以下、図面を参照し、本実施形態に係る横型帯鋸盤について説明する。以下の説明では、方向を定義するために左右方向、前後方向、及び上下方向を用いるが、これらの方向は説明の便宜のために用いられるに過ぎない。左右方向及び前後方向は、水平方向に対応し、上下方向は鉛直方向に対応する。
図1は、本実施形態に係る横型帯鋸盤を示す正面図である。図1に示すように、横型帯鋸盤1は、ワークWの幅に応じて移動し、固定バイスジョー27との間でワークWを挟持する可動バイスジョー71と、ワークWを切断する切削領域が固定バイスジョー27側から可動バイスジョー71側へ向けて下り傾斜となる仰角で帯鋸刃47を回転自在に保持する帯鋸刃ガイドと、帯鋸刃ガイドを含み、上下方向に延在するガイドポスト31に沿って降下しながらワークWを切断するカッティングヘッド9と、ワークWを下から支持し、可動バイスジョー71に従動してワークWの幅に応じて移動するワーク支持部材81と、を備える。帯鋸刃ガイドは、可動バイスジョー71に従動し、ワークWの幅に応じた位置で切削領域を保持する可動鋸刃ガイド55と、所定の位置に固定される固定鋸刃ガイド53とを有する。
図2は、本実施形態に係る横型帯鋸盤を示す上面図である。先ず、図1から図2を参照し、本実施形態に係る横型帯鋸盤1の全体的構成の概要について説明する。横型帯鋸盤1は、帯鋸刃47によってワークWを切断加工する加工機である。加工対象となるワークWは、前後方向に沿って長手となる長尺なワークであり、例えばH形綱(或いはIビーム、Hビーム、Wビーム、ユニバーサル・ビーム、Rolled Steel Joist (RSJ)、double-Tとも称す、断面がIまたはH型のビーム)といった形鋼である。
横型帯鋸盤1は、ベース7と、カッティングヘッド9と、NC(Numerical Control)装置65とを主体に構成されている。ベース7上には、帯鋸刃47の走行ラインの前後でワークWを左右方向に固定自在なフロントバイス装置17及びバイス装置29が備えられている。そして、バイス装置29の前後方向の前側及び後側には、ワークWを前後方向へ移動自在に支持する支持ローラ11がそれぞれに複数備えられている。
ベース7上にはガイドポスト31が立設してあり、このガイドポスト31にはカッティングヘッド9が上下動自在に案内支持されている。カッティングヘッド9は、左右方向に長いビーム部材33aを備えており、このビーム部材33aの左右両側には、ハウジング本体部35、37が備えられている。一方のハウジング本体部35には、駆動モータ(図示省略)によって回転される駆動ホイール43が回転自在に設けられており、他方のハウジング本体部37には従動ホイール45が回転自在に設けられている。
そして、帯鋸刃47は、両ホイール43、45にエンドレス状に掛け回されてトラッキング調整してあり、回動(走行駆動)可能である。また、カッティングヘッド9には、帯鋸刃47における鋸歯が下方向を指向するように帯鋸刃47を捻り起して案内する帯鋸刃ガイドが備えられている。帯鋸刃ガイドは、固定鋸刃ガイド53と、固定鋸刃ガイド53に対して接近離反する左右方向へ位置決め自在な可動鋸刃ガイド55とを備えている。可動鋸刃ガイド55は、後述する可動バイスジョー71に連結して従動されてもよく、または、帯鋸刃47の回動による摩擦力で従動されてもよい。
上記構成により、フロントバイス装置17及びバイス装置29によってワークWを挟持固定した状態にあるときに、帯鋸刃47を走行駆動して、上昇位置からカッティングヘッド9を下降することにより、帯鋸刃47によってワークWの切断を行うことができる。
次に、横型帯鋸盤1のベース7と、カッティングヘッド9と、NC装置65の構成の詳細について説明する。
ベース7は、支持ローラ11、ローラスタンド13、フロントバイス装置17、バイス装置29、ワーク支持部材81、ガイドポスト31などを備えている。
支持ローラ11は、ワークWを支持して搬送する。支持ローラ11は、バイス装置29の前側及び後側にそれぞれ複数設けられている。個々の支持ローラ11は、ローラスタンド13によって回転自在に支持されている。前後の支持ローラ11に下面が支持されたワークWは、所定の搬送高さであるパスラインに沿って搬送される。
ローラスタンド13には、バイス装置29に対してワークWを搬送するための機構が設けられている。例えば、バイス装置29の後側のローラスタンド13には、チェーン(図示省略)を介してバイス装置29の後側の支持ローラ11を回転させる支持ローラ用電動モータ(図示省略)が設けられていてもよい。この場合、支持ローラ用モータの駆動により、チェーンを介してバイス装置29の後側の支持ローラ11を後側から前側に回転させることにより、ワークWがバイス装置29へ搬送される。なお、ワークWをバイス装置29へ搬送するための構成は、上記の構成に限定されるものでは無く、例えば従来の横型帯鋸盤におけるワークWをバイス装置29へ搬送する構成などであってもよい。
フロントバイス装置17は、帯鋸刃47の走行ラインよりも前側においてワークWを固定する。フロントバイス装置17は、後述するワーク支持部材81よりも前側に配置される。また、フロントバイス装置17は、バイス装置29の前側の支持ローラ11の上方に配置されている。フロントバイス装置17は、フロントバイスベッド19と、フロント固定バイスジョー21と、フロント可動バイスジョー23とを備えている。なお、ワークWの固定においては、後述する帯鋸刃47の走行ラインよりも後側のバイス装置29若しくはフロントバイス装置17の何れかでワークWを固定すればよく、一般的にはバイス装置29でワークWを挟持すれば足りる。両バイス装置でワークWを固定する場合は、バイス装置29が素材側(上流側)を把持することでワークWを固定するのに対し、フロントバイス装置17は、製品側(下流側)を不動にすること及びワークWの切断位置決めが目的で、切断が完了したときに、ワークWの捩じれや、帯鋸刃の切削から生じる内部応力が発生していても、製品側が動かないことが要求される。つまり、フロントバイス装置17は、バイス装置29よりも弱い把持力で、製品側を保持する程度に、ワークWを挟持すれば足りる。
