複数のI-V曲線(a)が得られた入射太陽光強度および太陽電池温度条件に基づき、設備単位(x)の異常診断を行うステップS3を有することを特徴とする太陽光発電システムの異常診断方法。
[3]上記[2]の異常診断方法において、設備単位(x)が、複数の太陽電池モジュールを直列接続して構成した太陽電池ストリングを、複数組並列接続して構成した太陽電池アレイであり、
ステップS3では、異常な太陽電池モジュールを含む太陽電池ストリングの個数と、該太陽電池ストリングに含まれる異常な太陽電池モジュールの個数と、異常の内容を判定することを特徴とする太陽光発電システムの異常診断方法。
一般に太陽光発電システムでは、太陽電池セルと呼ばれる太陽電池の単体を複数接続(通常、直列に接続)して太陽電池モジュールを構成し、この太陽電池モジュールを複数接続(通常、直列に接続)して太陽電池ストリングを構成し、この太陽電池ストリングを複数接続(通常、並列に接続)して太陽電池アレイを構成し、また、複数の太陽電池ストリングまたは太陽電池アレイで発電した電力を系統に接続するためにパワーコンディショナが用いられている(以下、説明の便宜上「太陽電池セル」を単に『セル』と、「太陽電池モジュール」を単に『モジュール』と、「太陽電池ストリング」を単に『ストリング』と、「太陽電池アレイ」を単に『アレイ』と、「パワーコンディショナ」を『PCS』と、それぞれ称する)。このPCSは、複数のストリングまたはアレイの出力をひとまとめにする機能、太陽電池出力の定電圧化とMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御を行う機能、直流を交流に変換する機能などを備えている。本発明において異常を診断する設備単位xは、発電システム全体でもよいが、以上のようなストリング単位、アレイ単位、PCS単位のいずれかでもよい。
上記(ア)の方法では、実験的に設定された種々の入射太陽光強度と太陽電池温度の下で、モジュールまたはセルの出力端でインピーダンスを変化させながら、電圧V、電流Iを実測することにより、I-V曲線aを得ることができる。
このI-V曲線Bを図1に実線で示す。このI-V曲線Bより開放電圧Voc、短絡電流Isc、最大出力電力Pmaxが求められ、この最大出力電力Pmaxが得られる最大出力動作電流がImp、同じく最大出力動作電圧がVmpである。
この計算されたI-V曲線Aを図1に破線で示す。このI-V曲線Aより開放電圧Voc’、短絡電流Isc’、最大出力電力Pmax’が求められ、この最大出力電力Pmax’が得られる最大出力動作電流がImp’、同じく最大出力動作電圧がVmp’である。
したがって、設備単位xを構成するモジュールまたはセルの接続状態(この接続状態は既知である)に合わせて、設備単位xを構成するモジュールまたはセルの個数分のI-V曲線aを組み合わせ、図3に示すような手法でI-V曲線aの電流または電圧の加算をし、I-V曲線aの重ね合わせを行うことにより、I-V曲線Aを計算することができる。
(2)組み合わされた(選択された)I-V曲線aのなかに、太陽電池温度が正常値に満たない条件でのI-V曲線aが特定の数含まれる場合、電力不足のモジュールまたはセルが特定の個数存在していると判定する。
したがって、例えば、設備単位xが、複数のモジュールを直列接続して構成したストリングを、複数組並列接続して構成したアレイである場合には、異常なモジュールを含むストリングの個数と、このストリングに含まれる異常なモジュールの個数と、異常の内容(出力低下、電圧不足などの異常状態の種別)を判定することができる。
太陽電池モジュール96枚に対してPCSを2台備えた太陽光発電所において(PCS単位:太陽電池モジュール48枚)、PCS単位を対象に異常診断を行った。すなわち、異常を診断する設備単位xをPCS単位とした。このPCS単位は太陽電池アレイであり、その構成は、モジュール6枚を直列接続したものを1組のストリングとし、このストリングを8組並列接続したものである。
ある日時におけるPCS単位のI-V曲線Bを実測(PCS単位の電力の出力端においてインピーダンスを変化させながら電圧V、電流Iを測定した)により求めた。このI-V曲線Bを図4に実線で示すが、開放電圧Voc:290V、短絡電流Isc:45A、最大出力電力Pmax:10kW、最大出力動作電流Imp:42A、最大出力動作電圧Vmp:250Vであった。