図2において、フロントバイスベッド19は、左右方向、すなわちワークWの幅方向に沿って設けられ、フロントバイスベッド19の上面の右端部に、フロント固定バイスジョー21が固定されている。また、フロントバイスベッド19の上面には、フロント可動バイスジョー23が左右方向に移動自在に取り付けられている。
フロント可動バイスジョー23は、フロントバイスベッド19に沿ってワークWの幅に応じて移動し、フロント固定バイスジョー21との間でワークWを挟持する。フロント可動バイスジョー23は、ワークWの幅に応じて、フロント固定バイスジョー21に接近する方向、又はフロント固定バイスジョー21から離反する方向へそれぞれ進退自在に構成されている。フロント可動バイスジョー23の進退動作は、フロントバイスベッド19の側部に設けられたフロントバイスシリンダ25によって行われる。フロント固定バイスジョー21及びフロント可動バイスジョー23は、ワークWを両側から挾持することで、ワークWを保持する。
なお、フロントバイス装置17は、バイス装置29の前側の複数の支持ローラ11の上方を前後方向に移動自在に取り付けられてもよい。この場合、フロント固定バイスジョー21及びフロント可動バイスジョー23によりワークWの両側部を挟持した状態で、フロントバイスベッド19が前後方向に移動することにより、切断分離後のワークWが搬出されてもよい。
バイス装置29は、帯鋸刃47の走行ラインよりも後側においてワークWを固定する。バイス装置29は、後述するワーク支持部材81よりも後側、且つ、後側の支持ローラ11よりも前側に配置されている。バイス装置29は、固定バイスジョー27と、可動バイスジョー71とを備え、それぞれ独立してベース7に組み付けられている。
可動バイスジョー71は、左右方向に移動自在に取り付けられている。固定バイスジョー27は、ベース7に固定されている。
可動バイスジョー71は、ワークWの幅に応じて移動し、固定バイスジョー27との間でワークWを挟持する。可動バイスジョー71は、固定バイスジョー27に接近する方向、又は固定バイスジョー27から離反する方向へそれぞれ進退自在に構成されている。可動バイスジョー71の進退動作は、サブガイドポスト69に設けられたバイスシリンダ73によって行われる。固定バイスジョー27及び可動バイスジョー71は、ワークWを両側から挾持することで、ワークWを固定する。
上記構成により、フロントバイス装置17の両バイスジョー21、23によってワークWを挟持すると、フロントバイス装置17の両バイスジョー21、23は、帯鋸刃47によって切断分離されるワークWの製品側を左右方向から保持することになる。また、バイス装置29の両バイスジョー27、71によってワークWを挟持すると、バイス装置29の両バイスジョー27、71は、帯鋸刃47によって切断分離されるワークWの素材側を左右方向から固定することになる。
ワーク支持部材81は、各バイスジョー(21、23、27、71)よりも下方に設けられ、ワークWを下方から支持する。ワーク支持部材81は、左右方向、すなわちワークWの幅方向に沿って設けられ、フロントバイス装置17及びバイス装置29との間に位置する。また、ワーク支持部材81は、ワークWの幅に応じて、左右方向に移動可能に構成されている。本実施形態に係る横型帯鋸盤1においては、ワーク支持部材81は、連結部83により可動バイスジョー71と連結されることにより、可動バイスジョー71に従動して、ワークWの幅に応じて移動する。ワーク支持部材81の構成の詳細については、図3A~図6を参照して後述する。
バイス装置29の右側には、ガイドポスト31が設けられている。ガイドポスト31は、上下方向に沿って直線状に延在している。ガイドポスト31には、カッティングヘッド9が上下動自在に取り付けられており、ガイドポスト31は、カッティングヘッド9の直線上下動を案内する。
バイス装置29の左側には、サブガイドポスト69が設けられている。サブガイドポスト69は、上下方向に沿って直線状に延在している。サブガイドポスト69には、カッティングヘッド9が上下動自在に取り付けられており、サブガイドポスト69は、ガイドポスト31とともにカッティングヘッド9の直線上下動を案内する。また、サブガイドポスト69にはバイスシリンダ73が設けられている。
カッティングヘッド9は、ベース7の上方に配置されている。カッティングヘッド9とベース7との間には、ワーク支持部材81及び支持ローラ11によって支持されたワークWが存在する。カッティングヘッド9は、ハウジング33と、帯鋸刃47と、固定ガイドアーム49と、可動ガイドアーム51と、帯鋸刃ガイド(固定鋸刃ガイド53、可動鋸刃ガイド55)などを備えている。
ハウジング33は、ガイドポスト31及びサブガイドポスト69にそれぞれ取り付けられ、ガイドポスト31及びサブガイドポスト69の延在方向に沿って移動可能に構成されている。ガイドポスト31に近接した位置には、ハウジング33を昇降するための油圧シリンダ57が設けられている。昇降用の油圧シリンダ57のピストンロッドの先端は、ハウジング33のブラケット部61に連結されている。油圧シリンダ57が動作することで、ハウジング33は、ガイドポスト31及びサブガイドポスト69に沿って直線上下動する。なお、本開示ではハウジング33の昇降用に油圧シリンダの伸縮を利用したが、サーボモータとボールねじと軸受け、ラックアンドピニオンやリニアモータによる昇降機構を利用することも可能である。
ハウジング33は、左右方向に延在するビーム部材33aと、ビーム部材33aの両端に設けられたハウジング本体部35、37とで構成されている。
一方のハウジング本体部35には、駆動ホイール43が設けられ、他方のハウジング本体部37には、従動ホイール45が設けられている。駆動ホイール43と従動ホイール45とは、互いに離間しており、ワークWを隔てて向かい合っている。駆動ホイール43は、ワークWよりも固定バイスジョー27側に位置し、従動ホイール45は、ワークWよりも可動バイスジョー71側に位置する。
駆動ホイール43の中心には、ハウジング本体部35に対して回転自在に取り付けられた駆動軸39が挿通されている。駆動軸39は、モータなどの駆動機構から伝達される動力によって回転する。駆動ホイール43は、駆動軸39の回転に伴って回転する。従動ホイール45の中心には、ハウジング本体部37に対して回転自在に取り付けられた従動軸41が挿通されている。
駆動ホイール43と従動ホイール45との間には、ワークWを切削して切断するためのエンドレス状(無端状)の帯鋸刃47を掛け回して、トラッキング調整し回動可能にしてある。よって、従動ホイール45は帯鋸刃47を介して駆動ホイール43の回転に従動して回転する。なお、従動されるホイールが2つ以上ある帯鋸盤もあるが、本実施形態で示す従動ホイール45は、ワークWを切削して切断するための無端状の帯鋸刃47が掛け渡されており、駆動ホイール43との間でワークWを切削する領域(切削領域)を形成するための従動ホイールを指す。駆動ホイール43と従動ホイール45との間の領域では、ワークWを切削するために、帯鋸刃47の歯先をワークWの方向に向けるように、固定鋸刃ガイド53及び可動鋸刃ガイド55は、帯鋸刃をひねり起こしている。駆動ホイール43と従動ホイール45との間の領域における、固定鋸刃ガイド53と可動鋸刃ガイド55の間の領域が、ワークWを切削する切削領域となる。なお、帯鋸刃47の歯先をワークWの方向に向けるとは、帯鋸刃の帯幅の向きが、ガイドポスト31及びサブガイドポスト69の延在方向と一致することを指す。
固定ガイドアーム49は、ビーム部材33aの右端部に固定されている。固定鋸刃ガイド53は、固定ガイドアーム49の下端に設けられ、ワークWの右端部の近傍で帯鋸刃47を把持して、帯鋸刃をワークWの方向に向けひねり起こしている。なお、本明細書中において、「ワークWの端部」とは、横型帯鋸盤1に載置されている状態でのワークWの端部を意味する。例えば、H形鋼であるワークWのウェブ部が水平方向となる向きでワークWが載置されている場合には、ワークWの右端部とは、水平方向に向いたウェブ部の右側に位置するフランジ部を意味し、ワークWの左端部とは、水平方向に向いたウェブ部の左側に位置するフランジ部を意味する。一方、H形鋼であるワークWのウェブ部が鉛直方向となる向きでワークWが載置されている場合には、ワークWの右端部とは、鉛直方向に向いたウェブ部の下側に位置するフランジ部の右端部を意味し、ワークWの左端部とは、鉛直方向に向いたウェブ部の下側に位置するフランジ部の左端部を意味する。
可動ガイドアーム51は、固定ガイドアーム49より左側に位置し、ビーム部材33aに沿って移動自在に取り付けられる。可動ガイドアーム51は、下端部に可動鋸刃ガイド55を備える。本実施形態に係る横型帯鋸盤1においては、可動ガイドアーム51は、連結部59により可動バイスジョー71と連結されることにより、可動バイスジョー71に従動してビーム部材33aに沿って移動する。このとき、ビーム部材33aは傾斜しているため、可動バイスジョー71が左右方向に移動すると、可動ガイドアーム51は、左右方向へ移動しつつ、上下方向へも移動する。なお、連結部59は、可動ガイドアーム51が上下方向に移動可能となるように、可動ガイドアーム51と可動バイスジョー71とを連結している。これにより、可動ガイドアーム51の上下方向への移動が許容されるため、可動バイスジョー71に従動する可動ガイドアーム51の上下移動が許容され、また、可動ガイドアーム51を含むカッティングヘッド9全体の上下移動を許容することができる。
可動鋸刃ガイド55は、可動ガイドアーム51の下端部に固定され、帯鋸刃47に沿って移動自在に構成される。可動鋸刃ガイド55は、ワークWの左端部の近傍で帯鋸刃47を把持して、帯鋸刃をワークWの方向に向けひねり起こしている。可動鋸刃ガイド55は、可動バイスジョー71と連結されることにより、可動バイスジョー71に従動して帯鋸刃47に沿って移動する。本実施形態に係る横型帯鋸盤1においては、可動バイスジョー71と連結された可動ガイドアーム51が、可動バイスジョー71に従動してビーム部材33aに沿って移動することにより、可動鋸刃ガイド55が、可動バイスジョー71に従動して移動する。上記構成に加え、ビーム部材33aの傾斜と帯鋸刃47の切削領域の傾斜とが対応しているため、可動鋸刃ガイド55は、帯鋸刃47に沿って左右方向及び上下方向に移動し、そのとき切断するワークWの最大幅に対応する位置で、帯鋸刃47の最小の切削領域を確定して、帯鋸刃47の姿勢を保つ。