異常状態を模擬する目的で、実施例1に供したPCS単位の太陽電池モジュールの一部を布で覆い、太陽光から遮蔽した。具体的には、8組のストリングのうちの4組について、それぞれ直列接続されているモジュール6枚のうちモジュール2枚を布で覆い、太陽光から遮蔽した。I-V曲線aのデータベースは実施例1と同様である。
ある日時におけるPCS単位のI-V曲線Bを実測(PCS単位の電力の出力端においてインピーダンスを変化させながら電圧V、電流Iを測定した)により求めた。このI-V曲線Bを図5に実線で示すが、開放電圧Voc:240V、短絡電流Isc:45A、最大出力電力Pmax:7kW、最大出力動作電流Imp:32A、最大出力動作電圧Vmp:220Vであった。
このI-V曲線Aを得るために組み合わされたモジュールのI-V曲線aは、8組のストリングのうちの3組のストリングにおける各2枚のモジュールと、1組のストリングにおける1枚のモジュールの計7枚のモジュールについては、入射太陽光強度0kW/m2、太陽電池温度40℃の条件のものであり、残り40枚のモジュールについては、すべて同じ入射太陽光強度800kW/m2、太陽電池温度40℃の条件のものであった。したがって、出力が低下した異常なモジュールが4組のストリングに含まれ、そのうち3組のストリングに出力が低下した異常なモジュールが2枚含まれ、1組のストリングに出力が低下した異常なモジュールが1枚含まれると判定した。この診断結果は、8組のストリングのうちの4組について、それぞれ2枚のモジュールを布で覆い、太陽光から遮蔽した試験条件とほぼ一致しており、本発明の実用性が確認された。
Claims (3)
- 太陽光発電システムにおいて異常診断の対象となる設備単位(x)を構成する太陽電池モジュールまたは太陽電池セルについて、異なる入射太陽光強度と太陽電池温度の条件での複数パターンのI-V曲線(a)を予め取得し、これらのI-V曲線(a)をデータベース化しておき、このデータベースを利用して太陽光発電システムの異常診断を行う方法であり、
設備単位(x)のI-V曲線(B)を実測により求めるステップS1と、
データベースのI-V曲線(a)のなかから選択される、設備単位(x)を構成する太陽電池モジュールまたは太陽電池セルの個数分のI-V曲線(a)を組み合わせ、これらI-V曲線(a)の重ね合わせにより設備単位(x)のI-V曲線(A)を計算するステップであって、開放電圧Voc’、短絡電流Isc’、最大出力動作電流Imp’および最大出力動作電圧Vmp’が、それぞれI-V曲線(B)の開放電圧Voc、短絡電流Isc、最大出力動作電流Impおよび最大出力動作電圧Vmpの85%〜115%の範囲となるI-V曲線(A)が得られるまで、組み合わせるI-V曲線(a)を変えながら繰り返し計算を行うステップS2と、
ステップS2においてI-V曲線(A)を得るために組み合わせた複数のI-V曲線(a)が得られた入射太陽光強度および太陽電池温度条件に基づき、設備単位(x)の異常診断を行うステップS3を有することを特徴とする太陽光発電システムの異常診断方法。 - ステップS3では、ステップS2においてI-V曲線(A)を得るために組み合わせた複数のI-V曲線(a)が得られた入射太陽光強度および太陽電池温度条件に基づき、異常な太陽電池モジュールまたは太陽電池セルの個数と、異常の内容を判定することを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システムの異常診断方法。
- 設備単位(x)が、複数の太陽電池モジュールを直列接続して構成した太陽電池ストリングを、複数組並列接続して構成した太陽電池アレイであり、
ステップS3では、異常な太陽電池モジュールを含む太陽電池ストリングの個数と、該太陽電池ストリングに含まれる異常な太陽電池モジュールの個数と、異常の内容を判定することを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電システムの異常診断方法。
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