前述したように、本実施形態に係る横型帯鋸盤1において、可動バイスジョー71、可動鋸刃ガイド55及び可動ガイドアーム51は、そのとき切断するワークWの最大幅に応じてワークWの幅方向に連動して移動する。そして、各々がそのとき切断するワークWの最大幅に対応する位置に固定された状態で、ワークWの切断が開始される。ワークWを切断する際は、カッティングヘッド9の降下に連動して、可動鋸刃ガイド55及び可動ガイドアーム51も降下する。
本実施形態の特徴の1つとして、ハウジング33のビーム部材33aは、固定バイスジョー27側から可動バイスジョー71側の方向に向けて下り傾斜となる傾斜角を設定している。つまり、ビーム部材33aの傾斜角に対応して、駆動ホイール43の中心である駆動軸39は、従動ホイール45の中心である従動軸41よりも上方に位置している。駆動ホイール43のホイール径と従動ホイール45のホイール径とは相互に対応しており、駆動ホイール43の下端43aは、従動ホイール45の下端45aよりも上方に位置する。このため、帯鋸刃47の切削領域には、固定バイスジョー27側から可動バイスジョー71側へ向けて下り傾斜となる傾斜角α(仰角α)が付与されている。ハウジング33は、傾斜角α、すなわち駆動ホイール43と従動ホイール45との位置関係を保持したまま、ガイドポスト31に沿って直線上下動する。このため、帯鋸刃47によるワークWの切断は、可動バイスジョー71側から固定バイスジョー27側に向かって進行し、切断終了点Pcにおいて終了する。ワークWの切断が終了してカッティングヘッド9が最降下している時、駆動ホイール43は、ワーク支持部材81よりも上方に位置する。
次に、ワーク支持部材81の構成の詳細について、図3A~図6を参照して説明する。
図3A及び図3Bは、本実施形態に係る横型帯鋸盤1のワーク支持部材81の一例を示す図である。ワーク支持部材81は、図1を参照するに左右方向に横長の一つの部材により構成され、ワークWを支持可能なワーク支持面(上面)を備えている。ワーク支持部材81の左右方向の幅寸法は、横型帯鋸盤1が切断対象とする加工可能なワークWの許容最大幅に応じて、ワークWを安定して支持可能な長さに設定される。また、ワーク支持部材81は、図2を参照するに前後の支持ローラ11の搬送高さと同一の高さでワークWを支持する。ワーク支持部材81の上面には、帯鋸刃47が入り込んで走行可能な逃げ溝89が左右方向に形成してある。ワークWの切断時に、帯鋸刃47の切削領域が逃げ溝89に入り込むことにより、ワークWの切断時に、帯鋸刃47の切削領域とワーク支持部材81の干渉を回避することができる。
ワーク支持部材81は、ワーク支持部材81をスライドさせて移動させる支持部材ガイド85を備える。本実施形態に係る横型帯鋸盤1においては、支持部材ガイド85は、ベース7上に設けられる。また、支持部材ガイド85は、ワーク支持部材81の下方に、左右方向、すなわちワークWの幅方向に沿って設けられる。本実施形態に係る横型帯鋸盤1においては、支持部材ガイド85には、機械の直線運動部を「ころがり」を用いてガイドする機械要素部品が用いられる。支持部材ガイド85の左右方向の幅寸法は、ワーク支持部材81の幅寸法に応じて設定される。なお、支持部材ガイド85は、機械の直線運動部をガイドする部材で構成されれば「ころがり」を用いることに限定されない。
図4は、本実施形態に係る横型帯鋸盤1の可動バイスジョー71とワーク支持部材81の連結部の一例を示す図である。ワーク支持部材81は、ワーク支持部材81を支持部材ガイド85に沿ってスライドさせて移動させる連結部87を備える。ワーク支持部材81は、連結部87により支持部材ガイド85と連結され、連結部87は、ワーク支持部材81を支持部材ガイド85に沿ってスライド可能に構成される。本実施形態に係る横型帯鋸盤1においては、ワーク支持部材81の左端部に固定された連結部87が、支持部材ガイド85に沿って移動することにより、ワーク支持部材81が支持部材ガイド85に沿って移動可能に構成されている。
また、ワーク支持部材81は、可動バイスジョーと連結され、ワークWの幅に応じて固定バイスジョー側の位置までスライド可能に構成される。ワーク支持部材81は、ワーク支持部材81を可動バイスジョー71と連結させる連結部83を備える。本実施形態に係る横型帯鋸盤1においては、連結部83は、可動バイスジョー71の下端部の前側に備えられたブラケット83aと、ワーク支持部材81の左端部に備えられたカムフォロア83bから成り、ブラケット83aとカムフォロア83bとが連結されることにより、ワーク支持部材81が可動バイスジョー71と連結される。なお、連結部83は、ワーク支持部材81と可動バイスジョーを連結する部材であればよく、ブラケット83a及びカムフォロア83bに限定されるものではない。上記構成により、ワーク支持部材81は、可動バイスジョー71に従動して、ワークWの幅に応じて移動する。
図5及び図6は、カッティングヘッド9が最降下した時の、可動鋸刃ガイド55、ワーク支持部材81及び支持部材ガイド85の位置関係を説明する図である。上述したように、カッティングヘッド9は、固定バイスジョー27側から可動バイスジョー71側へ向けて下り傾斜となる傾斜角αで帯鋸刃47を保持しつつ、ガイドポスト31に沿って降下しながらワークWを切断する。図5に示すように、カッティングヘッド9が最降下した時には、可動鋸刃ガイド55はワークWの下面より下方に位置し、固定鋸刃ガイド53は、ワークWの下面より上方に位置する。また、カッティングヘッド9が最降下した時、ワーク支持部材81は、可動鋸刃ガイド55の位置よりも固定バイスジョー27側に位置する。なお、ワークWの搬入時に、ワークWの真直度と固定バイスジョー27の基準位置との関係で、ワークWが固定バイスジョー27と干渉する不具合を避ける目的で、固定バイスジョー27が基準位置から一時的に退避する帯鋸盤も存在する。ここで固定バイスジョー27側とは、固定バイスジョー27の基準位置を起点とすることを指し示すものである。
上記構成により、ワークWを切断する際に、ワークWの下面より下方まで降下する可動鋸刃ガイド55と、ワーク支持部材81との干渉を回避できる。
また、本実施形態に係る横型帯鋸盤1においては、カッティングヘッド9がガイドポスト31に沿って降下しながらワークWを切断する場合、ワークWの幅によって切断長が相違し、可動バイスジョー71側から固定バイスジョー27側までの距離はワークWの幅が小さいほど短くなる。したがって、加工開始時の可動鋸刃ガイド55の位置は、切断するワークWの幅が短くなるにつれて、帯鋸刃47に沿って右肩上がりに移動する。図6におけるワークWの幅は、図5におけるワークWの幅よりも短いものとする。図6に示すように、ワークWの幅が短くなると、可動鋸刃ガイド55は、帯鋸刃47に沿って右肩上がりに移動する。ワーク支持部材81は、ワークWの幅が短くなると、ワークWの幅に応じて右側に移動し、可動鋸刃ガイド55の位置よりも固定バイスジョー27側の位置まで移動する。したがって、ワークWの幅に拘らず、ワークWの下面より下方まで降下する可動鋸刃ガイド55は、ワーク支持部材81との干渉を回避できる。
また、可動鋸刃ガイド55は、ワークWの幅が長くなると左肩下がりに移動するため、切断するワークWの幅が最も長い幅となる場合に、ワークWの幅が最も短い幅の切断と比較して、最も下方まで下降する。その場合でも、可動鋸刃ガイド55は、ワーク支持部材81の左端部(可動バイスジョー71側の端部)と干渉することなく、その左端部の左側方を通過して下降することができる。そのために、支持部材ガイド85は、横型帯鋸盤1が切断可能な最も長い幅のワークを切断する際にカッティングヘッド9が最降下したとき、可動鋸刃ガイド55と干渉しないように、可動鋸刃ガイド55の下端部よりも下方に配設している。
上記構成により、ワークWを切断する際に、ワークWの下面より下方まで降下する可動鋸刃ガイド55は、支持部材ガイド85との干渉を回避できる。
図1を参照するにNC装置65は、アーム部材63を介して、ガイドポスト31の上部に設けられている。もっとも、NC装置65の配置は、横型帯鋸盤1から別置した位置に構成しても構わない。NC装置65は、横型帯鋸盤1を制御する制御装置である。NC装置65には、カッティングヘッド9の降下量などを検出する各種のセンサから検出信号が入力されている。NC装置65は、これらの検出信号及び加工プログラムに基づいて、帯鋸刃47の回転制御、カッティングヘッド9の昇降制御などを行う。
本実施形態との関係において、NC装置65は、カッティングヘッド9の降下量を検出するセンサの検出信号に基づいて、帯鋸刃47が切断終了点Pcまで下降したか否を判断する。NC装置65は、帯鋸刃47が切断終了点Pcまで下降したと判断すると、ハウジング33を所定のホーム位置まで上昇させる動作を行う。
このような構成の横型帯鋸盤1では、支持ローラ11を回転させてワークWを搬送することで、ワークWが適宜の位置に位置決めされる。ワークWが位置決めされると、フロントバイス装置17、固定バイスジョー27及びバイス装置29によってワークWが固定される。NC装置65の制御のもと、駆動ホイール43を回転させて帯鋸刃47を走行させ、且つ、ガイドポスト31に沿ってカッティングヘッド9を下降させることにより、ワークWの切断が行われる。
本実施形態に係る横型帯鋸盤1は、帯鋸刃47の傾きを従来と逆にし、ワークWを切断する切削領域が固定バイスジョー27側から可動バイスジョー71側へ向けて下り傾斜となる仰角で帯鋸刃47を保持した状態(以下、逆仰角という)で切断を行う。逆仰角で切断を行うことにより、切断終了点Pcは、固定バイスジョー27がワークWを固定する鉛直面の一意の位置に定まるため、ワークWを切断加工する際に切断終了点Pcを検出したり演算したりする必要がない。その結果、ワークWを切断加工する際の煩雑さを解消することができる。
上述したような逆仰角の横型帯鋸盤1では、ワークWの幅に応じた位置で切削領域を保持する可動鋸刃ガイド55は、ワークの切断時にワークWの下面よりも下方の位置まで降下する。したがって、逆仰角の横型帯鋸盤1においてワークWを切断する際に降下してくる可動鋸刃ガイド55は、可動バイスジョー71の下方においてワークWを下から支持するワーク支持部材81との干渉を回避する必要がある。
本実施形態に係る横型帯鋸盤1において、ワーク支持部材81は、可動バイスジョーに従動してワークの幅に応じて移動可能である。したがって、ワーク支持部材81は、ワークWの幅に応じた位置で切削領域を保持して降下してくる可動鋸刃ガイド55と干渉しないような位置に移動することができる。これにより、帯鋸刃47の切削領域を固定バイスジョー27側から可動バイスジョー71側へ向けて下り傾斜となる仰角に傾けた状態でワークWを切断する際に、可動鋸刃ガイド55はワーク支持部材81との干渉を回避することができる。
また、本実施形態に係る横型帯鋸盤1において、ワーク支持部材81は、可動バイスジョー71と連結され、ワークWの幅に応じて固定バイスジョー27側の位置までスライド可能である。これにより、ワークWを切断する際に、ワークWの下面より下方まで降下する可動鋸刃ガイド55は、ワーク支持部材81との干渉を回避できる。
また、本実施形態に係る横型帯鋸盤1において、スライド可能なワーク支持部材81は、ワーク支持部材81を支持する支持部材ガイド85と連結され、支持部材ガイド85は、カッティングヘッド9が最降下した時の可動鋸刃ガイド55の下端部よりも下方に配設される。これにより、ワークWを切断する際に、ワークWの下面より下方まで降下する可動鋸刃ガイド55は、支持部材ガイド85との干渉を回避できる。
また、本実施形態に係る横型帯鋸盤1において、支持部材ガイド85は、機械の直線運動部をガイドする機械要素部品である。これにより、ワーク支持部材81は、可動バイスジョー71に従動してワークWの幅に応じてスライド可能となる。
また、本実施形態に係る横型帯鋸盤1よれば、以下に述べる副次的な効果も達成することができる。
通常の横型帯鋸盤の仰角は本開示とは逆であり、所謂正仰角の横型帯鋸盤である。正仰角の横型帯鋸盤では、駆動ホイールの下端は従動ホイールの下端よりも下方にあり、帯鋸刃を回転させてワークを切削すると、切粉はワークの下側に排出されるように切断される。一方、本開示の横型帯鋸盤1は、正仰角の横型帯鋸盤に対し逆仰角の横型帯鋸盤となる。帯鋸刃47を回転させてワークWを切削すると、切粉はワークWの上側にかき出されるように切削され、切粉はワークWに積もることになる。しかしながら、切り終わり時に発生しがちなワークWが裂けるようなバリの発生が抑制され、仮にバリが発生してもワークWの搬送時にバリが装置に引っ掛かることもない。
さらに、切断終了点Pcが一定となるので、ワークWの個体差に応じた幅誤差などを考慮しなくても済む。これにより、空切削量をゼロ、もしくは大幅に低減することができるので、作業能率の向上を図ることができる。
加えて、本実施形態に係る横型帯鋸盤1は、カッティングヘッド9よりもワークWの搬送方向の上流側に、ワークWに対して穴明け加工が可能なドリルヘッドを備えた複合加工機であってもよい。上述したように、駆動ホイール43の中心が従動ホイール45の中心よりも上方に位置しているので、帯鋸刃47はワークWを引き切る状態で切削することになる。そのため、前工程の穴明け加工でワークW上に堆積した切粉を、帯鋸刃47が巻き込んでしまうといった事態を抑制することができる。これにより、帯鋸刃47のチッピングの対策、及び切断面の加工精度の向上を図ることができる。
なお、上述した実施形態では、ハウジング33のビーム部材33aに傾斜が設定されている。しかしながら、駆動ホイール43の中心が、従動ホイール45の中心よりも上方に位置しているのであれば、ビーム部材33aは水平であってもよい。
また、上述した実施形態では、駆動ホイール43のホイール径と従動ホイール45のホイール径とが対応している。しかしながら、駆動ホイール43の下端43aが従動ホイール45の下端45aよりも上方に位置するのであれば、ホイール径が一致していなくてもよい。
また、上述した実施形態では、ワークWとして形鋼を例示したが、これに限られない。本実施形態に係る横型帯鋸盤1は、ワーク支持基準と固定バイス基準の交点にワークWの端部が存在するような断面形状を有するワークWに対して広く適用が可能である。
また、上述した実施形態では、固定バイスジョー27側から可動バイスジョー71側へ向けて下り傾斜となる傾斜角αが帯鋸刃47の全体に設定されている。しかしながら、この傾斜角αの設定は、帯鋸刃47の全体に及ぶ必要はなく、少なくとも切削領域に及んでいればよい。
また、上述した実施形態では、可動鋸刃ガイド55は、可動バイスジョー71と連結される。しかしながら、可動鋸刃ガイド55は、可動バイスジョー71と連結されず、独立してワークWの幅に応じて移動自在に構成されてもよい。可動鋸刃ガイド55は、ワークの幅に応じて帯鋸刃47に沿って移動可能な構成を備えていればよい。
また、上述した実施形態では、ワーク支持部材81は、可動バイスジョー71と連結される。しかしながら、支持部材ガイド85は、可動バイスジョー71と連結されず、独立してワークWの幅に応じて移動自在に構成されてもよい。ワーク支持部材81は、ワークWの切断時に可動鋸刃ガイド55の位置よりも固定バイスジョー側の位置まで移動可能な構成を備えていればよい。
(変形例1)
上述した実施形態では、ワーク支持部材が左右方向に横長の一つの部材により構成される場合について説明した。しかしながら、ワーク支持部材は、可動バイスジョー71に固定され、ワークWの幅に応じて固定バイスジョー27側の位置まで移動可能であって、ワークWの一方の端部を下から支持する第1のワーク支持部材と、固定バイスジョー27に固定され、ワークWの他方の端部を下から支持する第2のワーク支持部材との二つの部材により構成されてもよい。
図7は、本実施形態の変形例1に係る横型帯鋸盤1の第1及び第2のワーク支持部材81a、81bの例を示す図である。図7においては、ワークWはH形鋼であり、ワークWは、H形鋼のウェブ部が水平方向となる向きで、横型帯鋸盤1に載置されている。第1及び第2のワーク支持部材81a、81bは、水平方向に向いたウェブ部の左右に位置するフランジ部を下から支持する。第1のワーク支持部材81aは、ワークWの左端部、すなわち水平方向に向いたウェブ部の左側に位置するフランジ部を下から支持する。第2のワーク支持部材81bは、ワークWの右端部、すなわち水平方向に向いたウェブ部の右側に位置するフランジ部を下から支持する。なお、ワークWが、H形鋼のウェブ部が鉛直方向となる向きで横型帯鋸盤1に載置されている場合には、第1のワーク支持部材81aは、ワークWの左端部、すなわち鉛直方向に向いたウェブ部の下側に位置するフランジ部の左端部を下から支持する。第2のワーク支持部材81bは、ワークWの右端部、すなわち鉛直方向に向いたウェブ部の下側に位置するフランジ部の右端部を下から支持する。
第1及び第2のワーク支持部材81a、81bは、フロントバイス装置17及びバイス装置29との間に位置する。図7において、第1のワーク支持部材81aは、可動バイスジョー71に固定され、可動バイスジョー71に従動して、ワークWの幅に応じて左右方向に移動可能に構成されている。第2のワーク支持部材81bは、固定バイスジョー27に固定されている。
また、図7において、可動バイスジョー71は、ワークWの左端部を支持しており、固定バイスジョー27は、ワークWの右端部を支持している。すなわち、ワークWの左端部は可動バイスジョー71及び第1のワーク支持部材81aによって支持され、ワークWの右端部は固定バイスジョー27及び第2のワーク支持部材81bによって支持される。より具体的には、第1のワーク支持部材81aは、帯鋸刃47によって切断分離されるワークWの製品側の左端部を支持し、可動バイスジョー71は、帯鋸刃47によって切断分離されるワークWの素材側の左端部を支持する。第2のワーク支持部材81bは、帯鋸刃47によって切断分離されるワークWの製品側の右端部を支持し、固定バイスジョー27は、帯鋸刃47によって切断分離されるワークWの素材側の右端部を支持する。
第1のワーク支持部材81aの可動バイスジョー71側の側面及び第2のワーク支持部材81bの固定バイスジョー27側の側面には、可動バイスジョー71及び固定バイスジョー27との間に帯鋸刃47が入り込んで走行可能な逃げ溝89a、89bが形成してある。逃げ溝89a、89bの深さについては、後述する。ワークWの切断時に、帯鋸刃47の切削領域が逃げ溝89a、89bに入り込むことにより、ワークWの切断時に、帯鋸刃47の切削領域と第1及び第2のワーク支持部材81a、81bの干渉を回避することができる。
図8は、本実施形態の変形例1に係る横型帯鋸盤1のカッティングヘッド9が最降下した時の、可動鋸刃ガイド55、第1及び第2のワーク支持部材81a、81bの位置関係を説明する図である。図8に示すように、カッティングヘッド9が最降下した時には、可動鋸刃ガイド55はワークWの下面より下方に位置し、固定鋸刃ガイド53は、ワークWの下面より上方に位置する。また、カッティングヘッド9が最降下した時、第1のワーク支持部材81aは、可動鋸刃ガイド55の位置よりも固定バイスジョー27側に位置する。
ここで、上述したように、ワークWの幅が短くなると、可動鋸刃ガイド55は、帯鋸刃47に沿って右肩上がりに移動する。第1のワーク支持部材81aは、ワークWの幅が短くなると、可動バイスジョー71に従動してワークWの幅に応じて右側に移動し、可動鋸刃ガイド55の位置よりも固定バイスジョー27側の位置Aまで移動する。なお、位置Aは、ワークWの幅に応じた任意の位置である。したがって、ワークWの幅に拘らず、ワークWの下面より下方まで降下する可動鋸刃ガイド55は、第1のワーク支持部材81aとの干渉を回避できる。
また、ワークWの幅が短くなり、第1のワーク支持部材81aがワークWの幅に応じて右側の位置Aに移動した場合であっても、第2のワーク支持部材81bは、ワークWの幅に拘らず常に同じ位置に固定されている。このため、第2のワーク支持部材81bが固定バイスジョー27の位置よりも右側に突き出ることがない。これにより、ワーク支持部材が固定バイスジョー27の位置よりも右側に突き出るためのスペースが不要となり、横型帯鋸盤1のデッドスペースを抑制できる。
また、可動鋸刃ガイド55は、ワークWの幅が長くなると左肩下がりに移動するため、切断するワークWの幅が最も長い幅となる場合に、ワークWの幅が最も短い幅の切断と比較して、最も下方まで下降する。したがって、第1のワーク支持部材81aの逃げ溝89aは、横型帯鋸盤1が切断可能な最も長い幅のワークWを切断する際にカッティングヘッド9が最降下したとき、帯鋸刃47と干渉しないような深さに形成されればよい。また、上述したように、本実施形態に係る横型帯鋸盤1は、逆仰角で切断を行うことにより、切断終了点は、固定バイスジョー27がワークWを固定する鉛直面の一意の位置に定まる。したがって、第2のワーク支持部材81bの逃げ溝89bは、帯鋸刃47が切断終了点まで下降したときに、帯鋸刃47と干渉しないような深さに形成されればよい。逃げ溝89bの深さは、逃げ溝89aの深さよりも短くてよい。
(変形例2)
また、ワーク支持部材81は、可動バイスジョー71に固定され、ワークWの幅に応じて固定バイスジョー27側の位置まで移動可能であって、ワークWの一方の端部を下から支持する第1のワーク支持部材と、固定バイスジョー27に固定され、ワークWの他方の端部を下から支持する第2のワーク支持部材と、第1のワーク支持部材に連動してワークWの幅に応じて移動可能であって、第1のワーク支持部材81cと第2のワーク支持部材81dの中央位置でワークWを下から支持する第3のワーク支持部材との三つの部材により構成されてもよい。
図9は、本実施形態の変形例2に係る横型帯鋸盤1の第1~第3のワーク支持部材81c~81eの例を示す図である。図9において、第1のワーク支持部材81cは、ワークWの左端部を下から支持し、第2のワーク支持部材81dは、ワークWの右端部を下から支持し、第3のワーク支持部材81eは、ワークWの中心部を下から支持する。第1~第3のワーク支持部材81c~81eは、フロントバイス装置17及びバイス装置29との間に位置する。
なお、第1~第3のワーク支持部材81c~81eの各々には、図3Aに示すワーク支持部材81と同様に、帯鋸刃47が入り込んで走行可能な逃げ溝が左右方向に形成してあり、図9は、第1~第3のワーク支持部材81c~81eの各々の、逃げ溝よりもバイス装置29側の部分のみを示している。なお、第1~第3のワーク支持部材81c~81eの各々の逃げ溝の深さについては、図3Aにおける逃げ溝89の深さと同様であるため、ここでの説明は省略する。ワークWの切断時に、帯鋸刃47の切削領域が逃げ溝に入り込むことにより、ワークWの切断時に、帯鋸刃47の切削領域と第1~第3のワーク支持部材81c~81eの各々との干渉を回避することができる。
図9において、第1のワーク支持部材81cは、可動バイスジョー71に固定され、可動バイスジョー71に従動して、ワークWの幅に応じて左右方向に移動可能に構成されている。第2のワーク支持部材81dは、固定バイスジョー27に固定されている。第3のワーク支持部材81eは、第1のワーク支持部材81cと連動してワークWの幅に応じて左右方向に移動可能であって、常にワークWの中心部の下方を支持するように構成されている。
第3のワーク支持部材81eは、第3のワーク支持部材81eをスライドさせて移動させる支持部材ガイド85aを備える。支持部材ガイド85aは、第3のワーク支持部材81eの下方に、左右方向、すなわちワークWの幅方向に沿って設けられる。支持部材ガイド85aには、機械の直線運動部を「ころがり」を用いてガイドする機械要素部品が用いられる。支持部材ガイド85aの左右方向の幅寸法は、少なくとも、固定バイスジョー27及び可動バイスジョー71がクランプ可能な最小クランプ幅の半分の位置から、最大クランプ幅の半分の位置までに設定さればよい。なお、支持部材ガイド85aは、機械の直線運動部をガイドする部材で構成されれば「ころがり」を用いることに限定されない。
第3のワーク支持部材81eは、第3のワーク支持部材81eを支持部材ガイド85aに沿ってスライドさせて移動させる連結部87aを備える。第3のワーク支持部材81eは、連結部87aにより支持部材ガイド85aと連結され、連結部87aは、第3のワーク支持部材81eを支持部材ガイド85aに沿ってスライド可能に構成される。
図9に示すように、例えば連結部87aが支持部材ガイド85aの側面にスライド可能に連結され、連結部87aの上面に第3のワーク支持部材81eの下面が固定されることにより、第3のワーク支持部材81eが左右方向にスライド可能となる。図9において、連結部87aは、滑車Pを備え、滑車Pに掛け回されたワイヤーLにより、第1のワーク支持部材81cと連結される。そして、連結部87aは、ばねQ1、Q2により第2のワーク支持部材81dと連結される。連結部87aは、第1のワーク支持部材81cが可動バイスジョー71に従動してワークWの幅に応じて左右方向に移動すると、ワイヤーL及びばねQ1、Q2により第1のワーク支持部材81cの移動量の半分だけ左右方向に移動するように構成される。上記構成により、第3のワーク支持部材81eは、第1のワーク支持部材81cと連動してワークWの幅に応じて支持部材ガイド85aに沿って移動し、第1のワーク支持部材81cと第2のワーク支持部材81dの中央位置でワークWを支持できる。
ここで、上述したように、ワークWの幅が短くなると、可動鋸刃ガイド55は、帯鋸刃47に沿って右肩上がりに移動する。第1のワーク支持部材81cは、ワークWの幅が短くなると、可動バイスジョー71に従動してワークWの幅に応じて右側に移動し、可動鋸刃ガイド55の位置よりも固定バイスジョー27側の位置まで移動する。したがって、ワークWの幅に拘らず、ワークWの下面より下方まで降下する可動鋸刃ガイド55は、第1のワーク支持部材81cとの干渉を回避できる。
また、ワークWの幅が短くなり、第1のワーク支持部材81cがワークWの幅に応じて右側の位置に移動した場合であっても、第2のワーク支持部材81dは、ワークWの幅に拘らず常に同じ位置に固定されている。このため、第2のワーク支持部材81dが固定バイスジョー27の位置よりも右側に突き出ることがない。これにより、ワーク支持部材が固定バイスジョー27の位置よりも右側に突き出るためのスペースが不要となり、横型帯鋸盤1のデッドスペースを抑制できる。
さらに、ワークWの幅が短くなり、第1のワーク支持部材81cがワークWの幅に応じて右側の位置に移動した場合に、第3のワーク支持部材81eは、第1のワーク支持部材81cに連動して右側の位置に移動して、第1のワーク支持部材81cと第2のワーク支持部材81dの中央位置に位置する。例えば、ワークWが丸材の場合には、第3のワーク支持部材81eは、ワークWの断面の中心から見て鉛直下方にあるワークWの外周面を下から支持することができ、ワークWが丸材の場合であっても、ワークWを支えることができる。
なお、ワークWが丸材の場合には、第1及び第2のワーク支持部材81c、81dはワークWを支持しない。また、ワークWがH形鋼で、H形鋼のウェブ部が水平方向となる向きで、横型帯鋸盤1に載置される場合には、第3のワーク支持部材81eはワークWを支持しない。このように、第1~第3のワーク支持部材81c~81eは、ワークWを下から支持可能であればよく、ワークWの形状及び載置の向きによって、第1~第3のワーク支持部材81c~81eのいずれかでワークWを下から支持すればよい。
以上のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。